いのち・平和クラブの一員として子どもの放課後の居場所について一般質問します。
児童館については、杉並区は全国に誇る「一小学校区一児童館」の体制づくりに力を入れ、職員体制も一定時期までは児童館などの児童厚生施設において子どもの遊びを指導する児童厚生員という福祉の専門職を配置し、学童クラブを設置するなど大変充実した施策をすすめてきました。しかし建物の多くが更新時期を迎えた今日、これまで児童館で行われてきた個々の事業に対するニーズの高まりもあり、これまでと同じ形態では事業を継続させることが難しくなってきたことから、それぞれの機能を分けて拡充させていくことは必要なことと理解しています。そして今、再編したのちの新しい施設を子どもたちの豊かな育ちに資するような施設にしていくため、ハード・ソフト面から検証していくことが必要だと考えます。
これまでの実績を評価し、新しい施設再編計画の下で、如何に子どもの成長にとって貴重な遊びの場や地域での子どもの成長を応援するしくみをつくっていけるかが問われているものと考えます。その立場から子どもたちの居場所の現状を確認し、今後の取組みに生かしていっていただきたく質問してまいります。
これまでの児童館の利用対象者は0歳~18歳、つまり乳幼児親子から高校生までであり、小学生保護者や地域住民も児童館ボランティアなどの活動を担い子どもの育ちを支えてきました。その内の乳幼児親子を対象とする事業については、新たな形態として子ども・子育てプラザが既に4か所で開設され、1日中自由に使える居場所として多くの乳幼児親子の利用で賑わっています。また、中高生については、ゆう杉並に加えて、2か所において新たな居場所が計画されています。特に今回、取り上げたいのは、一番の遊び盛りの小学いということを前提にしつつ、これまでの児童館に替わる一般児童の行き先という点では、多くの場合「放課後等居場所事業」となります。
放課後等居場所事業」は区の児童館機能の一部である小学生の一般来館の機能を継承するものとして、小学校施設を活用した小学生の放課後の居場所づくりを行うものであり、これまでに4校で実施されています。この間、先行して始まった和泉学園や杉並第二小学校においては、それまでの児童館の利用者数を上回る実績を確認してきたところですが、最初に和泉学園で導入されて2年半が経過し、単なる利用者数の増加だけでなく、もう一歩踏み込んだ内容における成果や課題についても見えて来る頃から「放課後等居場所事業」について確認をしていきます。そこで、まず、
1-1.児童館の施設再編をすすめるにあたっては、これまでの長きにわたって培われてきた児童館の取組みをどのように評価し、何を残し、何を変えたのか確認します。
先日、杉並和泉学園や桃井第二小学校の様子を見学してきました。放課後等居場所事業は学校のランチルームや多目的室を活用しているため、運営事業者は用具の出し入れや保管などの不便さもあるのではないかと感じました。そこで、学校との関係について伺います
1-2.放課後等居場所事業は小学校施設の放課後使用しないスペースを活用して行われており、基本的に専用の場所がありません。専用のスペースにしなかった経緯について確認します。また、今後も専用スペースを設ける考えはないのか伺います。
1-3.この事業の機能は学校の中に入ることで教育分野と福祉分野が共に手を携えて、子どもの遊びを通して健全な育ちを応援することが重要だと考えますが、実際、学校との連携はどのようになされているのか。人的体制や連携内容を具体的にお聞きします。また、現時点での課題があればお示しください。
1-4.学校内に設置した以上そのメリットを追及すべきと考えます。学校内に設置したことで安全面のメリットは確保されたと言われていますが、子どもの成長の糧に貢献するような視点で、得られたメリットはあるかお聞きします。
1-5.子ども家庭部子どもの居場所づくり担当課長が教育委員会の子どもの居場所づくり担当副参事を兼務していますが、学校との連携においてどのような役割を果たしているのか伺います。
次に委託事業者について伺います。
1-6.既存の放課後等居場所事業の委託事業者についてはこれまでも多くの学童クラブを受託してきた法人が担っていると認識しています。同じ小学校内に学童クラブと放課後等居場所事業が併設されることから、一つの事業者に一体的に委託しています。学童クラブについては「杉並区学童クラブの民間委託ガイドライン」が策定されていますが、放課後等居場所事業についてはそのようなものはあるのか伺います。
また、2020年4月に開設される高円寺学園、杉並第九小学校では委託先として初の株式会社が採用されました。これまで株式会社を参入の対象としてこなかった理由は何か。また、今回、株式会社にも門戸を広げた経緯について確認します。
1-7.2014年度5月に国は学校施設の徹底活用や放課後子供教室と放課後児童クラブを一体型ですすめることを柱とした「放課後子ども総合プラン」を発表しました。それを受けて、学童クラブと放課後子供教室を一体的に行う自治体もあります。杉並区はそうはせず、学童クラブと放課後等居場所事業を、それぞれを別の事業として取り組んでいるのはなぜか、区の見解をお聞きします。
1-8.視察の際の説明で、学童クラブ登録者は放課後等居場所事業にも登録することはできるが、1日の間に両方を行ったり来たりして過ごすことはないと伺いました。学年が上になるほど、両方に登録する子どもが増えるようで、子どもも上手く使い分けているようでした。学童クラブと放課後等居場所事業は子どもの放課後の時間を見守るという点では同じですが、それぞれの事業に対して区が委託先に求める内容、例えば、委託条件、職員の資格、職員の配置基準などに違いはあるのか確認します。
1-9.事業の内容の質をより良いものにしていくには、スタッフのスキルアップのための定期的な研修講座も必要です。研修の義務付けなど仕様書に明記すべきと考えますが、実態はどのようになっているか。また、目的に照らして事業の到達度を確認していく場が必要と考えますが、区の考えをお聞きします。
次に子どもの利用の様子について伺います。
1-10.既存4校の放課後等居場所事業の直近の登録人数は何人か。また、一日の利用数は平均どのような状況か。再編前の児童館と比べ、和泉学園では約2.2倍、杉二小では約1.4倍に増加していると聞いていますが、今もその傾向は続いているか、合わせてお聞きします。
1-11.参加する子どもが増えたことは、そのような場が求められていたとも受け止めていますが、子どもが放課後の自由な時間を思い思いに過ごすことができることが重要だと考えます。スタッフはどのような点を重視して子どもたちに接しているのか伺います。
1-12.機能として、困難を抱える子どもや家庭などを支援することや問題の未然防止や早期対応を図るためには、虐待やいじめなどを見逃さないスタッフの感度も重要だと考えます。例えば、障がい児等の利用はどのように対応しているのかお聞きします。また、学校になじめない子は、学校内で行われる放課後等居場所事業の利用が厳しいため、子ども・子育てプラザにおいて受け入れることが出来ることをこの間も確認してきましたが、そのような子の受け入れ実態はあるのか伺います。
配慮が必要な子どもへの対応には時には専門的な知見が必要なこともあります。作業療法士などの専門的職員の配置あるいは巡回指導のような取り組みをぜひ検討していただくよう要望しておきます。
1-13.私立や国立学校に通う児童も対象となっていると思いますが利用実態はあるか。あれば、その登録人数も伺います。
次に地域・住民との関係についてお聞きします。
1-14.居場所の機能として地域の多様な大人の積極的な参画を得て、学校を核とした子どもの育ちと子育てを支える地域社会をつくることは重要です。保護者との関係づくりやボランティア参加、地域の子育て支援団体等の協力などはどのような状況か伺います。
今回は小学校内にこれまでの児童館機能が移行した放課後等居場所事業について質問してきました。冒頭述べたように、子どもは地域の様々な社会資源を活用して多様な人やものとの関わりの中で放課後を過ごすことが望ましく、地域の大人も一緒にどんな子どもの居場所をつくるのかを、子どもの側に立って考えることが必要ではないかと考えています。居場所事業の質の問題にも直結することから、これまで活動してきた保護者も含む児童館関係者の中に、児童館再編は地域との丁寧な話し合いの場を持ってほしいという声があり、それはもっともだと思います。子どもたちの意見を聴く場も不可欠です。
1-15.今後の児童館再編により放課後等居場所事業をすすめていく際には計画を出す前にどのような居場所にしていくのか、運営等について児童館利用者等の地域との話し合いをもち、一緒になって考えていく場が必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。
1-16.子どもは、家庭・学校・地域で育ちます。保護者の安全志向の中にあって、一日のほとんどを学校内で過ごすことになり、子どもの育つ環境として不自然さを感じるところではありますが、その制約の中でその場なりのメリットを知恵と工夫で最大化することはできるのではないかと思います。先日、区も後援した冒険遊びの会の連続講座に参加した際に、この十数年で子どもの育ちに関する国内外での学術的な研究がすすみ、新しい価値観が生まれているということを知りました。その一つに「プレイワーク」という専門分野があり、子どもの遊びの環境設定や子どもとの関わり、危険管理、地域との関係調整等を整理したものだということです。子どもの主体的な意欲がより育まれるためには、それぞれの子どもが自らやりたいことをして遊べる環境を整えることが必要だという考え方であり、その結果として、子どもは創造性に富み、身体や知性、情緒、社会性を自ら育てていくようになるというものです。私もこの考え方に共感します。大人の指導の下で、大人が決めた方向やゴールへと子どもを向かわせるのでなく、地域での遊びや学び、子ども同士や大人もふくめての交流を通して子ども自らが自分のやりたいことを見つけ、自立に向けて進んで行けるように、その子らしい育ちが保障されるように、親以外の大人が支え、応援する、そのような環境づくりが、新しい居場所事業には求められているのだと思います。区においては、今後、放課後等居場所事業の実施に当たって、その視点を持ちながら進めていただきたいと考えますが、区のお考えをお聞きして、質問を終わります。