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第4回定例会一般質問 2017.11.17奥田雅子
いのち・平和クラブの一員として地域共生社会の実現に向けて質問いたします。
1.国の動き
今回私が取り上げる「地域共生社会」という言葉は、2015年9月の厚労省による「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」の公表および2016年6月の「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定の流れの中で出てきました。これらを受けて厚労省が2016年7月に設置した「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」のもとにおかれた地域力強化検討会で、その実現に向けた具体的な検討が行われてきたという経緯があります。「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」によると、地域共生社会とは「制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに作っていく社会を目指すもの」としています。そして、今年5月に地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律によって、社会福祉法が改正され、「我が事・丸ごと」の地域福祉推進の理念が規定されるとともに、包括的な支援体制の整備や市町村地域福祉計画の策定が努力義務化されました。
これらの背景には、少子高齢化がすすむ中で、課題が複雑に絡み合い進行してきた社会状況があります。高齢独居や老々介護、高齢の親と働いていない50代独身の子の世帯(いわゆる8050問題)、高齢者と障がい児など両方の介護を抱えるダブルケア、介護や慢性的な病気、精神的な問題を抱える家族の世話をしている若者ヤングケアラー、生活困窮世帯、ごみ屋敷、子どもの貧困・虐待など暮らしを取り巻く問題は複合化、多重化しています。さらに、地域とつながりのない社会的孤立が問題を複雑化させており、従来の制度・分野ごとの「縦割り」では解決できないというところにまで来ているのだととらえています。
介護の社会化が期待されて始まった介護保険制度も17年が経過し、改定の度にケアの縮小や保険料・利用料の負担増が行われ、人々の暮らしを直撃しています。地域での人との関わりが希薄になり、助けてと言えず一人で抱え込んで最悪な事態に至るケースが後を絶ちません。自己責任が言われ、人に迷惑をかけたくない、他者との関係づくりがしにくい、というような不寛容な世の中になったと感じるのは私だけではないと思います。しかし、このような問題に気づき、お互い様のたすけあいが当たり前の地域コミュニティを再構築していこうと動き出している地域住民がたくさんいることも事実です。2025年には団塊の世代が皆75歳以上となり、医療や介護の必要性が今以上に高まることは明らかです。認知症の方がまちの中にあふれているかもしれません。でも、どんな状況になっても大丈夫と言える地域社会をつくっていきたい、という立場から質問します。
1-①対象者の属性に関わりなく、複合的な課題に対する分野横断的な福祉政策、
地域施策が求められていると考えられますが、このような国の法改正の動きに対して区の認識を伺います。
2.杉並区保健福祉計画の改定について
現在の杉並区保健福祉計画は杉並区基本構想に掲げる5つの項目の内、「目標4.健康長寿とささえあいのまち」「目標5.人を育み共につながる心豊かなまち」の実現に向けた保健・福祉・医療施策に関する計画で、子どもから高齢者、障がい者、健康増進、食育推進など9つの計画と介護保険事業計画及び子ども・子育て支援事業計画の一部が包含される形となっています。地域福祉計画は保健福祉計画の一施策「地域福祉の充実」に該当するものとされていますが、本来なら保健福祉計画全体を貫く性格のものであると考えます。そこで、保健福祉計画の作りについて2点伺います。
2-①今回、地域福祉計画の策定が努力義務化されたことを受け、保健福祉計画と地域福祉計画の関係と定め方について伺います。
2-②同時に策定作業がすすんでいる介護保険事業計画についての確認ですが、第7期介護保険事業計画は高齢者保健福祉計画と一体的に策定するとなっています。これまでの介護保険事業計画との違いはどこか。その扱いとなった経緯について確認します。
3.地域福祉計画について
ここからは、先ほども触れました、改正社会福祉法で努力義務化された地域福祉計画の策定プロセスおよび内容について伺って行きます。
3-①まず、地域福祉計画は社会福祉法の改正趣旨を踏まえて策定を行ったのか、また、策定にあたり、参考にした自治体はあるのか、他の自治体の動向についても伺います。
地域力強化検討会の最終とりまとめでは、策定のプロセスにおいては、狭義の地域福祉計画の担当部局のみならず、計画策定を通して協働のしくみをつくっていくことが重要で、地域住民、専門職、関係する団体等と自分たちの地域のこととして丁寧な議論を重ねていくことが必要であると示されています。私もまさにここが胆だと考えています。誰かが作った計画では「我が事」にはなりえないし、全区的一律的な計画では単なる絵に描いた餅になりかねません。それぞれの「人」を取り巻く問題に適切に対応していくことや、地域の実情を把握し、その特性を考慮することが重要です。だからこそ、最終とりまとめの指摘の通り、地域という現場で暮らし活動する地域住民や専門職、関係団体等の意見や議論の場は必要であり、このことをやる覚悟がなければ「我が事・丸ごと」はできないとさえ考えます。そして、まずは「我が事・丸ごと」地域共生社会づくりの目的や意義を全庁的に共有し、担当部署を超えた庁内連携の合意形成が必要だと思っています。そこで、策定プロセスに関連して3点伺います。
3-②庁内でも所管を超えて連携することが求められていますが、地域共生社会の取組みについて、どのように議論・共有が行われたのか伺います。
3-③地域福祉計画はどのような手法で、どのくらいの期間をかけて策定したのか伺います。
3-④地域住民や社会福祉事業者などへのアプローチについては、具体的にはどのような形で行われたのか確認します。また、区民の生活実態やニーズを把握するためのアンケート調査のようなことは行ったのかお聞きします。
次に地域福祉計画の内容に関連して質問します。
地域福祉計画は多分野の福祉計画の上位計画として整合を図り、総合的に推進していくこととなると認識しています。そして、様々な課題を抱える方々の問題解決には、福祉だけにとどまらない様々な分野の横断的連携が必要であることや、制度の狭間の問題への対応のあり方、「我が事・丸ごと」の地域づくりを進めるための圏域の考え方の整理、全庁的な体制整備などが各福祉分野に共通して取り組むべき事項として挙げられています。そこで4点伺います。
3-⑤現在、区が把握している制度の狭間の問題にはどのようなことがあるのかお聞きします。
3-⑥現在の区の地区割りは地域区民センターや町会、民生委員、地域包括ケアセンター、小・中学校など必ずしも一致していませんが、そのことによる 弊害はないのでしょうか。地域づくりを進めるための圏域の考え方については整理しておく必要があると考えますが、区の見解を伺います。
3-⑦さまざまな問題を抱えた方の支援を連携させようとした時、個人情報の保護に配慮するあまり支援の障壁や妨げになることがありますが、福祉的支援が最優先されるべき場合があるため、その当事者の最善の利益を考えた支援を行いやすくするために、個人情報の扱いについて整理しておくことが必要だと考えますが、区の見解を伺います。
「我が事・丸ごと」の地域共生社会を実現していくための大きな柱の一つに市町村による包括的な支援体制の構築があります。最終とりまとめでは次のように示しています。「社会的孤立や制度の狭間、サービスにつながらない課題、将来への不安について、地域全体で支え合うことをめざしていく必要がある。すなわち、分野別、年齢別に縦割りだった支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とし、個人やその世帯の地域生活課題を把握し、解決していくことができる包括的な支援体制をつくる。そのために専門職による多職種連携や地域住民等と協働する地域連携が必要である。」と。そして、連携する分野は福祉、医療、教育、環境、都市計画、防犯・防災などまさに人々の暮らしを支えるあらゆる分野が想定されています。
3-⑧区ではこの包括的な支援体制の構築をどのようにすすめて行こうと考えているのか。また、連携していく分野をどこまでを想定しているのか伺います。
4.地域共生社会の実現のための地域づくりについて
地域共生社会の推進には、区レベルの支援体制とより生活に身近な圏域での包括的な支援体制が重層的に存在することが必要です。そこで求められるのは、小中学校区のような身近な圏域で、地域包括支援センターや社会福祉協議会、地域に根差した活動を行うNPOなどが中心となり、住民の主体的な参加と協働によって地域課題を把握し解決を試みる体制づくりであり、その支援を区は責任をもって行う必要があると考えます。
世田谷区では、行政機関であるまちづくりセンターと社会福祉協議会、地域包括支援センターの三者連携により、区内27カ所に身近な地区における相談支援の充実と地区の課題を地区で解決することをめざし仕組みをつくっています。
9月3日に開催された杉並区社会福祉協議会主催のすぎなみ地域福祉フォーラム2017で、大阪府豊中市の社協の取組みについての講演が行われました。身近な圏域に存在するコミュニティソーシャルワーカーが地域の中に入り込み、地域住民と共に地域の課題を解決していく実績を知り、コーディネート力を持った人材の有効性を学びました。豊中市では人口3万人に一人の割合でコミュニティソーシャルワーカーを配置し、2004年から制度の狭間にある課題を丸ごと支える取組みを全国に先駆けて行ってきました。この講演を行った豊中市社協の勝部麗子さんは地域力強化検討会のメンバーでもあり、今回の最終とりまとめにもこの実践がかなり参考にされていると思われます。また、多くの自治体において社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と市町村の地域福祉計画とを連動させ、車の両輪のようにして地域づくりをすすめており、今後の地域づくりの参考になると感じました。そこで、3点お聞きします。
4-①杉並区社会福祉協議会では、小地域の活動が弱いように感じています。区は、社協に対して地域福祉活動計画の策定を促し、区の地域福祉計画を共 にすすめるパートナーに位置付けるべきではないかと考えます。区として社協に期待する役割について伺がいます
4-②ボランタリーな市民活動の最初の一歩支援や地域でサロンや居場所などを提供している活動を継続させる支援が今後ますます求められていくと考えます。行政ができない部分を地縁団体以外の区民も担うことで地域を元気にしていくための支援を検討すべきと考えますが、区の見解をお聞きします。
4-③7つの地域区民センター協議会は、それぞれの地域にある地縁団体やNPOなどの市民活動団体との連携・協働を深めつつあると認識しています。地域づくりにおいては地域区民センター協議会が役割の一つを担うべきと考えますが、今、力を入れていることや課題となっていること、今後の課題について区の見解をお聞きします。
5.「地域福祉」とはそれぞれの地域において人々が安心して暮らせるよう、地域住民や公私の社会福祉関係者がお互いに協力して地域社会の福祉課題の解決に取り組む考え方であると全国社会福祉協議会では定義づけています。また、月刊福祉9月号の中で同志社大学の永田准教授は住民の主体的な課題解決の力を高め、地域と共に支援すること、地域で解決できない課題や地域が関わることが難しい課題は専門職がしっかり受け止める体制を作っていくことが「地域福祉」だと述べています。人々の暮らしは縦割りではありません。それぞれの「人」を取り巻く問題に対応していくことでその人のニーズが満たされ、どんな状況にあっても誰も社会から排除されない地域社会づくりが必要だと考えます。
少子高齢社会がますますすすみ、区民の行政への期待は増える一方かもしれませんが、限りある財政の中でなんでも行政にやれやれという時代ではなくなっているのも現実です。公・民間・市民セクターが互いの連携と協働により地域に点在する資源を面にすることで地域生活課題を解決したり、新たな機能を生み出すことにつなぎ、地域が活性化していく地域づくりが地域福祉計画だと私はとらえています。特に市民セクターである地域住民の地域づくりへの意識啓発、自分の地域は自分で考えつくっていくと言った住民自治が促進されるような区の支援も必要なのではないでしょうか。今回策定される地域福祉計画を進める中で、次の計画改定も見据えて、区全体、地域課所管の7圏域、中学校区に相当する20の地域包括支援センター、小学校区、そしてさらにご近所という、それぞれのレベルでの地域福祉戦略を地域住民をはじめ関係機関の参加のもとつくっていくことに着手すべきと考えます。
これまで、地域共生社会の実現に向けて、地域福祉計画のあり方や地域づくりなどについて質問してまいりました。最後に2点伺います。
5-①地域共生社会の実現は、ひとつ一つの事例を積み重ねながら実態を作っていくことが必要です。漠然としている上に画一的な形があるものではないため、より自分の暮らしに引き寄せたわかりやすいものであることが必要です。地域に即した戦略が必要ではないでしょうか。行政、地域包括、社協がスクラムを組み、地域住民、地縁団体、NPOなどの市民活動団体と連携しながら地域づくりをすることに対する区の見解をお聞ききします。
5-②最後に地域共生社会の実現に向けた区の意気込みを伺って、私の一般質問を終わります。
第1回定例会一般質問 2017.2.16 奥田 雅子
いのち・平和クラブの一員として
1.多様な生きものとともに暮らせるまちづくりについて
2.あまみずの貯留のしくみづくりについて
大きく2つのテーマで質問します。
最初に、多様な生きものとともに暮らせるまちづくりについて伺います。
最近、「ダイバーシティ」つまり「多様性」という言葉をよく耳にします。今回のタイトルの「多様ないきものとともに暮らせるまちづくり」は、「生物多様性のまちづくり」のことです。「生物多様性」の「きほんのき」について昨年、公益財団法人日本自然保護協会理事長の亀山章(かめやまあきら)さんから学ぶ機会がありました。
「生物多様性」は、1980年代に誕生した「バイオロジカル ダイバーシティ」あるいは「バイオダイバーシティ」の翻訳語として使われ、日本で広く知られるようになったのは1992年、リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議、いわゆる地球サミットにおいて気候変動枠組条約と共に生物多様性条約が締結されてからだと言われています。
生物の多様性には、「気候や林や草地、河川や池などといった地形、土壌などの環境に応じた生態系があること」と「それら生態系の中にいろいろな種類の生き物がいること」そして「同じ種類の生き物でも絶滅回避のために様々な個性、遺伝子があること」という3つのレベルがあるそうです。
人類は生物種の絶滅速度をここ数百年で1000倍に加速させていて、今何も対策をとらなければ今後多くの自然環境が失われていくというお話にはショックを受けました。そして、「これまで自然環境は脇に追いやられていたが、人間社会の基盤は自然環境であり、この自然環境の上に人間社会が成り立ち、その上に経済や文化が乗っている、というのがまともな認識である」とのことでした。これには私もまったく同感です。どんなに経済が発展し物質が豊かになったとしても壊れた自然環境では人間は生きにくく、また壊れた自然環境をもとに戻すのは不可能と考えるからです。そこで2点伺います。
①日々区政運営に取り組んでおられる田中区長に、「自然環境」に対する基本的なお考えをうかがいます.
②2点目、杉並区には、様々な切り口から「環境」をテーマに活動している多くの個人や団体の方たちがいらっしゃいます。環境団体として区に登録しているだけでも35団体あり、連絡会をつくり情報の共有や連携しながら活動されています。自発的な市民活動とも連携し、環境行政をさらにすすめていただきたいと考えますが、区の見解をお聞きします。
さて日本では生物多様性条約の締結の年1992年に「種の保存法」が制定され、「生物多様性」の時代が始まったと言われています。そして、2004年には「外来生物法」が、2008年に「生物多様性基本法」が制定されました。この年は、杉並区が「善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業」に取り組むきっかけとなった年です。当時、この事業は100年かけて実現させていくとして取組が始まったと聞いています。
そこで、「善福寺川『水鳥の住む水辺』創出事業(以下水鳥事業)」について5点伺います。
区が2008年にスタートさせた「水鳥事業」が今年で9年目を迎えています。今後、この事業は生物多様性の保全および持続可能な利用の観点から戦略を持って具体的に進めていくことが必要だという考えに立ち、質問いたします。
③1点目、「水鳥事業」がスタートした経緯をうかがいます。
④2点目として、「水鳥事業」は、これまでどのような取り組みがされてきたのか。また現時点での成果と課題をうかがいます。
⑤先月1月28日に行われた「第9回善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業シンポジウム」に参加しました。これまで毎年、回を重ねてこられた訳ですが、このシンポジウムの狙いは何か3点目として伺います。
今回のシンポジウムの中で今年1月に行なわれた水鳥一斉調査に277人の参加者があったと報告がありました。地域の人に、身近な環境に関心をもってもらうことは住民主体のまちづくりに必要なことですが、そのためには、まずは自分の地域を知る、興味を持つ観察や調査は欠かせません。先日、庁内の会議室で行われた「小中学生環境サミット発表会」では野鳥観察を行った学校が複数あり、また、トンボやモンシロチョウの育ち方の違い、さざんかにチャドクガがつくことの発見など、子どもたちが観察の結果を生き生きと発表する姿があったと聞きました。私は子育て時代、善福寺公園を庭代わりによく子どもを遊ばせたものでした。善福寺池でカワセミを最初に見た時は感動しましたが、ここにカワセミがいるということは、その餌になる生物がいることだと知り、ただカワセミがいるというだけでない自然の循環について気づくことができました。そういう目で見ると、実は様々な種類の動植物が存在していることがわかり、豊かな気持ちになるとともに街を見る目も変わりました。この経験からもっと多くの子どもたちや地域の人たちと環境に対する関心を共有したいと考え、善福寺池や周辺の生き物調査、川の水質調査などを地域活動の中で提案し、子どもたちもいっしょに調査活動を行ってきました。その活動では、植物や昆虫、野鳥などに詳しい専門家の存在やわかりやすい資料、使いやすい道具などが活動の質を深め、子どもたちの興味や関心を引き出すなど、効果的に作用することを実感しました。
そこで4点目の質問です。
⑥このように地域や学校などで区民が植物や生き物などを十分に観察できる環境を整
えていくことが大事だと考えますが区の考えをうかがいます。
⑦「水鳥事業」についての5点目最後の質問です。
「善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業シンポジウム」は次回で第10回を迎えます。これまでのシンポジウム事業を市民とともに総括し、次の10年、20年の目標を市民とともに描き、共有して取り組むことが大事だと考えます。そのため今後はシンポジウムという形式にとらわれず、たとえば、区民・区・学識経験者などで、どのような事業を展開することが善福寺川流域や区内の野鳥たちのためになるのかというビジョンと、そこに至るロードマップをワークショップ形式で話し合い、区民全体が共有できる方向を作り出していくことが必要と考えますが、区の見解を伺います。
ところで、2008年に制定された生物多様性基本法の第13条では、市区町村が区域内の生物の多様性の保全および持続可能な利用に関する基本的な計画である「生物多様性地域戦略」を定めるよう努めければならないとしています。この「生物多様性地域戦略」ですが、都内でこれを策定している自治体は2015年3月31日現在、千代田区、港区、目黒区、葛飾区、大田区、豊島区、府中市、羽村市、あきる野市、稲城市、町田市の6区・5市となっています。私は、いま述べてきた「水鳥事業」は、言ってみれば、杉並区における生物多様性地域戦略の1つのモデルになるのではないかと考えます。
そこで生物多様性地域戦略について2点伺います。
⑧東京都でも生物多様性基本戦略をつくり、都立公園の生物多様性保全管理計画をワー
クショップ方式などの市民参加で策定し、整備工事を行うことになっています。杉並
区では都立和田堀公園、善福寺公園が該当しており、和田堀公園については現在工事
がはじまったところです。この工事はどのような工事なのか。また、区としてこの工
事をどのように捉えておられるのか伺います。
⑨善福寺公園については2022年から2年かけて生物多様性保全管理計画がつくられる
予定と聞いています。和田堀公園、善福寺公園の生物多様性保全整備工事がおこなわ
れるのをとらえ、「水鳥事業」に取り組む杉並区としても都と連携して生物多様性の地域づくりに取り組むことが必要であると考えます。善福寺公園でみんなの夢水路づくりに取り組む杉並区としても生物多様性地域戦略を策定して具体的な取り組みを進めていくべきと考えますがいかが、お聞きします。
次に2つ目のテーマ「あまみずを貯留するしくみづくり」について4点質問いたします。
あまみずを取り巻く時代の状況としては、2014年4月「あまみずの利用の推進に関する法律」いわゆる「あまみず法」の施行により大きく変化し、「あまみず活用時代」が本格化すると言われました。今回、私はひらがなで「あまみず」といたしました。雨の水を「うすい」と読む場合、下水道法や建築基準法、都市計画法によると「きたない水と書く汚水・廃棄する水と書く廃水-つまり汚水と排水と共に速やかに排除するもの」となっています。一方、あまみず法ではあえて「あまみず」と読ませ、あまみずを天の恵みととらえあまみずの貯留および水洗トイレや散水などの利用を推進するものとして「うすい」とは区別しています。水資源の有効利用を図るとともに河川等への集中的な流出を抑制するという観点から今回の質問も「あまみず」とし、あまみずの貯留に焦点を当てて質問いたします。
現在、東京都は時間降雨50ミリ対策として莫大なお金と膨大な時間をかけて、1年間に100m完成させていく河川改修工事を善福寺川で行っています。このようにコンクリートなどで整備するのを「グレーインフラ」と呼ぶのに対し、「自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりをすすめるもの」と定義し、水とみどりと生き物をキーワードとした「グリーンインフラ」という概念があります。2015年には「グリーンインフラ」という概念が国の施策となりましたが、まだ広く知られてはいないのが現状です。
さて2005年、杉並区を襲ったゲリラ豪雨により、2,000世帯以上の家屋が浸水被害を受けました。それ以降も、豪雨による河川の氾濫が起きています。地球上の水は海や空、陸をゆっくり循環していますが、都市化によって地面はコンクリートで覆われ、降った雨のほとんどが下水管に入り、あっという間に河川に排水され、本来の水循環を壊してしまっているのが原因です。
そこで1点目の質問です。
- 杉並区も治水を目的とした取り組みを推進してこられたと思いますが、これまでに区が取組んできたあまみずを貯める施策にはどのようなものがあり、これまでどのくらいの量のあまみずを貯める機能をつくってきたのかお聞きします。
いま、都市型洪水を防ぐのに日本建築学会が提唱している「蓄雨」が注目されています。蓄積の蓄に雨と書いて「蓄雨」です。都市型洪水を解決するためには、まちに雨をとどめるしくみである「蓄雨」が必要です。この「蓄雨」には、災害時の生活用水確保の「防災蓄雨」、洪水を和らげるための「治水蓄雨」、自然な水循環をすすめ、ヒートアイランド対策にもなる「環境蓄雨」、日常的に生活用水に使う「利水蓄雨」の4つ視点で、これらを組み合わせて雨を蓄えると大きな効果を発揮するとされています。
あまみずの民間の貯留については、23区内であまみずタンク設置に助成している自治体は区部で13区、市部では14市あります。なかでも注目するのは世田谷区で、あまみずタンクの助成のほかに、今年度から湧水保全重点地区及び豪雨対策モデル地区には雨水(うすい)浸透ますの満額助成を始めたと聞いています。時間降雨100ミリ対策としてグリーンインフラで「世田谷ダム」をつくる構想だそうです。
また、雨が降ると、善福寺川の護岸に開いている2か所の吐き口(はきぐち)から武蔵野市側の汚水交じりのあまみずが流入します。区長から武蔵野市に要望していただいたこともあり、武蔵野市はあまみず貯留槽を市内4か所に設置し、雨天時に杉並区側に流れ込む回数を半減させました。加えて「あまみず利活用条例」を制定し、建物の新築や増改築の際、「あまみず排水計画」を事前に市へ届け出ることが義務化されました。また、雨水(うすい)浸透ます、あまみずタンクへの助成を始め、ほかにも、「水の学校」という市民が、水を汚さない、無駄にしない、あまみずを貯める、浸透させるなど水のことを繰り返し学ぶしくみをつくっています。さらに、現在下水管の増補管埋設計画があることも聞いています。善福寺川の護岸に開いている穴は全部で68か所。そのうちの2か所が武蔵野市からの吐き口、残り66か所が杉並区のあまみずが流出する吐き口です。
②それを考えると、杉並区としても「治水蓄雨」を善福寺川上流域に限定して導入する
など「蓄雨」を推し進めていくことが重要だと考えますが区の考えを伺います。
3点目、
③杉並区は2006年から3年間、あまみずタンクの設置助成を大小合わせて63台に行いましたが、この助成は今はありません。助成をなくした理由について伺います。
最後の質問です。
④杉並区が2013年に改定した環境基本計画の基本目標Ⅲ、「自然環境が保全され様々な生き物が生息できるまちをつくる」の「自然生態系の保全」の項で、区民、事業者の環境配慮行動指針として、「あまみずの活用を心がけます」とあります。あまみず活用を心がけるにはあまみずを貯めなければなりません。あまみずタンク助成がなくなり、区内でのタンクの普及については把握しにくい状況ではありますが、街に雨をとどめる「蓄雨」をすすめる方法としてあまみずタンクの設置は個人レベルで比較的簡単にできる有効策だと考えます。改めて区民や事業者があまみずを貯めて使う、活用する意識を喚起するための情報発信や区民や事業者の実践行動を後押しすることが区の責務だと考えますが区の見解を伺います
これまで生き物やあまみずとともにある暮らしを提案したい思いから質問してまいりました。環境問題は暮らし方の問題でもあることを私たち一人ひとりが気づき実践することが大事であり、区としても様々な部署が意識的に取り組んでほしいと思います。来年度は環境基本計画改定の年と聞いています。現在の基本計画の「はじめに」で区長はこう書いておられます。
“地域で安心して生活できるように、地球温暖化対策の推進、生物多様性の保全、資源の循環利用などの取組みや環境共生型の地域づくりが必要です。そのためには、環境について自ら考え、行動する人を育てる環境教育も重要である。そして環境問題への取組みは区民のみなさんをはじめ事業者やNPOなど多様な関係者と共に持続可能な環境住宅都市の実現に取り組みます。”と。
この姿勢をぜひ次の改定にも引き継いでいただくことをお願いし、また自然環境を活かしたまちづくりをすすめる取組みに私たちもともに尽力していくことを申しあげ、私の一般質問を終わります。
第1回定例会代表質問 2017.2.14そね文子
いのち平和クラブを代表して「平成29年度予算の編成方針とその概要」及び区政の諸課題について質問いたします。
安倍政権は安保関連法制の元、自衛隊を南スーダンに派遣させましたが、そこで大規模な戦闘が起きていたことが問題となっています。これまで何度となく議論されるたびに廃案になってきた共謀罪がテロ等準備罪と名前を変えて国会で審議されようとしています。戦前の治安維持法の復活とされ、個人の思想の自由を奪い監視社会をつくる法案を通すことはあってはならないと考えます。福島第一原発の事故を受け避難区域とされていたところが次々と解除され、年間被ばく限度が1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩められたまま帰還が進められ、自主避難者の住宅保障は今年度で打ち切られようとしています。原発事故を無かったことのようにし、原発再稼働を次々と進めることは許されません。沖縄県の辺野古では県民の意思を無視し、米軍の新基地建設が強硬に進められており、反対行動に対し重大な人権侵害が起きています。このような安倍政権の2017年度予算は、防衛関係費が大幅に増額され過去最大の5兆1千億円を超え、社会保障を削減するものとなりました。
社会保障費は3年間で自然増を1.5兆円圧縮する方針が出され2017年度は5000億円の枠内に収められました。高額療養費は一定以上の収入のある70 歳以上の負担額を引き上げ、後期高齢者医療の保険料では、低所得者や扶養家族の保険料の「軽減特例」が見直されました。年金はマイナス改定になる一方で、医療・介護により負担増で高齢者の生活が圧迫されます。喫緊の課題である介護人材の処遇改善は、経験、資格、評価に応じて月額1万円相当引き上げるとしているが、介護職員の月額賃金は他の産業より約10万円も低く実効性のある改善には程遠いものです。
このような国の動向に、暮らしと福祉を守る自治体の役割がさらに重要となっています。杉並区の2017年度の予算がこうした課題に応えるものとなっているかを検討しました。
(1)まずは、新年度の予算編成方針とその概要について、これまでの総括と環境の変化について質問します。
- 冒頭、10年ビジョンの折り返しの年にあたり、この間の取り組みの一定の成果と、前例のない取り組を困難な壁に直面しながら進めてきたことが率直に語られています。区長のこれまでの総括についてお聞きします。
- 昨年を振り返り、4月の熊本地震を始め大規模災害が連続しておきた年に、過去の災害からの教訓を十分に生かしながら、減災・防災対策を加速する決意が語られています。区長は、11東北大地震と福島第1原発事故に際し、直ちに南相馬市にかけつけて以来、南相馬市への支援とともに、3.11を忘れない集会を毎年行ってきました。今年はどのような企画を準備しているか確認します。昨年は、宮城県の保育園で子どもたちを守り抜いた園長先生をお招きして貴重な体験をうかがい、多くを学びました。ところが参加者が少なくとても残念で、後で地元の方たちに聞くと、集会を知らなかったことがわかりました。町会や防災団体を通じて周知するよう求めますがいかがでしょうか。
- 小池都政の誕生は、区政にも少なからぬ影響を与えています。都民ファーストを掲げた小池都政の予算方針に対する区長の評価と、区に与える影響についてお聞きします。特に待機児童解消など子育て環境の充実において、都の予算では、前年度比417億円アップの1,630億円となっているが、区に対する効果はどうか。今後待機児童対策にはどのようなことが期待できるか区長の見解を求めます。
- 2月1日付朝日新聞で「小池都政が地方と向き合う視点に欠ける」という区長コメントが報道されていましたが、その真意は何だったのでしょうか。うかがいます。
阿佐ヶ谷のまちづくりについてお聞きします。
- 昨年これまで進めてきた杉並第1小学校の現在地建替え計画に対して、病院の移転建て替え計画が発表され、病院跡地での杉並第1小学校の改築が可能となる見通しが出てきました。これまでの計画で、杉1の早期建替えを期待してきた保護者からは、建て替えが遅れることから異論も出ていると聞きます。今後の阿佐谷地域の子どもの教育環境を第1で検討されてきたことと思われますが、その観点も含め、この機会を生かすことで、阿佐ヶ谷地域の将来のまちづくり像を地域住民と共有し、新たな計画を進めることができるのか、検討の状況や計画の特徴などをお示しください。
次に人口動態などについてお聞きします。
- 東京都と杉並区の人口増加、未就学児童の増加、女性の就業率のアップ、高齢者の長寿命化について実績が示されています。今後5年、10年先のそれぞれの傾向についてお聞きします。「時代の変化に対応する」「時代の先を見据えた」予算と強調しています。10年前と比べてどのような点が大きく変化していると認識しているのか。
- また「時代の先を見据えて」10年先はどのような点が大きく変化すると見越したのかお示しください。
次に保育園待機児童対策について質問します。
- 10年前と比べ大きく変化した点の一つが保育園待機児童とその対策です。4月を前に認可保育園19園を含む2000人を超える定員の確保をめざし、保育園建設は着実に進められてきたと認識しています。その結果4月の待機児童解消の見通しはどうなったか確認します。保育士の確保が心配されてきましたが新設園の保育士の配置の達成状況をお聞きします。
- 昨年、1次申し込みで認可園を希望した数が約3800人、実際に入園できたのは2000人弱でした。昨年5月の待機児童解消緊急プランの柱に認可保育所を据えたのは、画期的な取り組みでした。新年度予算でも基本的に、認可保育園の増設を計画していますがその数と予定定員数をお聞きします。
- 昨年4月の緊急プランは、100人規模の認可保育園で対応するために、用地の確保が最優先であったことから区有地を活用する他はありませんでした。公園を利用した地域で、子どもたちの遊び場がどのようになっているか、特に向井公園と久我山東原公園の現状について、そこで遊んできた子どもたちは工事中どのようにしていたのか、お聞きします。公園使用は代替地の確保が条件でしたが、今それはどのように対応されているのか、また今後の方策をどのようにたてているのかお示しください。
- 待機児の解消は自治体独自で進めるには限界があり、国や都の支援が必要と述べています。今年度で国や都が新たに立てた支援策はどのようなものか。また、現在の課題は何かうかがいます。国、都に対し具体的にどのような財政支援を求め、制度はどのように見直すべきと考えるのかお聞きします。
- 2005年の保育サービスのあり方検討部会報告に基づき2006年以降10年間で区立保育園10か所が建替えに伴い民営化が進められてきました。今後新たな保育サービスのあり方、方針が必要だと考えますが、区の見解を確認します。小泉政権の三位一体改革により2004年度から公立分のみ国や都道府県負担が一般財源化され、その結果、区負担が全額となった経過があります。現在は認可保育所の、民設・民営であれば国や都から事業者に対し建設費用や運営費の補助金がでており、区の持ち出しは建設費用の1/16となっていますが、区が直営で建替える場合には補助金がでないため、一般財源で賄わなければなりません。そのため、建替えに伴う民営化は財政的な面からも一定、避けて通れない状況にありますが、そのことが周知されていません。区民の理解を得るためにこの点は明確に伝えるべきと思いますが、区の見解をうかがいます。
- しかし、今後増え続ける民営保育園の保育の質を担保するためには、直営園を維持し続けその経験と質を継承していく体制も必要と考えます。区の見解と保育の質を担保するための体制についてお聞きします。
- 認可保育園をはじめ4月に開設する保育園や、今後杉並区におけるすべての保育施設の保育の質を担保するための考え方を明文化した「保育の質ガイドライン」を策定し、それに基づく保育園整備をすすめることが必要と考えます。区の見解を求めます
- 保育に関わる経費の増大に伴い、保育料見直しが打ち出されていますが、その方向性について。また低所得者対策についてもお聞きします。
- 保育園の需要の高まりは、卒園後の学童クラブの需要の急増につながる状況が顕著になっています。今年の4月に地域によっては、3年生になる子どもが学童に入れず困っているとの声が寄せられています。区は「地域によっては待機児童が出ているが全体は充足している」と答えていますが、この状況では、18年、19年の4月には、全地域の学童クラブに拡大するおそれがあります。現状と区の見通しを確認します。
- 昨年11月の第1次実施プラン改定では、「学童クラブは学校を基本とし…、小学生の放課後等の居場所の機能を移転した児童館施設や、学童クラブとして活用可能なスペースが小学校に近接する場合はこれらを活用する」となっています。今年の4月に向けた対策とともに、早急に抜本的取り組みを求めますがいかがでしょうか。
- 成田西児童館が30年度から子ども・子育てプラザになる計画は、そこで行われていた学童クラブが杉2小に移動し、児童館を居場所としていた子どもたちも杉2小内での放課後等居場所事業を利用するとされています。この居場所事業が十分に機能しなければ成田西児童館で遊んでいた子どもたちは居場所が減ることになります。これまでの放課後等居場所事業のモデル実施の取り組みはどうだったのか、児童館の機能を拡充すると言える内容になるのか、今後の見通しはどうかうかがいます。
(3)次にもう一つの大きな変化、急速な高齢化とその備えについてお聞きします。
- 2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、高齢者人口がピークになる時期が近付いています。「先手を打って課題にチャレンジしていく」姿勢とありますが、急激なこの高齢化の変化に対応してくためには、どのような改革、対策が必要と考えるかお示しください。
日本老年学会、日本老年医学会から「高齢者の定義を75歳以上に見直す」という提案がなされました。確かに、個人差もありますが大半が元気で、仕事についている方も少なくありません。しかし、この新たな定義が、年金支給年齢の引き上げや若い世代の年金未納など年金制度そのものの崩壊をもたらすのではないかと危惧します。また、65歳から75歳までの医療費の削減や介護保険の利用や施設入所を狭める口実になることも懸念されます。そこで年金制度をめぐる国の今後の動向について、区の認識と見解を求めます。
- この間のもう一つの大きな変化は、所得格差の拡大であり貧困問題です。この点での区長の見解を求めます。地域が抱える課題は、保育園や子どもの安全な居場所問題、高齢者対策に加え、所得格差により子どもから若者、高齢者までより複雑で重層的なものとなっています。きめ細かい支援を行うには、福祉事務所、子ども家庭センター、教育委員会、ケア24、社会福祉協議会やくらしのサポートステーションなどが連携してあたることが必要になっています。世田谷区では、区民センター・地域包括支援センター・社会福祉協議会が地域単位で同じ施設に入り、ワンストップサービスの窓口を開設しています。杉並区においても複雑で重層的な課題に対応するため、7地域にワンストップサービスの窓口を設置してはどうかと考えますが見解を伺います。
(4)ここからは、時代の変化を見据えて、10年ビジョンの加速化を図るために用いたという、5つの視点に沿って伺っていきます。
- まず、1つ目の視点「首都直下地震等に備えた減災・防災対策の推進」についてです。毎年東京都がおもに職員を対象に行っている都市復興訓練が今年度は杉並区梅里・成田東で実施されましたが、どのような訓練が行われ、区の施策にどのように活かされたのか、あるいは活かしていこうとしているのかお聞きします。
- 昨年末の糸魚川市の火災は、発生から鎮火まで約30時間もかかり、約4万平方メートル、建物147棟が消失するという大変規模の大きなものでした。同じく木密地域の問題がある杉並区として、今回のこの災害から具体的にどのような教訓を得られたのでしょうか? 木密地域の不燃化が急務であるということですが、そのためには何が必要か、課題はどのようなところにあるのか、区の認識をお聞きします。
- また狭あい道路解消も急務です。「支障物件の除却に向けた取組を着実にすすめる」とありますが、これまでに住民の理解・協力を得られているのでしょうか? また重点整備路線の整備は時期的な目途が立つものなのか区の考えを伺います。
- 不燃化や拡幅整備に必要なのは地域住民の理解と協力であり、そのために区民の防災意識の向上が必要だと考えます。昨年5月に実施された「区民意向調査」によると、「震災救援所など町会・自治会の訓練」に参加したのは9%で、約7割の方が何にも「参加していない」と答えています。これまでとはちがった方法での防災訓練の周知が必要だと考えますが区の見解を伺います。
(5)次に第2の視点「将来にわたるにぎわいの創出に向けた環境整備と魅力発信について」お聞きします。
- 「広報すぎなみ」の刷新が打ち出されています。デザイン、レイアウトの工夫は、それなりの専門的な能力や新しい感覚が必要となりますが。どのような方法、どのような力を投入する考えかお聞きします。
- 外国人観光客を含めた来街者に対しては、SNS活用を含め今後どのような情報発信をしようと考えているか伺います。
- 東京オリンピックに対しては、大きな期待が寄せられている反面、2020年に向けた工事が、福島復興への資材や人材不足をまねいているとの厳しい批判も出ています。またオリンピック関連建築の膨大な建築費の付けが都民に回されることも危惧されます。小池都知事への評価には天井知らずの五輪予算縮小への都民の期待があると思います。5輪の準備にかける予算はできるだけコンパクトにすべきと思いますが区の見解を求めます。
商店街の活性化についても伺います。
- 「新・元気を出せ!商店街事業」の拡充は、具体的にどのような工夫がされているのでしょうか。
- 商店街は、浜田山でもこれまで長年親しまれてきたお店が、後継者がいないため昨年閉店となるなど、にぎわっている商店街でも地元の商店がなくなり、チェーン展開している飲食店などに変わっていく流れが止まりません。その原因の第1が後継者問題です。この点での区の認識と対策をお聞きします。
- 第2が区内の繁華街の店舗の家賃の高さです。その一方で若い世代が新たに起業する飲食店、介護保険事業、美容院、健康関連事業などのお店も増えています。このような若い起業家を支援する施策、家賃の高い杉並で家賃助成があれば、にぎわいのある杉並で起業しようという意欲を引き出せると考えますが区の対策をうかがいます。
(6)次に第3の視点、「豊かなみどりと持続可能な環境を次世代に継承」について伺います
- 福島原発で生み出される電気の消費地であった東京は、原発事故を忘れず継続して省エネに取り組むよう、啓発活動を引き続き行っていくべきと考えますが、区の見解と具体的な取り組みを伺います。
- 再生可能エネルギーを生み出す取り組みとしては、震災救援所に太陽光発電と蓄電池をできる限り設置してきたことを高く評価しています。区民への太陽光発電機器設置助成などは引き続き行っていくべきと考えますが、区の見解をうかがいます。
- 区立施設の電力に、原発に頼らない新電力(PPS)からの購入を求め、これまでの実績は2億6年万円の削減を実現しています。新年度新たな拡大の予定があればお聞きします。その実績はどの程度見こまれているのか。国は今後廃炉費用の負担を新電力の電力料金にも上乗せする方向ですが、そうなれば影響はどのようなるとに想定しているかお聞きします。
- 2016年11月4日に「パリ協定」が発効しました。日本はこれに遅れをとり8日に批准しましたが、パリ協定の第一回締約国会議には議決権のないオブザーバー参加となったことは残念です。日本は2030年までに温室効果ガスを13年度比で26%削減する目標を、東京都はそれを上回る30%削減の目標を立てています。杉並区でも国や都の動きを見つつ新たな目標を立てるということでしたが、その進捗状況はどうなっているか、東京都と並ぶ高い目標を設定し取り組んでほしいと考えますが、区の見解を伺います。
- 建物の省エネ化を進めることは、省エネを推進するうえ大変重要と考えます。杉並区ではこれまでも市民団体と協働で省エネ相談を実施し、市民向けの講演会を開催するなど省エネ建築の啓発に努めてきていると認識しています。2020年には住宅を新築する際には新しい省エネ基準に適合させることが義務化されます。既存住宅を省エネ住宅にリフォームしていくことも重要で、現在は国での助成も行われていますが、区として住宅の省エネ化促進のために取り組んできた成果と今後の考え方や具体的な取り組みについてうかがいます。
- 2015年4月に都市農業振興基本法が成立し、これまでの都市農地は「市街化すべき」ものから必要不可欠な「あるべきもの」に転換されました。この法に基づき都市農業振興基本計画が税制上の措置などにも留意する形で策定されましたが、実質的にはどのような効果が出ているのか。継続したアグリフェスタの開催、成田西ふれあい農業公園の開設など区の取り組みを評価していますが、今後どのように農地を残していこうとするのかうかがいます。今年度導入した認定農業者制度の取り組みはどうだったのか、今後の展開についても合わせて伺います。
- 食品ロスについては、飲食店での食べきり運動などを紹介し提案を行ってきましたが、家庭や飲食店を中心に食品をごみにしない取り組みが取り上げられたことをうれしく思います。今後もぜひ協力していきたいと思っていますが「(仮称)杉並もったいない運動」の具体的な内容についてお聞きします。
- 外環道の大深度地下工事が始まり、地下40メートルに直径16メートルのトンネルが2本つくられ、地中拡幅部は50メートルを超え300mの長さに及ぶ壁が帯水層をせき止めます。善福寺の水と緑への影響など、沿線住民の不安への国と事業者の責任ある説明について区の対応を求めます。また、外環地上部街路(外環の2)が練馬区ではすでに事業化に向けて取り組まれています。沿線住民の立ち退きを迫る外環の2は必要のないことを区として明らかにしてほしいと考えますが区の見解をお聞きします。
- 西武新宿線の開かずの踏切対策として連続立体交差事業が急がれています。高架になれば大幅な立ち退きと環境道路整備が行われることが、まちづくり協議会などで周知されているのかどうかお聞きします。構造形式は都任せではなく、区の住民に寄添った関わりを求めますが、区の考えをお聞きします。
- 活力あるみどりの住宅都市を標榜する杉並区として、空き家を増やさない取り組み、空き家を地域資源として活用することは大変重要と考えます。昨年、杉並区空家等対策計画が策定され、空き家に対する施策の方向性が示されたことを評価します。また、居住支援協議会が立ち上がり、住宅要配慮者への取り組みをすすめようとすることにも期待しています。特に高齢者や障がい者の居場所や住まい、子育て支援の拠点などの活用促進に課題となる制度変更も含めモデル事業として積極的に取り組んでほしいと思いますが区の見解を伺います。
(7)次に第4の視点、「超高齢社会の進展を見据えた健康づくりと福祉の充実」について伺います
- 介護保険制度は改定の度にサービスが縮小に向かい介護の社会化が後退しています。特養の入所要件が介護度3以上となり要支援1・2が区の総合事業に移行するなど法や制度の改定に、自治体が規定されてしまうことは理解しますが、自治体として介護サービスをトータルにどのように保障するのか、区の認識を伺います。
- できるだけ介護保険に頼らないための介護予防を重視することは財政的にも必要です。そのため、元気高齢者の就労機会を支援する取り組みを評価しますが、就労だけでなく多様な社会参加の機会の確保も必要です。住民主体のコミュニティづくりをさらに促進するために、現在行われている活動の発信とともに新たな活動づくりの支援が必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。
- 地域包括ケアシステムの構築に向けて、その人の暮らしを地域で包括的に支えて行くためのネットワークづくりに具体的に取り組んでいることを評価しますが、特に在宅医療と介護の連携推進では自宅に居ながら病院や施設と同様のサービスが受けられるような体制整備が必要です。そのため、現状まだ不足している夜間対応型訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護の拡充をすすめることが急務だと考えます。2017年度は第7期介護保険事業計画策定の年でもあり、今後の区の考え方をお聞きします。
- 障がい者施策については、親なき後の住み慣れた地域で生活できるよう、住宅支援や施設整備の拡充を進めていることには賛同するものです。昨年障がい者差別解消法が施行され、自治体においてはその責務が実践によって示されることが重要だと考えます。その一つが、移動支援についてです。通所・通学、日中活動への支援が他自治体では認められているのに、杉並区ではできないとの指摘が当事者や団体からなされています。支援がないことで外出が出来ない人を出さないよう、区の対策が求められていると考えますが、移動支援に対する区の方向性と見解を求めます。
- とりわけ精神障がい者への移動支援が認められないことに対して、当事者や団体からの切実な要望が挙げられています。通所、通学、通院など個々の状況に柔軟に対応すべきと考えますが、区の見解を求めます。
- さらに精神障がい者は、福祉施策が遅れたことで、知的、身体障がい者に比べ未だ制度が十分とは言えない状況です。こうした中で2011年に区が独自に「心身障がい者福祉手当」を1級に支給したことは高く評価しています。1級・2級の認定は、当事者や関係者によればそれほど大きな違いがあるとはいえず、2級への拡大は待ったなしだと考えます。見直し拡充についての区の見解はいかがでしょうか、お聞きします。
(8)最後に第5の視点「未来を担う子どもたちのための教育・支援の拡充」についてお聞きします。
- 子どもの貧困対策として、民間との連携や協働による取り組みも視野に入れた効果的な支援策についての検討状況を伺います。また、具体的な課題を把握するためには実態調査も必要と考えますが、区の見解をお聞きします。
- 不登校の子どもが15年度は小学校で108人、中学校205人という状況でした。一つの小学校や中学校ができるほどの人数が不登校になっているということです。不登校の原因をどのように分析し、改善を図ろうとしているのかうかがいます。
- これだけの人数の子どもが学校に行けない状態を生み出していることについて、学校のありかたを見直す必要があるのではないかと考えます。来られない子どもを無理やり学校に通わせるというのは論外ですが、義務教育機関として、すべての子どもが安心して通える学校、すべての子どもの居場所となる学校づくりに、保護者や地域の人の手を借りながら、取り組んでほしいと考えますが、教育委員会の考えをうかがいます。
- 不登校の子どもへの対応を始めとして、重要な役割を担っているスクールソーシャルワーカーが非正規雇用であることについては、これまでも処遇の改善を求めてきました。すぐれた人材が杉並区から他自治体に流失している現状も聞いています。子どもからのSOSには勤務時間に関わらず緊急対応が必要であること、保護者などの信頼を築くには継続性が重要であることから、スクールソーシャルワーカーが十分に力を発揮し、区の子どもたちを力強く支え続けてもらうために、改めて処遇の改善を強く要望いたします。
最後の質問になります。
- 児童養護施設に入所している子どもと、子どもが施設を退所した後の支援について伺います。杉並区には都内の自治体の中では最も多い5カ所の児童養護施設が民間によって設置されています。施設の子どもは地域の学校に通い、施設も積極的に地域と交流を持つ努力をされていると認識しています。施設には発達に課題があり、特別な支援を必要とする子どもの割合が高いとも聞いています。その子どもたちが施設に居られるのは基本的には18歳までであり、施設を退所した後に孤立することが多いため、家賃補助や奨学金、継続してつながりを持つことや見守りが必要です。児童養護施設は都が管轄するとはいえ、子どもは地域で育つものであり、他自治体ではこれらの支援が行われていますが、杉並区ではこの子どもたちの支援にはどのように取り組んでいるのか。区の考えと今後の具体的な支援についてうかがいます。
高齢化のピークを間近に控え課題が山積する大きな変化の時代に、区には区民のいのちと暮らしを守ることを最優先に取り組んでいただきたいと考えます。私たちも協力し、力を尽くすことを申し上げいのち・平和クラブの代表質問を終わります。
第3回定例会一般質問 2016.11.18 そね文子
いのち平和クラブの一員として、①石けん利用をすすめ、水環境を守る取り組みについて、②使用済み油の回収による資源循環とエネルギーを地産する取り組みについて質問いたします。
まず、石けんの利用がなぜ水環境を守ることになるのか、述べたいと思います。杉並区内には3つの河川、妙正寺川、善福寺川、神田川が流れ、それは中野区で神田川に合流し、やがて隅田川に合流して海に注いでいます。
区内の下水道は合流式のため雨が降って雨水が下水道に流れ込むと、その下水は簡単に、区内の3つの河川に流れ込むようになっています。流れ込んだ下水は処理されることなく川を汚染し、そのまま海に流れ込んでいるのが実態です。
海まで流れ着いた汚水は海底に蓄積したり、海の生物に取り込まれたりし、それが巡り巡って食物連鎖に組み込まれた私たち人間の口に入ることになります。
川や海の生物の生息環境を守ることは、食の安全、人間の健康を守ることにつながるため、家庭排水の中に環境負荷のかかるものを流さないということが大変重要と考えます。
環境や生物・人体に悪影響を及ぼす物質を含む合成洗剤などはなるべく避けたいという考えから、生活者ネットワークは議会で学校施設や区立施設で環境負荷の少ない無添加の石けんの使用を求めてきました。また区内で活動する消費者団体は区施設での洗剤を石けんに切り替えるよう求め、毎年予算要望の際に区長に説明していると聞いています。
石けんは固形、液体、粉末などのタイプがありますが、どれも天然の動植物の油脂にアルカリと水を加えて加熱してつくられたもので、紀元前3000年から使われてきた長い歴史の中で、安全性が確認されています。一方、合成洗剤の歴史は浅く、第2次世界大戦後に急速に普及しました。これは石油から複雑な工程を経て作られ、合成界面活性剤、蛍光増白剤や再汚染防止剤などが配合されています。そして問題なのは、水中での分解がされにくく、環境ホルモン作用、発がん促進作用、皮膚障害・味覚機能の低下・髪へのダメージなどの懸念があり、安全性が確認されていません。合成界面活性剤は水中に存在する個体に吸着する性質があり、魚のエラに吸着すると窒息死させることがわかっています。その点、石けんは、水でうすまると界面活性力を失い、分解されて二酸化炭素と水になり安全なのです。
1970年代後半に琵琶湖をはじめとした全国各地で、生活排水による水質汚濁が問題となり、漁業協同組合や生協、市民団体などが連携して合成洗剤の使用を止め、せっけん利用をすすめ、人体への影響、河川や海などの自然環境を守ろうという「石けん運動」が展開され現在に至っています。生活者ネットワークはそこに参加している全国の団体と連携して活動してきました。このせっけん運動では杉並区でも区長からも毎年メッセージをいただいています。
1-1 そこで、まず初めに区はこの石けん運動についてどのように評価しているか、見解をうかがいます。
杉並区には基本構想に定める区の将来像「支えあいともにつくる安全で活力あるみどりの住宅都市 杉並」の実現に向けた環境分野の計画である環境基本計画があります。この計画は杉並区環境基本条例に基づき、地域の環境を総合的かつ計画的に保全し、地球環境の保全に貢献していくための計画でもあります。
1-2 環境基本計画の「化学物質等の適正管理と水質汚濁を防ぐ取組」の環境配慮行動指針には区民の取り組みとして「洗剤は環境対応タイプを選び、その使用は必要最低限にします」という1文が入っています。区はこれをどのような取り組みによって実現しようとしているかうかがいます。
江戸川区では「洗剤・洗浄剤についてより安全性が高く環境にやさしい石けんの使用を目的とする」とうたわれた石けん使用指針が定められています。杉並区でも石けんを優先的に使うことを促す取組みが求められます。環境基本計画改定の際にはぜひ「石けん」と明記していただきたいと要望します。
1-3 ほとんどの区立施設では食器を洗うための合成洗剤や手洗い用に洗浄剤が備えられています。具体的には区庁舎を始め、小中学校、区立保育園や保育室、子供園、地域区民センター、ゆうゆう館、児童館などがあげられます。まずはそれらの施設で、食器洗い用の洗剤や手洗い用を有害な化学物質を含まないものにすることに取り組んでいただきたいと思います。そこでの洗剤や手洗い用の洗剤の使用が現在どのようになっているのか、また今後どのようにしていくのかについても伺います。
多くの区民が使う区立施設は環境配慮行動を啓発する場にしていただきたいと考えます。ここで1例を紹介したいと思います。小金井市では環境行動指針で「洗剤は極力石けんを使用するとともに、合成洗剤は必要以上に使わないように努める」ことを定めていますが、その内容がこのようなわかりやすいポスターにされて市立施設の給湯室に貼られています。このポスターはせっけん運動をすすめる市民から提案があって市と一緒に作成し、市民が協力して継続的に施設に貼られているということです。ぜひ、このような事例も今後、参考にしていただきたいと思います。
また石けんの原料についても述べたいと思います。先に述べたように石けんの原料は油ですが、飲食店等から回収された使用済み油を精製しリサイクルして石けんが作られています。環境のことを考えて作られた、できるだけ環境負荷の少ないものを選んで買うグリーン購入という考え方があり、区でもグリーン購入法に基づいた物品の調達方針が立てられていますが、石けんの購入にもこの考え方を適用してほしいと思います。区の施設では率先してそのような商品を購入いただきたいと考えますが、区の見解を伺います。
東京都では、化学物質による子どもへの影響を防ぐために独自のガイドラインを策定し、子どもたちが安心して生活できる社会の実現を目指しており、化学物質が人に与える影響は、大人より成長期の子どもにおいて大きいとの考えが示されています。予防原則に則り、有害な化学物質が含まれているものはできるだけとらないようにすることは重要なことです。このような観点から、学校の手洗い場、家庭科室での石けんの利用を望みますが教育委員会の見解をうかがいます。
2015年3月の予算特別委員会で学校での手洗い用の洗浄剤使用について調査を行っていただいたところ、PRTR法に規定されている有害化学物質が入った合成洗剤がすべての学校で使われていました。PRTR法とは人の健康や生態系に有害なおそれがあるなどの性状を有する化学物質の規制を目的としてつくられ、環境や人の健康に影響を及ぼすとして国が有害であると指定した化学物質について、事業者がその排出量を1年ごとに集約し公表することを義務づけるという法律です。なぜその有害化学物質が入った合成洗剤が使われるにいたったかを聞いたところ、国立衛生研究所の講師から、ネットに入れた固形石けん、また石けん台の固形石けんは微生物の繁殖の可能性があるという指摘があって、教育委員会から液体に変えるよう通知が出され、それを契機に合成洗剤に変わったと思われる。今回は抽出調査だったので、今後、全校調査を行い検証する必要があるという答弁をいただいています。
その後の調査の結果はどうであったのか、どのように検証が行われ、それに対してどのように対応されたのかを伺います。
東京都の教育委員会が、都内全自治体における公立学校給食の実施状況等について毎年調査を実施しています。この調査の中に食器具類の洗浄剤等使用状況の項目があります。厨房において合成洗剤か石けんか、またはその併用かが調査項目として取り入れられています。子どもたちの口に入る可能性から見ても、水環境に与える負荷の点からも、また、厨房で作業に当たる調理員の健康を守る意味でも、石けん使用が望ましいことは先ほど来述べてきたとおりです。2015年度の報告書には、杉並区内の小中学校すべて合成洗剤使用となっています。二十三区の港区、大田区、世田谷区、中野区では小中学校の一〇〇%で石けんが使用されています。以前、世田谷区に給食調理室で石けんが導入された経緯を聞きに行きました。そこでは、調理員の手荒れや健康影響への不安から石けんを望む声があり、数回の試行と説明会をへて導入がなされたということでした。職員の手荒れは石けんが導入された後に改善が見られたということです。杉並区でも給食で使う食器の洗浄に石けんの使用を望みますが教育委員会の見解を伺います。
この項の最後です。杉並区では学校給食で出た使用済みの油は回収業者が処理していますが、この油は家畜の飼料や燃料などのほか、石けんにもリサイクルされています。このような作られ方をした石けんを使うことで初めてリサイクルの循環が完成されます。廃食油が石けんに生まれ変わることを学ぶことも環境教育として重要と考えますが、教育委員会の見解をうかがいます。
次に、大きな項目の2つ目、廃食油の回収についてうかがいます。
日本国内で消費される食用油は年間約200万トンで、このうち廃棄されているのは約40万トン。飲食店や食品関係企業などからまとまって廃棄される業務用の廃食油と各家庭から少量ずつ捨てられている廃食油の量はほぼ半々の20万トンずつと推計されています。飲食店などからの20万トンは専門の回収業者にゆだねられ、約80%が回収されていますが、家庭から出る残り半分の廃食用油の回収率は極めて低く、そのほとんどが生活排水と一緒に下水に流されたり、紙に含ませて捨てられています。河川に流される油は水質汚濁や配管のつまりの原因となっています。環境省が出している「生活排水読本」には、小さじ一杯、5ミリリットルの油が垂れ流されたとき、これを魚が住める水質に戻すには風呂おけ5杯分1500リットルの水が必要だと書かれています。
数年前、地域行事で料理を作った際に出た廃食用油の処分を任される機会があり、可燃ごみにしたくないので回収拠点を探し数か所に電話をかけ、自転車で20分ほどかかる福祉作業所に持って行ったことがありました。こんなに大変な思いをして回収先を探さなければならない状況で、多くの方はどうしているのだろうと疑問に思いました。そこで、どのぐらいの需要があるのか確かめるため、区役所隣にある生活者ネットワークの事務所で廃食用油の回収拠点を始めることにしました。2014年4月にスタートし、2年2か月で約800リットルを回収しました。これは、1300万人が暮らす東京を、各家庭から使用済みの油が排出される油田に見立て、その油を回収して燃料にするプロジェクトに参加し、年会費を払って回収をお願いする形で取り組んだものです。
回収を始めてみると、未使用なまま10年以上経過し、捨てるに捨てられず押し入れに眠っていた贈答品の油を持ってくる人が多かったのには驚きました。近隣の方はもとより、自転車に乗って10数分かかるところをホームページで見つけたと言って持ってきてくださったり、電車を使って持って来られる方もいて、回収拠点の設置は区民に求められていることを確信しました。
23区では、渋谷区、葛飾区、豊島区、練馬区などが廃食油の回収を行っています。以前視察に行った練馬区では、区独自でプラントを備え、回収した油をバイオディーゼル燃料、通称BDFという軽油の代替になる燃料に精製し、その燃料で区の清掃車2台を走らせ、環境学習にも利用しているとの話を伺いました。豊島区では回収した油を無添加のリサイクルせっけんに加工し、区庁舎をはじめとする区立施設の手洗い用石けんとして利用し区内で循環させています。このように、使用済みの食用油は石けんや動物の飼料、燃料に生まれ変わるものなのです。この燃料はトラックを走らせたり、発電機を動かし電気を生みだします。ちなみに住民22万人の渋谷区は、区立施設18か所で拠点回収を行い、年間の回収量は2700リットル、回収にかかる費用は年間20万円弱ということです。葛飾区は、住民が約44万人、回収拠点は21か所、年間の回収量は7000リットルで年間の回収費用は21万円とのことです。さらに葛飾区では精製されたBDFを庁有車に使う取り組みも始め1年が経過したところです。車は100%BDFで走らせていますが、不具合はまったく起きていないということです。杉並区でも回収拠点を設ければ相当量の回収が見込めると考えます。
そこで質問です。杉並区には環境先進都市の実現を目指し、区民一人一人の環境配慮行動を推進し、環境情報や環境活動の場とするとして環境活動推進センターが設置されています。ここは、環境や省エネ、リサイクルに関する総合的な拠点とされています。杉並区でも、環境活動推進センターを第一に、お願いできる区立施設いくつかで使用済み油の回収を実験的にスタートしていただきたいと思いますが、区の考えを伺います。
また、葛飾区ではホームページで民間団体が行う廃油の回収拠点を紹介し、区民にそこにも廃油を出すよう促していました。先ほど生活者ネットワークの事務所が回収拠点になったことを述べましたが、区内には他にも民間団体が回収拠点となっているところがあります。このような区民の自発的な活動を杉並区でもホームページで広報し、廃油の回収を促進することを要望します。
最後の質問です。先ほどからリサイクルされたものを使うことの重要性について述べてきましたが、区が屋外のイベントで発電機を利用するときはBDFを使うことにも取り組んでいただきたいと思います。杉並フェスタなど、様々な屋外のイベントが行われていますが、発電機を使う際には一部であってもBDFを試していただきたいと思います。このBDFは大気汚染の原因となる硫黄酸化物はゼロ、呼吸器官障害の原因といわれる黒煙は軽油の半分以下、純地産地消の地球にやさしいクリーンなエネルギーです。イベントで油の回収を行い、BDFや石けんへのリサイクルのことをパネル展示し環境意識の啓発を行っていただきたいと思いますが、区の見解をうかがいます。
環境への配慮は緊急性の点で、ともすると後回しにされがちです。しかし、子どもや孫、その先に続く世代に対して今の大人が行わなければならない大変重要な課題です。杉並区環境条例には、区はすべての施策を環境の保全に配慮して行うとともに、区民及び事業者の理解と協力を得るよう努めなければならないと定められています。今回の提案や要望に対して、区には少しのことからでもまずは試しに始めてみるという姿勢をもって取り組んでいただくよう要望し、質問を終わります。