市橋綾子 2/16
区議会・生活者ネットワークの一員としまして、善福寺川「水鳥の棲む
水辺」創出事業について
私たちが暮らす杉並区は、神田川水系の流域面積が一番広い自治体です。なかでも、区の中央を西から東に流れる、全長10.5kmの善福寺川は、杉並区だけを流れる神田川の支流の1つです。
善福寺川の本格的な開拓の歴史はさかのぼることおよそ420年。徳川家康が江戸へ入府した翌年の1591年ごろからと考えられている、とある本で読みました。もちろん、それ以前から川沿いの大地には多くの集落が形成され、川のあるところに文化が生まれるともいわれ、人々の暮らしと川は密接な関係であったことは言うまでもありません。その長い歴史の延長線上に現在の私たちの暮らしがあることを忘れてはなりません。
さて、昨年の第一回定例区議会において、「いのちを育む」その中でも「地域のいのちを育む」施策の1つとして区民と協働で取り組む「善福寺川 水鳥の棲む水辺 創出事業」が承認され、すでに1歩を踏み出しています。この事業に期待を寄せる者として質問します。
まず最初に、この善福寺川「水鳥の棲む水辺」創出事業について2点お伺いします。
1点目。この事業のめざすものは何か、お伺いします。
2点目。事業に関する来年度予算の内訳をお示しください。
次に、今年度の計画で設置された検討懇談会について2点お伺いします。
1点目。この検討懇談会の位置付けはどのようになっているのでしょうか。また、懇談会委員はどのようにして決められ、どのような方が務めていらっしゃるのか、おたずねします。
2点目。検討懇談会がまとめたこの事業への「提言」が、先月1月に区に提出されたと伺いました。そこで、おたずねします。この提言に書かれている内容にはどのような特徴があるのでしょうか。また、区としてこの提言をどのように評価していらっしゃるのかお伺いします。
さて、2月7日、都市整備部建設課主催による「善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業」シンポジウムが開かれ、私も一区民として参加しました。区民の興味があるテーマであることに加え、当日の朝刊に大きく記事が載ったこともあり、会場の区役所中棟6階の会議室は130人を超える参加者でいっぱいでした。
懇談会委員をパネラーに、「水鳥の棲む水辺創出事業に期待するもの」と題しパネルディスカッションが行われ、水質・水量のこと、鳥、昆虫、植物のこと、下水道のあり方、教育現場から川と子どもたちなど、さまざまな立場から、過去、現在、未来の視点で、課題や期待が述べられました。そこでシンポジウムに関連して2点お伺いします。
1点目。今回行われたシンポジウムのねらいは何か、おたずねします。
2点目に、地域を知る教育についておたずねします。
善福寺川の近くにある区立西田小学校・杉並第二小学校の講師の方から、「子どもたちは地元を知らない。知るチャンスがない」、また、「子どもは好奇心のかたまりなのに、川を見ない。存在すら知らない」という発言がありました。
この議場にいらっしゃる皆さんは、川で泳いだり、遊んだりしたことがおありでしょうか。川遊びの経験をお持ちの方は、楽しかった、水と戯れることの魅力などを覚えておられるのではないでしょうか。
川は子どもにとっても大人にとっても楽しい遊び場である一方で、怖いものでもあります。神田川の活動を地域の方たちと行ってきた私も、次世代を担う子どもに楽しさ、怖さを伝えていくには体験が一番だと考え、これまで池で「外来魚生態調査」としてブルーギルやブラックバス駆除のための釣りをしたり、「生きもの調査」としてザリガニや小魚、ミジンコすくいなどを行ってきました。子どもたちは、水の冷たさ、水音、湧き出る水や流れの強さ、川から眺める地上の景色、とどれもこれも初めての体験に目を輝かせます。杉並区には、神田川、善福寺川、妙正寺川のほかに、暗渠になってしまった井草川、桃園川などが遊歩道として残っており、神田川水系の大部分がこの杉並にあるという特徴ある自治体です。川を楽しみ、川沿いの遊歩道を毎日散歩する人も多く、川は区民にとっても誇りある資源です。杉並の子どもたちが、このように川があるまちで育っているにもかかわらず、川に入ったことがない、接したことがない、というのは残念でなりません。これまでの川の活動を通して、また、子どもたちが地元のことを知る機会がない、という現場の先生の発言からも、川を遊び場や学びの対象とする場面が必要であり、その場面をつくるのが大人の役割であると考えます。これまでも、川の学習を希望する学校の依頼で、市民グループが講師役を担い、川を学ぶ授業が何度か行われてきました。それは、「たまたま」行われたことです。杉並っ子は必ず地元の川を学んで育つ―といった杉並らしい教育メニューが欲しいところです。
そこで、2点目の質問です。総合的学習などの時間を使って、子どもたちが川に接する場面、学ぶ場面を積極的につくってはいかがでしょうかお答えください。
次に、事業計画についてお伺いします。
区のホームページを拝見すると、シンポジウムを開催して幅広い区民意見の把握を行い、今年度内に事業計画を策定する、という予定になっています。そこで2点おたずねします。
1点目。シンポジウムで発表されたテーマだけでも、水質・水量、鳥、昆虫、植物、下水道、教育のテーマがありました。事業計画の策定にあたり、着手する優先順位をどのようにつけていくおつもりでしょうか。また、今後のスケジュールについてもお示しください。市民参加や区民意見の把握については、今後どのような場面で行われ、計画策定を行っていかれるのかあわせて伺います。
最初に述べましたようにこの事業は「区民と協働して取り組む」ものです。今後、たとえばテーマごとにワーキングチームをつくり、計画策定作業を区民と一緒に行うなど、共にできることをさぐっていってこそ協働で取り組む事業といえるのではないでしょうか。要望しておきます。
2点目。関連部局との連携についてです。
このシンポジウムで明らかになったのは、「水鳥の棲む水辺」は単に水鳥を呼びこむものではなく、水鳥が棲む水辺をつくるためにはどういうまちづくり、人づくりをしていけばよいのか、というものでした。ここからもわかるように、この事業を進めていくには、建設課だけでなく、まちづくり、環境、人づくりである教育部門の連携が不可欠です。関連部署との連携を図る必要があると考えますがお考えをお聞かせください。
最後に、都との連携について2点おたずねします。
1点目に区の役割と東京都との連携について伺います。
市民が川の活動を行うなかで必ず突き当たるのが東京都と杉並区の仕事・役割の区分です。河川の整備は東京都が行い、都が整備したものを維持・管理していくのが区の仕事とされ、これまで区としても独創性を持った取り組みができにくかったのではないでしょうか。しかし、この水辺創出事業は、区が独自性を持って行う事業であり、「維持・管理」の仕事を発展的にとらえた時、水生生物・植物を川の中や護岸、管理用道路、川の中にどう配置していくのか。たとえば、いつも刈りとっている水草は、水質改善策にもなるわけで刈らずにおくのも管理、ととらえることができると思います。今後、策定される事業計画に期待するところですが、この事業において区の役割は何か、都との連携をどう図っていくのかお伺いします。
2点目。下水道局との連携についておたずねします。
東京都の河川流域連絡会議の1つとして神田川上流懇談会が2004年に設置され、現在、第2期の懇談会が持たれているところです。私もこの懇談会の第1期の都民委員でした。この懇談会は、上流域2市5区の公募都民委員と、行政委員として2市5区の担当課長、都の建設局関連部署が正式メンバーになっていますが、下水道局はメンバーではありません。23区の下水道は合流式下水道を採用しているため、一定以上の雨が降ると汚水が川に流される現状があるわけで、河川と下水道は密接な関係にあるのです。今回のシンポジウムでも、映像で流された区長メッセージやパネラーの発言にも、河川に流れ込む汚水が問題であると指摘がありました。水鳥が棲む前に、餌となる水生生物が生息できるかどうか、そのためには水生植物が繁茂できるかどうか、つまり、事業の成功のカギを握っているのは下水道問題です。これらのことから、水辺創出事業を進めるうえで、ぜひとも東京都下水道局の参加が必要と考えますが、区としていかがお考えかを伺いまして、質問を終わります。