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第2回定例会一般質問 2024.6.5 奥田雅子

区議会生活者ネットワークの奥田雅子です。

1.指定管理者制度の検証および今後の方向性について

2.地方自治法改正について

一般質問します。

1.指定管理者制度の検証と今後の方向性について

指定管理者制度は2003年9月の地方自治法改正により、創設された制度であり、地方自治法第244条の2第3項~第11項にもとづくものです。

それまでの管理委託制度では地方公共団体が公の施設の管理を委託できるのは地方公共団体が出資する法人の公社や財団、社会福祉法人等公共的団体、第3セクターに限定されていましたが、指定管理者制度では民間企業なども参加できるようになりました。

住民の福祉を増進する目的をもって、その利用に供するための施設である公の施設について、民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民サービスの質の向上を図っていくことで、施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認める時に活用できる制度となっています。

杉並区では2004年度に初めて区立保育園に指定管理者制度を導入し、以降、スポーツ施設や図書館、集会施設などに導入を広げ、2024年4月1日現在、39施設で導入しています。

2022年度を始期とする区政経営改革推進基本方針において、これまでのコスト削減や効率化を追求した「量の改革」に加え、区民サービスの質の向上のための「質の改革」にも配慮した区政運営を目指していくものとし、従来の「行財政改革」から「区政経営改革」へと転換が図られました。そして、指定管理者制度も最初に導入してから20年が経過し、区民ニーズの多様化や人件費の増加、物価高騰など、社会状況の変化に対応したものとなっているかを検証することとし、昨年の9月にその検証の報告書がまとめられました。

検証の報告では、導入効果、今後の課題、今後の方向性という項目でまとめられており、その結果、「充実させる留意点」や「新たに加える留意点」を盛り込んだ新たな「指定管理者制度の導入・運用に関する方針」を策定していくこととされ、その考え方が示されました。

指定管理者制度については、人件費の圧縮を招きがちであることから私ども生活者ネットワークは、無料サービスを原則とする図書館事業にはそぐわないと考え、過去に反対の立場をとってきた経緯があります。指定管理者制度自体を全否定するわけではありませんが、その管理運営や協定の内容が指定管理者の下で働く人の人権が守られる適正なものになっているかどうかが重要です。最初から指定管理ありきではなく、住民福祉の増進を図る目的を達成するための仕組みは何が良いのか、その考え方を明確にしておくことが必要だと考えており、今後、示される「指定管理者制度の導入運用に関する方針」やガイドラインに注目したいと思います。今回は、報告書の内容の範囲で質問をしていきます。

まず、導入効果、今後の課題について5点伺います。

①財政負担についてはスポーツ施設で11.3%、図書館で29.6%の経費削減となったとありますが、その要因はどこにあると認識しているか、伺います。

②また、集会施設は逆に6%増となり、それは大規模改修や機能の追加など、制度導入前と条件が違うことが理由となっていますが、大規模改修や機能追加の何が増加の要因になったのか、指定管理にしなかった場合と比較した場合はどうだったのか、お聞きします。

③従事者に対しては「総合的に働きやすい」と回答したのは79.3%でしたが、20.7%の人はそうは回答していません。その2割の声をどのように把握しているのか伺います。

④正社員以外の従事者に無期労働契約への転換を42.9%の指定管理者が促しているということは分かりましたが、区はこの数字をどうとらえたか伺います。

⑤昨年7月8日に指定管理者制度をテーマに行った「聴っくオフミーティング」ではどのような意見やアイデアが出され、今回の検証にどのように反映されたのか、お聞きします。

次に、現在、新たな「指定管理者制度の導入・運用に関する方針」およびガイドラインが策定され、これから報告がされると認識していますが、今回は報告書で示された新たな方針の4つの考え方に照らして私が重要だと思う点について5点伺っていきます。

⑥まず、サービス向上の視点の重視についてですが、これは従事者の処遇とも密接に関わってくると考えています。

課題でも明らかになったように75.5%が正社員以外の従事者であり、ほとんどは非正規の、それも中高年女性に支えられていることが分かりました。杉並区は指定管理者との協定を公契約条例の対象としていますが、従事者がスキルを伸ばし、やりがいを持ち、働きやすいと感じる職場とするための取組に伴うコストについて配慮すると(P9)ありますが、どう配慮するのでしょうか。どのような働き方であろうと賃金がきちんと支払われる人件費の積算が必要であり、そのためには、正規、非正規、パートの配置方針やどの賃金を目安に決めるのかなど明確にする必要があると考えますが、区の見解をお聞きします。

⑦2点目は区職員の業務に関する知識の蓄積についてですが、報告書では公の施設を民間に委ねたとしても、区が施設設置者としての責任を果たす必要があることに改めて触れています。容れ物の管理者がだれであってもその中身に責任を負うのが区であるのは当たり前のことですが、残念ながらその意識が薄いのではと感じる場合がありました。区職員が施設運営の経験や提供するサービスに関する知識をつけていくには現場を持つことが必要であり、直営の施設を確保することが職責を果たすために重要だと私も考えます。その場合、区はどのような施設を想定して直営を残していくと考えているのか伺います。

⑧3点目は施設の特性等に応じた指定管理期間の設定についてです。3年ごとの総務省の調査では、期間の長期化の傾向があると分析しています。報告書にある指定管理者の創意工夫や専門性をさらに発揮できることや初期投資の回収期間を考慮することに加え、例えば社会福祉施設や保育施設などは、利用者と施設職員との継続的な信頼関係が特に必要と認められるため5年以上の期間とする場合も想定できます。そのため5年を超える場合も含め指定管理期間の考え方を明確にしておく必要があると考えますが区の見解はいかがでしょう。

⑨4点目として、区の政策との方向性の確認は特に重要だと考えます。報告書では地域との連携や情報公開、環境問題への対処や男女共同参画社会の実現が取り上げられていますが、マイノリティの方への配慮や様々な障がいのバリアフリーも忘れてはなりません。以前にも全盲の方と共に地域区民センターのバリアチェックをし、課題を質問に取り上げたこともありましたが、ハード面だけでなくソフトで解決できることもあるため、従事者の研修も必要と考えます。区がどういう施設づくりをしていきたいのかのビジョンを明確にし、一緒に実現していくパートナーを選ぶという姿勢が重要だと考えますがいかがか見解を伺います。

⑩5点目はモニタリングの充実についてです。一緒に実現していくパートナーとして課題を共有するためのモニタリングであってほしいと思います。様々な視点から行ったモニタリングの結果をもとに議論する場として外部委員を含む評価委員会を設けることも必要だと考えますが区の見解を伺います。

⑪最後に、公共の再生を政策の中心に掲げる岸本区長はこの指定管理者制度に対して、検証の結果を受けて改めてどのように捉えたのか伺って、次のテーマに移ります。

2.地方自治法改正について

1946年に日本国憲法に「地方自治」が規定され、憲法の理念を具現するため内閣総理大臣の諮問機関として地方制度調査会が設置されました。

その翌年1947年に地方自治法が制定され、1952年には地方制度全般を検討することを目的に地方制度調査会設置法が制定されたという経緯があります。この間、調査会によって、地方自治・分権が推し進められてきたものと認識していますが、昨年12月21日に出された第33次地方制度調査会答申「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」を踏まえ、政府は2024年3月1日地方自治法改正案を閣議決定し、現在開会中の第213回通常国会に上程し、5月28日の衆議院総務委員会で可決、30日の衆議院本会議でも可決され、本日参議院本会議にて趣旨説明、明日以降の総務委員会にて審議、13日には総務委員会で採決、6月23日までの会期中に成立見込みとの情報です。

地方自治法改正案の概要は大きく3点。1つはDXの進展を踏まえた対応、2点目は地域の多様な主体の連携及び協働の推進、3点目が大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度において、これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例となっています。

しかし、今回の地方自治法改正案については各方面から憲法で保障された地方自治の本旨や2000年の地方分権一括法によって構築された国と地方の対等な関係が損なわれるとの懸念が広がっており、私共、生活者ネットワークも危機感を持っており、その立場から質問いたします。

もっとも看過できないのは3点目の「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度において、これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例」であり、災害や感染症のまん延時に国が閣議決定で「重大な影響を及ぼす事態」と判断した際に、国会も通さず、特例的に国が地方公共団体に対し、「補充的な指示」ができるという点です。

①今回、国が補充的な指示が必要であるとした主な理由として、第33次地方制度調査会答申「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方」において、新型コロナ感染症のまん延時に従来の法制で想定されていない事態が相次いだことや自治体からの情報が迅速に提供されなかったこと、国から大量に発出された通知に現場が対応できなかったことなどを挙げており、あたかも自治体に瑕疵があり、国が直接関与できればうまく行ったかのような印象操作がされています。このことに対し杉並区はどのように受け止めたか伺います。

②地方自治法で定められている自治体への国の関与の一般ルールは国会を通した個別法にもとづいた国の指示権のみです。今回は新たな章を設けて、個別法を根拠としない特例として、国会も通さず、閣議決定で決める「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」時に国の自治体への直接関与を認めることは地方自治の本旨に矛盾するものと考えます。新型コロナ感染症まん延時や大地震の際に起きた課題は検証・分析の上、必要があれば個別法を改正すれば済むことであり、「補充的指示」などと国が地方を見下すような物言いで地方分権の根幹を揺るがすことを軽々に論じてほしくないと思いますが、区の認識はいかがでしょう。

③また、補充的な指示を出せる要件が曖昧なのも問題です。政権による恣意的な判断がなされる可能性はないのでしょうか。

先も述べた通り、2000年に成立した地方分権一括法では国と地方公共団体の関係が対等・協力となり、自治体の機関委任事務が廃止され、法令に基づき国または都道府県が本来果たすべき役割を行う法定受託事務と、それ以外の自治事務となりました。法廷受託事務は指示‐是正の指示‐訴訟‐代執行という流れの上にあり、一方で自治事務に対しては、国の関与は是正の要求に留まっています。今回の改正案では特例について自治事務と法廷受託事務について触れておらず、本来「指示」は想定されていない自治事務にまで指示が入ってしまう可能性があります。自治体は国の下請け機関ではないと強く主張すべきだと思いますが、区の認識を伺います。

④今回もうひとつ危機感をもって見ているのが「地域の多様な主体の連携及び協働の推進」です。第33次地方制度調査会答申には、地域での多様な主体による住民同士のたすけあい、支え合いの事例として、安心安全な地域づくりや子どもの居場所づくり、高齢者福祉などが取り上げられ、それぞれの強みを生かした活動を行っていく枠組み(プラットホーム)を市町村が構築することを支援していくことに触れています。このことだけをとれば、これまで私ども生活者ネットワークも主張してきた市民自治の拡大に資すると歓迎するところですが、改正案では地域住民の生活サービスに資する活動を行う団体を首長が指定できるとし、支援や調整の規定を整備するとしていることは問題です。

地域で活動する市民団体との連携・協働は自治体が自治体議会を含めて市民と共に議論する課題であり、法律で規定すべきではないと考えます。また、特定の団体を恣意的に優遇することも可能となり得ると危惧しますが、区はどのように考えるか見解を伺います。

今回の地方自治法改正案は団体自治としても住民自治としても自治を侵害する内容であり、立法事実も明確ではなく、必要ないものだと考えます。現在、審議中の国会では「指示を閣議決定した後で国会に報告すること」や指示は「必要最小限」とし、指示権行使に当たり自治体と「事前に十分に調整を行うこと」など、一部修正がされたようではありますが、本質的には変わっていません。十分な議論を尽くし、廃案となることを期待しています。

岸本区長は5月10日の地方創生・交流自治体フォーラムで、参加自治体に向けて地方自治法改正案に対する声明を出すことを提案し、翌5月11日付で自治体スクラム支援会議の8つの交流自治体と連名で声明を発表しています。しかし「補充的な指示」に対する要請となっており、物足りなさを感じるところです。憲法92条地方自治の基本原理にも抵触しないのか。日本弁護士連合会も今年3月13日に地方自治法改正案に反対する会長声明を発出し、東京生活者ネットワークでも4月25日付で反対の声明を発表しています。

⑤今回の地方自治法改正案に対して、区長の問題意識は承知していますが、庁内ではどのような議論がされたのか。地方自治の根幹をゆるがす改正案に対して危機感をもって国に対して主張すべきことを主張する姿勢を示さなければ、杉並区の自治が侵されると危惧するものです。杉並区として何らかのアクションを起こすべきだと考えますがいかがか、最後に伺って私の質問を終わります。

 

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