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広報紙 生活者ネットすぎなみ129号発行しました 2023.7.10
本天沼、天沼地域における施設再編についての意見 2023.6.20 そね文子
議案第37号杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例について、区議会生活者ネットワークの意見を申し述べます。
この条例は施設再編整備計画に基づき本天沼、天沼地域における区民集会所とゆうゆう館の機能を本天沼集会所とウェルファーム杉並の3階にある消費者センターの教室に移し、本天沼集会所をコミュニティふらっと本天沼に転換していくというものです。区民の集会施設が当初計画のスケジュールではゆうゆう館が全く使えない期間が発生することや活動場所の確保が難しくなるのではないかとの地域住民の不安や懸念はもっともなことだと思いました。
私たちは施設再編整備については、保育や学童保育需要の高まり、超少子高齢社会を迎え長期的に起こる税収減と社会保障費の増大などの財政的な課題から必要な計画だと理解しています。その上で、実行に当たっては個々の地域性も鑑みながら判断していくことが必要だとも考えています。今回の本天沼・天沼地域については、当初のままの計画であれば私どもも賛成しがたいと考えましたが、昨年の11月の説明会で出された住民意見を区は受け止め、一旦立ち止まり、計画の見直しを行い、設備の充実、スケジュールの変更等改善を図ってきたと認識しています。11月の説明会の段階で示されたウェルファーム杉並の3階の消費者センターの教室を一般区民が利用できるようにしたことに加え、その後、町会などの公共性のある活動には4階の区の会議室の利用ができるようにしたこと、スケジュールを後ろ倒しにしたことで、ゆうゆう館の空白期間が解消されたことやコミュニティふらっとに防音設備が整った部屋を整備すること等の具体的な改善策が示されました。
今回の計画は様々な要素が絡んだものであるため、もし、条例案が否決された場合に児相の開設や就学前の障がい児の相談場所の確保などに支障をきたすことになります。また、移転を前提にパピーナ保育園を選んだ利用者にとっては、すでに移転時期が1年先延ばしになった上に、さらにそれ以上の約束をたがえることは避けるべきだとも考えます。
但し、残る懸念はコミュニティふらっと本天沼のラウンジの位置が区民の方からも指摘されている通り、事務所から死角になっているということです。多世代が交流できるスペースとして運営スタッフが目配りや働きかけがしやすい形になるよう、設計についての再検討を求めます。
私たちは、市民が活動する場所の確保を区立施設にのみ求めるのではなく、民間の地域資源を活用することもあってよいのではと考えます。これから設計・建設に入るパピーナ保育園の新園舎に地域住民も使えるスペースを設けられないか、区もその交渉にあたってほしいと考えます。また、特別養護老人ホームフェニックス杉並の地域交流スペースが一般に開放されていることを知らない区民も多いため、その周知を行うことも求めます。また都営住宅のような公的な建物では、その中にある集会所を地域に開放することを、区が働きかけることも検討いただだきたいと思います。今後、コミュニティふらっと本天沼の運営について継続的な意見交換の場として地域懇談会が設置されましたので、最初から100%ではなくても、少しずつ前に進めながら対話を重ねて改善につなげ、区民がより満足できる形をつくりあげていただくことを要望し、議案には賛成いたします。
第2回定例会 一般質問と答弁 2023.6.2 奥田雅子
認知症の人が暮らしやすい地域づくりについて
【Q1】 〇認知症だから無理と最初から決めつけて、本人の人権が侵害されていないか。医療の前に専門職が人権の視点を持つことが先という基本が全国のトレンドになりつつある。認知症施策の継続、積み上げを担保し、本人のみならず、家族や働く人の人権にも目を向けた条例をつくる自治体も増えてきている。広島県広島市、岩手県矢巾町(やはばちょう)、長野県上田市豊殿(ほうでん)地区や和歌山県御坊市、鳥取県鳥取市、世田谷区などの動きは参考になる。このような認知症施策をめぐる全国の動向に対する区の認識、それらを受けて自治体としての責務をどう受け止めているかうかがう。
〇国の認知症施策大綱でも示しているように、これまでの認知症になったらもうおしまい、といった絶望感から脱却し、これからは発想を変えるべきで、「自分事」、「本人視点」、「可能性重視」、「ともに」、「希望」をキーワードに認知症の新しい常識・文化を醸成することで、本人の存在不安が緩和され、状態が安定し、力を発揮し、支え手としても活躍できるようになる。その結果、家族や社会の負担も軽減していき、一人暮らしでも地域でつながりを持ち自分らしく暮らし続けられるようにしていく時代に突入したという認識を持っているが、このように、認知症観の転換期と言われているが、区の捉えについてうかがう。
〇まずは区役所の中から認知症に対して新しい常識に転換していかなければならないし、それに合わせた制度の見直しも必要ではないか。区の展望をうかがう。
【A1 区長】 国は2019年6月に認知症施策大綱を公表し、その中で、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会をめざすという新しい認知症観を示すとともに、共生と予防を車の両輪として、施策を推進することとしている。また、現在、超党派の議員連盟により、認知症基本法の制定を図る動きもある。こうした動きに前後して、愛知県大府(おおぶ)市を皮切りに、いわゆる認知症条例を制定する自治体が増えていることも承知している。
当区においては、これらの動向を参考に、国の大綱をふまえて、新しい認知症観のもとで大切にすべき認知症本人やその家族の視点を重視しつつ、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく生活を続けられるよう、区民に身近な基礎自治体として、認知症施策を総合的に推進する責務があると考えている。
こうした認識に立って、今年度中に策定を予定する(仮称)高齢者施策推進計画の中で、2040年問題も視野に入れた施策・事業の見直し等を図り、区を挙げて新しい認知症観に基づいた取り組みをしっかりすすめていく。
【Q2】 今年度、新規事業として「認知症介護研究・研修東京センター」との連携が予算化された。このような認知症の転換期と言われる状況に対応してのことと考えるが、連携の意図、協力内容など具体的にうかがう。
【A2 高齢者担当部長】 本年3月に締結した協定書では、東京センターの実践的な研究等をふまえて、区の認知症施策にかかわる各種事業の充実に向けて連携・協働することとしている。今年度はこの協定に基づき、6月に実施する講演会への講師派遣や(仮称)高齢者施策推進計画の策定にあたっての専門的な助言をいただくことなどを予定している。
【Q3】 区が把握している認知症の人の数と、推計する数はどのくらいか。
【A3 高齢者担当部長】 本年4月時点で区が把握している認知症高齢者数は9,859人で、65歳以上の人口に占める割合は8.21%となる。
今後の推計人数については、認知症介護研究・研修東京センターの助言を得て算出することにしており、その結果を(仮称)高齢者施策推進計画の策定等に行かしていく予定だ。
【Q4】 現在の杉並区高齢者保健福祉計画では、施策1の高齢者の地域包括ケアの推進の中に認知症対策があり、①普及啓発や本人発信の支援 ②認知症の予防 ③認知症の早期発見・早期対応に向けた体制・連携強化 ④介護者の支援の充実 ⑤認知症バリアフリーの推進(共生の仕組みづくり) ⑥若年性認知症の方への支援・社会参加支援の6つの柱が立てられている。この6つの柱にそって施策や事業が展開されているが、次の改定に向けてこの間の取り組みをどのように総括し、今後の取り組みの「方向性をどのように考えているのかうかがう。
【A4 高齢者担当部長】 高齢者保健福祉計画の総括については、今年の夏ごろを目途に行い、それらをもとに、新たに策定する計画の施策体系やその方向性をとりまとめることにしている。
【Q5】 認知症サポーター養成講座は認知症の人とかかわる機会が多いことが想定される小売業・金融機関・公共交通機関・公共施設・消費生活相談・警察などの職員向けに実施する必要がある。区内で実施されている機関はどのようなところかうかがう。
【A5 高齢者担当部長】 認知症サポーター養成講座の受講状況は、事業を開始した2007年以降、一般区民や町会・自治会、民生委員、学校関係に加え、ご指摘にあった金融機関やスーパーマーケット、公共機関にも参加いただいており、今後も各機関等に積極的な受講を促していきたいと考えている。
【Q6】 子どもや学生向けの養成講座の実施や高齢者との交流などを通じて、子ども・若者の認知症の人への理解を深めることも必要だが、学校ではどのように取り組んでいるのかうかがう。
【A6 教育政策担当】 教育委員会では、希望する小学校において、認知症サポーター小学生養成講座を実施している。この講座では、認知症の症状や予防についての話を聞いたり、ロールプレイを通して認知症の方がたに接するときの心構えを学んだりしている。
また、高齢者との交流活動としては、伝承遊びのゲストティーチャーとして学校に招いたり、絵手紙の交換を行ったりしている小学校や中学校もある。
教育委員会では、認知症サポーター養成講座の実施を学校に呼びかけたり、高齢者との交流活動をしている学校の取り組みを他校に紹介したりするなどして、子どもたちの認知症への理解に努めていく。
【Q7】 〇地域の個々の活動を面でとらえネットワーク化する取り組みとして、現在、ケア24を中心に進められている生活支援体制整備事業第2層協議体の活動が、まさに地域の支え合いによる生活支援の体制の具現化であるとして期待している。区はこの第2層協議体を、今後どのように発展させていこうと考えているのか、その展望をうかがう。
〇区は基本構想の基本的理念で「誰一人差別されず、取り残されない社会」をつくるとうたっている。超超高齢社会に向かい、もはや行政だけでは立ち行かない現実があるとき、地域の力を合わせてセーフティネットを張り巡らせていく必要がある。その場合、地域住民の自発的活動が杉並区の支え合いの一員として参画し、その活動が持続発展していくよう区としても何らかの支援が必要だと考える。住民自治への投資と考え、自由度のある予算配分もふくめ、今後検討が必要と考えるが、区の見解をうかがう。
【A7 高齢者担当部長】 生活支援体制整備事業における第2層協議体の今後の展望については、区としてもこの取り組みを通して、住民同士が支え合って地域の生活課題を解決する地域づくりを進めていくことが重要と考えている。今後は、現在の57の協議体ごとの活動はもとより、地域の実情等に応じて複数の協議体による連携した活動を支援したり、これらの実践的な活動を適切に周知して、参加者を広げることにつなげたりしながら、より一層、各協議体の活動を地域にしっかりと根付かせていきたいと考えている。
なお、住民自治へ投資する観点からの予算配分については、この第2層協議体をはじめ、地域住民の自発的活動を助長するための事案はさまざまあるが、引き続き適切な予算措置を図っていく。
【Q8】 区ではもの忘れ予防検診を70歳になる区民を対象に2021年度より実施している。認知症に関する正しい知識の普及啓発を行うとともに、認知症の前段階である軽度認知障害の方を早期に発見し、その後の適切なフォローを行うことで認知症の発症や進行を遅らせることを目的としているとあるが、受診者の数はどのくらいで、フォローの対象となるのは何%くらいか。具体的にどのようなフォローがされているのか。また、この事業の効果をどのように区はとらえているのかうかがう。
【A8 高齢者担当部長】 2022年度は5,080人の対象者に受診を勧奨し、その2.4%にあたる120人が受診した。その結果、フォローの対象者数は受診者の12%となる14人となり、それぞれの状況に応じて専門医療機関等につないでいる。
こうしたもの忘れ予防検診は、認知症の前段階にある方を早期に発見し治療につなげることにより、発症や進行を遅らせることに寄与しているものと受け止めている。
【Q9】 認知症初期集中支援チームについて、現在、何チームあり、具体的にはどのような取組がなされているのかうかがう。
【A9 高齢者担当部長】 現在この認知症初期集中支援チームは、区内を東・西・南に分けた3ブロックごとに各1チームを設置している。各チームは、それぞれ認知症専門医と医療・福祉の専門職で構成されており、ケア24を通じて支援対象とした、認知症が疑われる方の自宅訪問による生活状況や認知機能等の確認を経て、援助方針を決定の上、その方針に基づき、継続的な医療・介護サービスの利用や生活環境の改善に向けた支援等を実施している。
【Q10】 区は、認知症の相談にあたる認知症サポート医やケア24スタッフをはじめとする医療や福祉の専門職に向け「認知症対応サポートブック」を発行している。相談に来た人の不安に対して、最初に「大丈夫!」と言ってあげることで、本人や家族が不安になり隠そうとしたり、孤立してしまうような絶望感を持たなくてもすむような、認知症に対する新しい常識を意識した内容になっているか、うかがう。
【A10 高齢者担当部長】 認知症対応サポートブックは、高齢者の介護・医療に携わる関係者が認知症の早期発見・早期対応につなげることができるよう作成・配布しているものである。現在の内容は新しい認知症観を強く意識した内容とはなっていないので、議員のご指摘は次回の改訂を図る際の参考とさせていただく。
【Q11】 家族や介護者の支援メニューはさまざまあり、どれも必要なサービスだと考えるが、実績を見たとき、必ずしも多いとは言えないものもある。知られていないのか、使い勝手の問題なのか介護当事者も交えた検証が必要ではないか。区の見解をうかがう。
【A11 高齢者担当部長】 現在の家族介護者支援事業としては、「ほっと一息、安心ヘルプ」「緊急ショートステイ」「徘徊高齢者探索システム」などがある。これらの事業については区が3年ごとに行っている高齢者実態調査を通じて、一定のニーズがあることを把握しているが、改めて機会をとらえて介護当事者の意見をうかがい、必要な改善・見直しにつなげてまいりたい。
【Q12】 ケアマネ不足が言われる中、ケアラーアセスメントのような介護者支援もふくめたきめ細やかなケアプランの作成が定着しているのか心配するところだが、現状はどうか、区の認識をうかがう。
【A12 高齢者担当部長】 ケア24などでケアプランを作成する際には、介護者の方の希望や意向を聴いたうえで、きめ細やかな内容となるよう努めていると承知しているが、改めてケア24センター長会などの機会に、そうした対応が徹底されるよう促していく。
【Q13】 もの忘れが気になりだした方向けの「認知症あんしんガイドブック」にはさまざまな情報が盛り込まれており、よくできているとは思うが、当事者目線で点検すると改善の余地もあるように感じる。そのため、ガイドブックの改定の際には認知症本人や家族の声を聴きながら作成に活かしていただきたいが、いかがか。
【A13 高齢者担当部長】 本年3月に改訂した認知症ケアパスは、認知症の本人やその家族の意見も取り入れながら作成しているが、より一層当事者の視点を大切にして、見やすくわかりやすい内容となるよう、今後の改訂の際にも工夫・改善に努めていく。
【Q14】 認知症になっても自分のやりたいことができ、心豊かに安心して社会参加していける環境を整える必要があり、そのためには本人が意見を出せる場への参加は欠かせない。さまざまな場面ごとに課題解決するためのアクションミーティングをしくみづくりが必要だと考えるが、区の見解をうかがう。
【A14 高齢者担当部長】 現在行っている本人やその家族が参加する「認知症カフェ」のように、今後も新しい認知症観に基づく本人参加の取組みを促進することは重要と考えている。こうした認識に立って、今後どのような場面で、いかに進めていくかについて、さまざまな関係者の意見を聴いてまいりたい。
【Q15】 町会・自治会を始め、地域でのささえあいの機運を高めるためには、地域住民の参加も不可欠である。認知症に対する新しい常識に頭を切り替えて、地域社会の認識を変えていく必要があるのではないか。その一つのしかけとして、その地域ごとの高齢化率や認知症の人数等のデータを地域住民と共有し、自分事として考えるきっかけを区として投げかけてみてはどうかと考えるが、区の見解をうかがう。
【A15 高齢者担当部長】 ご指摘のようなデータの共有や意見交換の機会は意義あることと考える。まずは、生活支援体制整備事業における第2層の協議体において、取り組んでみたいと考える。
【Q16】 〇今年度、認知症の本人やその家族のニーズに合わせた支援ができるよう、地域ごとに「チームオレンジ」の育成に予算がついたが、そのチームオレンジの取組みについて、どこに位置づき、構成メンバーは誰で、どのような活動をしているのか、また区としてどのような活動をイメージしているのか具体的にうかがう。
〇現在も高齢者を見守るしくみは民生委員やたすけあいネットワークや成年後見人等あるが、このチームオレンジとはどのようにすみ分け、連携を考えているのかうかがう。また、認知症で一人暮らしが今後増えていく中で、居住支援の充実も課題になっていると考えるが、それぞれの役割の明確化について、区はどのように考えているのかうかがう。
〇今後チームオレンジの数を増やしていく必要がある。どのようにはたらきかけていくのか区の見解をうかがう。
【A16 高齢者担当部長】 現在チームオレンジは8チームが組織されており、ケア24の20カ所すべてに設置するよう、段階的に取り組んでいく予定。各チームは、当該地域に住む認知症サポーターのうち、ステップアップ講座を修了したメンバーで構成し、交流活動やイベントの実施などを通して、認知症本人とその家族を支援している。
こうしたチームオレンジの活動は、民生委員やたすけあいネットワークによる安全・安否確認を主として見守り、成年後見人等による経済面でのサポートを軸とした支援と異なり、協働参画的な性格が強いものと考える。
なお、ご指摘の居住支援をふくめ、さらなる連携をどのように図っていくかは、今後の課題の一つと受けとめており、各機関の関係者と意見交換を進めていく。
【Q17】 認知症介護研究・研修東京センターより、「希望をかなえるヘルプカード」が提唱されている。自分が行きたいところややりたいことを名刺大のカードに書いて持ち歩き、困ったときにそれを見せて支援を求めるためのツールだ。最近では「私は認知症です」というカードを選ぶ人が30%になってきたそうで、本人発信ができる社会に変わりつつあると感じた。区も「助けられ上手になろう」とこの間発信してきており、このヘルプカードもそのツールの一つになり得ると考える。また、認知症になってから使い始めるというより、その前から使い方をイメージしておくことも必要だと考えるため、認知症サポーター養成講座やおたっしゃ訪問、高齢者向けの送付物に同封する等して、区としてもこのヘルプカードの普及を進めてはと考えるがいかがか。
【A17 高齢者担当部長】 認知症介護研究・研修東京センターが提唱するヘルプカードについては、現在ケア24高井戸で試験的に活用しており、今後同センターと連携して、杉並版のヘルプカードの作成に取り組むことにしている。その動きに合わせて、ご指摘のような普及啓発の取組みも考えていく。
【Q18】 高齢者在宅支援課に若年性認知症相談窓口が設置され、認知症支援コーディネーターが相談を受けていると認識している。この間の相談件数はどのようになっているか確認する。また、計画に記載されている、若年性認知症の実態把握とともに切れ目のない支援体制の構築状況についてもうかがう。
【A18 高齢者担当部長】 区は2020年度から若年性認知症相談窓口を設置し、相談件数は2020年度13件、2021年度13件、2022年度5件となっている。
また、若年性認知症の実態把握については、介護保険認定者数の中から対象者の実数を把握しており、ケア24や医療機関からの相談をもとに、月1回、東京都若年性認知症総合相談センターの医師をスーパーバイザーとして招いた個別支援会議を実施し、その結果をふまえて、障害福祉サービスや介護保険サービスにつなげるなど、」切れ目ない支援を図っている。
第2回定例会一般質問と答弁 2023.6.2 そね文子
Q1 区はこれまで被害者に継続して関わってきた経験を踏まえ、決して区内から被害者を出さない決意で事業に取り組んでほしいが区の見解を確認する。
A1(区長)予防接種は基本的に健康な人が免疫をつけるために受けるものであり、健康被害が出ないように可能な限り安全に実施すべきと考える。区はこれまで区民の命と健康を守ることを第一に予防接種事業を進めていて、HPVワクチン接種についても、平成25年3月の区議会においてワクチン接種後の健康被害例の指摘を受けた際も、同年6月に国に先駆けて独自の救済制度を策定するなど健康被害にあった人に寄り添った対応に努めてきた。
引き続き予防接種法に基づいた実施方法を遵守することはもちろん、ワクチンの有用性と副反応について客観的に分かりやすく伝え、接種対象者が納得して接種するかどうかを選択できるよう周知していく。また万が一健康被害が発生した際は、被害にあった人に寄り添い、健康被害救済法制度につなげるなど、安全で適切な実施に努めていく。
Q2 2022年2月一般質問で情報提供の方法についてきいたところ、保健所に予診票を受け取りに来た接種希望者に、予診票と併せて区で作成したリーフレットを渡し効果や副反応、相談窓口についてリーフレットに沿って説明し、22年度以降もこの体制を継続するとの答弁があった。現在もこの体制は維持されているのか。
A2(杉並保健所長)現在は接種対象者に予診票を送付する際、効果や副反応、健康被害救済制度について記載したリーフレットを同封し、正確な情報提供に努めている。
Q3 2023年4月からシルガード9が定期接種に追加された。その際の案内はどうだったか。
A3(杉並保健所長)これまで予診票を送付し3回の接種履歴が確認出きていない人及び新たに予診票を送る人に対して、2023年以降はシルガード9も接種できること、効果、副反応、健康被害救済制度について記載した案内をこの3月に送付した。
Q4 シルガード9は従来のワクチンと比較してさらに重篤な副反応被害の報告頻度がたかくなっていることを、区のホームページにわかりやすく掲載できないか。
A4(杉並保健所長)厚生労働省のHPVワクチンの有用性や副反応など予防接種の情報が掲載されているので、区のホームページにはそのリンクを貼ることで周知を図っている。
Q5 2022年度の区内のワクチン接種者数、副反応報告数、区の相談窓口に寄せられたHPVワクチンに関する相談内容について差支えない範囲で教えてほしい。
A5(杉並保健所長)2022年度の区内のHPVワクチン接種者数は2064人、副反応報告、相談はない。
Q6 副反応に対する優れた専門家医師の経験を区の医師会に情報共有し、医療機関での診察に役立ててほしいが区の見解は。
A6(杉並保健所長)区と医師会は定期的に連絡会を開催して意見交換し、議論を重ねてきている。ワクチンの有用性や副反応についても情報共有を行っていく。
Q7 2022年に接種勧奨が再開されてから一般医療機関から協力医療機関に送られる患者は急増している。副反応被害が増えていることを表していると考えるが区の見解は。
A7(杉並保健所長)接種勧奨が再開され接種者が増えることに伴い、ワクチン接種後に生じた症状を診察する協力医療機関の受信者が増加することは想定の範囲内と考える。
Q8 2022年HPVワクチン接種の勧奨が再開されるにあたり、厚生労働省は学校での相談体制も整えてから行うようにとの通知を出したが、教育委員会では養護教諭への情報提供をしたのか。
A8(教育次長)ワクチン接種後の副反応により児童生徒の投稿や学習面に影響がみられる際には、学習面や受診、相談の体制が必要になることから学校と教育委員会、保健所が連絡を取り合いながら対応するとともに、養護教諭に児童生徒や保護者からの相談に活用できる情報を提供している。また昨年4月の勧奨再開時には、ワクチン接種に関する国の健康相談支援サイト「スマート保健相談室」の周知も行った。
Q9 シルガード9が追加されたことについて養護教諭などの情報提供は、教育委員会で行ったのか。
A9(教育次長)現時点ではシルガード9が追加されたという情報提供は行っていないが、今後必要な情報共有は行っていく。
Q10 被害者が出た他自治体では、裁判を支援する団体が作った厚労省のデータに基づくパンフレットを保健所の窓口や養護教諭に配っているところもある。区でも取り組んでほしい。
A10(杉並保健所長)保健所窓口や養護教諭に配布するパンフレットは、接種対象者が接種するかどうか納得して選択できるよう、メリット、デメリットを正確かつ客観的に示したものが適切であると考えるので配布は考えていない。
Q11 子宮頸がん検診を受けやすくし、受診率を上げることこそ一番に取り組まなければならないことと考えるが区の見解は。
A11(杉並保健所長)子宮頸がんは罹患初期には自覚症状がほとんどなく、自分で気づくことは困難だ。
このため、ワクチン接種に加え、子宮頸がん検診を受けやすい環境を整え受診率を高めることが重要だ。
これまでも新規対象者の20歳の人を対象に無料クーポン券を配布し、各種広報媒体でPRを行ってきた。
また40歳以上の国保特定健診対象者には、申し込み手続き不要の受診券シールを送付している。本年からはこれに加え、国民健康保険加入者の罹患率が急増する30歳代の人にも送付することとし、さらなる受診勧奨に努めている。
Q12 キャッチアップ接種について、ガーダシルとサーバリックスはハイリスクのHPVのうち2つの型を予防するとされているが、すでに感染している人には予防効果はないと明記されている。また、年齢が高くなるほど有効性は下がる。このことはHPなどで情報提供して検診を勧めてほしい。
A12(杉並保健所長)2022年8月にキャッチアップ接種対象者に予診票を送付した際、初回性交渉前の年齢層に接種することが勧奨されていること、20歳以降は定期的に子宮頸がん検診を受けることが重要であることを記載したリーフレットを同封した。今後このリーフレットをHPに掲載するなど、キャッチアップ接種対象者への情報提供に努めていく。
Q13 区は男子への接種を決してすすめるべきでないと考えるが区の見解は。
A13(杉並保健所長)国はHPVワクチンを男子に対しても定期予防接種として位置づけることの是非について、今後検討することとし科学的知見の収集を国立感染症研究所に依頼した。区は国の科学的知見の収集状況や議論を注視していく。
第2回定例会一般質問 2023.6.2 そね文子
HPV(子宮けいがん)ワクチン接種について
- 定期接種にシルガード9が追加されたことの懸念について
- HPV(子宮けいがん)ワクチンを男子に接種することの疑問について
昨年区長が交代し、また多くの新人議員の皆さんが入られたので、今回は私がHPV(子宮頸がん)ワクチンの副反応被害に継続して取り組むことになったところから話しを始めたいと思います。杉並区内で2011年11月、中学1年生がワクチンを受け、大変重篤な状態になり、中学校にも通えなくなり、高校、大学も通信制に行くなど、人生が大きく変わってしまった、その被害者に会ったことです。その中学生はワクチン接種直後から腕がしびれその被害について2013年3月に議会で行った質問が新聞報道され、全国から同じ状態で苦しむ家族からの声が届き、全国の被害者家族会が立ち上がりました。
さて、2013年6月、このワクチン接種後に副反応被害が相次いでいることを受け、安全性に課題があることから子宮頸がんワクチンは積極的にお勧めしないという措置がとられていましたが、2022年4月から積極的なお勧めが再開されました。また、積極的なお勧めが中止されていた期間に接種を受けそびれた年代の人たちにキャッチアップ接種としてワクチン接種を勧めるための措置もとられることになりました。
〇区は決して区内から被害者を出さない決意で事業に取り組んでいただきたいが、区の見解を確認します。
〇区では重篤な被害者が出て以降、HPVワクチン接種にあたっては慎重な対応と正確な情報提供に努めてこられたと認識している。区は2022年2月に私が一般質問で情報提供の方法について聞いたところ、保健所に予診票を受け取りに来た接種希望者に、予診票と併せて区で作成したリーフレットを渡し、効果や副反応、相談窓口などについてリーフレットに沿って説明しており、22年度以降もこの体制を継続して情報提供に努めるとの答弁があった。現在もこの体制は維持されているのか。
2023年、今年の4月からは新たにHPVワクチン、シルガード9が定期接種として受けられることになりました。しかし、シルガード9の安全性にも疑問があります。
シルガード9とはこれまでのHPVワクチン(ガーダシル)の成分を約2倍に増量したものです。これまでのワクチンは15種類あると言われる発がん型ウイルスのうち2つの型にしか対応していませんでした。それがシルガード9はそれに5つの型をプラスして7つの型に対応するものになっています。そして免疫増強剤の量も2.2倍になっています。
そもそもこれまで接種されてきたHPVワクチンは、その他の定期接種の平均と比べて重篤とされる副反応報告が8.8倍にも上るもので極めて副反応疑いの頻度が高いワクチンです。厚労省の詳細版パンフレットを見ると、従来型のHPVワクチンの重篤副反応疑い報告は接種1万人あたり約5人なのに対して、シルガード9は約7人と明記されています。厚労省もさらに副反応のリスクが高いことを知りながら接種を勧めようとしているのです。ここで質問いたします。
〇2023年4月からシルガード9が定期接種に追加された。その際にお知らせはどの ようにされたのかうかがう。
〇厚労省のホームページやパンフレットは若い女性に子宮頸がんが増えているという事を強調していますが、国立がん研究センターの資料を見てもそのような事実は見て取れません。先ほど述べたようにシルガード9は従来のワクチンと比較してさらに重篤な副反応被害の報告頻度が高くなっていることを、区のHPに分かり易く掲載していただきたいと思いますがいかがでしょうか、うかがいます。
〇2022年度・2023年度の区内のワクチン接種者数、副反応報告数、区の相談窓口に寄せられたHPVワクチンに関する相談数、差し支えない範囲での相談内容についてうかがいます。
〇昨年4月からHPVワクチン接種のお勧めが再開されるにあたり、厚労省は学校での相談体制も整えてから行うようにという通知を出していました。この通知を受けて区教委では養護教諭への情報提供などしていただくと良いと思いましたが、実際はどのような対応がとられたのでしょうかうかがいます。
〇シルガード9が追加されたことを受け、養護教諭などへの追加の情報提供が必要だと思いますが、区教委ではどのように取り組まれているのかうかがいます。
〇被害者が出た他自治体では、裁判を支援する団体が作った厚労省のデータに基づくパンフレットを保健所の窓口においてもらっているところもあります。杉並区でも取り組んでほしいと考えますが、いかがかうかがいます。
〇医師会への情報提供についても伺います。
5月18日、HPVワクチン薬害の裁判があり傍聴した。その日は医師で信州大学名 誉教授、専門は神経内科学で多くの神経難病について病態解明、診断基準作成、治療法研究に従事されてきた池田修一医師が専門家としての証人尋問に立たれました。池田医師はこれまで200名以上の副反応被害者を診察してきていますが、このことに関わった経緯は子宮頸がんワクチンの副反応について「ワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究」にとり組んでほしいと厚労省から依頼を受けたことからはじまりました。池田医師がHPVワクチン副反応の特徴としたのが、一人の患者に多様な症状が同時に出現する。時期によって症状の組み合わせが変化するということです。そしてCRPS(複合性局所疼痛症候群)、起立性調節障害、高次脳機能障害の病態を併せ持ったような症候群という結論に達したということです。接種後の病態が共通し、特異性があること、海外の国々においては環境や生活習慣、民族など様々な違いがあってもHPVワクチン接種後の患者に共通の病態が出現していることから心理的要因では説明できない。また信州大学では2013年から積極勧奨が控えられ、接種者が減ると、このような患者も減ったことにも言及されました。そして、厚労省の副反応部会は早い段階で免疫反応の可能性を否定し、接種後の痛みや痛みへの恐怖心が惹起する「心身の反応」と結論付けたことを、とうてい科学的データに基づく議論とは言えないと批判しました。厚労省が「心身の反応」と結論付けたことで多くの患者が2次的被害を被ることになった、そう決められたら一般の医師は、あなたは心身の反応だから精神科に行ってと言いい、被害者は一般の医師の診療を受けられなくなり精神科をたらいまわしにされる結果となりました。患者からの話では、1回目、2回目に接種を受けたときから体調が悪くなったという自覚が本人にはあったのに、医師や保護者にその知識がなく、3回受けないと意味がない、無料で受けられる期間が終わってしまうと言って3回目まで受けさせ、それがさらに被害を悪化させたということでした。
〇このような話は厚労省の医師用のリーフレットにも載っていませんが、多くの患者を診てきた優れた専門家医師の経験を区は医師会に情報共有し、区内医療機関での診察に役立てていただきたいと思いますが区の見解をうかがいます。
〇実際に2022年、積極勧奨が再開されてから、一般医師から協力医療機関に送られる患者の数は急増しています。明らかに副反応被害が増えていることを表していると考えますが、区の見解を伺います。
〇ワクチンを打ってもそれですべての子宮頸がんを防げるわけではないため、検診を受けることが促されています。検診は子宮頸がんを減らすために有効な手段として科学的に証明されています。検診を受けやすくし、その受診 率を上げることこそ一番に取り組まなければならないことだと考えますが、区の見解をうかがいます。また、検診受診率を上げるために産婦人科医ではなく、女性看護師による検診が受けられるようにする工夫などもしていただきたいと思いますが、これから区が具体的に取り組もうとすることがあれば併せてお聞かせいただきたいと思います。
〇最後にキャッチアップ接種についてもうかがいます。○○の情報提供、特化してされるべき、HPに掲載していた だきたいがいかがか。
(2)次に、このHPVワクチンを男子に打とうとすることの疑問について質問します。
隣の中野区では小学6年生から高校1年生の男子のHPVワクチン接種に対し、この8月から全額公費助成を行うことが決まっています。対象となるワクチンは現在男性に対して認可されている4価ワクチンのガーダシルです。
海外では男子への接種を勧めている国がありますが、そこでは女子と同じように被害が出ており、裁判も行われている状況があります。
どうして他の自治体でもほとんど例がないことを中野区が行ったのか疑問に思い議会での審議を見てみました。
そこで保健福祉部長の答弁に目を疑いました。HPV感染は性感染症ですから女子に移さないために男子にも接種を行うという視点からの話ですが、保健予防課長はなぜ区でこの施策を進める必要があるかを問われて、「子宮頸がんの罹患率を年齢別で見ますと、20代から40代の子育て世代に非常に発生率が高い。死亡率も高い。そういう事情があります。中略 単に子宮頸がんを区全体で減らすというだけの考えとゆうよりは、やはりお母さんを守るということ」というふうに述べています。
〇ここで確認したいのですが、20代から40代の罹患率が高いという傾向はあると認識しています。しかし20代から40代の子宮頸がんによる死亡率が高いということについては事実とことなると考えます。国立がん研究センターの統計を見ると、子宮頸がんによる死亡率が高くなるのは50代以降で、8割を占めています。決して20代から40代の死亡率は高くはありません。これは間違った情報を元に施策が進められていることを懸念します。この認識に対する区の見解をうかがいます。
〇さらに中野区での議論を見てみると、ワクチンの供給について確認する質問に保健予防課長が国のワクチン分科会での話を引用し、女性は今後9価ワクチン、これはシルガード9のことですが、それに流れる可能性が高いから、4価ワクチンは空くから、そこに男子を入れたいという考え方だったのではと答えています。これはまるで製薬会社の在庫処分に付き合わされているような話で、このような考えで決して税金を使っていただきたくないと思いました。杉並区では重篤な被害者が出たことから学び、このワクチンの危険性について何度も質疑をし、認識も深まっているかと思います。しかし隣の中野区で、このワクチンを強力に進めたい議員の要望があり、危険性やデメリットを認識しないままに他の議員が賛同し、区が男子への接種を勧める事態に至ったことには危機感を抱きました。杉並区は男子への接種を進めるべきではないと考えますが、区の見解をうかがいます。
第2回定例会 一般質問 2023.6.2 奥田雅子
認知症の人が暮らしやすい地域づくりについて
目前に迫る超超高齢化社会を見据え、2019年6月に「認知症施策推進大綱」が国の認知症施策推進関係閣僚会議で取りまとめられました。それを受けて、私は折に触れて区の認知症対策について質問に取り上げてきました。
国はその後の議論を経て、今国会で認知症基本法が成立かといった局面を迎えています。
法の趣旨は急速な高齢化に伴い認知症の人が増加している現状に対し、認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される共生社会の実現を図るというものです。
区も認知症介護研究・研修東京センター(以下東京センター)との協定をすすめ、認知症対策をより一層充実したものにしていこうと取り組まれていると認識しています。現在、次期高齢者保健福祉計画の改定の議論が進められており、東京センターの助言が計画に活かされていくことを期待しているところです。
そのような中、先日、東京センターの永田久美子さんに現在の全国の動きや変わる認知症観についてお話を伺い、意見交換の場を持ちました。
国の動きとともに、認知症施策をめぐる全国の動向として言えることは、現在、非常に重要な転換期であるということでした。それは認知症観の転換であり、以前にも紹介した「認知症とともに生きる希望宣言」にあるように本人発信、本人参画、認知症バリアフリー、地域共生社会へとこれまでの認知症に対する古い常識を新しい常識に変えていくというものです。どこで暮らしていても人権が守られる生活の保障ができているかという視点から、区の認知症施策について伺っていきます。
Q1. 認知症だから無理と最初から決めつけて、本人の人権が侵害されていないか。医療の前に専門職が人権の視点を持つことが先という基本が全国のトレンドになりつつあります。認知症施策の継続、積み上げを担保し、本人のみならず、家族や働く人の人権にも目を向けた条例をつくる自治体も増えてきています。また、広島県広島市、岩手県矢巾町(やはばちょう)、長野県上田市豊殿(ほうでん)地区や和歌山県御坊市、鳥取県鳥取市、世田谷区などの動きは参考になります。このような認知症施策を巡る全国の動向に対する区の認識、それらを受けて自治体としての責務をどう受け止めているか伺います。
Q2. 国の大綱でも示されているように、これまでの認知症になったらもうおしまいといった絶望感から脱却し、これからは発想を変えるべきです。つまり、「自分事」、「本人視点」、「可能性重視」、「ともに」、「希望」をキーワードに認知症の新しい常識・文化を醸成することで、本人の存在不安が緩和され、状態が安定し、力を発揮し、支え手としても活躍できるようになる。その結果、家族や社会の負担も軽減していき、一人暮らしでも地域でつながりを持ち自分らしく暮らし続けられるようにしていく時代に突入したという認識を私は持ちました。
このように、認知症観の転換期と言われていますが、区の認識はどうか、新しい認知症観について、区の捉えについて伺います。
Q.3 今年度、新規事業として「東京センター」との連携が予算化されました。このような認知症の転換期と言われる状況に対応してのことと考えますが、連携の意図、協定内容など具体的にお示しください。
Q.4 区が把握している認知症の人の数と、推計する数はどのくらいか伺います。
現在の杉並区高齢者保健福祉計画では施策1の高齢者の地域包括ケアの推進の中に高齢者の認知症対策があり、①普及啓発や本人発信の支援②認知症の予防③認知症の早期発見・早期対応に向けた体制・連携強化④介護者の支援の充実⑤認知症バリアフリーの推進(共生の仕組みづくり)⑥若年性認知症の方への支援・社会参加支援の6つの柱が立てられています。
Q5. この6つの柱に沿って、施策や事業が展開されていますが、次の改定に向けてこの間の取組をどのように総括し、今後の取組の方向性はどのように考えているのかお聞きします。
ここからは、先ほど挙げた高齢者保健福祉計画の6つの柱に沿って、区の事業について伺っていきます。 まず、1つ目の柱、「普及啓発や本人発信の支援」について
Q6. 認知症サポーター養成講座は認知症の人と関わる機会が多いことが想定される小売業・金融機関・公共交通機関・公共施設・消費生活相談・警察などの職員向けに実施する必要があります。区内で実施されている機関はどのようなところか、すべて教えてください。
Q7. また、子どもや学生向けの養成講座の実施や高齢者との交流などを通じて、子ども・若者の認知症の人への理解を深めることも必要ですが、学校ではどのように取り組んでいるのか伺います。
2つ目の柱の「予防」について
杉並区には区が主催する認知症予防教室や講演会の開催などの啓発事業の他、地域住民の自発的な活動が沢山あります。運動・スポーツ、学びの場や農作業、地域の居場所でのサロン活動等の高齢者の社会参加の場の提供は、社会的孤立を防ぎ、役割の発揮や高齢者の生きがいにもつながり、なによりも地域活動に参加することが介護や認知症予防になるため、今後、ますます重要になってくると考えます。地域の個々の活動を面でとらえネットワーク化する取組みとして、現在、ケア24を中心に進められている生活支援体制整備事業第2層協議体の活動がまさに地域の支え合いによる生活支援の体制の具現化として私は期待していますが、そこが実際に何をするかが重要だと考えています。
Q8. 区はこの第2層協議体を今後、どのように発展させていこうと考えているのか、その展望を伺います。
Q9. 区は基本構想の基本的理念で「誰一人差別されず、取り残されない社会」をつくると謳っています。超超高齢社会に向かい、もはや行政事業だけでは立ち行かない現実がある時、地域の力を合わせてセーフティネットを張り巡らせていく必要があります。その場合、地域住民の自発的活動が杉並区の地域の支え合いの一員として参画し、その活動が持続発展していくよう区としても何等かの支援が必要だと考えています。住民自治への投資と考え、自由度のある予算配分も含め今後、検討が必要だと考えますが、区の見解を伺います。
次に3つ目の柱「認知症の早期発見・早期対応に向けた体制・連携強化」について
Q10. 区ではもの忘れ予防検診を70歳になる区民を対象に2021年度より実施しています。認知症に関する正しい知識の普及啓発を行うとともに、認知症の前段階である軽度認知障害の方を早期に発見し、その後の適切なフォローを行うことで認知症の発症や進行を遅らせることを目的としているとありますが、受診者の数はどのくらいで、フォローの対象となるのは何%くらいか。具体的にどのようなフォローがされるのか。また、この事業の効果をどのように区はとらえているのか伺います。
Q11. 認知症初期集中支援チームについて、現在、何チームあり、どのような取組がなされているのか具体的に説明をお願いします。
Q12. 区は、認知症の相談にあたる認知症サポート医やケア24スタッフをはじめとする医療や福祉の専門職に向け 「認知症対応サポートブック」を発行しています。相談に来た人の不安に対して、最初に「大丈夫!」と言ってあげることで、本人や家族が不安になり隠そうとしたり、孤立してしまうような絶望感を持たなくて済むような、認知症に対する新しい常識を意識した内容になっているか、区の見解を伺います。
次に4つ目の柱「介護者の支援の充実」について
Q13. 家族や介護者の支援メニューは様々あり、どれも必要なサービスだと考えますが、実績を見た時、必ずしも多いとは言えないものもあります。知られていないのか、使い勝手の問題なのか介護当事者も交えた検証が必要ではないでしょうか。区の見解を伺います。
生活者ネットワークではケアラー支援の重要性をこの間の重点政策とし、議会質問でも折々取り上げてきました。ケアラーにとって必要な支援は多様であるため、ひとり一人のニーズを丁寧に聞き取り支援内容を計画するケアラーアセスメントの重要性を訴えた1年前の私の質問では、厚労省が作成した家族介護者支援マニュアルに沿って、ケアラー支援プランを作成しているとの答弁でした。
Q14. ケアマネ不足が言われる中、ケアラーアセスメントのような介護者支援も含めたきめ細やかなケアプランの作成が定着しているのか心配するところですが、現状はどうか、区の認識を伺います。
Q15. もの忘れが気になりだした方向けの「認知症あんしんガイドブック」には様々な情報が盛り込まれており、よくできているとは思いますが、当事者目線で点検すると改善の余地もあるように感じます。そのため、ガイドブックの改定の際には認知症本人や家族の声を聴きながら作成に活かしていただきたいと思いますがどうか、区の見解を伺います。
次に5つ目の柱「認知症バリアフリーの推進(共生のしくみづくり)」について
身体障がい者などに対応したバリアフリー化は一定程度すすみましたが、認知症のバリアフリーは置いて行かれたままになっています。認知症の人にとってのバリアはどんなことかを本人やその家族等から直接声を聴く姿勢が重要だと考えます。買い物や通院、銀行、郵便局、移動、公共施設等生活のあらゆる場面で認知症の人にとってはバリアだらけだという認識を私たちは持つべきです。
昨今、よく聴く事例では、スーパーなどで万引き疑いをかけられ、すぐさま警察沙汰になって家族は見張っておくようにとか施設に入れるようにと警察から言われ、本人も家族も傷ついてしまう。結果、認知症の人は外出を制限されて自由を奪われてしまうということが起きているということです。もちろん自由と安全のバランスの中で対応することが重要でありますが、一方的に認知症本人の気持ちを無視してしまうことは逆効果にもなりかねないため、寄り添える体制が必要となると考えます。
Q16. 認知症になっても自分のやりたいことができ、心豊かに安心して社会参加していける環境を整える必要があり、そのためには本人が意見を出せる場への参加は欠かせません。様々な場面ごとに課題解決するためのアクションミーティングの仕組みづくりが必要だと考えますが、区の見解を伺います。
Q17. 一方、町会・自治会を始め、地域でのささえあいの機運を高めるためには、地域住民の参加も不可欠です。認知症に対する新しい常識に頭を切り替えて、地域社会の認識を変えていく必要があると思っています。その一つのしかけとして、その地域ごとの高齢化率や認知症の人数等のデーターを地域住民と共有し、自分事として考えるきっかけを区として投げかけてみてはどうかと考えますが、区の見解をお聞きします。
Q18. 今年度、認知症の本人やその家族のニーズに合わせた支援ができるよう、地域ごとに「チームオレンジ」の育成に予算がつきましが、そのチームオレンジの取り組み状況について伺います。どこに位置づき、構成メンバーは誰で、どのような活動をしているのか、また、区としてどのような活動をイメージしているのか具体的に伺います。
Q19. 現在も高齢者を見守るしくみは民生委員やたすけあいネットワークや成年後見人等ありますが、このチームオレンジとはどのようにすみ分け、または、連携を考えているのか伺います。また、認知症で一人暮らしが今後増えていく中で、居住支援の充実も課題になっていると考えますが、それぞれの役割の明確化について区はどのように考えているのか見解を伺う。
Q20. また、今後チームオレンジの数を増やしていく必要がありますが、どのようにはたらきかけていくのか伺います。
Q21. 東京センターより、「希望をかなえるヘルプカード」が提唱されています。自分が行きたい所ややりたいことを名刺大のカードに書いて持ち歩き、困った時にそれを見せて支援を求めるためのツールです。最近では「私は認知症です」というカードを選ぶ人が30%になってきたそうで、本人発信ができる社会に変わりつつあると感じました。区も「助けられ上手になろう」とこの間発信してきており、このヘルプカードもそのツールの一つになり得ると考えます。また、認知症になってから使い始めるというより、その前から使い方をイメージしておくことも必要だと考えるため、認知症サポーター養成講座やおたっしゃ訪問、高齢者向けの送付物に同封する等して、区としてもこのヘルプカードの普及をすすめてはどうかと考えますがいかがか伺います。
最後6つ目の柱「若年性認知症の方への支援・社会参加支援」について
Q22. 高齢者在宅支援課に若年性認知症相談窓口が設置され、認知症支援コーディネーターが相談を受けていると認識しています。この間の相談件数はどのようになっているか確認するとともに、計画に記載がある、若年性認知症の実態把握と共に切れ目のない支援体制の構築状況についても伺います。
今回、認知症対策について、認知症の古い常識・文化を新しい常識・文化へと変えていくことが重要であるという視点から縷々質問してきました。古い認知症観のままで悪循環に陥り、苦労している人が非常に多い現状があります。絶望の悪循環から希望の良循環に変えることで互いに楽になる。新しい認知症観を「地域のあたりまえ」に若者や子どもも含め浸透させていく必要があります。普段からのつきあいの中で”変化があっても、これからもよろしくね“と言い合える地域づくりが必要であり、認知症になっても希望をもって住み慣れた地域で暮らし続けられる杉並区にしていきたいと私は思っています。
最後に認知症本人たちが29回も書き直して言葉を紡いだ「認知症と共に生きる希望宣言」の本人たちの思いを紹介します。
私たちは、認知症と共に暮らしています。
日々いろんなことが起き、不安や心配はつきませんが、
色々な可能性があることも見えてきました。
一度きりしかない自分の人生をあきらめないで、
希望をもって自分らしく暮らし続けたい。
次に続く人たちが、暗いトンネルに迷い込まずにもっと楽に、いい人生を送ってほしい。
私たちは、自分たちの体験と意思をもとに
「認知症と共に生きる希望宣言」をします。
この宣言をスタートに、自分も希望をもって暮らしていこうという人、
そしてより良い社会を一緒につくっていこうという
人の輪が広がることを願っています。 と綴っています。
この宣言をきっかけに自らの言葉で体験や希望をリアルに伝え、常識を変える本人が全国で急増中とのことです。認知症を自然体でオープンにできる環境づくりは暮らしやすい地域にもなります。今後の超超高齢社会の進展に伴い、認知症はありふれた状態になり、一人暮らしの認知症も増えていき、今まで体験したことのなり世界が始まっています。
Q23. まずは区役所の中から認知症に対して新しい常識に転換していかなければならないし、それに合わせた制度の見直しも必要になってくるでしょう。最後に区の今後の展望をお聞きし質問を終わります。
第1回定例会 予算特別委員会意見開陳 2023.3.14 そね文子
いのち・平和クラブを代表して、2023年度杉並区一般会計予算並びに各特別会計予算及び関連諸議案について意見を述べます。
昨年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争は1年たった現在も出口が見えず、世界規模での軍事的緊張、エネルギーの高騰など大きな影響を与えています。
国内に目を向けると、岸田政権は国会の議論を経ずに、原発の60年超え運転延長や建て替え容認の方針に転換し、防衛費を5年間で43兆円とすることを閣議決定しました。こうした国民の声を聴かず、いっそう軍事的緊張を高め、いのちを脅かす姿勢は決して許されず、批判の声も強まっています。
3年以上にわたるコロナ禍は、生活困窮と経済格差の拡大を招き、ウクライナ侵攻や円安が原油や生活必需品の値上げに拍車をかけ、区民生活に大きな影響を与えています。
こうした先の見えない不安定な社会状況の中、私どもいのち・平和クラブは、住民に一番身近な基礎自治体の役割である区民福祉をいかに支え向上させるか、長引くコロナ禍での疲弊や物価上昇、昨今の気候危機から区民の命と財産を守り、子どもたちが将来に希望を持てる予算となっているかに注目しました。
情報公開と対話を重視し、気候危機などの重点課題を区民参加で進めることを表明する岸本新区長の予算案に対し、予算編成方針および区政経営計画書の主要事業の概要に沿って、予算特別委員会の質疑も踏まえ、評価する点および要望する点など、意見を述べます。
第1に、区財政と区政運営についてです。
ウクライナ戦争の長期化によるエネルギー危機、海外景気の下振れや金融資本市場の変動など、今後の不透明な経済状況と、ふるさと納税をはじめとする不合理な制度による歳入減が見込まれる中、特別区特有の待機児童対策などの緊急を要する課題や、首都直下型地震などの大規模災害への備えに多くの財源が必要となっています。これに対応するために財政の健全さを保ち、必要なサービスを継続的に提供できる財政運営が求められています。本予算案は、2022年に始まる総合計画に定めた「財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方」に基づき編成され、安定した区政運営を実現できるものと確認しました。
歳入の款で、2022年度以降の40年間の、区立施設の再編整備計画で、必要な財源が確保できるのかを確認しました。特に向こう10年間は改築時期が集中するために財源確保が厳しい時期となります。中でも多額の経費を要する学校改築にあたり、改築の平準化、長寿命化を図りつつ、日常的に予算の確保、コストの削減に向けた施設維持管理の適正化など、多角的な取り組みが必要とされ、全ての区立施設を総合的にマネジメントすることの必要性が国から示されました。地方自治法で住民の福祉を増進する目的で規定された公共施設は、コストの削減だけを重視した進め方ではその役割を果たせないおそれがあります。財源確保のための不要施設の売却や民間との連携が、住民サービスの削減にならぬよう慎重に進めること、また民営化や指定管理の導入がサービスの質を下げるものにならぬようにしっかり検証することを求めます。
第2に、区民生活についてです。
指定管理者制度について、様々な立場の方にアンケートを行ったことを確認しました。私どもには特に区民センターなどへの指定管理者制度導入により、区民サービスの向上が図られたという声がある一方で、活動場所としての使いにくさ等の声が届いています。区はこうした声を把握していないとのことでしたが、アンケート調査だけでなく、生の声も吸い上げ、検証に活かしていただく様求めておきます。また、アンケートの集計結果をぜひ共有させていただくよう要望します。
震災救援所の居住性確保に向けて、これまで求めてきた段ボールベッドの導入の準備が進んでいることやトイレの配置の考え方が確認できました。段ボールベッドの発災時の調達についても事業者と確認していることがわかりました。今後、震災救援所における配置計画や訓練を通して、非常時においても混乱がないようさらなる準備をすすめていただきたいと思います。また、女性の視点から備蓄品を選定する場合は、多様な世代や立場にも配慮し、幅広く意見を聴くよう求めておきます。
第3に、保健福祉についてです。
一つの家庭で複雑で複合的な生活課題を抱えるケースが増える中、区が縦割りから分野横断的な取組の転換を重視し、在宅医療・生活支援センターを中心に、地域における支え合いのしくみづくりの推進や区民を支える包括的支援体制の強化をすすめて来たことを評価します。家族丸ごとの支援がさらにすすむためには、国がすすめている重層的支援体制整備事業に取り組むことも必要であり、今後に期待します。答弁からも行政が地域住民や社会資源と一体的にすすめていく姿勢が確認できました。住民自治を生み育てる視点、ネットワーク型のまちづくりを意識的にすすめていただくよう要望します。
第4に、子ども家庭支援について。
「子どもの権利に関する条例」の制定に向けては2年間かけて、子どもの意見や思いを丁寧に取り入れていく区の姿勢を確認しました。子どもは権利の主体であり、親の所有物でも付属物でもないことを大人こそが理解しなければなりません。子ども自身が主体的に考え、決定に参画していくことを大人がサポートする体制をしっかりつくって臨んでいただくよう要望します。
また、子どもの貧困やヤングケアラーの実態調査は対策を打つ上で必要不可欠な取組です。全体的な傾向把握だけでなく、個々の実態に即した支援につながるよう、支援団体や当事者からの声も集め必要な支援策をつくっていくことを要望します
第5に、都市整備についてです。
都市整備費の中でこれまで議論があった都市計画道路132号線は、事業認可後も地権者や借家人など沿線住民の理解を得ながら丁寧に進められていることが確認できました。計画では車道幅はそのままで、歩道や自転車レーンの幅を広げ、高齢化と人口減により車が減少する時代の人に優しい道路をめざしていることがわかりました。立ち退きや店舗の移転を迫られる方へは暮らしや事業の継続を可能とする十分な補償を区に求めたところ、対象となった方々から不満は出ていないことも確認しました
事業化が始まった阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりは、区内基幹病院として重要な河北総合病院のたてかえを契機にしたものです。けやき屋敷の地権者が屋敷跡地を病院の建て替え用地として貸すことが区に報告されたことで、病院跡地に杉並第一小学校を建て替えることを申入れ、3者の協議が整いました。耐震性に課題がある河北総合病院は、現在の位置で運営を継続しながらの建て替えは不可能で、場合によっては他の地域に移転する恐れもありました。また年間8000台の救急車両が通過する商店街は道路幅が狭く、危険なことから改善が求められていました。けやき屋敷の貴重な緑と震災時の大切な空地は、地権者の努力だけで維持することは難しく、相続税対策で民間の開発に委ねる恐れもありました。区が介在する地区計画になったことで、より多くの緑を守ることが可能となりました。当初杉並第一小学校は現在の位置に高層化し校舎の屋上を校庭にする案で保護者の了解を得てきました。震災時の避難や救援所としての利用には課題が残り、またけやき屋敷を緊急時の避難場所にしていたことは病院の建て替えで不可能となりました。病院跡地への建て替えで校庭も地上につくられ震災救援所としても機能をはたせることになりました。これまでの質疑で心配していた土壌汚染、浸水対策も十分施されることが確認できています。
133号線は、多くの住宅上に計画され、未だ反対の声が地域の多数をしめていることから、会派としては事業化には反対です。東京都に現状を伝えつつ、区としては住民の立場に立って対応するよう求めます。
下高井戸1丁目は京王線の高架化に伴い、中央高速の高架との谷間になり、騒音や排ガスなどによる環境悪化や、狭隘道路が多く住宅密集地域であることから震災時の危険性が指摘されています。区境の地域では、他区の避難所が至近距離となる場合があり隣接区との連携が不可欠です。防災組織の育成やまちづくりの課題について世田谷区との連携を強めるよう求めます。
第6に、環境施策についてです。
気候変動問題に重点を置き、「(仮称)気候区民会議」での議論を経て、多くの区民参加で取り組みを進めようとする試みに期待をしています。杉並区地球温暖化対策実行計画(案)が出され、2030年の温室効果ガスを2000年比で50%削減するという具体的で高い目標が示されました。これを達成するために特に必要なのが家庭部門でのCO2削減となっています。区には着実に取り組みを進めることを求め、私どもも区民と共にできる限りの努力をしたいと決意を新たにするところです。
第7に、職員についてです。会計年度任用職員は、女性が87%、区内在住者が65%となり、常勤職員と比べても圧倒的に女性、そして区民が多いことがわかりました。2022年度は355名が勤続年数6年をむかえることから、労働施策推進法などに基づきハローワークへの大量解雇の通知義務を負うことを指摘しました。年限撤廃は、こうした煩雑な手続きを避けるためにも不可欠であり、また当事者からも不安が訴えられていることからまったなしです。改めて当事者の立場に立って対策を取るよう強く求めておきます。
第8に、教育についてです。
不登校児童生徒が過去最多の700人を超える状況で、その子ども達がそれぞれの状況に応じた教育の機会を確保できるよう、新たに不登校特例校設置の調査研究及びさざんかステップアップ教室の増設を検討することが示されたのは重要です。保護者同士の情報交換やピアカウンセリングにもなる親の会を教育委員会が主催することを、引き続き要望いたします。
コロナ過での制限の多い生活が子どもたちに与えた影響は計り知れません。質疑で教育委員会のマスク着用に対する今後の考え方を伺いましたが、強い強制力と同調圧力によってマスクを着用してきた子どもたちが、一刻も早く気兼ねなくマスクを外せるよう、それぞれの子どもに配慮しつつ働きかけを行うよう要望します。
以上の理由から、2023年度一般会計予算及び各特別会計予算について賛成いたします。 次に、予算関連議案について意見を述べます。
議案第11号、杉並区職員の特殊勤務手当にかんする条例の一部を改正する条例については、東京都が児童相談所業務の手当額を引き上げたことに伴い、杉並区の児童相談所業務手当を見直すものでありますが、人材確保の点からも重要であり賛成します。
議案第12号、杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取り組みの推進に関する条例についてです。全国255の自治体ですでに条例などが制定されていることが判りました。本条例は、誰もが自分らしく生きることが尊重される社会に向かうためのものです。性的マイノリティの方々への理解が社会全体に広がり、また私たちが享受している当然の権利が、同性婚をはじめとするすべての方々に行きわたることを切に願うものです。
今回「性自認」が、犯罪を誘発するとの意図的で誤った宣伝が行われ、不安と偏見を煽っていることは許されません。議案に反対する唯一の理由である「トランスジェンダーを装った男性による女性への人権侵害」は先行自治体では起こっていないことを確認しました。このように全く別次元の問題を同列に扱い、条例案を攻撃するのはヘイトそのものです。優先すべきは誰一人として性犯罪の被害者にしない社会づくりとそのための法的整備を急ぐことです。また、本条例から事実婚が除外されたことは残念であり、今後の拡充を期待します。
議案第13号、杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例についてです。本議案は方南集会所だった場所にコミュニティふらっと方南を設置することとその使用料を定めるためのものです。なお、この地域では、児童館と併設になっているゆうゆう方南館が方南小学校の児童数の増加から学童クラブと放課後の居場所事業を行う施設へとなります。そのため、昨年11月8日の住民説明会では、ゆうゆう館や方南集会所を利用する方々から、活動場所の縮小により定期的利用への不安や施設の環境整備に関する意見・要望が出されていました。区にはこれらの要望に最大限応えるための努力を求めて、議案には賛成とします。
議案第15号杉並区事務手数料条例及び杉並区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例についてです。これは建築基準法の一部が改正されたことを受け規定の改正を行うものです。また、省令等の一部が改正されたことに伴い建築物エネルギー消費性能向上計画認定申請手数料等を定める必要があるための条例提案であり、必要な改正であることから賛成します。
議案第28号、杉並区国民健康保険条例の一部を改正する条例についてです。コロナ感染症の医療費が国保財政の対象とされたことから、国保事業会計の支出が増大しています。23区は国保料の急激な値上げを避けるための対策を取りながらも、支出が増えたことで保険料の値上げは避けられないものとなりました。国保制度は、支出が増えれば青天井で保険料の値上げとなり、被保険者の暮らしへの影響は大きく、払いたくても払えない人を増やします。皆保険としての国保制度を成り立たせるためには、国の抜本的対策が必要です。今後も区長会として国や都への対策を強く求めるよう要望し賛成とします。
議案第29号、令和5年度杉並区一般会計補正予算第1号は、すべての年齢を対象とする新型コロナワクチン接種の費用が含まれています。質疑で明らかにしましたが、区内では10代までの副反応報告数は5名でその内重篤とされたものが3名にも上ります。一方その年代でのコロナウイルス感染症では重症者はいません。このワクチンは特例承認されたもので、接種が事実上の臨床試験と言えますが、区の状況から見て子どもにとっては明らかにワクチンのデメリットがメリットを上回っています。全国では400以上の自治体が子どもへのワクチン接種券の一斉送付を行わない慎重な対応をとっている中、杉並区はこのような状況であるにも関わらず、子どもへワクチン接種券の一斉送付を行うことは、子どもの命を守る姿勢とは言えず改善を強く求めるものです。よって補正予算に賛成はできません。
そのほか議案第14号、議案第27号、議案第30号には賛成します。
最後に、資料作成に御尽力いただいた職員の皆様に感謝を申し上げ、いのち・平和クラブの意見開陳といたします。