いのち・平和クラブを代表して、2021年度杉並区一般会計予算、並びに、各特別会計予算および関連諸議案について意見を述べます。
新型コロナウイルス感染拡大の終息がなかなか見通せない中、区民生活や経済活動への影響は深刻な状況となっています。景気を下支えする地域経済の打撃はそのまま区財政にも影響を及ぼします。この間のコロナ対策に多くの支援策を実施し、さらには次年度予算でも財政調整基金から72億5000万円を取り崩すなど、あらためて、財政調整基金の備えの重要性を確認しました。
現在、2022年度からの新基本構想策定がすすめられています。区は現基本構想の最終年度となる2021年度を「困難を乗り越え、新たな時代に繋ぐ予算」と名付け、まさに喫緊の課題である新型コロナウイルスの克服と10年先を見据えた新構想の策定によって、長引くコロナ不安で疲弊した区民の暮らしに対し、将来のビジョンを示す重要な年となります。私ども、いのち・平和クラブは住民に一番身近な基礎自治体の役割である区民福祉をいかに支え向上させるか、コロナ禍での不安や昨今の気候危機から区民の命と財産を守り、子どもたちが将来に希望を持ち、緊急を要する課題に応える予算となっているかを検討いたしました。以下、基本構想に掲げる目標に沿って、予算特別委員会での質疑の内容も踏まえ、主な賛成理由、評価する点と要望を付して意見を述べます。
第1に、平和への取り組みです。核兵器禁止条約が1月22日発効しましたが、条約には核保有国や核抑止力に依存する日本などが参加しておらず、核軍縮の機運を高めることにつながるかが疑問視されています。代表質問で、国に条約に加わるよう自治体から声を上げるよう求めたところ、平和首長会議を通じて国に強く要望していることを確認しました。また昨年コロナ禍で実現できなかった平和首長会議の広島開催に合わせ、中学生のヒロシマ派遣事業を実施し、現地での中・高生との交流ができることを期待します。
第2に、新型コロナ対策のとりくみです。区は2019年度末に2度、2020年度に13度の補正予算を組み、国や都に先駆けて区内基幹病院への補助や発熱外来の設置、区独自のPCR検査体制の拡充など実施してきました。新年度予算では、この取り組みを維持しさらに拡充するものと評価します。区内事業者への支援、文化芸術活動への支援は引き続き継続されています。コロナ禍で児童虐待が増えるおそれに食を通じたこどもの見守りの強化、介護者等の感染時に障がい者等を支える体制を強化し、福祉施設などの従事者へのPCR検査の実施などの取り組みの拡充に期待します。また、新型コロナ対策で多忙を極める区職員の健康問題を質し、二次検診の受診勧奨や心療系の相談拡充を確認。必要な職員の増員を求め今後の検討を確認しました。ワクチン接種体制への支援で職員への負担が大きくならない対策も確認できました。
第3に、災害に強く安全・安心に暮らせるまちについてです。
・東日本大震災から10年。東京電力福島第一原発事故の影響によって、いまだ故郷に戻れない、戻らない方が、地元自治体の発表によれば、少なくとも6万7000人はいるといわれており、それには自主避難者は含まれません。10年経っても復興半ばと言わざるを得ません。福島第一原発の電気を消費していたのは東京に住む私たちでした。10年経とうが20年経とうが、私たちは3.11のことを忘れることなく、そこから学んだ教訓を自らの暮らしに役立てていくことが必要です。3.11を忘れない取り組みを継続して来たことは評価します。最近東北で大地震がおき、茨城県沖でも地震が頻発している状況は、大地震の前触れと言われています。来年以降も南相馬市への支援と防災意識の向上をコンセプトに継続することを確認しました。
・また、昨今の気候危機に起因する自然災害の増加、災害時の感染症対策も新たな課題となっています。区が示した発災後3日分の区内備蓄の確保や女性や災害時要配慮者の視点での備蓄品の拡充、河川監視カメラのリアルタイム化による迅速な水害対策は重要です。さらに、旧杉並中継所跡を災害拠点として活用していくことが検討されています。今後は区の防災対策全般について区民意見が反映され、区民に広く理解が深まるような発信を要望します。
第4に暮らしやすく快適で魅力あるまちについてです。
・地域の課題解決のために非営利で取り組むNPOの活動もコロナ禍により思うようにすすめられず、新たな活動スタイルへの転換や感染予防対策にかかる経費増など苦しい状況に置かれています。協働プラザが産業商工会館に移転するに伴い、産業商工団体との情報連携を強化し、地域活動団体への支援の充実を図ることに期待します。
・農福連携農園が今年の4月に全面オープンし、農業と福祉、就労、環境が結びつき、今後、様々な分野に派生していくことが期待されます。
・都市計画道路補助132号線は、西荻地域を縦断する幹線道路として、災害時の避難路や高層マンションなどの火災に対応できるための拡幅や歩道の安全確保が必要ですが、そこに暮らし商売を営む方たちのくらしと事業を継続できるのか、不安が訴えられているのもわかります。必要な補償を行い、時間がかかっても住民の理解を得ながら進めるよう求めておきます。
・補助133号線は、住宅地に大規模な立ち退きを要する計画が、地域の理解を得られていない現状があることを指摘しておきます。
第5にみどり豊かな環境にやさしいまちについてです
・多岐にわたる環境問題は私たちのいのちを脅かしかねない待ったなしの状況であり、その負の遺産を次の世代に引き継ぐようなことがあってはなりません。カーボン・ニュートラルの実現に向けた取組みやワンウエイプラスチックの削減対策などに期待します。原発に頼らない新電力PPSからの電力購入による財政削減実績と新年度の拡大を確認しました
・新たな環境基本計画策定にあたっては、より具体的な数値目標を定めた地球温暖化対策実行計画 の策定、プラごみの海洋汚染をこれ以上悪化させないための具体的な取組み、生物多様性地域戦略の策定、省エネをすすめ再生可能エネルギーの利用拡充など、地球環境を取り巻く問題に対し、総合的に取り組んでいくことを求めます。
第6に健康長寿と支えあいのまちです
・外出を控え、家に籠りがちになった高齢者などの体力や認知機能の低下に対し、認知症早期発見の取組みが開始されることはとても重要です。同時に「認知症」になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症高齢者の本人発信支援と社会参加支援の視点を持ったイベントや仕組みづくりをすすめていただくよう改めて要望します。
・ケアマネが一人の事業所でコロナ感染した場合でも利用者のサービスが継続できるよう区内事業所の連携がとれる区独自のシステムが作られました。今後有効に活用されるよう期待します。
・在宅医療体制や相談支援の充実、医療と介護の連携強化は今後ますます必要度が高まっていくと思われます。在宅であっても24時間切れ目のない支援体制の構築に期待します。
・障がい者の社会参加を保障する移動支援について、長年にわたる障がい当事者や家族などの要望によって見直しが行われました。精神障がい者も含めすべての障がい種別が対象とされ、利用期間も緩和され、また高次脳機能障がい者への年齢制限が撤廃されたことは重要です。一方で通所に関する利用がいまだ制限されるなど課題も残されています。今後も障がい当事者のニーズ把握に努め、より一層制度が充実されるよう求めておきます。
・区民が抱える生活課題が複雑化・複合化する中で、縦割りでは解決しきれない状況に対し、これまですすめてきた包括的相談支援をさらに一歩進め、全世代対応型の支援体制の展開に向けた検討に着手することに期待します。実態把握には介護者の会や子ども食堂、地域のサロンなどからも意見聴取し、より具体的な課題の把握に努めるよう求めます。
第7に人を育みともにつながる心豊かなまちです。
・児童館のあり方検討部会が行財政改革本部のもとに設置され検討が行われています。子どもの健全育成に寄与する児童館のあり方については、単なる場所にとどまらない保育の質の確保はとても重要なテーマです。今回、保育の質について担当部長から「保育や学童の質とは、子どもたちに寄り添う対応、権利を尊重する対応、自主性を育てる対応を基本とし、子どもたちに、どういう風に保育士や支援員が対応するのか紙で学ぶことではなく、長い経験をする中でノウハウを継承し、育っていかなければならない。区の職員もそうしたことを身に着けていく場が必要。」という重要な答弁がありました。これは保育園や学童クラブの現場を持つことの重要さを示すものであり、今後の検討を求めておきます。
・児童館からプラザに移行した地域では中高生の利用が増えている状況を確認できました。また、善福寺地域では児童館を中心に地域の方々が子どもの健やかな成長を支援する居場所のあり方について議論を重ねてきました。6か所目となる子ども・子育てプラザ善福寺の整備にあたっては、地域の声を尊重し、その意見も取り入れながら計画を進めていただくよう要望します。
・学童クラブや小学生の放課後等居場所事業の民間委託について、会派は保育園と同様に核となる直営館を維持することが学童クラブ保育の質の保障につながると求めてきました。今回区長から「学童はじめ、すべて民営化してアウトソーシングしようという発想に立っていない。民営化することで区が失ってはいけないものがある限り、そういうものは守る」と答弁がありました。ぜひ核となる直営館を維持するよう求めておきます。
・これまで充実を求めてきた産前・産後支援ヘルパー事業が拡充され、さらには新たに宿泊型・日帰り型の産後ケア事業の実施を評価します。
・保育園の待機児童ゼロを引き続き実現し、新年度も13園の認可保育園が開設され、さらに2022年4月に6園の整備が予定されています。保育園ニーズは数から質へと移ってきています。選ばれる園となるためにしのぎを削り合うことは悪いことではありませんが、保育の質の中身を見誤ることなく、2020年2月に作成した「保育実践のてびき」に沿った質の確保を区内すべての保育所と共有確認することを求めます。また、保育の質を確保するために巡回指導・訪問や保育士等の人材確保・定着化支援、保育園児が利用することを想定した公園づくりなどを引き続き行うことを確認しました。今後、私立認可保育園がさらに増える中、保育の質の維持のために、27の直営園の維持を強く求めておきます。
・2019年度の不登校数は小学生199人、中学生340人にのぼりました。小学生対象のさざんかステップアップ教室が区内1か所で通いにくい状況に対し、中学生対象の宮前教室でも小学生を受け入れるとしたこと、教室の定員をなくしたことで改善が図られたことを評価します。
・学校はすべての子どもに対して、人間尊重や男女平等の精神の徹底をはかる教育を行う必要があります。中学校での男女混合名簿の導入が2校という状況は男女平等の精神に反するものです。教育委員会が男女平等の姿勢を貫き、学校に男女混合名簿の導入を促すよう求めるものです。
・教員の負担軽減のため、保護者との日常の連絡にメールを活用するよう提案し、いくつかの学校で試行を検討するとの前向きな姿勢を確認しました。今後に期待します。
第8に、新たな時代を見据えて
・新基本構想策定について、暮らしの基礎となる地球環境問題に重点が置かれ、SDGsに沿って各分野の目標が設定されつつあり、誰もがその人らしく暮らせる杉並区の将来像に大いに期待するところです。
・行政デジタル化について、国にデジタル庁が設置され、マイナンバーカードの利用拡大が始まります。特定給付金での失敗を反省することなく、今月には国民健康保険証利用を開始し、いずれは口座への紐付けや民間利用の拡大をすすめようとしています。いったん許せば、国や企業の意のままに、なし崩し的に個人情報が流用されることを危惧します。区の個人情報保護条例を引き続き堅持し守り抜く姿勢を確認しました。
次に、予算関連議案についてです
議案第6号は、今後の在住外国人支援事業等の更なる推進とそれに伴う事故等へのリスク管理を含めた体制強化を図るため、2021年4月に杉並区交流協会を一般財団法人化するための議案であり、その必要性を理解しました。
議案第7号は阿佐ヶ谷地域区民センターの住所を移転先に変更し、利用料金を定めるなどの条例改正です。先にリニューアルオープンした地域区民センターにおいて、これまで利用してきた登録団体の活動の継続に支障をきたしました。また、バリアフリー化の課題も残したことから、阿佐ヶ谷地域区民センターについても登録団体や障がい当事者の声の聞き取りや説明を丁寧に行うことを求めました。
議案第8号はコミュニティふらっと成田の名称と位置を定めるものです。
議案第9号は、未婚の方を「ひとり親」として税制の対象とされることの改定です。
第10号は、介護保険料がコロナ禍の影響から第8期の保険料を第7期と同じくすることがわかり、所得税改定の影響がでる部分についても対策が取られました。
議案第11号は、第1に、食品衛生法改正により規制を強め、都条例を廃止し申請を受ける市区町村の手数料を定めたものですが、コロナ禍で厳しい事業者に対して、手数料を減免するなどの配慮がされることを確認しました。第2に、都市の低炭素化の促進に関する法律及び建築物の省エネ向上に関する法律の改正による手数料の改定です。今回新たに規定された300㎡未満の建物や一般住宅を低炭素建築物として申請した場合の税の減免などの優遇措置も確認できました。
議案第12号は直営で運営する成田保育園の位置変更です。
議案第13号は、ケヤキ公園への児童館を移すための位置変更であること、
議案第14号は、南阿佐ヶ谷第3自転車駐車場の名称と位置を定めるためのものです。
議案第15号は、都議選や衆院選に備え、これまで長い間変わらなかった選挙立会人などの報酬額を、最低賃金や他区の事例を参考に、適切な額に改正するものです。
議案第28号国民健康保険料は、コロナ禍の影響で均等割は若干値下げになったとはいえ、所得割があがり暮らしへの影響が気になるところです。しかしながら、国保料が青天井にあがる状況から国保制度の抜本的見直しが必要であり、引き続き国に求めるよう要望します。
議案第30号は、新年度一般会計補正予算第1号、新型コロナワクチン接種の予算であり、歳入は国庫負担金と国庫補助金をあて、不足分は財政調整基金から補填されています。本来全額国が負担すべきものであり、今後、国の補助金等を求めていくことを確認しました。その他は、新年度も保育園待機児童ゼロを継続するとともに、保育の質を守る取り組みなど必要なものです。
議案第31号国保事業会計補正予算については一般会計繰り入れに関するものです。
以上の理由及び要望を付して、議案第21号杉並区一般会計予算、第22号杉並区国民健康保険事業会計予算、議案第23号杉並区介護保険事業会計予算、議案第24号杉並区後期高齢者医療事業会計予算、その他予算関連議案にはすべて賛成いたします。
最後に、新型コロナウイルスの対応に追われる中、予算特別委員会の審議に必要な資料作成にご尽力いただいた職員の皆様に感謝を申し上げ、いのち・平和クラブの意見開陳といたします。