決算特別委員会意見開陳 2015.10.15 いのち平和クラブ そね文子

いのち・平和クラブを代表して、決算特別委員会に付託された2014年度杉並区一般会計歳入歳出決算および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し上げます。
2014年は、少子高齢化が加速する実態を改めて浮き彫りにした年となりました。「団塊の世代」の多くが65歳以上となり高齢者人口が初めて年少人口の2倍を超え、世界で最も高い日本の高齢化率は26%にまで達しました。
高齢者の単身世帯が増加し、認知症高齢者の見守りなど高齢者を地域で支える仕組みづくりが急務であり、持続可能な社会保障制度の確立が正念場となっています。また 、若い世代が働きながら子どもを産み育てられる環境整備や貧困の連鎖を断ち切る取り組みなどあらゆる世代への施策が求められた年でした。

国政に目を向けると、7月に安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、戦争のできる国へと大きく方向転換した年です。憲法で縛られている権力者が、自らその縛りを解いて勝手に憲法解釈の変更を宣言し、国民の議論は置き去りにされました。さらに福島第1原発事故を契機に停止していた原発の再稼働を宣言し、住民の声を無視する形で九州電力川内原発の再稼働準備に舵を切った年でした。一方、法人税減税で大企業は優遇されても、4月実施の消費増税と8月からの生活保護基準のさらなる引き下げは、低所得者にいっそう厳しさを強いることになりました。
国が平和とくらしや福祉を脅かすときに地方自治体の役割が問われた年でした。私たちいのち・平和クラブは区民のいのちと暮らし、平和を守る一点で改選後、新たな会派を結成しました。その立場から2014年度決算委員会の質疑を通して評価する点を以下、申し述べます。

第1に、健全な財政運営を進めた姿勢です。対前年度比で一般財源は約75億円の増加となりました。収入未済額は4年連続で減少しています。持続可能な財政運営を行っていくための指標である経常収支比率は、目標80%以下を達成し、79.8%となりました。 これは一般財源が増加したためですが、人件費や扶助費などの義務的経費やその他経費も増加しています。歳出においては、公園の整備、保育施設の整備、特別養護老人ホーム等や障害者グループホームの整備など、区民生活にとって必要な投資が行われたと認識しています。区長は、行財政改革は、区民福祉の向上のための手段であり、それが目的ではないことを明言していることを評価しています。しかし今後も扶助費やその他の経費の増加は確実であり、区には健全な財政運営のために引き続き努力していただくよう求めるものです。
第2に、田中区長の憲法に対する姿勢です。一般質問への答弁で、「立憲主義は政治の根本であり、政治を志す誰もが従うべきもの」と答えています。本定例会でも、憲法99条で、国会議員など公職にある者の憲法遵守義務を定めていることが強調されました。

第3に、田中区長が自治体の役割を福祉の増進に据えていることです。障がい者施策では全国に先駆けて重症心身障がい児の保育施設実現を支援するなど、拡充が図られました。特に家庭の経済状況によって子どもが不利益をこうむることがないように、貧困の連鎖を断つことに施策を講じた取り組みは大切です。国の生活保護基準の引き下げが、就学援助などに及ぶ影響を考慮し、義務教育における教材等の区独自の一部負担など義務教育保護者負担軽減策を拡大したことは評価できます。

第4に、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)副反応被害者救済への取り組みについて
です。杉並区内に深刻な副反応被害者がいることが明らかになり、区は独自の救済制度をつくって対応するとしました。そして当該年度、初めて区長が被害者を見舞い、一部救済を行いました。今年の9月には国に大きな動きがありましたが、質疑の中で、国の救済が足りない部分は区で責任をもって対応するとの答えがあり、引き続き支援を求めます。
第5に、区民の命と安全を守る責任を果たしてきたことです。災害に強いまちづくりを進め、区内木造密集地域の不燃化対策、緊急車両の入れない狭隘道路拡幅の取り組みなどを評価します。また、南相馬市への支援と、福島を忘れない取り組みを継続し、区政にも生かしてきました。

第6に、教育の独立性・中立性・公正性について、今年4月、国の教育委員会制度の法改定にあっても、区の教育委員会の独立性を明言したことです。教科書の採択にあたってその適切な関わりを確認できました。

その上で、当該年度の予算に対して会派結成以前に要望した課題について、審議を通じて確認できたことを述べておきます。

第1に、施設再編整備計画についてです。老朽化しつつある区立施設全体の建て替えが順次迫られ、一方で40年まえ50年前の時代と大きく変化したニーズに対応することが求められています。それを進めるために、一定の施設再編が必要なことは当然です。
厳しい財政状況の中で、Aランクで約900人の待機者がいる特別養護老人ホーム建設と、待機児童解消のための保育園増設や学童クラブ増設を緊急かつ優先課題に位置づけたことは評価するものです。児童館事業の当初「施設を廃止」とした方針が改められ、児童館事業の継承・拡充の方向と具体的取り組みを確認しました。

審議の中で、子どもが犠牲となる悲惨な事件の頻発を受け、放課後の安全な居場所づくりが再編整備計画の大きな柱に据えなおされたことも評価できます。今後は児童館事業の継続・拡充の核となる仮称子どもセンターのあり方が大きな課題となります。今後、先行事例となる和泉児童館が子どもセンターに転換する際に、学校になじめない子どもたちや中・高生の活動の場を具体的につくることを確認しました。さらに乳幼児親子の居場所事業は子どもセンター14館に加え小学校区単位の身近なところに設置することも確認しました。また小学生と中高生等異世代間の交流や、地域との関わりを今後継承していく方向は確認できましたが、その具体化を改めて求めておきます。学校内に移設された学童クラブの質を担保するためには、事業者選定における保護者や児童館職員の関わりが重要だと考えます。あんさんぶる荻窪の財産交換にあたり、荻窪税務署移転後に空くスペースは、地域の子どもたちが使えるよう、国との交渉をさらに強めるよう求めます。
一方、施設再編整備計画とともに実施された施設使用料値上げと登録団体減額制度の廃止には、今も反対の声が聞かれます。利用時間を4区分に分けたことで、6時から8時の最も需要のある時間帯の利用が高額となっています。3年ごとの検証と見直しを確認しました。

第2に、前区長の行き過ぎた職員削減による定数不足が引き起こした、職員の健康問題です。超過勤務や、長期病欠が心療系や整形外科系に依然として多いことに表れています。当該年度は、必要な職場に職員の新規採用が行われたことを評価し、建築・土木など技術系職員に女性が多くなったことに対し産休・育休代替職員の増員を求めました。

第3に、区に働く2000人を超す非常勤職員と教職員の労働条件の改善です。この間に行われた非常勤職員の一定の賃金アップや労働条件の改善は評価します。5年を超えれば雇止めになる雇用年限制度に、再雇用や正規職への道が一部で開けつつあります。しかし賃金アップが再更新時には継続されない等課題が多く、抜本的見直しを求めます。区の事業を受託する事業所で働く労働者の労働条件に関して、モニタリング制度などを通じ一定の改善が図られてきました。入札制度の公正さや受託事業者の労働条件を保障するための公契約条例制定に積極的な検討を求めます。
第4に、10月実施となった共通番号制度導入における区の取り組みです。住民基本台帳等のシステム改修作業や個人情報保護条例の改定は、法律上やむをえないことだとしても、個人情報保護の重大性に鑑み、番号制度の利用拡大はしないよう、慎重な取り組みを求めます。区の職員のプライバシーと安全を守るために、職員の身分証に番号カードの利用はしないことを求めます。

第5に、今後ますます増加する単身高齢者及び高齢者のみ世帯をはじめ社会的弱者を地域全体でどう支えていくかについては、地域包括ケアシステムの構築に向けた議論の中でもすすめられていくことを確認しました。今後、高齢者や障がい者、子ども・子育て支援などそれぞれの枠組みを超えたまちづくりの視点をもち、フォーマル、インフォーマルな地域資源の横断的な連携による支援体制づくりに期待します。
第6に、男女平等推進施策についてです。新会派として、男女平等推進施策への取り組みの強化と性的少数者への必要な分野での配慮を行うよう求めます。
第7に、杉並の住環境を脅かす外環道などの大型道路建設や鉄道連続立体交差事業に対し、国や東京都に住民の声を伝える役割です。外環地上部街路(外環の2)の必要性の有無から検討を求めてきた区の姿勢を評価するとともに、区として外観の2は必要ないという姿勢を示す時期に来たことを指摘します。

西武新宿線については中井-野方間で地下方式を決定したにもかかわらず、区の西武新宿線沿線まちづくり協議会では構造形式を問わないまま議論を進めています。子どもや孫たちの時代に悔いを残さない安全で豊かな西武線沿線のまちづくりを期待するものです。
第8に、施設一体型小中一貫教育についてです。杉並区の小中一貫教育がめざす連続性と飛躍の方向性は理解します。しかし、施設一体型小中一貫校に関しては、東京都品川区や広島県呉市の先行事例で成功を確認できず、教育的効果については未だ検証されていません。区で先例となる新泉・和泉小中学校が開校し半年が経過しました。区がPTAなどの学校関係者や地域と10年近く話し合いを重ねてきたことでようやくPTAや地域の理解を得ました。しかし、施設一体型の行事のあり方などの課題もまだ残っています。小中6・3制は、6年生が最高学年としての自覚を持ち成長が促されることから専門家がその意義を認めています。和泉学園の検証をしっかり行い、今後、施設一体型一貫校を基本として拡大するのではなく、地域の実情に応じたありかたを検討するよう求めます。
図書館の全面改修は、2013年3月に制定された杉並区図書館サービス基本方針に基づき計画されることを確認しました。計画の検討にあたり利用者懇談会を開催しひろく区民の意見を聞くこと、図書館協議会や図書館職員、図書館の専門的知見を活かすよう求めます。

以上の評価と要望を申し上げ、認定第1号杉並区一般会計歳入歳出決算、認定第2号国民健康保険事業会計歳入歳出決算、認定第3号介護保険事業会計歳入歳出決算、認定第4号後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算、認定第5号2014年度杉並区中小企業勤労者福祉事業会計歳入歳出決算については賛成といたします。
終わりに会派の資料請求に誠実に応えていただいた職員の皆様に深く感謝申し上げ、いのち平和クラブの意見といたします。

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