第3回定例会一般質問  2020.9.11 そね文子

いのち・平和クラブの一員として

  • 杉並区の気候危機対策について
  • 香害対策について

一般質問します。

まずは杉並区の気候危機対策についてです。 

今年7月、豪雨により九州地方が大きな被害を受けたばかりのところ、9月には台風9号、10号が再び九州地方を襲いました。海水温のこれまでにない上昇により、巨大化した台風が常態化しています。

世界的な気候変動の影響によって、これまで経験したことのない猛暑や豪雨、台風の強大化、それに伴う自然災害の発生、熱中症の増加や農作物への被害など、気候変動による影響は誰の目にも明らかです。

2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議COP21において2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みであるパリ協定が採択されました。パリ協定は世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5度から2℃未満に抑制することを目的とし、1.5度に抑えるためには2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにすることが必要とされています。しかし現在すでに地球の平均気温は産業革命前と比べて約1度上がってしまっています。

日本はというと、2016年に出した温室効果ガス削減目標、「2030年までに2013年度比で26%削減」が不十分と指摘を受けていたのに、それを据え置いたまま、今年3月末に国連に日本の目標を再提出し、さらに非難を受けました。

 昨年9月、アントニオ・グテレス国連事務総長は、1.5℃を目指して2030年までに温室効果ガスを45%削減、2050年には実質ゼロに、2020年までに新規の石炭火力発電を中止することを各国に呼び掛けました。 

 いま日本に求められる具体的な取り組みは、温室効果ガス削減目標の強化と化石燃料(特に石炭)依存から再生可能エネルギー100%の社会への転換です。

  • 環境基本計画について
  • そこで先ず、パリ協定から5年。このような世界の動き、そして国の動きに対して杉並区はどのような認識を持たれているのか伺います。

ここから杉並区の環境基本計画についてうかがいます。

1-2.環境基本計画の基本目標Ⅰは「低炭素循環型のまちをつくる」とされ、地球温暖化防止のへの取り組みが示されています。現在の目標値は杉並区全体のエネルギー消費量を2010年度比で12%削減する、区内の電力消費量に対する再生可能エネルギー及び家庭用燃料電池による発電量の割合を2%ふやすとされています。一方、2013年6月に策定された杉並区地域エネルギービジョンの目標では2021年度までに2010年度比でエネルギー消費量を10%削減する、再生可能エネルギーの割合を2%にするという目標が掲げられていました。このエネルギー消費量の目標値は2016年度に達成され、目標を12%に上方修正されたことは評価すべきことです。現在の目標値に対する進捗状況はどうなっているのか伺います。

1-3.来年度は環境基本計画の改定作業の年にあたります。今年の東京の8月の平均気温は観測史上最も高く、2.1度高かったと報道がありました。そのような状況で、東京23区では8月に熱中症で死亡した人は統計がある2007年以降で最多の195人との報道があり、2度の上昇がどのように大変なことか、私たちは身をもって体験しました。

環境基本計画の目標値をパリ協定の2050年の長期目標と整合させること、長期目標達成のための中間目標なども定める必要があると思いますが、区の考えを伺います。

1-4.この10年がもっとも大事だとの認識を持って、できる限り早く手を打つための目標を設定する必要があると考えますが、区の考えをうかがいます。

1-5.現在は環境基本計画の中に入れ込まれている地域エネルギービジョンは、当区が他の自治体に先駆けて(東日本大震災後の)2013年に策定したものです。今後、CO2削減を強化していくために、長期的な目標・ビジョンを明確にして取り組んでいく必要があると考えます。基本計画の外に出して中長期のエネルギービジョンや温室効果ガス削減計画を策定して取り組むことが求められていると思いますが区の見解を伺います。

1-6.東京都は2019年12月、気候危機行動宣言を行い、2050年までの気温上昇を1.5度に抑えること、2050年にCO2排出実質ゼロを実現するための具体的取り組みとロードマップ「ゼロエミッション東京戦略」を策定しています。都内の自治体として杉並区もこのゼロエミッション東京戦略と整合を図り、目標を定め、環境基本計画改定の際には表記してほしいと考えますがいかがでしょうか、お聞きします。

次に環境基本計画の目標実現に向けた主な取り組みとして示されている次世代自動車の普及促進について2点うかがいます。

1-7.杉並区の部門別エネルギー消費量では運輸部門の自動車からのCO2排出は約16%と大きな割合を占めることから、区は庁有車に電気自動車など、次世代自動車の導入を検討するとしてきましたが、現在の進捗状況についてうかがいます。

1-8.電気自動車普及のためには充電設備を増やすことが必要です。区は設備設置に助成をおこない普及に努めてきましたが、区が助成を行って設置された充電設備の種類と数についてもうかがいます。

太陽光パネルを設置している人は電気自動車のバッテリーに充電すれば、充電器代わりも使え、CO2削減に貢献し災害時の停電対策にもなります。今後も普及啓発に努めていただきたく要望いたします。

(2)次に小さな項目の2番目、区立施設の電力調達について質問します。

温室効果ガスの排出源を見ると、発電部門が39%、産業部門が27%、運輸部門が16%と大きなシェアを占めており、特に発電部門は最大のCO2排出源です。今求められるのは「原発・火力より再製可能エネルギー」の制度設計であり、いかに再エネに変換していくかが重要だと考えます。

地域で最大の事業所であり、気候危機の最前線にいる自治体の役割と可能性は大きいところから、私ども生活者ネットワークは、FOE Japan、グリーンピース・ジャパンと共に都内62自治体に対して、電力調達の状況に関する調査を行い、杉並区からも回答をいただきました。 その(調査)結果を踏まえ以下質問いたします。

2-1. 2011年の原発事故以降、あるいは電力自由化以降、新電力会社と契約する自治体が増えてきているなか、当区の本庁舎では東京電力、2016年からは東京エナジーパートナーに社名が変わりましたが、東京電力と随意契約で電気を調達している理由についてうかがいます。

2-2.当区では「電力調達に係る環境配慮方針」を定めて、区施設の電力契約を行っています。その評価基準に二酸化炭素排出係数、未利用エネルギーの活用状況、再生可能エネルギー導入状況をあげていますが、再生可能エネルギーの導入状況の最高基準が5%以上までしかありません。世田谷区ではこの再生可能エネルギーの導入状況の最高基準を20%以上、江戸川区は50%以上まで引き上げ、それぞれ配点を高く設定して再生可能エネルギーの導入を図っています。当区の環境基本計画には区立施設における再生可能エネルギーの利用拡大が掲げられています。今後10年間でCO2を半減させていくために当区でもこの基準を引き上げるよう見直すべきと考えますが、区の見解をお聞きします。

2-4 再生可能エネルギー調達の取り組みを進めるために、つながりのある他自治体との連携も視野に入れる必要があります。例えば、港区や目黒区、世田谷区では交流自治体との地域連携で、その交流自治体で生産される再生可能エネルギーを購入しています。杉並区の交流自治体の南相馬市は電力自給100%を目指し、再生可能エネルギー導入プロジェクトでメガソーラーや風力発電の導入が進められています。杉並区でも購入を検討できないのか、区の見解をうかがいます。

2-5 温室効果ガスの削減のため、事業運営で消費する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標とする「RE100」に取り組む企業が増えています。

東京都は、2019年12月、「ゼロエミッション東京戦略の策定 ~気候危機に立ち向かう行動宣言~」を打ち出し、再生可能エネルギーの基幹エネルギー化をかかげ、「RE100」をめざしています。世田谷区では本庁舎でRE100を達成、品川区でも区有施設が「RE100」を達成しています。自治体こそ主体的に温暖化対策・エネルギーシフトに取り組むべきと考えます。電力調達は、自治体のエネルギー政策や気候変動政策と密接にかかわるものであり、環境政策の一環として取り組む必要があると考えます。環境担当部署が連携・関与していくことが望ましいと考えますが、区の見解を伺います。

今、気温上昇による危機に対策をうたなければ、私たちの暮らしは成り立たなくなるという非常事態にあると考えています。これを区の最重要課題と認識し、区全体で取り組んでいただくよう強く要望し次の候の質問に移ります。

大きな項目の2番目、区の香害対策について伺います。ここで取り上げるコウガイは香りの害と書く香害です。

2018年10月の決算特別委員会で奥田雅子議員がこの問題を取り上げましたが、私たちの生活環境には多くの化学物質があふれ、化学物質過敏症を発症する人が増え続けており、2009年には厚生労働省が、カルテやレセプトに記載する病名リストに化学物質過敏症を登録しています。最近では柔軟仕上げ剤や消臭除菌剤の香料による健康被害の訴えが相次ぎ、新たな化学物質過敏症として問題になっています。2018年7月に杉並・生活者ネットワークが行ったアンケート調査には、電車、バス、タクシー、公共施設、飲食店、エレベーター、子どもの持ち帰る給食着など様々な場所で洗剤や柔軟剤などの匂いが気になる、その匂いによって鼻づまり、頭痛がおこる、めまいがする、大変困っていて病院を受診しようと考えているなどの様々な声が寄せられました。

柔軟剤には香料を徐々に放出して香りを長持ちさせるためにマイクロカプセルが使用されていますが、カプセルに添加されているイソシアネートは非常に毒性が強く欧米では規制対象の物質です。衣類に付着したマイクロカプセルは空中に飛散し、それを吸い込むことで、化学物質過敏症の症状であるアレルギー反応を起こすと言われています。化学物質過敏症はいったん発症すると、建物の建材に使われる化学物質、無香料の制汗剤や消臭剤、インクや印刷物、殺虫剤や農薬など様々なごく微量の化学物質に反応するようになり、公共交通機関を使えない、学校や職場にいられないなど、その人の人生に深刻な被害をもたらすことになります。

1.そこでまず、香害による健康への影響を区はどのように認識しているかうかがいます。香害については、報道でも取り上げられるようになりましたが、まだ多くの人が認識するにはいたっていません。柔軟剤によって命の危険を感じ、外出できない人がいることを広く社会に知らせることが必要と考えます。

2.人の多く集まる区役所をはじめ地域区民センターなど区立施設へのポスター掲示、パンフレットを作成し、周知してほしいと考えますが区の見解をうかがいます。

3.身体の小さい子どもは大人以上に化学物質の影響を強く受けます。子どもを化学物質から守るため東京都では子どもを基準とした使用規制のガイドラインを設けていますが、区においては、保育園や幼稚園、児童館や子ども子育てプラザなど子どもの居場所でのポスターの掲示、パンフレットの配布を行っていただきたいと思います。区の見解をうかがいます。

生活者ネットワークでは区立施設で使用する洗剤については、水質汚染の視点からも無添加の石けんを使用するよう求めてきましたが、改めて様々な香りが添加された合成洗剤ではなく無添加の石けんを使用することを運営事業者に対して区からも求めるよう要望いたします。

<教育委員会・学校の対応>

生活者ネットワークでは都内自治体の教育委員会に対し2019年9月から12月にかけて、柔軟剤などによる香りの害について学校がどれだけ認識を持ち対策が取られているかを調べるためにアンケートを実施しました。杉並区でも全小中学校から回答をいただきました。

アンケートの結果から、子どもが持ち帰る給食着の匂いで具合が悪くなる保護者がいる、もう卒業したが化学物質過敏症で香に強く反応が出る生徒がいた、インクや柔軟剤のあるところに行くと具合が悪くなるのでPTAには関われないと申し出があったなど学校には様々な声が寄せられていることがわかりました。また、先日は子どもが化学物質過敏症を発症し、学校に通いたくても柔軟剤やシャンプーなど強いにおいが充満する教室にいると具合が悪くなり、教室にいるのは1日2時間が限度という保護者から相談を受けました。保護者は子どもが在籍する中学校で相談をし、具体的な支援について相談中です。

4.そこで先ず教育委員会の香害への認識についてうかがいます。

5.教育委員会には区と連携して子どもにも分かりやすいパンフレットをつくり、学校で配布し、授業でも取り上げていただきたいと思いますが、いかがでしょうかうかがいます。

6.相談があった生徒は、教科書や印刷物のインク、油性ペン、絵の具、殺虫剤、除草剤、排気ガスなど、様々な化学物質に反応しますが、教室の柔軟剤やシャンプーの匂いがなければもう少し長い時間教室にいられると話しているそうです。教室や学校に充満する匂いで学校に来られないというのは、その子の教育を受ける権利が侵されているということです。学校には生徒や保護者への化学物質過敏症の正しい知識の啓発と香りがついたものの使用の自粛を要請してほしいと依頼しています。

学校でも真摯に受け止め、使用するワックスや洗剤、手洗い石けんの見直しなどをおこなってくれています。しかし化学物質過敏症の人が出てから対応するのではなく、今からすべての学校で同じ対応をしておくことは、学校にかかわるすべての人の化学物質過敏症の予防になりますし、学校がより安全な環境になるということです。現在起こっていることについては、早急な対応が必要なため、個別の学校の対応にならざるを得ませんが、教育委員会でもこのような事例があることを他の学校に周知し、杉並区の学校すべてが化学物質過敏症の予防対策を行うための指針を作ってほしいと考えます。区教委の見解をうかがいます。

7.化学物質過敏症は花粉症と同じように、これまでなんともなかった人が、その人の許容量を超えた化学物質に暴露することによって突然発症する病気です。誰もが発症しうるものということを徹底して周知し、すでに化学物質過敏症を発症している生徒が責められたり、いじめにあわないような教育的配慮を十分に行うことが必要ですが、区教委の考えをうかがいます。

杉並区には化学物質過敏症に実績のあるクリニックがあります。そのような医療の専門家と連携し取組みを進めることも考えていただきたく要望いたします。以上で一般質問を終わります。

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