第3回定例会一般質問と答弁 2018.9.13奥田雅子

<ケアラー支援の取り組みについて>

Q1】ケアラーが健康でその人らしい生活が送れるように、支援の在り方を分野横断的に議論することが求められていると思うが、区の考えと今後の展望について伺う。

【A1 区長】 ケアラー支援という言葉で質問をいただいているが、私からは介護者支援の在り方としてお答えする。
奥田議員より「お孫さんが祖母の介護で友達や学業、仕事などを犠牲にされた事例」の話があったが、これまで私も、親の病気で子どもが介護や家事をせざるを得ない状況になっている事例があるという話を耳にすることがあった。

この間、区では緊急ショートステイ事業や介護者ヘルパー派遣など、高齢者や障害者など介護者支援のサービスを充実してきた。

しかし、昨今の晩婚化による出産年齢の高齢化や核家族化などの社会状況の変化を踏まえると、議員のご指摘のとおり、なお一層、高齢者から障害者、子ども分野などで、介護者支援について、幅広く議論を深めていく必要があると認識している。

これまでも、在宅医療・生活支援センターでは、複合的な課題を持った事例に対して、支援会議で分野横断的に対応策を検討し支援してきたが、今後は、この支援会議において、介護支援等も十分念頭におき、検討を進めていく。

こうした事例を丁寧に積み重ねながら、介護される側も介護する側も、健康でその人らしい生活が送れるよう、区としても介護者支援等に総力をあげて取り組んでいく。

Q2】 杉並区の介護者支援事業はどのようなものがあるか。またその目的について伺う。

【A2】 高齢者担当部長】 家族介護者支援事業には、身体的負担の軽減を目的とした、「介護用品の支給」や「ほっと一息、介護者ヘルプ」、精神的負担の軽減を目的とした、「認知症高齢者家族安らぎ支援」や「介護者の心の相談」事業、予期せぬ事態等への対応として、「緊急ショートステイ」と「徘徊高齢者探索システム」がある。そのほかに、介護の知識や技術の習得を目的とした「家族介護教室」などがある。

Q3】 緊急ショートステイの利用手続きについて、介護者が区の窓口に来られない事情がある場合の対応はどうなっているのか。また、家族介護者以外の第3者でも可能か伺う。

緊急ショートステイをスムーズに利用できるよう手続きの改善が必要だと思うが、区の見解を伺う。

【A3 高齢者担当部長】 入所手続きは、区の窓口に来所いただくか、電話とファックスにより行っており、高齢者の日常生活の状況等がわかる方であれば、ケアマネなど第三者でも可能である。

また、手続きについては、これまでに、家族介護者のご要望を受け、前日まで申し込みを受けるよう改善を行った。

なお、添付書類の日常生活動作調査票とケアプランは、受け入れ施設の態勢や高齢者の安全を担保するために必要であり、引き続きお願いしたいと考えている。

今後も家族介護者のご要望に耳を傾け、利用しやすい事業となるよう努めていく。

Q4】 認知症高齢者や寝たきり高齢者などを介護している家族介護者は、容易に外出して相談する機会が少ない。ケアラーズカフェを出前するようなサポーターの訪問などの仕組みを取り入れ、家族介護者を支援すべきと思うが、区の見解を伺う。

杉並区は早期から介護者支援に取り組んできたと評価するが、現行の仕組みの中で課題は何か伺う。

厚労省が発行した「家族介護者支援マニュアル」に「介護者本人の人生の支援」というサブタイトルが入ったことは画期的である。区はこのマニュアルをどう受け止め、活用していくのか伺う。

【A4 高齢者担当部長】 家族介護者の支援のため、様々な事業を展開しているところであるが、高齢者虐待が増加傾向にあるのが実態である。虐待の多くは、介護疲れによるストレスの蓄積、介護の知識や技術の欠如などに起因しているものだが、認知症高齢者の増により、介護のために外出しづらく、孤立しがちになっている介護者が増えていることが、虐待件数の増加の大きな要因になっていると考えられる。

このため、高齢者とその家族がお互い尊重しながら暮らせるよう、孤立しがちな介護者に必要な情報を届け、介護による心身の負担を軽減するための支援の充実が課題となっている。

この中で、提案の容易に外出できない介護者や相談の場のない介護者をボランティアが訪問することも、有効な支援策と考えている。

さらに、働きながら親の介護をしている子は、時間に余裕が持てず、介護のため自分の楽しみや時間を犠牲にしたり、離職を余儀なくされている例も増えている。

今般、厚労省が発行したマニュアルで示された、介護者の望む人生をも支援するという視点は重要なことと捉えており、今後その視点を踏まえた支援を具体化していくことが、新たな課題であると考えている。

Q5】 介護者の心の相談は、臨床心理士に相談ができ、好評だと聞いている。相談終了後に臨床心理士が地域のケアラーズカフェにつなぎ、介護者支援が継続できた事例があると聞くが、実情について伺う。

【A5 高齢者担当部長】 介護者の心の相談事情についてだが、家族介護者や介護職の精神的健康の支援や離職防止などを目的に平成21年から実施しており、現在、臨床心理士1名が相談業務を担当している。ご指摘の事例は、相談員が地域のケアラーズカフェの情報を提供したことで、介護者が継続的に支援を受け、心の支えを得ながら介護を続けることができているというものである。

今後も、継続的な支援が必要な介護者に対し、ケアラーズカフェなどの地域資源も含め、必要な情報を適切に提供していく。

Q6】 ケアラーは自分のことを後回しにしがちである。家族ケアラーの健康調査も必要ではないか。また、要介護者の支援に入る際に家族介護者の状況に目配りし、必要な支援につなげられる専門員の配置やアセスメントを検討するべきと考えるが、区の所見を伺う。

【A6】 高齢者担当部長】 健康状態については、杉並区高齢者実態調査において、経年的に把握しているところであり、「よい」「まあよい」を合わせた割合は徐々に増えている状況だが、今後も健康状態の把握を続けていく。

また、専門員の配置等についてだが、家族介護者の状況に目配りし、必要な支援につなげる役割は、ケアマネジャーが担うものであり、ケアプランは介護者への支援も含めて作成することが求められている。今後もケアマネジャーの家族支援の質の向上を図ることで対応していく。

Q7】 杉並区においてもヤングケアラーが存在していると考えるが、区のヤングケアラー問題の認識について伺う。

【A7 保健福祉部長】 これまでも、区の子ども家族支援センターや在宅医療・生活支援センター等における様々な相談を通して、子どもが自らの学習や生活よりも、保護者に対する介護や支援を優先せざるを得ない状況になっているケースを把握することがあった。

高齢化が進む中で、今後は、同様の相談が増えてくると予想される一方で、そのような状況にある子どもは周囲から見えにくい存在であることが多いとも言われている。

従って、区としては、各種相談部門の職員が、研修等を通して、「家族の中で介護を担う子ども」に関する理解を深めるとともに、家族の介護等の背景に同様な問題があり得ることを十分に意識して相談対応に当たるよう、努めていきたい。

【Q8】 ヤングケアラーは、遅刻や欠席、忘れ物が多い等、子どもの学校生活への影響が顕著となっている。学校では、このような子どもがいた場合、どのような対応をしているのか伺う。

子ども達に一番身近に接する小中学校の教職員やSSWに対して、ヤングケアラーの存在を前提にした内容を研修に盛り込むことも必要と考えるがいかがか。また、その上で実態把握に努めるべきと考えるが区の所見を伺う。

【A8 教育企画担当部長】 子どもたちの抱える課題は不登校やいじめなどの自分自身にかかわることや、暴力や虐待、生活困難などの家庭状況に起因することなど様々である。学校においては、子どもの行動や表情、服装や健康状態等の変化や子どもとの日常的なコミュニケーション等を通して、様々な視点から実態把握に努めている。こうした実態をもとに、学級担任だけでなく、管理職や養護教諭、スクールカウンセラー等で構成される校内委員会において対応方針を明確にし、家庭とも密に連携を図りながら対応している。特に、家庭環境が影響し、学校生活に様々な影響を及ぼしている場合には、スクールソーシャルワーカーや子ども家庭支援センター、福祉事務所等の関係諸機関につなげ、子どもが安心して学校生活を送ることができるよう支援している。

研修については、これまでも、子どもたちの実態を把握し、問題の早期発見、早期対応、保護者や関係機関等との迅速な連携等について実施してきている。今後は、これらの研修において、学校生活に顕著に影響を与える要因の一つに「家族のケア」があることを示し、各学校が、的確な実態把握のもと、保護者や関係機関と連携した対応ができるように支援していく。

Q9】 杉並区におけるダブルケアラーの実態をどう認識しているのか。在宅医療・生活支援センターで取り組んだ実績はあるのか。ある場合にはどのような対応をしたか伺う。

【A9 保健福祉部長】 先ず、区におけるダブルケアの実態であるが、委員ご指摘のとおり、晩婚化やそれに伴う女性の出産年齢の高齢化等の背景から、今後益々増えていくものと捉えている。このことから、区としては、まずは、子育てと介護の制度の縦割等による問題の解決を図るなどのダブルケア支援に総力あげて努めていかなければならないと認識している。

次に、ダブルケアの実績については、子ども分野、高齢者分野等の各窓口において、複数の相談を受け付けているが、より困難事例を所管する在宅医療・生活支援センターにおいて、1件となっている。

当該センターの対応についてであるが、子ども、障害、高齢者の各分野の相談機関等を一堂に集め、支援計画を作成するための会議を開催している。子育てと介護の各分野においては、作成された支援計画に基づき、適切な支援を進めているところである。

Q10】 京都府が「仕事と子育て―両立支援ガイドブック」を作成し、介護や子育てをしながら仕事を続けていくための必要な情報がまとめられている。区も分野を超えた情報を一元化した媒体を作成すべきと考えるが所見を伺う。

【A10保健福祉部長】 現在、高齢者、子育て、障害者担当の窓口では、その相談内容によって他の窓口への案内が必要なときには、他の分野とも連携し、丁寧に対応しているところである。

また、仕事と介護・育児の両立が必要な方に、必要な情報を伝えるための媒体の充実は、サービスの量や質の充実とともに大切な取り組みであると認識している。

ご指摘のあった介護や子育て等、分野を超えて一元化した媒体の作成については、区としても必要であると認識しており、他自治体の取組などを調査、研究し、工夫していく。

Q11】 区内にはケアラーズカフェ、子ども食堂、サロンなど多様な地域資源がある。このような活動・事業について把握しているか伺う。また、これらの地域資源と連携、支援しながらの地域づくりを進めることが重要と考えるが、区の見解を伺う。

これら区民発の居場所事業等への具体的支援策について区の所見を伺う。

【A11 高齢者担当部長】 区内サロン等の地域資源について、区は介護者団体やケア24、社会福祉協議会などを通じて随時、把握に努めているところである。また、ケア24ではサロンやカフェなどの運営団体と連携して支え合いの地域づくりを進めているところだが、今後の地域包括ケアシステムの深化・推進に向けて、こうした運営団体と区及びケア24が、地域の課題を共有し共に対応策を考える関係を築くことは、益々重要なものになると考えている。

次にサロン等の継続に向けた具体的な支援策についてだが、これまでも高齢者を支援する事業、活動等をまとめた「杉並区生活支援サービス・活動紹介BOOK」において、担い手を募集している団体を案内している。今後も、ケア24のたより等において、スタッフやボランティアの役割を紹介するなど、人材の確保のための支援の充実を図っていく。

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