いのち・平和クラブの一員として地域共生社会の実現に向けて質問いたします。
1.国の動き
今回私が取り上げる「地域共生社会」という言葉は、2015年9月の厚労省による「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」の公表および2016年6月の「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定の流れの中で出てきました。これらを受けて厚労省が2016年7月に設置した「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」のもとにおかれた地域力強化検討会で、その実現に向けた具体的な検討が行われてきたという経緯があります。「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」によると、地域共生社会とは「制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに作っていく社会を目指すもの」としています。そして、今年5月に地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律によって、社会福祉法が改正され、「我が事・丸ごと」の地域福祉推進の理念が規定されるとともに、包括的な支援体制の整備や市町村地域福祉計画の策定が努力義務化されました。
これらの背景には、少子高齢化がすすむ中で、課題が複雑に絡み合い進行してきた社会状況があります。高齢独居や老々介護、高齢の親と働いていない50代独身の子の世帯(いわゆる8050問題)、高齢者と障がい児など両方の介護を抱えるダブルケア、介護や慢性的な病気、精神的な問題を抱える家族の世話をしている若者ヤングケアラー、生活困窮世帯、ごみ屋敷、子どもの貧困・虐待など暮らしを取り巻く問題は複合化、多重化しています。さらに、地域とつながりのない社会的孤立が問題を複雑化させており、従来の制度・分野ごとの「縦割り」では解決できないというところにまで来ているのだととらえています。
介護の社会化が期待されて始まった介護保険制度も17年が経過し、改定の度にケアの縮小や保険料・利用料の負担増が行われ、人々の暮らしを直撃しています。地域での人との関わりが希薄になり、助けてと言えず一人で抱え込んで最悪な事態に至るケースが後を絶ちません。自己責任が言われ、人に迷惑をかけたくない、他者との関係づくりがしにくい、というような不寛容な世の中になったと感じるのは私だけではないと思います。しかし、このような問題に気づき、お互い様のたすけあいが当たり前の地域コミュニティを再構築していこうと動き出している地域住民がたくさんいることも事実です。2025年には団塊の世代が皆75歳以上となり、医療や介護の必要性が今以上に高まることは明らかです。認知症の方がまちの中にあふれているかもしれません。でも、どんな状況になっても大丈夫と言える地域社会をつくっていきたい、という立場から質問します。
1-①対象者の属性に関わりなく、複合的な課題に対する分野横断的な福祉政策、
地域施策が求められていると考えられますが、このような国の法改正の動きに対して区の認識を伺います。
2.杉並区保健福祉計画の改定について
現在の杉並区保健福祉計画は杉並区基本構想に掲げる5つの項目の内、「目標4.健康長寿とささえあいのまち」「目標5.人を育み共につながる心豊かなまち」の実現に向けた保健・福祉・医療施策に関する計画で、子どもから高齢者、障がい者、健康増進、食育推進など9つの計画と介護保険事業計画及び子ども・子育て支援事業計画の一部が包含される形となっています。地域福祉計画は保健福祉計画の一施策「地域福祉の充実」に該当するものとされていますが、本来なら保健福祉計画全体を貫く性格のものであると考えます。そこで、保健福祉計画の作りについて2点伺います。
2-①今回、地域福祉計画の策定が努力義務化されたことを受け、保健福祉計画と地域福祉計画の関係と定め方について伺います。
2-②同時に策定作業がすすんでいる介護保険事業計画についての確認ですが、第7期介護保険事業計画は高齢者保健福祉計画と一体的に策定するとなっています。これまでの介護保険事業計画との違いはどこか。その扱いとなった経緯について確認します。
3.地域福祉計画について
ここからは、先ほども触れました、改正社会福祉法で努力義務化された地域福祉計画の策定プロセスおよび内容について伺って行きます。
3-①まず、地域福祉計画は社会福祉法の改正趣旨を踏まえて策定を行ったのか、また、策定にあたり、参考にした自治体はあるのか、他の自治体の動向についても伺います。
地域力強化検討会の最終とりまとめでは、策定のプロセスにおいては、狭義の地域福祉計画の担当部局のみならず、計画策定を通して協働のしくみをつくっていくことが重要で、地域住民、専門職、関係する団体等と自分たちの地域のこととして丁寧な議論を重ねていくことが必要であると示されています。私もまさにここが胆だと考えています。誰かが作った計画では「我が事」にはなりえないし、全区的一律的な計画では単なる絵に描いた餅になりかねません。それぞれの「人」を取り巻く問題に適切に対応していくことや、地域の実情を把握し、その特性を考慮することが重要です。だからこそ、最終とりまとめの指摘の通り、地域という現場で暮らし活動する地域住民や専門職、関係団体等の意見や議論の場は必要であり、このことをやる覚悟がなければ「我が事・丸ごと」はできないとさえ考えます。そして、まずは「我が事・丸ごと」地域共生社会づくりの目的や意義を全庁的に共有し、担当部署を超えた庁内連携の合意形成が必要だと思っています。そこで、策定プロセスに関連して3点伺います。
3-②庁内でも所管を超えて連携することが求められていますが、地域共生社会の取組みについて、どのように議論・共有が行われたのか伺います。
3-③地域福祉計画はどのような手法で、どのくらいの期間をかけて策定したのか伺います。
3-④地域住民や社会福祉事業者などへのアプローチについては、具体的にはどのような形で行われたのか確認します。また、区民の生活実態やニーズを把握するためのアンケート調査のようなことは行ったのかお聞きします。
次に地域福祉計画の内容に関連して質問します。
地域福祉計画は多分野の福祉計画の上位計画として整合を図り、総合的に推進していくこととなると認識しています。そして、様々な課題を抱える方々の問題解決には、福祉だけにとどまらない様々な分野の横断的連携が必要であることや、制度の狭間の問題への対応のあり方、「我が事・丸ごと」の地域づくりを進めるための圏域の考え方の整理、全庁的な体制整備などが各福祉分野に共通して取り組むべき事項として挙げられています。そこで4点伺います。
3-⑤現在、区が把握している制度の狭間の問題にはどのようなことがあるのかお聞きします。
3-⑥現在の区の地区割りは地域区民センターや町会、民生委員、地域包括ケアセンター、小・中学校など必ずしも一致していませんが、そのことによる 弊害はないのでしょうか。地域づくりを進めるための圏域の考え方については整理しておく必要があると考えますが、区の見解を伺います。
3-⑦さまざまな問題を抱えた方の支援を連携させようとした時、個人情報の保護に配慮するあまり支援の障壁や妨げになることがありますが、福祉的支援が最優先されるべき場合があるため、その当事者の最善の利益を考えた支援を行いやすくするために、個人情報の扱いについて整理しておくことが必要だと考えますが、区の見解を伺います。
「我が事・丸ごと」の地域共生社会を実現していくための大きな柱の一つに市町村による包括的な支援体制の構築があります。最終とりまとめでは次のように示しています。「社会的孤立や制度の狭間、サービスにつながらない課題、将来への不安について、地域全体で支え合うことをめざしていく必要がある。すなわち、分野別、年齢別に縦割りだった支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とし、個人やその世帯の地域生活課題を把握し、解決していくことができる包括的な支援体制をつくる。そのために専門職による多職種連携や地域住民等と協働する地域連携が必要である。」と。そして、連携する分野は福祉、医療、教育、環境、都市計画、防犯・防災などまさに人々の暮らしを支えるあらゆる分野が想定されています。
3-⑧区ではこの包括的な支援体制の構築をどのようにすすめて行こうと考えているのか。また、連携していく分野をどこまでを想定しているのか伺います。
4.地域共生社会の実現のための地域づくりについて
地域共生社会の推進には、区レベルの支援体制とより生活に身近な圏域での包括的な支援体制が重層的に存在することが必要です。そこで求められるのは、小中学校区のような身近な圏域で、地域包括支援センターや社会福祉協議会、地域に根差した活動を行うNPOなどが中心となり、住民の主体的な参加と協働によって地域課題を把握し解決を試みる体制づくりであり、その支援を区は責任をもって行う必要があると考えます。
世田谷区では、行政機関であるまちづくりセンターと社会福祉協議会、地域包括支援センターの三者連携により、区内27カ所に身近な地区における相談支援の充実と地区の課題を地区で解決することをめざし仕組みをつくっています。
9月3日に開催された杉並区社会福祉協議会主催のすぎなみ地域福祉フォーラム2017で、大阪府豊中市の社協の取組みについての講演が行われました。身近な圏域に存在するコミュニティソーシャルワーカーが地域の中に入り込み、地域住民と共に地域の課題を解決していく実績を知り、コーディネート力を持った人材の有効性を学びました。豊中市では人口3万人に一人の割合でコミュニティソーシャルワーカーを配置し、2004年から制度の狭間にある課題を丸ごと支える取組みを全国に先駆けて行ってきました。この講演を行った豊中市社協の勝部麗子さんは地域力強化検討会のメンバーでもあり、今回の最終とりまとめにもこの実践がかなり参考にされていると思われます。また、多くの自治体において社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と市町村の地域福祉計画とを連動させ、車の両輪のようにして地域づくりをすすめており、今後の地域づくりの参考になると感じました。そこで、3点お聞きします。
4-①杉並区社会福祉協議会では、小地域の活動が弱いように感じています。区は、社協に対して地域福祉活動計画の策定を促し、区の地域福祉計画を共 にすすめるパートナーに位置付けるべきではないかと考えます。区として社協に期待する役割について伺がいます
4-②ボランタリーな市民活動の最初の一歩支援や地域でサロンや居場所などを提供している活動を継続させる支援が今後ますます求められていくと考えます。行政ができない部分を地縁団体以外の区民も担うことで地域を元気にしていくための支援を検討すべきと考えますが、区の見解をお聞きします。
4-③7つの地域区民センター協議会は、それぞれの地域にある地縁団体やNPOなどの市民活動団体との連携・協働を深めつつあると認識しています。地域づくりにおいては地域区民センター協議会が役割の一つを担うべきと考えますが、今、力を入れていることや課題となっていること、今後の課題について区の見解をお聞きします。
5.「地域福祉」とはそれぞれの地域において人々が安心して暮らせるよう、地域住民や公私の社会福祉関係者がお互いに協力して地域社会の福祉課題の解決に取り組む考え方であると全国社会福祉協議会では定義づけています。また、月刊福祉9月号の中で同志社大学の永田准教授は住民の主体的な課題解決の力を高め、地域と共に支援すること、地域で解決できない課題や地域が関わることが難しい課題は専門職がしっかり受け止める体制を作っていくことが「地域福祉」だと述べています。人々の暮らしは縦割りではありません。それぞれの「人」を取り巻く問題に対応していくことでその人のニーズが満たされ、どんな状況にあっても誰も社会から排除されない地域社会づくりが必要だと考えます。
少子高齢社会がますますすすみ、区民の行政への期待は増える一方かもしれませんが、限りある財政の中でなんでも行政にやれやれという時代ではなくなっているのも現実です。公・民間・市民セクターが互いの連携と協働により地域に点在する資源を面にすることで地域生活課題を解決したり、新たな機能を生み出すことにつなぎ、地域が活性化していく地域づくりが地域福祉計画だと私はとらえています。特に市民セクターである地域住民の地域づくりへの意識啓発、自分の地域は自分で考えつくっていくと言った住民自治が促進されるような区の支援も必要なのではないでしょうか。今回策定される地域福祉計画を進める中で、次の計画改定も見据えて、区全体、地域課所管の7圏域、中学校区に相当する20の地域包括支援センター、小学校区、そしてさらにご近所という、それぞれのレベルでの地域福祉戦略を地域住民をはじめ関係機関の参加のもとつくっていくことに着手すべきと考えます。
これまで、地域共生社会の実現に向けて、地域福祉計画のあり方や地域づくりなどについて質問してまいりました。最後に2点伺います。
5-①地域共生社会の実現は、ひとつ一つの事例を積み重ねながら実態を作っていくことが必要です。漠然としている上に画一的な形があるものではないため、より自分の暮らしに引き寄せたわかりやすいものであることが必要です。地域に即した戦略が必要ではないでしょうか。行政、地域包括、社協がスクラムを組み、地域住民、地縁団体、NPOなどの市民活動団体と連携しながら地域づくりをすることに対する区の見解をお聞ききします。
5-②最後に地域共生社会の実現に向けた区の意気込みを伺って、私の一般質問を終わります。