第1回定例会一般質問 そね文子2019.2.15

区立施設の省エネ性能を高め、自然の恵みを活かす取り組みについて

いのち・平和クラブの一員として、区立施設の省エネ性能を高め、自然の恵みを活かす取り組みについて一般質問いたします。

2018年の夏の平均気温は平年より1.7度高く、1946年の観測開始以降最も高くなりました。特に東京はヒートアイランド現象が加わり2017年までの100年で3.2度上昇しています。熱中症による死亡が相次ぎ「災害級の暑さ」という表現は流行語となり、杉並区でも強力な台風によって大木が根元から何本も倒されたことは記憶に新しいところです。このような現象を見るにつけ、温暖化による気候変動が現実の脅威となって私たちのすぐそばまで迫ってきているのを皆さんも実感しているのではないでしょうか。

区は2019年度の予算を「新たな時代に安全・安心を貫く予算」と名付け、区民の暮らしの安全・安心の向上を、時代を超えて不断に貫いていくとしており共感するところですが、それは私たち人類が暮らし続けられる地球環境があってこそだと考えます。そのための温暖化対策を最重要課題と考えて質問いたします。

パリ協定に参加し温暖化防止に取り組むとする国や東京都は、公共建築物のZEB(ゼロエネルギービル)化を政策に掲げています。ZEB化とは建物の省エネ性能を高め高効率の設備を入れることで消費するエネルギーと作るエネルギーの収支がゼロとなるようにめざす取り組みのことを言います。

環境省や経産省は、環境負荷の低減とサステナブルな社会の実現、エネルギー・セキュリティの向上 、健全な省エネ、創エネ産業の発展と日本の気候風土をふまえた技術の輸出による世界貢献などの目的で、ZEBへの補助金を出しています。このことは、とても大切な考え方だと思っています。

施設再編整備計画に基づき老朽化した施設の建て替えを進める当区でも、新たに建てる建築物の省エネ性能を高め補助金を活用してゼロエネルギービル建設にも取り組んでいただくことを要望いたします。

昨年12月5日、私を含め超党派の議員が呼びかけて、住宅性能評価表示制度創設などに関わった高橋彰氏を講師に招いて行った「公共建築の省エネ性能に関する学習会」には議員だけでなく多くの区の職員の方たちも参加され、この問題に関心を持たれていることがわかり心強く感じました。その学習会で学んだことは、建物の断熱・気密を最も重視し外皮性能を高めることにより、建物のメンテナンスを最小限に抑え、更新期間が短いエアコンなどの設備を最小限に抑えて、ランニングコストを低くすることが最も効率がいいということです。

  • この学習会を開くきっかけになったのが、田中信一郎さんという、長野県の職員時代に環境部環境エネルギー課で戦略的な取り組みを行い、長野県で住宅の省エネ改修サポート制度などを立ち上げた方による講演でした。現在、自治体での持続可能な地域づくりのサポートを行っておられる田中さんによれば、建物の効率的なエネルギー性能を次の優先順位で検討することが決定的に重要であると言います。1番は断熱:熱を通さないこと、2番目は気密:空気の漏れを防ぐこと、3番目は、夏と冬の日射角度を考慮した日射コントロール:、4番目が24時間の熱交換換気、5番目が通風:窓を開けたときの風の通り、6番目がエアコンやLED電球などの設備、7番目が再生可能エネルギー熱利用、8番目が再生可能エネエネルギー発電、となります。まさに12月の学習会でも同じことが述べられ、私も大いに賛同するものです。今後区がつくる公共施設は、この方針で建築に取り組んでいただきたいと思いますがいかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 

  • 建物の費用対効果は、建築費などのイニシャルコストと建物の維持管理にかかるランニングコストを加えたトータルコストで考えることが重要です。昨年改定された杉並区の区立施設再編整備計画第一期第二次実施プランでは構造体が健全な建物については定期的な修繕などを行い、改築時期を築80年程度まで伸ばすことなどにより、財政負担の平準化を図るとしています。施設の長寿命化を図り長期的に活用していくためにも、先ほど述べた建物の効率的なエネルギー性能の優先順位の考え方を参考にしていただき、躯体の断熱・気密性能にコストをかけて建設をし、光熱費、エアコンやLEDなどの設備の更新にかかる費用を抑える設計にした場合と、躯体性能を安く抑え光熱費や設備更新に費用をかけた場合のトータルコストで、コストの低い方を選ぶことが必要だと考えますが、区の見解をうかがいます。

 

  • 先ほどの順番では8番目となり重要度が低いとされた太陽光発電についてですが、都会で唯一発電できる仕組みです。再生可能エネルギーの活用は災害時の電源確保にもつながる重要な取り組みで、普及啓発の意味も込めて公共建築物には太陽光発電を設置していくべきと考えますが区の見解をうかがいます。

併せて、ビルの省エネ性能や太陽光発電システム、現在の発電状況など区民に区の省エネと再生可能エネルギーへの取り組みが学べるような見える化を行っていただきたいと考えますがいかがでしょうか、うかがいます。

 

個別の取り組みについてもうかがいます。

  • 昨年10月に行われた決算特別委員会で、阿佐ヶ谷地域区民センターの移転改築についてとりあげ、省エネ建築の具体的な取り組みについて質問したところ、2015年に制定された建築物省エネ法に基づき外壁や空調など建物全体でエネルギー消費を抑えられるよう設計しているということでした。しかし具体的な数字をうかがうと、床面積が現在の1.6倍となるのに対し、年間の光熱水費は現在の約790万円が1500万から1800万程度になることを想定しているということで、光熱費が1.9倍から2.3倍になっていることには納得が行きません。この設計については改めて建物の省エネ性能を高める視点を持って見直しをしていただきたいと考えます。断熱・気密は十分に行ったのか。断熱性能の一番低いアルミサッシの窓を入れるのではなく、イニシャルコストが上がっても断熱性能の高い樹脂サッシの使用を検討する。庇やルーバーで日射コントロールはできないか。再検討していただきたいと思いますが、区の見解をうかがいます。

 

建物の断熱性を高めるのに最重要なのが、最も熱の出入りが多い“窓の断熱性能”を高めることです。樹脂サッシの窓については、これまで住宅用のものだけでビル用の商品がない状況でしたが、ここ数年で日本でも生産されるようになりました。今はまだ割高ですが、積極的に取り入れコストが下がり使用しやすくなることで、日本の建築物の断熱性能が全体に上がることが期待できます。樹脂の熱伝導率はアルミの1000分の1です。窓は更新が必要ないので、一度取り付ければ建物の性能という資産になります。また海外の石油や石炭にではなく、日本国内のメーカーにお金が流れるという経済効果も期待できます。このように社会全体にとっていくつものメリットがありますので、その点も考慮して選択していただくよう要望いたします。

 

  • 東京都は、公立学校の体育館への空調設備の設置とその効果を高めるための断熱工事に補助することを決めました。当区では区立小中学校の体育館は震災救援所になっています。子どもの学習環境を改善すること、震災が起きたときの体育館の暑さ、寒さ対策は意義あることだと考えます。しかしまったく断熱が施されていない、隙間だらけの体育館内を強力にエアコンで温度調節しようとすれば、室外機からの排熱により、付近のヒートアイランド現象を助長させ、温暖化に拍車をかけることになります。東京都の補助金は設備の設置と省エネ改修が対象であると聞いていますが、具体的な使用割合などは決まっているのでしょうか。具体的な補助金の内容についてわかればお示しください。

 

断熱改修は建物の劣化を防ぐ長寿命化の側面も持っています。断熱改修することでエアコンの設備を最小限に抑えるために本来はエアコン設置と両方をセットで行うことが必要だと考えます。世田谷区では中学校で学校施設を長寿命化する際に省エネ建築も取り入れた改修を行った結果、真夏の体育館の温度が3度から5度下がったというデータが出ているそうです。区でもこのような方法での取り組みも検討していただくよう要望いたします。

 

昨年は、猛暑のなか、校外学習に出た小学1年生の子どもが、熱中症で命を落とすという後悔してもしきれない事故が発生しました。また杉並区内でも中学生が部活中に熱中症にかかり救急車が出動する事態が起こったとも聞いていますが、それはいずれも屋外で起こった事故でした。体育館でエアコンをかければ室外機からは常に強力な熱風が吹き出し、屋外の温度を上昇させます。どんなに暑くても屋外で活動しなければならない人たちがいることも考慮して、どのようにエアコンを使用するのか考えていただきたいと思います。

 

ここで区立施設に多くの割合を占める学校のエコスクールの取り組みについても取り上げたいと思います。

  • 区のホームページには「杉並区版エコスクール」は、(1)屋上や校庭の緑化、太陽光発電などの「環境負荷を可能な限り抑制した学校施設づくり」に加え、(2)省エネ・省資源、リサイクルなどの「環境にやさしい学校運営」、(3)児童・生徒をはじめ、家庭・地域の人々を含めて行う「環境教育の実施」、の三本柱により進めるものです、とあります。

 

2012年にエコスクール事業検討委員会がこれまでの取り組みと、今後のエコスクールのあり方を報告書としてまとめており、目的を学習環境の向上を図るとともに、地球環境問題への取り組みを学校が核となって子どもだけでなく大人にも広げ、区民の省エネをはじめとする環境意識向上につなげていくこととしています。これが杉並版エコスクールの考え方と方向性を示す最新のものと考えてよいのでしょうか、伺います。

 

  •  エコスクールの考え方、目的には大いに賛同し、進めてほしいと考えます。しかし、12年度に報告書をまとめた後は学校アンケートや進捗状況を示す報告書は出されていません。この取り組みがどのように進んでいるのか現状を伺います。学校にアンケートをとり継続的に報告し、区民にも見える形で積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、区の見解をうかがいます。

 

  • さて、杉並版エコスクールでは、現在設置が行われなくなった設備がいくつかあります。外気に比べて夏は涼しく、冬は暖かい地中熱を利用して行う空調設備、クールヒートトレンチや夜の涼しい外気を取り入れて室内を冷やすナイトパージなどは最適な形で現在も使われているのでしょうか、現在ある設備は最大限に活用して省エネの運用に努めていただきたいと考えますが、現状を伺います。

 

  • 国では文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省が連携して、市区町村がエコスクールとして整備する学校を「エコスクール・プラス」として認定する制度があり、その認定を受けると学校施設の新築、増築、改修する際に補助金等を受けられるしくみがあります。そのメニューには雨水利用も含まれていますが、杉並版エコスクールメニューの中に雨水利用が入っていません。これまでも学校では雨水流出抑制対策として雨水の貯留と利活用を進めてきたと認識しています。これも自然の恵みを利用した杉並版エコスクールメニューにもプラスされるべきものだと考えますが、区の見解を伺います。また、太陽熱温水器についても国のメニューにはあるのに、杉並区には入っていません。学校は給食室が設置されており、大量にお湯を使う施設です。太陽エネルギーを電気や温水に変える「変換効率」は、太陽熱温水器が優れており、太陽光発電が7~18%であるの対し、太陽熱温水器は40~60%と言われています。(シンプルで非常に)効率がよく安価な太陽熱温水器の設置は数年で設置費用が回収できる有効なものではないでしょうか。太陽熱温水器の設置を杉並版エコスクールのメニューに加え、積極的に設置していただきたいと考えますが、いかがでしょうか、伺います。

 

  • 小学校や中学校でエアコンがついているのに教室の扉や窓、昇降口が開いている、温度を下げすぎて寒い、使わない階段上にある照明が単独では消灯できない電気回路になっているなど、省エネ行動がともなわない場面を多く目にしてきました。ぜひ、エコスクールが目的とする環境教育から環境行動につなげる力を学校生活の中でも育てていただきたいと思います。先ほども申し上げましたが、特に体育館にエアコンを設置した後の運用については、そこを使用する全員が環境に配慮した運用ができるように取り組みを進めてほしいと考えますが、区の考えをうかがいます。

 

先日はエコスクールとして施設、教育の面で先進的に取り組んでこられた荻窪小学校を視察させていただきました。屋上緑化、壁面緑化、校庭の芝生化、ビオトープや地域の人の協力で冬でもキャベツやブロッコリーが育てられている畑、日射を遮るバルコニーや太陽光発電機器、ナイトパージやクールヒートトレンチ、間伐材を使った内装木質化など、恵まれた環境で学習できる子どもたちは本当に幸せだと思いました。小中学生環境サミットで荻窪小の子どもが、この学校にいると環境のことを考えるのは当たり前だけど、そうでないところもあるのだと思ったと言っていたという校長先生のお話に、環境を生かした教育の取り組みをうれしく思いました。一方で施設がここまでそろっていなくても、どこの学校にいてもその学校に合った環境教育を進めてほしいと思います。体育館へのエアコン設置の機をとらえ、改めて温暖化対策を意識し学校ごとの省エネ行動を子どもたちと先生、専門家や地域の人が共に考えマニュアル化し実践していくことで、省エネ行動を徹底し、区内にもそれを広めていただきたいと思います。

また、国が文科省、農水省、国交省、環境省の連携でエコスクール・プラス認定を行っているように、本来、区のエコスクールの取り組みも教育委員会と環境課の連携が欠かせないはずです。この点を指摘し、私も子どもたちに安心して暮らせる持続可能な社会を渡すため、継続的に課題に取り組んで行くことを申し上げ質問を終わります。

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