第3回定例会一般質問と答弁 2024.9.12 奥田雅子

Q1.今年度からの介護報酬改定について区はどのような認識を持っているのか伺う。

A1.(高齢者担当部長)訪問介護については、国の直近の調査結果で約4割の事業者が赤字となっていることなどから、今後とも国において、介護保険制度の安定的で円滑な運営と持続可能性を確保する観点から、必要な改善・見直しを図っていくべきものと認識している。

Q2.2023年度の訪問介護事業所の閉鎖倒産数と開設数、2024年度8月までの状況について伺う。

A2.(高齢者担当部長)2023年度は廃止が8所、新設が15所で、2024年度は8月末までで廃止及び新設がそれぞれ2所となっている。

Q3.区では必要なヘルパー数を何人と想定しているのか、その数字に見合った体制が図られているのか確認する。

A3.(高齢者担当部長)必要なヘルパーの想定人数は推計していないが、区が指定する事業所については、新規規定及び更新時に必要な人員体制が確保されていることを確認している。

Q4.今後の在宅ケアを持続可能なものにしていくためには訪問介護現場の状況を把握しなければ適正な施策を展開していけないのではないか。区内140以上ある訪問介護事業所の実施把握が必要と考えるが、悉皆調査は行われているのか確認する。

A4.(高齢者担当部長)区では3年毎に介護保険事業計画策定の基礎資料を得るための各種調査を行っており、次回の令和7年度に予定する調査において、これまでと同様に悉皆調査を実施していく考えだ。

Q5.居宅介護支援事業所について、利用者の状況を把握し、その人にあったプランを作成するのは主にケアマネの仕事であるが、訪問介護事業所から断られるケースも増え、代替事業所探しなどの負担が増えているのではないか。居宅介護支援事業所の閉鎖が増えケアマネ不足によりケアマネを複数から選べないといった声も聞こえるが、区はその実態をどのように把握しているか伺う。

A5.(高齢者担当部長)居宅介護支援事業所については、令和6年4月現在121所で、合計354人のケアマネジャーが勤務している状況だ。5年前の令和2年4月と比較して、事業所数は32所減っているものの、ケアマネジャーの人数は6人の減にとどまっている。いずれにしても、総体的にケアマネジャーが不足していることの課題認識を持っているので、引き続き、人材確保・育成に向けた区の取組を鋭意進めていきたい。

Q6.総合事業については各自治体の裁量や工夫がされていると思うが、区として、この総合事業をどのような考えで進めているのか。

また、総合事業の内、介護予防・生活支援サービス事業について、介護予防訪問事業と自立支援訪問事業があり、利用実績も開きがあるが、その二つの事業の違いについて伺う。この間、総合事業を行ってきて、どのような効果が得られたのか、この事業の成果と課題について伺う。

A6.(高齢者担当部長)当区の総合事業は、この間、介護予防訪問・通所事業の短期集中予防サービスを中心に実施しており、例えば、令和3年度からの3年間で、短期集中サービス利用者の約半数が介護保険サービスを利用せずに生活できるようになった実績があることなどから、一定の効果が得られていると受け止めている。

また、介護予防訪問事業と自立支援訪問事業の違いや特徴としては、どちらも対象は要支援1・2の方だが、移動能力や認知機能が低下した方の家事をヘルパーと共に行う介護予防訪問事業に対し、移動能力の低下に伴い家事を代行する自立支援訪問事業の場合は、「いっときお助けサービス」「ほっと一息、介護者ヘルプ」などの介護保険法定外サービスを利用するケースが多いため、実績が少ないものと考えている。

こうした総合事業については、現在、高齢者部門と保健所部門で役割を分担して行っているが、更なる高齢化が進む中で、介護予防と日常生活支援をより効果的に実施することがますます重要になると考えている。そのため、現在、関係部門が連携して、事業の検証と課題の洗い出し、今後の方向性やそのための組織体制のあり方などの検証に着手したところだ。

Q7.総合事業に限らず、介護全般で生活援助を丁寧に行うことは、QOLを維持し、できるだけ機能低下を遅らせるという点でもとても重要だと考える。働く側からすると、生活援助も掃除・洗濯・買い物・調理などハードワークであり、利用者の状態の小さな変化にも対応していくスキルも必要とされるが、報酬は身体介護よりずっと低く設定されている。大手事業所は生活援助を受けないところが多く、その分、小規模事業所にしわ寄せがきているという話も聞く。このような実情に対する区の認識を伺う。

A7.(高齢者担当部長)生活援助サービスについて、大手の事業所は引き受けないことが多いため、小規模事業所にしわ寄せが及んでいるのではないかとのお尋ねだが、現在まで、区にそうした声は寄せられていない。今後、集団指導の場などで改めて確認していきたい。なお、これらの介護報酬については、国において適時適切に必要な改善・見直しを図っていくべきものと考えている。

Q8.地域の中に気軽に立ち寄れて、「ちょっと困っているんだけどどうしたらいい?」といったようなやり取りができる居場所の存在は重要である。地域の人と歌を歌ったり、おしゃべりしたり、会食したりするなどのサロン活動は孤立を防ぎ、お互いに気にし合う関係を身近に作る場でもある。また、出かけられない方には簡単なお手伝いをしに出向くなど、その方の暮らしの支えの一助となる取組みに対して、区はどのように認識しているか、見解を伺う。

地域住民による身の回りのお手伝いなどの生活を支援するサービスを行っている団体について、区はその活動内容を把握しているかどうか伺う。

A8.(高齢者担当部長)共生社会の実現を目指す当区として、そうした地域の自主的な活動が広がることは大変重要と考える。現在、区内では、高井戸地域の「ちょこっと支え合い」や成田地域の「小さなサポートサービス」などの活動が行われており、家庭内での軽作業や買い物等の代行、通院・散歩への同行など、高齢者に対する支援を中心に、地域住民によるサポートを行っていると承知している。

これらの自主的な取組がしっかり根付き、地域全体の生活支援サービスのネットワークに育つよう、当区の公民連携プラットフォームによる支援にも取り組んでいるところだ。

Q9.区では生活支援体制整備事業の実施ということで第1層・第2層協議体が連携して住民主体の生活支援サービスや通いの場などの支え合いによる活動の開発、担い手の養成、多様な活動主体間の交流等を進めるとあるが、この認識は地域の現場で理解され、共有されているのか? 支え合い活動の開発や担い手の養成を実際に達成できている第2層協議体はあるのか伺う。

また、生活支援体制整備事業の中で地域での支え合いの活動をしている団体やグループと具体的な仕組みづくりについて意見交換する場も必要だと考えるが、区の見解を伺う。

A9.(高齢者担当部長)生活支援体制整備事業の第2層協議体について、現在、各協議体の実情に応じて、お手伝いサービスやカフェ・サロン活動のほか、学生やマンション住民との交流を通したつながりづくりに取り組んだり、地域の事業所や団体との情報交換会を開催したり、様々な活動が行われている。こうした実績から、理解・共有は一定程度図られているものと存じるが、未だ道半ばという面は否めないので、ご指摘の支え合い活動をしている団体やグループとの意見交換を行うことを含め、関係者と話し合う機会をもっていきたい。

Q10.区は認知症やその疑いがある家族を支えている世帯について、どのようなことを契機に把握するのか伺う。

A10.(高齢者担当部長)近隣住民や医療機関などからケア24または区に対し、認知症が疑われる方がいる等の情報提供がされるケースが多く、このほか、安心おたっしゃ訪問を通して把握することもある。こうした情報はケア24と区で共有するとともに、情報を基に本人や家族にアプローチして状況把握を行い、必要な支援を図っているところだ。

Q11.10月5日に区主催の「オレンジ・ランプ」の上映会がある。若年性認知症の方の実話に基づく映画で、この間、別の住民団体が2回区内で上映会を行い、いずれも大きな反響があった。映画の中に登場するヘルプカードについては多くの方が関心を示し、どこへ行けばヘルプカードはもらえるのかと何人もの方から聞かれたと主催者から聞いた。地域でも拡げていきたいという要望が出ていると聞いている。例えば「なみすけ」入りの区独自のヘルプカードを作成して、認知症の方に留まらず、外出を促すツールとしてキャンペーンする等、普及してはいかがかと考える。95%の人は助けを求められれば助ける、それに反して5%の人しか助けを求めない、求めることができないと聞いたことがある。このギャップを埋めるツールがヘルプカードである。誰もが助け、助けられる、優しいまち杉並にしていきたい。この度の区の認知症理解の普及啓発月間のチラシのテーマは『「わたしは認知症です」とあんしんして言えるすぎなみに』となっており、同感するものである。ヘルプカード普及についての区の見解を伺う。

A11.(高齢者担当部長)ヘルプカードについては、令和5年度からケア24高井戸及び善福寺において、試験的にカードの配布・活用を行っており、昨年11月には、認知症介護研究・研修東京センターと連携して、全てのケア24職員の理解を深める観点から、「新しい認知症観と希望をかなえるヘルプカードの活用に関する説明会」を開催した。今後はケア24と共に、これまでの取組の振り返りとこれからの取組の方向性などを意見交換していくこととしている。

Q12.厚労省も推進するピアサポーターによる本人支援について調べる中、「公益社団法人認知症の人と家族の会」による2024年3月「認知症診断直後からの本人やその家族へのピアサポート活動について」の実態調査事業報告書を目にする機会があった。ピアサポートとは認知症になった本人が他の認知症の人の話を聞き、お互いの体験を共有することで支え合う取り組みである。認知症と診断されてから実際の支援につながるまでの時間を日本認知症本人ワーキンググループ代表の藤田和子さんは「空白の時間」と表現した。支援のない診断後の期間の平均が1年1か月というデータもあるようである。認知症診断後すばやくピアサポートの場である「集いの場」につながることで、同じ立場の人や支援者などに出会い認知症と向き合う前向きな気持ちになれるとの声も報告書には綴られている。それにはピアサポート活動を地域の中に様々つくること、医療機関などが診断と同時にピアサポート活動情報を本人にわたすこと、さらには情報提供だけでなく、一緒にそこに同行してくれるサポーターの存在も肝になるということで、ピアサポーター養成講座も必要である。杉並区で言えば、チームオレンジがそういう場としてさらにブラッシュアップしていけたらよいのではないかと思うが、改めてピアサポートという視点からの取組を確認していくことも必要と考えるが、見解を伺う。

認知症介護研究・研修東京センターと協定を結んでいる杉並区だからこそ、このピアサポート活動などの事例を参考にしつつ、国の議論に先んじて、地域資源をネットワークし、認知症の方ひとり一人の顔の見える支援体制を構築してほしいと考えるが、区の見解を伺う。

A12.(高齢者担当部長)認知症とその家族に対するピアサポートについては、厚生労働省の「認知症家族教室、認知症家族ピアサポート運営の手引き」において、「チームオレンジは、認知症サポーターのステップアップや認知症の方の支援ニーズに認知症サポーターを繋げる仕組みを構築しているため、今後チームオレンジの取組が進んでいけば、ピアサポート活動においても認知症サポーターの有効活用が期待できる」としているところであり、認知症介護研究・研修東京センターの専門的な助言を得ながら、チームオレンジの関係者と共に、今後の取組を考えていきたい。

Q13.独居でも認知症になっても住み慣れた自宅で最期まで暮らすことができることを当たり前の社会にしたいとの思いは多くの方々が抱いていることだと思う。しかし、今の超高齢者社会に制度が追いついておらず、このままでは、特に低所得の高齢者のみ世帯やひとり世帯の方々を置き去りにしてしまうのではないかと危惧する。区が掲げている保健福祉分野全体を貫く基本理念を絵にかいた餅にしないために、区や事業者、介護・医療機関、区民が一緒に取り組んでいかなくてはならない問題だと考える。この介護の危機をどう乗り越えていくのか、区の考えを伺う。

A13.(高齢者担当部長)議員の基本的な問題意識は、区としても同様に受け止めている。そのため、令和7年度に実施を予定している高齢者実態調査において、独居高齢者をはじめ、高齢者の生活や介護に係る、より的確な実態把握に努め、その結果を今後の取組に反映させていかなければならないと考えている。また、地域包括ケアシステムの推進・強化や、認知症施策を官民一体的に進めるための仕組みづくりも大きな課題だと認識しており、様々な知見を参考に、鋭意取り組んでいきたい。

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