Q1 杉並区は気候危機問題をどう捉え、未来に豊かな地球環境を引き継いでいこうとしているのか。
A1(区長)奥田議員からはバーチャルウォータについての指摘がありました。気候変動の影響による干ばつや水不足が深刻化している中、食糧輸入に伴い生産国の水資源を大量に消費している日本が、毎年520万トンもの食品ロスを発生させていることは問題であり、食品ロス削減は温暖化対策の観点からも重要と考えている。
またこうした問題に限らず温暖化の影響で発生する様々な問題とその対策では国、地域、世代等の間で負担を強いられる側と利益を得る側が生じている。近年、こうした負担と利益が公平・公正に共有されるべきとする「気候正義」という考え方が世界的に広がりつつある。現在開催中のCOP27においてはこうした考えに基づく「損失・損害への支援について」が初めて正式議題に盛り込まれ、気候変動対策の極めて重要な取り組みとして認識されている。
私は所信表明において、気候変動問題の対策は今までの温暖化防止対策の範囲を超えた社会経済や都市計画、産業構造等の変革を迫る壮大なチャレンジであり、現代社会の在り方を問うものであると申し上げた。そのような視点からも気候正義という考え方に基づき気候変動への対策を行うことは、今後の重要なテーマの一つとなると考えている。そのため今後この考え方を区民とも共有し、省エネの推進や再生可能エネルギーの利用拡大、移動時の電気自動車や自転車、地域公共交通の利用、輸入食品・バーチャルウオーター等を軽減する地産地消や食品ロス削減、全員で取り組む省エネ講堂等、すべての主体がその場面や役割に応じた地球温暖化対策に取り組めるよう、環境施策を推進し、豊かな地球環境を将来世代に引き継いていく考えだ。
Q2 区がイメージするグリーンインフラとはどういうものか、具体的に検討されていることがあれば示せ。
A2(土木担当部長)道路や公園などにおけるグリーンインフラは、自然環境が有する本来の機能をまちづくりにおける課題解決に活用する考え方であると認識している。私たちの身近にあるみどりは、生物多様性の保全、ヒートアイランド現象の緩和、雨水の貯留・浸透による都市型水害の軽減など、その果たす役割は非常に大きい。
区はこれまでも「雨水(あまみず)法」の趣旨に則りさまざまな施策を展開しているが、グリーンインフラがもたらす効果はさまざまな分野に及ぶことから、その具体策については現在研究を進めているところだ。引き続き他の自治体の効果的な事例なども参考にしながら、関係部署と連携・協力して取り組んでいく。
Q3区においては雨水利用のための一層の普及啓発が求められているが、現在の具体的な取り組みを問う。
区は東京都豪雨対策基本方針に基づき10ミリ/hの降雨担当分を貯留・浸透させることを目標としており、2015年度末で目標対策量58万8千㎥に対して約50%の29万5千㎥だった。その後目標に対してどこまで進んだのか。あまみず利用が進んだことによって水道代の節約効果やCO2削減効果はどのくらいあったのか区の評価を問う。
A3(土木担当部長)区では公共施設を建て替える際雨水利用の施設を整備し、貯めた雨水を便器洗浄水や校庭散水などに使用している。これまでに学校施設で22校、区役所はじめ区の20施設で約9千7百㎥のあまみず利用が図られている。これによるCO2削減効果までは把握できていないが水道料の削減につながっていると考える。
また都の豪雨対策基本方針に基づく治水対策としての雨水の貯留・浸透の取り組み状況は令和3年度末の累計対策量は平成27年度末から5万5千㎥増え、約35万㎥である。なお神田川流域豪雨対策計画が平成30年3月に改定され、目標対策量が58万8千㎥から63万1千㎥に増えたが、実績も増加したことから整備率は5ポイント上昇し約55%となった。
Q4あまみずの利用促進が円滑に図られるように2016年に策定されたガイドラインが本年3月に改定されたがそのポイントは何か。あまみず利用について区の基本的な考え方を明らかにするためにも、あまみず利用の促進に関する計画が必要と思うが策定する考えはあるか。策定にあたっては地域住民の参加で行われることが望ましいが区の見解は。
A4(土木担当部長)あまみず利用の促進を実効あるものとするためには。地方公共団体や民間事業者等を含めて、あまみず利用のための施設の一層の普及促進を図ることが重要だ。そのため、改定されたガイドラインでは地方公共団体においてそれぞれの地域の自然的社会的条件に応じてあまみずの利用の促進が円滑に図られるよう、実務担当者のための手引きとしてより使いやすいように改定されたものと捉えている。指摘されたあまみず利用の計画については、水を資源として再利用する重要な取り組みと考え引き続き他自治体の事例などの研究を進めていく。
Q5日本建築学会が提唱している「畜雨」の取り組みは、グリーンインフラとリンクさせながら広めていくことがよいと思うが、区の見解は。区としても建物を建てる際に「畜雨」の視点を持った設計の提案ができる人材育成、情報収集や発信をしていくことが必要と考えるがいかがか。区がグリーンインフラのまちづくりの推進を掲げる中でイメージするまちづくりに「雨庭」の取り組みも広げてほしいが区の見解を問う。
A5(土木担当部長)日本建築学会が提唱する「畜雨」は治水だけでなく、利水、防災、環境の4つの側面から大きな効果を発揮する技術であり、区としてもグリーンインフラとリンクさせながらあまみず利用を促進していく必要があると考える。そのためには職員が「畜雨」の仕組みをよく知り、関係部署と連携し、区民や事業者へのわかりやすい周知に努めることも必要と考える。また、治水対策として環境面にも配慮した「雨庭」は地球温暖化に伴う様々な環境影響への対策として有効な方法の一つであり、区の公園で実施している箇所もある。今後も公園や遊歩道等の整備にあたっては、立地条件や施設規模等に応じて「雨庭」の視点を取り入れた整備に努めていく。
Q6学校施設整備計画の中にエコスクールを目指すとあり、それを事業化するのはエコスクール事業方針だ。その方針の見直しが行われる計画だがその体制について問う。
A6(学校整備担当部長)エコスクール事業の方針は。平成24年度のエコスクール事業検討委員会報告書に位置付けられてから10年が経過する中で、これまでの事業の評価を行い今後の方向性を定めるため「エコスクール事業検討委員会」を設置し見直しを行うものである。委員会は教育委員会事務局のほか、庁内関係所管により組織し、連携を図りながら検討を進めているところだ。
Q7小中学校は震災救援所にもなるため、震災時の生活用水やマンホールトイレのための防災畜雨、一時的に貯めて浸透させる治水畜雨、トイレや校庭散水に活用する利水畜雨、ビオトープへの活用などの環境畜雨を改定されるエコスクール事業の方針に位置付けてもらいたいがいかがか。
A7区立学校の整備にあたっては、雨水利用貯留槽を設け、トイレの洗浄水や校庭散水などに利用している。また、雨水流出抑制のための浸透槽を設けた治水への貢献など、「畜雨」と同様の施設整備を進めている。一方で、マンホールトイレは井戸水を利用し、ビオトープでは上水を使う場合もあって必ずしも畜雨の考えとは一致しない現状もあるので、今後の事業方針の改定にあたってはできる限り幅広く雨水利用が図られるよう検討する。
Q8ビオトープには地域在来の自然の再現や生き物との直接的なふれあいと学習の機会などの効果があり、今後も小中学校への設置をスタンダード化してほしい。また適切な状態に保つ維持管理・指導体制の仕組みを検討し、継続した環境教育が行われるようにしてほしいが区の見解は。
A8(学校整備担当部長)ビオトープはすでに多くの学校で整備しているが、学校敷地の規模や形状などによる整備スペースの確保に課題があり、全校設置の標準化までは難しいと考える。一方で、適切な維持管理やビオトープを活用しての環境教育については、今後も学校現場の意向などを確認しながら支援していきたい。
Q9今後の改定においても、みどりの基本計画という入り口からあまみず利用を軸にまち全体をダムにしていくようなつもりで、ビオトープの設置やエコスクールの推進を展開してほしい。
A9(土木担当部長)ご指摘の通り水とみどりは切っても切り離せない関係にある。学校のビオトープには植物も水もあり生き物も生息している。これら雨水を利用した取り組みが住宅の生け垣や庭の樹木とつながり、地域の公園や農地につながることでみどりのベルトになっていく。さらに河川や幹線道路沿いのみどりとつながり、大規模な公園などのみどりとつながるとグリーンインフラといわれる多面的な効用を発揮するみどりがまちの中に張り巡らせるようになる。こうしたグリーンインフラの取り組みを拡大させ、雨水の利活用をより促進させる視点を大切にみどりの基本計画の改定に取り組んでいく。
Q10あまみずタンクの助成を何のために行うのか、その効果を見える化することが必要ではないか。あまみずを下水管に流さずに済んだことやあまみずを貯える地域ダムの役割を担ったことを設置者や区民にアピールし、設置や有効な利活用お呼びかける重要だ。その意味でこれまで区が助成したあまみずタンクの総容量がどのくらいだったのか問う。
また、あまみずタンクを普及させるためには助成して終わりにせず、あまみずの使い方の情報交換の場の設定や、アンケートで活用方法や課題等の情報収集を行うことも必要ではないか。太陽光パネル設置者の情報交換の問い組などを参考にしてはどうか。
A10(環境部長)あまみずタンクの導入助成については、省エネルギーの推進や雨水の利活用、雨水流出抑制、災害時の断水対策などの目的で実施しており、令和2年度から4年10月までに助成したものは計51件で総容量は8,900リットルでした。令和3年度の助成件数は27件で前年度からほぼ倍増していることから区民の関心も高まっていると考える。今後のあまみずタンクの普及に関しては、まずはアンケートなどを活用して利用状況や課題等を把握し、設置者等とその設置意義ややっくわり、メリット等を改めて共有しながら、更なる設置者の増加に向けて周知啓発に努めていく。