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第1回定例会 予算特別委員会意見開陳 2013.3.21 そね文子
予算特別委員会の最終日にあたり、生活者ネット・みどりの未来の意見を申し述べます。
今回の予算特別委員会では、2013年度各会計予算案の他に16本の関連議案が同時に付託されました。限られた時間内で十分に質疑ができませんでしたので、以下、時間の制約により述べられなかったことを中心に申し上げます。
東日本大震災から2年がたちましたが、東京電力福島第一原発事故の収束は遠く、故郷を奪われたままの人たちが16万人もいる中で、昨年12月に誕生した安倍政権は、原発の再稼動や新増設に舵を切ろうとしています。憲法改定、生活保護の切り下げに加え、TPP参加交渉入りでは、食の安全や国民皆保険制度を廃止して外国の生命保険会社との契約に導こうとするのではないかという強い懸念があります。さらに地方自治体にとっては入札の際の要領などを、高度の正確さを要求される英語で用意せねばならないことになります。安倍政権は「命を大事にしない」方向へ向かっていると言わざるをえません。いま、政治が向かうべきは人の命や暮らしを第一に考え、被災地の一刻も早い復興と、持続可能な社会への転換を実現することだと考えます。
アベノミクスによる経済効果を評価する声もありますが、円安による灯油や石油製品、輸入食品など、生活必需品の価格上昇、さらに4月からは電力十社と大手都市ガス4社も一斉値上げ、小麦も9.7%の引き上げになるなど暮らしの現場はこれから影響が大きくなっていくものと思われます。とくに低所得者層の家計が直撃されることを危惧します。政府は各企業に賃金アップを要請していますが、それが非正規雇用にまで適用されない限り格差は広がるばかりで、国民全体の幸福にはつながるものではありません。
当区の財政状況を見ますと基金残高が年々減少してきており、来年度予算案ではその傾向がさらに顕著になっています。財政の健全化と持続可能な財政経営の確保が謳われ、余剰金の積立、繰り上げ償還による公債費の軽減など、5つのルールが示されていますが、これらのルールが厳格に遵守されるよう議会として監視を強めていきたいと思います。
今予算審議では、生活保護世帯の子どもに対する法外援護について議論が交わされましたが、自分の環境を選べない子どもにとって、親の貧困は機会の不平等を否応なく子どもにもたらし、そこから抜け出す機会がすでに奪われているのが今の日本の現状です。当区が来年度「次世代に夢と希望を拓く予算」として、塾代を助成しようとなさるのは、貧困の現場を知ってこそのことであり、貧困の連鎖を断ち切るために有効な施策と期待しています。発達障がいの子どもの支援拡充などとも併せ、困難な状況に置かれた子どもたちに寄り添った取組みを評価したいと思います。
なお、日本はOECD諸国の中で、所得の再分配機能が働いていない特殊な国であることを、人口問題研究所の阿部彩さんは、2008年、岩波新書『子どもの貧困』の中で、私たちに教えてくれました。若干説明させていただきますと、もともとの収入が示す子どもの相対的貧困率と、その収入から税や社会保険料を引いて給付を加え手元に残った金額を比べると、再分配後の貧困率の方がむしろ高い、再分配により貧困の度合いがより進むという、ありえない事実があるのです。その原因は、少ない収入であっても高い社会保険料を納めねばならない、また子どもへの給付が非常に少ないという、日本の税と社会保険の制度にあります。いびつな再分配の状況は、最近は若干改善されているものの、十分とはいえません。そのような状況にあって、再度の政権交代により子ども手当の復活が望めないいま、子どもの貧困の連鎖を止めるための施策を、自治体が積極的に用意することは、まさに住民の福祉の向上という役目を果たすものと考えます。
さて、今年も保育園の入園希望者は増加し、多くの保護者から保育園増設を求める声が上がりました。それを受けて、区は臨時的措置を決定し、迅速に対応されたことを評価します。ただし、今後も保育園の需要はさらに増加することが予測されます。土地の確保が課題となっていますが、来年までに廃園が決定している私立幼稚園3園の土地や建物を利用させていただくことも検討を進めていただきたいと考えます。今後とも、可能な限り区内の資源を生かして、保育園の整備を進めることを求めます。
南伊豆健康学園跡地に特別養護老人ホームを建設する構想については、遠く離れた土地に区が終の住まいをもつことの意味を、広範な視野と多角的な視点からとらえ、課題を整理して検討する必要があると思います。国の研究チームには福祉や医療・介護だけでなく都市計画、地方自治の専門家が参加しているとのことであり、報告が待たれます。ただ、それが区の事業にどう結びつくにせよ、この計画は、ひとつの施設建設をどうするかというだけでない、当該地域におけるまちづくりに寄与する、という視点をもつことが必要であると考えます。
高齢化が進行する社会は、年を重ねることが怖くない、楽しく年を取れる社会にしていかなくてはなりません。
施設再編整備が大きな課題となっていますが、昨年10月の区民アンケートによれば、「将来にわたって優先的に維持すべき区立施設は何か」という設問で、第1位が保育園、図書館は僅差の2位で、この2者が断トツの高さでした。杉並区民にとって図書館への評価がそれほどに高いことを、区はしっかりと受け止め、これから増え続ける高齢者の知的娯楽と好奇心を満足させるためにも、図書館の充実に努めていただきたいと思います。
杉並区地域エネルギービジョン策定に向けた中間まとめの報告があり、昨年の予算特別委員会で私たち会派から提案した市民出資型ファンドが採り入れられました。太陽光発電の助成を受けられるのは一部の区民ですが、自分にあった出資をすることで再生可能エネルギーを促進し、利益も得られ、多くの区民が参加しやすい仕組みと捉えられて採用したとの報告をうれしく思いました。原発依存のエネルギー政策から脱却するため、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーの普及と拡大、地産地消をすすめることに会派として主張してきた立場からこれには大いに期待しています。
今委員会では、女性の視点、女性の社会参画、男女平等などが多く議論されました。子宮頸がんワクチンについても、ジェンダーバイアスの視点から見ると、これまで採り上げてきた多くの問題点とまた違った意味で、根の深い問題があることを指摘しなければなりません。
昨年6月議会の一般質問で私が述べたように、子宮頸がんを引き起こすとされるヒトパピローマウィルスはどこにでも存在するありふれたもので、男性にもあり、男女間で感染しますから、根絶するためには本来、男女両方に打たなければなりません。ワクチンの開発者であるドイツのツアハウゼン氏のように、若い男性は女性よりも性的に活発なのだから男性に打ったほうが予防効果は高いかもしれない、という意見もあるのにもかかわらず、女性だけに接種して、女性だけが副反応に苦しまなければならないのがいまの状況です。
子宮頸がんワクチンは他の予防接種に比べて副反応の出現率が高く、導入されたときに11万人に3人と予測されていましたが実際は15.4人と5倍以上に上ります。厚生労働省には昨年末までに984件の副反被害の報告が寄せられていますが、必要とされる追跡調査は行われず被害者は放置されているのが現状です。質疑を通して、来年度、法定接種になっても副反応が出た時の救済制度が未整備であることが明らかになりました。現在定期接種1類については数100万人が予防接種をうけていますが、副反応の報告は義務とされておらず、何人の副反応があるのかもわからない。救済制度に申請したのは74名で認定されたのは57名。大変少ないと思いますが、それをどう評価するかの材料さえないのが現状です。
委員会でも多くの問題点を指摘しましたが、子宮頸がんワクチン接種事業はぜひ見直すべきと、改めて申し上げます。
継続する場合は副反応の出現率が高いこと、区内で重篤な副反応被害が出たこと、救済制度が充分ではないことをワクチン接種対象者と保護者に情報提供することと併せて、接種者への後追い調査、接種後に異常があった場合や接種に不安をもつ人のための相談体制の整備を求めます。
今回、子宮頸がんワクチンの問題がこれほど大きくメディアで報道されたのは、重い副反応症状を抱えたお嬢さんが区内にいらっしゃったことがわかったからですが、区にとってはすでによくご存じのことでした。区は当事者に対しては親身に対応された一方で、議会に対しては極めて不誠実な態度をとり続けてこられました。答弁は訂正し謝罪していただきましたが、私が指摘するまで情報は区のごく一部でしか共有されてこなかったことが、私たちの調査により明らかになりました。ワクチン接種が法定化されようとする重要な時期であるだけに、区の猛省を求めるものです。今後は副反応の報告を薬剤によるもの、針刺しによるものの区別なく、また重篤、非重篤に関わらず、保健福祉委員会で報告することを求めます。
以上、委員会での質疑を通し、また、資料をもとに調査・検討した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および本委員会に付託されたすべての条例案について、小松久子、市橋綾子、そね文子、は賛成すべきと判断いたします。
なお、奥山たえこ、すぐろ奈緒は、一般会計及び特別会計予算議案のすべてに反対し、その他の議案には賛成とします。
反対の主な理由として、3点挙げられています。1点目は荻外荘の買入れについてです。地元の要望があったとのことですが、ささやかな生産緑地の購入さえほとんど行っていない現状において、国からの助成があるにせよ、31億円という大きな買い物の必然性が見出せないこと。限られた予算の配分で優先すべきは、不燃化が急がれる高円寺・阿佐谷の木造密集地域における土地の確保と高齢者、障害者施設や保育園のための土地の確保と考えることです。
近衛文麿という人物の戦争責任も考慮すべきであり、かつて日本がアメリカ合衆国と戦争したことを知らない世代がいる現在、今後予定しているまちづくり懇談会には、教育委員会の参加が必要としています。
2点目、子宮頸がんワクチン接種については、再度検証を行い、安全性が確認されるまでは接種を中止すべきとしています。
3点目は男女共同参画についてです。5年ぶりに男女共同参画行動計画が改訂されましたが、そのスタートとなる1年目の予算額は、昨年の3分の1まで減額されています。男女平等推進センターの利用者はわずか2.5%、75%の区民が存在すら知らないという状況にあって、本気で事業の活性化をめざすには、不十分としています。
さて、国会で、昨年6月21日に超党派の議員の提案で「原発事故子ども・被災者支援法」が成立しましたが、この具体策がまだ定まっていない状況です。被曝が心配される地域の子どもが、そこから移住する費用が補償され、またその地域に留まる子どもには医療・就学・食の安全・放射線量の低減・保養が補償されるよう、当区議会として国に求める意見書提出は議運理事会では結果的に採用されませんでしたが、各会派がそれぞれ独自に取り組む意欲を表明されたので、私たちもあきらめず求めて行きたいと思います。
私どもは、これからも脱原発、いのちと暮らしが大切にされる、環境・福祉が優先される持続可能な社会、そして次代をになう子どもの権利が保障される社会の実現を目指して行くことを申し上げ意見とします。
第1回定例会 質問と答弁 2013.2.18 そね文子
【Q】 ● 今、国会で新政権の下、「いじめ防止対策基本法」が制定されるべく骨子案が示されたが、区はこの動きと背景をどうとらえているのか伺う。
●
法制化により子どもに対する管理を強化する方向性は、学校における子どものストレスの増大につながりいじめを防ぐことにはならないと考えるが、区の見解を伺う。
●
今後、いじめの防止に向けて、多くの区民、いじめにかかわる関係者が広い会場で集う機会を設定する必要があると考えるが今後の方向性を伺う。
【A】 区としては、国の動向の推移を見守っていく考えです。
本区では、来年度、子どもが安心していじめの悩み等を相談できるダイヤル相談を開設します。
また、いじめ問題は、子どもたち同士の間で起きていることから、自分たち自身の問題として、主体的にその克服に努めようという意識や態度を育むことは、大変重要です。
今後は、子どもたち同士によるいじめ問題解決への取組の支援を行い、さらには、子どもたちの取組を区内全体に広め、区民とこの問題を共有できる場をつくっていきたいです。
【Q】 ● 12月にいじめをテーマに実施した「夜間塾」の開催の趣旨、広報の仕方、呼びかけの対象者、参加人数、参加者の主な所属、パネリストの選定理由について伺う。
【A】 夜間塾は、区教育委員会が取り組んでいる様々な教育課題をテーマとし、区の取組を学校関係者や区民に周知すると同時に共に考える場として、平成21年度から開催しています。今年度は喫緊の課題である「いじめ」をテーマとし、12月に開催し、案内は、学校関係者や保護者、区関係機関に配布するとともに、広報すぎなみにも掲載しました。参加総数は73名で、学校関係者や保護者、一般区民が参加しました。パネリストは、生活指導担当校長、保護者代表、区及び民間の相談機関等、いじめ問題に直接関わっている視点で選定しました。
【Q】 ● いじめの加害児童・生徒に対し、ただ叱るだけではなく、心理的なケアが必要と考えるが区の考えを伺う。
● いじめの加害児童・生徒に対し、心理職、スクールソーシャルワーカーがかかわるなどチームで対応する必要が
あると考えるが、区の考えを伺う。
● いじめ対応について、学童保育との連携も必要と考えるが現状について伺う。
【A】 いじめ問題は、その背景にあるいじめる側の心の不安定さやストレス等の心理面が原因となる場合があります。毅然と善悪の分別を厳しく指導する場合と、共感的に話を聞きながら、してはならないことを諄々と諭す場合の両面の対応が必要です。
いじめの発見、解決は、日頃から担任教師が抱え込むことなく、管理職を中心に生活指導担当教員、養護教諭、スクールカウンセラーなどで対応チームを構築し、学校全体で共通理解を図り、児童生徒の発する危険信号を見逃さないよう、組織的な対応を基本としています。
また、事案によっては、スクールソーシャルワーカーや、児童相談所、学童保育等の関係機関と連携し、解決に
努めていますが、今度ともいじめ防止に向け、関係諸機関等との協力関係を築いていきます。
【Q】 ● 学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、担任の対応だけではなく、複数の教師による授業の支援や区による人的配置が必要と考えるが現状について伺う。
● 学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、保護者からの要請がある場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要と考えるがいかがか。
【A】 学級が不安定になった際には、学習環境を整えるため、当該の学級に学級担任以外の校長や副校長をはじめ他の教員等が関わり対応しています。
また、保護者等からいじめ問題についての訴えを受けた場合は、学校、保護者、関係機関が適切な連携を図り、共通理解のもと解決へ向け取り組む姿勢が重要です。
【Q】 ● 学校司書もいじめに関する研修を受け、対応する一員として位置付けるべきと考えるがいかがか。
【A】 子どもたちの居場所である学校図書館で職務にあたる学校司書が、生活指導上の問題について、理解を深めることは必要です。
いじめの発見、早期対応は、学校全体での迅速かつ組織的な対応を基本としています。学校司書が児童生徒からいじめ等の相談を受けた場合には、早急に担任教師等と情報を共有する大切さを、学校司書研修等の機会を捉えて指導助言していきます。
【Q】 ● 「湘南DVサポートセンター」の開発した「いじめ防止プログラム」など、子どもの自尊感情を高め、いじめを防止するプログラムを区立学校全体で実施すべきと考えるがいかがか。
【A】 子どもの自尊感情を高め、自分も他の人も大切にする態度を育てることは、いじめを防止する上で大変有効です。このことは人権教育と重なります。本区には、円滑な人間関係を築くための試みとして、様々な取組を学級活動の中で実践している学校があります。ご指摘の「いじめ防止プログラム」も取組の一例として、今後研究していきます。
【Q】 ● 発達障害といじめの関係について区の認識を伺う。
● 発達障害にかかわる教育相談員、スクールカウンセラーへの相談件数が増える中、教員にも発達障害の知識と対処能力が求められると考えるがいかがか。
● 自分の子どもが発達障害ではない保護者も、当事者の保護者も、ともに発達障害について学ぶ場が学校においても必要だと思うがいかがか。
【A】 教師や子どもたちが、学校に在籍する障害のある子どもについて、その障害特性の理解や互いの違いを認め合う態度などが育まれていないと、障害のある子どもがいじめの被害者や加害者となる場合があります。
多くの学校では、発達障害等、特別な支援を要する子どもの理解や適切な対応を図るための研修や情報交換を行うなど、資質の向上に努めています。
保護者が学ぶ場についてですが、現在、各学校で、新就学児童の保護者へのリーフレットの配布や保護者会や説明会等の機会をとらえ発達障害への理解啓発に努めています。
今後とも、障害理解とともに、誰もが相互に人格と個性を尊重し合えるような共生社会の形成に向けた取組みに努めます。
【Q】 ● 来年度、発達障害児の相談と療育を充実させていく取組みを予定しているとのことだが、その中で学校との連携はどのように行う考えか伺う。
【A】 区では、来年度に向け、発達障害児も含めた未就学児の療育は、区と民間事業者との機能を明確にした上で、連携して進めていくこととしました。
これまでも、こども発達センターでは保育園や幼稚園等と連携して就学に向けた支援を行ってきましたが、今後は児童福祉法上の児童発達センターとしての地域支援機能をいかし、発達障害児の療育を主として担う民間事業所等との連携も強化し、学校への的確な情報提供など、就学に向けた支援をこれまで以上に幅広く実施していきます。
第1回定例会 一般質問 2013.2.18 そね文子
いじめを防止する学校の環境作りについて
私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として「いじめを防止する学校の環境づくりについて」質問いたします。
一昨年10月の、大津市でいじめを受けていた中学生の自殺を契機に、こどものいじめが大きくクローズアップされる中、大阪市の公立高校バスケット部顧問からの体罰を苦に高校生が自殺しました。そして体育会系部活での体罰という名の暴力の常態化など、子どもたちが置かれた逃げ場の無い状況が次々に明らかになっています。昨年私どもの会派から小松議員がいじめについて質問したところですが、国が対策を打ち出そうとしていることを受け、また他の視点から、改めて質問いたします。
今国会では新政権の下で「いじめ防止対策基本法」制定に向けて骨子案が示されました。骨子案は、安倍首相が本部長を務める教育再生実行会議からの提案が反映されているとのことですが、そのメンバーの顔ぶれや報道される議論の内容を聞く限り、期待よりも子どもをより追いつめる結果を招くのでは、と懸念しています。
質問の第1番目として、区はこのような国の動きとその背景をどうとらえているか伺います。
骨子案の内容は、重大事案については学校から市町村長らへの報告を義務化し、調査組織の設置も求められています。また「いじめで生命の安全が脅かされる際に学校は直ちに警察に通報する」と明記され、いじめた児童、生徒を学校教育法に基づいて出席停止にする措置の活用も規定するものです。
犯罪に対してはもちろん厳正な対処が必要ですが、学校がすぐに警察を呼ぶようになることを危惧しています。子どもに対する管理を強化しようとする方向性は学校におけるストレスをかえって大きくしてしまうことになり、いじめを防ぐことにはならないと思います。2番目として、このことについての区の考えを伺います。
杉並区ではいじめの早期発見・早期対応のために「仮称ダイヤルいじめ相談」が開設される予定とうかがっていますが、新たな取り組みに期待をしています。昨年12月19日、済美教育センターの「夜間塾」がいじめをテーマにパネルディスカッションを開催しました。時宜を得た企画だったと思います。パネリストは小中学校の校長先生、区の子ども相談電話サービスゆうラインの担当者、PTA連合会長、教育SATなど区の関係者に、民間で子どもの電話を受けているチャイルドラインの担当者が加わっていました。チャイルドラインからの報告ではいじめられている子のリアルな声が報告されました。
いじめられている子は自尊感情が低く、自分が悪いからいじめられると思ってしまい、いじめている子から離れられない。発達障がいのある子どもが他者と違うことでいじめの対象になり、やがて自己肯定感が下がり、不登校からひきこもりになったり、精神障がいを発症するなどの深刻な二次被害が起こっているとの報告もありました。パネリストに子どもの生の声を受けているチャイルドラインの担当者が入っていたのは画期的で、そこからの要望を真摯に受け止める区の姿勢が印象的でした。
この「夜間塾」について、開催の趣旨、広報の仕方、呼びかけの対象者、参加人数とその方たちの所属、パネリストの選定理由について伺います。
いじめが起こったとき、教育SATや校長先生からの区としてどんな対応をとっているかという話は多くの保護者や地域の人たちも聞きたいことだと思いました。また放課後の子どもの居場所となっている学童クラブの担当者の話も聞きたかったと思います。
今後いじめ防止に向けて、多くの区民、子どもに関わる関係者が広い会場で集い、さまざまな角度から考える機会を設定していただきたいと考えますがいかがか、伺います。
次にいじめてしまう子どもの背景について考えてみたいと思います。いじめについて、教育法学者である早稲田大学の喜多明人教授は、抗しがたい人間関係の中でストレスが弱いものへと向く行為と定義しています。
だとすれば、いじめの原因はいじめる側のストレスということになります。いじめがどんなに卑怯な行為であっても、いじめる子もまた援助を必要としている子どもです。そして現代のストレスの強い社会状況や置かれた環境がつくった被害者とも言えると思います。しかりつけたり、指導したりするだけではいじめの本質的な解決にはなりません。
このような観点から、いじめられている子どもへのケアと同じくらい、いじめる子へのケアは重要だと考えますが区の考えをうかがいます。
いじめの加害者となった子どもに対してもチームでケアにとりくむべきと考えますがどのように行っているのでしょうか。例えばいじめの加害者となった子どもにスクールカウンセラーとの面談を設定したり、SSWが関わってケアを行っているのか伺います。
教師をしている友人から、いじめる子のケアも必要だと思うが、忙しすぎてその時間がない、もっと子どもと向き合う時間がほしいという声を聞いています。一方、学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、担任の負担を減らすためには複数の教師が必要だと思います。区はティームティーチングを採り入れておられますが、複数の教師による授業の支援や区により人的配置が必要と考えます。現状はどうなっているでしょうか、伺います。
また学級の荒れが原因でいじめが継続する場合で、保護者からの要請がある場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要と考えますがいかがか伺います。
当区では今年度、すべての小中学校の図書館に司書が配置されました。いつでも図書館が開いていて専任の司書がいるということは、「評価しない、点数をつけない大人」がいることです。図書館が子どもにとって安心していられる、本音が出せる居場所、という側面をもつようになったといえます。
そこで学校司書にもいじめに対応するチームの一員として協力を求めてはいかがでしょうか。学校司書も研修を受け、子どもに寄り添った支援をすることは大変有効と考えますが、区の考えはいかがか伺います。
次に先日学習会に参加し、その後世田谷区立の中学校で行われているワークショップを見学した「いじめ防止プログラム」を紹介したいと思います。これは2006年に神奈川県藤沢市のある中学校で行われたアンケートでいじめを目撃した生徒のうち9割が傍観していたとの回答を見た学校が危機感を持ち、地域のNPOと一緒に開発したものです。生徒自身がチームを組んで子どもの相談を受けたり、啓発活動を行うことでいじめを未然に防止していく活動です。このいじめ防止チームのメンバーはスクールバディと呼ばれます。
プログラムは、まずいじめについて共通認識を持つために、生徒、教師、保護者、地域の大人向けに講演会が開かれた後、子どもたちはクラスごとに全4回の講座を受けます。人権尊重の視点に立ち、自尊感情を高めることを学び、暴力によらないコミュニケーション方法を身につけ、いじめを防止するためにどのような行動を一人ひとりがとるか考える内容になっています。この後、スクール・バディになりたい希望者を募ります。希望者は、心理学的な聴き方の訓練、いじめ防止啓発のためのプレゼンテーションの技術などさらに8時間のトレーニングを受けます。相談された内容について秘密を守ること、自分を守ること、ケースによっては先生に相談することを学びます。修了後は学校内にいじめ防止活動の拠点となる部屋「バディルーム」を設置し、相談や話に来る生徒の話を聞いたり、いじめ防止のための計画を練り啓発活動を行っていきます。具体的にはビデオ制作、演劇、校内放送のDJ、新聞やポスター作りなどの啓発活動が行われているそうです。都内では世田谷区の中学校で6年取り組んでいるところがあり、品川区でも来年度から中学校2校、小学校3校で導入されるそうです。藤沢市ではすでに中学校10校と小学校2校で実施され、いじめの認知件数が急増しているこの時期に件数が微減しているということです。
このようなプログラムを杉並区でも導入できないでしょうか。うかがいます。
私は小学校6年生の時にクラスメイトがいじめを苦にして自殺で亡くなりました。彼女は大変真面目でおとなしく勉強のできる生徒でした。自殺の原因はいじめだと子どもたちはわかりましたが、新聞ではまったく違う理由で報道され、学校では自殺原因の調査などはいっさい行われませんでした。
いじめた子には他の多くの子が順番でいじめられていました。今振り返ると、子どもだった私たちは、みんなが傍観者でした。いじめっ子に誰かがいじめられている風景は当たり前のこととなっていたのです。もし先ほど紹介したプログラムを受けて、いじめに対して皆で話し合う機会が与えられ、子どもたちが傍観者でなくなっていたら、この不幸な出来事はおこらなかったと思いました。
紹介したプログラムは1例です。子どもたちが自尊感情を高め、自発的にいじめ防止に取り組めるようなプログラムをすべての学校で取り入れていただきたいと考えますが、区の考えをうかがいます。
さて、先ほど夜間塾で、発達障害がいじめの対象になっているとの報告があったと述べましたが、そのことについても取り上げたいと思います。
発達障がいを持つ子どもは、自分を取り巻く人たちとのコミュニケーションが苦手で、たとえば皮肉が理解できず、いわゆる空気を読むということができない、というような特徴があります。そのため学校において、子どもにとっては楽しいはずの休憩時間、給食の時間、登下校の時間などもリラックスできず、コミュニケーションをとることに疲れ果てている状況も見られます。彼らと直接かかわることの多い専門家は、小学校から高校までを通じて発達障がいの子どもは、他の子どもたちに比べていじめの標的となるリスクが極めて高いと述べています。
またいじめが原因で不登校やひきこもりになったり、二次障がいとして精神障がいに移行するケースも報告されています。
杉並区としては発達障がいを持つ子どもといじめの関係をどう認識しているか、うかがいます。
2011年度に済美教育センターの教育相談に寄せられた合計相談件数878件のうち、発達障がいの相談が489件、55.7%と半数以上をしめています。また小学校でスクールカウンセラーが受けた相談件数は24,228件で発達障がいに関することが2,936件。この内教員からの相談件数が1,339件と半数近くを占めています。教師が苦労している実態が数字に現れています。
発達障がいの知識と対処能力が求められると考えますが、研修などどのように対処しているのでしょうか。
文科省は、通常学級に通う公立小中学生6.5%に発達障害の可能性があることを公表しました。このうち4割が個別指導などの支援を受けておらず、学校内での支援が必要と判断された児童生徒18.4%でも6%が無支援だったとしています。学校に対応しきれていない状況あるということだと思います。また保護者が障害への抵抗感などから相談に行かず、支援につながっていないケースも少なくないと言われています。
区では来年度、発達障がい児の相談と療育を充実させていく取り組みを予定しているとのことですが、その中で学校との連携はどのように行うのか伺います。
クラスで問題を起こす子どもを他の子どもの保護者が排除するような考え方が子どもに悪影響を与える事例があります。もし問題を起こす子どもが発達障がいだった場合、その子の生きづらさを大きくするのは、それ以外の人たちが作った、異質なものを受け入れない環境が原因だと療育の専門家が指摘しています。当事者の保護者や関心のある人だけが理解していても状況は改善されません。
自分の子どもが発達障がいでない保護者も、当事者の保護者もともに発達障がいについて学ぶ機会が必要だと考えます。それには学校が保護者会などを利用して学ぶ時間を設けることが有効だと思いますが、お考えを伺います。
これまで述べてきた学校の環境づくりは、子どもの権利をそこに居る大人も子どもも学ぶことによって良くしていくもの考えます。いじめは、暴行・傷害などによる生命権、身体権、自由権の侵害、持ち物の毀損などによる財産権の侵害、精神的な攻撃による名誉毀損など、基本的人権を脅かす行為です。それに気づくことで、自分が悪いのではなく権利侵害する加害者が悪いと認識し、助けを求められることが解決につながります。先の代表質問において教育長は、いじめに対しては人権尊重の精神を貫いた教育活動を展開し、子どもたちがいじめを自分たち自身の問題としてとらえ解決に向けて主体的に取り組む態度をはぐくみいじめを克服していくと答えておられ、大変共感いたしました。
世田谷区では子どもの権利を擁護する「子どもオンブズパーソン」の仕組みができました。先ほど学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要ではないかと申し上げましたが、もし杉並区にもこの制度があり、子どもの立場にたった公的な第三者機関が関わってくれたら硬直した状況を打開するのにたいへん有効だと思います。これまでも生活者ネットワークは子どもオンブズの設置を提案して参りましたが、それを再度、最後に求めて私の質問をおわります。
第1回定例会代表質問 2013.2.15 小松久子
「生活者ネット・みどりの未来」を代表して、「平成25年度予算の編成方針とその概要」について質問いたします。他会派からすでに質問のあったことがらもふくめて、重ねてのご答弁をお願いいたします。
昨年暮れの総選挙は、2年前の3月11日、過去最大規模の震災と津波、つづいて原発事故という大惨事に見舞われた日本が、この経験を糧に、改めてどのような国をめざしていくのかが問われるべき選挙でした。しかし戦後最低の投票率に終わり、前回の総選挙で大敗を喫した自民党が、それよりも少ない得票でありながら大勝を収めるという結果になりました。
原発ゼロに向かうはずだったこの国の方針は逆向きに動き始め、まるでオリンピックが世間の目を原発問題からそらせるための隠れみのとなるかのように、国を巻き込んだ招致ムードが展開されています。ですが、ムードや気運が原発問題を解決できるわけではもちろんありません。私たちは、原発を抱え続けることの問題や被災地・被災者の現実から決して目をそらしてはならない、と改めて思っています。
さて、選挙の結果により民主党から自民党への政権交代が行われました。最初の質問として、今回の選挙結果に対する区長の率直な感想をおうかがいします。
投票率についてもふれておきたいと思います。国全体としての衆議院議員選挙の投票率は59.3%、戦後最低であり、3年前のときと比べて10ポイント近く減らしています。ですが杉並区に限って見れば今回63.47%であり、前回の65.5%から約2ポイントの差に留まっています。この結果をどうごらんになるでしょうか。お考えをうかがいます。
安倍首相はさっそく前政権の政策を一新すべく動き出しています。新政権が示す財政政策について、日本の経済界の反応はおおむね好評であり、施策の成果が表れる以前からバブルの予感に酔っているように見えます。一方区長は「デフレや円高に改善の兆しが現れたようにも思われる」と述べたのち、「今後の見通しは不透明であり、予断を許さない状況が続く」としておられます。住宅都市・杉並区にとっての円安の影響は、輸出産業がほとんどなく輸入品の物価上昇が懸念されるため、プラス・マイナスは一概に言えないかと思いますが、区長はどのようにお考えでしょうか。また安倍政権の財政政策、いわゆる「アベノミクス」に対する区長の評価はいかがでしょうか。おたずねします。
安倍政権の地方分権改革について、区長は「現時点では不透明な部分もあり」としておられます。しかし、報道によれば、一括交付金が廃止され「ひも付き補助金」がまた復活するといいます。自治体の裁量に使途が任せられていた国の補助金政策が、使途限定型に逆戻りすることになりますが、地方分権の後退ではないでしょうか。区長はこれをどのように受け止めておられるか。また当区への影響はどのような形で現れるとお考えか、うかがいます。
当区の2013年度予算は、基本構想実現に向けた取り組みを軌道に乗せるための予算と位置付けられています。区が昨年5月、要綱を定めて設置した「行政経営懇談会」は、基本構想の実現に向けて議論し区に対して意見や助言を具申する有識者会議ですが、ここで「今後の財政運営のあり方」が検討課題のひとつとされ、区は基本的な考え方を示しておられます。今回の予算編成にあたり、ここでの議論はどのように生かされたのでしょうか、うかがいます。
今予算が基本構想実現に向けた取組みを軌道に乗せる予算であるなら、基本構想が実現のために掲げている「参加と協働による地域社会づくり」を進めるべき年であろうと思います。
昨年制定された「杉並区基本構想」では、最後の部分で「基本構想を実現するために」という項目を設け、構想実現のための推進のしくみについて論じていますが、ここで最初に提示されているのが「参加と協働の地域社会づくり」についての項です。行政経営懇談会での検討テーマのひとつは「協働のあり方」でした。ところがこのたびの「予算編成方針とその概要」では、まったく言及がないのを疑問に思います。区長の姿勢をおうかがいします。
行政経営懇談会からの意見・助言を受けて、区は8月、「新たな協働のあり方についての基本的な考え方」をまとめ、その具体的な施策等の検討を「杉並区NPO等活動推進協議会」が行い、12月 「新たな協働のあり方」の具体化に関する意見がまとめられました。
この中では、これまでのような区とNPO法人等の関係性を中心にした協働の考え方に加え、NPO法人同士、NPO法人と町会・自治会などの地縁団体相互が連携・協力し、自ら主体的に地域の課題を解決していく、参加と協働による地域社会づくりが新たに提唱されました。「杉並らしい協働の取り組み」として、地域の多様な活動主体が情報を共有し、それぞれの活動について交流を図るなどして、多様な主体がつながることを重視する、等がNPO等活動推進協議会の総意として述べられています。
このような考え方について、これまで地域における市民の自治を提唱してきたものとしては、賛意を表するものです。これを受けて今後、区はこれらについてどのように扱い、具体化を図っていくお考えでしょうか。うかがいます。
NPO等活動推進協議会の「意見」の中でも指摘されているように、「すぎなみNPO支援センター」の機能と役割は本来、より重要なはずです。その機能を果たせるような組織体制をつくること、また行政の側の機能強化とその推進体制づくり、行政が区民・団体・地域の連携をNPO支援センターと協働して図ること、すなわち連携づくり、職員の意識形成も含めた行政内部の調整、庁内推進体制の確立など、各機関が取り組むべき課題は少なくありません。
政権が替わって「新しい公共」という文言を目にすることも少なくなっているような気もしますが、安倍政権の「公助」切り捨ての姿勢からすれば、そして「自助」の限界を併せれば、「共助」の必要性は高まりこそすれ低くなるはずはありません。「新しい公共」を担保する「協働」の取組みはもはや社会のシステムに欠かせないものです。区の積極的な姿勢を求めるものです。
「地域社会づくり」についてうかがってきた流れから、まちづくりに関して区長が提案しておられる地域社会活性化の事業についてうかがいます。ハード・ソフト両面の施策を連動させる、とは具体的にどのような事業でしょうか。昨年来言われている「多心型まちづくり」の具体策かと思いますが、精力的に地域に入り、地域の方々と一緒に汗を流す総合的なまちづくり、という取り組みの概要をお示しください。
なみすけ商品券の休止、電子地域通貨の協議の中止は、妥当な判断と考えます。ただ、産業振興策として打ち出されている「商店街若手支援事業補助金の拡充」や「地域のまちづくりやイベントと連動した取組みを行う商店街への支援事業」などについては、財政出動の公平性からみて問題がないか、若干疑問も感じるところです。概要について説明を求めます。
商店街の空き店舗を活用する取り組みが、成功事例はあるものの、なかなか広がっていきません。ケースごとに異なる課題があるかとは思いますが、商店街の活性化を考える場合に空き店舗問題は避けて通れません。産業振興センターが中心となって、それこそ区と地域団体やNPOなどとの協働の取組みが必要ではないのでしょうか。見解をうかがいます。
いっぽう空き家問題については、今回新たな施策が打ち出されました。空き家問題は、基本構想審議会の中でも重要な課題としてしばしば議論になっていましたが、これまで具体的な取り組みが示されませんでした。今回、住宅マスタープラン改定にあたって実態調査を実施されるとのことです。空き家は今後、少子高齢社会を支える地域の資源として、さまざまな活用につなげられることが期待されます。その意味で、多様な視点からの調査としていただきたいと考えます。見解をうかがいます。
現行の住宅マスタープランは、平成20年から29年までを対象期間としておりますから、今回かなり前倒しの改定となります。その理由、いまの住宅政策で何が課題なのか、具体的にお示しください。またスケジュールについても確認しておきます。
さて、若者の就労支援事業として昨年暮れに開設された就労支援センターは、先の行政経営懇談会で議論された、現役世代への支援をどうするのか、という課題に対する解決策として迅速に実現化を図っていただいたものと理解しております。オープンしてまだ2か月ですが、利用状況はいかがでしょうか。確認させていただきます。
今後の展開として新たに福祉部門と連携し、ワンストップ機能をもたせ中間的就労の場の確保、さらには社会参加と自立支援に向けて取り組む、と打ち出しておられることは、まさにわが会派が提案してきたことであり、評価するものです。
しかし、女性の就労・就職支援の視点が見られないのを残念に思うところです。女性の貧困問題は、一般に採りあげられることが少ないだけに、より深刻です。男女雇用機会均等法ができて30年近くたちますが実質的な男女格差はなくなっておらず、シングルマザーやDV、ドメスティックバイオレンス被害者ともなれば、貧困から抜け出せなくなってしまう女性は少なくありません。このような状況を改善するための取組みが必要と考えます。今後の課題としていただくことを求めます。
都市農業とみどりについてうかがいます。農地の保全と活用に向けて「(仮称)農地活用懇談会」を設置され、みどりの保全については「(仮称)緑地保全計画」を策定されるといいます。これらは密接にかかわることであり、懇談会での議論が緑地全体の保全計画に反映されなければ意味がありませんから、連動して進めていかれるべきと思います。また国に法改正を求める必要があるものと考えます。これらの点について、どのようにお考えかうかがいます。(*14)
つづいて福祉の分野から、まず高齢者にかかわる課題について触れておきます。今回、認知症コーディネーターを新たに設置されるとのことです。厚労省がしきりと設置を呼びかけているしくみかと思いますが、当区としては具体的にどのような人材を何人、想定しておられるのでしょうか。各地域包括支援センターとの連携をどのように位置づけ、どこに配置してどのような役割を担うことになるのでしょうか。おうかがいします。
要介護高齢者の取組みとして、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、介護施設などの整備事業については、計画に沿って粛々と進めていただきたいと思いますが、これからニーズが増えていく在宅サービスを充実させていくことも忘れてはなりません。在宅での高齢生活を支えるサービスは今後ますます需要が増えていくと思われます。地域医療サービス、福祉のサービス、介護サービス、また介護者を支援する取組みなどが連携し、サービスとサービスのすき間からこぼれ落ちる人が出ないよう体制を構築し、区のしくみに位置付ける必要があります。見解をうかがいます。
障がい者の地域生活を支える機能の充実をねらって「(仮称)障害者地域相談支援センター」を区内に3か所、設置されるとのことです。これまでの相談支援とどこをどのように変え、機能アップが図られるのか、お示しください。
発達障がい児の急増への対応策が長く検討課題とされていましたが、このたび、民間事業所の誘致という形で児童発達支援事業所の開設を促すとのことです。こども発達センターの分園設置の検討もされたと思いますが、この方針に落ち着いた経緯について、説明を求めます。
子どもの貧困問題について、かねてより対策を求め、会派として今回一般質問にも採りあげておりますが、安倍政権のもとで生活保護切り下げが行われようとするなか、その影響が子どもに対して及ばないように努めることは喫緊の課題です。子どもには何の責任もない貧困によって、健康に育つ権利や学ぶ権利が奪われることは、何としても防がなければなりません。
今回、生活保護世帯の子どもに対する法外援護事業を再構築されるといいます。社会的な居場所づくり支援事業や子どもの社会参加の経費助成、中学3年生に対する塾の費用助成などが法外援護事業、すなわち福祉の施策として提示されていますが、この事業は、教育委員会との連携が欠かせません。教育委員会がイニシアチブをとって進めるほうがよい場合もあるかもしれませんし、福祉の観点から包括的な支援のニーズが見つかる場合もあるかと思います。区はどのような体制で臨むおつもりなのか、おうかがいします。
新規事業として中・高校生の新たな居場所づくりに向けた取組みも、保健福祉費から予算が計上されています。「ゆう杉」の愛称で親しまれている青少年児童センターの2号館というような位置付けでしょうか。いまこのような取り組みを始めようとするのはなぜなのか、目的と併せて、お聞かせください。
子どもに関連して、児童相談所をめぐる都区間の調整の進捗について確認したいと思います。都区制度改革の議論において、特別区へ移管する方向性が真っ先に出された児童相談所でしたが、その後の進捗が見られないのを歯がゆく思っています。児童相談所の区移管の議論はどこまで進んできたのか、おうかがいします。
昨年来のいじめ問題に加えて体罰が社会問題化しています。学校現場というところはなんと息苦しくストレスが存在していることか、と思わずにいられません。いじめについては昨年議会で採りあげ、さまざまなしくみやプログラムの導入を提案しました。今議会でも会派から質問と新たな提案を予定しています。対策の手法はひとつではない、ツールはたくさんあったほうがいい、ということです。そして、ここで強調したいのは、どんなツールでも人権に対する配慮や尊重が基本になっていなければ本質的な解決策にはならない、ということです。
昨日の、いじめをめぐる他会派の質問への答弁において、いじめの対策として、子どもが主体となって自らの解決力を育てる、という見解が教育長より示されたことには、心から賛同するものです。
先日、区主催で開かれた「水鳥の棲む水辺づくり」フォーラムに参加し、井荻小学校の子どもたちの環境活動の発表を見、聴く機会がありました。校舎の敷地内を流れる善福寺川について多くのことを学んだ子どもたちが、川をきれいにしようと清掃活動を始め、やがて川の周辺から善福寺公園までを活動領域に広げたこと、その活動の中から大人たちに対する提言を導き出し発信する、という一連の報告です。昨年秋の市民団体の主催による「善福寺川フォーラム」でも聴きましたし、80周年記念の作文コンクールで区長賞に輝いた作品もこの内容でしたから、いまや多くの区民の知るところとなった活動ですが、今回あらためて気がついたのは、「これこそESDだ」ということです。
ESD、すなわち「持続可能な社会づくりのための教育」の理念は、社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目的とし、人や社会を「教育」によって変えていくことをめざしています。自然と命のつながりを大切にし、地域に根差した文化や人びとと触れ合いながら、人と自然が共存共栄できるような多様な生き方を学んでいきます。
ESDは、狭い意味での環境教育というより、地球規模の人権教育ととらえることこそふさわしい、と思います。いじめ、不登校、学級崩壊、家庭問題など現代の子どもたちをとりまく問題の解決策としても有効活用されているといわれています。井荻小の子どもたちのような活動が、区内にはほかにもあるのだと思いますが、それをESDだと意識することで、評価の視点が生まれます。ESDを意識的に教育のテーマとして取り組んでみては、という昨年の私の一般質問でのご答弁では「『持続可能な社会を目指し、次代を共に支えていく力』を伸ばすよう、指導の在り方について研究を進めていく」とのことでした。この進捗状況について、人権教育としてのESDについての見解と併せて、おうかがいします。
学校における人権侵害の中でも体罰については、社会が半ば公然と容認してきた部分があります。とくに、結果を求められる競技スポーツの世界においては、ある程度の暴力・制裁はやむを得ない、とする考え方が当たり前に存在し、むしろ指導の一環として肯定すらされてきました。戦後すぐの1947年の教育基本法の下ですでに体罰は禁止されているにもかかわらず、ある種の文化、風土論に祭り上げるか、あるいは程度の問題として収めようとする論調が消えることはありませんでした。
私自身はただの1点も体罰を肯定する気持ちにはなれませんが、体罰と競技スポーツにおける「しごき」とを同一視することは問題の本質を見失うことになるように思います。いずれにしろ、社会がこの状況を乗り越えるのは容易ではなさそうです。体罰のない教育現場を社会全体で創りあげていくのだ、というほどの覚悟をもって、人びとが「体罰すなわち暴力であり人権侵害である」ということを深く受け止めて、「学び直す」というプロセスが必要なのではないでしょうか。お考えをうかがいます。
最後の質問は、住民投票制度についてです。
昨年は、東京都での原発の稼働の是非について都民みずからが投票で決着をつけたい、として「原発都民投票」の実施を都に求める直接請求運動が市民グループによって展開されました。直接請求は、自治法の規定に基づき、2か月以内に有効署名数すなわち都内の有権者の50分の1以上の署名を、生年月日と押印を併せて集めなければならない、というハードルの高い活動でしたが、規定を優に超える数の署名を集めることができました。杉並区では9,000筆あれば足りるところ19,322筆が集まり、選挙管理委員会のチェックを受けたのち有効と判定された17,724筆をふくめて東京全体で32万3,076人分の署名が、昨年5月、当時の石原都知事に向けて提出されました。しかし、都議会はこの条例案を反対多数で退け、東京都で初の住民投票は実現しませんでした。
この経験から、東京都に常設型かつ実施必至型の住民投票条例の設置を求める市民の運動が起きています。 「常設型」とは住民投票にかける案件の定義や実施要件、また情報提供の方法など、住民投票を行う場合に必要となる手続き項目などを、あらかじめ条例として制定しておくパターンのことです。そうすることで現在のように、住民投票を請求する度に、条例案を一から作成して添えねばならないという、市民にとって不慣れなハードルをなくすことができ、請求する住民は、テーマだけを提示すればよいことになります。市民に優しい条例体系だと言えます。
また「実施必至型」とは、規定の数の署名がそろったら議会の議決を経ずに必ず実施されるということです。なおこの場合の規定割合は、自治体によってばらつきがありますが、例えば我孫子市の場合は8分の1、つまり12.5%というように、地方自治法の2%よりはハードルが高くなっているのが通常です。
現在当区には、杉並区自治基本条例及び杉並区住民投票の請求に関する規則があるものの、これらの規定だけでは、住民がどんなに多くの署名を集めたとしても、住民投票の実施は保証されていません。ですから、直接民主主義を行使するためのしくみとして、また杉並区が成熟した一人前の自治体となるためにも必要だと考えます。いかがか、最後の質問として、区長のお考えをうかがいます。
以上、うかがってまいりましたが、さらに細目については予算特別委員会での議論とすることとし、生活者ネット・みどりの未来の代表質問を終わります。
第4回定例会質問と答弁 2012.11.20 小松久子
【Q】 ● 児童相談所と子ども家庭支援センターについてそれぞれの役割はどのように整理されているのか伺う。
【A】 区の子ども家庭支援センターは、児童に関わる相談・通告の第一義的な窓口を担い、相談を受けて必要な援助を行っています。その中で専門性の高い困難事例は、児童相談所が対応します。こうした役割分担のもと、相互に連携しながら個々の事例へ適切な対応を図っていきます。
【Q】 ● 区内で起きた里子死亡事件をうけ、今年1月に都の児童福祉審議会が児童相談所の体制・機能強化や、子ども家庭支援センターとの連携強化などを提言したが、その後の対応状況について伺う。
【A】 都は今年度から、全児童相談所に里親支援の専任職員を配置するとともに、民間の専門機関を活用し、里親を訪問して必要な支援を行う事業を拡充する取り組みに着手しました。
また、児童相談所から子ども家庭支援センターに対して、本人同意を得た上で、養育家庭に関する情報提供を行うことや、養育家庭との連絡会に子ども家庭支援センター職員が参加することをルール化し、児童相談所と子ども家庭支援センターとのより一層の連携強化が図られています。
【Q】 ● 本区の里親制度の登録数・委託数が他区に比べ多いと聞くが、直近の状況を伺う。
【A】 現在登録している養育家庭数は20家庭、委託家庭数は11家庭、また、委託児童数は12人です。
【Q】 ● 家庭的養護は都の制度であるが、基礎的自治体である区は里親家庭の実態・実情を把握し、必要な支援を行っていくべきと考えるが区の見解を伺う。
【A】 里親制度に関する直接的な相談・支援は、制度の実施主体である都において行うべきです。
その上で、区が実施している子育て支援サービスに関する情報を、児童相談所を通じて里親家庭への周知を図り、必要なときに必要な支援サービスを利用できるように努めます。
【Q】 ● 児童相談所の区移管について、進捗状況を伺う。
【A】 本年2月に、都区のあり方検討委員会とは切り離す形で、都と区の関係者による「児童相談所のあり方等児童相談行政に関する検討会」が設置され、現行の役割分担の下での課題及び対応策と、児童相談行政の体制のあり方について、検討が進められています。
この間、都と区の課長級を中心とした部会が5回開催され、双方からの課題の検討が続けられており、本年12月を目途に検討会において、それまでの検討内容を確認します。
【Q】 ● 乳幼児の社会的養護については、国連の提言でもあるように、100%家庭的養護とするべきと考えるが、区は乳幼児の家庭的環境での養護の重要性をどのように認識しているか伺う。
【A】 乳幼児期は、人格形成のための大切な時期であり、心身の健全な発達を促すためには、ご指摘のとおり、可能な限り家庭的な環境のもとで育成することが重要です。
なお、厚生労働省も、こうした考えから平成25年度予算の概算要求の中で、児童養護施設等の小規模化や、地域分散化を推進することにしています。
【Q】 ● 都のフレンドホーム制度について、都内の登録家庭数について伺う。
【A】 平成23年度末現在で、508家庭が登録されています。
【Q】 ● 区としてもフレンドホーム制度の普及に努めるべきと考えるが見解を伺う。
【A】 様々な事情により児童養護施設等で生活している子どもたちの健やかな成長を図る観点から、学校が休みの期間を利用して、普段経験出来ない家庭生活を体験することは、大変貴重な機会です。
そのため、区では、子ども家庭支援センター等を通じて、本制度を紹介するパンフレットを配布することで、周知を図り、今後も機会を捉えて普及に努めていきます。
【Q】 ● 南相馬市など被災地の子どもを対象とする区民の活動に対し、区はどのような支援や後援をしてきたか。
● 区民が行う被災地の子どもの支援活動を、区は育て推進すべきと考える。見解を伺う。
【A】 3.11大震災以降、区は福島県南相馬市に対し、区民並びに事業者の皆さんとともに、被災地の復旧・復興に向けて、全力で取り組んできました、また、区民の皆さんが自主的な取組として、東吾妻町へ避難していた南相馬市の子どもたちへの文具一式の寄贈、また南相馬市と高円寺の子どもたちの東京での交流会の実施、さらに福島県の子どもたちを区の施設「富士学園」へ招き、「福島の子ども保養」などの活動を行ったことは十分承知しています。区は、こうした区民の自発的な活動に対し、必要に応じ現地等との調整を図り、また教育委員会では後援を行いました。
先月は、区民の皆さまと共同で、南相馬市の中学生を区に招いて杉並区や台湾の中学生との交流親善野球を行ったところです。区民の皆さんの被災地の子どもたちに対する自主的な支援活動がさらに広がっていくことを期待し、今後も引き続き、区も、必要に応じた支援をしていきます。
【Q】 ● 不登校の子どもの数は増加傾向と言われているが区内の不登校の子ども数の推移と不登校の主な原因、またそれに対する区の見解を伺う。
【A】 平成23年度は、小学校65人、中学校174人で、平成18年~19年度のピーク時と比較すると減少傾向にあります。不登校のきっかけで主なものは、情緒の不安定が最も多く、次に、無気力、親子関係や友達関係をめぐる問題です。要因は様々ですが、個々の状況に応じた支援が大事ですから適応指導教室への通室やふれあいフレンドの派遣、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる相談支援等、不登校対策の取り組みを進めています。
【Q】 ● フリースクールなど学校以外の学びの場に通っている区内の子どもの数、及び、区内のフリースクールの数を把握しているのか伺う。また、区との連携や交流はあるのか伺う。
【A】 平成23年度の状況は、通所者数は小学生1名、中学生10名です。また、区内のフリースクール数は3ケ所で、区外の3施設へも通所しています。
フリースクールとの連携は、必要に応じて通所している児童・生徒の支援に関する相談等を通じて図っています。
【Q】 ● 今年度から開設された小学生対象のステップアップ教室の開設に至る経緯、及び、取組についての区の評価について伺う。
【A】 不登校対策として、中学生対象の適応指導教室は整備されていますが、小学生への対応が課題となっていたところ、南伊豆健康学園の閉園を契機に、その代替策の一つとして中央図書館に小学生対象の適応指導教室「さざんかステップアップ荻窪教室」を開設しました。現在、13名の児童が登録しており、内1名は学校へ復帰しています。子どもの状況は様々ですが、不登校の児童が家から一歩出て、通室することで自信を育み、学校へ復帰できるようきめ細やかな支援に努めています。
【Q】 ● フリースクールに対する区の見解を伺う。また区内のフリースクールや区内の子どもが通うフリースクールへの支援などを検討すべきではないか。
【A】 フリースクールは様々な状況にある不登校児童の居場所の一つとして、その役割を担っています。今後も、不登校児童への支援について、情報交換等の連携を図っていきたいと思いますが、フリースクールへの財政的な支援については考えていません。
第4回定例会一般質問 2012.11.20 小松久子
私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、特別な配慮を要する子どもに対する支援について、子どもの多様な学びの場の保障について、以上大きくいって2点 質問いたします。
まず、特別な配慮を要する子どもとして、実の親から離れてくらさざるを得ない子どもに焦点をあて、里親制度などの家庭的養護についてうかがいます。いろいろな事情で親と一緒にくらすことのできない子どもを、家庭に代わって公的に育てるしくみを「社会的養護」といいますが、このうち、より家庭に近い環境で子どもを育てる制度が「家庭的養護」で、もう一方は児童養護施設や乳児院などの施設擁護です。家庭的養護の代表的なものが里親制度です。
里親制度については、杉並区内の里親家庭でおきた子どもの死亡事件をめぐって、昨年秋の決算委員会や今年の予算委員会で質疑をおこなってきました。
一昨年の8月に東京都が里子として措置していた3歳の女の子が家の中で亡くなった事件は、当初事故死とされていましたが、死亡から1年後、当時の里母による暴行が死因であったとして、その女性が逮捕され、社会に衝撃を与えました。とくに、女性が声優として芸能活動をおこない、地域でも目立つ存在だったことで、メディアがスキャンダラスに報じました。しかし里親をふくめた社会的養護の関係者にとっては、里親制度のあり方が問われる重大な問題として受け止められ、テレビのワイドショーが報じなくなったいまも、重苦しいしこりが残っている状況です。
制度を所管する東京都はこの事件を深刻にとらえ、都の児童福祉審議会が検証を行いました。ことし1月に出された報告書には「死亡原因が虐待によるものと特定はされないが死亡に至った経過の中で虐待が疑われる事例」と明記されています。表現は慎重でありながら「虐待があった」可能性を肯定した、踏み込んだ内容と受け止めました。ただし、事件は女性の傷害致死容疑をめぐって東京地方裁判所で争われ、7月に懲役9年の判決が下されましたが、女性は容疑を否認し控訴しているため、依然として真相は解明されていません。
すべてが明らかになるにはもう少し時間がかかるのだと思います。しかしそれはそれとして、いま目の前に特別な配慮の必要な子どもがいるという現状に対して、区としての取組みを考えたいと思います。
私は、これまでも申してきたように、里親制度をいまのような東京都のしくみとして実施するより、身近な自治体である区が実施すべきではないか、と考えています。区はこれを自治の問題として、都から区への移譲を獲得するべく積極的に動くべきではないか。この問題意識から、今回あらためて質問いたします。
里親制度を実際に所管しているのは児童相談所で、虐待問題への対応なども重要な事業ですが、同様の事業を区として所管しているのが子ども家庭支援センターです。はじめに、児童相談所と子ども家庭支援センターの役割の違いについて、それぞれの役割はどのように整理されているのか、うかがっておきます。
先ほど述べた、都児童福祉審議会の報告書では、児童相談所の体制・機能強化や子ども家庭支援センターとの連携強化などが提言されていますが、現状はどうでしょうか。担当者数の増員などの変化はあったのでしょうか。2番目の質問として、その後の対応状況についてうかがいます。
次に、里親制度の登録数・委託数について確認させてください。当区の実績数は他区に比べて多いと聞いていますが、いかがでしょうか。直近の区内の実績数をうかがいます。
里親制度のしくみは都のものであっても、当然ながら子どもは地域の子であり、養育家庭は地域に所属します。基礎自治体である区は、養育家庭との懇談の場をもつなどしてその実態・実情を把握すべきですし、里親の課題を区の子育て支援施策に位置づけるべきと私は考えています。冒頭で里子の死亡事件に触れたのは、もし里親制度が区の事業とされていたら事件を未然に防ぐことができたのではないか、と考えるからです。都と区の役割分担は今すぐというわけにはいきませんが、すぐにできることとして、区は里親家庭に対し必要な支援を行っていくべきと考えます。見解をうかがいます。
児童相談所の事業の区への移管については、今年になってようやく都区間の実務者レベルの調整がされていると聞いています。この進捗状況はいかがか、おうかがいします。
乳幼児の社会的養護については、国連が「家庭を基本とした環境で提供されるべき」と方針を示しているだけでなく、2006年には「児童に関する暴力の報告書」で「3歳以下の乳幼児の施設集団ケアは国家による子どもへの暴力である」と提言しています。幼ければ幼いほど、施設に入所させるのでなく100%家庭的養護とすべきです。
日本の社会的養護全体に占める里親委託率は、3年前の統計で10.8%となっていますが、自治体間の差が大きく東京都は9.2%と平均以下です。また諸外国の状況をみますと、約10年前のデータではありますが、委託率の最も高いオーストラリアでは92%、つづく米国は77%、イタリア、イギリスでは60%を超え、フランス、カナダは50%以上となっています。制度が異なるため単純に比較することはできませんが、日本との差の大きさにはがく然とします。
区は、乳幼児の社会的養護について、家庭的環境での養護の重要性をどのように認識しておられるでしょうか。見解をうかがいます。
つづいて、フレンドホーム制度についておたずねします。フレンドホームというのは東京都が家庭的養護の一環としてすすめている制度で、乳児院や児童養護施設に入所している子どもを数日間、最長で6泊7日間、家庭で預かるしくみです。里親制度とちがって家庭が直接施設に登録する方式ですが、里親となるにはハードルが高いけれど「週末や休日だけなら」と考える人は多いはずです。フレンドホームの経験者が里親になるケースもよくあるといいます。区内には、0歳から2歳児までの子が対象の乳児院2施設、3歳から18歳までが対象の養護施設が5施設あり、フレンドホーム制度の活用が拡がればと考えます。しかし、東京全体でもまだ実績が少ないと聞いています。制度活用の実績はどのくらいか、おうかがいします。
杉並区民の社会貢献に対する意識は他の自治体に引けを取りません。区民の里親はもっと増やすことができると考えます。子どもにとっても少しでも多く家庭的環境を体験できることは望ましいことであり、区としてもっと普及をすすめるべきと思います。見解をうかがいます。
さて、特別な配慮を要する子どもとして、東日本大震災で被災した子どものことを忘れるわけにいきません。
大震災から1年半たち、岩手、宮城、福島およびその他、被災地の子どもたちの日常にはあらたな課題やニーズが生じています。たとえば、そのような子どもたちに寄り添った支援活動をおこなってきたボランティア団体の報告では、近親者の喪失からくる孤立を口に出せないまま体にしみついていくこと、転居による住空間の問題、経済的な困難状態、不自由な状況下での受験、などが指摘されています。加えて、放射能汚染地域に住む子どもたちにとって、非汚染地での自然を満喫できるような保養の機会がたびたび必要であることは、多くの専門家の指摘するところです。
杉並区として南相馬市などの被災地支援活動もされていますが、区民による活動もさまざま実施されています。今年夏のお盆休みに実施された、福島県在住の親子に富士学園で3泊4日過ごしてもらう試みも、そうした取組みのひとつです。このような、被災地の子どもを対象とする区民の活動に対し、区はどのような支援や後援をしてこられたでしょうか。おうかがいします。
子どもの相対的貧困率が年々増大し現在約15%という日本の状況にあって、大震災のような緊急事態下では、社会が抱えるさまざまな問題が凝縮され、子どもに降りかかっています。被災地の子どもに対する支援は、子どもの権利条約にもとづく視点から、大人に対する支援とは別の意味で重要と考えます。成長過程にある子どもの育ちを支援するには、生活の細部に配慮した活動が必要であり、それは市民による草の根の活動が望ましいと考えます。区民が行う被災地の子どもの支援活動を、区は育て推進すべきと思います。見解をうかがって、2つ目の項目に移ります。
2番目、子どもの多様な学びの場の保障について、です。ここで「多様な学びの場」として採りあげようとしている、その代表格は、いわゆるフリースクールです。フリーとは「自由」の意味のほうで、フリースクールは子どもの立場に立った学校外の学びの施設を指します。
便宜上「フリースクール」という言葉で代表して質問を進めますが、ほかにも正規の学校として認められていない、シュタイナー教育、フレネ教育、モンテッソーリ教育、デモクラティックスクール、外国人学校、インターナショナルスクール、ホームエデュケーションなどがあります。これらもふくめて、フリースクールと呼ぶことにします。
学校に行けない、あるいは行かないことを選択する子どもの問題が表面化するようになった80年代半ば以降に、あるものは学校教育を補完するものとして、またあるものは新しい教育のかたちとして開設されるようになりました。いじめが深刻な社会問題として認識され、不登校が珍しいことでもいけないことでもなくなったいま、学校外の学びの場として実績をつくってきたフリースクールは、社会に必要なしくみとして存在感を増しています。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」には北海道から沖縄まで、現在45団体が所属しています。
それだけ社会的に認知されてきているフリースクールですが、多くは学校教育法が認めた機関でないため市民権が得られたとは言えず、財政面で不利益をこうむっています。一部の例外を除いて公的な資金援助を得られないからです。
今回、この問題について採り上げることにしたのは、子どもの多様な学びの機会を保障するための法律を作ろうとすすめられてきた、その動きを後退させたくないという思いからです。
この法整備の動きは、フリースクール関係者を中心に2009年にスタートし、この3年間、それぞれの子どもにとって最善の学びを選ぶ権利の実現のため、不登校の子どもの保護者や有識者、国会議員、教育関係者などを巻き込んで、法案づくりにも取り組んできました。めざすところは、学校外のフリースクール等を法的に位置づけ、それを選ぶ子どもや保護者が一般の学校に通う子どもたちと同じように公費助成を受けられるようにすることです。正規の学校教育からこぼれても学習権が保障されるように、教育の無償の原則が適用されるように、学校教育法とは別に法律で規定されることをめざしています。
フリースクールを選んだ子どもの多くは正規の学校に行けない・行かない、不登校の状態にあります。そこで、杉並区での不登校の状況を見ておきたいと思います。
不登校の子どもの数は国全体で増加傾向と言われますが当区ではいかがでしょうか。区内の不登校の子どもの数と、その推移をお示しください。そして、その子たちが不登校になった原因はおもに何ととらえておられるか。また、それに対する区の見解をうかがいます。
フリースクールなど学校以外の学びの場に通っている区在住の子どもの数と、その子たちが通っているフリースクール等の数を区は把握しておられるでしょうか。ひと口にフリースクールといっても、規模も形式もさまざまなので一括りにできないのですが、概況をつかんでおきたいのであえておたずねします。また、それらのフリースクール等と区との連携や交流はあるのでしょうか。併せておうかがいします。
不登校の子どもの学びの場として、当区では中学生対象のステップアップ教室に加えて、今年度から小学生対象のステップアップ教室が設置されました。これらの開設に至る経緯はどのようなものだったのでしょうか。またこれらの取組みを区はどのように評価しておられるのか、おうかがいします。
当区のステップアップ教室事業などの取組みを評価するものです。けれどもそこへすら行けない、それでも合わない子どもは確実に存在します。学校に行けない・学校が合わない子どもにとって、フリースクールなどの民間施設や居場所が、学びや育ちの場になっています。子どもの学習権を保障するための、公教育のすきまを補充する役割を果たす機関として、文部科学省もフリースクールなどの存在を認め評価しています。フリースクールに対する区の見解をうかがいます。
さて、先ほども申しましたように、フリースクールなどの多くは公的助成や税制優遇の恩恵が受けられないため、厳しい財政状況にあり、保護者の経済的負担も大きなものがあります。区内にあるフリースクールに対する支援や、区内の子どもが通うフリースクールへの支援など検討すべきではないでしょうか。最後の質問としてうかがいます。
いまを生きる子どもの現実が必要としているフリースクールを法的に位置づけ、学びの場を従来型の「学校」に限定せず多様なあり方を認めることは、区の基本構想で描かれた「多様な文化の共生社会を築く」という方向性にも重なるものです。
いま現在、国政は選挙前の混沌としたなかで向かう先が見えない状況ですが、多様に展開されてきた子どもの学びのありようが収縮するようなことにしてはならない、と強く思います。以上申し上げ、私の質問を終わります。
決算特別委員会 意見開陳 2012.10.4 そね文子
決算特別委員会に付託された2011年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し述べます。
当該年度は、3月11日、予算可決直後におきた大震災によって、区政は大きな影響を受けました。策定の最中だった基本構想は、審議会の議論の内容も変化し、結果として防災・災害対策が最大のテーマに急浮上した感があります。もし大震災がなければ、基本構想は良くも悪くも、ちがうものになっただろうと思います。震災直後に統一地方選挙が行われ、新たな区議会がスタートした年でもありました。
原発事故を受け、脱原発を求めるデモがさかんに開催されるようになったことは、市民が政治に対して自らの意思を示すようになった表れと前向きにとらえたいと思います。その動きは、今年、野田政権が民意を無視して敢行した大飯原発再稼働を受け、現在まで継続している毎週金曜日の首相官邸前デモへとつながっています。
この間の我が国の経済状況を見てみますと、2008年のリーマンショックからようやく回復に向かう兆しが見られた時期に大震災がおきたことで、個人消費が落ち込み、極端な円高による企業収支の圧迫や、さらなる雇用状況の悪化が進み、超少子高齢社会が進行する現在、景気の先行きは減速し続けるのが明らかな状況にあります。
それは杉並区においても、当該年度の特別区民税が5年連続で減り続け、収入未済額は所管の努力で前年度より改善したものの100億円を超えるという状況からも見て取れます。生活扶助費のさらなる増大にもそれが表れています。
経常収支比率が前年比で1.3ポイント下がり、単年度収支でみれば健全と言えても、持続可能な財政運営を継続する観点からみると、これからも不断の努力が強く求められます。
当該年度の区政全般において印象に残っていますのは、震災と原発事故直後の対応として、区民の放射能汚染に対する不安を受け、0歳児がいる家庭への飲料水の配布、空間・土壌や給食食材の放射線計測、除染など迅速に動かれたことです。また南相馬市への多面的な支援、自治体スクラム支援会議の設置と、意欲的に取り組んでこられたことに敬意を表したいと思います。
さて2011年度決算について、委員会の質疑で区長が繰り返し述べておられたような、財政のバランスに対する配慮を確認しました。限られた時間ではありましたが、いただいた資料をもとに施策の執行状況について調査を行った結果、小松久子、市橋綾子、すぐろ奈緒、そね文子は一般会計並びにすべての会計決算案にたいして認定すべきものと判断しました。なお奥山たえこは不認定とし、後ほど意見を述べます。
以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことや、再確認をお願いしたいことなど、何点か絞って述べさせていただきます。
まず防災についてです。
東日本大震災は、東京に暮らす私たちにとって、近々起きるであろう首都直下地震の発生を現実のものとして認識させるに十分でした。大震災後、防災をわが身のこととして捉え、実効的な備えをしようとする人が増えています。そのようなときに行政がすべきことは、住民の「お任せにしておけない。自ら備えよう」という緊迫した思いを捉えて、それを後押しすることではないでしょうか。住民が避難訓練をする場合、NPO法人や町会・自治会、防災会などの団体でないと区の施設、学校施設使用の敷居が高いのが現実です。そのうえ、使う施設によってそれは公園課、それは教育委員会、と窓口が分かれます。あれこれ規制するばかりでなく区民の立場に立って一緒に考えていただくことができないでしょうか。どうしたらできるかを一緒に考える窓口の設置を望みます。
加えて震災時に不足するトイレの問題を提起しました。都立和田掘公園にあるマンホールトイレの穴90個は東京都が掘り、ウワモノを区が用意しています。90のうち腰掛式つまり洋式は9個だけ。圧倒的に洋式が足りません。和式・洋式の数のバランスはこれで良いのか再考が必要です。
そのうえで、トイレは避難した人だけが使うという想定はすでに間違っています。断水になれば住民は仮設トイレやマンホールトイレを求めて震災救援所、広域避難場所、いっとき避難地、公園などに殺到します。それを想定すればトイレの数は必ず不足します。ご検討ください。
食物アレルギー対応食の備蓄を提案しました。もっとも多いと思われる乳製品、卵、小麦アレルギーの方達は既に用意されている白米が食べられますので、お願いしたいのは特に粉ミルクへの対応です。基本は各家庭で備蓄するものであることは承知していますが、火災によって焼失する場合も考えられます。アレルギー対応食はアレルギーがない人も口にすることができます。備蓄品の一部をアレルギー対応とすればすみます。ご検討を望みます。
放射能対策については、区民の強い要請を受け、ゲルマニウム半導体検出器を購入し給食食材の計測をしてこられたことを評価しています。今後も計測する食材の見直しを検討しつつ続けてくださるよう要望します。ただ一方で、区がこれまで顧問として、またシンポジウムのパネリストとして招いた専門家の方がたは、区民の気持ちに寄り添うというよりは、放射能の安全性を押し付けるような言動が目立ちます。今後は不安を抱えた区民が納得できるような専門家を、区民の意見も聞いて選定してくださるよう要望します。
行政評価と市民参加のあり方について述べます。
区は99年に行政評価制度を導入して以来、たえず見直し新しい試みを採り入れるなどされている一方で、区民による行政評価を受けることについては、区民アンケートなど「ご意見承ります」の広聴活動にとどまっています。いまひとつ積極性が見られないことに歯がゆい思いです。当該年度に初めて実施された、無作為抽出の区民による意見交換会にしても、幅広い年代層の区民が単に意見を出し合う場に終わってしまっています。それが意味のないことだとは決して思いませんが、せっかく集まっていただき、報酬を支払うのであれば、区民から密度の高い議論を引き出すような形に、さらに工夫し研究していただきたいと思います。そしてその評価を実際の区政にどのように生かしていくかについて、区の課題として、ぜひ取り組んでくださるよう要望します。
これからの協働のあり方について、有識者会議より新たな考え方が示されました。
大震災の教訓や、高齢者をはじめとして地域で孤立する人びとの問題が、「地域の絆」という言葉で表されるコミュニティーづくりの重要さを行政課題として突き付けています。このようなニーズがあるなか、これまでの「区とNPO」の間の関係というだけでなく、町会・自治会など地域の活動団体もふくめた協働をすすめようとすることは、時代の要請でもあり自然な流れだと思います。地域の現場で小さな実績を積み重ねながら、着実に進めていただきたい。区はそのための推進体制をしっかりと構築していただきたいと思います。
男女共同参画について申し上げます。
質疑の中で、男女平等推進センターの機能アップ、発信力の強化を求めたところ、現在策定中の「男女共同参画社会をめざす行動計画」のなかにしっかり書き込んでいくとの答弁をいただきました。しかし、そもそも行動計画とはどういった基本理念に基づくものなのでしょうか。当区には、計画の方向性
や具体性を鮮明にするような法的根拠となる「男女共同参画推進条例」がありません。前々回、2007年度の行動計画では「他の自治体の条例を調査・研究する」としていましたが、2009年度ではこれが消えています。行動計画をしっかり進めていく上でも、「杉並区男女共同参画宣言都市宣言」15周年にあたる今年、ぜひ、根本からの議論をして条例の制定に向けての取り組みを進めていただきたいと思います。
保育について申し上げます。一人親家庭の認可保育園への入園率が低い状況を指摘しました。年収1500万円をこえる高所得の家庭は660人が入園できている一方で、平均収入が181万円の一人親家庭が年間50人も断られ、認可外保育園に子どもを通わせています。保育園の入園については、保育に欠ける児童の中でも優先度が高い世帯に対し、公平な受け入れ体制ができているのか、大いに疑問があります。入園選考基準において、収入を考慮するなど指数加算項目の見直しを強く要望しいたします。
学童クラブへの通所ボランティアの活動現状について伺ったところ、現在、登録している29名全員がフル稼働されている状況です。万一、対象となるお子さんが増えた場合、担い手がすぐ見つかるとは限りません。地域の支え手を増やすには、単にボランティア登録を募るのでは少々配慮不足ではないでしょうか。障がいについての学習会、講演会など、学んで理解する場をつくり、そこを通して登録する人を増やすなどの工夫が必要だと考えます。どの子どもも、どの子育て家庭も地域で支える、地域で子どもを育てる、そういう杉並区をめざしていただきたいと考えます。
殺虫剤の使用についてうかがいました。
殺虫剤の成分は農薬と同じで、虫の神経を壊す働きがあります。それは人の脳へも影響があるという調査結果も示されています。保育園や学校での殺虫剤の使用については慎重に、万一使う場合は極力量を控えていただくよう要望します。また給食室で使用する洗剤には石けんを、手洗い用のせっけんについては多くの学校が使用している無添加石けんの使用を広げるよう求めます。厨房で働く人や子どもの健康を守るため、また水循環に影響を与えないために、合成洗剤の使用をできる限り減らす努力をしてくださるよう要望します。
環境問題に関連して、省エネについてです。区がこれまで様々な努力をしてこられたことは評価しています。しかし、今後原発に頼らないエネルギー社会をつくるために、さらなる省エネ対策が欠かせません。特に大型施設については、無理なく、工夫次第で大幅に省エネできる余地が残されています。提案させていただいた無料の省エネ診断を受けるとの答弁がありましたので、その結果を踏まえて、引き続き積極的に対策を進めるよう要望します。
耐用年数を過ぎている照明器具の入れ替えについても、省エネ効果と区財政に与える影響は大きいため、費用対効果を十分に検討し、計画を策定することを要望いたします。
中学生環境サミットを全中学校の参加で、「持続可能な発展のための教育=ESD」の一環として行ってほしいと思います。新学習指導要領にも明記された、持続可能な社会の実現をめざす教育活動として、中学生環境サミットを教育委員会が、杉並区版エコスクールの環境教育、環境配慮行動に位置づけ、ぜひすべての学校に広げていただくよう要望いたします。
学校における災害事故の質疑を通して区の危機管理を問いました。
質疑の中では触れませんでしたが、中学校で武道が必修科目とされたのは、そもそも2006年の教育基本法改定に端を発しています。当時の政権のもと、「伝統と文化の尊重」がことさら強調された内容に書き換えられた結果、教育的見地からの議論はもとより国民的な盛り上がりも皆無であったのにもかかわらず、学習指導要領に武道の必修化が盛り込まれたことは、教育政策のあり方として大いに問題があると考えます。
そうは言っても、教育現場に責任を負う行政が最優先すべきは、子どもが安全に学ぶ環境整備です。質疑では、おもに柔道に言及しましたが、柔道に限らず、事故をおこさないためのルール作りとその徹底、また万一の場合に備えた対応策について、常に点検し折に触れて見直してくださるよう求めます。学校におけるスポーツなどの災害事故が、係争事件に発展している事例が全国で、決して少なくないことを忘れてはなりません。そして、問題が起きてしまった場合の、訴訟によらない、人的な解決をめざす第三者機関の設置を検討されるよう、再度求めるものです。
教育に関連して、教育委員会のあり方について若干述べます。
大津市のいじめに関する一連の事件で、教育委員会の対応のずさんさが次々に報道され、これがひとつのきっかけとなって、いま教育委員会不要論や「教育行政を首長のもとに」という議論を呼んでいます。いずれ、教育委員会制度は見直される時期が来るとは思いますが、杉並区の教育委員会においては、教育の執行機関として職責を誠実に果たし、その存在意義を発揮してくださるものと期待しています。
今回、区長のご答弁で印象に残っているのは、南伊豆健康学園の跡地利用について、国や都からの決まりだからといってあきらめるのではなく、正しいあり方を提案して行くのが最前線でやっている区の役割だと述べられたことです。同じことがエネルギー政策についても言えるのではないでしょうか。多くのパブコメに押され、政府は2030年代に原発ゼロを打ち出しましたが、それは閣議決定されず、大間原発建設再開を認めたことで国民からの信頼は地に落ちた状況です。杉並区は国に合わせて後退するのではなく、地域エネルギービジョンの策定にあたっては、ぜひ地域から省エネ、創エネに取り組み、原発や化石燃料に依存しないことを明確に示して下さるよう要望します。
さて、冒頭でデモについて申し上げました。地方に交付金をつけて危険な原発を押し付けてきたことに目が向けられ、都会の消費者が原発を自分の問題としてとらえるため、今年、原発稼働の是非を問う「都民投票条例」の制定を求めて、都知事に直接請求が行われたことは特筆すべきことです。昨年から今年にかけて必要署名数22万筆を大きく上回る32万人の署名が集まったことに、市民の政治参加意識の高まりが表れています。
尖閣諸島の領有権問題など東アジア情勢はこれまでになく緊迫した情勢ですが、それを助長する報道ばかりが多いことに危機感を持っています。私は以前の勤務先の関係で、中国、韓国をはじめ多くのアジアからの留学生と付き合ってきましたが、その交流は国同士がどんな状態にあっても変わるものではありません。市民の草の根交流から国際理解と平和に取り組むことがもっとも有効だとかんがえます。こんなときこそ、友好都市協定を結んでいる韓国ソチョ区との交流を大切にし、区が率先して国際平和への態度を示していただきたいと思います。
最後になりましたが、決算審査にあたり資料の調整に尽力くださった職員の皆さまには、この場をお借りしてお礼を申し上げます。今回使わなかったものについても、今後の政策提言に生かしてまいります。以上をもって、意見といたします。