第2回定例会一般質問「ケアラー支援について」質問と答弁 2022.5.25 奥田雅子

【Q1】 厚労省が策定した「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル」にある具体的な取り組み手法や事例が参考になるとともに、現在の区のケアラー支援となる事業の検証や不足している部分などの課題の抽出にもこのマニュアルは有効だと考える。このマニュアルを区はどのように活用したのか伺う。

このマニュアルに示されている「相談・支援フロー」を機能させることが最初の入り口としてとても重要だと考える。ステップ1から4までを機能させることで、ケアラー支援が適切に組み立てられると思うが、区の認識を伺う。

【A1-高齢者担当部長】 区では、地域包括支援センター、ケア24に当該マニュアルの周知を図り、各ケア24では要介護者はもちろんのこと、在宅で介護を行うご家族等に対する支援も重要なものと捉え、個別相談や支援に活用している。

マニュアルに示されている相談・支援フローが機能することで、家族介護者への適切な支援につながることから、ケア24ではステップ1初期相談からアセスメントシート等を活用し、家族介護者の相談内容を客観的に評価、分析し、ステップ2の緊急性の判断やステップ3の支援方法の検討、決定を行っている。

また、ステップ4の「地域支援ネットワークへのつなぎ」では、地域ケア会議を開催するなど関係機関で連携し、地域で高齢者や家族介護者を支えることができるよう取り組んでいる。

【Q2】 レスパイトケアとしてショートステイサービスがあり、それに助けられたというケースもある一方で、条件があって使いにくい、経済的な負担になるなどの課題も指摘された。緊急ショートステイは対象となる条件があるため、ケアラーの休息という使い方とは少し違う。ケアラーがゆったりと休息できるという視点からミドルステイや要件を緩和して、使いやすくしていくことも必要ではないか、区の見解を伺う。

【A2-高齢者担当部長】 介護保険のショートステイは、介護者が病気などで介護できない場合のほか介護者の休息いわゆる「レスパイトケア」もその目的の一つとしており、連続で利用できる日数は原則30日までとなっている。なお、ショートステイは「要介護者が在宅生活を継続する」ために必要なサービスであることから、区としては30日を超えるミドルステイ等の希望があった場合、まずは数か月入所できる介護老人保健施設の情報提供を行っていく。

また、緊急ショートステイは、介護者の休息を目的としてはいないが、今後もさまざまな場面で介護者のニーズを把握し、ケアラーの休息にどのようなサービスが必要か研究していく。

【Q3】 「ほっと一息 介護者ヘルプ」は、ケアラー支援の観点からするともっと多くのケアラーに利用してほしいので制度の周知を徹底すること、利用できる上限枠も拡充してほしいと考えるが区の認識を伺う。

「ほっと一息 介護者ヘルプ」や「認知症高齢者家族やすらぎ支援」「介護者の心の相談」はよい仕組みだと評価しているが、利用者の少ないのが残念。もっと周知していくと同時に、利用者あるいは未利用者からのアンケートを実施する等して、課題があれば見直すことも必要ではないか、区の見解を伺う。

【A3-高齢者担当部長】 介護している家族の休息を目的として「ほっと一息 介護者ヘルプ」や「認知症高齢者家族やすらぎ支援」などの家族介護支援サービスを実施しているが、サービスの上限枠の拡充などについては利用者の実情を把握するとともに、今年度実施する高齢者実態調査の結果を踏まえ検討する。

また、区広報やホームページで周知するほか、ケア24やケアマネージャーからサービスが必要な家族に情報が適切に届くように努めていく。

【Q4】 区は小学生にも一定数のケアラーがいるという調査結果をどのように受け止めたか。中学生に引き続き、区内小学校で対象になった学校はあったのか。

厚労省の調査でも、「相談したことがない」との回答が5~6割あり、特に「学校の先生、スクールソーシャルワーカーなど、本来相談すべき相手に相談していない」という回答を学校関係者は重く受け止めなければならない。ほかにも「誰かに相談するほどの悩みではない」「相談しても状況が変わるとは思えない」との回答を認識しておく必要があり、それを前提にした対策を立てることが必要だと考えるが、区の認識、見解を伺う。

【A4-教育政策担当部長】 この調査については、杉並区でも対象になった小学校はあった。教育委員会では、小学生にも一定数のヤングケアラーが存在するという結果を受け止め、教職員への理解啓発を継続するとともに、適切にサポートしていくことが重要であると再認識した。

引き続き、生活指導主任会や養護教諭研究会、スクールカウンセラー連絡会等で、チラシ等を活用してヤングケアラーの理解に関する研修を進めていく。さらに、児童・生徒に対して、家庭や家族のことであっても、困ったことがあった際には学校に相談できることを児童・生徒に周知し、それに応えるべく相談体制の充実を図っていく。

【Q5】 国は、ヤングケアラーの実態調査や、福祉・介護・医療・教育等の関係機関職員への研修を実施する地方自治体への財政支援のほか、関係機関と支援団体とのパイプ役となる「ヤングケアラー・コーディネーター」の配置、ピアサポート等を行う団体への支援、ヤングケアラー同士が悩み等を共有し合うオンラインサロンの設置運営・支援等への財政支援など、支援体制強化に向けて予算化を行っており、どれも今後必要となる仕組みである。この予算を有効に活用すべきと思うが、区の見解を伺う。

 

【A5-子ども家庭部長】 ヤングケアラーへの支援を強化するためには、これまでの学校や子ども家庭支援センターに加え、潜在的なヤングケアラーの発見が可能な高齢者部門、障害者部門等との組織横断的な取り組みが重要と捉え、昨年度末から関係各課で構成する検討組織を設置する準備を進めている。

今後、介護保険事業者や障害福祉サービス事業等へ、ヤングケアラーの認識を深めるための効果的な周知方法や、支援につなげる方策、区の実情を把握する実態調査の実施等の検討を進め、その中で、補助金等の活用についてもしっかりと検討を進めていく。

【Q6】 「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」が策定された。学校関係者や保健、福祉、医療分野、地域、ヤングケアラー当事者とその家族向けが一つにまとまったマニュアルとなっており、各関係機関と共有していただきたいが、マニュアルの活用について区の見解を伺う。

【A6-子ども家庭部長】 ヤングケアラーへの支援においては、さまざまな機関による気づきや発見が非常に重要なことから、まずは関係機関がヤングケアラーに関する認識を深める取り組みを実施していく。

また、支援マニュアルの共有についても、その一助となることから、その活用を検討していく。

【Q7】 ヤングケアラーはやがて年代も移っていくが、その時々の支援が重要であり、最初の入り口である相談にいかにつなげる、つながるためには、周囲の理解だけでなく、ヤングケアラー自身が「つらい」、「助けて」と発信してよいと思える仕組みを作らなければならない。組織を超えて連携して具体的に動くときだと考えるが、区の見解を伺う。

【A7-区長】 先ほど議員から、国の調査結果では小年生の6.5%が「世話をしている家族がいる」という話があった。その子どもたちは「自分の時間がとれない、勉強する時間がない」と回答している一方、1日7時間以上世話をしている子どもの35.6%は「特に大変さは感じていない」とも回答していると聞いている。この調査結果から、ヤングケアラーが非常に厳しい状況にあることを改めて認識したところだが、特に私が気になっている課題は、多くの子どもが、自身がヤングケアラーであることを自覚していない状況にあることだ。そのため、さまざまな関係機関がヤングケアラーの存在に気づき、支援につなげていくことが大変重要と考えている。加えて、子ども自身が安心して相談できる仕組みも大事であるし、ケアが必要な家庭が複合的な課題を抱えている場合は、関係機関が連携し、支援する必要があると考えている。

こうした複数の所管にまたがる具体的課題を解決していくためには、かねてより私は、役所内の縦割り意識を変革し、スピード感をもって、組織を超えた連携をしていくことが不可欠だと感じている。

ヤングケアラーへの支援は、まさに組織横断的な課題であるので、子ども、教育、高齢者、障害者の各部門が所管の範囲を超え、積極的に課題に立ち向かっていくための具体的な動きをしていくことが必要と考えている。

議員ご指摘のように、課題解決に向け具体的に動いていくときだと捉えているので、組織横断的な検討を進め、効果的なヤングケアラーへの支援策を構築してまいりたいと考えている。

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