第4回定例会 一般質問 2022.11.18 奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として、水資源として「あまみず」を活かす取り組みについて質問します。

現在、COP27がエジプトで開催されています。今日が最終日ですが、「水の安全保障」も争点のひとつになっていました。世界では大規模な洪水が起きている一方、干ばつで水不足となり、食糧、電力不足など人々の命や暮らしが脅かされています。食糧自給率の低い日本は、食糧輸入に付随して、生産に要したその生産国の水をバーチャルウォーターという形で同時に輸入していることになりますが、そのことに気づいている人は多くはないと思います。このバーチャルウォーターの量は年間80兆リットルと言われ、日本国内の水の年間使用量とほぼ同じだそうです。それどころか日本の食糧事情は今後、輸入ができなくなることも覚悟しておかなくてはならない状況です。気候危機問題は、エネルギーや水問題、食糧生産、生物多様性、経済のあり方など様々な危機とつながっています。広い視点で私たちの暮らし方を考え、実践につなげ、取り組んでいくことが大切で、この地球上で暮らすすべての人が同じ思いで目標に向かっていかなくては問題の解決には至らないのではないかという焦燥感(しょうそうかん)でいっぱいです。

そこで、最初に

①杉並区はこの気候危機問題をどう捉え、未来に豊かな地球環境を引き継いでいこうとしているのかおたずねします。

今回の質問で取り上げる「あまみず」の利活用については2017年の第1回定例会の一般質問でも取り上げましたが、私たちを取り巻く地球環境は悪化の一途をたどり、気候危機により雨の降り方も尋常ではなく、短時間の集中豪雨もさることながら、線状降水帯のようにいつまでも大雨が続き、土砂崩れや洪水の被害が後をたちません。もはや河川や下水道設備による治水対策だけでは対処しきれない状況にあります。温暖化による自然環境の変化に対応し、インフラの在り方を抜本的に見直していくことが求められています。降った雨を資源として貯めて活かす「蓄雨」やグリーンインフラと言った視点を取り入れたまちづくり、施設づくりが、ますます必要になってきていることから、改めてあまみずの利活用について質問してまいります。

日本は水資源に恵まれた国だと思っている方も多いと思います。私もそうでした。しかし、その認識が間違いであると知りました。2021年6月時点の国連食糧農業機関ウェブサイト『AQUASTAT』によると日本の年間降水量は世界平均降水量1,171㎜の約1.4倍の1,697㎜となっています。ところが、これに国土面積をかけて全人口で割った一人当たりの年降水総量で見ると日本は約5,000㎥となり、世界の1人当たり年降水総量約20,000㎥の1/4程度です。人口一人当たりに直せば、日本は年間降水総量および水資源賦存量(ふぞんりょう)つまり、蒸発散分を差し引いて、理論上人間が最大限利用可能な量は世界平均と比べても、水資源に恵まれているとは言えない状況だということです。

「雨水(あまみず)の利用の推進に関する法律」、いわゆる「あまみず法」が2014年5月に施行されました。これは雨の水と書いて「あまみず」と読ませ、水資源の有効利用と下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制を目的としています。これまでの雨を防ぎ流し去るという発想から、「あまみず」を資源と捉えて、あまみずの貯留及び水洗トイレや散水などの利用を推進するものとして、「雨水(うすい)」とは区別しています。

現在、東京都は、時間降雨50ミリ対策として、ばく大なお金と膨大な時間をかけて、河川改修工事を善福寺川で行っています。このようにコンクリートなどで整備するのをグレーインフラと呼ぶのに対し、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるものと定義し、水と緑と生き物をキーワードとしたグリーンインフラは2015年に国の施策となり、その重要性が少しずつ認識されるようになりました。昨今の地球環境のことを考えるならば、グリーンインフラ抜きにまちづくりを考えることはあり得ないと思います。杉並区でも基本構想や総合計画、環境基本計画、まちづくり基本方針骨子案など、グリーンインフラのまちづくりが盛り込まれ、様々な分野での取り組みが期待されるところです。

地球上の水は、海や空、陸をゆっくり循環していますが、都市化によって地面はコンクリートで覆われ、降った雨のほとんどが下水管に入り、あっという間に河川に排出され、本来の水循環を壊してしまっている状況に対し、グリーンインフラによって本来の水循環を取り戻していくことが必要です。

②区がイメージするグリーンインフラとはどういうものか、具体的に検討がされていることがあればお示しください。

あまみず法では、国及び独立行政法人等は、その建築物を整備する場合において、自らのあまみずの利用のための施設の設置に関する目標を定めることとされ、地方公共団体及び地方独立行政法人は国の目標に準じて、自らのあまみずの利用のための施設の設置に関する目標を定め、公表に努めるものとしています。国の目標は2015年3月10日に閣議決定され、建築物を新たに建設するにあたり、その最下階床下等にあまみずの一時的な貯留に活用できる空間を有する場合には、原則として自らのあまみずの利用のための施設を設置することとされました。

③区においても自らあまみずの利用のための施設の一層の普及促進が求められていると思いますが、区における現在の具体的な取組みについて伺います。

④また、それらの取組みによって、どのくらいの量のあまみずを貯める機能が備わったのか、2017年の質問の際は治水対策としての取り組みは、東京都豪雨対策基本方針に基づき、時間10ミリの降雨相当分を貯留、浸透させることを目標としており、累計実績は、2015年度末で、目標対策量58万8,000㎥に対して約50%の29万5,000㎥でした。その後、どこまで目標に対して進んだのかお聞きします。

⑤あまみず利用が進んだことによって、水道代の節約効果やCO削減効果はどのくらいあったのか、区の評価を伺います。

⑥法の9条では、市町村は国または都道府県の基本方針に即して当該市町村の区域内におけるあまみずの利用の促進に関する計画を定めることができるとしています。市町村における計画の策定が促され、また、それぞれの地域の自然的社会的条件に応じてあまみずの利用の促進が円滑に図られるよう2016年に策定されたガイドラインが今年3月に改定がされましたが、改定のポイントはどのようなことか伺います。

⑦あまみず利用について区の基本的な考え方を明らかにするためにもあまみずの利用の促進に関する計画は必要だと思いますが、杉並区にはここでいう計画にあたるものは見当たりません。今後、策定する予定はあるか、また、策定にあたっては、学識的な専門家だけでなく、地域の専門家である住民参加で行われることが、あまみずの利用を地域に根付かせる意味においても、望ましいと考えますがいかがか、区の見解を伺います。

⑧以前の質問で、都市型洪水を防ぐとして、日本建築学会が提唱している「蓄雨」が注目されていることを取りあげました。蓄積の蓄に雨と書いて「蓄雨」です。日本建築学会の雨水(うすい)活用技術基準の中に提示された新たな概念であり、蓄雨はすべての敷地において100㎜降雨に対応する基準を設けたもので、治水だけでなく、利水、防災、環境の4つの側面からこれらを統合的に管理する技術だということです。この4つの側面を少しだけ具体的に挙げると、1つは災害時の生活用水確保の防災蓄雨、2つ目に洪水を和らげるための治水蓄雨、3つ目に自然な水循環を進め、ヒートアイランド対策にもなる環境蓄雨、そして4つ目が日常的に生活用水に使う利水蓄雨であり、これらを組み合わせて雨を蓄えると大きな効果を発揮するというものです。国のガイドラインでも紹介されています。この「蓄雨」の取組みはグリーンインフラともリンクさせながら広めていくと良いと思いますが、区はこの「蓄雨」についてどのように考えているか見解を伺います。

 

⑨この蓄雨の考え方を取り入れれば、敷地内に降った雨は極力下水に流さないですみます。それぞれは、それほど大きな力ではないけれど、地域全体で取り組むことで、大がかりな地下貯留施設のようなものに匹敵する効果が得られるのではないか。区としても建物を建てる際に「蓄雨」の視点を持った設計の提案ができる人材の育成、情報収集および発信をしていくことも必要と考えますが、区の見解を伺います。

⑩グリーンインフラの一つの方法に「雨庭」があります。敷地に降った雨を一時的に貯めて、ゆっくり雨水を浸透させるための都市空間における庭のことを言いますが、レインガーデンやバイオスウェルと言ったりもします。住宅の庭のほか、公園、道路、歩道などの公共的な空間でもこの「雨庭」を広げていけないかと考えています。先に述べた「環境蓄雨」ともつながります。歩道上に「雨庭」を設置している京都の取組みやお隣の世田谷区の先進的なグリーンインフラを取り入れたまちづくりや一般財団法人トラストまちづくりによって個人宅でもできる雨庭づくりの普及も進めている取組みは参考になります。杉並区でも下高井戸おおぞら公園のロックガーデンも雨庭と言えると思います。まち中やビルの一角などに雨庭のようなスポットがあって、ベンチなども設置されて、ちょっと休憩や憩いの空間があったら、このまち好きだなと思う人も増えるのではないでしょうか。

区がグリーンインフラのまちづくりの推進を掲げる中でイメージするまちづくりに「雨庭」の取組みも広げていってほしいと思いますが、区の見解を伺います。

*参考

https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000296127.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/e195e77295c4f01ee1f2ef83e4764a87119ef349

次にエコスクール事業に関して雨水利用の観点から伺います。

⑪「杉並区立学校施設整備計画」の学校施設の目指すべき姿という項目(1)将来を見据えた教育環境の確保の項目の中に、「環境にやさしい施設づくり」があり、「学校が児童・生徒だけでなく、地域にとっての環境・エネルギー教育の一助となるとともに、地域における地球温暖化対策の推進・啓発となるよう、環境に配慮した学校施設(エコスクール)を目指します。」とあります。そこに事例として、太陽光発電(再生可能エネルギー)・雨水利用貯留槽・屋上緑化・ビオトープ・建物の断熱化やLED照明の採用等による省エネルギー等が挙げられています。しかし、単なる事例であって、それらを事業化するのはエコスクール事業の方針になると理解していますが、その方針の見直しが今年度行われる計画になっています。どのような体制で見直しが行われているのか伺います。

 

学校は地球環境問題への取組みを子どもだけでなく大人にも広げ、地域の人々と共に省エネや創エネ、緑の創出、水循環などの環境意識向上につなげていく舞台になり得る存在です。先に紹介した4つの「蓄雨」をすべて活かせる現場でもあります。

 

⑫小中学校は震災救援所にもなるため、震災時の生活用水やマンホールトイレのための防災蓄雨、一時的に貯めて浸透させる治水蓄雨、地下ピットに雨水を貯めてトイレや校庭の水まきスプリンクラーや潅水(かんすい)に活用する利水蓄雨、ビオトープへの活用などの環境蓄雨を今年度改定されるエコスクール事業の方針にしっかり位置付けていただきたいと思いますが、区の見解を伺います。

 

⑬ビオトープには地域在来の自然の再現や生き物との直接のふれあいと学習の機会の提供、地球環境問題に関する理解を深める、ボランティアなどの地域の人たちと子どもたちや先生をつなげる効果があり、学校の隅にあるのではなく、学校全体がビオトープになるような考え方で、今後も小中学校にビオトープの設置をスタンダード化してほしいと思います。また、同時に、ビオトープを適切な状態に保つ維持管理・指導体制の仕組みを検討し、継続した環境教育が行われるようにしてほしいと思いますが、区の考えを確認します。

次にみどりの基本計画に関連して、

⑭みどりの基本計画の基本方針3「みどりの質を高めよう」の項目にも掲載されている「環境に資するみどりづくりの推進」ではエコスクールの推進と共に生き物の生息場所の保全と創出や雨水の地下浸透化の促進が盛り込まれています。水とみどりは切っても切り離せない関係であり、分野横断的に取り組んでいくことも必要で、その実現に向けた体制づくりについても明確にする必要があると考えています。

今後の改定においてもみどりの基本計画という入口からあまみず利用を軸にまち全体をダムにしていくようなつもりでビオトープの設置やエコスクールの推進などを展開してほしいと思いますが区の見解を伺います。

次に、杉並区が今年度改定した環境基本計画について、

基本目標III、「自然環境が保全され、多様な生き物が生息できるまちをつくる」の項目における区民、事業者の環境配慮行動指針として、「雨水の活用を心がけます。」とあります。あまみず活用を心がけるには、あまみずをためなければなりません。そして、貯めたら使わないと、次が貯められません。あまみず利用を見える化するツールとして、あまみずタンク設置への助成事業の復活を求め、2020年度から区は再開しましたが、助成の実績は20年度15件、21年度27件と少なく、このままだとまた助成が打ち切られてしまうのではないかと危惧しています。区役所の1階ロビーであまみずタンクを展示をしていると、これなんですか?と興味をもって聞いてくる方が結構いらっしゃるということで、現物の展示やあまみずタンク効果、つけた方の声を発信する等のPRをもっと積極的に行っていくことが必要だと感じています。

⑮区としてはあまみずタンクの助成を何のために行うのか、その効果はどれほどあったのかを見える化することが必要ではないでしょうか。1軒1軒の取組みによってこれだけの雨水を下水管に流さずに済んだ、住宅の屋根に降ったあまみずをタンクに貯(たくわ)える、つまり地域ダムの役割を担った、役に立ったということを設置者や周辺住民にアピールし、あなたも参加しましょうと呼びかけることも重要だと考えます。そういう意味から、これまでに区が助成したあまみずタンクの総容量がどのくらいだったのかお聞きします。

⑯あまみずタンクを普及させていくためには助成して終わりにせず、貯めたあまみずの使い方など情報交換の場の設定やアンケートで活用方法や困っていることなど、声を集める取組も必要ではないかと思います。太陽光パネルの設置者の情報交換会が開かれていますが、そういった取り組みなども参考にあまみずタンクでも行ってはどうか、区の考えを最後にお聞きします。

昨日の朝日新聞夕刊に岸本区長のインタビュー記事が掲載されました。気候危機を重要政策に掲げる首長として、行政をこれまでとらわれてきた型から解放し、市民の力を最大限引き出したい、という考えを述べていらっしゃいました。今日のテーマに取り上げた「あまみず」の利活用もこれまでの取組みから発想を広げ、グリーンインフラのまちづくりの一環として活かされていくことを期待し、私の一般質問を終わります。

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