第1回定例会一般質問と答弁 2024.2.16 そね文子

共生社会をつくるためのインクルーシブ保育・教育について

Q1 善福寺でインクルーシブ保育を実践している認可外保育施設は地域の宝である。区の職員も視察に行っていると聞いたが、この施設を区はどのように認識しているか。

A1 子ども家庭部長)当該施設は障がいの有無に関わらず誰でもが集える居場所であることに加え、保護者の急な用事にも対応するなど、インクルーシブな取り組みと子育て支援を実践する好事例であり、関係者の努力に敬意を表したい。

Q2 この保育施設では障がい児、医療的ケア児を含めた一時預かりを実施しているが、区からの補助がないため、利用者は自費で通うしかない現状で、運営事業者は厳しい経営状況にある。横浜市では、認可外保育施設の一時預かりに対して国の交付金を活用した補助を実施している。区においても同様の補助制度ができないか。

A2 子ども家庭部長)現在区では認可外保育施設が実施する一時預かり事業への運営補助の仕組みはないが、子育て応援券事業と保育の必要性の認定を受けた子どもを対象とした保育料補助制度を設けている。

提案のあった補助制度の創設については、横浜市や他自治体の事例を情報収集するとともに、地域の子育て支援や障がい児支援を含め、インクルーシブな居場所など複合的な視点から、事業者とも意見交換を継続しつつ組織横断的な課題整理が必要な段階である。

Q3 国の補助金を活用して一定程度の補助が出たとしても、当該施設では医療的ケアの子どもには作業療法士と看護師の専門職が2人も付けていることから、受け入れには大きな経費がかかる。当該施設を支援するためにも、区が来年度試行的に実施予定の「子ども誰でも通園制度」や新たに実施する「多様な他社との関わりの機会創出事業」の実施対象施設に加えてもらいたいがいかがか。

A3 子ども家庭部長)「子ども誰でも通園制度」や「多様な他社との関わりの機会創出事業」の実施対象施設については、6年度の試行実施では本格実施を想定した保育環境に関する検証を行うことから、認可基準を満たしている保育事業、一時預かり事業をすでに実施している認可保育所、小規模保育事業所を予定している。

Q4共生社会を創っていこうという先駆的な取り組みを区が決意をもって支援し、都や国にこのような事業者を支援する制度を作るように提案していくことが、日本にとっての利益につながることであり、それを強く求めたいが区の見解は。

A4区長)さまざまな状況の子どもの支援を行う施設の取り組みについて改めて学んだ。区内にこのような施設があることは貴重であると認識している。事業所を支援する制度をつくるよう、区が国や都に求めていくべきとの提案があったが、国や都の補助を含めまずは他自治体の取り組み事例を参考に研究していきたい。

共生社会の実現のためには障がいの有無にかかわらず、個々の多様性を受け止め、誰一人取り残さないという包括的な体制作りが必要であるとの認識から、子ども、障がい者、高齢者等すべての分野において取り組みを進めてきた。今後こうした取り組みの一層の充実を図るためには、地域の民間事業者や子育てをはじめとする様々な支援を行う団体等と目指す姿を共有し手を取り合って進めていくことが中である。このように取り組むことで、基本構想に掲げる「すべての人が認め合い、支え、支えられながら共生するまち」の実現に向けて進んでいく。

Q5 国立市では障がいの有無にかかわらず、就学通知書を原則居住地に基づき定められた学校を指定し送付することになったが、杉並区でも同様の取り組みができないか。そうすることにより障がいのある子も地域の学校に行けるというメッセージを示すことができる。

A5 教育委員会事務局次長)

就学通知の送付については就学相談の継続中に当該校以外の通知が届くと、保護者が混乱することから、すべての新就学児に一斉に通知することは難しい。

Q6 知的障がいのある子どもが通常学級に在籍する場合、学習権を保障するために個別指導計画をつくり、それぞれの子どもに合った学びが提供されることが必要だがそれはどのように行われているのか。

A6 教育委員会事務局次長)個別指導計画は学校が保護者と協働して作成するもので、一人ひとりの教育的ニーズに対応した指導目標や指導内容、方法等について共有している。学校では子どもに合った学びを提供するため、短期目標と長期目標を設定し、必ず振り返りを行う。その際個別指導計画を在籍学級の担任だけでなく、関係教職員が情報共有することで組織的な支援体制のもとで指導を行うよう努めている。特に新就学児については校長が事前に本人や保護者と面談を行ったうえで、入学式の練習への参加や教室での座席配置を確認し計画作成に活用している。

Q7 学びを保障するためには学習支援教員や通常学級支援員等の研修を行い適切に指導ができるようにすることが必要だ。また、大人がいなくても障がいのある子を自然と気にかけ支えられるように、周りの子どもを育てることも必要だ。子どもは同じ場所で共に育つことで自然に障がいのある子のことを理解し、配慮できるようになる力をもっていてそれを妨げない大人の研修も必要だと考える。

A7 教育委員会事務局次長)教育委員会では教職員や通常学級支援員に対し、特別支援に係る知識の習得、安全管理等についての研修を行っている。具体的には子どもが一人でできることは見守り、難しくてもできるだけ自分の力で行えるよう支援するときの対応方法や子どもの相互理解や思いやりの気持ちをどのように育むかなどについての研修である。このように子どもの経験や自立、支えあいの機会を妨げない支援のあり方を身につけられるよう努めている。

Q8 通常学級支援員等は子どもを支える大切な存在だが、子どもを支援するための校内の会議に参加していないと聞いた。会議は放課後4時以降に行われることが多いが、支援員の勤務時間は午後3時までとなっていて会議に参加するときは無給になるという。子どもと直接接している支援員が会議に出席するのは必須であり、改善すべきと思うがいかがか。

A8 教育委員会事務局次長)通常学級支援員の校内委員会への参加については、校長が必要に応じて出席を求めるものであり、出席しない場合でも会議記録を共有したりコーディネーターを介して情報共有をしたりなどの工夫により連携に努めている。

 

Q9 杉並区では発達に課題がある子どものために、学校に来て子どもの環境を改善する手伝いを保護者が要請すれば、臨床心理士がケアの方法を先生に伝え、その費用は区が負担する学齢期発達支援事業の学校連携という仕組みがある。学校ではどのくらいこの仕組みが活用されているのか。もし使われていない場合は学校が保護者にこの仕組みを周知し、子どもの環境の改善を図ることを積極的に進めてもらいたいがいかがか。それがひいてはすべての子どもにとって居心地のいい教室づくりにつなが雨と思う。

A9 保健福祉部長)区は学齢期発達支援事業として、小学1年から3年生までの児童を対象に、発達支援を促すための個別指導を実施している。個別指導に加えて、学齢期発達支援所が保護者の求めに応じて臨床心理士等を学校に派遣し、学校の先生に対してケアの方法を伝える学校連携を実施していて、利用者の3割がこの仕組みを活用している。

学校連携の保護者への周知については、毎年小学校の校長会を通じて事業内容の説明やチラシの配布を行っているが、保護者の中には学校連携の利用より個別指導を希望する人もいる。今後は引き続き学校連携の周知に努めるとともに、学校連携を希望しない保護者に対して、子どもの特徴や支援方法等を先生たちと共有するよう事業者を通じて促すなど、子どもたちにとって居心地の良い教室となるよう取り組んでいく。

Q10 杉並区ではすべての学校に特別支援学級を配置し、そこを解体して教師が複数で教室運営を行い、障がいのある子を支援するという形が将来的に目指す形ではないかと考えるが区の見解は。

A10 教育委員会事務局次長)特別支援学級の今後のあり方についてですが、障がいのある子どもとない子どもができるだけ同じ場で学ぶことは大切だ。それぞれの子どもが授業内容を理解し、学習活動に参加しているじかんあ、達成感をもちながら充実した時間をすごしつつ生きる力を身に付けていくことができるかどうかが義務教育においてもっとも本質的な視点であると考える。こうした考えに基づき、杉並区においては児童、生徒の障がいの状況に応じたきめ細かい指導の充実を図るため特別支援学級は継続していくが、国や都および他自治体の動向に引き続き注視していく。

Q11 現在特別支援学級がある学校ではどのくらいの頻度で共同学習を行っているか。

A11 教育委員会事務局次長)交流及び共同学習については、特別支援学級と通常の学級の担任等が定期的に情報交換を行いながら年間計画に基づき行っている。取り組みの内容はさまざまであるが教科等の授業における共同学習や委員会活動への参加、行事への参加などがある。

Q12大きな災害が起こって地域の体育館に避難するとき、周りに知り合いがいない障がい者家族は子どもが声を出したりじっとしていられないことから、避難所に行くことをあきらめざるを得ない状況がある。一方、地域の学校に通っていたから災害時にみんなが思い出してくれたということもある。学校で共に学び、子どもたちがその子を知っていれば避難所に行ける。こういうことからもインクルーシブ教育の必要性を認識したが区教委の見解を問う。

A12 教育委員会事務局次長)特別な支援を必要とする児童、生徒の避難については、災害時においても普段から訪れる場所であることや日ごろから顔を合わせる友達がいるなど、できる限り日常に近い環境を整えることが重要だ。こうしたことから都立を含む特別支店学校に在籍する児童、生徒の復籍交流は有効な取り組みであると認識している。

Q13 済美養護学校のノウハウをぜひ他の学校に広げてほしい。済美養護学校は特別支援教育推進計画でもセンター校の役割を担っていることが示されているが、どのような取り組みが行われ、どのようなノウハウが他の学校に提供され、研修などに生かされているのか伺う。

A13 教育委員会事務局次長)済美養護学校は区内特別支援教育のセンター校として、小中学校からの要請により教員が相談に応じ助言を行ったり、研修で講師を務めたりしている。今年度は「子どもたちが出合いたい教師になるための実践力の磨き方」をテーマに研修を行った。こうした取り組みを小中学校に広げるため、済美養護学校と小中学校全校の特別支援教育コーディネーターの定期的な研修会を通じて子どもの将来の自立を見据えた関わり方などの共有に努めている。

 

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