予算特別委員会の最終日にあたり、区議会生活者ネットワークの意見を申し述べます。
今回の予算特別委員会では、2014年度各会計予算案の他に11本の関連議案が同時に付託されました。限られた時間内で十分に質疑ができませんでしたので、以下、時間の制約により述べられなかったことを中心に申し上げます。
東日本大震災から3年がたちましたが、東京電力福島第一原発事故の収束は遠く、故郷を奪われたままの人たちは依然として14万人を数えます。多くの国民が「原発ゼロ」を望むなか、安倍政権は新しいエネルギー基本計画で、原発を重要なベース電源と位置づけ再稼動に向かって動いています。先月行われた都知事選挙でも、脱原発知事の誕生に期待しましたが残念な結果に終わり、人々の暮らしを大事にしない現政権の暴走はさらに速度を増しています。だからこそ区民のいのちと暮らしを守る基礎自治体の役割はますます重要になっていると言えるでしょう。私たちは、都知事選を機に掘り起こされた脱原発の民意が区政にも生かされるよう、知恵を働かせていきたいと思います。
国の経済状況は、昨年のアベノミクスの「第一の矢」として、過去最大の金融緩和と円安への誘導により、大企業の業績が回復し、富裕層を中心に消費が上向いてきました。しかし、ここに来て、世界的な情勢は、緊迫化するウクライナ情勢、中国の「影の銀行」問題からくる大幅な株安、円高の流れがあります。国内では、「第二の矢」である新成長戦略に具体性が見られないなか、4月から始まる消費税増税に伴う「駆け込み需要」の反動など、複合的に重なるリスク要因が日本経済に影を落としています。生活保護費の切り下げ、雇用が不安定な若者の増加や子どもの貧困の連鎖などの一層の深刻化が懸念され、弱者の救済は急務です。
一方、当区の財政状況を見ますと基金残高が年々減少してきており、来年度予算案でもその傾向がさらに顕著になっています。今後、10年、20年後の区立施設の老朽化とその改修費、維持費を考えた時、基本構想に示された施設再編整備計画づくりに着手されたことは、当然なことだと受け止めています。
最初に、施設再編整備計画について申し上げます。区は、昨年9月の素案(中間のまとめ)から計画案に至るまで、児童館やゆうゆう館の利用者、施設の関係者、施設のある地域の町会などを対象に、延べ160回以上の説明会を開いて来られたことは、一定の評価をするものです。しかし、素案(中間のまとめ)を公表する前に、なぜ実際の施設の利用者、関係者の声を聞かなかったのでしょうか。区民が主体的に取り組む施設再編の形にできなかったことが残念です。今後、具体的な施設の配置について、地域住民と対話型で進めていくと区からお答えいただいています。区と区民との協働の取り組みに期待します。
防災に関連して2点申し上げます。首都直下地震に備え、区は狭あい道路拡幅整備に取り組んでおられます。今年度に続き来年度も、拡幅整備目標を8,000mとする狭あい道路の解消に力を入れた予算が組まれました。2項道路に接しているお宅が、家の建て替え時に塀を後退しなければならないことをご存じでも、塀だけを改修する場合も後退要件の1つになっていることはあまり知られていません。区の職員は目標達成に向けて一所懸命になるあまり、所有者への説明が専門用語の羅列になっていないか、熱心さのあまり強い口調になっていないか、など振り返りながら進めていただくことをお願いいたします。
また、戸別訪問をしてお留守だった方用に、2項道路に面した家屋や塀などを改修、補修・補強する場合は必ず役所の担当係に相談することが、「読めばわかる」「見ればわかる」パンフレットの作成を求めます。生け垣助成の申請でみどり公園課に相談があった場合には、道路のチェックもしくは担当所管につなぐなど、庁内の連携をもって臨んでいただくことをお願いします。
2点目は、大震災が起きた場合、被災後の復興に向けた備えである「地域復興協議会の設立」についてです。早稲田大学都市・地域研究所の阿部俊彦氏は、東日本大震災後のまちづくりがなかなか進まない理由の1つに、復興に向けて市民の準備がないことを指摘し、被災後に立ち上がるための訓練が大事である、と述べておられます。地域で活動するNPO、町会、自治会、社協、民生委員、企業などで活動する方たちが、自分たちにできること、また期待されていることを確認するため、顔を合わせるもので、取り立てて特別なことを行うものではありません。当区でも、区内3地域をモデルにしてすでに始まっている「地域懇談会」がこの「地域復興協議会」の役割を担えると考えます。NPO支援センターや社協が企画しても良いでしょう。復興への準備を視野に入れ、危機管理の所管に加え、区民生活部、福祉部などとも連携してその体制づくりへの歩みを進めることに期待します。
福祉に関連して申し上げます。
在宅重症心身障害児レスパイト訪問看護事業、保育対応型児童発達支援事業所設置助成の予算が新規に計上されました。片時も気を抜けない介護を担う家族に代わって看護士が子どもを見てくれれば家族は安心して休養をとれます。それは命の洗濯の時間となるでしょう。潜在するニーズを考え、障がい児を抱えた家族の就労のための保育対応型児童発達支援事業所開設にむけた動きは、保護者を元気付けることと思います。どちらも当事者に寄り添った先進的な取り組と高く評価し、今後の展開に期待します。
子宮頸がんワクチンにより、副反応被害を受けた中学生に対し、区が独自の救済制度をつくると発表してから1年が過ぎました。中学1年の10月に接種を受けた中学生はいまだに数々の症状により、学校に通うことができない状況ですが、救済のないまま、4月から高校生になると医療費無料の適用もなくなります。区は「子宮頸がん予防ワクチン接種による健康被害専門家会議」を設置しましたが、国の副反応検討部会の結論を待つだけの姿勢です。この部会の専門家は、半数が製薬会社からの寄付を受け取っています。多岐に渡る症状には目を向けず、全身に出る痛みを心身の反応と結論付けようとするなどの議論は被害者にとってはまったく納得がいかないものです。
杉並の被害者は接種直後から症状が出て即日入院しており、主治医もワクチンとの因果関係を認めています。
区が「中学入学お祝いワクチン」として始めた事業です。区民を守るための判断を強く求めます。
さて、政府は2010年度の子どもの貧困率が15.7%になったと発表しました。さらにひとり親家庭の子どもの貧困率は50.8%です。6人に1人の子どもが、ひとり親家庭の2人に1人の子どもが衣食住に困っているということです。未来を担う子どもたちが等しく安心して生活し、教育を受けること、子どもの貧困の解決を図ることは国の最重要政策だと考えますが、日本はその対策が遅れているといわざるを得ません。
昨年の8月に行われた生活保護費の切り下げにより、杉並区内では、約250名の子どもが就学援助を受けられなくなったのではないかとのご答弁がありました。これを踏まえ、小学校における教材費の公費負担と中学校の修学旅行費の保護者負担軽減策を新たに打ち出したことは高く評価するものです。
生活保護世帯の中学3年生への学習塾代の助成でも成果が上がっているとのことを嬉しく思いました。どの子どもも等しく教育を受けられる機会が保障されることに今後も力強く取り組んでくださるようお願いいたします。
学校給食、今回は牛乳に限定して伺いました。アレルギーではないけれど、様々な健康に対する考えから牛乳を飲ませない方針の家庭が一定数あることを申し上げました。はじめから飲まないと申し出ている子どもの牛乳が発注され廃棄されている。環境配慮と食育の観点から、学校という場で毎日大量の牛乳を廃棄することに疑問を感じ問題提起させて頂きました。区教委にはぜひ受け止めていただきますよう、お願いいたします。
続けて教育に関して、部活動活性化モデル事業について申し上げます。この事業は、中学校部活動の活性化を図ることを目的に、顧問教員などの指導者不足の学校へ、教育委員会が指導者を派遣するもので、昨年9月から、スタートした3年間のモデル事業です。昨年12月に行ったアンケートでは、技術力の高いコーチに教えてもらえて上手になった、部活動が楽しい、との記述が見られ、おおむね良好だと思われます。ただ、子どもから大人に向かい心も体も大きく変化するこの時期に、どういう大人に出会うかはその後の彼らの人生に大きな影響を与えます。指導者として技術面だけでなく、指導力や人間性についても見落とせません。1年間に複数回のアンケートをとることや、モデル事業を行っている9校の学校支援本部の方たちとの情報共有の場も必要ではないでしょうか。ご検討ください。
次に可燃ごみの減量について申し上げます。可燃ごみを減らす決め手になるのが4割を占める生ゴミであり、その最適な装置がコンポストだと思います。私もコンポストを愛用していますので、家庭から生ごみは出していません。コンポストをPRするために、全戸配布されるゴミ収集カレンダーに、いろいろなコンポストの写真と使っている人の声を掲載されてはいかがでしょうか。保育園や学校での取り組みを進め、土にかえる資源だということを子どもたちに教えていただきますようお願いいたします。