第4回定例会一般質問と答弁 2017.11.17奥田雅子

<地域共生社会の実現に向けて>

【Q1】 〇対象の属性に関わりなく、複合的な課題に対する分野横断的な福祉政策、地域施策が求められると考えられるが、このような国の法改正の動きに対しての区の認識を伺う。

〇地域共生社会の実現は、一つひとつの事例を積み重ねながら実態を作っていくことが必要である。漠然としている上に画一的な形があるものではないため、より自分の暮らしに引き寄せたわかりやすいものであることが必要である。地域に即した戦略が必要ではないか。行政、地域包括、社協がスクラムを組み、地域住民、地縁団体、市民活動団体と連携しながら地域づくりをすることに対する区の見解を伺う。
〇最後に、地域共生社会の実現に向けた区の意気込みを伺う。

【A1:区長】  最近、私の身近でも、議員ご指摘の高齢者の一人暮らしや老々介護、ダブルケアなどで悩んでいるという声を聴くことが増えた。一方、区内では、助け合いやつながりの重要性に気づき、家事援助や病院の付き添い、サロンのような居場所づくりなどの多様な組織や団体等による助け合いの活動が広がっている。

私は、国が地域共生社会という概念を前面に出した法改正を行ったのは、福祉ニーズの多様化、複雑化に対して、従来の制度ごとのサービス提供では対応しきれなくなっていること、人間関係の希薄化から生じる様々な課題が表面化していることが、背景にあるものと認識している。

このことを踏まえ、区としては分野を横断する包括的な相談支援体制づくりを進めるとともに、多様な主体との協働や区民による支えあいの仕組みづくりを推進することが重要な課題であると考えている。

包括的な相談支援体制づくりの第一歩としては、来年度開設する在宅医療・生活支援センターが、高齢、障害、子どもなど分野ごとの相談機関に対し、分野を超えた関係機関との調整や専門家による助言などを通じて支援する役割を担うことになる。

また、支え合いの仕組みづくりについては、区内で、見守り、移動サービスなどを行っている様々な団体がこれまでに行ってきた、地域に潜む特有の課題の共有や地域での対応策の検討などの取組を、さらに広げていくことから進めていく考えである。

こうした取組を着実に進めることで、地域の事業者や団体、ボランティアの皆さんとともに、区民の様々な課題を解決していける地域共生社会を目指す所存である。

【Q2】〇今回、地域福祉計画の策定が努力義務化とされたことを受け、保険福祉計画と地域福祉計画の関係と定め方について伺う。

〇地域福祉計画は、社会福祉法の改正趣旨を踏まえて策定を行っているのか。また、策定にあたり、参考にした自治体があるか、他自治体の動向について伺う。

〇庁内でも所管を超えて連携することが求められるが、地域共生社会の取組について、どのように議論・共有が行われたのか伺う。

【A2:保健福祉部長】 まず、保健福祉計画との関係等、地域福祉計画策定の考え方であるが 地域福祉計画は、現行計画と同様に、保健福祉計画に包含させる形で案を策定することとし、今回の社会福祉法の改正趣旨を踏まえ、保健・福祉全般に関して共通して取り組む事項を示すものとする考えである。具体的には、実行計画の「地域福祉の充実」の施策を構成する計画事業をはじめ、地域の高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉等に関して共通する相談体制の充実や地域福祉活動への参加促進などを定めている。

また、他自治体の動向及び参考にした自治体については、都の調査によると、これまで23区中13区が、今回の法改正の趣旨を踏まえた改定等をしており、検討にあたっては計画の柱となる考え方などを参考にした。

次に、地域共生社会の取組についての庁内での議論・共有については、厚生労働省の地域共生社会に向けた取組を所管する室長を講師に招き、「制度の縦割りを超えた包括的支援体制について」と題した部内の勉強会で、理解を深めたほか、高齢、障害、子どもの各分野の計画改定の作業部会においても、社会福祉法の改正の趣旨等を踏まえた検討を行ってきた。

また、来年度春に開設する在宅医療・生活支援センターで取り扱う困難事例への対応の実務的な検討においても、組織横断的な包括的支援体制のあり方について、議論を深めたところである。

【Q3】 第7期介護保険事業計画は高齢者保健福祉計画と一体的に策定するとなっているが、これまでの介護保険事業計画との違いはどこか。その扱いとなった経緯は。

【A3: 高齢者担当部長】 これまで老人福祉法に基づく老人福祉計画と介護保険法に基づく介護保険事業計画は、保健福祉計画に包含していたが、今回から、改定する保健福祉計画との整合を図りながら高齢者福祉分野の計画として策定することとした。これは、「地域包括ケアシステムを強化するための介護保険法等の一部を改正する法律」により社会福祉法が改正されたことにより、地域福祉計画が各福祉分野の計画の上位的な概念で位置付けられたこと等を踏まえ、高齢者福祉分野の個別計画として策定することとした経緯からである。

【Q4】〇地域福祉計画は、どのような手法で、どのくらいの期間をかけて策定したのか伺う。

〇地域住民や社会福祉事業者などへのアプローチについては、具体的にはどのような形で行われたのか確認する。また、区民の生活実態やニーズを把握するためのアンケート調査のようなことは行ったのか伺う。

【A4:保健福祉部長】地域福祉計画の策定の手法及び期間、事業者等の参画に関して、保健福祉計画の改定の基本方針を本年1月に策定し、それに基づき、地域福祉に関係する部署で構成する作業部会において検討を進めてきた。

検討に当たっては、作業部会の際に、杉並区社会福祉協議会と公益社団法人杉並区成年後見センターから意見聴取を行ったほか、民生児童委員会長協議会などの機会を捉えて、民生児童

委員から現状における課題等を伺ったり、地域で活動している様々な団体から個別に現場での課題をヒアリングするなどして、計画策定の参考にさせていただいた。

また、区民の生活実態やニーズについては、区民意向調査の結果のほか、民生児童委員の活動状況報告等をもとに把握したところである。

【Q5】現在、区が把握している制度の狭間の問題には、どのようなことがあるのか

【A5: 在宅医療・生活支援センター開設準備担当部長】  制度の狭間については、厚生労働省の「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部から出されている資料や議員ご指摘の地域力強化検討会の資料のなかで「公的支援制度の受給要件を満たさない」ケースについて「制度の狭間」と説明している。区においても、障害が疑われているが受給要件を満たさないため障害者手帳を取得しておらず、障害福祉制度等を活用することができないケースや、近隣との関係もなく、家の中にごみをため込み近隣に悪臭や衛生上の問題が発生しているにも関わらず、そのことを問題と認識していないケースも含まれると考えている。

【Q6】〇現在の区の地域割りは、地域区民センターや町会、民生委員、地域包括支援センター、小・中学校などが必ずしも一致していないが、そのことによる弊害はないのか。地域づくりを進めるための圏域の考え方については整理しておく必要があると考えるが、区の見解を伺う。

【A6: 在宅医療・生活支援センター開設準備担当部長】  議員ご指摘の通り、それぞれの担当するエリアは、必ずしも一致していない状況がある。

これは、歴史的な背景やその役割等によって定められてきた経緯もあり、一致させることは難しい面もあるが、これまでも、活動の状況に合わせ、整備を図ってきた。今後も個別具体的に関係者の話を伺いながら、目的や実情に応じて、改善を図っていく。

【Q7】〇さまざまな問題を抱えた方の支援を連携させようとした時、個人情報の保護に配慮することが支援の障壁や妨げになることがあるが、福祉的支援が最優先すべき場合があるため、その当事者の最善の利益を考えた支援を行いやすくするために、個人情報の扱いについて整理しておくことが必要だと考えるが、区の見解を伺う。

【A7: 在宅医療・生活支援センター開設準備担当部長】 支援を行うにあたっては、支援機関が保有する個人情報を機関間で共有することが必要な場合があり、その場合は個人情報保護の観点から、情報の取り扱いに配慮する必要がある。しかし、一方で、議員ご指摘のように、個人情報の保護に慎重を期することにより、現場での支援の障壁や妨げにならないように考慮することが必要である。

個人情報保護に関する法令や条例等の定めを遵守し、業務ごとに想定される個人情報の取り扱いを整理して、支援対象者本人に対する最善の支援が行えるよう、進めていく。

【Q8】 区では、この包括的な支援体制の構築をどのように進めていこうと考えているのか。また、連携していく分野をどこまでを想定しているのか伺う。

【A8: 在宅医療・生活支援センター開設準備担当部長】  障害者地域相談支援事業所である「すまいる」や、ケア24などの地域の相談機関では解決困難な事例などについて、2018年4月に開設する在宅医療・生活支援センターを核として、専門家の助言等を踏まえながら関係機関と連携して支援する、包括的な支援体制を構築する。連携していく分野については、福祉、医療、環境など区民の暮らしを支える全ての分野を想定している。合わせて区全体の相談支援の質を向上させるため、センターが相談事例に関する調査分析や事例検討、研修等を実施することで、包括的支援体制の一層の充実を図る所存である。

【Q9】〇杉並区社会福祉協議会では、小地域の活動が弱いように感じている。区においても社協に対し地域福祉活動計画の策定を促し、区の地域福祉計画を共にすすめるパートナーに位置付けるべきではないかと考える。区として社協に期待する役割について伺う。

〇ボランタリーな市民活動の最初の一歩支援や地域でのサロンや居場所などを提供している活動を継続させる支援が今後ますます求められていく。行政ができない部分を地縁団体だけでない区民が担うことで地域を元気にしていくたまえの支援を検討すべきと考えるが、区の見解を伺う。

【A9: 保健福祉部長】 区としては、既存の様々な地域における活動が広がり、つながりが深まることで、お互いに支えあう仕組みが充実し、「制度の狭間」の課題などへの対応力が高まっていくものと考えている。地域の様々な社会資源とのネットワークを有している社会福祉協議会には、地域における福祉活動の中心的な役割を果たすことを期待している。

また、区との関係については、現在改定中の保健福祉計画に、社会福祉協議会の取組を反映させる予定であり、区と社会福祉協議会が車の両輪となり、地域福祉の増進に取り組んでいく考えである。

なお、地域福祉活動計画についてであるが、現在、社会福祉協議会では、地域共生社会づくりに向けて学識経験者の意見も聴きつつ、計画策定を含め検討していると聞いている。

次に、地域団体の活動に対する支援についてであるが、区においてはNPO支援基金や長寿応援ファンドを活動し、NPOや地域団体による活動の立上げや充実など、主体的な地域活動を支援している。

また、社会福祉協議会においては、高齢者や子育て中の親子が気軽に集えるきずなサロンの運営支援をはじめ、ボランティア活動に関する相談や活動先の紹介を行っているほか、すぎなみ協働プラザでは、NPO等の立上げ支援も行っている。

今後も、これらの様々な取組を総合的に行うことにより、地域団体ならではの活動が活性化していくよう、支援していく。

【Q10】7つの地域区民センター協議会は、それぞれの地域にある地縁団体やNPOなどの市民活動団体との連携・協働を深めつつあると認識している。地域づくりにおいては地域区民センター協議会が役割の一つを担うべきと考えるが、今、力を入れていることや課題となっていること、今後の課題についての区の見解を伺う。

【A10: 区民生活部長】 現在、各地域区民センター協議会では、ふれあいと交流を基本に地域コミュニティ形成を図るとともに、地域課題の解決を図るための講座やイベントなどの実施に取り組んでいる。

そうした中、特に地域で活動するさまざまな団体が相互に意見交換することで、団体間のゆるやかなつながりを育み、連携を強化するための地域懇談会の開催などに、力を注いでいるところである。

次に、今後の課題についてであるが、地域の多様な団体が相互に補完し合い、それぞれの強みを生かしながら地域づくりを進められるよう、これまで取り組んできた様々な団体との協働事業を、より一層充実していくことなどである。

Comments are closed.