私は生活者ネット・みどりの未来の一員として、杉並区まちづくり基本方針について、
1進行管理と進捗評価 2改定に向けた市民参加 3まちづくり活動支援のあり方、以上3つの視点から質問します。
1992年の都市計画法の改正により、市区町村が都市計画基本方針、つまり「都市計画マスタープラン」を策定する権利と義務を持つことになりました。策定に当たっては、市民参加でつくること、地域別計画を策定することが定められ、1997年、当区でも初めて市民参加で都市計画マスタープランがつくられました。区が作成した素案を「たたき台」とし、これをもとに説明会やポスターセッションが開催されました。ポスターセッションでは、パネルに貼った素案を来場した区民に職員が説明を行い、区民の意見を聞きとり、またシンポジウムを開催して、ここでも来場者から意見を聴取しました。それらの意見を整理・検討して修正案が作成され、さらにはこの修正案に対しても意見提出を募るなど、丁寧な市民の声の聞き取りが行われました。
この取り組みは、当時都市マスへの市民参加のあり方を探っていた他自治体職員や市民に先行事例として、あちこちで紹介されていたことを、私自身もまちづくりの仲間とともに都市マスへの市民提案活動をしていたのでよく覚えています。現在はどうでしょうか。当区より後に策定した自治体の都市マスには、市民参加の手法や市民参加で点検・評価を行う見直しのルールなどが規定されるなど、当区よりも一段と進んだ市民参加のしくみが盛り込まれています。このようにして策定した都市計画マスタープラン「杉並区まちづくり基本方針、以下基本方針と申しあげますが、基本方針が5年後の2002年、基本構想「21世紀ビジョン」に整合させるために見直しが行われて現在の基本方針ができ、そして10年が経過したいま、「基本方針」改定の時を迎えています。まず、確認のために2点基本的なことをうかがいます。
まちづくり基本方針(都市計画マスタープラン)とは自治体の行政計画においてどのような位置付けにあるものでしょうか、伺います。また、今回改定する理由と方向性についてもうかがっておきます。
私は、今回の改定は「震度7をどう生き残るか」を最大のキーワードとし、その解決のために集中投資をする覚悟を基本方針でどう表すのか、ということが最も重要と考えます。ここに注目していきたいと思います。
それでは1つ目の視点、「基本方針の進行管理と進捗評価について」うかがいます。
基本方針が描くまちの将来像を実現するには、進行管理と進捗度の評価が重要であることが、都市計画の研究者たちから指摘されています。しかし、基本方針は事業を具体化する実施計画と連動していないため進捗状況が点検・評価しにくいということも言われています。そこでうかがいます。当区において、基本方針の進行管理はどのように行っているのでしょうか、お答えください。また、評価のしくみについてもうかがいます。都内では練馬区が住民参加、情報公開、協働の状況、地域別まちづくりの進捗状況などを評価し、結果を公表しています。国立市は5年ごとに都市マスの評価と見直しを「都市マス評価等市民会議」を設置して行うなど、評価のしくみを持っています。当区としても区民にわかりやすい進捗度を評価するしくみをつくるべきと考えますがいかがかでしょうか。併せておたずねします。
2つ目の視点、「基本方針の改定に向けた市民参加」について2点うかがいます。
5月15日の杉並区都市計画審議会で、基本方針改定に向けて、「まちづくり基本方針検討委員会」が設置されたこと、改定に向けたスケジュール、今年2月に行った「まちづくり区民アンケート」の調査結果などが報告されました。
そこで1点目として、改定スケジュールについてうかがいます。9月に骨子案を公表し区民意見交換会を7地域で実施、11月に素案の公表とパブコメの募集、来年1月都計審への諮問、2月に都計審の答申、区議会への報告を経て、3月、新基本方針の決定となっていますが、そんなに急ぐ必要があるのだろうか、と思います。先の3月に策定された新基本構想では「参加と協働による地域社会づくり」が掲げられ、基本方針には「住民主体のまちづくり」が謳われています。また、まちづくり条例の基本理念には、「区、区民、事業者は、まちづくりに関する必要な情報を共有し、対話を進め、区民の意思が尊重されるまちづくりに取り組むものとする」と書かれています。
ところがこのスケジュールを見る限り、見直しの主体は行政で、区民はお客さま、という姿しか見えてきません。法改正で、都市マスに「住民参加」が入った意味は、そのまちに暮らす住民が主体的にまちづくりに取り組み、責任も持つ、ということと理解しています。これは改定に対しても同じではないでしょうか。住民が参加して、何ができて何ができなかったか、を点検評価して情報を共有化し、区とともにまちづくりの方針をつくっていくことが大事だと考えます。
2002年から10年間の進捗度を区民とともに点検し、重点的に見直す箇所を骨子案の公表時に発表して区民の方たちと意見交換を行ったり、たとえば7つの地域で住民の方たちが地域別方針の策定作業に参加するには日にちが足りません。来年3月にこだわらず、まちづくり条例の理念に沿って、ともに情報を共有し、対話を重ねたうえで改定すべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解をうかがいます。
2点目、「まちづくり区民アンケート」についてうかがいます。
今回の改定にあたり、当区では今年2月、「区民意見を反映するために講ずる措置」の1つとして、無作為抽出した18歳以上の区民5,600人にまちづくり区民アンケート調査が行われました。
今回、アンケートの対象者を18歳以上とされました。私どもは「子どもも区民」、聞き取り方の工夫によって子どももしっかり自分の意見を述べることができると考えています。まちづくりは大人だけのものではありません。小学校、中学校、高等学校の子どもたちが都市マスに意見を出す機会をつくれないでしょうか。たとえば、どんな遊び場が欲しいのか、コワイと思う道はどこか、困っていること・不便に思うことは何か、などを学校や児童館、ゆう杉並、学童クラブ、地域のスポーツクラブなどで聞き取ることはできないのでしょうか。基本方針のなかにも「子どもの頃からまちづくりに親しめるよう、小・中学生を対象にしたプログラムの実施、地域学習の機会を設けていく」と書かれています。
そこで伺います。子どもたちのまちづくりへの参加の意識を高めるために、これまでどのような取り組みがされているのでしょうか。また、その取組みの結果、どのような効果があったのでしょうか。お答えください。教育は結果がすぐに出るものではありません。大事なのは「まちづくり」に触れた経験を、今後どう伸ばしていくのかだと思います。今後どう取り組んでいかれるのかうかがいます。
今回は、前回の見直しの時に行われた区報や区のホームページでの意見募集は行われませんでした。住民の意見聴取の機会が減っています。今後、進めていく段階でできるだけ区民と話し合う場、意見交換をする場を意識的につくっていただくよう要望します。
3つ目の視点、「区民が主体的に行うまちづくり活動への支援のあり方」について5点うかがいます。
冒頭でも述べましたように、1992年の都市計画法改正によりまちづくり基本方針に市民参加が謳われ、これを契機に市民によるまちづくり活動が全国的に活発になりました。当区においても1995年に杉並区まちづくり公社の事業として「街づくり助成制度」がスタートしましたが、2000年公社が廃止されたことにより杉並区まちづくり推進課に引き継がれ、今日に至っています。
そこで1点目の質問です。区が市民のまちづくり活動を支援する目的は、自治基本条例でも謳っているように、自分たちのまちは自分たちの手でつくる、地域の問題は地域で話し合って解決する、という、地域自治の醸成と仲間づくり、コミュニティづくりの応援であると理解していますが、区の認識はいかがかでしょうか、お答えください。
2点目です。この助成制度は2009年からハード面の活動団体への助成に絞られました。その結果、まちづくり公社時代の1999年には23の団体から応募があったのが、昨年度は7団体でした。以前のぎょうにんべんの「街」という字を使った「街づくり支援要綱」の時は、勉強会やまちづくりイベント、AEDの操作方法の研修など仲間づくり、たすけあいの活動も助成対象でしたが、現在のひらがなの「まちづくり助成要綱」に変わった2009年から道づくり、建物調査、川づくりなどハード面「市街地形成のための活動」になっています。「市街地」とはどういうものを指すのでしょうか。私は「人が住む良好な生活の場」であると考えます。「人が住む良好な生活の場」を地域住民が手を出し口も出し、そして支え合い、助け合って地域のなかにつくることが「まちづくり」ではないでしょうか。
阪神淡路大震災以降、ハード面だけでは人の暮らしは成り立たない、支え合いや助け合いがまちには必要、と言われてきたにもかかわらず、ハード面の活動に限定するのは違うと思います。基本方針にも、「区民が主体的に行うまちづくり活動を応援する」と書かれています。助成対象は広くあるべきで、ハード面に関する活動だけに限定すべきではないと考えます。対象を広げる検討をすべきと考えますがいかがかでしょうか、うかがいます。
3点目です。現在、まちづくり活動助成の応募資格に、びぎなーコース、すてっぷコースの2コースがあり、それぞれ助成金額の上限が3万円、7万円と差がつけられています。しかし、コースによって活動内容に違いがあるわけではありません。充実した活動ができるよう、コース別を廃止し、これまでと同様に上限をたとえば10万円とし、審査の場で活動内容を審査することによって助成金額が決まる方法にすべきと考えますがいかがでしょうかお答えください。
4点目です。まちづくり公社時代から数えてまちづくり活動助成事業は今年で17年目を迎えています。私はこの事業が誕生した時から、ある時は助成を受ける側になり、またある時は活動報告を聞く側になり、とこれまでこの事業を見守ってきました。その立場から見て、これまで区は区民の「活動」に対して支援してこられましたが、「人づくり」に対してはまだこれからという状況だと思います。横浜市のまちづくり事業、「ヨコハマ市民まち普請事業」が参考になるかと思います。
身近なまちの整備に関する提案を募集し、公開コンテストで選考された提案に対し最高500万円までの整備助成金が任意団体でも交付されるものです。選考されると専門家が派遣され、アドバイスを受けながら自分たちで業者選び、その地域にあった必要な整備事業の契約、発注の一切を行います。たとえば、民家の塀によって見通しが悪く、事故が多発する交差点を、塀の持ち主と交渉しながら理解を得て、大きく斜めに隅切りをしてポケットパークに変えると言う工事が「ヨコハマ市民まち普請事業」の制度を使って行われています。
今年当区は区政80周年を迎えます。これからのまちづくりを展望したとき、身近なまちの整備を区とともに担える人材育成が欠かせません。これからのまちづくり活動助成のあり方として、そのような視点から、住民自治が進むような人づくりに向けた取り組みが重要であると考えますが、区の見解はいかがかでしょうか。うかがいます。
5点目、最後の質問です。基本方針のなかに、住民参加によるまちづくりの進め方の例示が書かれています。「住民と行政がともにつくる杉並のまちづくりには、広範囲な住民との合意形成を行うことが必要」とありますが、これは住民同士も同じことです。そのための合意形成力を身につけることが必要です。横浜市には「合意形成ガイドライン」がつくられています。これは地域で何かを決める、何かを行おうとするときに、多様な意見を適切に調整しながら地域全体の意向としてまとめるためのマニュアルです。これまで横浜市のまちづくりの現場で起きた事例が数多く紹介されています。
現在22の協議会ができているようですが、特に地区計画策定の時や反対運動が起きた場合にこのガイドラインが使われ、現場での議論に役立っているとのことでした。当区でも、まちづくり現場での成功した例、失敗した例が数多くあると思います。失敗例を含めてそれらは区と区民の宝です。今回の改定を機に、当区としても事例を生かしつつ合意形成のためのガイドラインの作成を求めるものですが、区の見解をうかがいます。
最後に。私もまちづくり活動を行うなかで経験したのですが、まちづくり活動の相談や、助成金の申請は、普通の市民にとってハードルが高いものです。まちづくり推進課はカウンターテーブルも低くして椅子も用意して区民の来庁に備えていますが、気軽に相談してみよう、申請してみようとならないのはなぜでしょう。一般市民の言葉と役所の言葉を通訳してくれるところがあるとだいぶ違うと思います。そこで「まちづくりコンシェルジュ」あるいは「まちづくりセンター」の設置を提案いたします。相談・助言・支援・情報提供などを各専門別の組織が対応するのではなくまとまった拠点で対応するものです。まちづくり条例の中にも、まちづくりに関する知識の普及、情報の提供、都市像の共有などの必要性が規定されていますが、具体的な規定はありません。検討をお願いいたしまして私の質問を終わります。