第2回定例会一般質問 2016.5.31 奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として、

直下地震で生き延びるための備えについて、具体的には

1.熊本地震から区が得たもの

2.震災救援所の運営について

3.エコノミークラス症候群の回避について

4.公園の機能を使いこなすために

5.震災用井戸の活用について

6.液体ミルクの導入について

以上6つの項目に沿って質問してまいります。

熊本が、2回もの震度7の激しい揺れに見舞われてからひと月半が経ちました。地震によって亡くなられた49人および関連死が疑われる20人の方々のご冥福をお祈りするとともに行方不明おひとりの方が早くご家族の元に戻れることをお祈りいたします。

最初の地震発生以降震度1以上の余震回数は1500回を超え、5/25の熊本県の発表では一連の地震で被害を受けた住宅は10万棟を超えたとのこと。未だ避難生活を強いられている方は9000人近くおられ、一日も早い復興を願うばかりです。

東京でも、30年以内に70%の確率で直下地震が発生すると2013年末に内閣府が発表しました。この20年あまりの間に起きた震度7クラスの大地震は、阪神淡路大震災、中越、中越沖地震、東日本大震災、そして熊本地震があります。私たちはこれらの地震から学び、生き延びていくには行政ばかりを頼るのではなく市民が積極的に自助・共助の備えにかかわっていく必要があると考え、その視点で質問いたします。

最初の質問です。

1-1.)田中区長は「首都直下地震は必ず起こる」との認識を示され、待ったなしの課題として、これまで区の施設の耐震化などを着実に進めてこられました。今年度予算編成の重点分野においても「減災対策等の充実による地域の安全・安心の拡大」を打ち出しておられます。この間、数年ごとに起きている大地震の度に区は自らの対策について検証を重ねてこられたと思いますが、今回の熊本地震も含め、改めてこれまでの地震災害から何を学び、活かしていこうとされるのか伺います。

次に2.震災救援所運営について4点お聞きします。

杉並区では大震災に備え、各小中学校65ヶ所に震災救援所を設置することを定め、その運営は防災会、PTA、学校、区などのメンバーにより構成される震災救援所運営連絡会が担うこととしています。その震災救援所は倒壊などにより自宅で生活ができなくなった人の受入れ場所としていますが、実際のところはどうでしょうか。熊本地震では自宅が全壊していない人も頻発する余震が怖いという理由で避難所に避難していました。そして避難所に入ったとしても、続く余震で建物の中に居られない多くの人が、自動車やテントの中で暮らすことを選択していました。

一方、運営はというと各震災救援所運営連絡会では、いざという時のために救援所の円滑な運営を行うためのマニュアルづくりや防災訓練を実施しています。しかし、想定通りにいかないのが大規模災害です。避難所運営において臨機応変な対応ができるようにするには、おおぜいの地域住民が主体的にかかわっていく意識を平時から醸成していくことがとても重要だと考えます。

1-2-1.)そこで、当区の震災救援所の収容人数と、実際に震災救援所に来る人はどのくらいと想定されているのか、また、帰宅困難者の想定はどのくらいで、その対策はどのようになっているのか、お聞きします。

1-2-2.)2点目として救援物資の供給体制についてです。震災救援所マニュアルではでは救援所に来た人に名前や年齢などを書いてもらい、避難者人数を災害対策本部に報告して救援物資を要望するという流れになっています。具体的には、発災後1日目は震災救援所で備蓄しているアルファ―米やクラッカーなどでしのぎ、2日目以降は都からの救援物資が搬入され、4日目ごろから炊き出しを始め、炊き出しの材料や救援物資の供給を「行政が行う」ことになっています。しかし、実際には物資がいきわたらない人が大ぜい発生することやまたその逆に物資を余らせるようなこともあろうかと思います。そこで、もっと柔軟な考え方のもと、炊き出しなどは多様な主体が多様な場所で実施できるように、物資の配付を例えばコンビニとの新たな協定によって対応していくことも必要だと考えますが、区の見解を伺います。

1-2-3.)被災者の避難状況の確認や物資の配付などにおけるきめ細かな対応には、町内会や商店会、PTA、民生委員などの地域組織が頼りとなります。日頃から防災に関心がある地域住民やすでに自主的に防災訓練や災害時の研究を行っている地域の活動団体を巻き込んで、地域組織と協力関係を作っておくことが大事だと考えます。東京都が認定する共助のしくみとして「防災隣組」の事業があり、杉並区内の町会や防災会、震災救援所運営連絡会、大型マンションでの管理組合防災会など7つの組織が認定を受けています。これらの事例を共有していくことも必要ではないでしょうか。

そこで、3点目の質問として、震災救援所運営連絡会を「目的意識をもって主体的に活動する組織」として機能させることや、すでに主体的な取組みをしている団体の活動を伝播させていくための工夫、支援が必要と考えますが、区の考えを伺います。

1-2-4.)4点目は生活者ネットワークがかねてより主張してきた女性の視点からの質問です。救援所の運営はリーダーの力量に左右されるとこれまで起きた大震災のたびに言われてきました。区が毎年行っている防災リーダー養成講座の役割は大きいと考えますが、特にここで指摘しておきたいのは、震災救援所に女性リーダーを増やすことの重要さです。この間、高齢者、障がい者、女性、子ども、外国人など災害弱者に対する配慮が重視されるようになってきたと思いますが、熊本地震の避難所においてもまだ十分ではなかったと聞いています。女性がリーダーとして震災救援所を運営するにあたって、管理・企画立案、リーダーシップの取り方などの研修も重要だと考えます。目的意識的に女性リーダーを増やすこと、そのための育成や研修が必要と考えますが、いかがか区の考えを伺います。

次に3つ目の項目

3.エコノミークラス症候群の回避について 3点お聞きします。

当区では学校や公共施設の耐震化は進んでいるとはいえ、先に述べたとおり余震が怖くて半壊、一部損壊であっても避難所生活を送る人がかなりおおぜいになります。過去の大震災でも問題とされたエコノミークラス症候群はトイレが汚い、数が少なく長時間並ばなければならない、行くまでが大変、男女別の不備などの理由でトイレに行く回数を減らすために水分を控えたり、また、車中泊により足を伸ばして寝られない状況であったりすることで起きる身体の症状で、命の危険を伴います。せっかく地震で助かった命を避難生活で落とすことがあってはならないと考えます。

1-3-1.)そこで、区はエコノミークラス症候群に対してどのような対策をお考えか、1点目として伺います。

1-3-2.)2点目。震災救援所では、家族ごとに段ボールのパーテーションで仕切りがされればまだよい方で、プライバシーはないに等しいような暮らしを強いられることになりますが、プライバシーの保護は人の尊厳にかかわる問題です。その点、キャンプ用のテントはプライバシーの確保に適していることに加え、足を伸ばして寝られるということで、熊本地震でもテントの活躍が目立っていました。保管スペースの問題もあるとは思いますが、震災救援所でのテントの活用を進めるべきと考えます。区の見解を伺います。

また、避難所を学校だけに頼るのではなく、発災直後の段階からテント村として大規模公園などを活用することを検討し、公園を利用する計画を入れていただきたいことを要望しておきます。

1-3-3.)3点目として、エコノミークラス症候群を回避するためのトイレ対策の重要性についてです。阪神淡路大震災では健康被害や衛生環境の悪化、精神的ストレスを引き起こすトイレの問題が浮き彫りとなり、大震災が起きるたびに災害時のトイレの確保は重大な課題と捉えられるようになりました。

熊本地震の直後に内閣府が「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を公表しましたが、国交省もそれ以前の3月に「マンホールトイレのガイドライン」をつくっています。避難生活を支援する行政が取り組むべき事項の内、トイレの確保と管理に関して指針を示したものですが、これまでの大震災における課題を踏まえたトイレの確保・管理に関する基本的な考え方がわかりやすく示されていると感じました。利用する人の状態によってトイレのあり方も変わってくるため、ニーズに対応した備えも重要です。このガイドラインを受けて今後、区はトイレの確保量の対策をどのように考えていくのか、お聞きします。

次に

4 震災時における公園の機能を使いこなすことについて3点の質問をいたします。

防災公園の桃井原っぱ公園や柏の宮公園などにあるベンチやいすの座面を外すとかまどになるかまどベンチやかまどスツール、災害時トイレは当区においては大災害が発生した時に使う道具として設置されており、平時に使うことはないとしています。しかし、周辺地域の人がそれらの道具の存在を知っていること、普段から使っていくことが訓練という意味では重要ではないかと考えます。豊島区に住民が平素から使っているかまどベンチやかまどスツールがあると聞き、見てきました。池袋の繁華街から少し離れた住宅街にある公園や児童遊園にかまどベンチ、かまどスツール、調理台一体型の炊事場、井戸などを設置し、普段から町会などが使いこなしていました。

1-4-1.)当区においても、かまどベンチ、かまどスツールなどが設置されている公園で、防災会や町会、学校などが行事で使えるようにするべきと考えますが区のお考えを伺います。かまどスツールは一度使うと熱で表面の塗装が剥げてしまうつくりになっています。豊島区の担当者は「剥げてもいいんです。いざという時に地域の方が使える環境をつくるのが自分たちの仕事です」とおっしゃったのが印象的でした。ぜひ、前向きな答弁を期待します。

1-4-2.)2点目、現在は、桃井はらっぱ公園、柏の宮公園のほか三井の森公園、西荻窪平和児童遊園の4か所の公園に設置されているかまどベンチやかまどスツールですが、今後たとえば、出火の危険性が高いと予想される地域の外側で、設置が有効と判断される公園に配置していくことが必要だと考えますが区の考えを伺います。

1-4-3.)3点目は、今年3月の予算特別委員会で、災害時における東京都公園協会と

杉並区との連携・協力体制について質問しました。都立公園と連携していくとの答弁

をいただきましたが、まだ具体的に決まっていない時期でしたので改めて、財)東京

都公園協会と杉並区との協定について伺います。この協定の目的、主な内容、この

協定で期待されることは何か伺います。

なお、要望を2点申し添えておきます。

ひとつは、地域の小学校のPTAなどが行う地域活動として、都立公園の中にある災

害用の道具であるかまどベンチや災害時トイレを、使ってみようという企画を立てた場

合のことについてです。都立公園のサービスセンターがその受け皿になっています

が、区としてこのような区民の動きを把握することも必要かと思います。また、せっかく

備えてある都の設備を区民が積極的に使う機会を得られるよう区からも情報発信して

いただけると良いと思いましたので、東京都公園協会との協定に基づいてしっかり実

態をつくっていってほしいと要望いたします。

もう一つの要望は、都立公園、区立公園、公共施設や駅前広場に植えられている樹木についてです。東京都が災害時の火災による危険性が高いとしている地域に、燃えやすい樹木であるあけぼのすぎ(メタセコイヤ)やヒマラヤスギなどが植えられています。特にヒマラヤスギはものすごい勢いで燃える樹木だと聞きます。しかし緑の保全という観点から言えば、伐ってしまうのではなく、延焼を防ぐ装置(放水銃)の設置の検討が必要ではないでしょうか。蚕糸の森公園には放水銃が5基、樹木スプリンクラーが25基設置されています。他にも井草の森公園や馬橋公園などにも防火装置が備えてあります。これらの装置は防災公園や一時避難所、広域避難所、都立公園などすべてに対策がとられていないため、大きな避難所周辺や震災救援所となる学校や区役所周辺の植栽についても必要な対策を検討していただきたいと要望いたします。

次に5つ目の項目、

5.震災時の井戸の活用について2点質問いたします。

地域の中の「震災時の井戸協力の家」の情報が杉並区防災マップにも載っていません。個人情報の観点からそういうことになっているのでしょうか。震災時の井戸の活用について区民にはあまり知られていない状況ですが、実際水道がストップした際に生活用水として井戸は役立つと思われ、改めて地域防災における位置づけを確認する必要があると感じています。

1-5-1.)まず、区立施設防災井戸や民間で「生活用水井戸」としての登録は現在何か所あるのか、伺います。

1-5-2.)これらの震災用井戸の役割はなにか。また、いざという時にどのように機能するのか、お聞きします。

6つ目の項目の質問です。

6.液体ミルクの導入について伺います。

1-6.)災害時において必要度の順位が高いものとして乳幼児用の粉ミルクがあげられますが、粉ミルクは消毒・調乳するためのお湯や哺乳瓶などが必要となります。それに対して、そのままで飲ませられる、常温で保存がきく液体ミルクがあれば災害時にどんなに助かるでしょうか。東日本大震災ではフィンランド在住の日本人女性らが14000個の液体ミルクを被災地に送り、先ごろの熊本地震でも国会議員のグループが緊急輸入し注目を集めました。4年前、当議会生活者ネットワークが国の動向を注視して区としても液体ミルクを災害時の備品に入れるよう要望しておりますが、現在もまだ、国は乳幼児用の食品を「粉乳」と限定しており、液体ミルクは認められていません。したがって、国内での製造・販売もされていないため、個人輸入などで手に入れるしかない状況です。ただ、ここへ来て国での議論が始まったようで期待したいところです。区は液体ミルクについてどのような認識を持っておられるかお聞きします。

質問の最後に、「事前復興」の考え方について述べておきたいと思います。「事前復興」とは、近い将来、大震災で壊滅的な被害がわかっているのであれば、それを前提に事前に復興まちづくり計画を作り、まちづくりを今から進めるというものです。市民・専門家・行政の日常的な交流・学習・シミュレーション活動の実践をもとに、発災する前に復興を視野に入れて計画を立てることになります。自助・共助・公助の連携で、事前から事後へと連続する「災害総合対策機能」を確立していくことが必要だと考えます。ぜひとも事前復興という観点から地域住民主体の復興計画づくりをすすめていかれることを要望し、私の一般質問を終わります。

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