指定管理者制度の検証および今後の方向性について
Q1.「指定管理者制度の検証報告書」では、財政負担についてはスポーツ施設で11,3%、図書館で29,6%の経費削減となったとあるが、その要因はどこにあると認識しているか伺う。
A1.(区政イノベーション担当部長)スポーツ施設においては、指定管理者制度の導入により複数施設を一体的に管理することで、人員配置や物品の一括購入等による運営の効率化が図れたこと、図書館の場合は、施設の繁閑に合わせた柔軟な人員配置を行えたことによる人件費等の経費削減が主な理由である。
Q2.集会施設は逆に6%増となり、それは大規模改修や機能の追加など、制度導入前と条件が違うことが理由となっているが、大規模改修や機能追加の何が増加の要因になったのか、指定管理にしなかった場合と比較するとどうだったのか伺う。
A2.(区政イノベーション担当部長)集会施設の場合、大規模改修に合わせて共有スペースにカフェを設置したり、動線をスムースにするための諸室の配置変更を行うなど、指定管理者制度導入前後で施設の設備面が大きく変わり、維持管理費が増えたことが経費微増の主な理由となる。また、委託業務の時には含まれていなかった建物修繕の際の立ち合い業務などが、指定管理業務には含まれていることも、経費微増の原因として挙げられる。
Q3.従事者に対しては「総合的に働きやすい」と回答したのは79,3%だったが、20,7%の人はそうは回答していない。その2割の声をどのように把握しているのか伺う。
A3.(区政イノベーション担当部長)働きにくいと回答した方の多くが、人間関係に課題があると感じていることを把握している。
Q4.正社員以外の従事者に無期労働契約への転換を42,9%の指定管理者が促しているということは分かったが、区はこの数字をどう捉えたのか伺う。
A4.(区政イノベーション担当部長)正社員以外の従事者に無期労働契約への転換を42,9%の指定管理者が促しているという結果については、想定よりは多かったとはいえ、すべての対象者に当該制度が周知され、希望する働き方ができるよう、引き続き指定管理者に働きかけていくことが必要であると考えている。
Q5.昨年7月8日に指定管理者制度をテーマに行った「聴っくオフミーティング」では、どのような意見やアイデアが出され、今回の検証にどのように反映されたのか伺う。
A5.(区政イノベーション担当部長)より多くの人が施設利用につながるよう、区民参加型イベントを実施することや、利用者の声を運営に生かすため、利用者との定期的なミーティングの場を設けてはどうかなどの提案があった。また、各施設で魅力的な取組を行っているにもかかわらず、情報がなかなか届いていないといった声もあり、こうした声を受けて、「ガイドライン」に、指定管理者が、より多くの区民にサービスを知り、利用してもらうための取組を工夫して行うよう記載していく。
Q6.「従事者がスキルを伸ばし、やりがいを持ち、働きやすいと感じる職場とするための取組に伴うコストについて配慮する」については、どう配慮するのか。また、どのような働き方であろうと賃金がきちんと支払われる人件費の積算が必要であり、そのためには、正規・非常勤・パートの配置方針やどの賃金を目安に決めるのかなどを明確にする必要があると考えるかどうか。区の見解を伺う。
A6.(区政イノベーション担当部長)従事者のスキルを伸ばし、やりがいを持ち、働きやすいと感じる職場とするための取組は極めて重要であるため、今般策定する「施設運営パートナーズ制度導入・運用ガイドライン」に、人件費の積算に当たっては、公契約条例に基づく労働報酬下限額以上の賃金が支払われるようにすること、指定管理業務に必要な経費には、指定管理者が行う人材育成に係る経費を含むことを盛り込んでいく。
Q7.報告書では公の施設を民間に委ねたとしても、区が施設設置者としての責任を果たす必要があることに改めて触れている。当たり前のことだが、その意識が薄いと感じることもあった。区職員が施設運営の経験や提供するサービスに関する知識をつけていくには現場を持つことが必要。直営の施設を確保することが職責を果たすために重要と考えるが、区はどのような施設を想定して直営を残していくと考えているのか伺う。
A7(区政イノベーション担当部長)昨年度に実施した指定管理者制度の検証に基づき、今般、指定管理者制度の導入・運用に関して方針とガイドラインを策定し、本定例会の総務財政委員会に報告する予定だ。この中に、既に盛り込んでいるものもあるが、従事者の労働環境をより改善するための取組や、区として蓄積すべきノウハウなどの面で、今後更に検討を深めなければならない課題が残っていると受け止めている。そのため、今年度から設置した「区政イノベーション本部」の下に検討グループを設け、これらの課題について検討し、今年度末を目途に、ガイドラインのブラッシュアップを図っていきたいと考えている。
Q8.指定管理期間の設定について、報告書にある指定管理者の創意工夫や専門性をさらに発揮できることや初期投資の回収期間を考慮することに加え、例えば社会福祉施設や保育施設などは、利用者と施設職員との継続的な信頼関係が特に必要と認められるため5年以上の期間とする場合も想定できる。そのため5年を超える場合も含め、指定管理期間の考え方を明確にしておく必要があると考えるが区の見解はいかがか伺う。
A8.(区政イノベーション担当部長)施設の特性に応じた指定管理期間の設定についてもその中で検討していく。
Q9.報告書では地域との連携情報公開、環境問題への対処や男女共同参画社会の実現が取り上げられているが、マイノリティの方への配慮や様々な障がいのバリアフリーを忘れてはならない。以前にも全盲の方と共に地域区民センターのバリアチェックをし、課題を質問に取り上げたこともあったが、ハード面だけでなくソフトで解決できることもあるため、従事者の研修も必要である。区がどういう施設づくりをしていきたいのかのビジョンを明確にし、一緒に実現していくパートナーを選ぶという姿勢が重要だと考えるがいかがか伺う。
A9.(区長)議員ご指摘のように、事業者には区がどういう施設づくりをしたいかというビジョンを共有し、ともにそれを実現していくという姿勢を持ってもらうことが大切であるため、相手方となる事業者を「パートナー」と呼ばせていただくこととした。今後は、それぞれの業務の特性に応じて、区職員のサービスに関する経験や知識を蓄積できる直営、指定管理、業務委託等の適切な運営方法を選択していくことが重要であり、そのため、直営以外の運営方法を選択する場合の基本的な考え方を示してまいりたいと考えている。
Q10.モニタリングの充実について、一緒に実現していくパートナーとして課題を共有するためのモニタリングであってほしいと思う。様々な視点から行ったモニタリングの結果をもとに、議論する場として外部委員を含む評価委員会を設けることも必要だと考えるが区の見解を伺う。
A10.(区政イノベーション担当部長)モニタリングの実施方法等についても、「区政イノベーション本部」の下の検討グループで検討していく。
Q11.公共の再生を政策の中心に掲げる岸本区長は、この指定管理者制度に対して、検証の結果を受けて改めてどのように捉えたのか伺う。
A11.(区長)今回の指定管理者制度検証により、概ね区民満足度の高いサービスが提供されていることを確認できた。指定管理者制度は、事業者等の専門性を生かし、地域に根ざした良質なサービスが提供でき、安定的な雇用の確保を図るための一つの有効な手法と考えているが、一方で、不安定な雇用形態にある従事者が多い等の課題もあると認識している。
地方自治法改正について
Q12.今回、国が地方自治体に対して補充的な指示が必要であるとした主な理由として、新型コロナ感染症のまん延時に従来の法制で想定されていない事態が相次いだことや自治体からの情報が迅速に提供されなかったこと、国から大量に発出された通知に現場が対応できなかったことなどを挙げており、国が直接関与できればうまく行ったかのような印象操作がされている。区の受け止めを伺う。
A12.(政策経営部長)先の第33次地方制度調査会答申では、「補充的指示」を必要とする背景として、「コロナ禍において感染動向等が地方自治体から国に対して迅速に提供されなかった」旨や、「国から地方自治体へ大量に発出した通知に現場が対応できなかった」旨が述べられているが、これらは、例えば「国が各自治体の状況を把握せずに提出を求めたため、求めた数値が保健所等での集計方法に合致していなかった」ことや、「事前の協議が十分でない状況で通知を発出したため、コロナ対応に追われていた保健所において国からの通知に対応しえなかった」ことなど、様々な理由が考えられ、国に指示権があるだけで解決し得る問題ではなかったと考える。
Q13.個別法を根拠としない特例として、国会も通さず、閣議決定で決める「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」時に国の自治体への直接関与を認めることは地方自治体の本旨に矛盾するものと考える。個別法を改正すれば済むことであり、「補充的指示」などと地方分権の根拠を揺るがすことを軽々に論じてほしくないと思うが、区の認識を伺う。
A13.(政策経営部長)過去に起こった震災や新型コロナにおける教訓は、各個別法の改正によって対応し得るものであり、今後の想定されていない事態において、一般法である地方自治法において、一律に国が地方自治体へ、国会の承認も経ずに「補充的指示」を発することは、国と地方の対等・協力の関係を損ないかねないと危惧するところだ。
Q14.自治体は国の下請け機関ではないと強く主張すべきだと思うが、区の認識はいかがか。
Q16.今回の地方自治法改正案に対して、庁内ではどのような議論がされたのか。杉並区として何らかのアクションを起こすべきだと考えるがいかがか。
A14.16(政策経営部長)区では、当該答申が出された昨年末以降、国の動向を注視していたが、答申を受けた法律案は、危惧するところを拭いきれない内容であったため、区としても考えを表明することについて検討に入った。区においては、東日本大震災の際、国に先んじて災害時相互協定を締結していた自治体と連携して迅速かつ的確な支援をし、その成果を踏まえて結成した「自治体スクラム支援会議」の取組があるので、支援会議を構成する自治体に声明の発出について声かけすることとしたものである。結果的にすべての構成自治体と共に声明を発することができ、また、総務省へ要請書も提出することができた。このことは、杉並区が単独で行った場合に比べ、より意義があり、かつ高い発信効果が得られたものと考えている。
Q15.改正案では、地域住民の生活サービスに資する活動を行う団体を首長が指定できるとし、支援や調整の規定を整備するとしていることは問題である。地域で活動する市民団体との連携・協議は、自治体が自治体議会を含めて市民と共に議論する課題であり、法律で規定すべきではないと考える。また、特定の団体を恣意的に優遇することも可能となり得ると危惧するが、区はどのように考えるか見解を伺う。
A15.(区政イノベーション担当部長)改正案の冒頭の条文には、「市町村は、地域の多様な主体の自主性を尊重しつつ、これらの主体と協力して、住民の福祉の増進を効率的かつ効果的に図らなければならない」とあるが、法改正によらずとも、区としてはこれまでもそのような協働の取組を進めてきた。法改正による当該制度は、各地方自治体の判断により条例によって導入を図るものとされており、今後、仮に法改正がなされた場合には、国からさらに詳細な内容が示されることと思うので、これを精査し、慎重に導入の必要性等について検討していく考えだ。なお、恣意的な運用については、法に基づくか否かを問わずあってはならないことであり、現状の取組においても運用の明確化や透明性の確保等により防止に努めている。