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第3回定例会一般質問  2012.9.6小松久子

『杉並区版エコスクール事業の推進について、いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて』

 私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、杉並区版エコスクールの推進について、いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて、以上2点質問いたします。

 まず杉並区版エコスクールの推進についてです。ここでわざわざ「杉並区版」としているのには理由があります。後でも述べますが、杉並区独自の事業としての「エコスクール事業」について評価する立場から、基本的にこれを推進していただきたいという趣旨での質問であることを、最初に申し添えておきます。

 でははじめに、エコスクールの前提となる区の環境政策に関して質問いたします。区の施策体系の最高位にあたる基本構想が今年3月に策定され、環境に関しては「持続的発展が可能なまちづくり」「自然環境と人との共存」「環境に関する自発的な行動」などが将来像として描かれています。環境基本計画はただいま改訂の作業中ですが、並行して地域エネルギービジョンの策定作業も進めるなど、杉並区の環境政策にかける意気込みは、決して他に引けを取るものではないと思います。ただ、それにしては田中区長が就任されて以来、ご自身の環境問題に対するメッセージはあまり伝わってきません。最初の質問として、環境先進都市を標榜する杉並区のリーダーとしての、地球環境問題についての区長の認識をおうかがいします。

 環境教育の基本認識についてもうかがっておきます。総合計画でうたわれている「環境を大切にする生活スタイルの推進」を実現するには、区民への啓発や学校教育・社会教育との連携が欠かせません。区の教育方針で示される必要がありますが、教育ビジョン2012の「目指す人間像」の項目で「育みたい力」に示された「持続可能な社会を目指し、次代を共に支えていく力」はこれに呼応していると思います。区の環境教育およびエコスクール事業はこの力を育てるものととらえますが、この認識でよいでしょうか。区の環境教育に対する基本認識について、教育長の見解をうかがいます。

 さて環境政策と環境教育の基本を押さえたところで、「エコスクール」という概念がどこでどう始まったのか確認しておきたいと思います。

 「エコスクール」の概念は、そもそもはヨーロッパで先行して提唱されています。日本では1996年に文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省庁の協力により研究者会議が設置され、出された「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進について」という報告書が、国の政策に初めて登場した場面だったようです。国は翌年、「エコスクール・パイロットモデル事業」を文科省、農水省、経産省、国交省の4者の連携でスタートさせ、一方、環境省はエコスクールとは別に2003年に「エコフロー」というプロジェクトを文科省、農水省、経産省との連携でおこし、いまに至っています。

 杉並区では、環境教育・環境配慮に対するさまざまな取組みを経て、山田前区長の「学校の普通教室にクーラーは設置しない」という政策を前提とし、学校施設における環境施策が進められてきました。2006年、庁内組織で検討された「風とみどりの施設づくり」が提案され、つづく2007年には学識経験者や建築家、学校関係者、環境団体なども交えた第1次エコスクール化検討懇談会が設置されて「環境共生型学校施設」整備が提案されました。これが実質上「杉並区版エコスクール」のスタート地点であり、その後、第2次エコスクール化検討懇談会における検討をへて出された報告書「杉並区版エコスクールの推進」の中で、「既存校におけるエコスクール化の推進」が述べられ、現在につづく「すべての学校をエコスクールに」という方針のベースになっている、と理解しています。

 すなわち、建て替えにより環境配慮型の新しい設備を取り入れた校舎だけが「エコスクール」なのではなく、既存校をふくめて区内の全校がそれぞれに工夫を凝らした「エコスクール」であり、ハード面だけでなく環境教育、環境配慮行動をふくめて3つの柱が同時にすすめられることが「杉並区版エコスクール」の定義である、と理解しています。この認識でよいでしょうか、区の見解を確認しておきたいと思います。

 さて、「杉並区版エコスクール」はその後、高井戸小、方南小、荻窪小、松渓中、天沼小の全面改築ないしは新設に伴い、クールヒートトレンチやナイトパージなど新しいシステムが導入されて注目を集める一方、既存校における「エコスクール化」も進められてきました。しかし新しいシステムは費用対効果や現場での管理・運営において課題が明らかになり、また、田中区長になって以降、「すべての普通学級にクーラーを設置する」という方針が打ち出されたこともあり、行政監査を受けて今年2012年、事業が見直されることになりました。ここに至るまでの、エコスクール事業の進捗状況について概要をお示しください。

 また、今年5月に出された杉並区エコスクール事業検討委員会の報告書が示す方針転換について、その概要をお示しください。

 杉並区版エコスクール事業は3つの柱が同時進行するのが特徴だとたびたび説明されてきています。ところが、実際にはハード面とソフト面が切り離され、また先に述べた行政監査で指摘されているように、ハード面だけみても既存校と改築・建設校で区の担当が異なるなど、事業自体を一体としてとらえられてこなかった感があるのは事実です。区においてエコスクール事業を担当する所管組織は何度か変更されてきましたが、今年4月の組織改正で学校整備課が新設されました。その意図と経緯について、おうかがいいたします。

 環境に配慮した施設運営や管理の方法は、学校ごと、教室ごとに違うはずです。学校が立地する地域の状況や、校舎内の教室の位置、日照条件などをきめ細かく調査し、省エネ対策を立てるべきと考えます。環境省が作成した「エコ改修後の学校で快適に生活する運用ガイド作成のための手引き」などには、具体的メニューも掲載され参考になりそうです。建築や環境の専門家の協力を得て、学校ごと、教室ごとに省エネのための小改築や省エネ行動マニュアルを作成すべきと考えます。いかがでしょうか、うかがいます。

 つづいて環境教育についておうかがいします。

杉並区の環境教育は、中学生環境サミットの活動などにみられるように、環境団体や地域住民の協力を得て行われてきています。ところが、学校施設の改築・改修や省エネ行動と有機的につながってきたとは必ずしもいえません。行政監査報告でも「エコスクール事業全体をコーディネートする部署が必要」と指摘されているように、事業の3つの柱を一体的に推進する体制を整備する必要があるのではないでしょうか。区の取組みについてうかがいます。

 私はさらに、各学校でこの事業を進めるための体制として、教職員、児童生徒、保護者、地域住民、専門家、活動団体など関係者間の連携をはかり事業の効果を検証しつつマネージメントを行う、また、その学校での主体的な取り組みをサポートするコーディネートチームが必要だと考えています。参考にしたいのは荻窪小学校のケースです。荻窪小では、2008年、校舎のエコ改築の工事段階から人工環境や自然環境を生かした環境学習をスタートさせ、現在も地域の人たちや専門家との連携による自主的な取り組みが継続していますが、そのきっかけは地域団体のメンバーや建築系の専門家の協同での事業提案から始まりました。このようなつながりを生かしたチーム編成が望まれます。これは指摘にとどめておきます。

 環境教育について最後にもう1点、ちょうど2年前の9月議会の一般質問で採り上げた、ESD「持続可能な発展のための教育」に関連して、おたずねいたします。ESDEducation for Sustainable Deveopmentの略で、日本語訳は「持続可能な発展のための教育」または「持続可能な社会づくりのための教育」ともいわれます。

 小学校で昨年、中学校では今年改訂された新学習指導要領では、環境教育における留意点として「持続可能な社会の構築」が挙げられました。これは、国際的なプロジェクトであるESD推進の動きともフィットします。区の施策体系においても、基本構想、教育ビジョンのいずれでも「持続可能」という言葉がキーワードとして使われており、方向性は一致します。

 以上のようなことから、杉並区の環境教育を「ESD」という言葉で大きくとらえ直してみてはどうでしょうか。一昨年の一般質問での、当時の済美教育センター所長のご答弁では「杉並区としては従前より環境教育にも、国際理解教育にも力を入れ、ESDの考え方は十分反映させてきた」と述べられ、「あえてESDという言葉を使って再構築する必要はない」という趣旨の見解を示されています。しかし、何か別のジャンルとみなされがちな、人権教育や国際理解教育、伝統文化を学ぶ教育などが、実は、人と人、人と自然が協調しあいながら生きる持続的な社会を形成していくための関連した学習と捉えると、教科学習も含めた多様な学習が太い線で結ばれ、大きな教育目標を達成するための効果をあげると考えます。「ESD、持続可能な社会づくりのための教育」をそのためのキーワードとして共有化するべきではないのでしょうか。

 すでに環境問題をはじめさまざまな教育課題に対し横断的に取り組んできている杉並区であれば、これをESDとしてとらえ直すことで、理解がより深まり、視点を整理して新たな価値観を共有することができると考えます。国連で採択された「ESD10年」の最終年である2014年がすぐ間近に迫った今なお、杉並においてこの言葉自体の認知度が決して高いといえないのは残念なことです。

 日々膨大な課題を抱えている学校現場への負担が小さくてすむように、教科学習やすでに実施されている総合的な学習・環境学習のプログラムを上手に組み合わせ活用するなど、工夫して進めることができるはずです。独自のエコスクール事業を推進する自治体として、ESDに積極的に取り組むべきと考えます。いまこそ、モデル校を設置してESDに取り組むべきではないでしょうか。見解をうかがって、次の質問に移ります。

 つづいて「いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて」です。

昨年10月、滋賀県大津市でいじめを受けていた中学2年生の男子生徒が自殺し、子どものいじめの問題が今また大きな社会問題としてクローズアップされています。つい昨日も、札幌で中学1年生がいじめを訴えるメモを残して亡くなっています。新学期が始まった直後の今の時期は、いじめを受けている子どもにとって不安がふくらむときです。まさに要注意時期といえます。

 これまでにいったい何人の子どもたちがいじめによって自ら命を絶っていったでしょうか。もう2度とそのようなことは起きてほしくない、と痛切に思います。ついに文科省もこの事態を深刻に受け止め、国が主導して対策に取り組むための方針をまとめました。しかし私は、社会から犯罪を追放することができないように、学校のような閉じられた空間での集団生活の中でいじめは「なくすことができないもの」と認識するところから始めるべきだと思います。

 ただし、それでも子どもの命と権利だけは大人の責任としてしっかり守る、そのためにすべきことを考えたいと思います。そしてできるだけ、いじめをおこさない知恵と工夫についても、あとで述べたいと思います。

 まず、いじめの定義についてです。文科省は20061月、いじめの定義を変えました。それまでの「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」という定義から「子どもが一定の人間関係のある者から、心理的・物理的攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と変更し、「いじめか否かの判断は、いじめられた子どもの立場に立って行うよう徹底させる」としました。いじめられる側により近くよりそったものになったと思いますが、区の認識はいかがでしょうか。うかがいます。

 当区におけるいじめの認知件数、その経年変化をうかがいます。また、自殺の原因が疑われるなど深刻な状況を招いた事例はないか、警察がかかわったケースはあるのか、おうかがいします。一般に、小中学校のうちでは中学校が、特に中1にいじめが多いとされますが、当区の場合はいかがでしょうか。あわせてうかがいます。

 いじめについて、区は実態を把握するためのアンケート調査を実施されておられるとのことです。その内容、方法など概要をお示しください。またその結果と、それに対する区の見解をうかがいます。

 ところで文部科学省は、いじめをふくめて暴力行為、出席停止、不登校など問題行動全般について、毎年「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題」に関する全国調査を実施しています。公表されている直近の調査結果では、調査方法を改めた2006年度以降を見てみますと、2009年度までは認知件数が下降線をたどっていますが、2010年に小中高ともすべて増加しています。この数字をどう見るか、お考えをうかがいます。

 同じく文科省調査についてです。「相談の状況」についての設問に対し、相談相手として学級担任をはじめとする学校関係者や保護者・家族が多く挙げられていますが、電話相談をふくむ学校以外の相談機関にアクセスしている状況が見てとれます。また小中とも「だれにも相談しない」のが約7%。しかし高校生は14%です。この数字は、年齢が上がると学校内の取り組みだけでは不十分であり、学校の外に子どもを支援する仕組みが求められることを表していると考えます。

 実際、子ども専門の電話相談「チャイルドライン」には大津市の事件があって以来、いじめに関連する相談が増えたと聞きます。また今ごろの時期には、再開した学校生活に不安を訴える子どもの声が多く寄せられるのだそうです。行政が直接運営にかかわるホットラインとは違って、民間だからこそ子どもにとってアクセスしやすい面があります。けれども杉並区内にはまだ活動の拠点が持てず、区内の子どもがかける電話は他の区市で受電されている状況です。身近な地域で活動できるよう、区は支援すべきではないのでしょうか。これも昨年第1回定例会の一般質問でうかがったことですが、あらためてお聞きします。

 さて、公の調査は重要ですが、子どものいじめに関しては数字に表れない部分が必ずあることを承知しておかなければなりません。いじめが認知されないからといって実際にいじめが存在しないとはいえず、むしろより注意深く子どもの状況を把握する必要があるのではないでしょうか。子どもがいきいきと生きる権利が保障されるために、いじめられたら逃げること、逃げる場所は必ずあることをメッセージとして伝える必要があります。身体を傷つける行為や、窃盗などの犯罪をそそのかす行為はそれ自体が犯罪であり、罰せられるべきであることを教育の場できちんと伝える必要があります。子どもを犯罪者にしないことは教育の使命です。区の見解をうかがいます。

 杉並区ではスクールカウンセラーの全校配置に加えて学校司書が全校に配置されるなど、従来からの養護教諭もふくめて、いわゆる「先生」でない大人が校内に存在しています。またスクールソーシャルワーカーも導入され、区が教育と福祉の連携に努め実績を積んでこられていることを評価しています。いじめの対応には、これら教員以外の職員等もふくめてチームで連携する体制が求められます。区の見解はいかがでしょうか。おうかがいします。

 学校でのいじめの情報が区に提供された場合、だれが、どのように活動するのか、実際の例を挙げて説明をお願いしたいと思います。保護者から「自分の子どもがいじめられている」という通報、また保護者ではない人から、「ある子がいじめられている」という情報提供があったとすると、だれが、どのように動いて解決に向かうのでしょうか。また「ある子どもがいじめに加担しているらしい」という場合はどうでしょうか。

 いじめは、学校という閉ざされた空間でおこる必然だという論考にしばしば出会います。最近読んだ本では「閉鎖空間でベタベタすることを強制する」環境がいじめを生む、ということが書かれていました。競争をあおる成果主義や、みんな同じ色に染める全体主義を原因に挙げる主張にも、うなずけるものがあります。でももし学校が風通しのよいところで、子どもが自他ともに尊重しあえる空間だったら、いじめは起こりにくいのではないでしょうか。

 そのような意味で、予防策として効果的と思われるものに、「構成的グループエンカウンター(SGE)」というプログラムがあります。本音を表現し合い、それを互いに認め合う体験を通して関係を築くことができるようになり、いじめを生じさせない学級・学校づくりに効果があると評価を受けています。

 杉並区でも、中瀬中学ではこのプログラムに精通した校長の指導のもと、2008年から2009年度にかけ教育課題研究指定校として、「豊かな心を育む教育プログラムの開発」と題した構成的グループエンカウンターに取り組みました。取組みはその後も継続し、生徒間、生徒と教職員との間、さらには保護者同士の良好なコミュニケーションを生み出す効果をあげていると聞いています。人が互いを尊重しあえるためには、まず自分自身と互いを知ること、違いを認めることが重要ですが、このプログラムがそのために有効であるならば、この実践を他校にも広く展開されてはいかがかと思います。お考えをうかがいます。

 最後に、いじめだけでなく子どもの権利が侵害されたときの擁護のしくみとして、オンブズマンに関しておたずねします。

 兵庫県川西市や川崎市では、子どもの権利を救済するしくみとして子どものためのオンブズマン制度をもっています。国連子どもの権利条約に照らして子どもの人権を尊重する立場から、問題解決のための活動を行う担当者をオンブズパーソンと呼んで行政に位置づけています。

 川西市の場合は1998年「子どもの人権オンブズパーソン条例」を定め、オンブズパーソンを「子どもの利益の擁護者・代弁者」「公的良心の喚起者」と規定しています。職務としては「子どもの人権侵害の救済に関すること」「子どもの人権の擁護と人権侵害の防止に関すること」「それらのために必要な制度の改善などを市長などに提言すること」の3点を挙げ、調査権や指導権が与えられているばかりか、市の機関、たとえば教育委員会に対してさえ、制度の改善を申し入れすることもできます。つまり、公的第三者機関として大きな権限が保障されているのです。現在は心理や教育の専門家、弁護士など3人が市長の任命を受けて活動しています。

 子どもの権利擁護のための第三者機関は、国連子どもの権利委員会から日本政府に対し設置を勧告されています。にもかかわらず、日本ではまだ広がっていない現状ですが、ヨーロッパ各国では一般的な制度です。杉並区でもオンブズマン設置を検討すべきではないのでしょうか。見解をおうかがいして、私の質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ85号 2012.7.25発行

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第2回定例会一般質問 2012.6.8 市橋綾子

私は生活者ネット・みどりの未来の一員として、杉並区まちづくり基本方針について、


進行管理と進捗評価 2改定に向けた市民参加 3まちづくり活動支援のあり方、以上3つの視点から質問します。 


 


1992年の都市計画法の改正により、市区町村が都市計画基本方針、つまり「都市計画マスタープラン」を策定する権利と義務を持つことになりました。策定に当たっては、市民参加でつくること、地域別計画を策定することが定められ、1997年、当区でも初めて市民参加で都市計画マスタープランがつくられました。区が作成した素案を「たたき台」とし、これをもとに説明会やポスターセッションが開催されました。ポスターセッションでは、パネルに貼った素案を来場した区民に職員が説明を行い、区民の意見を聞きとり、またシンポジウムを開催して、ここでも来場者から意見を聴取しました。それらの意見を整理・検討して修正案が作成され、さらにはこの修正案に対しても意見提出を募るなど、丁寧な市民の声の聞き取りが行われました。


 


この取り組みは、当時都市マスへの市民参加のあり方を探っていた他自治体職員や市民に先行事例として、あちこちで紹介されていたことを、私自身もまちづくりの仲間とともに都市マスへの市民提案活動をしていたのでよく覚えています。現在はどうでしょうか。当区より後に策定した自治体の都市マスには、市民参加の手法や市民参加で点検・評価を行う見直しのルールなどが規定されるなど、当区よりも一段と進んだ市民参加のしくみが盛り込まれています。このようにして策定した都市計画マスタープラン「杉並区まちづくり基本方針、以下基本方針と申しあげますが、基本方針が5年後の2002年、基本構想「21世紀ビジョン」に整合させるために見直しが行われて現在の基本方針ができ、そして10年が経過したいま、「基本方針」改定の時を迎えています。まず、確認のために2点基本的なことをうかがいます。


まちづくり基本方針(都市計画マスタープラン)とは自治体の行政計画においてどのような位置付けにあるものでしょうか、伺います。また、今回改定する理由と方向性についてもうかがっておきます。


私は、今回の改定は「震度7をどう生き残るか」を最大のキーワードとし、その解決のために集中投資をする覚悟を基本方針でどう表すのか、ということが最も重要と考えます。ここに注目していきたいと思います。


 


それでは1つ目の視点、「基本方針の進行管理と進捗評価について」うかがいます。


基本方針が描くまちの将来像を実現するには、進行管理と進捗度の評価が重要であることが、都市計画の研究者たちから指摘されています。しかし、基本方針は事業を具体化する実施計画と連動していないため進捗状況が点検・評価しにくいということも言われています。そこでうかがいます。当区において、基本方針の進行管理はどのように行っているのでしょうか、お答えください。また、評価のしくみについてもうかがいます。都内では練馬区が住民参加、情報公開、協働の状況、地域別まちづくりの進捗状況などを評価し、結果を公表しています。国立市は5年ごとに都市マスの評価と見直しを「都市マス評価等市民会議」を設置して行うなど、評価のしくみを持っています。当区としても区民にわかりやすい進捗度を評価するしくみをつくるべきと考えますがいかがかでしょうか。併せておたずねします。


 


  2つ目の視点、「基本方針の改定に向けた市民参加」について2点うかがいます。


 515日の杉並区都市計画審議会で、基本方針改定に向けて、「まちづくり基本方針検討委員会」が設置されたこと、改定に向けたスケジュール、今年2月に行った「まちづくり区民アンケート」の調査結果などが報告されました。


そこで1点目として、改定スケジュールについてうかがいます。9月に骨子案を公表し区民意見交換会を7地域で実施、11月に素案の公表とパブコメの募集、来年1月都計審への諮問、2月に都計審の答申、区議会への報告を経て、3月、新基本方針の決定となっていますが、そんなに急ぐ必要があるのだろうか、と思います。先の3月に策定された新基本構想では「参加と協働による地域社会づくり」が掲げられ、基本方針には「住民主体のまちづくり」が謳われています。また、まちづくり条例の基本理念には、「区、区民、事業者は、まちづくりに関する必要な情報を共有し、対話を進め、区民の意思が尊重されるまちづくりに取り組むものとする」と書かれています。


 


ところがこのスケジュールを見る限り、見直しの主体は行政で、区民はお客さま、という姿しか見えてきません。法改正で、都市マスに「住民参加」が入った意味は、そのまちに暮らす住民が主体的にまちづくりに取り組み、責任も持つ、ということと理解しています。これは改定に対しても同じではないでしょうか。住民が参加して、何ができて何ができなかったか、を点検評価して情報を共有化し、区とともにまちづくりの方針をつくっていくことが大事だと考えます。


 


2002年から10年間の進捗度を区民とともに点検し、重点的に見直す箇所を骨子案の公表時に発表して区民の方たちと意見交換を行ったり、たとえば7つの地域で住民の方たちが地域別方針の策定作業に参加するには日にちが足りません。来年3月にこだわらず、まちづくり条例の理念に沿って、ともに情報を共有し、対話を重ねたうえで改定すべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解をうかがいます。


 


 2点目、「まちづくり区民アンケート」についてうかがいます。


今回の改定にあたり、当区では今年2月、「区民意見を反映するために講ずる措置」の1つとして、無作為抽出した18歳以上の区民5,600人にまちづくり区民アンケート調査が行われました。


今回、アンケートの対象者を18歳以上とされました。私どもは「子どもも区民」、聞き取り方の工夫によって子どももしっかり自分の意見を述べることができると考えています。まちづくりは大人だけのものではありません。小学校、中学校、高等学校の子どもたちが都市マスに意見を出す機会をつくれないでしょうか。たとえば、どんな遊び場が欲しいのか、コワイと思う道はどこか、困っていること・不便に思うことは何か、などを学校や児童館、ゆう杉並、学童クラブ、地域のスポーツクラブなどで聞き取ることはできないのでしょうか。基本方針のなかにも「子どもの頃からまちづくりに親しめるよう、小・中学生を対象にしたプログラムの実施、地域学習の機会を設けていく」と書かれています。


 


そこで伺います。子どもたちのまちづくりへの参加の意識を高めるために、これまでどのような取り組みがされているのでしょうか。また、その取組みの結果、どのような効果があったのでしょうか。お答えください。教育は結果がすぐに出るものではありません。大事なのは「まちづくり」に触れた経験を、今後どう伸ばしていくのかだと思います。今後どう取り組んでいかれるのかうかがいます。


 


今回は、前回の見直しの時に行われた区報や区のホームページでの意見募集は行われませんでした。住民の意見聴取の機会が減っています。今後、進めていく段階でできるだけ区民と話し合う場、意見交換をする場を意識的につくっていただくよう要望します。


 


3つ目の視点、「区民が主体的に行うまちづくり活動への支援のあり方」について5点うかがいます。


冒頭でも述べましたように、1992年の都市計画法改正によりまちづくり基本方針に市民参加が謳われ、これを契機に市民によるまちづくり活動が全国的に活発になりました。当区においても1995年に杉並区まちづくり公社の事業として「街づくり助成制度」がスタートしましたが、2000年公社が廃止されたことにより杉並区まちづくり推進課に引き継がれ、今日に至っています。


そこで1点目の質問です。区が市民のまちづくり活動を支援する目的は、自治基本条例でも謳っているように、自分たちのまちは自分たちの手でつくる、地域の問題は地域で話し合って解決する、という、地域自治の醸成と仲間づくり、コミュニティづくりの応援であると理解していますが、区の認識はいかがかでしょうか、お答えください。


 


2点目です。この助成制度は2009年からハード面の活動団体への助成に絞られました。その結果、まちづくり公社時代の1999年には23の団体から応募があったのが、昨年度は7団体でした。以前のぎょうにんべんの「街」という字を使った「街づくり支援要綱」の時は、勉強会やまちづくりイベント、AEDの操作方法の研修など仲間づくり、たすけあいの活動も助成対象でしたが、現在のひらがなの「まちづくり助成要綱」に変わった2009年から道づくり、建物調査、川づくりなどハード面「市街地形成のための活動」になっています。「市街地」とはどういうものを指すのでしょうか。私は「人が住む良好な生活の場」であると考えます。「人が住む良好な生活の場」を地域住民が手を出し口も出し、そして支え合い、助け合って地域のなかにつくることが「まちづくり」ではないでしょうか。


 


阪神淡路大震災以降、ハード面だけでは人の暮らしは成り立たない、支え合いや助け合いがまちには必要、と言われてきたにもかかわらず、ハード面の活動に限定するのは違うと思います。基本方針にも、「区民が主体的に行うまちづくり活動を応援する」と書かれています。助成対象は広くあるべきで、ハード面に関する活動だけに限定すべきではないと考えます。対象を広げる検討をすべきと考えますがいかがかでしょうか、うかがいます。


 


3点目です。現在、まちづくり活動助成の応募資格に、びぎなーコース、すてっぷコースの2コースがあり、それぞれ助成金額の上限が3万円、7万円と差がつけられています。しかし、コースによって活動内容に違いがあるわけではありません。充実した活動ができるよう、コース別を廃止し、これまでと同様に上限をたとえば10万円とし、審査の場で活動内容を審査することによって助成金額が決まる方法にすべきと考えますがいかがでしょうかお答えください。


 


 4点目です。まちづくり公社時代から数えてまちづくり活動助成事業は今年で17年目を迎えています。私はこの事業が誕生した時から、ある時は助成を受ける側になり、またある時は活動報告を聞く側になり、とこれまでこの事業を見守ってきました。その立場から見て、これまで区は区民の「活動」に対して支援してこられましたが、「人づくり」に対してはまだこれからという状況だと思います。横浜市のまちづくり事業、「ヨコハマ市民まち普請事業」が参考になるかと思います。


 


身近なまちの整備に関する提案を募集し、公開コンテストで選考された提案に対し最高500万円までの整備助成金が任意団体でも交付されるものです。選考されると専門家が派遣され、アドバイスを受けながら自分たちで業者選び、その地域にあった必要な整備事業の契約、発注の一切を行います。たとえば、民家の塀によって見通しが悪く、事故が多発する交差点を、塀の持ち主と交渉しながら理解を得て、大きく斜めに隅切りをしてポケットパークに変えると言う工事が「ヨコハマ市民まち普請事業」の制度を使って行われています。


 


今年当区は区政80周年を迎えます。これからのまちづくりを展望したとき、身近なまちの整備を区とともに担える人材育成が欠かせません。これからのまちづくり活動助成のあり方として、そのような視点から、住民自治が進むような人づくりに向けた取り組みが重要であると考えますが、区の見解はいかがかでしょうか。うかがいます。


 


5点目、最後の質問です。基本方針のなかに、住民参加によるまちづくりの進め方の例示が書かれています。「住民と行政がともにつくる杉並のまちづくりには、広範囲な住民との合意形成を行うことが必要」とありますが、これは住民同士も同じことです。そのための合意形成力を身につけることが必要です。横浜市には「合意形成ガイドライン」がつくられています。これは地域で何かを決める、何かを行おうとするときに、多様な意見を適切に調整しながら地域全体の意向としてまとめるためのマニュアルです。これまで横浜市のまちづくりの現場で起きた事例が数多く紹介されています。


現在22の協議会ができているようですが、特に地区計画策定の時や反対運動が起きた場合にこのガイドラインが使われ、現場での議論に役立っているとのことでした。当区でも、まちづくり現場での成功した例、失敗した例が数多くあると思います。失敗例を含めてそれらは区と区民の宝です。今回の改定を機に、当区としても事例を生かしつつ合意形成のためのガイドラインの作成を求めるものですが、区の見解をうかがいます。


 


最後に。私もまちづくり活動を行うなかで経験したのですが、まちづくり活動の相談や、助成金の申請は、普通の市民にとってハードルが高いものです。まちづくり推進課はカウンターテーブルも低くして椅子も用意して区民の来庁に備えていますが、気軽に相談してみよう、申請してみようとならないのはなぜでしょう。一般市民の言葉と役所の言葉を通訳してくれるところがあるとだいぶ違うと思います。そこで「まちづくりコンシェルジュ」あるいは「まちづくりセンター」の設置を提案いたします。相談・助言・支援・情報提供などを各専門別の組織が対応するのではなくまとまった拠点で対応するものです。まちづくり条例の中にも、まちづくりに関する知識の普及、情報の提供、都市像の共有などの必要性が規定されていますが、具体的な規定はありません。検討をお願いいたしまして私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問  2012.6.8 そね文子

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、子宮頸がん予防ワクチンの接種の課題と今後のあり方について、質問します。



 今回この問題を採りあげることにしたきっかけは、中学1年の娘を持つ友人達が、子宮頸がんの予防接種について、受けさせるべきかどうか悩んでいたことです。子宮頸がんについて、また予防接種について、調べていくにつれさまざまな課題のあることがわかり、その解決策として、今後のあり方について考えたいと思います。



 最初に、子宮頸がんという病気について触れておきます。


いま日本における死亡原因の第1位はガンで、3人に1人はガンで亡くなる時代です。2009年度にガンで亡くなった人の数は344千人、このうち子宮頸がんは2500人で、全体の0.7%ほどですが、女性だけに限ってみれば、ガンで亡くなった137,753人の中では1.8%をしめています。最近の傾向では20代から40代前半の罹患率が上昇しており、その年代のガンの死亡率のトップとなっています。



 長いこと子宮頸がんは、子宮体がんとまとめて子宮がんという言葉が使われ、この2つを分けて考えることはされてきませんでした。子宮頸がんという言葉が聞かれるようになったのは2010年春以降のことです。子宮頸がんはウィルスが原因で発症するがんで、予防接種で防げるがんとして子宮体がんとは分けて考える必要が出てきたのです。日本でその予防ワクチンの製造販売が承認されたのが2009年秋のことでした。



 子宮頸がんは子宮頸部にウィルスが長期感染して起こるとされています。このウィルスはヒトパピローマウィルス(HPVとします)というごくありふれたウィルスで200種類ぐらいが確認されていますが、がんの原因となるのはその中の15種類ほどとされています。このウィルスは性交渉によって感染し、性体験のある女性の80%が感染したことがあるといわれますが、そのほとんどがなんの自覚症状も無いまま、がんに進行することなく自身の免疫によって自然に治っています。HPVに感染した人の中でも子宮頸がんになる人は0.1から0.15%しかいません。ウィルス感染してからがんの前段階である前がん病変になるまで数年、その後子宮頸がんになるまでには十数年の時間がかかります。



 子宮頸がんワクチンは、15種類のウィルスの中でもとくにがんになる確率が高い16型と18型の感染を防ぐとされるワクチンです。


これまでのワクチンは、病原となるウィルスの力を弱めたものを体内にいれることで弱い感染を起こし、体の中にその免疫を持たせるものでした。これに対して子宮頸がんワクチンは、遺伝子組み換え技術をつかってウィルスの抜け殻を作り、それを子宮頸部に付着させておくことによって、ウィルスの感染を防ぐ、まったく新しいタイプのワクチンです。



 2010年の春には女優の仁科明子さんはじめ著名な芸能人や医療従事者が中心となって子宮頸がんワクチンの公費助成を呼びかけるキャンペーンが始まり、同じ年の10月にはワクチンの助成に国の予算が付くことが決まりました。さらに先日、523日には、厚労省が子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌に対し2013年度から定期接種にする方針を固めた、との報道がありました。これまで2012年度までの時限措置として公的助成が決まっていたのを、2013年度からは継続的に国が補助して行くということです。わずか2年ほどの間に、子宮頸がんワクチンを巡って大きな動きがつくられてきたことになります。



 前置きが長くなりましたが、そこで質問いたします。


 どんな予防接種も、予防接種法という法律にもとづいて実施されています。質問の1点目です。この予防接種法とはどういう法律で、今回の法改正で子宮頸がんはどのように位置づけられたのでしょうか。また、今回の国の法改正は区の政策にどのように影響するのかお示しください。



 杉並区が独自の事業としていち早く子宮頸がんワクチン接種を決めたのは、国の助成が始まる前のことです。20107月からのスタートとして予算計上しましたが、当時の導入の理由と経緯はなんだったのか、質問の2点目としてうかがいます。


 さらに、子宮頸がん予防ワクチンにかかる今年度の区の予算はいくらか。3点目としてうかがっておきます。


 ワクチンの歴史を見てみると、種痘の発明で天然痘を根絶したような輝かしい成果もあれば、ワクチン接種には副作用がつきものでもありました。病気の予防のために健康な子どもに対して行った注射が原因で、重い病気にかかってしまう例が常にあったのです。最近、日本で起きた例としては、はしか、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチンMMRの接種が1989年から始まりましたが、接種後の発熱、頭痛、嘔吐などの多発が問題になり93年には中止されたことがあげられます。子宮頸がんについてもさまざまな副作用の報告がされ、とくに失神が重い症状として報告されています。


 そこで伺います。


子宮頸がんワクチン接種の副作用について、区はどのようにお考えか、見解をうかがいます。区で予防接種が始まってから、副作用の報告はあったのでしょうか。もしあったとすればそれはどんな副作用だったのでしょうか。併せてうかがいます。


 冒頭で述べた、私の友人が心配していたのも、突然出てきた新しい薬が本当にがんに効くのか、副作用はないのかということでした。


実際、日本消費者連盟の消費者レポートでは子宮頸がんワクチンには効果を増強するための免疫増強剤が添加されていて、この免疫増強剤に新しい成分が使われており、それによる副作用については、まったくわかっていないところを問題視する声が掲載されています。


このように、子宮頸がんワクチンについても、その効果や副反応に関して必ずしも肯定的な意見だけでないことを知っておくべきだと思います。



 WHO、世界保健機関は20094月にHPVワクチンに対する考え方を発表しました。



その中の一文を紹介します。

HPVワクチンは、子宮頸がんと他のHPV関連疾患を予防する全体戦略の中の一環として導入されなければならない。この戦略には、どうすればHPV感染を減らせるかについての教育や前がん病変やがんの診断と治療についての情報提供が含まれる。またHPVワクチンの導入が効果的な検診システムへの予算投入を変更したり、むしばんだりしてはならない。


HPVワクチンプログラムが導入されたらどこの何歳の誰が受けたかを記録し長期に渡って保存すべきだ。新しいワクチンを導入するときは安全性モニターをしなければならない。子宮頸がんに対するワクチンの効果を計るには何十年もかかるだろう。


 引用はここまでです。このようにWHOは子宮頸がん予防には検診、ワクチンの導入、どうすれば感染を減らせるかについての教育、新しいワクチンのモニタリングというトータルな戦略が必要だと述べています。このワクチンは接種されるようになってからまだ10年ほどしか時間がたっておらず、少なくともあと10年たたないと、本当に予防接種の効果があったかどうかは証明されないということです。


 そこで質問します。


区では、ワクチン接種対象者には子宮頸がんのこと、またワクチンについてどういう説明がされているのでしょうか。おうかがいします。



 WHOが示したように、予防接種を受ける当人が、子宮頸がんはどういう病気で、ワクチンはどういう効果が期待されるのか理解して受けるべきと考えます。子宮頸がんは性交渉によって感染しますから、それには性教育をきちんと受け、性感染症について知ることが不可欠です。杉並区で助成している接種の対象は現在中学校1年から高校2年生までとされ、学校で性教育が行われるのが中学3年時ということを考えると家庭での話し合いを助ける取り組みが必要だと考えます。


しかし、日本には性のことをタブーにしてきた文化があり、親子で性の話ができるという家族は多くありません。

友人達が3歳から小学1年生までの子どもとお母さんを対象に“親子で聴く性教育”楽しく知る心とからだ、という企画をしたことがありました。講師として招かれた助産師さんは子ども達にわかりやすく、体の大切な部分をきれいにしておくこと、赤ちゃんがどうやって生まれてくるか、人形を使ってわかりやすく教え、参加したお母さんは出産を思い返し幸せな気持ちになったそうです。性教育は何歳からでもその年齢にあったやり方でできるのだと知りました。


区は、親子が性のことを話せるきっかけになる、また性教育とはどんなものなのか親が知るための勉強会や講演会を開催したり、そのようなことに取り組む活動団体を応援していただけるよう要望するもので

 

さて、先ほど述べたように、子宮頸がんのワクチンはがんを起こす割合の高い16型と18型に対応したものですが、この2つの型が原因でがんになる割合は日本では65%と言われ、残る35%の、16型と18型以外についてはがんの予防効果はありません。ということは、予防接種を受けても検診を受けることが不可欠なのです。



 子宮頸がんは非常に進行が遅くウィルスに感染してからガンに進行するのに十数年がかかりますから、定期的に検診を受けることにより早期発見され、完治する確立が非常に高く、その後出産もできるそうです。



 このように、子宮頸がんによる死亡リスクを減らすために1番重要なことは、検診の受診率を上げることだと考えます。


国における現在の受診率は2割といわれます。年代別に見ると、20代が3%、30代が10%となっていて、発症率が高い世代の受診率はさらに低いことがわかります。


ここで質問です。杉並区での受診者の年齢別内訳はどうなっているでしょうか、うかがいます。



 いま求められているのは若い世帯の受診率の向上ですが、区ではそのために妊産婦検診の時期に子宮頸がん検診を同時実施するなど様々な努力をされていることを評価しています。


日本のワクチン接種の対象年齢については、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議が2008年に設立され、予防接種は性体験を持つ前にするのが最も効果的であるという理由で、11歳から14歳ぐらいまでの間に受けさせようと提言しています。しかし11歳はまだ性教育を受けていない年齢です。フランスで14歳から15歳に接種時期を設定しているのは、本人がワクチンを必要と理解できるような年齢になるまで待つという考え方です。日本の、子どもが理解するというよりは、お母さんに理解してもらって進めたらいいとする考え方とは大きな違いです。



 自分で考えるより、親の意思で決めてしまうようなやり方には、性の問題がきわめて個人的なことであるだけに、違和感をおぼえます。


 大人は子どもに対するとき、第一に個人として尊重すべきであり、正しく情報を知らせ、自分の体のことを自分で考え、自分で決めることができるように援助することが重要と考えます。自分の体に入れるものに対して、また病気を予防するために、人任せにせず自分で考える姿勢をもつことが将来自分を守ることにつながるのだと思います。HPVの感染に対しては自身の免疫力を強化しておくことも重要です。そして免疫力をあげることはすべての病気に対して予防効果があり、そのためにはバランスのとれた食事や生活習慣を身に付けることであり、予防接種や健診よりも優先される方法なのです。


 最後にひとつ、子宮頸がんワクチンの課題として、女性の負担がおおきいということを指摘したいと思います。HPVは男女間で感染します。このウィルスを根絶するためには男女両方に打たなければならないのです。今女性だけに接種しているのは男女両方に打つより費用が安く済むという理由です。このワクチンの開発者のハラルド・ツアハウゼン博士は20115月に来日し、参議院議員会館で講演した際に「若い男性は女性より性的に活発なのだから、男性に接種したほうが予防効果が高いかもしれない」と話したそうです。子宮頸がんを防ぐ効果があるかどうか見るためには女性にワクチンを接種する必要がありますが、効果を示すデータが集った後は女性に限る必要はないのです。今、女性は新しい薬の実験台になっているという見方もできます。ワクチン助成だけで終らせるのではなく、男女がお互いを尊重するための性教育、さらなる受診率の向上、免疫力を上げるためのバランスのよい食事や規則正しくストレスの少ない生活習慣の啓発など、知恵を出し合い取り組んで行くことをお願いして私の質問を終ります。

生活者ネットすぎなみ83号  2012.1.10発行

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生活者ネットすぎなみ82号 2011.11.10発行

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予算特別委員会意見開陳  2012.3.21市橋 綾子

予算特別委員会の最終日にあたり、生活者ネット・みどりの未来の意見を申し述べます。 

今回の予算特別委員会では、2012年度各予算案の他に18本の議案が同時に付託されました。限られた時間内で十分に質疑ができなかったことは残念ですが、以下、時間の制約により述べられなかったことを中心に意見を申し上げます。

 

歴史的な大災害が起きてから一年が経ちました。

この間、国の政治はますます混乱し、「命を大事にする」方向へ向かっているとは言えません。地球規模の放射能汚染を引き起こし、未だ収束を見ない東京電力福島第一原発事故は、真相究明も途上であるにも関わらず、国は既存原発の再稼働を目論み、原発技術を海外に輸出しようとしています。いま、政治が向かうべきは人の命や暮らしを第一に考え、被災地の一刻も早い復興と、持続可能なエネルギー政策への転換を実現することだと考えます。

 

経済不況は世界を席捲し、日本は、「目の前に立ちはだかる災害からの復興」という巨大な壁を前に、先行き不透明のままです。

 

当区の財政状況を見ますと基金残高が年々減少してきており、来年度予算案ではその傾向がさらに顕著になっています。財政の健全化と持続可能な財政経営の確保が謳われ、余剰金の積立、繰り上げ償還による公債費の軽減など、5つのルールが示されていますが、これらのルールが厳格に遵守されるよう
議会として監視を強めていきたいと思います。

 

今予算案が従来と大きく異なるのは防災関連費の増大といえます。昨年の大震災を経験した後であってみれば当然のことで、基本構想1番目の目標、「災害に強く安全・安心に暮らせるまち」は、311後のおおぜいの区民の思いが反映されたものと受け止めています。

 

日本の貧困層が拡大するなか、杉並区においても生活保護費がついに150億円を超え、子どもをとりまく貧困問題が確実に進行しています。小学生の5人に1人、中学生の3人に1人が就学援助を受けているという実態にあって、今回減税基金を廃止し(仮称)次世代育成基金を創設するとのこと、これを子どもの貧困に目を据えた施策として、また寄付文化を促すものとして育てていくべきと思います。

 

ところで、委員会では、深刻化する保育園の待機児問題について多くの質疑が交わされ、その原因として、「景気の低迷」が言われておりました。これを否定するものではありませんが、もうひとつの側面、女性の社会参加が浸透してきた事実をしっかり
とらえるべきであることを申し上げておきます。女性が働くことなしに現代社会はもはや成り立たないのであり、景気の動向に関わりなく、「子どもを地域が育てる・社会が育てる」ためのシステムを構築する必要があります。

 

子どもに関連して申しますと、基本構想の策定過程や新しい学校づくりにおける「子どもの視点」「子どもの参加」について意見を述べました。子どもは「育成される」「保護される」だけの受動的な存在ではありません。まちづくりや災害対策においても、女性の参加と同様に「子どもの参加」を取り入れるよう要望します。

 

今回、障害者自立支援法と児童福祉法の改正に基づき、こども発達センター条例の改正が議案とされ質疑を行いました。こども発達センターの果たす役割の意義と利用希望者が待機中であることを併せ見るとき、施設拡大は大きな課題です。(仮称)施設再編整備計画の策定を考えておられるとのこと、この点を優先的に検討くださるようお願いいたします。

 

杉並区が、子どもの発達障がいに対して、「切れ目のない支援」を心がけ施策化されてきたことには、敬意を表するものです。しかし、その支援が義務教育期間を過ぎると途絶えてしまうことの問題を、再度指摘しておかなければなりません。「発達障がいの相談体制の充実」は区長の公約のひとつです。支援の一日も早い本格的な取り組みに向けて、関係者を交え
具体化のための検討に着手してくださるよう要望します。

 

発達障がいのある若者が
ひきこもり状態になって長期化しがちな問題は、現代社会が抱える苦悩のひとつです。区が答弁されたように、障がい者施策としてだけでなく児童青少年施策、社会教育、就労支援などの所管がともに知恵を出し合わなければならない問題です。それだけにその前提として、まず実態を調査し問題を把握することが必要と考え、指摘いたしました。ただ、すでに先行して着手されている社会適応支援事業は、2年前からの試行ですが確実に成果をあげており、ニーズはもはや試行としての限界を超えています。本格実施として充実した展開を求めます。

 

新設が予定されている若者就労支援センターに関しても、同様の趣旨から、ひきこもり対策としての視点をもつことが重要であることを付け加えておきます。

 

区長の公約にはまた、「在宅介護に携わる区民に対する支援の充実」とあります。当区が、これまで取り組んでこられた家族介護支援や、昨年設置された医療相談窓口など、高齢者の在宅でのくらしをサポートしようとする在宅療養支援施策に力を入れておられることに注目しています。施設整備の需要がなくなることはありませんが、国の動きを見ても「施設から在宅へ」と大きく舵を切ったことは確かです。

 

100年前までの日本では、ほとんどの人が家で死を迎えていました。それが、現在では80%が病院死となっています。しかし、これからは「家で死ぬ」ことが当たり前の社会が再びやってきます。家で死を迎えることを、普通の出来事として肯定的にくらしに採り入れるには、家族が「家で看取る」ことの心構え、つまり「看取る」ための学びが必要です。学校に限らず、地域のゆうゆう館、ケア24、町会・自治会などが行う講座や、図書館でのキャンペーンなど、社会教育として多様な形で「看取り」を学ぶ機会が求められます。区として意識的に企画提案をしかけていただきたいと思います。

 

さて、今年は区政執行80周年にあたります。80年間で人口が4倍近くにまで増え、外国人1万人を含むおよそ54万人の老若男女がくらす住宅都市として、杉並区の価値を高めてこられた先人の努力に敬意を表しつつ、これからの区政運営を考えるとき、その中心に位置するのは強力なリーダーではなく、ふつうの区民です。

 

基本構想を実現するために「参加と協働による地域社会づくり」を推進していくとの方針が出されました。「(仮称)基本構想を実現するための区民意見懇談会」を設置されるとのことです。これまで「参加と協働」について、多くの提案を申し上げてきた私どもとしてはこれを歓迎するところです。しかし、市民参加を促進するには、参加の機会を増やすこと、十分な情報公開と参加のための支援、が必要です。

 

市民参加といえば審議会委員などに公募市民の枠を設けることが一般的ですが、市民が学識経験者や専門家、場合によっては議員もメンバーである会議のなかで発言するのが難しいことは、当区の公募委員を入れた会議を見れば一目瞭然です。

 

16年前、当時としては珍しかった「市民参加」で「緑の基本計画」を策定した鎌倉市に伺いました。鎌倉市では、公募委員が会議で発言しやすくするために、事前に資料を市民委員に配布し、正式な会議の前に1度レクチャーを行っていました。つまり、通常の会議に要する時間の倍の時間をかけていました。

 

説明して下さった担当課の方に、「手間がかかるのではないか」と伺うと、「市民の皆さんがご自分の考えを会議の場でしっかり発言できるようにサポートするのが私たち職員の仕事です」とこともなげにおっしゃっていました。市民参加には時間と労力が必要です。「(仮称)基本構想を実現するための区民意見懇談会」の運営を充実したものとし、今後改定される「まちづくり基本方針」や、新たに策定される「地域エネルギービジョン」「バリアフリー基本構想」など、これからの行政計画づくりには市民参加が当たり前、という実績を積み上げていただくことを期待します。

 

以下、いくつかの議案に関して若干述べます。

 

議案11号 減税基金条例を廃止する条例については、当然のことと賛同するものです。そもそも2年前に制定したこと自体がまちがっていたのです。質疑の中で、条例案を策定した行政側を「見通しが甘かった」「見識がなかった」等、追及する場面がありましたが、議決したのは議会であり、議会こそが反省すべきであることを申し上げておきます

 

第13号 杉並区附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例は、非常勤職員の報酬は、本来日額制であるべきと考えるものですが、職務の特徴に照らして考えると月額制を排除できないケースであり、かつ報酬の減額に一定の理解を示す観点から、賛成とします。

 

議案17号 文化・芸術振興審議会条例については、質疑のなかで、区が保有する美術品の保存や展示のあり方について課題が見えました。今後この審議会で検討されることを期待し、審議会設置に賛成します。

 

議案19号および38号 中小企業勤労者福祉事業に関する条例については、財団法人勤労者福祉協会が解散したのちの受け皿として一時的に区が引き受け、特別会計を新設することはやむを得ないものと考えます。しかし、本来の目的に照らしてその妥当性は理解するものの、公益性という観点から近いうちに見直しが必要であることも指摘しておきます。

 

議案24号 介護保険条例の一部を改正する条例についてです。今後の高齢者の増加にともない、要介護・要支援認定の申請者が増加するのは明らかであり、認定審査委員数の増員は必要なことと考えます。また介護保険料を14段階に分け、所得に応じた負担額としたことを評価します。

 

議案25号 子供園条例の一部を改正する条例について。区立幼稚園6園のうち先行してスタートした子供園4園の時は、準備期間が短い、説明が不十分など、たくさんの当事者のご意見が当時議会にも寄せられました。いま、幼稚園教諭と保育士さんの努力と区の頑張りで短時間保育、長時間保育の両立が一所懸命歩きだしています。先行園をモデルに、残り2園も保護者の声に耳を傾けながら進め、繰り返しになりますがかねてより求めている給食の実現について、あくまでも追求していただきたいと思います。

 

以上、10年後の杉並区の目指すべき将来像を描いた基本構想を具体化するための初年度予算であることを念頭に置き、委員会での質疑を通し、また、資料をもとに調査・検討した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および本委員会に付託されたすべての条例案について、小松久子、そね文子、市橋綾子は賛成すべきと判断いたします。

 

むすび。

当区と災害援助協定を結ぶ被災地、南相馬市の復興、被災者の生活再編はこれからが正念場であり、長期にわたることを覚悟しなければなりません。放射能汚染による被害は多角化、広域化しており、被害者の救済・支援体制の構築は急務です。特に子どもたちを放射能汚染から守るための体制づくりは一刻の猶予も許されない政治課題です。

 

私どもは引き続き、原発依存のエネルギー政策から脱却し地球温暖化問題を解決するための活動に取り組むとともに、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーの普及と拡大、地産地消をすすめ、行財政運営においても環境面からも持続可能な社会を目指していくことを申し上げ、意見とします。

第1回定例会代表質問  2012.2.15 小松久子

「生活者ネット・みどりの未来」を代表して、「平成24年度予算の編成方針とその概要」について質問をいたします。

 日本がかつて経験したことのない、大地震と津波に加えて原子力発電所の爆発事故という二重・三重の打撃を受けて、もうすぐ1年になろうとしています。

 昨年、区議会第1回定例会の最終日、暫時休憩中に突然あの地震が起こり、しばらくして会派控室のテレビ画面に映し出されたのは、黒い巨大な舌のような津波が田畑や街並みを舐めるようにさらっていく映像でした。まち全体ががれきと化し、死者・行方不明者は19千人に上っています。その後の、日本中が深い喪失感に覆われ、原発事故の恐怖にふるえるだけだった段階はひとまず超えはしましたが、あの日から社会のありようが変わったと感じている人は少なくありません。

 東京都副知事の猪瀬直樹氏は「災害の後」すなわち「災後」という言葉を提唱しています。「これからは『戦後何年』ではなく『災後何年』と意識的に言うべきである。そうすることでこの国は変わる」と記しており、なるほどと思います。政治家、ジャーナリスト、作家、音楽家、あらゆる表現者、宗教者、教育者…などすべての職種、階層の人びとがこの状況を受け止め、自己に引き寄せて思索を巡らせ、あるいは考察しています。

 そして原発を巡っては、安全神話が完膚なきまでに崩壊したいまもなお推進策を脱却しようとしない政府の姿勢に、国民は不信の念を募らせています。そのうえ、沖縄の米軍基地問題や八ッ場ダム建設、官僚の天下り、子ども手当、ワーキングプア対策などの公約違反は、政権交代に期待した国民の失望をこの1年でさらに大きくしてしまいました。

 経済評論家の内橋克人氏は、「現在台頭しているのは、強い力を持つ者による『上からの革命』を渇望する空気」であると、いまの状況に警鐘を鳴らしています。しかしそのあとで、歴史上「上からの革命」がよい結果をもたらしたことはなく、現在必要なのは「政治不信」を乗り越えた、草の根の力の結集ではないか、と述べています。市民の力を束ねることが希望につながる、という考え方に共感します。

 それでは本題に入ります。一部、他会派の質問と重複するものもありますが、重ねてのご答弁をお願いいたします。まず大震災に関連して、被災地支援、復興支援についてうかがいます。

 区長は、大震災を経た今ほど基礎自治体の役割が問われているときはない、として、基礎自治体の重要性に対する認識を新たにされたことを述べておられます。改めて、区長の考える基礎自治体の使命と役割とは何か、最初におうかがいします。

 2点目です。区長は、被災した南相馬市を支援する関係自治体の構成による「自治体スクラム支援会議」を立ち上げ、自治体間の連携によるスクラム支援に率先して取り組んでこられました。その経験から、現行の制度やしくみにおける問題を国への要請につなげておられます。その後の改善に向けた国の動きはいかがでしょうか。

 3点目。さらに、今後、被災地支援、復興支援として区が優先的に取り組むべき課題は何と考えておられるのか。

 そして4点目は、人的支援についてです。被災地の行政事務などについての支援を、当区の職員を派遣することで行ってこられたことを評価しています。人材支援は、今後も形を変えて続けていくことが望まれます。またその経験が今後の相互交流や杉並区にとっても生かされるよう、一連の活動について一度総括されてはいかがでしょうか。おうかがいします。

 続けて、隣接自治体との連携についても、ここでおたずねします。武蔵野市とは先ごろ災害相互援助協定を結んで新たな取り組みが始まっています。区長は隣接自治体との連携を図る、とされていますが、災害に限らず、他の隣接自治体である練馬、三鷹、世田谷、渋谷、中野ともさまざまな連携協力するしくみをつくるということでしょうか。うかがいます。

 災害対策として、区立小中学校周辺の不燃化促進のための建て替え助成を打ち出されました。地震の際に想定される火災への思い切った対応策として注目されます。併せて木造密集地域対策についても言及しておられますが、具体的にはどのようなことか、お示しください。

 ただ、助成があるからといってすぐに不燃化の申請があるとは限らず、区からの働きかけも必要と考えます。難しい問題ですが、まちの不燃化をどのように進めていかれるのか、うかがいます。

 今回の災害では岩手県大槌町で首長と、町役場の職員の4分の1が死亡または行方不明となりました。職員が急激に減ってしまうと、行政事務の処理が滞るだけでなくさまざま支障がおきることが想像されますが、自治体のリーダーが亡くなるとその地域の復興に大きな遅れが生じることは、17年前の阪神淡路大震災でも指摘されていました。

 自治体の首長や職員には生き延びていただかなくてはなりません。区長も、ここにおられる理事者のみなさまも、ご自身の生き延び対策について、ぜひ真剣に考えていただきたいことを、この際申し上げておきます。

 さて、今般示されている予算の考え方の根幹は、申すまでもなく今議会に諮られている基本構想と総合計画です。一昨年12月に基本構想審議会が設置されて区長の諮問を受け、以来1年強の議論をへて今回の議案に至っているわけですが、私も委員の一人としてこの間参加できたことは、得難い経験でした。基本構想の内容については、特別委員会が設置されますので具体的な議論はそちらでと思いますが、この策定のプロセスについて確認しておきたいと思います。

 基本構想審議会答申(素案)と総合計画(素案)のパブリックコメントがほぼ同時期に行われました。総合計画は10年後のビジョンを描く基本構想にもとづいて策定される「行政の計画」であるのに、ほとんど同時進行という形になったのは、パブコメの時期になって区民を混乱させたことは否定できません。区民にとっては、同じようなことが書かれた基本構想と総合計画は、ただでさえその違いがわかりにくいうえに、基本構想が未確定であり未答申のうちに行政計画が示されたことは、私自身審議会のメンバーでありながら、区民に納得できるように説明することが困難でした。

 そもそもこのスケジュールの立て方自体に無理があったのではないでしょうか。ほぼ同時並行で進めなければならなかったのはなぜか。いま一度うかがっておきます。

 昨年第1回定例会の一般質問において、私は基本構想づくりの過程で、市民参加の新しい手法として、ドイツの「プラーヌンクスツェレ」という、住民基本台帳からの無作為抽出による市民討議を実施することを提案いたしましたところ、6月にさっそくその手法を採り入れていただき区民意見交換会が開催されました。

 「プラ―ヌンクスツェレ」の日本版ともいえる市民討議会は、まんべんなく多世代の参加が期待できること、少人数グループで討議することにより合意形成しやすいことなどに利点があり、他の自治体でも導入が拡がっています。当区では初めての試みでしたが、この手法を採用したことにより、区民の関心や参加の意思を引き出した、など得たものは多く、このような方式を今後も取り入れていくべきと思います。

 ただ、それが基本構想にどのように反映されたか、という視点からの検証が必要だと考えます。活動団体からの意見募集もされ多くの団体意見が寄せられましたが、これも構想への反映がされたのかどうか。ひとつには審議会において検討するだけの十分な時間がなかったと思いますが、意見を寄せた団体になんらかの返事を返すなど対応すべきではないでしょうか。これらのことをふくめて、区長の認識とお考えをうかがいます。

 基本構想審議会での議論で私がとくに印象に残っているのは、「多心型まちづくり」という言葉です。審議会では、この言葉が頻繁に使われ、区長の予算編成方針にも記載されていますが、具体的なイメージはどのようなものでしょうか。また他の都市の例など、見本とする事例があればお示しください。

 まちづくりに関連してあと2点ほど、うかがいます。

 荻窪駅周辺のまちづくりについては、区長の公約でもあり並々ならぬ意欲をもっておられることは存じておりますし、また区民にとっても注目度の高いテーマです。地元の協議会設置を考えておられるようですが、それもさることながら、区内最大の交通結節点ともなれば、地元以外も含めた区民の声が反映されるようなしかけがほしいところです。

 先ほども述べた、住民基本台帳からの無作為抽出による区民の参加で討議する市民討議の手法をここで採り入れることを検討されてはいかがでしょうか。おうかがいします。

 人口減少が確実に迫っている状況にあって、税収が増えることを前提に今後の社会を想定するのは現実的ではありません。基本構想で言われている「よりいっそう質の高い住宅都市」として発展していくことは、たいへん困難な舵取りが必要となります。区長として、覚悟のほどをうかがいたいと思います。また「質の高い住宅都市」とはどのようなまちなのか、見解をおうかがいします。

 基本構想審議会では、「協働」の考え方について一定の整理がされたと考えています。それを受け、区長も協働推進の基本方針を定めるとおっしゃっています。協働のあり方について、「区と区民の対等なパートナー関係が築けているか」という視点からこれまでの区の取組みを総括し、原点からとらえ直すことが必要と考えますが、いかがでしょうか。区長の認識をうかがいます。

 ここで、減税基金制度の廃止について述べておきます。そもそもこの制度は、将来の減税のために予算を切り詰めるという設計に無理がありました。廃止議案についての議論は別途、委員会の場でされるものと思いますが、廃止は歓迎するところです。ここでは、手続きの進め方について、減税基金条例にそって行われたのか、確認したいと思います。また、今後の廃止に向けたスケジュールをうかがいます。

 ところで、入札に総合評価方式を導入することや公契約条例の策定を含めて、契約制度のあり方の見直しをこれまで再三求めてきました。ようやく区は庁内に契約制度検討委員会を設置し、昨年12月に報告書を提出されました。この内容で十分とは思いませんが、一歩前進と受け止めています。報告書に対する区長の評価はいかがでしょうか。また、この検討結果をどのように施策化するのでしょうか。

 うかがって、自治と分権という観点から、以下、何点か質問いたします。

 まず、都区制度に関連してうかがいます。区長は、都政に長くかかわった経験から、都と区の関係がどうあったらよいとお考えでしょうか。区の自治権拡大の進み方はいまひとつと感じていますが、区長は自治権の拡大が進まないことについてどのような見解を持っておられるのか、うかがいます。

 併せて、「大阪都構想」について区長はどのような見解をおもちか、お聞かせください。

 都区の事務事業見直しについて、区長は具体化に向けた協議が必要な時期にきているとして、児童相談所を例に挙げておられます。児童相談所の区への移管は時間の問題であり、具体化が待たれます。

 昨年明るみに出た、杉並区内の養育家庭に里子として委託された3歳の女の子の死亡事件は、暴行による疑いがもたれています。日常的な虐待が背景にあったことも疑われていますが、区は関与の枠から外れており、死を未然に防ぐことができませんでした。

 東京都児童福祉審議会において事例検討がされ、このほど出された報告書では、今後の改善策として養育家族への地域のフォローが求められています。地域に暮らす子どもの命と権利が第一優先として守られるために区の積極的関与が必要であり、児童相談所の機能を区が担うことを具体的に検討すべきではないのか。お考えをうかがいます。

 子どもの話題が出たところで、民主党政権の子ども・子育て新システムに関連しての質問です。私は子ども・子育て新システムには期待する部分もあり、その進捗に注目してきました。先ごろようやく最終案が公表されましたが、財源としての税制改革をはじめ、前提となる基盤整備はいまだ不十分な状況です。区長は子ども・子育て新システムについてどのような見解をお持ちか、おうかがいします。

 なお、今回あらたに「(仮称)次世代育成基金」創設を予定されています。この提案に至った経緯とその意図は何か、うかがっておきます。

 「(仮称)次世代育成基金」の背景には子どもをとりまく貧困問題がある、ということだと思います。じっさい、就学援助を受けている子どもの割合は小学生の20%、中学生の30%にのぼります。親の貧困ということです。当区でも貧困が拡がっていることは生活保護費の増大からも明らかですが、受給者ではない勤労者の中にも実質的には貧困状態にある区民は少なくありません。当区における貧困問題についての区長の現状認識と解決策について、見解をうかがいます。

 高齢者施策については、ここでは1点だけおたずねします。南伊豆健康学園廃止後の跡地に特別養護老人ホームを建設する方向で検討がされていましたが、法の壁により実現困難となっている旨の区長の執筆記事が昨年10月の東京新聞に掲載され、心配する区民の声も聞くところです。この間の経緯と、今後の見通しについて、うかがいます。

 南伊豆健康学園が、健康に問題のある子どもや不登校の子どもへの対応など、福祉的な場として果たしてきた役割を、これまでと違う形で担う取り組みが提案されていることを評価したいと思います。これが十分に機能するためには、杉並区が積極的にすすめてきた、教育と福祉の連携をさらに深めていくことが求められると考えますが、いかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 つづいて、保育施策に関連して2点ほどお聞きします。まず待機児問題についてです。毎年推移する待機児に対し今回は家庭福祉員等の大幅増とのことですが、これまで、その都度緊急的に対応してきている感があります。保育サービスはいろいろある中から保護者のニーズによって選ぶことができれば望ましいわけです。国の子ども・子育て新システムの動向を当然視野に入れながら、長期的な見通しをもつべきではないのでしょうか。これが1点目。

 そして2点目です。認可外保育所の中にも良質の保育が行われている施設があります。いわゆるベビーホテルと呼ばれる、子どもの利益よりも営利目的でしかも劣悪な保育環境にあるような保育所とは違って、東京都の認可外保育施設指導監督基準を満たす事業所のことです。このような施設に対しては、区が定期的に事業評価を行うことを前提に、認可保育所と同等の補助対象としてもよいのではないかと思います。いかがでしょうか、おうかがいします。

 発達障がい児への対応についてです。早期からの特別な支援が求められる発達障がい児を、早い時期に見つけ出し専門機関につなげるしかけができないものかと思い、毎年要望を出してきました。「あそびのグループ」はそのような取り組みとして期待するところです。どのように進めようとされているのか、スケジュールを含め具体策をお示しください。

 基本構想審議会では、子育てや教育に関する部会において、「子どもの成長と学びへの切れ目のない支援」あるいは「学びの連続性を重視」というように、「切れ目のない」「連続性」というキーワードが繰り返し語られたことが印象に残っています。障がいや発達障がいなど、特別な支援を必要とする子どもたちにとっては、よりいっそう重要な意味をもつ視点だと思います。その意味で、早期からの支援につなげる「あそびのグループ」と同様に、学齢期を終えた後の特別な支援ができるような体制もまた、求められていることを指摘しておきます。

 学校教育に関しては、ここでは学校司書について、1点だけの質問にとどめておきます。学校司書の全校配置がついに実現しようとしていることに、素直に感慨をおぼえます。以前より指摘してきたことですが、司書を受け入れる学校への支援や司書同士のネットワークづくりなど、本格的な体制整備に力を尽くしていただきたいと考えます。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 司書が存在することで学校図書館が魅力的な「居場所」としての面を見せ始めたのと同様に、中央図書館でも、あかちゃんと母親の、また不登校の子の「特別な場所」として新しい発想による取り組みが展開されることは、楽しみです。これからさらに、市民のアイデアも採り入れて図書館の潜在的魅力が開発され育てられていくことを期待します。

 文化・芸術振興について調査・審議する機関の設置を考えておられるとのことです。ここで思い出すのは、基本構想づくりに向けて出された区民意見や団体意見の中にも文化・芸術に関するものが見られたことです。それらも参考にすべきと考えます。いかがでしょうか、うかがいます。

 交流自治体円卓会議についても、1点おたずねします。すべての交流自治体の関係者が一堂に会した円卓会議の開催をお考えのようですが、市民レベルでもそれぞれの自治体の住民同士が訪問しあう、とくに杉並区民が地方都市を訪れて農業体験ができるようなしかけができないか、と前区長にも申し上げました。進めておられるともうかがいましたが、区長のお考えはいかがでしょうか、おうかがいします。

 特別会計に関しては、このたび「中小企業勤労福祉事業会計」を新設されるとうかがいました。その経緯について、確認したいと思います。お示しください。

 地域エネルギービジョンを策定されるとのことです。これに関しては、ぜひともうかがっておきたいことがあります。福島原発事故以来、「脱原発」は大多数の区民の共通認識であり、区長もわが会派の質問に答えて「再生可能エネルギ―の普及拡大を図り可能な限り原発を抑制していくべき」と、明確に脱原発の意思を表明されています。

 カタログハウス創業者の斎藤駿(すすむ)氏は「企業も一つの人格」と述べ、「社会的責任として脱原発か、要原発か、分からないのか、きちんと意思表示すべきです」と訴えています。これに倣えば自治体も当然一つの人格です。地球温暖化対策と併せ「脱石油」かつ「脱原発」をしっかりと打ち出すべきと考えます。区長の見解はいかがか、お聞かせください。

 杉並区の意思が「脱原発」であれば、区が電気を購入する際は「原発でつくった電気は選ばない」、つまり、東京電力以外の電気事業者から購入すべきではないでしょうか。まして、東電は4月から大口契約者向けの電気料金値上げを発表しています。

 まさにいま、隣の世田谷区や足立区をはじめ、電気事業者を入札によって決めようとする自治体が相次いでおり、自治体の「脱東電依存」が今後さらに拡がっていくことはまちがいありません。このような状況について区長のご意見をうかがいたいと思います。また杉並区でも検討すべきではないのか、あらためてうかがいます。

 福島第一原発の事故を受けて、「脱原発」を求める市民の思いがインターネットを通してつながり、この1年間で自然発生的に多くのデモ行動を生んできています。杉並においても、昨年、高円寺の名を全国的に有名にした若者中心のデモ行進が行われ、近々区民主体のデモが実施されようと企画されています。これは日本だけのことではありません。昨年春のエジプトの民主化運動がその先駆けとなり、ニューヨークの反格差デモに連なる、世界的な潮流と言うことができます。このような大きな動きについて、区長はどのような感想をお持ちでしょうか。おたずねします。

 いま、直接民主主義のひとつの実践として、原発稼働の是非を問う住民投票の実施を求める市民の動きが、世論をつくりつつあります。東京における「原発都民投票」実現のための条例制定を求める直接請求に必要な署名を集める活動が、この間に選挙が行われた小金井、府中、八王子の各市と三宅村を除いて29日までで終了し、目標とした30万筆を超える状況といわれています。

 生活者ネットワークもみどりの未来も、志を同じくする一市民としてこの活動に参加してきましたが、このような市民の活動は貴重なものであり、その結果が尊重されるべきであることは言うまでもありません。またそのような市民活動そのものは大いに推進されるべきと考えます。いかがでしょうか、区長の見解をお聞きします。

 直接請求の手続きは、署名時期が後れた先ほどの地域で締め切られた後、東京全体の署名簿を都選挙管理委員会に提出し、最終的に都知事に提出されるのは5月下旬とみられています。それから20日以内に知事は意見書を付けて議会に諮らなければなりません。報道によれば、石原知事は住民投票の実施条例を「作れるわけがないし作るつもりもない」と述べていますが、条例制定の可否を決めるのは都議会であって知事ではありません。

 また、直接請求は自治法に基づいて行っているものですから、「条例を作れるはずがない」という発言は、主権者である都民を見下しているだけでなく、失礼ながら制度をご存じないと思わざるをえません。私たち「生活者ネット・みどりの未来」は、「だいじなことをみんなで決める」ことの実現のために、知事の暴言にひるむことなく、市民とともに最後まで力を尽くしてまいりたいと思います。

 このことを最後に述べまして、「生活者ネット・みどりの未来」の代表質問を終わります。

小松久子 一般質問と答弁  2011.11.21

「こころの健康について」

【Q】 ● 精神疾患が五疾病のひとつになると、都の次期医療計画にも位置付けられることになる。地域医療として精神疾患への取り組みを位置付ける、また保健福祉計画への反映など、区の取り組みも求められると思うがいかがか。

【A】  さる7月6日の第19回社会保障審議会・医療部会は、医療計画に記載すべき疾病として精神疾患を加える方針を打ち出した。従来「がん・心疾患・脳卒中・糖尿病」の4疾病に精神疾患が加わる場合の影響は、東京都が策定する医療計画に明示され、それらに対応した医療連携体制が構築されることで、広範かつ継続的な医療が提供できるようになる。区の保健福祉計画への反映には、現在まだ不確定な要素も多いことから、国や都の動向を十分注視していく。 

【Q】 ● 区が行っているゲートキーパー養成講座の趣旨とプログラムはどのようなものか。

            また、成果はいかがか、伺う。

【A】  この講座は、直接窓口で区民から様々な相談を受ける、区やケア24、社会福祉協議会の職員等が、自殺予防に対する理解を深め、自殺のサインに早期に気づいて、適切な支援を行うことを目的とするもので、職員の資質の向上や関係機関の連携の強化が図られている。過去3年間で6回の講座を開催し、東京都中部総合精神保健福祉センターの精神科医師等を講師に迎え、相談の進め方など実践に即した研修を行い、延べ約350名が受講した。また、来年2月には、民生委員も含めた講座も予定している。

【Q】 ● 区は都のアウトリーチ事業を積極的に活用しているが、精神疾患があっても地域で安定して生活するために、区としてのアウトリーチの取り組みが求められる。相談支援事業所がイニシアティブをとるなど、アウトリーチの手法を使った取り組みを展開してはいかがか。

【A】   保健センターでは、未受診、治療中断などの相談ケースのうち、特に困難なものについて、アウトリーチ事業を今年度から本格実施している。今後の事業の成果等を検証しながら、対象者の選定や効果的な実施方法、保健センターと相談支援事業所の役割分担等について、検討していく。

【Q】  ● 区では、都と連携して退院促進に取り組んでいる。杉並区の地域移行の実績、計画と比較しての達成状況を伺う。

【A】   精神科病院からの退院促進の実績は、平成21年度3人、平成22年度1人である。障害福祉計画の目標数値は、両年度とも10人で、困難さが現れた数値である。

 

【Q】  ● 自立支援法改正により、来年4月から地域移行・地域定着支援事業に対する個別給付化が予定されている。これにより、どのような活用ができ、何が期待できるのか伺う。

【A】   厚生労働省から、未だ詳細が示されていないが、これにより、さまざまな事業主体が、地域定着支援事業に取り組めるだろうと期待している。

 

【Q】  ● 精神障がい者の家族から、病状が急変した場合の緊急対応ができるしくみが求められている。緊急受診ができる施設の確保など、救急体制について地域のネットワークを使った仕組みが必要と考えるがいかがか。

【A】   東京都では「精神科夜間休日診療事業」として、区部を3ブロックに分割し医療機関を設定している。夜間休日に緊急の対応が必要な場合は、東京都保健医療情報センターを経由して情報が医療機関など適切な機関に伝達され、必要に応じて診察が受けられる体制が整備されているが、それでも対応困難な事例が少なくないのが現状だ。今後も都と区の役割分担をふまえ、適切に対応していく。

【Q】  ● オブリガードでは、精神障がいの当事者が相談対応を担っているが、カウンセラーの人材としても本人のリカバリーのうえでも効果的と考える。意識的に人材と養成して活動をさらに推進すべきではないか。

【A】   ピアカウンセラーの養成講座には、平成21年度10名、平成22年度11名が参加し、ピア相談員、グループカウンセリング、外部講師などで活動していただいている。今後も、継続して人材の養成と活動を進めていく。

【Q】  ● 精神疾患の家族会や当事者の会は他の障害団体と同様に高齢化等の問題を抱えている。区は活動を支援すべきと考えるがいかがか。

【A】   区では、家族会に対して、リーフレットの展示等への協力や、新たな患者が出た場合に家族会を紹介する等の支援を行っている。また、当事者の会には保健センターを会場として提供し、保健師が参加して助言等を行っている。

【Q】  ● 障がい者の地域生活に関する調査では、精神障がい者の就労状況は、作業所、授産施設での仕事が過半数を占め、就労してもパート・アルバイトが多い。また、就労の継続に必要なこととして「定着支援など就労支援機関による支援」と「いつでも相談できる人や場所」が多く挙げられている。このような状況についての区の見解はいかがか。区として、精神障がい者の就労に向けてどのような取り組みがされているか伺う。

【A】   杉並区雇用支援事業団では、当事者への就労支援のほか、事業所・企業に働きかけ、障害者雇用の促進に取り組んでいる。昨年度就労者62人のうち、精神障害者は24人と伸びてきている。また、就労が継続できるよう、就職後の定着支援と相談の充実を図っているところで、今後とも、杉並区雇用支援事業団と連携して、障害者の就労に努めていく。

【Q】  ● 偏見をなくしていくには可能な限り若いうちから精神疾患を知り理解することが重要であり学校教育で実施すべきと考えるが、見解をうかがう。

【A】   小・中学校での精神疾患等への理解を深める学習は、児童・生徒の発達段階や学級の状況等を十分に考慮した上で進める必要がある。各学校において、偏見や差別のない社会、学校の実現に向けては、児童・生徒の人権意識を高める指導の充実を図っていく。

【Q】  ● 地域の精神保健福祉をすすめるため、保健師の人的充実など保健所の機能強化が必要と考えるがいかがか。

【A】   近年、複雑かつ困難な事例が増加しており、保健師の業務量は増大傾向にある。今後も区では業務の見直し、効率的な執行体制の確立、資質向上に努めていく。

【Q】  ● こころの病気についての理解を深める啓発事業を積極的に進めるべきだが、いかがか。

【A】   保健所・保健センターでは精神保健福祉の正しい知識の普及・啓発のため、区民および関係機関を対象とした「精神保健学級」の実施や「広報すぎなみ」への啓発記事の掲載などを行っている。更にうつ病対策としては、春・秋の自殺予防月間を中心に普及啓発をすすめており、街頭キャンペーン、講演会、映画の上映などを行っている。今後も積極的に普及啓発事業を推進していく。

第4回定例会一般質問   2011.11.21 小松 久子

こころの健康について

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、「こころの健康について」質問いたします。こころの健康、すなわち精神疾患の問題についてです。ここでの精神疾患とは、統合失調症を中心に、そううつ病をふくむ気分障がい、神経性障害、アルツハイマー病などのほか、発達障がい、うつ病もふくめて考えることとします。正確には「脳の健康」「脳の病気」というべきなのかもしれませんが、ここでは「こころの健康」「こころの病気」という言葉で論じてまいりたいと思います。

 

国の社会保障審議会医療部会において、今年7月、これまで医療計画に記載する疾病として位置づけてきた「4疾病」に、新たに精神疾患を加えて「5疾病」とすることが合意され、その後の手続きが進められています。先週の1116日に開かれた厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」では、次期医療計画に盛り込む指針が議論され、精神疾患の医療計画について「住み慣れた身近な地域で、福祉や介護、就労支援など、さまざまなサービスとも協働しながら、必要な医療が受けられる体制」という方向性や、うつ病と認知症に重点を置く方針が示されました。

 

精神疾患が5疾病のひとつに加わると、2014年度に策定される東京都の次期医療計画に位置づけられることになります。医療に関する事業は区の範疇ではないので、精神疾患についての取り組みとしては、区では保健福祉事業において「心の健康づくり」としてうつ病対策、精神疾患の知識の普及啓発、心の健康相談、地域支援ネットワークなどに取り組んでおられます。

 

ただ、昨年春に出された「杉並区における地域医療体制に関する調査検討委員会報告書」の中では、現在までの4疾病すなわち「悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、糖尿病」と高血圧症について検討されていますが、精神医療については触れられていません。

 

区内の対象者数は、精神障害者保健福祉手帳の所持者だけを見ても、今年331日現在、1級が180人、21,134人、3809人、合計2,123人とのことです。実際の数はこれより多いことは確実ですから、精神疾患の「施設から地域へ」という流れのなかで地域医療における取り組みは重要であるはずです。

 

地域医療として精神疾患への取り組みを位置づける、また保健福祉計画への反映など、区としての取り組みも求められるのではないでしょうか。最初の質問として、見解をうかがいます。

 

こころの病気について考えるとき、いま日本で深刻な社会問題となっている自殺の増加と「うつ病」との関連に目を向けなければなりません。

 

日本の自殺者の年間31千人は、糖尿病による死者14千人と比べて倍以上です。東京都のデータでみると、2010年の自殺者2,814人は交通事故死215人の実に13倍にもあたります。東京の10代、20代、30代の死因の第1位、40代の死因の第2位、50代、60代の4位が自死によるものです。そして、社会保障審議会医療部会の議論では「自殺の9割に、何らかの精神疾患に罹患していた可能性」との指摘がありました。

 

このような状況にあって、区が自殺予防対策に積極的に取り組んでおられることは認識しています。職員などを対象に開催されているゲートキーパー養成研修もそのひとつといえます。

 

東京都が発行する冊子「東京こころといのちのゲートキーパー手帳」によれば、「自殺対策におけるゲートキーパーとは、『地域や職場、教育、その他さまざまな分野において、身近な人の自殺のサインに気づき、その人の話を受け止め、必要に応じて専門相談機関へつなぐ、などの役割が期待される人』のこと」と定義されています。要は、死にたいと思っている人に思いとどまらせる人のことです。

 

役所の相談窓口担当者や民生委員、学校の教師など人と接する立場の人が、危険エリアの一歩手前での「いのちの門番」、すなわちゲートキーパーとして「気づき、受け止め、つなぐ」力量とスキルを習得できるよう、この研修は続けてほしい取り組みです。区が実施した研修の趣旨とプログラムはどのようなものだったのでしょうか。また成果はいかがだったのか、二つ目の質問としてうかがいます。

 

東京都の調査によれば、自殺した人のおよそ7割は直前に何らかの「サイン」を発していたものの、その家族の多くは「当時は自殺のサインと思わなかった」と答えています。「いのちの門番」がさまざまな場面で必要とされるゆえんです。

 

こころの病気を引き起こすきっかけや原因、またそれによって生じる問題は、多岐にわたります。虐待、いじめ、ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力などは被害者にも加害者にもなっている実態がありますし、不登校、ひきこもりや過労、就労困難、貧困、薬物やアルコール依存、多重債務、ごみ屋敷、ホームレスなどの背景に精神疾患が存在していることは珍しくありません。いずれも重い社会問題であり、しかも重層化することで解決困難に陥りやすい問題です。しかし早い段階で手当できれば、これらの問題は軽症ですむ可能性があるのです。

 

一昨年、都内のあるNPOが、統合失調症などの精神疾患をもつ障がい者の家族を対象に調査を行い、1,485人から回答を得ました。これによれば、本人の異変に気づいてから精神科治療に結びつくまでに3年以上かかった人が12%、1年から2年が24%となっています。つまり3分の1以上の人は治療につながるまで1年以上かかっていることになります。

 

半数近くが20歳までの間に最初の異変があり、24歳までに発症した人は75%に上るという調査結果からこの病気の特徴が見えますが、若い世代であればなおさら、早く適切な治療を受けることが重要です。病状が最初にあらわれたときの医師に認識がなければ見逃されてしまいがちなことが、精神科の治療につながるまでに1年以上かかった人が36%、という数字に表れています。精神科以外の一般診療科での診察時に精神疾患が見逃されることのないよう、精神科医と一般診療科医との連携が求められます。

 

それでは以下、7項目にわたって質問いたします。

 

1点目、精神疾患にかかわるアウトリーチに関連しておたずねします。

 

アウトリーチとは「手を差し伸べる」という意味で、保健福祉分野におけるアウトリーチは、地域への出張サービス、訪問支援などのことをいいます。新生児訪問や訪問育児サポート事業などの赤ちゃん対象から、在宅で介護を受ける高齢者対象まで、アウトリーチの手法は医療、保健、福祉のさまざまな場面で実践されており、さらに広がることが望ましい手法です。

 

とくに精神疾患に関しては、外出が難しい罹患者は少なくないので、専門家や支援者が当事者のもとへ出向いていくことが必要です。医師、保健師、福祉職など多職種によるアウトリーチが制度として機能することは、精神障がい者が「施設から地域へ」の流れにそって、地域で安定して生活を送り、また就労して社会で生活していけるようになるために欠かせない条件です。

 

東京都立中部総合精神保健福祉センターは、精神保健福祉法にもとづく施設として杉並区をふくめた都内10区を管轄しています。都立松沢病院の地続きにあるこのセンターに先日うかがい、杉並区が精神保健福祉のさまざまな事業に、ここと連携しながら前向きに取り組んでこられたことをお聞きしました。ここでは、医療、保健、福祉など多職種の専門家チームによるアウトリーチ支援事業を、昨年度のモデル実施をへて、今年4月より本格実施しています。

 

区は、医療を中断してしまったなど、地域生活を続けるうえで困難が生じているような事例に対し、このアウトリーチ支援事業を積極的に活用しておられます。しかし、今後はより身近な地域での、一人ひとりの症状に合わせて包括的な支援を行うアウトリーチの取り組みが求められます。

 

いま、ACT、アクトというアウトリーチのプログラムが、精神保健医療福祉分野で知られるようになっています。「アサーティブ・コミュニティ・トリートメント」の略で、日本語では「包括型地域生活支援プログラム」と訳されています。症状が重く地域生活が困難な当事者に対し、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、就労支援の専門家、医師などがチームを組み、生活の場に出向いて24時間365日体制で支援のサービスを提供するプログラムです。日本では千葉県市川市で2003年に初めて開始され、いま全国の10地域で実施されていますが、今後この実践がさらに多くの地域へと広がるよう、期待しています。

 

この夢はもちつつ、区の施策を考えるとき、たとえば相談支援事業所がイニシアティブをとるなどして、アウトリーチのしくみを使った取り組みを展開してはいかがかと思います。お答えください。

 

さて、そもそもなぜアウトリーチかといえば、その前提は20049月、厚生労働省の精神保健福祉対策本部が発表した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本方針が示されたことによります。精神保健福祉はこのときを起点として大きく転換し、「施設から地域へ」の方針を実現していくための基盤整備が進んでいます。

 

「社会的入院」を解消して地域に帰ろうという、精神科病院からの退院促進事業も、そのような方針にそって杉並区の障害福祉計画に数値目標を定め、進められています。区内に精神科病床のない杉並区ですが、都と連携して退院促進に取り組んでおられます。当区への地域移行の実績と、区の障害福祉計画と比較して達成状況はいかがか、併せてうかがいます。

 

来年4月からは自立支援法改正により、地域移行・地域定着支援事業に対する個別給付化が予定されています。これによりどのような活用ができ、何が期待できるのか、関連してうかがいます。

 

地域移行・地域定着ということは課題の解決を入院に頼らない、ということです。再入院を防ぎ地域で解決を図る、といっても病状が急変した場合の緊急対応のしくみがなければ、それは不可能です。精神障がい者の家族から、そのようなしくみが求められています。24時間かけられる電話や、緊急受診できる施設の確保など、救急体制について、地域のネットワークを使ったしくみづくりが必要と考えますがいかがでしょうか。うかがいます。

 

つづいて2点目はピアサポート、すなわち精神障がいのある当事者が行う相談などの支援活動についての質問です。杉並区地域生活支援センター「オブリガード」では、有償ボランティアとして精神障がいをもつ当事者が相談対応を担っています。カウンセラーの人材としても本人のリカバリーのうえでも効果的と考えます。意識的に人材を養成して活動をさらに推進すべきではないかと考えます。いかがか、お答えください。

 

3点目、家族に対する支援についてです。家族介護の問題については以前より、高齢者や認知症をはじめとして在宅で介護を担う家族への支援を訴えておりますが、精神疾患についても同様です。この病気は思春期を中心としてその前後に発症することが多いため、親や家族には心身ともに受け入れることが難しい場面が多く発生します。家族として病気について学び、互いに理解し合い孤立することを避ける、という意味で、家族同士の交流や情報交換は重要です。

 

当区では精神障がい者の家族会が活発に活動し、先ほど述べたピアカウンセリングとはまた違った、家族による家族のための相談活動などもされていますが、他の障がい者団体同様、高齢化などさまざまな問題を抱えておられます。区はこのような活動が継続していけるよう支援すべきと思いますがいかがか、うかがいます。

 

4点目は就労についてです。昨年度、障害福祉計画の基礎調査として、障がい者の地域生活に関する調査を実施されています。それによれば、精神障がい者の就労状況は、作業所、授産施設での仕事が過半数を占め、勤めるにしてもパート・アルバイトが23%であり、常勤は11%に過ぎません。また就労生活を継続させるために必要なこととして「仕事の定着支援や職場調整などの就労支援機関による支援」と「いつでも相談できる人や場所」が多く挙げられています。

 

このような状況に対する区の見解はいかがでしょうか。区としては精神障がい者の就労に向けてどのような取り組みがされているのか、おうかがいします。

 

こころの病気をもつ人の就労や地域での生活をしにくくさせている原因として、いまだに根強い差別と偏見の存在を否定できません。

 

そこで5点目は、学校におけるこころの健康教育についてです。偏見をなくしていくには、可能な限り若いうちからこころの病気について知り、理解することが重要です。近年、精神科医療の現場でうつ病の低年齢化が指摘されているように、小学生で精神疾患を発症するケースも珍しいことではありません。

 

先にご紹介した都内のNPOの調査を再び引用しますと、「家族が病気になる前に精神疾患について学ぶ機会がありましたか」という問いに対し「なかった」との回答は87%、また「家族や本人が学校教育のなかで精神疾患について学ぶ機会があったら、病気になったときの初期の対応が違っていたと思いますか」という問いに対して「はい」と答えた人も87%、いずれも圧倒的多数でした。これを貴重な問題提起と受けとめるべきと思います。

 

中学生向け学年ごとに理解ができるよう工夫されたプログラムもあります。ぜひ学校教育のなかで積極的に取り組んでいただきたいと考えます。見解をうかがいます。

 

6点目は保健所の機能強化についてです。地域の精神保健福祉をすすめるには、精神医療の質の充実もですが、地域へ出ていく保健師の人的充実が欠かせないと、今回つくづく思いました。人の配置を含めて、保健所行政の機能強化が必要と考えますがいかがでしょうか。お答えください。

 

そして最後、7点目は地域における啓発についてです。こころの病気についての誤解をなくして正しく知り、病気にかかった人を排除せず広く受け入れる風土をつくること、そのためには理解を深める啓発事業を積極的にすすめるべきです。いかがか、見解をお示しください。

 

ちょうど1年前の、区議会第4回定例会の一般質問で私は「成年後見制度」について質問した際、精神障がい者には必ず「保護者」をつけて一生監視され続けなければならない、という「保護者制度」の根底にある差別と偏見について指摘しました。内閣府障がい者制度改革推進会議で、この精神障がい者の保護者制度については抜本的に見直す方針が出されているので、廃止は時間の問題だとは思います。

 

また、この病気にかかわる人たちからは「昔より状況はよくなった」「いまは薬がよくなったから」という話を聞きます。いまはずっといい、世の中も変わってきた、医療も進歩した、という言葉はしかし、昔がひどすぎたのだということではないのでしょうか。「社会的入院」という聞こえのいい言葉こそ使われても、その本質は封建時代と変わらない状況がついこの前まで続いていたのが、こころの病気を取り巻く現実です。「地域へ」と言いながらその「地域」に病気を受け入れる土壌がないなら、本人にとっても家族にとっても残酷すぎます。

 

しかしいま、国を動かしてこころの健康推進をはかろうという運動が全国で立ち上がっています。重要疾病への位置づけが進む動きと併せて、その運動が、国民病とまで呼ばれるようになった「こころの病気」を克服する大きな前進となるよう願いつつ、私の質問を終わります。