第3回定例会一般質問  2014.9.12 そね文子

私は区議会生活者ネットワークの一員として一般質問いたします。
先日、大田区の小学生女子が2人で飛び降りて亡くなる事件がおきました。マンションの踊り場に2組の靴があり、遺書も見つかったとのこと。原因はわかっていませんが、2人とも中学受験を控え疲れを訴えていたことが報道されています。いじめ、勉強、受験、学校や友だち関係のストレスなど、辛さを抱えている子どもにとって、9月初めはストレスの大きい時期です。この時期だからこそ、子どもを取り巻く状況を少しでもよくしたいと思い、以下子どもの育ちを応援する取り組みについて質問いたします。
まず、大きな項目の一つ目は、特別支援教育についてうかがいます。
2007年4月、改正学校教育法が施行され、従来の盲学校、聾学校、養護学校などで行われてきた特殊教育を、対象となっていた障がいの児童だけでなく、知的な遅れのない発達障がいの児童も含め、教育上特別な支援を必要とする児童が在籍するすべての学校において特別支援教育を行うことが規定されました。知的な遅れのない発達障がいとは、学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症・アスペルガー症候群などを指します。文部科学省が2012年12月に行った調査報告によると、通常学級に在籍する、知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は6.5%となっています。30人のクラスに1人か2人はそのような子どもがいるということになります。

先日、区立小学校の通常クラスに在籍する、特別な支援を必要とする子どもを持つお母さんたちと話をする機会がありました。子育ての苦労は誰もが経験することですが、特別な育てにくさがある子どもと接する日々で、子どもが発達障がいと認め納得するまでに時間がかかったこと。母親が子どもの障がいを理解しても、それを父親が理解するまでにさらに時間がかかること。子どもの問題行動が母親のせいにされ夫婦不和が起こって、離婚してしまう家庭が多いこと。学校の支援が十分とは言えないこと、教室内でさまざまな困ったことに直面する子どもを思う切ない気持ちなどを聞いて、大変心が痛みました。

杉並区教育ビジョンでは、全ての子どもたちへの切れ目のない成長・学びの支援をきめ細かく行う学校をつくることが示されています。また、「教育ビジョン2012推進計画」の中では「特別支援教育の充実」が重点事業にあげられています。未来をになう子どもたち、成長過程にある子どもの大切な今を支えるために、全力で取り組んでいただきたいとの思いから質問します。なお、今回の質問は主に小学校についてうかがいます。

1.杉並区では特別支援教育の方向性を明らかにし、教育上特別な支援を必要とする幼児・児童・生徒に対する教育のより一層の充実を図るためとして「杉並区特別支援教育推進計画」を策定しています。まず初めに、この計画の概要と特徴、区として意を用いた点は何か、うかがいます。

2. つづいて就学支援シートについてです。計画では、就学前に保護者は就学支援シートすばるを小学校に提出することになっています。シートには保護者、保育園や幼稚園、療育施設の方が、子どもの学習面や生活面の特徴、対人関係について、それまでの指導で大切にしてきたことや小学校に入った後も必要と思われること、学校に期待する保護者の思いなどを記入するようになっています。そこでうかがいます。杉並区ですばるを導入した目的は何か、改めて確認のためにうかがいます。またこれまでの取組みを区はどのように評価しているのでしょうか。

3. 特別支援教育推進計画の中には、一貫した支援体制づくりを推進するツールとして「個別指導計画」及び「個別の教育支援計画」の作成と適切な進行管理が重要とあります。個別の教育支援計画とは子ども一人一人のニーズを把握し教育の適時・適切な支援を行うことが出来るよう、長期的な視点で作成するもので、教育、福祉、医療、保健、就労などの様々な側面からの取り組みを含むものと伺っています。2013年度のすばるの受理状況について調べていただいたところ、学校が受理した件数は243件となっていますが、その内で個別の教育支援計画が作成されたのは76件にすぎず、十分活用されているとは言えないと思われます。また、すばるが受理された39校のうち7校が活用度0%と答えているのは大変問題と考えますが教育委員会の見解はいかがかお示しください。この活用状況については改善すべきと考えます。教育委員会の評価と今後の取り組みについても伺います。

4. 保護者からもすばるを有効活用してほしいとの声があがっています。すばるを担任、養護教諭が読んでくれれば、担任がかわるたびに、毎回子どものことを1から説明しなくて済む。また、音楽、図工、理科、家庭科、技術などの専科の先生にも目を通してほしい。特別な支援を必要とする子は周囲の状況や人の変化に対応するのが苦手で、場所も担当の先生も替わる専科の授業は子どもにとって戸惑いと混乱により苦しさを伴うことが多くあります。すべての専科の先生に子どもの特徴を伝えることができるよう、ぜひすばるを生かしていただきたいと思いますが、教育委員会の考えを伺います。

5. 推進計画では、校内支援体制の確立を図るとして、すべての学校に校内委員会を置くとしています。校内委員会の役割として、支援の必要な子どもの実態把握、個別指導計画の作成、専門家からなる教育支援チームなどの巡回相談の活用の検討、指導方針の検討、教職員の研修体制づくり、保護者への理解啓発等があげられており、校長のリーダーシップのもとに運営されることとなっています。すなわち、これほど多くの重要な役割を担う校内委員会がきちんと機能するかどうかが、校長のリーダーシップにかかっているということです。すばるの活用についても、同じことが言えます。校長の裁量によるところが大きく学校ごとにばらつきがあり、保護者から改善してほしいとの声が届いています。公立校に通う子どもの対応に差が生じることは、望ましいことではないと考えます。教育委員会の考えを伺います。

6. 子どもは成長するので、その状況は就学前と数年が経過したころとでは変化します。個別の教育支援計画は親や教師がその変化を記入し、積み上げていくことにより、中学、高校と切れ目のない支援を行うことに結びつくものと考えます。途中で必要なくなることはあっても、入学後の早い時期に全員の個別教育支援計画を作る必要があると考えますが、教育委員会の考えをうかがいます。

7. 普通校の通常学級に在籍する発達障害の子どもは、週に1回は、区内4箇所の小学校に設けられている情緒障害通級指導学級(以下通級学級とします)に通い、その子にあった個別の指導を受けたり、小集団活動で友達と仲良くする方法や、ルールを守ること、自分の良さに気づくことなどを学ぶ特別なプログラムを受けられるようになっています。ところがその通級学級に希望者が全員入ることができず、14年度の待機者は71名と聞きました。保護者からは1年生の学校にまだ慣れない通い始めの時期に待機となり、次の年、6年生が卒業して空きができてからでないと入れないのは厳しいとの話を聞いています。今回の区長就任の所信表明で、障害児の教育の充実を図るため、情緒障害通級指導学級を小中学校で1校ずつふやしていくことが示され、取り組みに期待しています。しかし、さらに通級学級を増やす必要があるとも考えます。改めて今後の計画について伺います。

8. 東京都の特別支援教育推進計画第3次実施計画では16年度からすべての小中学校に特別支援教室を計画的に設置するとなっています。具体的な内容はどうなっているのでしょうか。計画は必要なことであり、実現を期待しています。16年度に向けた準備の進捗状況はいかがかうかがいます。

最後に、介助員ボランティアについて、お母さんたちの切実な要望を紹介したいと思います。現在、通常クラスには必要に応じて安全確保のための支援員や介助員ボランティアが配置されていますが、特別な支援が必要な子どもには、せめて入学後1学期の間は介助員ボランティアがいてくれたらとお母さんたちは言います。子どもは初めての場所や、初めて体験することがわからないと不安が強く出ます。休み時間の友達と遊ぶとき、授業中の班ごとの話し合いや発表するという時間はコミュニケーションが苦手な子どもにとっては本当に大変です。そんなときに手助けをしてもらえれば、自信につながり、人とのかかわりの大切さを学んでいくことができます。先生がクラス全員に向かってしていることに集中できない特徴もあるので、その子の傍らで声をかける人がいれば子どもは話を聞くことができます。また帰りの会の時間に、明日の予定や宿題の記入漏れがないか見てもらい、忘れ物がないか声をかけてもらうなどのちょっとした助けがあれば、自分はダメだと落ち込むことも少なくなると思う、と話してくれました。
授業で教室を移動する場面、運動会の練習や避難訓練などで、どうしたらいいかわからず不安になったり、子どもにとって楽しいはずの休み時間や給食の時間が、授業よりももっと苦しい時間となったりしている現実があります。

ボランティアといっても、中には熱意と意欲を持って子どもに対応し、教室からすぐ出て行ってしまう子どももその人には慣れ、教室に戻れるようになり、落ち着いて授業に集中できるようになったという事例も聞いています。子どもの苦しい気持ちを理解し気を配り、必要な場面では声をかけてくれる大人の存在が教室にあれば、どれだけその子たちの力になるかわかりません。ひとりひとりの子どもの育ちを人と手間を惜しまず力強く応援してくださることを切にお願いし、次の質問に移ります。

大きな項目の2つ目は、子どもをいじめから守り・支援する取り組みについてうかがいます。
生活者ネットワークはこれまでも、子どもをいじめから守る環境づくりや仕組みについて、継続的に質問を行ってきました。杉並区で8月に行われた「中学生生徒会サミット」では前回に続きいじめがテーマとして取り上げられました。先生からの自分たちはどうすればいいかという問いかけに、子どもが「先生にしてほしいことは、まず子どもの話をゆっくり聞いてほしい、解決を急ごうとしないでほしい」と答えていた場面が印象に残りました。これを聞いていた先生だけでなく、その場にいた大人は、改めて子どもへの向き合い方を見直したのではないでしょうか。「生徒会サミット」は、子どもが主体的に問題を解決しようとすることを大人が応援する取り組みとして評価しています。

2011年10月に大津市でいじめを受けていた中学生が自殺したことで、いじめ問題が大きく取り上げられ、国が「いじめ防止対策推進法」を制定し公布したのが12年の6月のことです。そして14年度に入り、6月に東京都が「いじめ防止対策推進条例」を制定し、いじめ防止対策推進基本方針(以下、基本方針)と総合対策が示されました。今年は日本が子どもの権利条約を批准してから20年にあたります。子どもの人権が尊重され、子どもが主体的にいきいきと暮らせる環境をつくるために質問します。

1. まず最初めの質問です。
国のいじめ防止対策推進法では各自治体での条例制定が努力義務となっています。都が条例制定したことで、この時期、都内の各自治体では、いじめ防止対策をどうするか、検討が進められていることと思います。都の条例の中には学校の責務、自治体の責務、保護者や地域の役割などが示されています。杉並区としても、いじめ防止にかかわる方針等を策定する必要があると考えますが、見解をうかがいます。

2つ目の質問です
都の「いじめ防止対策推進条例」では、いじめの加害者となった子どもに対して、観察、指導、懲戒の態度が強く、ケアする視点が薄いのが気になりました。加害側の子どももケアされるべき存在だということ。いじめはその子からのSOSのサインだという視点をもつことが大切ではないかと考えます。加害者となった子どもに対しては特に教育的配慮が必要と考えますが、区の考えはいかがかうかがいます。

3.都の基本方針の中には、いじめの未然防止のために人権教育の充実があげられています。子どもが人権教育を通して、いじめについて学び主体的に考え、防止する取り組みがあげられている点に共感します。ぜひ人権教育に取り組んでほしいと思います。子どもが生まれながらに持つ権利、大切に育ててもらうこと、健康的な食事を与えてもらうこと、学ぶ環境を整えてもらうこと、大切に世話をしてもらうこと、意見を聞いてもらうこと、一人ひとりがかけがえのない大切な存在であること、を学んでほしいと考えます。そのような教育は言葉だけで行われるのではなく、体験型の実感をともなったプログラムを取り入れていただきたいと思いますが、教育委員会の考えをうかがいます。

先日、学校という機関組織や施設にこだわらない、「多様な学び」のあり方を考える集まりに参加しました。そこで、不登校の子どもたちの学びの場を30年にわたり運営し、「もうひとつの学校」としてのフリースクールをひろげる運動を担ってきた東京シューレの奥地圭子さんのお話を聞きました。「いのちとは多様性そのものであり、子どもは本来多様な存在だ」という言葉に深く共感しました。画一的になりがちな学校教育の現場で、多様な存在である子どもたちに、お互いの違いを認める寛容な態度を大人が示していただきたいと思います。

4. この項の最後の質問です。区が独自の方針をつくる際には、ぜひすべての子どもの最善の利益を保証するという考えを取り入れていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。区の見解をうかがって、次の項の質問に移ります。

<スクールソーシャルワーカー活用事業の充実のために>
大きな項目の3つ目はスクールソーシャルワーカー活用充実のために、質問いたします。以下、スクールソーシャルワーカーを略してSSWと呼ぶことにします。
先ほど述べたいじめや虐待、子どもの貧困など、子どもを巡る深刻な事件が後を絶たず、近年、子どもを取り巻く社会の環境が悪化していると言わざるをえない状況です。そのようななか、杉並区が教育と福祉をつなげる取組みとしてSSWを活用してこられたことは全国にも知られ、生活者ネットワークは高く評価してきました。杉並では主に不登校の子どもの対応にSSWを活用していると伺っています。不登校の背景には、子ども自身が抱える問題が原因になることもありますが、親からの虐待や家庭内暴力、精神疾患、薬物依存症、貧困問題、就労問題、知的障がいなど、子ども本人以外の様々な原因となる問題があることが考えられます。その環境に働きかけ、関係機関とも連携をとって解決を図るのがSSWです。このような解決方法は子どもにとって大変有効とされ、子どもを救うためのアプローチとしてSSWの活用は今後、強く求められるものと考えます。

1.では質問です。まず始めに、これまでの区のSSWの活用状況と、現状について、お示しいただきたいと思います。

2. 昨年の私の一般質問で、いじめ対応にSSWの関与を求めた質問に対し「スクールソーシャルワーカーは、児童生徒が安心・安全に過ごせる生活環境づくりのため、児童相談所や関係機関と学校との連携の確保あるいは福祉的援助の必要がある家庭への自立支援の相談などを行っており、必要に応じていじめの事例にかかわることがございます」と答弁されていますが、先ほども述べたように、いじめの解決に向けて、SSWは期待される役割を持った重要な存在であると考えます。区の評価を伺います。

3.日本の子どもの貧困の状況が年々悪化し、2012年の貧困率は16.3%と過去最悪を更新、6人に1人が困窮状態にあります。14年1月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、8月29日に「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定されました。大綱の中には、スクールソーシャルワーカーを、今後5年間に現在の1,500人から1万人に増やすことが盛り込まれています。また8月26日には文部科学省が、来年度いじめなど学校が直面する問題の対策の一環として、全国の公立小中高校に配置するSSWを現在の3倍の約4200人に大幅拡充する方針を固めたとの新聞報道がありました。
このように最近になってSSWの重要性は社会的にも認められ、ますます必要とされる役割となっています。13年度、全国に配置されたSSWは1008名で、その中の8名が杉並区に配置されており、この数は他自治体と比べると群を抜いた多さです。しかも、優秀な人材を採用してこられたことでも杉並は外部から高い評価を受けています。杉並区が早くから進めてきたこの取り組みをさらに充実させていただきたいと思いますが、お考えをうかがいます。

一方、注目されているとはいえ、一般的にスクールカウンセラーに比べるとSSWは、社会的な認知度も活用度も低い状況です。先ほど述べた新聞報道では、SSWの拡充の課題として、人材不足が挙げられていました。SSWそのものは必ずしも資格を必要としませんが、その仕事には高いコミュニケーション能力や人権擁護の意識が不可欠です。現在、人材育成の基盤が十分に整っていない中で、急激に数を増やそうとすることにより、質の担保が後回しになることは避けなければなりません。これから、SSWが他自治体でも需要が増す中、杉並区で経験と実績を培ってきたSSWが杉並区で存分にその力を発揮できるような環境整備をお願いし、私の一般質問を終わります。

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