私は、区議会・生活者ネットワークの一員として、健康づくりと介護予防について質問いたします。
2000年に介護保険サービスが導入され、それまで家族の仕事であった介護の社会化が進められて今年で10年が経ちました。その間、2回の介護給付の見直しがあり、2006年から介護予防制度が導入されました。「これまで使っていたサービスが受けられなくなるのではないか」などの、サービス利用者の不安の声を受け、新制度の導入にあたり、私たちの仲間も参加する市民団体とNPO法人が介護予防制度を検証するため、「介護予防・自立支援に関する高齢者実態調査」を行いました。対象は都内在住の要支援、要介護1のサービス利用者162人、調査期間は2006年6月から2009年12月までの3年間継続して、身体状況の変化、介護度の変化、介護保険及び介護保険外で利用しているサービス、自立生活を送る上でほしいと思うサービス、困っていることなどの調査を、行うと同時に、自治体、地域包括支援センター、事業者へも調査を行いました。
調査を行ったこの団体は、調査結果を受け、次の制度見直しに向けて厚生労働省に提言を行っていますが、事業者である自治体が取り組むべき課題も明らかになりました。そこで、区の健康づくり、および介護予防に、より一層の取り組みがされることを期待して、この調査結果をもとに以下、質問いたします。
まず初めに、介護予防施策について3つの項目に分けてうかがいます。最初に、特定高齢者施策について5点伺います。
人はいつまでも元気で年を重ねていきたいと思うものです。しかし、何らかの理由で、生活機能が低下してきた場合、「生活機能評価」の判定結果で、介護予防事業の利用が望ましいと判定された人が「特定高齢者」と呼ばれ、介護予防ケアプランが作成されます。
先に述べたNPOの調査では、特定高齢者と判定される数は年ごとに大幅に増えてはいるものの、介護予防ケアプランを作成した人は少なく、作成したとしても実際に介護予防サービスを利用する人はもっと少ない、という結果が出ています。杉並区でも同じ状況がみられるのではないでしょうか。2009年版の福祉保健事業概要によれば、特定高齢者への介護予防ケアプラン作成数766人となっていますが、それでは特定高齢者と判定された人は何人で、そして実際に介護予防サービスを利用した人は何人でしょうか、伺います。
NPOは介護予防サービスの利用が少ない理由を、「特定高齢者」という区分けにご本人の理解が得られていないためではないか、としていますが、区として、この状況をどうとらえていらっしゃるか、伺います。
特定高齢者に判定された方が介護予防サービスを利用しない場合、要支援や要介護に向かわないようにすることが大事だと考えます。区としてフォローが必要だと考えますが、いかがかでしょうかお答えください。
特定高齢者施策として区が行っている事業には、転倒予防教室、リフレッシュ!リハビリ教室、若返るぞ!筋力アップ教室などの運動機能教室と口腔機能向上教室、栄養改善教室があります。そのなかで、栄養改善教室は1回あたりの平均利用人数が3人と、他の事業と比べて極端に利用が少ない状況が事務事業概要から見てとれます。少ない理由を区としてどうとらえておられるのでしょうか、お答えください。
栄養改善教室のような特定高齢者施策事業への利用者が少ない予防プログラムの場合、一般高齢者と一緒に介護予防のプログラムを提供するように変更している自治体が多くみられた、という調査結果がでています。当区においても見直しが必要だと思いますがいかがでしょうか、おたずねします。
次に、介護予防の施策として大変有効と考えられる「会食サービス」について伺います。
先日、北区の会食サービス「高齢者ふれあい食事会」を仲間と視察してきました。たった1時間程度の食事会ですが、高齢者が「食」を通じて地域社会と交流する機会をつくり、閉じこもりの予防や、日中独居や一人暮らしの方の孤独感の解消、介護予防にも効果があるものです。
65歳以上の要支援・要介護の認定を受けてない人が対象で、毎週1回もしくは隔週で月2回、小・中学校、健康増進センター、商店街事務所、区民センター、老人いこいの家、大学、レストランなど区内のおよそ30か所で行われていました。男性も女性もいつもよりちょっとおしゃれをしている様子が見られ、「皆さんとお話しながら食事をするのが楽しい」との感想が聞かれました。食後には口腔ケアや栄養のお話もあるこの食事会に、区も高齢者の健康づくりと生きがいづくりを支援する事業として財政的支援を行い、活動を維持させています。当区としても、会食サービスを介護予防の施策に位置付け、取り組んではいかがかでしょうか、伺います。
現在、一部のゆうゆう館で、すでに会食事業を始めているところがあります。材料費分を「参加費」としていただいているとのことですが、調理人の人件費までは捻出できないし、だからといって高齢者に多くを負担させられないし、という状況です。区は、地域の介護予防の拠点の拡大としてゆうゆう館を当てるとしています。区として会食事業を応援することは、介護予防の主旨に十分叶っているものと考えます。今後、行政による財政的支援も検討しながら身近なゆうゆう館を会食サービスの会場としてはいかがでしょうか、伺います。
次に、介護保険を使う予防給付に関連して4点おうかがいします。
介護保険制度の改正後にあたる2007年度の当区の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算の執行率が55%と大変低い数字となったことに議会で質疑が相次いだことは記憶に新しいところです。区の説明では、新制度が始まったばかりで、サービスが周知されていないため、とされていました。
そこで、直近の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算・決算額の執行状況をお伺いします。
また、事務事業概要ではケアプラン作成数35,715件となっていますが、そのうち実際にサービスを利用された方は何人いらっしゃるのでしょうか。お示しください。
調査報告によると、要支援と認定され介護予防給付サービスを利用している人の方が、利用していない人より同じ介護度を維持している期間が長い、つまり、サービスを利用することで介護度を進ませない効果がある、という結果が出ています。それにもかかわらず、実際は、ケアプランの作成をしない人が多いこと、ケアプランが作成されたとしてもサービスを利用する人が少ないことは問題であると考えます。なぜ、サービスの利用がこのように低いのでしょうか。その理由として、日常生活を円滑に行うためのニーズに合ったサービスが介護予防給付では得られない、使える時間数が足りない、と感じている利用者が多いため、と報告されています。この点に関して、区の認識はいかがでしょうか、おたずねします。
介護保険制度の介護予防給付サービスでは日常生活を円滑に行うのは無理なのであれば、自治体の工夫が必要になってくるものと考えます。
渋谷区では、介護予防ホームヘルプの時間延長サービス、同居家族がいることを理由に介護保険の生活援助サービスが利用できない人対象の訪問介護生活援助サービス、訪問介護外出サービスなどを2008年1月から始めています。また、新宿区の社会福祉協議会が行っている電球替えなど30分程度の援助、ちょこっと困りごと援助サービスなども結構利用されており、このことから生活維持型のサービスメニューが必要とされていることが見て取れます。当区においても独自施策として、昨年から外出支援のサービスが使えるようになりました。まだまだ利用は少なく、より一層の周知が必要だと思いますが、利用した方からは「外出する機会が増えた」という声が届いています。生活援助について、区独自のサービスを検討していくべきと考えますが、いかがでしょうかお答えください。
さて、次に介護予防とかかわりの深い保健事業である「健康づくり」について3点伺います。
2006年の介護保険制度の見直しは、介護給付費用の抑制という理由から「介護予防」が取り入れられました。本来、「介護予防」とは、誕生から生涯にわたり健康づくりに取り組み、高齢になっても介護が必要にならないような健康管理に努めることに他なりません。その意味で、介護予防施策は、健康で暮らすための保健事業と連携を図ったうえで、年齢に応じた心身ともに健康な生活を維持していくことを支援する施策でなければなりません。生涯にわたる健康づくりの視点が薄く、介護給付費用の抑制としての「介護予防」の導入は大きな問題があると私は考えています。
これまで区は、地域社会全体で健康なまちづくりを進めるために、区民・行政・関係団体が協働して多様な地域ネットワークの充実をめざす、としてこられました。これこそ介護予防につながるものと言えます。しかし、現在行われている「健康づくり」はメタボ対策にばかりに焦点が当てられているのではないでしょうか。健康づくりと介護予防をつなぎ、地域で活動するNPOや市民団体など、さまざまな社会資源を連携させていくためには5か所の保健センターが担う役割は大きいものと考えます。現在の保健センターの仕事として高齢者に対する施策の取り組みが弱いのではないかと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。
私は2年前の2008年、第1回定例会で、健康づくりについて、「保健センターとゆうゆう館事業との連携」を求める質問をしました。保健所長から「保健センターの専門職員がゆうゆう館の健康づくり事業に講師として参画するなどして一層の連携を図っていく」との答弁をいただきました。その後改善されたこともありますが、まだ課題を残しているのが実態です。2年前と同じ質問になりますが、地域の健康づくりは、ゆうゆう館などで活動するNPOや市民団体などの地域資源とも協力し、連携を図っていくことが重要と考えますがいかがでしょうか、おたずねします。
区内に32館あるゆうゆう館は、生涯現役世代の推進のため、高齢者の「憩い」「いきがい学び」「ふれあい交流」「健康づくり」の場として設置され、現在28館が、来年度には32館全館がNPO等に委託・運営されていきます。協働事業の目的の一つに「健康づくり(介護予防)」があげられ、各館で様々な企画が進められています。ここに地域包括支援センターや保健センターの持つ専門性や情報がより有効につなげられていくべきと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。
次に、地域包括支援センターとの関連で3点うかがいます。
地域包括支援センターは、①高齢者の総合相談・支援・申請受付 ②高齢者虐待相談・権利擁護相談 ③区の高齢者施策申請受付 ④要援護高齢者等の実態把握 ⑤介護予防事業 ⑥新予防給付マネジメント ⑦地域ケア会議の開催 ⑧介護支援専門員への指導・支援 ⑨地域のネットワークづくり、とかなり広範囲にわたる9つの業務を受け持ち、多忙を極めています。まず、地域包括支援センターの現状と課題は何か、うかがいます。
地域包括支援センターの業務の中に地域のネットワークづくりがあげられています。各種保健・福祉サービスが総合的に受けられるよう、NPOや市民団体など地域にある様々な社会資源と結びつける役割が求められていますが、十分に機能しているのでしょうか、うかがいます。
今回、区内在住高齢者の行方不明問題がありました。あの猛暑のなか、発覚後ただちに調査され、結果を発表された対処は適切であったと思います。その後、この問題にはいくつもの問題が含まれていることが明らかになりましたが、そのひとつの解決策として「見守り」などの地域のネットワークの必
要性が指摘されました。地域のネットワークづくりに日々取組んでおられる地域包括支援センターは、区民にとって高齢者福祉のもっとも重要かつ身近な窓口です。区は地域包括支援センターを地域づくりの拠点として位置づけ、共に高齢者とその介護者を応援することに力を尽くされることが、今後より一層必要と考えますが、区の見解を伺います。
以上述べてきたように、地域包括支援センターが担う役割は非常に大きく、もっと区が主体的にかかわり、人員体制と委託料をふやして、地域包括支援センターを支えることが必要になっていることを加えて申し上げます。
最後に健康づくりや地域包括支援センターの地域づくりの視点を入れ、総合的な介護予防に取組むために、福祉保健計画に介護予防の考え方をしっかり位置づけ、施策の体系化、総合化を行うことが必要であると考えますが、いかがでしょうか。区の見解を伺いまして私の質問を終わります。