第4回定例会一般質問と答弁 そね文子 2023.11.20

HPV(子宮頸がん)ワクチンを男子に接種することの疑問について

Q1】HPVワクチン、ガーダシルは、2020年12月に、効能・効果に前躯病変を含む肛門がん及び男性の尖圭コンジローマが追加され、男性への接種が可能となりました。自治体の中には、任意接種のガーダシルの男性への接種費用について助成するところが出てきており、中野区でも今年8月から男子接種への助成をスタートさせました。

肛門がんは極めてまれながんで、すべての悪性腫瘍の中で0.1%程度とされ、罹患者の報告では男性10万人当たり約1人である。尖圭コンジローマは自然治癒が多い良性の病変で治療法もあると認識しているが、区はこれらのことをどうとらえているか。

HPVワクチンのリスクについては、知覚、運動、自律神経、認知機能に関する症状など、多岐にわたる多様な症状が一人の人に重層的に表れるという深刻な副反応が生じている。男子に接種した場合にも同様の副反応が生じることが確認されており、男子への接種が広がれば同様の被害が拡大する恐れがあると考えるが区の認識は。

肛門がんと尖圭コンジローマの予防のために、深刻な副反応のあるHPVワクチンを接種することはリスクとベネフィットのバランスを著しく欠いていると考える。また男子へのHPVワクチン接種を推奨する理由として、性交によって女性がHPVに感染することを防ぎ、間接的に女性の子宮頸がんを防ぐことが挙げられているが、男子へのHPVワクチン接種が女性の子宮頸がんを減少させることを示すデータやエビデンスはないと認識するが、区の認識は。

都知事は「男女が接種することで集団免疫効果を期待できる」と述べ、東京都は男子接種への助成を令和6年度予算要求したが、集団免疫効果の根拠はなくベネフィットを大きく上回るリスクがあるので、杉並区では男子接種を行わないように求めるが区の見解は。

 

A1杉並保健所長】肛門がんにかかる男性の割合は極めて少ないと認識している。尖圭コンジローマは再発が多く本人が治癒してもパートナーがHPVウィルスを保持している限り高頻度に再感染することに加え、一部は悪性化することから予防は重要であると考える。

男子へのHPVワクチン接種に対するリスクはワクチンの添付文書によれば、主な副反応として疼痛が57.2%、腫脹が11.3%と一定のリスクがあることが示されている。またこれらの副反応以外にも有症状の場合は医療機関が厚生労働大臣に報告し、国において安全性に係る定期的な評価が実施されている。

HPVワクチンによる肛門がんと尖圭コンジローマの予防については、ワクチンの添付文書によると肛門がんの前駆症状の予防効果は77.5%、尖圭コンジローマの予防効果は89.3%となっていて、これらの効能により国が薬事承認したと認識している。また、間接的に女子の子宮頸がんを減少させることについては、HPVが性的接触により感染すること、子宮頸がんの95%はHPVの感染が原因であることから、男子へのHPVワクチンの接種により男子のHPV感染が減少すれば女子の感染も減少し、子宮頸がんは減少すると考えられる。実際男女ともに接種を行っている国では子宮頸がんの罹患者数は減少しており、2013年から女性に加え男性の定期接種を始めたオーストラリアでは、子宮頸がんにかかる割合が2020年に10万人当たり5.6人と、日本の15.2人に比べ低くなっている。男子への接種については国による科学的知見の収集状況や議論を把握していくとともに、都が予定している助成事業の情報や宅の動向を注視し慎重に検討していく。

外国にルーツのある子どもの支援について

Q2】杉並区では区と交流協会、教育委員会の3者が協力して日本語を母語としない子どもの日本語の学習を支援するという目的で、ボランティアの日本語教室が設置された。このように3者が協力して教室の運営が行われているケースについて高い評価があった。

杉並区総合計画・実行計画改正案で示された多文化キッズサロンについて、3年かけて設置検討を行うのではなく、もっと早く設置できないか。区立施設だけでなく民間施設の活用も視野に入れて検討できないか。

A2文化・スポーツ担当部長】多文化キッズサロンは今年1月から実施している区内在住の帰国・外国人児童生徒のための日本語教室に加え、相談・交流の機能を有し保護者等が日常生活における困りごとを相談でき、地域の人とつながることのできる施設です。この施設のあり方を含め、区における多文化共生の方向性については在住外国人を含めた区民等と議論したうえで、次年度以降策定する「杉並区多文化共生基本方針」で定めていきたい。

その中で重要となる本件施設では、学習・相談・交流を包括的に行うことから、一定程度の広さが必要であることが場所を確保するうえで課題となっている。民間施設の活用との提案についても運営経費や施設の規模が課題になると考えるが、様々な観点から検討を進め、早期の設置を目指す。

Q3】子ども日本語教室において、交流協会や教育委員会職員、コーディネーター、ボランティアが意見交換する場を作り、活動をより充実させるべきと考えるが区の見解は。

ボランティアと子ども、保護者を交えて行う季節の行事や交流事業については、ボランティア同士の交流を促すことで自由な発想やスピード感のある取り組みが生まれると思うが、区の見解は。

A3文化・スポーツ担当部長】子ども日本語教室で学習支援を担うボランティア養成講座はこの間2回開催し、定員25名のところ120人を超える応募があり、自身の経験を外国籍の子どもたちのために生かしたいと思う区民が多くいることを改めて認識した。こうした熱意あるボランティア同士の交流促進やコーディネーターおよび区職員との意見交換の必要性は区としても認識している。教室終了後や定期的な全体会等を開催し、ボランティア同士の交流を図りその中での新たな気づきや魅力的なアイデアを、子ども日本語教室の発展に生かしていきたい。

 

Q4】多文化キッズサロンの設置を待たず、子ども日本語教室において、親同士やボランティアと親との交流・相談の機会を作っていくことを提案するが、区の見解は。

A4文化・スポーツ担当部長】これまで子ども日本語教室では交流事業として交流自治体である山梨県忍野村へのトウモロコシ収穫体験や、区内の大学と連携し保護者を交えての交流会を実施してきた。また相談事業としては子どもの送迎に来た保護者からの日常生活や学校生活に関する相談にコーディネーターが対応している。12月からは高円寺教室の空きスペースを活用し、保護者同士が交流できる環境づくりに取り組む。

Q5】外国人家庭の就学援助の情報提供について、対象となるであろう家庭が就学援助を知らず、経済的な理由から修学旅行に参加できなかったことがあった。今後、卒業アルバムや入学準備金、スキー移動教室の代金が発生するので、就学援助を保護者が認識できるよう伝えてほしい。教育委員会の見解を問う。

就学援助の手紙は日本語、英語、ネパール語が用意されているが、申請書は日本語のみで、学校によっては日本語の手紙しか配られていないことがわかった。今後は確実に適切な言語の手紙が届けられるよう見直してもらいたい。また、在籍者が多い中国語、韓国語、ベトナム語などの言語も必要であり申請書も各言語で用意することを要望するがいかがか。

さらに多言語による説明の動画を作成し周知するなどの工夫もしてもらいたいが考えを問う。

A5教育次長】就学援助については年度初めに学校を通じて全家庭に案内文と申請書を配布して、申請の有無を確認していて、外国人家庭に対しては外国語版の案内文で制度を周知しているが、改めて全小中学校に再周知を依頼した。

外国語版の案内文は現在英語とネパール語のみですが、令和6年度からは在籍者が多い中国語、韓国語、ベトナム語を加えるとともに、申請書の記入例もそれぞれの言語のものを作成し母国語での周知ができるようにする。   また、今後外国語の案内文の工夫や、動画を含む様々な周知方法について検討を行い、外国人家庭にわかりやすく制度を伝えられるように努める。

Q6】外国人向けの都立高校の入試について、学校それぞれで対応するよりも教育委員会が通訳を入れた相談・説明会を行うのが有効と考えるがいかがか。また、それを録画して見られるようにすれば参加できなかった子どもや保護者も見ることができるが見解を問う。

さらに、外国籍の子どもの学習支援や入学支援を行っている団体の声を聞き取り、交流協会とも協力してより良い方法を考えてほしいがいかがか。

都立高校の入試については教育委員会がわかりやすい資料を用意し、各学校に配るなどの工夫が必要と考えるがそれはどのように行われているのか。

A6教育政策担当部長】東京都教育委員会では毎年12月の日曜日に2回、多くの通訳者が同席して外国人生徒対象の入試相談会を開催している。外国人生徒対象の入試制度は、受験者の応募資格の確認が複雑であり、多くの言語の通訳者を必要とする。区教育委員会ではこの相談会について学校からの周知に加え、日本語指導受講者や子ども日本語教室参加者に周知している。相談の中で受験者の個人情報を扱うことから録画は難しいと考える。

また、教育委員会では毎年11月の進路指導主任会において外国人生徒対象の入試について説明している。今後も東京都の資料を活用し内容を伝えるとともに、各学校で3学年の教員を中心に共有するよう働きかける。なお、外国籍の子どもを支援する団体の情報は交流協会と共有していく。

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