どの子もその子らしく育つための性の学びと支援について
いのち・平和クラブのそね文子です。質問に先立ち、先日の台風18号によって被災された方々に心からお見舞い申し上げ、すべての人の一刻も早い救済を望みます。
それでは、会派の一員として、どの子もその子らしく育つための性の学びと支援について質問します。
今年8月、大阪府寝屋川市の中学生2人が犠牲となった事件は、容疑者が過去に性犯罪を繰り返していたことが明らかになっています。また昨年3月、川口市で祖父母を殺害し窃盗をはたらいた当時17歳の少年は、幼少時に性的虐待を受けていました。これは最近の例で、少年犯罪に詳しい専門家は、子どもが巻き込まれる深刻な事件の背後には、昔から歪んだ性的環境が影響をおよぼしているケースが多いことを指摘しています。
また近年はインターネット環境が普及したことで、SNS等を利用して子どもが性的情報に簡単にアクセスできるようになり、30年前に比べると今はその機会が600倍と言われています。出会い系サイトやJKビジネスなどを通して、子どもが性的商品にされる被害もあとを絶ちません。一方、子どもが匿名でかけられ、なんでも話していい子ども専用電話では、つながった電話の2割を、性への興味・関心、性行動、性の多様性などを合わせた性に関することが占めているとの報告がされています。特に男子では、この割合が3割以上にも上っています。性の悩みを相談する場がなく、基本的な知識がないために思い悩んでいる子どもが多いということです。
このような状況にあって、性に関する正しい知識を学校で学ぶことは、差し迫った急務であると考えます。子どもが自分で危険を回避し自分の体も心も守るため、そして自尊感情を高め、生きる力を育てるための性教育を区は積極的に進めていただきたいという立場から以下、質問いたします。
まずは小項目の1番目として、小学校や中学校の性教育の取り組みについて伺います。
いま社会に氾濫している性の情報の多くは、女性の人権や尊厳を無視した女性蔑視であったり、好奇心をあおり興味本位の偏ったものだったりしています。そのような環境のもとで、子どもが性的犯罪の被害者になるだけでなく加害者になることもおきています。実際に、子どもが巻き込まれる事件はどの程度発生しているのでしょうか。また、そのような事件を回避するための取組みが必要と考えますが区の認識はいかがか、うかがいます。
私は、有効な予防策のひとつが学校での性教育だと考えます。学校で教えることが重要なのは、どの家庭にももれなく指導でき、子どもが開かれた知識として受け取ることができる、子ども同士でほかの子と同じ情報を持つことで安心感を得られる、などの意味があるからです。性教育は、生きることすべてに関わる教育です。教職員で組織されている東京都中学校性教育研究会が発行した冊子に、「命と人権の未来の教育が本来の性教育のもとになっています」という一文がありましたが、まったく同感です。子どもの身体や心の成長に合わせて、命の尊さ、生きることの意味を考えることを通して、自己の存在を肯定し、生きる力を育てる本来の性教育が行われることを願うものです。
2問目として、学校における性教育がどのように実施されているのか、小中学校それぞれについて概要をお示しください。
学校の養護教員は、保健室に日常的に持ち込まれる性の相談やトラブルに対応する中で、性教育の必要性を強く感じるそうです。しかし、これまで学ぶ機会がなかった性教育の授業を自分が行うことには不安もあり、外部の講師を呼んで授業ができれば助かると聞きました。このような希望に学校は対応しているのでしょうか。NPOなどの出前授業などを取り入れた性教育も必要と考えますがいかがか、3問目としてうかがいます。
ところで、子宮頸がんワクチンの副反応問題についてこれまで取り上げていますが、この接種は初めて性交をする前に打たなければ意味がないとされ、厚生労働省が6年生から対象としたものです。ところが学校で行われている性教育は中学3年が対象です。これでは整合性に欠けると言わなければなりません。
厚労省の統計によると、毎年約2万人の10代の女性が妊娠中絶をしています。子どもの電話相談員から聞いた話では、妊娠して困ってかけてきた高校生から「避妊て何ですか?」と聞かれて耳を疑い、月経の周期や妊娠のメカニズムについてもまったく知識がない子どもの多さに暗澹たる思いがするとのことでした。OECD加盟国でエイズが増え続けているのは日本だけという状況もあります。望まない妊娠もエイズも減らしていかなければなりません。男女ともに性衝動や性的欲求があるのはいのちを繋いでいくために必要で自然なことや、その衝動をどのようにコントロールするかを学んでほしいと思います。
しかしながら、いまの性教育のあり方は、深刻な性犯罪が実際に起きている現実社会にとても追いついていないと感じています。そこで、現在の性教育の課題はどのようなことだとお考えか、学習指導要領や東京都が発行する性教育の手引きに書かれた規定が足かせになっていることは想像がつきますが、あえてその認識を伺いたいと思います。ご答弁をお願いします。
性の情報がインターネット空間やマンガ等に商品として溢れているなかには、「男は男らしく、女は女らしく」という伝統的に押しつけられてきた価値観や、支配する性としての男性、支配される側の女性という思い込みに基づくものが多く、子どもは誤った大量の情報に繰り返し触れることになります。情報に対する批判的な視点を持ち、選択するための判断能力、すなわちメディアリテラシー教育の重要性が高まっています。そして、学校図書館に子どもが手に取れる良質の書籍を置いていただくことも性の正しい知識を得るためには必要だと考えます。見解をおうかがいします。
ここで、民間の団体が行っている「誕生学」という試みについてご紹介したいと思います。区内の小学校などでも保護者の主催により子どもに向けて行われてきたものです。お父さんの数億個の精子の中のたったひとつがお母さんの卵子と出会い、その0.1ミリの受精卵がいのちのはじまりで、お母さんのお腹の中で38週間を誕生に備えて過ごし、いのちの道を通って生まれてきた。自分が尊い存在だと体で実感するのが誕生学です。昨年は区内15校の小学校がおもに2分の1成人式のときの講演会でこの誕生学を実施したと聞いています。保護者の思いで行われてきた講座ですが、参加した大人から、性教育のひとつとして多くの子どもに体験してほしいという声がいくつも届いています。
性教育をとおして、自分の身体は性器も含めてすべて大切、そしていのちを繋ぎ、愛情を表現するための性交や性衝動があることも含め、すべてが尊いということを子どもが理解し、自尊感情を高められる教育を行っていただくよう要望いたします。
次に小項目の2番目として、性教育の担い手について伺います。
多くの教職員が性教育の授業を行うことを難しいと感じるのは、今の大学の教員養成課程に性教育の講座がないのが1番の問題だ、とある専門家から聞き、驚きました。担い手の人材育成が軽んじられていると言わざるを得ません。授業を行う教職員への研修が必要だと考えますが、それはどのように実施されているか、うかがいます。
東京都では、10年前の石原都政の時代に性教育バッシングが起きて授業が困難になり、指導方法の伝承も途絶えて行ったと聞きました。教員同士で学びの継承が必要だと考えます。区の認識をうかがいます。
さて、当然ですが性教育は学校だけで行うものではありません。そこで次に、学校以外の場での学びについてうかがいます。
親のための性教育の講座を行っている子育て支援団体の方の話を聞きました。子どもは小学校入学前から、「赤ちゃんはどうやって生まれてくるの?」とか、「お母さんから生まれる赤ちゃんが、どうしてお父さんに似ているの?」など、素朴な疑問を親にぶつけてきます。それにどのように答えるのか、親が戸惑い悩むとの声は多く聞かれます。講師は、子どもが聞いてきたときに、その子の発達に応じてまっすぐ向き合い答えることが、その後の親子の信頼関係、性の問題で子どもが本当に困ったときに相談に乗れる関係を作るために大切だと話してくれました。
区としても子育て家庭への支援の一環として性のことを子どもの発達段階にあわせ、伝える方法を学ぶ、親のための講座を行ってほしいと考えます。区の考えをうかがいます。
地域の図書館ももちろん有効な学びの場と考えます。YAヤングアダルトコーナーなどで、さりげなく、子どもが手に取りやすいように性のことが学べる本を配置する工夫も必要だと考えますが、いかがでしょうか。うかがいます。
また、先ほど述べたように、保護者に対する性教育の本も充実させていただくことを要望いたします。
つづいて性的少数者、いわゆるLGBTsの視点から質問いたします。LGBTsとはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字とこの4つではない、その他の性の有り様を持つ人たちという意味で使います。
先日、会派の勉強会で性的少数者の当事者から話を聞く機会をもちました。そのお話は「子どものころは男女を意識せず過ごしてきたが、身体に変化が現われるころから違和感を持ち始めた。でも子どもはそれを言葉に出すことも、相談する場所もわからない。中学生になると男女別の制服があり、それに耐えられずに不登校になった。同じ境遇の仲間に会うのは大人になってからで、親を含め長い期間、誰にも話せず、ずっと孤立してきた」ということでした。このような状況を改善したいと思いました。
そこでまず、文科省が今年4月30日に出した通達「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の内容について、それはどのようなものか確認します。また、通達を受けて現場での取り組みが必要だと考えますが、学校現場での取組みについて区教委のお考えを、併せてうかがいます。
当事者の方によれば、もし性的少数者に対して支援する意思があるなら、それがわかるように、その象徴となる虹色のものを身に着けるなどの工夫をしてほしいとのことです。学校内では保健室やスクールカウンセラーのいる相談室にLGBTの説明と共感を示す掲示をすること、来室した子どもの目につく場所に関係書籍を置き、そのことで悩んでいる子どもが相談しやすい環境を整えていただくことが助けになると考えます。学校で対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか、うかがいます。
性教育の授業では、「思春期には異性に興味を持つのは自然なこと」などの表現に当事者は自分が異常なのかと傷つきます。性教育の際には、「多くの人が異性に関心や好意を持つようになるけれど、同性まだは両方の性に好意を感じる人、そもそも恋愛感情や性的欲求をもたない人など多様な人たちがいる」ということを付け加えるなど、指導者には、性的少数者のことも念頭に置いて話していただきたいと思います。
また、テレビでは同性愛者などの性的マイノリティをネタにして笑いをとる番組が多く作られています。それを先生や子どもが学校で口にすることがありますが、それは人権侵害で恥ずかしいこと、傷つく人がいることを意識し、子どもたちにも話せるようになって頂きたいと思います。また、学校図書館や地域の図書館のYAコーナーに性的少数者に関する図書も配置していただくことも
、合わせて要望いたします。
最後に、性についての学びや課題に取組むうえで必要な、庁内での連携について伺います。
最初の質問は、デートDV、恋人同士の間でおきる暴力についてです。ここでこの問題をとり上げるのは、ある調査では、若い女性の4人に一人が経験したと答えているといい、それが性被害と本質的に同じ問題を秘めているからです。子どもが性について正しく学び、適切な情報に接することが、このような問題の未然防止に必要なことだと思っています。デートDVについては男女平等の観点でとらえる自治体が多いようですが、埼玉県の取組みについて紹介させていただきたいと思います。埼玉県では男女共同参画課が「知っていますか?デートDV」というパンフレットをつくっており、それを県内の全中学校に配っているとの話を聞きました。議長、ここで実物をお見せしてもよいでしょうか(と許可を求める)。
こちらになりますが(実物を示す)、モデルとして描かれているのは制服を着た男女で、子どもにもわかりやすい内容です。いくつかの中学校ではこのパンフレットを使って性教育の授業の中で活用しているとの話でした。庁内連携の見本のような例だと思います。
杉並区の男女平等推進センターでは、デートDVの講座を企画したこともあると聞いていますが、パンフレットなどの作成は行っているか伺います。デートDVの未然防止対策として、義務教育で全員の手元にわたる中学校で配布してほしいと思いますが、区の考えをうかがいます。または講師を派遣するなどの連携はとれないか、併せて伺います。
最後は、先ほども述べた性的少数者に関する質問です。
電通総研の今年度の調査では、日本の性的少数者は7.6%存在するという結果が出ています。杉並区にも4万人以上の当事者がいるという計算になります。このうち、性同一性障害を持つ方は戸籍の性と外見が違うことにより区の窓口で苦慮することがあるといいます。改善は計られたと聞きますが、行政書類の本人記載欄には依然として男・女に○をつけるものが存在し、どちらに○をつけるかで苦しい思いを強いられ、トラブルが起こるということです。選挙では、投票所入場整理券からは性別欄が撤廃されていますが、受付でのバーコード読み取り時に、戸籍と見た目の性が違ったため受付担当者が不審がってそこを通過させてもらえず後ろに長蛇の列ができてしまい、本当に困ったという話をうかがいました。このようなことがあるので性同一性障害を持つ方は選挙に行かない人やいけない人が多くいるということです。このような状況を少しでも改善するためには区の職員への研修も必要と考えるところですが、区の考えをうかがいます。
当会派のLGBTsについての勉強会には区職員の方も担当課や関連部署から多数ご参加くださり、貴重な質問もいただいたことを一同嬉しく思いました。渋谷区や世田谷区では、同性カップルを配偶者と同等と認めて証明書や宣誓書を発行するなど独自の取り組みを進め、当事者の人たちに希望をもたらしています。
子どもがきちんと性を学び、大人も一緒に学び直す機会を保障することで、杉並区には性的少数者を含むすべての人が、その人らしい生き方ができるような社会を目指していただきますよう、会派一同要望し、また私たちも協力していくことを申し上げ、私の質問を終わります。