私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、特別な配慮を要する子どもに対する支援について、子どもの多様な学びの場の保障について、以上大きくいって2点 質問いたします。
まず、特別な配慮を要する子どもとして、実の親から離れてくらさざるを得ない子どもに焦点をあて、里親制度などの家庭的養護についてうかがいます。いろいろな事情で親と一緒にくらすことのできない子どもを、家庭に代わって公的に育てるしくみを「社会的養護」といいますが、このうち、より家庭に近い環境で子どもを育てる制度が「家庭的養護」で、もう一方は児童養護施設や乳児院などの施設擁護です。家庭的養護の代表的なものが里親制度です。
里親制度については、杉並区内の里親家庭でおきた子どもの死亡事件をめぐって、昨年秋の決算委員会や今年の予算委員会で質疑をおこなってきました。
一昨年の8月に東京都が里子として措置していた3歳の女の子が家の中で亡くなった事件は、当初事故死とされていましたが、死亡から1年後、当時の里母による暴行が死因であったとして、その女性が逮捕され、社会に衝撃を与えました。とくに、女性が声優として芸能活動をおこない、地域でも目立つ存在だったことで、メディアがスキャンダラスに報じました。しかし里親をふくめた社会的養護の関係者にとっては、里親制度のあり方が問われる重大な問題として受け止められ、テレビのワイドショーが報じなくなったいまも、重苦しいしこりが残っている状況です。
制度を所管する東京都はこの事件を深刻にとらえ、都の児童福祉審議会が検証を行いました。ことし1月に出された報告書には「死亡原因が虐待によるものと特定はされないが死亡に至った経過の中で虐待が疑われる事例」と明記されています。表現は慎重でありながら「虐待があった」可能性を肯定した、踏み込んだ内容と受け止めました。ただし、事件は女性の傷害致死容疑をめぐって東京地方裁判所で争われ、7月に懲役9年の判決が下されましたが、女性は容疑を否認し控訴しているため、依然として真相は解明されていません。
すべてが明らかになるにはもう少し時間がかかるのだと思います。しかしそれはそれとして、いま目の前に特別な配慮の必要な子どもがいるという現状に対して、区としての取組みを考えたいと思います。
私は、これまでも申してきたように、里親制度をいまのような東京都のしくみとして実施するより、身近な自治体である区が実施すべきではないか、と考えています。区はこれを自治の問題として、都から区への移譲を獲得するべく積極的に動くべきではないか。この問題意識から、今回あらためて質問いたします。
里親制度を実際に所管しているのは児童相談所で、虐待問題への対応なども重要な事業ですが、同様の事業を区として所管しているのが子ども家庭支援センターです。はじめに、児童相談所と子ども家庭支援センターの役割の違いについて、それぞれの役割はどのように整理されているのか、うかがっておきます。
先ほど述べた、都児童福祉審議会の報告書では、児童相談所の体制・機能強化や子ども家庭支援センターとの連携強化などが提言されていますが、現状はどうでしょうか。担当者数の増員などの変化はあったのでしょうか。2番目の質問として、その後の対応状況についてうかがいます。
次に、里親制度の登録数・委託数について確認させてください。当区の実績数は他区に比べて多いと聞いていますが、いかがでしょうか。直近の区内の実績数をうかがいます。
里親制度のしくみは都のものであっても、当然ながら子どもは地域の子であり、養育家庭は地域に所属します。基礎自治体である区は、養育家庭との懇談の場をもつなどしてその実態・実情を把握すべきですし、里親の課題を区の子育て支援施策に位置づけるべきと私は考えています。冒頭で里子の死亡事件に触れたのは、もし里親制度が区の事業とされていたら事件を未然に防ぐことができたのではないか、と考えるからです。都と区の役割分担は今すぐというわけにはいきませんが、すぐにできることとして、区は里親家庭に対し必要な支援を行っていくべきと考えます。見解をうかがいます。
児童相談所の事業の区への移管については、今年になってようやく都区間の実務者レベルの調整がされていると聞いています。この進捗状況はいかがか、おうかがいします。
乳幼児の社会的養護については、国連が「家庭を基本とした環境で提供されるべき」と方針を示しているだけでなく、2006年には「児童に関する暴力の報告書」で「3歳以下の乳幼児の施設集団ケアは国家による子どもへの暴力である」と提言しています。幼ければ幼いほど、施設に入所させるのでなく100%家庭的養護とすべきです。
日本の社会的養護全体に占める里親委託率は、3年前の統計で10.8%となっていますが、自治体間の差が大きく東京都は9.2%と平均以下です。また諸外国の状況をみますと、約10年前のデータではありますが、委託率の最も高いオーストラリアでは92%、つづく米国は77%、イタリア、イギリスでは60%を超え、フランス、カナダは50%以上となっています。制度が異なるため単純に比較することはできませんが、日本との差の大きさにはがく然とします。
区は、乳幼児の社会的養護について、家庭的環境での養護の重要性をどのように認識しておられるでしょうか。見解をうかがいます。
つづいて、フレンドホーム制度についておたずねします。フレンドホームというのは東京都が家庭的養護の一環としてすすめている制度で、乳児院や児童養護施設に入所している子どもを数日間、最長で6泊7日間、家庭で預かるしくみです。里親制度とちがって家庭が直接施設に登録する方式ですが、里親となるにはハードルが高いけれど「週末や休日だけなら」と考える人は多いはずです。フレンドホームの経験者が里親になるケースもよくあるといいます。区内には、0歳から2歳児までの子が対象の乳児院2施設、3歳から18歳までが対象の養護施設が5施設あり、フレンドホーム制度の活用が拡がればと考えます。しかし、東京全体でもまだ実績が少ないと聞いています。制度活用の実績はどのくらいか、おうかがいします。
杉並区民の社会貢献に対する意識は他の自治体に引けを取りません。区民の里親はもっと増やすことができると考えます。子どもにとっても少しでも多く家庭的環境を体験できることは望ましいことであり、区としてもっと普及をすすめるべきと思います。見解をうかがいます。
さて、特別な配慮を要する子どもとして、東日本大震災で被災した子どものことを忘れるわけにいきません。
大震災から1年半たち、岩手、宮城、福島およびその他、被災地の子どもたちの日常にはあらたな課題やニーズが生じています。たとえば、そのような子どもたちに寄り添った支援活動をおこなってきたボランティア団体の報告では、近親者の喪失からくる孤立を口に出せないまま体にしみついていくこと、転居による住空間の問題、経済的な困難状態、不自由な状況下での受験、などが指摘されています。加えて、放射能汚染地域に住む子どもたちにとって、非汚染地での自然を満喫できるような保養の機会がたびたび必要であることは、多くの専門家の指摘するところです。
杉並区として南相馬市などの被災地支援活動もされていますが、区民による活動もさまざま実施されています。今年夏のお盆休みに実施された、福島県在住の親子に富士学園で3泊4日過ごしてもらう試みも、そうした取組みのひとつです。このような、被災地の子どもを対象とする区民の活動に対し、区はどのような支援や後援をしてこられたでしょうか。おうかがいします。
子どもの相対的貧困率が年々増大し現在約15%という日本の状況にあって、大震災のような緊急事態下では、社会が抱えるさまざまな問題が凝縮され、子どもに降りかかっています。被災地の子どもに対する支援は、子どもの権利条約にもとづく視点から、大人に対する支援とは別の意味で重要と考えます。成長過程にある子どもの育ちを支援するには、生活の細部に配慮した活動が必要であり、それは市民による草の根の活動が望ましいと考えます。区民が行う被災地の子どもの支援活動を、区は育て推進すべきと思います。見解をうかがって、2つ目の項目に移ります。
2番目、子どもの多様な学びの場の保障について、です。ここで「多様な学びの場」として採りあげようとしている、その代表格は、いわゆるフリースクールです。フリーとは「自由」の意味のほうで、フリースクールは子どもの立場に立った学校外の学びの施設を指します。
便宜上「フリースクール」という言葉で代表して質問を進めますが、ほかにも正規の学校として認められていない、シュタイナー教育、フレネ教育、モンテッソーリ教育、デモクラティックスクール、外国人学校、インターナショナルスクール、ホームエデュケーションなどがあります。これらもふくめて、フリースクールと呼ぶことにします。
学校に行けない、あるいは行かないことを選択する子どもの問題が表面化するようになった80年代半ば以降に、あるものは学校教育を補完するものとして、またあるものは新しい教育のかたちとして開設されるようになりました。いじめが深刻な社会問題として認識され、不登校が珍しいことでもいけないことでもなくなったいま、学校外の学びの場として実績をつくってきたフリースクールは、社会に必要なしくみとして存在感を増しています。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」には北海道から沖縄まで、現在45団体が所属しています。
それだけ社会的に認知されてきているフリースクールですが、多くは学校教育法が認めた機関でないため市民権が得られたとは言えず、財政面で不利益をこうむっています。一部の例外を除いて公的な資金援助を得られないからです。
今回、この問題について採り上げることにしたのは、子どもの多様な学びの機会を保障するための法律を作ろうとすすめられてきた、その動きを後退させたくないという思いからです。
この法整備の動きは、フリースクール関係者を中心に2009年にスタートし、この3年間、それぞれの子どもにとって最善の学びを選ぶ権利の実現のため、不登校の子どもの保護者や有識者、国会議員、教育関係者などを巻き込んで、法案づくりにも取り組んできました。めざすところは、学校外のフリースクール等を法的に位置づけ、それを選ぶ子どもや保護者が一般の学校に通う子どもたちと同じように公費助成を受けられるようにすることです。正規の学校教育からこぼれても学習権が保障されるように、教育の無償の原則が適用されるように、学校教育法とは別に法律で規定されることをめざしています。
フリースクールを選んだ子どもの多くは正規の学校に行けない・行かない、不登校の状態にあります。そこで、杉並区での不登校の状況を見ておきたいと思います。
不登校の子どもの数は国全体で増加傾向と言われますが当区ではいかがでしょうか。区内の不登校の子どもの数と、その推移をお示しください。そして、その子たちが不登校になった原因はおもに何ととらえておられるか。また、それに対する区の見解をうかがいます。
フリースクールなど学校以外の学びの場に通っている区在住の子どもの数と、その子たちが通っているフリースクール等の数を区は把握しておられるでしょうか。ひと口にフリースクールといっても、規模も形式もさまざまなので一括りにできないのですが、概況をつかんでおきたいのであえておたずねします。また、それらのフリースクール等と区との連携や交流はあるのでしょうか。併せておうかがいします。
不登校の子どもの学びの場として、当区では中学生対象のステップアップ教室に加えて、今年度から小学生対象のステップアップ教室が設置されました。これらの開設に至る経緯はどのようなものだったのでしょうか。またこれらの取組みを区はどのように評価しておられるのか、おうかがいします。
当区のステップアップ教室事業などの取組みを評価するものです。けれどもそこへすら行けない、それでも合わない子どもは確実に存在します。学校に行けない・学校が合わない子どもにとって、フリースクールなどの民間施設や居場所が、学びや育ちの場になっています。子どもの学習権を保障するための、公教育のすきまを補充する役割を果たす機関として、文部科学省もフリースクールなどの存在を認め評価しています。フリースクールに対する区の見解をうかがいます。
さて、先ほども申しましたように、フリースクールなどの多くは公的助成や税制優遇の恩恵が受けられないため、厳しい財政状況にあり、保護者の経済的負担も大きなものがあります。区内にあるフリースクールに対する支援や、区内の子どもが通うフリースクールへの支援など検討すべきではないでしょうか。最後の質問としてうかがいます。
いまを生きる子どもの現実が必要としているフリースクールを法的に位置づけ、学びの場を従来型の「学校」に限定せず多様なあり方を認めることは、区の基本構想で描かれた「多様な文化の共生社会を築く」という方向性にも重なるものです。
いま現在、国政は選挙前の混沌としたなかで向かう先が見えない状況ですが、多様に展開されてきた子どもの学びのありようが収縮するようなことにしてはならない、と強く思います。以上申し上げ、私の質問を終わります。