第3回定例会一般質問 そね文子 2024.9.12

区議会生活者ネットワークのそね文子です。

「ジェンダー平等実現に向けた取り組みについて」一般質問します。

2024年、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数が、日本は146か国中118位と前年より少し改善したものの、相変わらずG7の中では最下位、東アジアの中でも中国や韓国よりも低くなっており、ジェンダー不平等が固定化しているという、残念な状況です。

ジェンダー平等とは、ここであえて言うまでもなく性別に関係なくすべての人々の平等な権利を認めることで、その中にはもちろん男性の権利も含まれています。

しかし現在の日本はこの順位が物語る通り、ジェンダー不平等で性差別的な社会構造にあると言え、そのギャップを埋めるにはあらゆる分野にわたる取り組みとそれを担保する法的なしくみが必要です。生活者ネットワークはかねてよりこのジェンダー平等社会を実現するためのジェンダー主流化を主要政策に掲げてきました。

日本で男女格差をもたらしている源流は、男尊女卑の思想とそれに支えられた「家」制度の下で、歴史的につくられた「男らしさ・女らしさ」を押しつけるジェンダー規範と、それを反映した制度・政策が営々と続けられてきたことにあります。日本の政府は、社会福祉の担い手として家族、特に女性を活用する「日本型福祉社会」を構想し、それを下支えする専業主婦の身分の安定化のために、国民年金においては妻を第3号被保険者とする優遇政策や、所得税における配偶者控除を新設するなどの税制上の優遇措置を行ってきました。このような政策によって、女性は経済的自立を阻まれ、家庭で暴力にさらされても男性から逃れられない、そして男性もその弱みに付け込んで暴力を繰り返すという負のスパイラルをつくり出すという悲劇も生んできました。男は仕事、女は家庭という性別役割分業の意識は長年に渡って内在化され、現在に至るまで存在し続けています。これは人権の侵害であるということを教育の力によって学ぶことでそれを意識化し、変革していくことも必要です。このような共通認識にたち、以下、質問を進めたいと思います。

今述べたような社会にあって、ジェンダー平等を実現するためには、あらゆる政策、事業、組織運営のすべてのプロセスにおいて、ジェンダーの視点に立った対応を行う、ジェンダー主流化の取り組みが求められています。

1.今定例会で「(仮称)ジェンダー平等に関する審議会」の設置が提案され、条例制定などを視野に審議がされることが示されました。これは今述べたような認識にたって、区が本気でジェンダー平等社会の実現を決意したことだと大きな期待を持って受け止めましたが、まず初めに区の認識と決意をうかがいます。

2.ジェンダー平等実現のためには、その認識を広く区民に広げるための拠点となる施設を持つことが必要です。現在の杉並区男女平等推進センターは1997年、荻窪の児童青少年センター「ゆう杉並」と同じ建物の中に設置されて27年になりますが、区民に認知されている割合は2021年の男女共同参画に関する意識と生活実態調査報告書によれば21%で多くの区民がその存在を認識していない状況です。杉並女性団体連絡会は男女平等推進センターをジェンダー平等と多様性実現のための拠点施設として、次のように要望しています。

すなわち、団体育成・グループ作り、ネットワークづくり、地域団体への働きかけ、区民リーダー育成、世界の女性との交流と連帯、居場所づくりを行える出会いと交流の場となること、各種講座・セミナー・実習・研修・講演会などを行う学習の場、資料の収集と提供などを行う情報収集と発信の場、支援の場、相談の場、調査研究の場となることで、いずれも重要で必要な取り組みです。そのための拠点としては現在の立地は便利な場所とは言えず、今後の施設再編の中で、より駅に近く人が集いやすい場所の確保を求めており、それは必須だと考えますが、区の見解をうかがいます。

いま、少子高齢・低成長時代にあって女性の貧困が社会課題となるなか、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が2024年4月から施行されました。以下、女性支援新法と言います。それまでの女性支援が、非行女性の保護更生という差別的な売春防止法を根拠にDV被害者保護等の支援という形で行われていたことからの大きな転換と言えます。困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図り、人権が尊重され女性が安心して、自立して暮らせる社会の実現に寄与するもので、基本理念には男女平等の実現に資すると掲げられています。

私はこの夏、困難を抱える女性の支援のために神戸でオープンした「六甲ウイメンズハウス」の視察に参加しました。長年DV被害女性と子どもへの支援に取り組んできた「認定NPO法人女性と子ども支援センターウイメンズネット・こうべ」(以下ウイメンズネットとします)が、今年6月に開設した住まいですが、ここで、この開設に至るまでの活動についてお話をうかがい、困難を抱える女性への支援として、住まいを用意することがいかに重要か、改めて認識する機会となりました。

また先日は世田谷生活者ネットワークが主催した「女性支援新法のよりよい運用を考える世田谷区民集会」に参加し、城西国際大学福祉総合学部教授の掘千鶴子さんの講演と、一般社団法人Colaboの仁藤夢乃さん、DPI女性障害者ネットワークの村田恵子さん、移住者と連帯する全国ネットワーク事務局長の山岸素子さん、NPO法人レインボーコミュニティcollabo代表理事の鳩貝啓美さんなど、日ごろから困難な状況にある女性の支援に取り組む団体の方々のお話を聞くことができ、女性支援新法の意義と自治体に託された役割について考える機会となりました。杉並区で女性支援新法が活かされ、困難な状況にある女性の支援が充実されることを願って、以下うかがいます。

3.まず初めに法に掲げられた理念をどのように杉並区として取り入れ活かしていこうとするかについて伺います。

この法は売春防止法体制を脱却し社会福祉に関する法律として位置づけられ、基本理念は「保護更生」から人権尊重・人権擁護、自己決定の尊重へと変わり、困難な問題を抱える女性に対する支援、女性福祉の根拠法として女性福祉を確立するためのものです。また関係機関及び民間団体との協働により、早期からの切れ目のない支援を行うこと、男女平等の実現を目指すことが示されました。

4.これによって自治体の責任も明確化され、基本計画を策定することが努力義務とされましたが、杉並区では基本計画策定については今後どのように取り組んでいくのか考えを伺います。

5.区でもこれまで福祉事務所に婦人相談員を置いて対応してきましたが、その名称は女性相談支援員に改められます。その人たちの専門性やスキルを担保するためには正規職員とすることが求められていますが、どうなっているかうかがいます。相談員に求められるものは何よりも専門性、相談者との関係性や継続性が大事になることから、配置や異動については配慮が必要と考えますが、どのような体制をとろうとしているか区の見解を伺います。

6.次に支援調整会議についてです。地方公共団体は、支援を適切かつ円滑に行うため、関係機関、民間団体、その他の関係者により構成される会議を組織するよう努め、会議では必要な情報交換、支援内容に関する協議を行うとされていますが、具体的にどのように行おうとしているのか。また、会議には当事者の意見が反映されることも必要だと考えますが、どのようになっているかうかがいます。

視察にうかがったウイメンズネットは設立当初、女性たちが集まって自分たちの色々なことをなんでも安心して話せる場所をつくろうと仲間で話し合い、「女たちの家」を開いたとのことです。そこで電話相談を受けると電話が鳴りやまなかった。私には帰る家がない。家ですごい暴力を受けているなど、6割が夫の暴力の相談だった。安心して相談するためには安心して住める家がなければ、と考えたそうです。これを裏付けるデータとして、内閣府男女共同参画局が行った2023年度の男女間における暴力に関する調査結果でも25.7%の女性が夫からの暴力を経験し、その内の4割が何度も受けたという結果です。

六甲ウイメンズハウスに入居する女性は、自立の意思がある、DV被害者とその子ども、児童養護施設を出た直後の人、外国人、留学生、学生、など様々な困難を抱えた人を対象としています。ハウスの中にはロビー、キッズスペース、コミュニティカフェなどのパブリックエリアがあり、居住者専用のエリアにも学習スペースが設けられていました。幼い子どもを抱え孤立していた母親たちは、キッズスペースで子どもを見ながら同じ境遇の人たちやスタッフと言葉を交わし、仲間を得て本当に喜び、安心することで自分らしさを取り戻していくそうです。入居期限は学生が4年、それ以外の人は3年で、次の住まいに移るステップハウスとなっています。

杉並区では、相談を受けた被害者の支援の際に、一時保護施設やステップハウスなどを運営する民間団体と連携協力することがあると思いますが、営利を目的としない施設運営は経済的にとても厳しい現状があります。区が有効な補助を行ってくださることを要望します。

一般社団法人Colaboでは、困難を抱える若年女性の支援をおこなっています。家でDVや虐待があり、居場所がない子どもたちが新宿歌舞伎町のトー横に集まり、特に若い女性たちが性的搾取、性被害に遭っています。場所的に近い杉並区からも通っている子いてもおかしくありません。Colaboでは新宿にバスを改装した居場所となるカフェを開き、そこで女性たちは無料で食事や飲み物をとることができ、Wi-Fiを使いスマホの充電をし、必要な物品やコスメ、コンドームなどの提供を受けています。夜の街で女性に声をかけてくるのは性搾取を目的とした者、買春者、宿や食事の提供と引き換えに体の関係を求める大人などで、少女たちは危険に取り込まれています。多くの少女が、これまで信用できる大人に出会ったことがなく、一日を生きるのに精いっぱいで自分の困りごとに気づいていなかったり、あきらめ感が強かったり、自暴自棄になっていたり、自分が悪いと思っていたりして、相談や支援につながりにくい現状があります。このような少女たちに対し、コラボの支援を受けたメンバーが「声掛けチーム」としてアウトリーチを担い、「少し前の自分たちと同じような状況にいる子たちに、Colaboにつながってほしい、下心のある大人についていかなくても力になってくれるところがあると知ってほしい」と活動しているそうです。一緒にご飯を食べようと声をかけ、日常を共にすることでお互いを知り、関係性をつくるところから始める伴走支援は本当に必要な活動だと頭がさがる思いです。

7.杉並区でも、このような子どもたちがいることを認識し、その支援として、イブニングステイ事業を今年度から始めたことと思いますが、あらためてこの事業の目的と進捗状況をうかがいます。

8.女性支援新法には教育・啓発について、教育機関との連携も示されており、自己がかけがえのない個人であることについての意識の涵養が謳われています。

これまでも生活者ネットワークは義務教育を終える前に全員がデートDVについて知ることが必要だと考え、中学校全校でのデートDVの講座を行うことを求めてきました。徐々に進んでいますが、もともとの目標が低すぎると思います。取り組みを加速していただきたいと思いますが、教育委員会の考えを伺います。

9.また私たちは性に関する犯罪や搾取、人権侵害が多発する背景には日本の性教育の貧困さがあると考えており、人権教育としての包括的性教育が不可欠であることをこれまで主張してきました。同じことを助産師の方たちも指摘しておられ、包括的性教育を推進するためにもっと自分たちを使ってほしいと提案されています。助産師などの専門人材を活用することをさらに進めてほしいと思いますが、見解をうかがいます。

10.ジェンダー平等についてはすべての区民に理解を広げることが必要です

世田谷区の男女共同参画センターでは「ジェンダー平等実現のためにぼくたちにできること」として男性向けの連続講座がスタートし、1回目はアクティブ・バイスタンダーについてでした。行動する傍観者という直訳ですが、性暴力やハラスメントが起こりそうな時、また起こっている場面に出くわしたときに、加害者の注意をそらしたり、痴漢の場合には駅員に通報したり、被害者に声をかけたりして被害を防ぐ行動をとれる人を増やすものです。杉並区でもこのようなことを学ぶ機会をつくることに取り組んでいただきたいと思いますが、区の見解をうかがいます。

ここでDV加害者更生プログラムについてもひと言述べたいと思います。海外ではDV被害女性が保護されることと同時に、加害者が逮捕された後、更生プログラムを受けることが義務付けられています。このようなプログラムは、実は日本でも行われていますが実践例が少ないのが現状です。DV被害を受けた女性のうち離婚するのは約1割でそれ以外の多くが、子どものことを考えて、または経済不安など様々な理由から、そのまま配偶者のもと留まるという結果があります。加害者更生プログラムは必要不可欠なものだと考えますが、残念ながら日本では普及が進んでいません。

内閣府男女共同参画局では加害者プログラムを、配偶者からの暴力防止に向けた重要な施策であり被害者支援につながるとして推進を掲げ、都道府県などにも取り組むことを推奨しています。東京都でも今年度、加害者更生プログラムを行う団体への補助の公募を行い、4つの団体に補助を行ったことを確認しました。加害者更生プログラムを実施しているNPO法人女性・人権支援センターステップ代表の栗原佳代美さんに話を伺ったところ、加害者は変われる、それは社会からDVをなくすことの有効な手段で、児相、自治体の相談窓口の相談員など多くの人に知ってほしいということでした。ぜひ、杉並区でも今後の取り組みに向けて、学ぶことから始めていただくことを最後に要望いたします。

今回、この質問に取り組んだことで、私自身に内在化したジェンダーや、女性として経験してきた不平等を改めて認識する機会となり、障がいがある人、性的マイノリティ、外国籍の人など困難を抱える人たちの課題も共有しながら、誰にとっても生きやすいジェンダー平等社会を目指すことの意義を再認識することとなりました。今後も継続してこのテーマに取り組んでいくことを申しあげ質問を終わります。

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