私は、「生活者ネット・みどりの未来」の一員として、1.原子力災害対策について 2.省エネ・エネルギー政策について 質問いたします。
3月11日に起きた東日本大震災は大津波によるおおぜいの犠牲者と被災者を生み、それに加えて起きた福島第一原子力発電所の事故は、発電所から20キロ圏内に人が住めない状況を引き起こしました。福島第一原発からおよそ230キロメートル離れている東京杉並区ですが、遠く離れているから大丈夫とするのか、それとも想定外をつくらないように備えるのか。
自治基本条例第7条の3、「区はさまざまな災害等から区民の生命、身体および財産を保護するため、危機管理の体制の強化に努めなければならない」に則り、最初の項目、原子力災害対策について3点うかがいます。
まず1点目。地域防災計画は、災害対策基本法の規定に基づき自治体の防災会議が策定する計画で、住民の生命、身体および財産を災害から保護する目的で策定されています。毎年検討が加えられ、必要に応じて修正が行われます。当区の地域防災計画は2010年3月に修正版として作成されたものですが、このあとの修正版はいつ出されるのか、また、3月11日の大震災の経験を反映した修正版は今後どういったスケジュールと手順で行われるのか、区として次回見直しに盛り込まねばならないものは何とお考えか、併せてうかがいます。
2点目です。災害に備える計画として当区が策定している地域防災計画は、震災編と風水害編からなっています。今回のような原発事故を受けて、もし杉並区にさえ住んでいられないような状況がおきたらどうするのか、と考えたときに区には原子力災害に備える計画がないことに気がつきました。ただ、核燃料輸送車両の事故に対応する記述がありましたが、警察と消防関係機関の対応しか書かれておらず、万一事故が起きた場合区としてどういう行動をとるのかが示されていません。事前に核燃料輸送車の走行ルート、通過時刻は明かされないことは、消防職員にとっても周辺住民にとっても問題ですが、そうであるからこそ、それを見越した備えが必要だと考えます。
いまなお収束していない原発の状況を見るにつけ、日本に原発がある限り、事故に備える対策がこの杉並区にも必要だと思います。今回、南相馬市に派遣した区の職員の経験を生かしながら、防災計画に原子力災害対策の記述を入れる必要があると考えますがいかがでしょうかお答えください。
この項目の最後に杉並区国民保護計画への記述について伺います。
2004年に制定された「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」国民保護法により、杉並区国民保護計画は策定されています。もちろんこの法律は武力攻撃や大規模テロなどを想定したものであることは承知していますが、大規模な災害やテロなど人為的な危機への対応が不十分とする杉並区の基本的考え方からすると、新しい危機の想定に「原子力災害」を加えたうえで、見直しが必要と考えますがいかがでしょうか、お答えください。
次に、大きな項目の2つ目、省エネ・エネルギー政策について伺います。
これまで地球温暖化防止策としてなかなか実績が上がらなかった省エネですが、今回の原発事故により東京電力から「計画停電」が発表され、家庭や事業所などいたるところで節電が行われた結果、消費電力が減少し計画停電の実施には至ってはいません。これからの夏に向けより一層の節電が求められることは言うまでもありません。今回の原発事故による「節電」を一過性のものとするのではなく、地球温暖化対策である省エネに向けた視点で6点質問します。
2008年から2012年を第一約束期間とする地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択した京都議定書で示されたCO2削減の目標数値の達成、低炭素社会の実現に向けて、国、都、区においてさまざまな施策が行われています。一方で、54基ある原子力発電所のうち34基が、事故および定期検査により停止している現実があります。つまり、いま日本ではすべての原発のうち3分の1しか動いていません。事故後の運転再開はもちろんのこと、定期検査終了後の運転再開については、住民の同意を得ることは難しいことが想定されます。これまでは原発を推進して、CO2削減を目指してきたものを、これからはエネルギーの大量消費を見直すことを前提にしつつ「脱原発で且つ低炭素な社会」、つまり、脱原発を図りながら自然エネルギーの推進によりCO2を削減して低炭素社会を実現しなければなりません。
私ども東京・生活者ネットワークでは、2000年2月に「市民エネルギービジョン」を策定しております。その内容は、脱原発宣言、分権型エネルギーへの転換、ライフスタイルの見直し、そして環境第一主義の地域エネルギービジョンの提示、などを柱にしています。10年前に自覚したビジョンを現実のものとする責任が、今まさに緊急性を持って私たちに迫ってきています。
そこで1点目の質問です。基本的方向として低炭素社会、脱原発社会をめざすことは可能であり、またそうすべきと考えるものですが、区としてどのような認識をお持ちでしょうか、お伺いします。
国では2008年6月「地球温暖化対策推進に関する法律(温対法とよばれるものですが)」の改正で、すべての地方公共団体に事務及び事業に関しての実行計画の策定が義務付けられました。翌月の7月には東京都が「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」を改正し、事業者が温室効果ガス排出総量削減の義務を負うことになりました。事業者である杉並区は、2010年2月にそれまでのISO14001を返上し、杉並区役所エネルギー管理方針として「杉並区環境・省エネ対策実施プラン」を策定し、その施行から1年が経ったところでその成果が気になるところですが、現在、温室効果ガス排出総量がどのくらい削減できたかの結果をまとめているところとうかがっております。
当区の「環境・省エネ対策実施プラン」は温対法で自治体に策定が義務づけられた「実行計画」ですが、地球温暖化対策は区役所だけが取り組む問題ではなく、市民や事業者を含むすべての人が区域全体で対策を講じて取組まねばならない問題です。杉並区はこれまで、「地域省エネルギービジョン」を打ち出し、「地域省エネ行動計画」、区役所だけが取組む「環境・省エネ対策実施プラン」、そして「環境基本計画」と次々に策定してこられましたが、対象が区役所だけであったり、目標年度も2013年度、2014年度となっていたり、本当にこれで温室効果ガス削減目標が達成できるのか甚だ疑問です。
そこで2点目です。温対法で、特例市・中核市・政令指定市・都道府県に策定を義務付けている「区域施策編」があります。これは、省エネだけでなく、エネルギーをどう調達するか、熱中症対策など温暖化問題への対応策など地域の特性に応じた施策を策定するものですが、杉並区のような特別区には義務付けられていません。
エネルギーに対する市民の関心が高まっているこの機を捉えて当区としても地域施策編を策定し、区域全体で取り組むべきと考えますがいかがかでしょうかお答えください。区域施策編の計画を策定した場合、計画を推進し、目標を達成するため、一般住民・環境団体・事業者代表の参加で実働を担う推進組織の設置が必要であることを申しあげておきます。
さて、3月11日以降、区が行った節電の取り組みにはどのようなものがあるのか、また、それを実施したことで3月11日の前と後で比較した時、本庁舎ではどのくらいの節電になっているのか3点目としてうかがっておきます。
ちなみに、私たちは旧会派「区議会生活者ネットワーク」の控室を使っていますが、6月に入ってから室温が31℃にもなって暑いこともあり、先日8本入っているロング蛍光管のうち4本を抜いていただきました。残った4本でもなんの支障もなく、早く抜いておけばよかったと反省しているところです。
4点目です。区は、地球温暖化防止策として自然エネルギーへの転換に向けて太陽光発電機器設置の助成を行っていますが、区が把握しているのは助成件数にとどまっています。せっかく助成という形で税金を投入しているのですから、実際どのくらいの量が発電できているのか、経済的効果はどうか、設置者にどういう省エネ意識・省エネ行動の変化があったのか、メンテナンスの方法や施工業者の評価などの情報を設置者から集め、区のデータとして蓄積していくことが大事ではないでしょうか。それには情報交換や交流の場が必要です。区が助成した世帯に限らず、太陽光パネルを設置しているすべての区民に区の広報などで呼び掛け、設置者に自然エネルギーを普及する人になってもらうことが導入の促進になると考えます。そのためにも、区がかかわって設置者交流の場をつくるべきと考えますがいかがでしょうかお答えください。
自治体の地球温暖化対策を具体的に進めていく際の課題として、市区町村ごとの温室効果ガス排出推計が困難なことがあげられています。目標を立てる際、そして実践した結果の評価のためにもデータの情報開示は必要です。先般、世田谷区が東京電力に世田谷区内で使用されている電気消費量を出すよう要請したと報道がありました。当区もその翌日に東京電力荻窪支社に協力を要請したと聞いています。区内分の電気消費量を出すのは無理とのことで23区内の前日の総電力量しか出てこないという現状です。当区としても引き続き東京電力に要請していただきたいと要望します。
今回の原発事故を受け、国ではエネルギー政策の見直しが言われていますが、これは国だけの問題ではなく、自治体にもどのような方針に基づきどのようなエネルギーをどのように使うのかといった「自治体としてのエネルギー政策」を定めることが必要です。
現在、区内には区の助成を受けて設置した太陽光パネル804か所に加え、都だけが助成していた時期の設置者、助成を受けずに設置した方も相当数あり、今年度末には330か所ほど増え、年度末には1130か所にもなり、いわば「市民立太陽光発電所」が増え続けていきます。一方、太陽熱利用の給湯器や高効率給湯器も区の助成を受けて順調に設置が増えているとうかがっております。また、先日行われたハーモニーまつりあんさんぶる荻窪会場で、太陽熱集熱パネルが展示されていました。一番大きいもので横70センチ縦200センチ厚さ6センチ、およそ畳1畳に相当する大きさです。この太陽熱で温めた熱気を換気扇で室内に送り込むシステムです。換気扇はパネルに埋め込まれた太陽光発電機で動かしますのでコンセントいらず、つまり電気代ゼロの暖房システムで、外気温プラス30℃の暖房効果が得られます。エネルギーを最も消費するのは暖房ですのでこのシステムは省エネとして期待できます。なによりもいいのは戸建てだけでなくマンションでも設置できるものです。このような自然エネルギーの利用は今後減ることはないと考えます。当区はもうすでに相当量のエネルギーを生産する「エネルギー生産基地」であるという発想を持って、これをさらに推し進めてエネルギーの地産地消をすすめていくべきと考えますが、区の認識はいかがでしょうか、5点目としておたずねします。
6点目、最後の質問です。
いま、太陽光、太陽熱をはじめとする再生可能エネルギーの導入を加速し、エネルギーの地産地消のまちづくりを目指すときです。先日新聞で、前高知県梼原(ゆすはら)町長 中越武義(なかごしたけよし)さんの紹介がありました。梼原町は国の環境モデル都市の一つですが、町長就任の翌年から、太陽光、太陽熱、地熱、小水力、バイオマスと次々と自然エネルギー利用を採用して実績をあげられているのを知り、もちろん小さな町で地域性も杉並とはまったく異なるものではありますが、その先見性と実行力に目を見張りました。しかも、そのやり方は、決してトップダウンではなく、市民を前面に立ててやってきた、つまりエネルギー自給100%を目指すことを宣言した町長のリーダーシップがあって、市民とともに実現してきた結果である、と書かれていました。
当区においても、区内で使用される電気量のうち何%は再生可能エネルギーで賄う、といった新しいエネルギービジョンを示すべきと考えます。我が区でも首長のリーダーシップを期待するところですが、区長のご決意をうかがいまして、私の質問を終わります。