第2回定例会一般質問 2019.6.3 奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として

1.居住支援の取組について

2.空家対策について

3.保育の質の向上の取組について

大きく3つの項目で質問いたします。

 

まずは、

1.居住支援についてです。

「居住」の権利は国際条約で基本的人権として認められています。国連では1948年の世界人権宣言に始まり、1966年の社会権規約の中で、すべての人は適切な住居に居住する権利があるとして居住問題が取り上げられてきました。そして、1976年の第1回国連人間居住会議(ハビタットⅠ)の開催を経て、1978年には国際連合人間居住計画(国連ハビタット)が設立され、2016年に第3回のハビタットⅢが開催されています。国連ハビタットは各国の住宅及び居住問題解決に向けた支援活動を行い、アジア・太平洋地域本部が福岡市に置かれているそうです。居住の保障は人権・生活保障の重要な要素であることが世界共通の認識になっていると言えます。

国連ハビタットが協力する「世界ハビタット賞」という世界の優れた居住支援を表彰する制度がありますが、杉並区居住支援協議会の2017年度のモデル事業に採択されたNPO法人の代表が昨年末にこの最優秀賞を受賞したことが、私がこの国連ハビタットのことを知ったきっかけでした。NPOの取り組みは杉並区の居住支援の取組も含め、人間居住に関する国際的な機関によってそれが高い評価を受けたことは素晴らしいことだと思います。

さて、居住支援について、私はたびたび議会でも取り上げて参りましたが、日本では2017年に住宅セーフティネット法が改正され、低額所得者や高齢者、障がい者、ひとり親世帯、被災者などに対する「入居を拒まない賃貸住宅の登録制度」や「専用住宅の改修・入居への経済的支援」、そして「居住支援」を枠組みとする「新たな住宅セーフティネット制度」が創設されました。杉並区では2016年11月に居住支援協議会が設立され、住宅確保要配慮者の賃貸住宅へのスムーズな入居支援や空き家活用のモデル事業などを進めてきました。しかし、新たな住宅セーフティネット制度の目玉でもある空き家・空き室の活用には課題も多く、成果が出るのに時間がかかっている状況です。所有者家族間などの合意や建物の耐震性、現行法に適合していない既存不適格、検査済証の有無の問題などがあり、手間や時間や費用がかかることがなかなか進まない要因になっていると考えます。とはいえ、知恵と工夫でハードルを乗り越えた事例も生まれてきており、特に高齢者や障がい者のデイサービスやグループホーム、子育て・保育・放課後デイサービス、居場所カフェなどの福祉活用の事例も増え、そこから住宅確保要配慮者の住まいづくりのヒントもあるのではないかと考えます。今後、高齢独居世帯の増加が待ったなしの状況の中、居住支援の取組をさらに充実させるべく、以下質問してまいります。

まず、居住支援協議会の取組み状況について確認します。

1-1.アパートあっせん、家賃債務保証、見守り、葬儀、残存家財撤去などのサービスについ

ては、杉並区の場合、居住支援協議会が設立される以前よりあったと認識していますが、これらのサービスに関する相談件数や成約件数は居住支援協議会設立後に変化があったかどうか伺います。

1-2.この間の議会質問を通して、アパートあっせん事業に協力する不動産業者の店舗数は増え、中でも、特にこの事業内容に賛同して積極的に情報提供に協力する不動産業者も増えていると承知はしています(2018.5月一般質問)。しかし、その後も協力店であることを示すステッカー掲示している不動産店をあまり見ることがないのですが、実態を確認して掲示を促進していただきたいがいかがでしょうか。

また、まち中の不動産店に住宅確保要配慮者などが相談に来店した際に、不動産情報提供だけでなく必要に応じて福祉などの関係機関へのつなぎなども行えるよう環境を整える必要があると考えますが区の見解をお聞きします。

1-3.住宅確保要配慮者は様々な生活課題を抱えているケースも多く、住まいの斡旋にとどまらず、家賃債務保証、日常見守り・相談などの包括的支援が必要であると考えます。豊島区では居住場所に困っている方などに対し、空き家・空き室等の活用や民間賃貸住宅等への円滑な入居を推進するための支援活動等を行うグループとして、居住支援協議会に7つの団体が登録しています。中には東京都の居住支援法人に指定されている団体もあります。杉並区においても住まい探しや暮らしの中の困りごとなどを支援する居住支援団体などの活用をもっと積極的に行っていくべきと思いますが、区の見解をおききします。

次に空家等利活用モデル事業について何点かお聞きします。

1-4.2017年度・2018年度とモデル事業を行いましたが、昨年度は採択された事業がなかったと認識しています。2年間のモデル事業をどう総括し、課題は何か。また、今年度もモデル事業を実施するにあたり、見直したところはあるのか、確認します。

1-5.また、モデル事業の募集時にはセミナーの開催も行われてきました。セミナーの対象や

獲得目標を明確にする必要があると考えますが、今年度のセミナーの内容はどのようなものが検討されているのか確認します。

1-6.2017年の決算特別委員会で空家の利活用について取り上げた際、空家の所有者と利活用したい事業者をマッチングするシステムを構築中と答弁をいただきましたが、そのマッチングシステムはできたのか。具体的にどのようなものなのか、伺います。

1-7.空家利活用は短期間でできるものではありません。空き家探しから事業計画づくり、そしてモデル事業への応募とつながる一連のプロセスに十分な時間を考慮する必要があります。そういう意味では、セミナーの開催はもっと早い段階で行うべきと考えますが、区の見解を伺います。また、空家の所有者と利活用したい事業者をマッチングし、必要に応じてその後の計画づくりを中間支援していく仕組みの充実が求められていると思いますが、区の見解をお聞きします。

1-8.2018年6月公布の建築基準法改正により、用途変更のための建築確認申請が不要となる床面積がこれまでの100㎡以下から200㎡以下へと緩和されることになり、空家活用が法的にも進めやすくなりました。しかし、地域の居場所や小規模デイサービス、小規模シェアハウスやクループホームなどへの転用は広さによっては建築確認が必要となる特殊建築物になる場合が多く、これらを住宅の類似用途として用途転用にあたらないことを明確に位置づけるような検討も必要だと考えます。

特に空家の福祉的活用をしやすくするための課題整理について居住支援協議会で検討してほしいと考えますがいかがか。区の見解をお聞きします。

1つ目の項目の最後に居住支援協議会のHPについて質問します。

1-9.今年の予算特別委員会で居住支援協議会のHPが開設されたことを確認しました。HPを見てみますと、そこには昨年9月6日に開設とありますが、それ以降、全く更新されておらず問題です。HPの管理・更新は誰が責任をもって行うのか確認します。

また、モデル事業やセミナーの案内のアップやモデル事業の応募書類のフォームのダウンロードは居住支援協議会HP各種申請からもできるようにすべきです。居住支援協議会情報は定着するまでは区のHPと並行しつつも、居住支援協議会のHPへの移行を早急にすべきではないかと考えますが、区の考えを確認します。

次に、空き家について先ほども若干触れたところですが、2つ目の項目として

2.空家対策についてさらに掘り下げていきたいと思います。

2016年8月に策定された杉並区空家等対策計画の進捗状況について確認していきます。今後、空家の増加は避けられないことであり、団塊の世代全ての方が75歳を迎える2025年を前に対策が急務です。杉並区空家等対策計画には「空き家等の発生の抑制と適正な管理」「空家等の利活用の促進」「管理不全な空家等への対応」の3つの推進策が掲げられています。そもそも空き家にしない、使える空家は有効活用する、どうしようもなくなったら適正に除却(じょきゃく)するという考え方はその通りだと思いますが、そのために何をどうするかという具体的な取り組みとともに、社会の意識を変えていくことも必要だと考えます。

2-1.計画のひとつの柱である空家にしないための空家等対策についての周知・啓発活動は具体的にどのような取り組みがされているのかお聞きします。

2-2.また、2016年度の税制改正により、相続により空家になった不動産を相続人が適用要件を満たして売却した場合にはその譲渡所得から3000万円を控除ができることになりました。空家の譲渡所得の特別控除は空家をいつまでも放置し続けないための対策として有効であると考えますが、実際に特別控除を受けるため区に申請が出された件数をお聞きするとともに、この制度に対する区の所見をお聞きします。

2-3.さらに、空家問題は戸建て住宅だけではなく、老朽マンションの空き室問題や住民の高齢化によりマンション管理が厳しくなってくる状況に対する支援も今後ますます必要となると考えます。2020年4月より、東京都の条例により主に1983年12月31日以前に新築された居住部分が6以上のマンションは管理状況の届け出が義務付けられますが、マンションの管理などの相談は区にどのくらい来ているか。また、そのような相談があった場合、区はどのような対応をするのか伺います。

2-4.空家の相談窓口の一元化は当初建築課が窓口となっていましたが2018年4月より、住宅課に変わりました。その理由について説明を求めます。また、担当内容をどのように建築課と住宅課とで整理したのか伺います。

2-5.また、月に1回第3木曜日の午前中に弁護士や司法書士、建築士、税理士、宅建士の専門家による「空家等総合相談窓口」が開設されていますが、その稼働状況について伺います。

2-6.管理不全な空家等への対応として、特定空家に指定された件数、実際に除却した件数、その内、行政代執行した空家はあるのか。また、指定はされていないが、特定空家の候補の空家は現在どのくらいあるのか把握できているのでしょうか、伺います。

2-7.特定空家やそれに準じる不良空家とされた空家等の除却費用の一部を助成する、「老朽危険空家 除却費用 助成制度」の活用実績についてお聞きします。

この項目最後に空家の実態調査について2点確認します。

2-8.今年度行うこととなっている実態調査の対象エリア、対象数、方法などの調査概要、結果報告のスケジュールはどのようになっているのか伺います。

2-9.また、調査結果をどのように活用していくのか。今後の予定について確認します。

最後の項目

3.保育の質の向上の取組みについて質問します。

2016年度の保育緊急事態宣言以来、認可保育所の整備を最優先ですすめてきた結果、杉並区は昨年度と今年度と2年連続で待機児童ゼロとなりました。保育の量的な課題はひとまず解決しつつあるものの、各保育所における保育の質の確保が十分できているかの点検が課題となっています。出来ていないことや問題を指摘するだけでなく良いところは評価し、課題は保育園が区や保護者、地域と共に解決していこうとする空気を醸成することが重要だと考えます。そういう意味で、昨年の9月に示された区立保育園に関わる中核園の指定についての基本的な考え方には保育の質の確保を図るための取組みとして期待をするものです。2020年度から中核園の取組みがスタートするにあたり、現在の準備状況等について確認します。

3-1.まず、2020年度は7地域で1園ずつ指定がされる計画となっていますが、それぞれの地域と中核園となる区立保育園を確認するとともに、この取り組みの概要についてお聞きします。

3-2.区内全保育施設に中核園の取組みの周知を図るということで、地域ごとに説明会が既に

開催されたと聞きましたが、民間の保育園に中核園の取組に対する共感が得られたかどうか気になるところです。説明内容の概要および参加施設数、参加率、参加者の反応についてお聞きします。

3-3.先般の10連休中の保育ニーズに対して、区はどのように対応したのか。また、連休に限らず土曜保育の体制における課題を多くの保育所が抱えていると聞いており、今後、中核園の議論の中で合同保育のような形態を検討できないか区の見解をお聞きします。

3-4.区全体の保育の質の底上げを図るためには、保育形態や経営の違いを超えて、子どもの最善の利益を保障する保育のあり方を議論・共有する場として地域懇談会や合同研修の充実が非常に重要だと考えます。中核園の取組みを通して、お互いの園どうしが切磋琢磨しながら、時にはたすけあえる連携が築かれ、結果的に杉並区全体の保育の質が向上していくことを期待しています。この中核園の取組に対する区の意気込みをお聞きします。

最後に保育の質ガイドラインの策定状況について2点質問します。

私が保育の質で特に大切にしたいと思っていることのひとつに「食」があります。たとえば、「おいしく楽しく食べる」をテーマにした場合、「おいしく食べる」ためには思い切り遊ぶ、お腹がすく、そうすると食材の味覚にも敏感になる、お腹いっぱい食べたら、お昼寝もしっかりできる、午後もまた元気に遊べる、そして夜もしっかり寝るという規則正しい生活に繋がります。また、「楽しく食べる」ことも重要な要素であり、栽培保育など、野菜に興味を持つような機会や何より、親から離れて1日過ごす不安を和らげるためには安心できる人と場所をつくっていくことも必要です。保育の質ガイドラインは何をもって良い質とするのか、様々な角度からの議論を通して明文化し、確認しあうものだと考えます。これまで「区立保育園の実践方針」がある意味ガイドライン的なものとして、民間の保育所などにも活用を促してきたと認識しています。しかし、それはあくまで区立保育園のためのものであったため、これほど民間の保育所が増える中、今こそ、杉並区内で行うすべての保育所のためのガイドラインを作るべきだということを私は求めてまいりましたが、

3-5.現在、杉並区内の全保育所を対象とした保育の質ガイドラインが策定中と聞いています。どのようなメンバーで策定議論がされているのでしょうか。(区立認可園、民間認可園、認可外保育所、子ども子育てプラザ、一時保育、医療関係…)現場の保育士の意見などを反映したものになっているのか確認します。

3-6. ガイドラインはつくって終わりでないのはもちろん、単なるマニュアルでもなく、それぞれの保育園が質的に向上していけるような手引きであってほしい。そしてそのため

には、保育士ひとり一人がいつでも確認できるように全員に配布していただきたいと思います。そして、保育の実践に確実に役立つような活用方法についても議論をしておくことが必要だと考えますが、最後に区の考えを確認し、私の一般質問を終わります。

【再質問】

今年度のモデル事業の課題については、セミナーの開催時期を前倒ししたり回数を増やしたりと、それなりに改善がなされたことはわかりましたが、セミナー以降の募集で、年度内に事業を完成させるのはかなりタイトなスケジュールになるのではないかと考えます。もっと年度初めにセミナーや募集をかけることができないものかと考えますが、出来ない理由があるのでしょうか。

空家の利活用のことですが、なかなか進まないのには色々な課題があるからだと思います。空き家を活用して何か事業を開設するにあたって、解決すべき課題があるのであれば、あらかじめ区としても想定しておくことは必要だと考えますが、区が課題だと認識している具体的な内容をお示しいただきたいと思います。

 

Comments are closed.