いのち・平和クラブを代表して、議案第29号2018年度杉並区一般会計予算並びに各特別会計予算及び関連諸議案について意見を述べます。
2017年12月、厚生労働省は国内で生まれた日本人の赤ちゃんは94万1千人で、100万人を2年連続で下回り過去最少、また死亡数は戦後最多の134万4千人に上り、出生数が死亡数を下回る「自然減」は初めて40万人を超えそうだと発表しました。超少子高齢社会が加速しています。医療や介護の費用は増大する一方で、国保料の大幅値上げ、介護サービスの切り下げが止まりません。景気のゆるやかな回復と雇用の拡大が言われていますが、非正規雇用の拡大で、格差はさらに広がっています。賃金の上昇は大手企業の正規職員や公務員に止まり、非正規雇用が多数を占める若者に恩恵は行き渡っていません。不安定な雇用環境が子どもの貧困や若者、子育て世代の貧困問題を生み出しています。十分な社会保障がなされない中、政府予算では防衛費が6年連続最高額を更新し約5兆2千億円となっています。
東日本大震災から7年を迎えた現在でも、ふるさとに帰れない避難者は7万人を超える中、政府は原発再稼働を進め、この3月で原発事故に伴う賠償は打ち切られます。沖縄ではオスプレイをはじめ米軍大型ヘリの墜落・不時着事故、機材の落下事故が頻発し、県民の不安と怒りは頂点に達しています。県民の反対の声を押し切って高江・辺野古の米軍新基地建設を強行し沖縄の自治を奪い、沖縄の海と自然を破壊し続けています。
大多数の国民の関心は安心して老後を迎えられること、日々の暮らしが平穏におくれることであるにも関わらず、安倍政権は国民の多くが反対する9条改憲に固執し、今年度中の発議を目指すとしています。3月12日、財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書の書き換えを認め、安倍政権のあり方が大きく問われる事態となっています。
人の尊厳や命を軽んじる国の政策が進む中、住民に一番身近な地方自治体の役割が問われています。私どもいのち・平和クラブは、区民の命と平和な暮らしを第一に考え、加速を続ける超少子高齢社会に中長期的な視野を持って、いかに区民が安心して暮らし続けられるか、子どもたちが将来に希望をもてる方向になっているか、緊急を要する課題に応える予算となっているかを検討いたしました。以下、予算特別委員会での質疑の内容を踏まえ、主な賛成理由、評価する点と、要望を付して意見を述べます。
第1は財政運営の姿勢についてです。一般会計予算は前年度比1.1%増の1,799億円で過去最大となりました。投資的経費が減り、区債発行は抑えられましたが保育園待機児童対策などで規定事業の経費が増えたことが予算増加の一因となっています。区長は、「自治体の役割は福祉の増進にあり、財政健全化の指標や数字の達成が目的ではない」と答弁しています。その立場から、区債と基金のバランスをとり、必要な待機児童対策や特養建設など区民の喫緊のニーズに対応する予算となっていることを評価します。今後もふるさと納税による税の流出や恒常的な福祉関連経費の伸びに対し、引き続き財政運営の堅実な取り組みを求めておきます。
第2は認可保育所の整備をさらに加速し、引き続き待機児童ゼロを継続しいていく姿勢です。委員会審議で、今年4月の保育園入園をめざす保護者のアンケート調査結果を示し、1次の申し込みをした保護者の反応では、認可保育所の1次選考結果からも改善がみられると評価され、2次選考の結果ではさらに改善されていることを確認しました。2017年4月に続いて2018年4月待機児童ゼロ達成を目指したことは、保活に苦労してきた保護者には評価されていることがわかりました。保育所の地域偏在は、かなり改善されたと評価されています。質疑の中で3歳の壁について、拡充をはかる区の姿勢も確認できました。育休取得のポイントにはおおむね評価を得ていますが、1歳で入れる保証が必要であり、0歳児を減らして1歳児の募集を増やしてほしいという声に応える区の方向性も確認できました。新年度も引き続き認可保育所の増設と地域偏在の解消を目指す方向が打ち出され、保育の質の確保をめざす巡回指導などもさらに拡充されており、一連の取り組みを高く評価します。
第3は特養ホームの待機者解消対策についてです。
この間区は、特養待機者の解消をめざし、国公有地や学校統廃合で利用できる区有地などを活用し特養整備に力を注ぎ、待機者を年々減らしてきました。しかし未だ緊急を要するAランクの方が600名を超えており、土地の高い区内での整備だけでは厳しい現状の中、南伊豆町と静岡県との連携による区域外特養「エクレシア南伊豆」の開設は画期的なものです。今後は比較的区に近く地価の低い東京西部・多摩地域での区域外特養の整備にも道を開きました。またウェルファーム杉並に特養200床を開設する事業者も決まり、目標の1000床確保に着実な見通しができました。新年度も引き続き特養整備の計画が盛り込まれていることを評価し、利用者の尊厳を守り自立を促進する運営事業者を選定し、利用者や家族が安心できる特養整備を求めます。
第4は今年4月に開設されるウェルファーム杉並の複合施設棟の整備です。区民の福祉と暮らしを支える様々な機能が集約され、さらに高齢者,障害者、子育てなどのそれぞれの分野が連携し調整を行う在宅医療・生活支援センターができることで、地域共生社会の実現に向けた拠点ができました。昨今の複合化・複雑化した区民の生活課題に対応するため、制度ごとの相談機関の分野を超えた包括的支援体制が構築されることを期待します。このことにより、区民福祉の向上が図られ、住み慣れた地域で暮らし続けられるための支援体制が整備されたことを評価します。
第5に子どもの居場所についてです。荻窪北児童館の児童館機能は、1年間は保健センターに移ることになります。その後放課後の居場所事業や学童クラブは改築後の桃2小学校内に移りますが、乳幼児親子の居場所は保健センター内で継続されることを確認しました。荻窪北児童館でゆうキッズ事業に関わってきたグループが継続して関わること、天沼の子ども子育てプラザからもアウトリーチでプログラムを行うことなど、荻窪駅南側にも乳幼児親子の居場所が引き続き確保されました。荻窪4丁目公園を整備し、さらに子どもの居場所を増やしたことも評価します。
第6に不登校の子どもへの支援についてです。教育機会確保法が施行され民間の役割の重要性が認められました。不登校の子どもの教育の責任は区が負っていることが明確に示されました。区内の子どもが通う民間のフリースクールと区が意見交換を行うと答えたことも重要です。今後、民間への具体的な支援のあり方や協力体制をつくっていくこと、保護者の意見を聞いて親の会の支援を行っていくことを改めて要望します。
第7に防災・減災への取り組みを継続、強化している点です。区民の防災・減災意識の向上は重要であり、17年度に作成された地震被害シミュレーションの結果を、スマートフォン向けアプリを利用して広く区民に知らせる取り組みを評価します。またそのシミュレーションの結果をもとに、耐震診断・耐震改修の助成制度を拡充すること、感震ブレーカー設置支援地域を拡大することも評価できます。わが会派では防災の観点から液体ミルクの備蓄品への導入を求めてきましたが、このほど厚生労働省が液体ミルクの国内製造が可能となる検討を始めたことを受け、区としても積極的にとりいれるよう要望します。
第8に環境への取り組みを継続、発展させていく姿勢を評価します。食品ロス削減に向けた「杉並もったいない運動」の展開、中でもフードドライブの常設窓口を設置することには大いに期待します。区民への周知をしっかりと行い、区内の子ども食堂や福祉施設への食品提供をより充実させていただきたいと思います。
第9にこれまで区が2012年から原発電気ではない新電力の購入に取り組んできた姿勢を評価します。2015年から2017年の3年間の額は東京電力を使用した場合に比べ、約2億④千万円の削減効果をもたらしたことを確認しました。区は昨年の電力の全面自由化を受けて、2018年度はさらに、低圧電気を使用する自転車駐車場5施設にも拡大する方針を示しました。先日開催された第6回3・11を忘れない杉並区のイベントの講演者である南相馬市職員の藤田幸一さんは原発で受けた被害から「原発はいらない」と明言されました。世界的規模で再生可能エネルギーへの転換が図られている今、原発に頼らない電力購入と再生可能エネルギーの拡大に一層取り組むよう期待するものです。
第10に、区長が子どもたちの夢をかなえるべく要望を受け止め、事業化された「遅野井川浸水施設」の実現です。善福寺川やその周辺の清掃活動などを行ってきた小学生が考えた善福寺公園内の「みんなの夢水路」整備にあたっては、そのプロセスにおいて基本設計や植栽、整備後の管理など小学生や地域住民と区がともに進めてきたことは多くの区民に親しまれる憩いの場となっていくものと評価します。
以上、主な賛成理由について述べました。
加えて、今後の区政運営について特に留意していただきたい点について、以下つけ加えます。
第1に区立保育園民営化についてです。
2017年9月に今後の区立保育園の役割と民営化の方針が出されました。民間の保育施設が急増するとともに認可外も含めた多様な保育形態が存在している中、区立保育園は区内すべての保育所のリーダー的役割を果たすことにより、杉並区の保育の質の全体の底上げを図っていく考え方は支持します。しかし、一方2024年度には区立保育園を27園にするとの方向性が示されましたが、その計画ありきではなく、区立保育園を存続するよう要望します。
また、家庭福祉員などの認可外保育所へのニーズは一定数あり、それぞれの良さを生かした多様な保育サービスが選択できる環境が維持されることを確認できました。今後も認可外保育施設への支援を求めます。
第2に富士見丘小中学校の今後の在り方についてです。
この間区は、「富士見丘小中学校の今後の在り方は施設一体型ありきではなく、改築検討懇談会で住民の意見を聞きながら検討していく」と述べてきました。2014年の富士見丘小学校教育環境懇談会と2015年の富士見丘地域における教育環境懇談会は、中学に隣接する小学校改築用地の条件から、施設一体型が前提であるかのような議論がされてきた経過がありました。一方、高井戸小学校との連携の問題や、小学校6年、中学校3年という一つの節目を大事にしてほしいとの意見も保護者からは出されていました。
富士見丘小学校は、単学級化した学区の小学校2校と中学校を統合した和泉学園や高円寺とは、条件が異なることを区も認識されています。隣接する高井戸公園の校庭利用が認められた今、小・中をそれぞれ残し整備することも可能になりました。4月から始まる改築検討懇談会には、富士見丘小・中だけでなく、富士見丘中学校区の高井戸小、高井戸第2小、久我山小のPTA含む学校関係者、地域の町会商店会関係者も入って、小・中施設一体型だけでなく、小・中が隣接した一貫教育の方向も示し検討することを確認しました。教職員組合代表も懇談会に入れるよう求めておきます。
第3に職員の労働環境についてです。
業務量の増大に、過労死ラインを超える超過勤務の実態があります。長期病欠や長期休業も依然として心療系に多く、保育園など福祉系職場の整形外科系が続いて多くなっています。過重労働とならないよう必要に応じた職員配置が不可欠と考えます。当該年度の区政経営計画書の行財政改革では職員10人の削減見込み数が示されており、数値目標を達成するための削減とならないよう、求めておきます。
第4に非正規雇用と「会計年度任用職員」制度についてです。
地方公務員法、地方自治法の改定に伴い再来年4月は区正規職員の半数におよぶパート・嘱託員が会計年度任用職員制度に変わることになりました。一時金が義務付けられる一方で、非常勤が今後その希望にそって雇用の継続になるかどうかが重要な課題となっています。とりわけ杉並区の6年で雇止めにする雇用年限制度の撤廃もあわせて求めるものです。
第5に就学援助制度についてです。生活保護の生活扶助費の削減が行われる中、児童生徒の就学援助はその影響を受ける制度の一つとなります。この間、区は生活保護削減の状況の中で、セイフティネットとなるべく教材の無償化や修学旅行費の一部助成を行い、入学準備金の前倒し支給に踏み出したことは評価をするところです。親の収入の多寡によって、教育に格差が生じることがあってはなりません。国の保護費削減方針により、就学援助の対象から外ずれる児童生徒への対策が課題となっています。入学準備金の増額など就学援助の拡充を求めておきます。
以上、意見、要望を述べてまいりました。
私ども会派の予算要望並びに予算特別委員会における質疑を通して述べてきたことを、今後の区政運営に活かしていただくよう、改めて要望いたします。
自治体の責務は福祉の向上にあるとする区長の姿勢を今後も堅持し、区民の声を聞きながら、だれもが安心して住み続けられる杉並区をつくっていくよう期待します。
以上の理由から、議案第29号杉並区一般会計予算、議案第30号杉並区国民健康保険事業会計予算、議案第31号杉並区用地会計予算、議案第32号杉並区介護保険事業会計予算、議案第33号杉並区後期高齢者医療事業会計予算に賛成といたします。
議案第8号職員給料表の改定について、職員給与に関する条例については区職労、都区連がすでに合意をしています。23区の中でも杉並区は受験率が最も低く、係長級人事の確保は喫緊の課題であるとも察しました。ただし、慢性的な人手不足がある職場があることも課題であり定数の増を求めたところです。また女性職員には子育てなど様々な状況も生起することから、柔軟な対応も求められています。この点では区の認識と姿勢も確認しましたので賛成とします。
議案第9号公益財団への職員派遣について、東京オリンピック・パラリンピック開催にむけて当該年度はオリンピック組織委員会に職員を4名派遣することになります。オリンピックには意見もありますが、派遣は23区共通に要請されたものであることを確認しました。日常的な職員不足の中でさらに派遣により人員が割かれることには課題があります。一方で新規採用職員が当該年度はこれまでの最高の170人となることもわかりました。必要な人員の採用に今後も務めるよう求めておきます。区職労との合意も成立していることから、賛成とします。
議案21号財産交換の議決事項についての一部変更について、質疑を通じて、2016年3月16日の議会の議決により決定した財産交換を実施するにあたり、直近の周辺取引の実勢価格と、あんさんぶるの現状から、交換評価の適正なことを判断しました。今回鑑定に2社を使った理由、その内から不動産研究所(不動研)の鑑定結果を採用した理由も再確認し、今回の不動研の鑑定に示された区に利のある結果からも納得できました。ウェルファーム杉並の建設については賛成理由で評価を述べましたが、これは財産交換という手法により、はじめて6300㎡もの広大な国有地を獲得できた成果です。これからのウェルファーム杉並の役割に期待し議案第21号に賛成します。
議案第16号介護保険の一部改定について、3年毎の保険料の見直しによって今回基準額で500円の値上げ案となりました。滞納繰越金が10,360人と年々増加傾向にあり、その理由の一つに生活困窮が挙げられています。後期高齢者医療保険料の引き上げも重なり、高齢者世帯の厳しさを憂慮するものです。保険料負担の割合の改定など国に対する区長会からの意見提出を強く求めておきます。
議案第37号 国民健康保険の一部改定について、国民健康保険制度の東京都を運営責任とする広域化が4月から始まります。国保財政は、自営業者や農林水産業者、失業者など低所得者層が多く加入し、区の責任において法定外繰り入れを行ってきたところです。国保財政の運営責任が都になることで、保険料が青天井で上がっていくことに危機感を募らせてきました。今回、23区で統一保険料は20区であり、中野区や江戸川区などが状況に合わせた保険料率を独自に設定することもわかりました。負担の公平化を名目にした低所得者層の保険料アップにより低所得世帯の暮らしの圧迫と、滞納者の増加を懸念します。国保制度の持続のためには、国の抜本的な財政支援が求められています。
介護保険の一部改定及び国民健康保険の一部改定については、会派の中に反対意見があること言い添え、議案第16号及び議案第37号について、会派としては賛成といたします。
議案第10号杉並区印鑑条例及び杉並区事務手数料条例の一部を改正する条例について、自動交付機での交付が36万4000件になるのに対し、コンビニ交付1万2000件と実績に大きな差があることがわかりました。マイナンバーカード取得率14.8%という現状では、自動交付機の廃止が窓口の混雑をさらに助長することを危惧します。
私ども会派は、なりすましなどマイナンバー制度のリスクを度々取り上げてきましたが、自動交付機の廃止がカード普及につながることも懸念するものであり、議案第10号には反対いたします。
なお議案第8号、議案第9号、議案第11号、議案第12号、議案第13号、議案第14号、議案第15号、議案第17号、議案第18号、議案第21号、議案第36号、議案第38号については賛成といたします。
最後に、予算特別委員会の審議に当たり、御答弁いただきました区長初め理事者の皆様、資料作成に御尽力いただいた職員の皆様、公正公平な委員会運営に努められた正副委員長に感謝を申し上げ、いのち・平和クラブの意見開陳を終わります。
ありがとうございました。