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第2回定例会一般質問  2011.6.15 曽根文子

子どもを放射能から守る取り組みについて

 

3月11日の東日本大震災、福島原発の事故の収束の見通しは未だに立たず、日々空や海に大量の放射性物質が放出され続けています。そんな中で放射線感受性の強い幼い子どもを持つ多くの保護者が不安を抱えながら子育てをしている状況です。

4月には杉並区内にあるビルの屋上の放射線量をガイガーカウンターで計ったら高い値が計測されたという映像がインターネットで流れました。真実を確かめたい、そのため区に実際に放射線量の計測を実施すべきではないかと思い保健センターに問い合わせたところ計測の予定は無いという回答でした。

生活者ネット・みどりの未来」は518日に区長と教育長に面談し、ヤゴ救出作戦を直後に控えていた小学校プールの水質、保育園・子供園・幼稚園の砂場と小学校の校庭の放射線量の測定、測定結果のホームページでの公開の3点について要望書を提出いたしました。その直後から幼い子どもをもつ母親が中心になって同じ内容を求める請願署名活動を始めたところ、3週間という短期間にもかかわらず4000筆以上が集まりました。区民からの強い不安の表れだと思います。

私も5歳の子どもを保育園に通わせる母親として、子どもの健康を心配する保護者の方の気持ちを代表するつもりで、区の子どもを放射能から守る取り組みについて、学校や保育園などでの放射線量の計測と給食について質問いたします。

 

まずは放射線量計測についてです。

このたび区が、おおぜいの区民の要望に応えて放射線計測のための経費を補正予算に計上されたことに対し、先ず感謝申し上げます。

6月3日付で区内のプール5か所で、3月11日以降の雨がすべて含まれる水を採取・計測され、6月9日には放射能は不検出という結果がでて、多くの保護者は今後余計な心配をせずに済むことになりました。7月のプール開きを控え、保護者の不安解消に大きく寄与したと評価するものです。

 

それでは、最初の質問として区が今回放射線を計測する方針を示された目的を伺います。

また、この間区にも計測を求める声が数多く寄せられたことと思いますが、その内容はどのようなものであったのかお示しください。

そして、補正予算で経費として927万5千円が計上されていますが、その内訳についてもお示しください。またどこをいつまで計測する予定か具体的にお示しください。

 

今回の計測にあたっては、外部の専門家を招いて測定結果を評価した上で公表する、とうかがいましたが、専門家といってもいろいろな立場や考え方の方がおられ、人によって全く違う評価がされています。区民にとってはバランス良く複数の専門家に評価していただきたいと考えます。具体的にどなたをお考えでしょうか。また放射能の対応については庁内のさまざまな部署の担当者が関わることが必要と考えます。区の考えをうかがいます。

 

計測の結果、数値が低く安全が証明されることを望みますが、万が一高い値が計測された場合には、専門家の助言も得て独自の基準を定め、その数値によってどのような対処をするのかを決めておくことが必要だと考えます。幼児は砂場あそびが大好きで、鼻の穴に泥や砂が入り黒くなっていたり、泥だらけの指をしゃぶったりするのも普通に見られることです。幼児は砂を吸い込み、また食べているような状況にあるのです。そのため基準をこえる高い値が出た場合には周辺も計測すること、砂場の砂の入れ替え、校庭の土壌の入れ替えなども行う用意をしておくことを要望いたします。

 

屋外プールについては、先ほども述べたように、3月11日以降の雨が含まれた水を調査してヨウ素131、セシウム131137がそれぞれ不検出だったこと、それを公表されたことは区民の大きな安心につながりました。しかし原発の事故現場ではいつまた暴走が起きるかわからない状況にあり、もし変化があったときにはただちに水を検査し、結果によってはプールの使用を中止するなど処置をとってくださるよう、今後もご配慮をお願いいたします。

 

今回は外部機関に測定を委託する、また外部の専門家を招いて測定結果を評価すると聞いていますが、原発事故は3か月たった今なお収束の見通しが立たず、これから長期にわたって放射能と付き合うことになると覚悟しなければなりません。区は長期的な視野にたって取り組むことが必要だと考えます。区として今後どのように取り組んでいかれるのかうかがいます。

 

放射能については「正しく怖がる」ことが重要と言われています。そのための十分な情報提供がされるべきであり、計測結果だけでなく、理解を深めるために疑問や不安など自由に意見交換できる場があればと考えます。区で放射線を理解するための放射能の専門家、医療関係者、行政などによる学習会を持ち、その後に一般参加者も加わってそれぞれの立場から意見交換できる場が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 

また、区民が放射線について理解するためにホームページに有益な情報を掲載するなどいま以上に充実を図っていただきたいと考えますが、区としてはどのように取り組む予定でしょうか。

東京23区において区が独自測定を行う動きが広がる中で、23区長でつくる特別区長会が東京都に放射線量測定を充実させるよう要請しました。それが都を動かし、空間放射線量の測定を区市町村が希望する都内100か所で行うことが決定されました。また都が確保した計測機器70台を市区町村に貸与し、さらに今後30台を増設し、測定を行うこととなったことは、同じ機種の計測器で測ることによって、各所での比較もでき、有効なデータが得られることを期待するものです。ここで得られる計測結果と杉並区独自の計測結果を合わせて杉並区のホームページで掲載していただく事もお願いいたします。

以上を伺って次に給食についての質問に移ります。

 

同じように保護者の方からは、学校や保育園の給食に使われる食材の放射能汚染について多くの問い合わせや要望を受けています。私自身も日本の暫定基準は国民の健康を考えて設定されたものではなく、原発から放射能漏れが続く現状に合わせて急遽作られたものであり、その判断に不安を感じています。緊急時とはいえWHO世界保健機関の基準と比べて、我国が採用している食品における放射性物質の暫定基準値は非常に甘いものです。例えば飲み物で比べるとWHOがヨウ素131、セシウム137は共に10ベクレルとなっていますが、日本はヨウ素131300ベクレル、セシウム137200ベクレルとヨウ素が30倍、セシウムが20倍となっています。また食べ物については国際的に食品基準を決めるCODEXの基準が100ベクレルであるのに対し、日本は野菜のセシウム137の基準値が500ベクレル、ヨウ素131の値が2000ベクレルとなっており、それを子ども達に食べさせて大丈夫なのかと考える保護者が多いのは当然だと考えます。

 

区が給食の食材には素性のわかる国産品を極力使う努力をされていることを評価します。であればなおさら、食材の産地に神経をとがらせなければならなくなった原因である原発事故に対し、残念でなりません。

 

区は、学校や保育園の給食に使う食材の放射能汚染については安全確保のためにどのような取り組みをされているでしょうか、うかがいます。

 

保護者の中には、給食の食材について、関東以南のものを使用してほしい、牛乳の産地を北海道に限ってほしい等の要望をなさる方が少なくありません。私はそもそも食品の基準値が高いことにその原因があると考えます。生活者ネットワークは、これまで食品に含まれる化学物質の安全性リスクについて、影響を受けやすい子どもを対象とした「子ども基準」を設けるべきと主張してきました。放射能汚染を常に心配しなければならないいまの状況で、子どもたちを守るためには、なおさら「子ども基準」を設けるべきです。それは広域的に都や国レベルの施策として行われるべきで、杉並区は他の自治体と連携し、都や国に対策を求めて動くことを要望いたします。

 

食の安全を確保する仕組みのひとつとして、現在保健所が取り組んでおられる「食に関する意見交換会」があります。食に関して消費者、生産者、事業者、などいろいろな立場の人たちが集まって意見を交換し合う、いわゆるリスクコミュニケーションの場です。私が先ごろ参加した会では生肉の食中毒事件などを受け「最近の食品衛生状況」をテーマに話し合われていました。これと同様な、放射能をテーマとした保護者、学校関係者、栄養士、給食調理員、食材の生産者、給食に係るすべての人がそれぞれの立場から意見をのべ情報交換できるリスクコミュニケーションの場の設置も必要だと考えます。食べ物に含まれる放射性物質についてどう考えるのか、どういう食を選択するのかは、最終的にはその人自身が判断するしかないのだと思います。ただ、いまの極度に不安を募らせている人とほとんど無関心の人との間に認識の大きな差が生じている状況に対して、区がその溝を埋めるような努力をしていただけないものか、と思います。多くの人の意見や立場に触れること、人に話を聞いてもらうことで自分の考えを整理し、状況を受け止め判断する助けになると考えるものです。

 

ある小学校では給食委員の子どもたちの側から、被災地支援の給食メニューを提案したということで、保護者の方から心配の声が届けられました。その心配の原因はつきつめれば食品の暫定基準値が甘いことにあります。杉並区が学校給食を食育の機会として積極的に取り組んでおられることを評価しています。そこで、いま直面している放射能汚染の問題についても、食の問題のひとつとして子どもにきちんと事実を伝え、子どもとともに考えることが必要と考えますがいかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 

放射能に関して心配している保護者の不安を受けとめ疑問に答えてくれるような電話相談窓口があればと思います。放射線の専門家や小児科医、保健師などの医療関係者、カウンセラーなどが対応できるような電話相談があれば、子どもをもつ保護者だけでなく多くの区民にとって不安は軽減されると考えるものです。

 

杉並区で子どもを放射線の被害から守るために区は最大限の努力をすべきと考えます。区の決意をうかがいます。

 

このように大きな不安をこれからも長期間強いられることになった放射能汚染の原因は原発事故です。

 

これまで区内の子どもを守る取り組みについて述べてまいりましたが、高い放射能汚染が確認されている福島県内の子どもたちのことを忘れてはなりません。文部科学省はその汚染状況に合わせて1年間の基準を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩めると発表し、日本国内のみならず海外からも強い批判と抗議を受けました。現在は「年間の基準値を1ミリシーベルトにするよう努力する」と変更しましたが、子どもたちを守ることを最優先に考えているとは言えない対応がとられています。大人として区内の子どもを守ることと同様に、福島県内の子どもたちを守ることにも取り組んでいかなければなりません。

今回の福島第一原子力発電所の事故は、原発が人の手で完全に制御できるものではないこと、多くの被曝労働者を生み出し続けること、一度事故が起これば数十年にも渡り空気、水、土壌、海を汚染し、食物の安全も根底から壊されてしまうことを明らかにしました。原発はトイレの無いマンションと言われていますが、使用済み核燃料は最終処分方法が無いままに生み出され続け、それが原発の傍に容量を超えて置かれている状態です。原発を使い続けることは負の遺産を生み出し続けることです。今こそ、脱原発の決意をするときです。そして「足るを知る」省エネの暮らし、自然エネルギーへの転換を進めるべきだと考えます。放射能汚染の根本原因を取り除き、子どもたちに安心して暮らせる社会を残すために、議会、行政が一体となって区民とともに脱原発を強く進めていくべきと申し上げ、私の質問を終わります。

予算特別委員会意見開陳 2011.3.10 小松久子

予算特別委員会の最終日にあたり、当委員会に付託された2011年度一般会計予算をはじめとする諸議案に対し、区議会生活者ネットワークとして意見を申し述べます。

 

田中区政における初の本格予算の提案を受け、委員会での質疑をとおして、また、資料をもとに会派で調査した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案および条例案について、賛成すべきと判断いたします。その立場から、以下、時間の制約により述べられなかったことなど、何点か絞って申し上げます。

 

国の政治が混迷を極めています。機能不全に陥った国会のありさまを見るにつけ、政権交代を選択した国民の期待にこたえられない与党も与党なら、その足を引っ張るだけの野党にも見識と呼べるほどの見習うべきものなく、国民の生活がただ置き去りにされています。そして、ここに至るまで世論を育てようとせず政局不安をあおり続けたメディアの責任を、厳しく問いたい思いでいます。

 

世界に目を転じれば、情勢は日々動いています。中東のアラブ諸国でひろがった反政府運動は、長引く経済不況とそれによる貧困層の拡大を背景に、長期政権によって抑圧された民衆の怒りがインターネットを通じてまたたく間に伝播し増幅された民主化運動ととらえれば、歴史の必然だったといえるのかもしれません。しかし、緊迫する情勢を受けて原油、穀物などの価格上昇がすでに始まっており、日本の私たちのくらしに確実に影響を及ぼしつつあります。

 

また、ニュージーランドでおきた大地震が日本からの多くの留学生の命を奪ったように、地球が小さくなっている今日、世界の動きを常に視野に入れながら、生活に最も身近な自治体が果たすべきことを実行していかなければなりません。

 

2011年度予算でもっとも注目すべきことのひとつは、生活保護費の増大です。142億円という、ついに一般会計予算の1割を占めるまでになったことは深刻です。受給者の3割を占める70歳以上、6割に及ぶ60歳以上という、高齢者の貧困問題もさることながら、子どもの貧困がどこにでもある状況が、「質の高い住宅都市」をめざす当区において存在すること、小学生の20%、中学生の30%が就学援助の認定を受けているということは、高齢者とは別の意味で、早急に調査・分析のうえ対策が必要です。

 

契約制度検討委員会が組織され、中間のまとめが昨年末に出されました。区施設において、管理委託事業者の倒産により従業員の給料支払いに支障が起きた事件の教訓から、委託業務における「労働関係法令遵守の確認」制度の充実策への取組みを打ち出すなど、評価するところです。10月に最終報告がまとめられるとのことですが、以前一般質問で述べた、NPOなどの市民活動団体との「協働」における対等な関係のもとでの契約のあり方についても検討の俎上に載せていただきたい、とあらためて要望いたします。

 

行政委員の報酬のあり方について、見直すべきときが来ています。先ごろ住民監査請求が出された選挙管理委員の報酬については、勤務実態が全くなかった6か月間に報酬が支払われていたという事実を前にすれば、請求者のほうに理があることは明白であり、この制度をこのまま放置し続けることは区民の理解を得られません。この機会に日当制の検討にとりかかるべきです。

 

南伊豆健康学園の廃園に関して申しあげます。

耐震上の課題、また限られた財源を考えるとき、行政評価委員の出した廃止という結論は、10年前に決まっていたことでもあり、やむを得ないと感じるところもあります。が、その反面、後味の悪い思いがどうしてもぬぐえません。理由の第1は、学園が果たしてきた福祉的な側面に光が当てられることなく評価が行われたことです。南伊豆健康学園は、健康上の問題を抱える子どもの全寮制教育施設という位置づけですが、養育に課題のある家庭の子どもや、地域でくらすことが一時的に困難な子どもの緊急避難的な生活施設としてかけがえのない役割を果たしてきたと思います。

 

そのような現実をふまえたとき、これらの課題をおそらく共有していると思われる、他の自治体と協力し合うことが考えられないものでしょうか。特別区長会にはエリアによって4つのブロックが設定され、杉並区は中野、豊島、板橋、練馬の各区とともに第4ブロックに所属しています。特別区長会が実施する事業は、1番目に「共通する課題についての連絡調整および調査研究」とうたわれています。南伊豆の施設は高齢者用に変更するとすれば、健康学園の代替策は別の地で展開することになるでしょうから、ぜひ他の自治体区長との調査・研究に着手されるよう望むものです。

 

そもそも特別区長会は、重要な議論が行われる場であり、国民健康保険の統一料金や人事、ごみ処理など区民のくらしに密接したことが実質的に決まる場であるのに、都区制度のもとでの特別区という位置付けのあいまいさが反映されてか、不透明かつ区民が直接意見を言えないしくみです。それだけに健康学園を共同で運営する、というような事業にも取り組んで、特別区長会の存在意義を示していただきたいと思います。

 

関連して、教育問題について申し上げます。4月から全面実施となる新学習指導要領の内容については、「脱ゆとり、詰め込み教育復活」という指摘にうなずける部分があり、授業時数が増大する一方での総合的学習の時間の大幅削減に対し、「環境教育と環境行動あってのエコスクール」「エコスクールのもとでこそ環境教育」として展開されてきた取り組みが後退する不安を感じていました。けれども、各教科を横断的につなぐ理念として「持続可能」というキーワードをおくことで、これまで積み上げてきた実践が生かされ、さらにひろがりをもたせられると今は考えています。国連で定めた「持続可能な開発のための教育の10年」のうち7年目にあたる今年、新しい学習指導要領のもとでの新たな展開を期待します。

 

学校司書について、区は今の課題として各学校での受け入れ態勢や学校間格差についての認識を示されましたが、中央図書館の体制には言及されませんでした。これまでの区の取り組みを高く評価し今後に期待する立場から、中央図書館および地域図書館のサポート体制についても、ぜひ強化をお願いいたします。

 

さて、新まちづくり基本方針の策定について質問いたしました。

1992年の都市計画法の改正で、住民の意見を反映させるための必要な措置を講ずることが義務化され、市区町村が策定権限を持つ都市計画マスタープラン制度が創設されました。1997年のまちづくりマスタープラン策定に際し、それまで市民にとって難しく遠い存在であった都市計画を少しでもわかりやすくと区は14会場での説明会やポスターセッションを開催、また、シンポジウムも開催されました。この杉並区の取り組みは、都市計画マスタープランへの市民参加のあり方を探っていた他自治体職員や市民にとって、先行事例として紹介されることも多くありました。区にとっても住民にとっても「初めて住民が都市計画の分野に参加する」経験であり、「ともにつくる」「汗を流す」協働という言葉がふさわしいものとなりました。

 

しかし2002年、「21世紀ビジョン」に整合させるために行ったまちづくり基本方針の見直しは、形だけの市民参加にとどまったことが残念でなりません。このころに策定した後発自治体の都市計画マスタープランには、市民参加の手法や市民参加を重視した見直しのルールなどが規定されるなど、当区よりも進んだ市民参加の方法が盛り込まれています。

 

2009年に改正されたまちづくり条例では、「まちづくり基本方針を策定するに当たっては、区民等の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする」と書かれていますが、今回の新まちづくり基本方針づくりは基本構想のなかで行うという方針が出され、今の時点で住民参加の気配が見受けられません。

 

1992年の都市計画法改定から20年以上が経過したいま、市民参加の新しい手法が編み出されています。広く多様な市民の参加を可能にする、無作為抽出による市民討議会の手法を、一般質問では基本構想づくりにおいて実施するよう提案しましたが、新まちづくり基本方針の策定にあたっても試される価値があると考えます。検討を求めます。

 

つづいて、南北バスと自転車のまちづくりについて申し上げます。一昨日の8日、交通基本法案が閣議決定され、このなかで自転車も移動手段として位置付けられました。

 

高齢者・障がい者を含むだれもが、いま住んでいるまちに住み続けられるために、また、社会参加が保障されるための移動の手段を考えたとき、交通手段をコミュニティバスにするのか、自転車でいいのかなど、全体として捉える必要があることを、今議会で再三申し述べてまいりました。いま、まさにまちづくり基本方針が見直されようとしているときにあって、まず地域交通計画を策定したうえで、自転車、福祉交通、交通事業総体の施策体系を示しながら住民の移動方法を考えていくべきであることをこの場でもう一度申し上げます。

 

自然環境調査と河川生物調査について申し上げます。5年に1度の調査をこれまで5次まで行い、25年が経過しました。専門調査員と公募のボランティア調査員、身の回り調査員など、多くの区民の参加により行われてきた調査です。データをとることとともに、調査に参加する方たちの環境に対する意識を大事にしたこの調査ですが、3年間で3000万円という予算は果たして税金の使い方として十分なのかという視点で、見直しがされると伺いました。

 

これまで調査を継続して行ってきた方たちの蓄積が生きる形で見直しがされるよう求めるものです。また、質疑の中で調査年度を自然環境調査と河川生物調査を合わせることを要望しましたが、2つの調査を別々に行うのではなく、一つの調査としてするのはいかがでしょうか。川の生き物調べを行っている小学校と、それを指導する市民環境団体が一緒に調査をしようという提案です。より多くの市民が調査に参加することで地域の環境を知り行動するという目的に合致した方法だと思います。ご検討ください。

 

昨年の第1回定例会は「減税自治体議会」といってもよいほど減税構想一色に染まった感がありました。思えば遠い昔のことのようであり、いまや風向きはまったく変わりました。ただ、ここで指摘しておきたいことは、減税自治体構想の暴走を許したことの責任が、ほかならぬ議会の側にもあったという事実です。杉並区議会は二元代表制の一翼たりえたのか、という観点からの自戒を込めた検証がなされるべきと考えます。

 

早いもので、私たちの任期満了のときが近づいています。統一地方選挙を間近に控え、今回は地域政党に関心がもたれるようになっていますが、元祖・地域政党を自認する生活者ネットワークとしては、首長追随型の政党と同列に語られることには戸惑いを禁じえません。私どもは、政治は生活を豊かにする道具として使いこなすため、分権を獲得し、市民の手に政治を取り戻すことにこれまでも取り組んできました。そしてこれからも、そのために力を拡げていく決意であることを申し上げ、会派の意見といたします。

区議会第1回定例会一般質問 2011.2.15小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、地域自治について、プラーヌンクスツェレ(市民討議会)について、チャイルドラインについて、以上3つの項目について質問いたします。

 

いま国会では、国民の生活より党議党略が優先するような状況ですが、国づくりの理念を推進する土台として「行政刷新」とならんで「地域主権改革」が位置づけられたことは、分権を勝ち取ることをテーマの一つとして活動している生活者ネットワークとして、これが一歩前進する力になると期待をもっています。と同時に、この動きを現場である地域から、確かなものにしていく必要を感じています。

 

区長の選挙公約のひとつは「区内分権の推進と地域ごと予算の創設」ですが、その実現のためには、これまでの区の地域内分権の取組みについての総括が必要と考えます。区における地域内分権についての議論は、「地域内分権の推進に向けた研究会」を庁内組織として設置し、06年、地域自治組織のモデルとして地区教育委員会を提案するなど、試行錯誤を重ねてこられました。最初の質問として、これら一連の取組みについて、区長の見解をうかがいます。

 

結局、地区教育委員会の具体的検討には至りませんでしたが、区では、その後08年「集会施設等運営協議会」のあり方について庁内で検討が行われました。出された報告書には「地域団体のネットワーク化と自治型コミュニティ形成をめざして」とサブタイトルに明記され、地域区民センターを拠点として地域の自治を展望していこうとする視点に共感しました。そこで09年第1回定例会議会での一般質問にとりあげましたが、具体化に向けた実行策は示されませんでした。

 

しかし、先ごろ町会・自治会、NPO、地域区民センター協議会が一堂に会する場として、すぎなみ地域大学とNPO支援センターの企画により、初めて開催された「地域活動団体交流会」は、先ほど述べた「地域団体のネットワーク化と自治型コミュニティの形成をめざす」という、あり方検討の報告書の内容にそったものと感じました。この理解でよいか、区の見解をうかがいます。

 

地域施設等運営協議会は「地域区民センター協議会」と名称が変わり、今年度より事務局体制も変わりました。地域活動係を区民センターの中に移し、従来の業務のほかに区民センター協議会の事務局も担うようになっています。この目的は何でしょうか。また、1年弱ではありますがやってみての成果と課題をどのようにとらえておられるか、おうかがいします。

 

「地域活動団体交流会」には70もの団体が参加したと聞きました。この開催目的、参加を呼びかけた団体など、概要はどのようなものだったのでしょうか。また実施当日の参加者の声などお示しください。併せて、開催結果についての区の見解をうかがいます。

 

この試みを今後継続し発展させていくべきと考えます。2回目以降の会の開催予定はいかがでしょうか。またその場合、会のもち方は地域別、テーマ別などいろいろ考えられるものの、地域の課題を地域で解決できるような自治型コミュニティを育てていくためには、地域ごとの開催が必要と考えます。区のお考えはいかがか、うかがいます。

 

このたびの初回は地域大学とNPOセンターの協働による開催でしたが、今後、地域ごとに開催されるとすれば、地域センター協議会がその中心となってゆくべきでしょう。また参加団体としてケア24や児童館などの福祉関連施設や、学校、図書館などの教育関連施設、商店会なども当然ながら参加が望まれます。またNPOなどの市民活動団体の参加も不可欠であるため、NPO支援センターもかかわっていく必要があると考えます。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 

「自治型コミュニティを形成する」という考え方は、町会・自治会にとっては、これまで続いてきた地縁組織というあり方に加えて、もっと幅広い地域の機関や団体との連携を図るという発想の転換が必要とされるのではないでしょうか。「広報すぎなみ」211日号1面の町会・自治会特集では、従来型の発想に基づいた編集にとどまっていると感じましたが、地域のNPO等の市民活動団体との交流・連携を促すべきと考えます。この、自治型コミュニティという考え方に立ったとき、いまの町会・自治会が抱えている課題は何か、その課題をどのように克服していこうとされているのか、区の見解をうかがいます。

 

その意味からも、このたびの予算で提案されている町会掲示板の改修費用助成の増額については、せっかく増額するのであれば、地域の自治を担うメンバーであるNPOなどの市民活動団体もイベントなどのお知らせを掲示できるようにすべきと思います。そのような双方の関わりがあってこそ、地域での連携も促進されるものと考えます。うかがって、次の質問に移ります。

 

つづいて、プラーヌンクスツェレ(市民討議会)について質問いたします。「プラーヌンクスツェレ」というのはドイツ語で、英語でいうと「プランニング・セル」、ドイツで考案された、市民参加のひとつの手法です。これを直訳した日本語は「計画細胞」ということになりますが、日本での実施には一般的に「市民討議会」という言葉があてられ、最近自治体での実践例がひろがりつつあります。それは、どの自治体も「新しい公共」を実体としてつくっていく必要に迫られる現在、量・質ともにより高度な市民参加が求められているからであり、その意味でこのプラーヌンクスツェレに可能性を見出しているからだと思います。

 

具体的な説明は後ほど述べることとし、この項の最初に区の現状を見てみたいと思います。

 

昨年11月に実施された基本構想アンケートの結果が公表されました。5,000通近い回答が寄せられたことと併せ、「協働の地域づくり」について回答者の8割以上の人が「参加したい」と答えていることに、私も驚くとともに、杉並区民の積極性を誇りたい思いです。区民の区政への関心の高さがうかがえます。

 

ところで、区は自治基本条例に基づき区民の参加を進めてこられ、09年にはパブリックコメント条例も制定されました。しくみをつくることに関して、区が積極的に取り組んでこられたことは承知しています。しかし区のとらえる区民参加の枠が限定的であり、区民に対する信頼感がいま一つと感じているのは私だけでしょうか。区政への区民の参加のあり方について、これまでの区の取組みをどう評価し、今の課題をどうとらえておられるか、最初の質問としておうかがいします。

 

再びアンケート結果に戻りますが、回答者は男女比が46、年齢は60代以上が約7割であり、年代層の偏りが見られました。介護や医療問題が「10年後に必要なこと」の1、2位に挙がったのは当然と思われます。アンケート方式は「意思ある人」の意見のみが引き出され、サイレントマジョリティの声を拾うことはできないしくみです。また、一方的に「意見を聴く」というだけのアンケート調査には、意見を返し・返されるやり取りを経て議論を深めることは望めませんから、限界があるわけです。

 

基本構想審議会の中でも委員として述べたことですが、今後、他の年代層、とくに回答者の10%に満たない30代以下の人たちの声を拾う努力をしなければなりません。それには、アンケートとは別の市民参加の工夫が必要なのではないでしょうか。

 

市民参加の新しい手法といえば、外郭環状道路の「必要性の有無から議論する」として何年もかけてPI協議会からPI会議、さらに地域PIへと名前を変えながら続けられてきたPI(パブリック・インボルブメント)を思い浮かべる人も多いと思いますが、ここで提案したいのは、プラーヌンクスツェレです。パブリック・インボルブメント、すなわち住民参画とは名ばかりの、賛否の議論がかみ合わないままに終始した経過を私も傍聴席から見てきてがっかりさせられ、「あれはよかった」と評価する声を聴いたことがないPIですが、実際に見たり関わったりした人の事後評価の高いのがプラーヌンクスツェレです。

 

プラーヌンクスツェレが市民参加の新しい手法として注目を集めているのは、住民基本台帳などからの無作為抽出によって呼びかけるため、参加するかしないかは呼びかけられた人の自由意志ではあるものの、まんべんなく多様な市民の参加が期待できることです。また有償であるために参加者の責任感がある程度確保できること、少人数による密度の濃いグループ討議、討議に臨む際に必要な情報提供を受け準備が保障されること、参加者の投票による決定、などを特徴としています。しくみの設計は裁判員制度に似ていると考えればわかりやすいかもしれません。

 

新宿区でも昨年、自治基本条例の制定にあたりプラーヌンクスツェレの方式が採用されました。この実績では、参加者の属性は2014%3016%4014%5014%6022%7016%と、極端な偏りがなく、幅広い年齢層からの参加が得られています。討議の企画運営はプロポーザルにより選定されたNPOが受託し、事前準備から当日の進行を事務局として担当しました。

 

杉並区の基本構想づくりは、いま緒についたところです。まちづくりへの参加意識の高い杉並区民には、試してみる価値のある手法だと思います。策定に至るまでのプロセスにおいて、この手法を取り入れてはいかがでしょうか。お考えをうかがいます。

 

さて基本構想づくりに関連して最後にもう1点、おたずねしたいことは、10代の子ども・若者の声を聴き出す努力が別途、必要ではないかということです。子どもも地域社会を構成するメンバーですから、意見表明の機会が設けられなければなりません。その場合はプラーヌンクスツェレの手法によらない、大人とは別枠で、区の側から子どもの中に入っていくような工夫が必要だと思います。10代の子どもの基本構想づくりにおける子ども参加について、区の見解をおうかがいして、3つ目の項目、チャイルドラインについて質問いたします。

 

このチャイルドラインも、子どもの声に耳を傾けるという、子どもの権利にかかわる問題を提起したいという思いで、とりあげるものです。

 

どの子どもも、生まれながらにして「その子らしく」成長することができる、その権利がある、という「子どもの権利条約」の理念から除外された子どもが、残念ながら日本には少なくない状況です。現時点で高校の無償化から朝鮮学校だけが排除されている問題はもちろん、虐待により死亡する子ども、いじめを受けて自ら死を選ぶ子どもが後を絶たないことがその証左です。いたましい事件の背後には、その一歩手前の状況におかれている子どもたちの存在があります。また、少年犯罪が低年齢化のうえ増加しているかのようにいわれますがそのような事実はなく、むしろ子どもが被害者となる事件こそ増加の一途をたどっていることに、もっと目が向けられなければなりません。

 

被害者となる子どもをつくらないため、子どものSOSを受けとめるしくみが十分に機能しているか、点検する必要があります。

 

当区では、子どもの声を電話で受けとめるおもな機関として「ゆうライン」があり、学校にかかわる領域に関してもさまざまな機関が電話相談を受け付けています。これらの区の取り組みが果たしている役割と、これまでの総括を区はどうとらえておられるか、うかがいます。

 

「ゆうライン」は子ども家庭支援センターの事業のひとつとして、センター内に専用電話が引かれています。2010年度の実績は、大人からの相談件数1,213、子どもからの相談件数108とうかがっています。そこで、「ゆうライン」に関連して3点おたずねします。

 

1点目、電話をかけてくる子どもの年齢分布はどのようになっているか。2点目、子どもからの相談の内容はどのようなものか、件数の多いのはどのようなことか。そして3点目、これらの内容から察知される、子どもが抱える・子どもを取り巻く問題を区はどのようにとらえておられるか。以上、あわせてお答えください。

 

さて、それにしてもゆうラインの年間の相談件数108は、多いとはいえません。ゆうラインの受付時間帯については私たちも要望し、夜7時までの延長が実現したことは評価いたしますが十分とはいえません。また行政が実施する相談事業は、たとえ秘密厳守をうたっていてもアクセスするのにハードルが高く、一部の事業は私立学校に通う子には有効ではありません。

 

ここでご紹介する、民間NPOが運営するチャイルドラインは、「ゆうライン」のように相談を受けて問題解決の方法を追求するというより、子どもによりそい、気もちを受けとめる電話受信システムです。みずから自覚して発するSOSも、無自覚なりに発せられるメッセージも、子どものまるごとあるがままを受け入れる場が、チャイルドラインです。

 

998年に世田谷で実験的に始められ、昨年331日現在、39都道府県、68団体で実施されるまでになりました。09年の全国統一フリーダイヤル導入により、20101月から9月までの9か月に、全国で延べ123千件、東京都内ではその10%にあたる1万件の着信がありました。

 

その中には、深刻な悩みを打ち明ける子もいますが、すぐ切れたり、無言だったりが半数近くあり、一言やお試しが2割で、会話が成立するのは3割に過ぎません。それでも、無言や一言の向こう側にだれかがいて受けとめてくれる、電話を通して人とつながっていることで自分の居場所を確認できる子にとっては、どんな声が応答するのか確認するだけでも、心の安定を保つために必要なツールと言えるでしょう。別の見方をするなら、そうしなければいられない子どもの孤独が見えるはずです。

 

09年度の集計では、電話をかけてくる子の男女・年齢別でいえば、男子高校生が23%で最も多く、男子の年齢不明が21%、これに比べて女子は小学生が13%で最も多く、女子高校生は10%となっています。会話が成立した電話の内容は、男子では性に関することが26%、女子は人間関係が23%で1番多く、2位は男女いずれも雑談・話し相手となっています。雑談のできる場であるということが重要です。たわいない雑談を何度かへてようやく、虐待を受けているというようなことを打ち明ける場合があるからです。

 

電話の「受け手」と呼ばれるスタッフは、子どもが自覚のないまま性的被害・性的虐待を受けている事実がわかったとき、本人が被害を認識するように、よりそって対応します。子ども自身が問題のありかを認識して解決を求めてくる相談とは違って、本人に自覚がなくてもかけられるチャイルドラインは、子どもにとって「話を聞いてくれる」「自分を受けとめてくれる」貴重な窓口になっています。

 

子どもからそのように信頼を得てきたのは、「ヒミツをまもる」「どんなこともいっしょに考える」「名乗らなくていい」「切りたいときは切っていい」という4つの原則が貫かれてきたからであり、非営利の民間組織であればこそできたことといえます。

 

そこで質問です。このような活動について、区の評価はいかがでしょうか。うかがいます。

 

チャイルドラインは市民のボランティア活動により運営されていますが、普及・啓発には行政の支援が欠かせません。当区でもチャイルドラインのPRカードが、教育委員会をとおして学校で子どもたちに配布されています。区立小学校全校の4年生と6年生を対象に、合計2,886枚、中学校の全学年生徒に6,409枚、合計12,260枚が昨年秋に配られました。(カード実物と拡大版を示す)

 

杉並区内にはチャイルドラインの活動組織がないため、これらは中野区内の活動団体が負担し、中野経由で配られています。杉並区内の子どもがかけるチャイルドラインへのフリーダイヤル電話は、他地域のボランティアが受け、全国組織であるチャイルドライン支援センターが通話料を負担しています。

 

フリーダイヤル導入はアクセス数を飛躍的に伸ばしましたが、同時に担い手側の経費負担も大きくしました。この事業にかかる経費はすべて担い手側が負担するケースがほとんどであるため、どこも苦しい経営状況を強いられています。「受け手」のスタッフは無償であるばかりか、運営費も自腹を切って活動を支えています。場所の確保、電話の設置、受け手の研修費、先ほどのPRカード代をふくめ普及・啓発にかかわる経費など、通話料以外はすべて持ち出しで活動が行われます。最大の負担は場所代で、活動継続が困難になる原因の多くが設置場所の家賃の支払いです。

 

チャイルドラインの事業は、行政が介入しないことで活動の独立性が担保されることは確かです。けれども、これを子どもにとって必要なしくみと評価するなら、活動に対する公的な援助の手が差しのべられるべきではないでしょうか。

 

実はいま、杉並区内でもチャイルドライン活動組織を立ち上げようという動きが始まりつつあります。現在16時から21時までが受け付け時間帯ですが、日曜日は活動を休みとしている地域が多いため、「かけてもつながらない」子どもが月曜から土曜日までは約20%から30%であるのに対し日曜日は60%になります。杉並での活動が実現し日曜日でも受け付けることになれば、この状況を改善することができます。

 

もしこれを区が支援すれば、それはこの動きを進める力になり、間接的にでも区のシステムでは拾えなかった子どものSOSや子どもを取り巻く問題を把握できることにもなります。正しい現状認識は行政ニーズを導き出すために欠かせません。子どもの最善の利益を追求するために、区はこの動きを支援すべきと考えます。いかがでしょうか。最後の質問として、おたずねします。

 

タイガーマスク、そして伊達直人の贈り物は、自分の名誉のためでなく誰かの幸せのために何かをしたい、という多くの心ある人の気もちを目覚めさせ、これが日本にも寄付の文化が根付くきっかけになるのかもしれない、という期待を抱かせてくれました。子どもの権利を守ろうとする市民の活動が継続するためにも、善意の寄付がもっと気軽に集まり、生かされるような社会にしていきたいと考えつつ、私の質問を終わります。

区議会第1回定例会一般質問 2011.2.15.市橋綾子

私は、区議会・生活者ネットワークの一員としまして、1.水鳥の棲む水辺づくりについて、2.自転車のまちづくりについて、以上2項目について質問いたします。

 

まず、最初の項目「水鳥の棲む水辺づくり」についてうかがいます。

杉並はご存じのように、東京の河川として代表される神田川の上流域に位置し、神田川、善福寺川、妙正寺川の3本の川が流れる神田川の流域面積が一番広い自治体です。

 

私は、「川を地域のオアシスに!」を合言葉に、川に親しむくらしをこの杉並区にとりもどしたいと、地域の川・水・みどりに関する活動団体の方たちとともに活動してきました。杉並区は、将来像を「区民が創る『みどりの都市』杉並」を掲げ、そのなかで「水辺をよみがえらせ みどりのまちをつくろう」を目標に、これまで歩んできました。現在、田中新区長のもと、新しい基本構想づくりが始まりましたが、今後もこの歩みがさらに着実にすすめられるような議論を期待し、川への思い入れを持つ一人として質問いたします。

 

このたび、新しい基本構想づくりにむけた区民アンケートの結果が報告されました。10年後もあなたが住み続けたいと思うまちにするためにはどんなことが必要か、という問に対し、介護・医療、防犯、災害対策に続き5位に「水辺・みどりの保全・創出」が入りました。また、大切にしたい杉並の魅力として

「水辺・みどり」が上位に入っています。区民は、杉並区の自然環境を誇りに思い、うるおいのある憩えるまちに暮らしたいと思っていることがわかります。

今回のアンケートの結果である水とみどりへの高い区民意識に対し、区長はどのようなお考えをお持ちでしょうか、伺います。

 

先日2月5日に開催されました「水鳥の棲む水辺づくり創出事業」シンポジウムに関連して2点伺います。

「水鳥の棲む水辺づくり創出事業」は2008年から区が取り組みを始めたもので、杉並区だけを流れる善福寺川において、水鳥に着目しながらうるおいと安らぎのある水辺環境を再生・創出することを目的にした事業です。この事業を多くの人に知ってもらい一緒にすすめていこうと毎年シンポジウムが開催され、先日3回目が西荻地域区民センターでありました。私も毎回参加していますが、今回も200名を超える参加があり、この事業への関心が高いことがわかります。

このように区民の関心が高く、杉並区の特徴である豊かな水辺を生かす「水鳥の棲む水辺創出事業」を今後も継続して取り組んでいくべきと考えますが、区長のお考えを伺います。

 

今回のシンポジウムでは善福寺1丁目にある井荻小学校6年生の学習発表がありました。子どもの参加はシンポジウム始まって以来、初めてのことです。井荻小学校では4年生から卒業までの3年間、善福寺川の清掃活動を通じて川の中の動植物や、善福寺公園に来る野鳥の観察を続けています。そのなかで、子どもたちの「川が臭いです」という実感こもった発表がありました。なぜ川が臭いのか。河川への下水の流入が問題であることに気づいた子どもたちが、当日のパネラーである都や区の担当者に「下水を川に入れないでください」と要望する場面に会場から賛意を表す大きな拍手がおこっていました。

 

2011年度の予算編成を、「質の高い住宅都市『杉並』をめざす」と掲げている当区においては、洪水対策とともに河川への下水流入問題を解決する必要があると考えます。区として井荻小の子どもたちの要望をどう受け止めたのでしょうか、伺います。また、区は子どもたちの声を受けて、東京都下水道局に分流式下水道へのつくりかえなど、問題解決を図るよう改めて要望すべきと考えますがいかがでしょうか、お答えください。

 

下水流入問題の解決策の1つに雨水の「貯留・浸透」があります。

そこで雨水の貯留と浸透について4点うかがいます。

まず雨水浸透ますについてです。

当区では住宅に雨水浸透ますを設置する場合、新築、既存に関わらず助成を行っていますが、実績として年間何件の浸透ますが設置されているのでしょうか。雨水流出抑制を着実にすすめるためには浸透ます設置の数値目標をたてて行うことが必要と考えますがいかがでしょうか、あわせて伺います。

 

2点目、「貯留」の位置付けについてです。

当区の雨水流出抑制のパンフレットには、浸透策として浸透ますをはじめ、透水性舗装、浸透トレンチ、浸透側溝など「浸透」について丁寧に説明されています。しかし、「浸透」の説明に比べて、「貯留」は地下貯留槽だけの紹介が1か所あるだけです。普通の住宅でもそれほど大掛かりな工事を必要とせずに設置できる雨水貯留タンクの説明はどこにもありません。「浸透」は地下水の涵養といった水循環を図る環境対策であるとともに、雨水を一気に下水管に流さないための雨水流出抑制策です。では「貯留」はどうでしょうか。雨水を貯めて生活用水に利用する「貯留」は循環型社会にそった環境対策であるとともに、こちらも雨水を一気に下水管に流さないための雨水流出抑制策だと考えます。

広報すぎなみでも「水害に強いまちづくり」として浸透・貯留がともに紹介されるようになったことは評価をするものですが、雨水流出抑制のパンフレットにおいても「浸透」だけではなく「貯留」、それも地下貯留槽だけでなく貯留タンクも同様に載せるべきと考えます。そもそも、区として貯留の効果をどうとらえておられるか、伺います。

 

3点目、雨水貯留の助成について伺います。

善福寺川の上流域、荻窪中学校前の原寺分橋の下に大きな湧水ポイントがあります。湧水脇の護岸には大きな雨水の吐き口があり、武蔵野市に降った雨がここから出てきます。武蔵野市も合流式下水道ですので下水と一緒になって流れ込むため、この周辺にお住まいの方たちは悪臭にずっと悩んでこられました。

 

これまで、私ども生活者ネットワークの議員は代々、東京都の下水道局や武蔵野市の下水道部を訪ね、原寺分橋下の吐き口に武蔵野市の下水を流さないでほしいと何度も訴えてきました。武蔵野市はこのたび、下水の希釈率が低い一番汚れている初期雨水を合計で1万1200立方メートル貯留する雨水貯留槽を2か所に設置することを決めました。これは、原寺分橋の吐き口から年に約50回流出するとされる回数のうちの半分、26回相当を改善する計画だそうです。また、同市は雨水浸透ますだけでなく、雨水貯留タンクの設置に助成を始めており、加えて来年度からは新築時の雨水浸透ます設置を義務化されると伺っています。雨水吐き口からの下水流出防止策を他市に依存するだけで、当区は知らん顔でよいわけはありません。善福寺川の雨水吐き口68か所のうち、武蔵野市からの2か所を除く66か所の吐き口からは、杉並区民が出した汚水が流出するわけで、当区としても、新築時の雨水浸透ますの設置の「お願い」だけではなく義務化をすべきと考えます。

 

しかし、先ずは「貯留」です。当区では、小中学校の校庭に雨水貯留槽を計画的に設置しており、いま3分の1の23校が終わりました。1年に2校ずつ設置される計画ですので残り44校が完了するまでにあと20年以上かかります。スピードアップを望むものですが、それを補えるのが民間です。家庭用の雨水貯留タンクの平均的な容量は100から200リットルと1戸あたりにすれば少ない量ですが、たとえば200リットルタンクを上流域1000世帯に入れれば学校のプール半分以上の流出抑制になり、十分洪水対策にも下水流出抑制にもなる量です。すでに都内10区4市が雨水貯留タンクへの設置助成を行っています。当区としても、井荻小の子どもたちの声にこたえる必要があると考えます。一般家庭に雨水貯留タンクの設置を促すために当区としても助成をすべきと考えますがいかがでしょうか、伺います。

 

4点目、雨水貯留・浸透の広報について伺います。

毎年、善福寺川をはじめとする川の活動団体が合同で「善福寺川フォーラム」を開催し、雨天時の河川への下水流出問題を取り上げています。昨年の第11回目は「善福寺川復活のカギは下水道」をテーマに下水道の専門家4名と区の担当者を交えたパネルディスカッションが行われました。毎回、参加者は河川が抱える合流式下水道の問題に驚かれてお帰りになる、つまりご存じない方が多いという状況です。これまで区は、雨の時期に区報により雨水の貯留・浸透を呼び掛けており、一定の評価をするものですが区報だけでは足りません。

 

「雨水浸透ますの設置件数 世界一」と言われている小金井市では、庁舎内に雨水浸透ますの現物の展示がされ、市民にとって身近なものになっているそうです。当区においても区庁舎や洪水が多発する地域の区民センターなどで、河川への下水流出問題の掲示とともに雨水浸透ますや貯留タンクの常設展示をするなど広報の強化が必要と考えるところですがいかがかでしょうか、お答えください。

 

次に済美公園の親水テラスについて伺います。

縄文の時代から人は水辺とともにあり、少しでも水辺に近づきたいと願ってきました。しかし、川のすぐそばまで多くの人が暮らすようになり、洪水対策が優先された結果、川は深く掘り下げられ、護岸や川床がコンクリートで固められて、人々は川に背を向けて暮らすようになってしまいました。しかし、近年は水辺に近づきたいという人々の声により、水面近くまで降りられる親水テラスがあちこちの河川につくられるようになってきました。当区でも昨年、善福寺川に面した区立済美公園と一体となった親水テラスがつくられました。周辺住民の方たちの参加で公園の案がつくられ、工事が行われたのですが、完成するころになって予想していなかった光景が現れ、住民の方からは怒りと落胆の声が私のところに寄せられています。

 

親水テラスの対岸、つまり正面に雨水の吐き口が現れ、親水テラスというより雨水吐き口観覧テラスと言った方がよい状況になっています。その結果、雨の後は、川の中の植物やテラス近くに汚物が滞留するなどして、とても親水テラスを楽しめる状況ではありません。区はこういう状況になることを事前に把握していらっしゃらなかったのでしょうか。区は都に対して、雨水吐き口を下流側に移設することを要望すべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解をお示しください。

 

この項目の最後の質問です。

東京都が2006年に策定した「10年後の東京」が計画期間の折り返し地点に入ることから、昨年12月「実行プログラム2011」を発表しました。その主な事業に、「隅田川の再生」事業があげられています。水の都(みやこ)東京として象徴的な河川である隅田川の再生事業の成否は、隅田川に注ぎ込む神田川、なかでも神田川水系全体で雨水吐き口335個、その2割にあたる68個がある善福寺川、つまり杉並区の取組にかかっていると言っても過言ではありません。神田川上流域自治体の首長として、下水流出問題をどうお考えか、伺います。

 

東京都が策定した先ほどの「実行プログラム2011」において、ゲリラ豪雨による浸水被害を軽減することがあげられました。都が計画したままになっている善福寺川上流域への雨水貯留管の早期設置をのぞむものです。

 

次に2つ目の項目、自転車のまちづくりについて伺います。

私たちの暮らしに身近な乗り物である自転車は、人力だけで動くという点から徒歩とならんで最も原始的な移動手段で、そのため環境に負荷をかけない健康にもよい乗り物だと言われています。私も、年間通じて自転車で区内を走り回る自転車愛用者の一人として、四季折々の風を受けながら自転車での移動を楽しんでいます。

私は、自動車に依存しすぎてきた社会から脱却をせねばならないとの思いと、質の高い住宅都市は歩行者が楽しく散歩や買い物ができるまち、自転車が自動車に脅かされずに快適に走れるまちにしたいという思いを持つ者として、今回自転車のまちづくりについて質問をいたします。

 

自転車のまちづくりをめざして具体的な施策として策定された「杉並区自転車利用行動計画」の計画期間である2010年を迎えています。自転車のまちづくりに向けての行動計画として、1.歩くことや適正な自転車利用の促進、2.歩行者・自転車利用者のための道路環境づくり、3.利用しやすい自転車駐車場の整備、4.放置自転車のない安全で快適なまちづくり、5.自転車利用のルールの遵守・マナーの向上、6.自転車のまちづくりを進めるための体制づくり、が掲げられています。これらの計画の達成度、そして課題はなにか。また、今後の行動計画づくりをどう進めていかれるのか、スケジュールについてもお示しください。

 

東京都の「10年後の東京」計画に対するインターネットモニターアンケートの結果が公表されました。計画の実現に向けた施策展開への関心事が「高齢者への対応」の57%をわずかに抜いて、「自転車走行道路について」が58%という結果でした。当区においても基本構想づくりに関するアンケートで住みよいまちにするための意見に「自転車の走行のマナーの向上」があげられています。いずれも、歩行者が安心して歩け、自転車が安全に走れるまちづくりを望む声です。これらの結果を新たに策定する基本構想に反映させるべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

自転車等駐車対策協議会について2点伺います。

杉並区では、自転車法の規定に基づき自転車等駐車対策協議会を設置しておられます。この規定は「協議会を置くことができる」とするもので、23区の中でもこの協議会を持つ自治体は8区しかありません。当区における自転車に関する課題への積極的な取り組みを評価するものですが、この協議会の目的と目標、これまでの到達点をお示しください。

 

これまで、着実に放置自転車削減に向けて目標数値を定め、達成してこられたこと、駐輪場の設置も区立だけではなく、JRなど鉄道事業者、駅近くの土地所有者による協力も得ながら収容台数を増やしてきたことなど、自転車等駐車対策協議会や区の取り組みを評価するものです。しかし、今新たな課題として、買い物客の短時間駐輪問題や、歩行者との事故が増えている問題があげられ、2009年に「自転車利用総合計画」が改定されたところです。これらを重要な課題ととらえ、課題別分科会の設置やPTA関係の方の参加など、自転車等駐輪対策協議会の運営方法やメンバーの見直しなどにより、これらの課題解決を図っていくべきと考えますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。

 

自転車はいまや私たちの生活になくてはならないもの、質の高い住宅都市になくてはならない乗り物であるにもかかわらず、近年の自転車事故の増加、自転車が原因の死亡事故の増加により、なかなか自転車の優れた点が評価されないのが残念でなりません。

今回の予算編成方針の中に、「交通不便地域に新たなコミュニティバスのあり方について調査・検討をする」とありました。昨年の予算特別委員会でも申し上げましたが、コミュニティバスに絞っての調査検討の前に、区民の移動・外出を全体として捉える必要があるのではないでしょうか。自転車も移動手段の1つとして捉え、高齢者・障がい者を含むだれもが利用しやすい交通体系を示すのが先であると考えます。2002年策定の「まちづくり基本方針」に「総合的な交通計画の策定」があげられているものの、まだ策定されていない状況です。いま、まさにまちづくり基本方針が見直されようとしているわけで、この際まず地域の公共交通計画を策定し、自転車、福祉交通、交通事業総体の施策体系を示していくことが必要であることを申しあげまして質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ 80号    2011年1月20日発行

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生活者ネットすぎなみ79号(北西版) 小松久子特集

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生活者ネットすぎなみ79号 市橋あや子特集

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生活者ネットすぎなみ79号(南東版) そね文子特集

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第4回定例会一般質問    2010.11.22 小松久子

成年後見制度について

 私は区議会・生活者ネットワークの一員として、成年後見制度について質問いたします。

 今年の第2回定例会で、私は在宅で高齢者や障がい者の家族の介護を担う、介護者をめぐる問題について採り上げましたが、今回は高齢者や障がい者の権利を擁護するしくみとしての成年後見制度について質問いたします。

成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神疾患など、何らかの精神上の障がいによって判断能力が十分でない人の生活を、おもに財産保護の面から支援する制度です。この制度を利用することにより、悪徳商法などの被害から本人を守るため不当な契約を取り消したり、介護が必要なときに本人に代わって介護事業者との契約を結んだり、というように、家庭裁判所が「成年後見人」として選任した後見人等が、本人の意思を尊重しつつ生活に必要な支援を行うことができます。

介護保険制度と同時の2000年にこの制度はスタートしました。それまでの禁治産制度は、「禁治産者、準禁治産者」という差別的な用語からもわかるように、判断力の衰えた人の尊厳や人権についての配慮を欠いたまま明治以来100年以上にわたって続いていたものですが、これを廃止し、新たな権利擁護システムとして法整備されたものです。

 

その施行からちょうど10年たち節目にあたる今年、先の10月には横浜で「成年後見法世界会議」が初めて開かれ、今後の成年後見のあり方をめぐって3日間、世界16の国と地域から集まった参加者500人が議論を交わしました。日本では、人口当たりの成年後見制度利用者が、ドイツなどに比べて10分の1に過ぎないことが指摘され、また親族による後見が全体の6割から7割を占める日本と、公的なシステムとして地域に根を下ろした欧米の後見先進国との違いも明らかになり、閉幕の際、「横浜宣言」として、これから適切な利用をすすめていくことが提起されました。

高齢化の進む杉並区においても、成年後見制度が、地域でくらす区民の生活の安心に役立つしくみとして、もっと身近な存在となっていくことを願う立場から、今回質問いたします。

 成年後見制度には、あらかじめ本人が任意後見人を選んでおいて判断能力が不十分になったときに支援を受ける「任意後見」と、本人自身や家族・親族や区市町村長が家庭裁判所に申し立てを行い裁判所の審判によって選任される「法定後見」の二つの制度があり、さらに法定後見には判断能力の程度により「補助」「保佐」「後見」の3つの類型があります。手遅れになる前の備えとして「任意後見」の利用が広がることが望ましいと思いますが、まず法定後見制度の利用を増やしていくことに主眼をおきつつ質問したいと思います。

はじめに、制度の推進体制として、当区で設置されている成年後見制度の推進機関、成年後見センターに関連してうかがいます。成年後見センターは4年前に設立され、現在は「あんさんぶる荻窪」の5階、社会福祉協議会のとなりに事務所が開設されています。この設立の目的と経緯について、1点目としておうかがいします。

2点目。成年後見センターは、区と杉並区社会福祉協議会を構成員とする一般社団法人となっています。その運営組織の形態、人員体制はどのようになっているのか。また、年間の事業経費、区と社協で負担している経費はそれぞれいくらか、併せて確認のためうかがいます。

 

3点目は、設立以来、この間の事業の実績とその評価について、区の見解をおうかがいします。

 4点目、社会福祉協議会との関連です。社協では、少し生活に不安を持つようになった人を日常的に支援する権利擁護のシステムとして、地域福祉権利擁護事業が実施されています。福祉サービスの利用を援助したり、日常的な金銭管理や書類を預かったりなどのサービスを有料で行う事業です。この福祉サービス利用者が成年後見制度の利用に移行し「被後見人」等となる場合があるかと思いますが、社協から成年後見センターへのスムーズな連携が求められます。どのように連携がとられるのか、おうかがいします。

 

先ほども述べたように、日本では子ども、兄弟姉妹、配偶者など親族が裁判所の手続きを経て後見人となるケースが、全体の65%前後を占めています。ところが親族後見人による財産横領事件や経済的虐待が毎年増えており、専門家は「親族であるがゆえに本人のための財産管理という認識が薄い。意図せずに犯罪者を生み出す環境になっている」と指摘しています。後見人になれば本人の財産が自由になるとの誤解があると思われます。

 

ドイツでは親族後見人の研修が各地域で実施されるといいますが、親族後見人に対してもサポートは必要です。成年後見センターは親族後見人が後見事務を行う上で、相談に応じるとしていますが、そのサポートはどのように行われているのでしょうか。おたずねします。

 また法人後見についても1点うかがっておきます。親族や第三者による後見の受任が困難な場合には、後見センターが法人後見を受任するとのことです。これはどのような場合でしょうか。お示しください。

 

さて、成年後見制度については、費用がかかること、申立人を必要とすることから、低所得者や親族がいない人には利用できないと誤解されている向きがあります。しかしこの制度は、社会的弱者の権利を擁護し困難から救済する社会福祉的な側面もある、ということができると思います。そのような観点から、以下おたずねします。

杉並区では区長申立てや後見費用の助成が実施されていますが、そのことが一般にはよく知られていません。周知が広がれば後見制度の利用が進むと考えられます。これらの制度に関連して、確認したいと思います。

 身寄りのない高齢者や障がい者の成年後見が必要になったとき、親族に代わって自治体の首長が申立人となり裁判所に申し立てを行う制度が首長申立てです。費用負担がかかるのをおそれて取り組みに消極的な自治体もあると聞いています。杉並区の区長申立て実績は「なかなかがんばっている」との評価を聞くところですが、区長申立てと費用助成について、まずしくみの概要を説明願います。また、当区の実績は何件か、お示しください。

2点目。財産もなく所得の低い被後見人が、区内から区外の高齢者施設などへ入所のため転出したことで住民登録が区内になくなったとき、しかも被後見人が後見人への報酬費を負担することが困難な場合に、以前は助成が受けられませんでしたが、制度の見直しにより費用助成が適用されるようになりました。このことにより後見制度の利用の間口が広がったと評価しています。今後さらに利用が広がっていくべきと考えますがいかがでしょうか。うかがいます。

 3点目。生活保護受給者の場合、「ケースワーカーが手続き等やってくれるので成年後見人は不要」として後見の利用を抑制することが他の自治体ではあると聞きます。財政負担を抑える目的だと思いますが、権利擁護システムの利用推進の意味から望ましいことではないと考えますが、当区ではいかがか、うかがいます。

 

さて、成年後見制度は、当事者の保護を図ることを主たる目的としながらも、その趣旨は、歳をとっても障がいがあっても、もてる能力を活用して自己決定権が尊重され、家庭や地域でくらし続けることができるような社会を形成するという、ノーマライゼーションの理念にあるといえます。それは人が助けたり、あるいは助けられたり、ということがあたりまえの地域社会であり、そのためには専門的知見や技術をもつ専門職後見人だけでなく、生活のこまごました相談にも対応しうるボランティア的な後見人、すなわち市民後見人の存在が必要となってくるはずです。

 

市民後見人は「社会貢献型後見人」とも呼ばれ、当区では、区民による市民後見人は「区民後見人」と呼ばれています。

117日、社協の主催で開かれた「すぎなみ地域福祉フォーラム」は、そのようなたすけあいの地域を考える意味で興味深い企画でした。私は区民後見人や生活支援員、あんしん協力員などを語り手とする分科会に参加しましたが、定員30人のところ50人ほども集まり、地域福祉権利擁護についての人びとの関心の高さに目を開かされる思いでした。参加者のひとり、団塊世代の区外の男性が「市民後見人の研修を修了して研さんも積んだが声がかからない。市民後見人の仕事をさせてほしい」と発言するのを聞いて、区内の研修修了者も同じように感じているのでは、という感想をもちました。

 ボランティアスピリットある人材の活用が図れないでいるとすれば、もったいないことです。ただ、法律知識や専門的知見が必要とされないことが前提であるため、申し立てる側からすればいまひとつ信頼を寄せることができないのかもしれませんし、はたで想像するほど簡単なことではないというのはわかる気がします。それでも、「新しい公共」の進展とともに市民後見人のニーズがこれから広がっていくことは確実です。

 

そのような認識に基づいて、区民後見人に関連して3点、質問いたします。

 

すぎなみ地域大学で区民後見人養成講座が1期だけ開かれました。このことに関連した質問です。この目的は何だったのか、確認します。また実施後の成果をどう評価されるのか。その後開かれていないのはなぜか、続けてうかがいます。

 養成講座では、高齢者施設でのボランティア体験や、障がい者の特性を把握・理解することなどが研修に組み込まれていました。研修修了者は後見センターが実施した実務研修を受け、社会福祉協議会のあんしんサポート事業の生活支援員として活動するなど、区民後見人をめざしつつ身近な地域での活動につなげておられると聞いています。

 「高齢者や障がい者のために働きたい」という市民の意思が尊重され生かされるためにも、区民後見人やその研修修了者が学習を継続し知見を深めたり技術の向上を図ったりすること、また、区民後見人同士の情報交換や交流することは重要です。そのような場をセンターは設けることが必要と考えます。いかがか、2点目としてうかがいます。

 3点目です。地域大学だけでなく、ここ数年の、他の機関での市民後見人養成研修終了者も多数と思われ、団塊世代の地域への還流にそって杉並でも今後さらに増えていくと思われます。区民後見人の活用と人材育成について、今後の展望といまの課題は何とお考えでしょうか。おうかがいします。

 

次に、障がい者に関する質問です。

 高齢者に比べ知的・精神障がい者の家族にとっての後見制度はさらに遠い存在になっています。制度のしくみがなかなか認知されない、それ以前に関心が持たれないのは、制度自体が分かりにくいこと、とくに「費用がいくらかかるのか見当がつかない」ことが最大の理由と思われ、いまの課題であることは事実です。しかし、知的・精神障がい者を日常的にケアしているのは多くが親御さんであり、その高齢化が進んでいる状況にあっては、本人だけでなくケアする側も判断能力の衰退が心配されるケースが少なくありません。

 成年後見センター主催により開かれている杉並区成年後見制度利用推進連絡会では、構成メンバーに障がい者福祉団体からも参加しておられますので、連絡会として障がい者やその家族に対して制度の浸透をつねに意識していただきたいと思います。

 区としては、障がい者の制度利用を増やしていくことについて、いまの現状と課題をどのように認識しておられるか、おうかがいします。

 

なお障がい者が被後見人となる場合は、後見人は障がいごとの特性を理解しておく必要がありますから、成年後見センターにはそのための支援が求められます。障がい者福祉の専門家などとの連携が、当然ながら必要です。

 一方、障がい者や家族に接する側の、福祉サービス事業所、ガイドヘルパーなどへも、高齢者やその家族に接する機会の多いケアマネージャー同様に制度の周知や啓発が必要ですがいかがでしょうか。見解をうかがいます。

 ところで、内閣府「障がい者制度改革推進会議」では、先ごろ、精神保健福祉法における精神障がい者の保護者制度を抜本的に見直す方針が示されました。

 

保護者制度とは、医師から精神疾患の診断がされたら必ず「保護者」をつけなければならない、という制度です。保護者になる人は、優先順に、成年後見人または保佐人、配偶者、親権者、その他の家庭裁判所が選任する親族、となっていますが、実際には後見人・保佐人にしても親族が受任することがほとんどであり、圧倒的に多いのは親です。保護者は本人を一生監視し続けるよう強制されますが、その根底にあるのは「精神障がい者は見張っていなければならない」という差別と偏見意識以外の何物でもありません。

 

いま当事者や家族たちの、保護者制度の廃止を求める声が大きくなっています。障がい者の権利擁護の観点から「廃止」は必然的な流れです。そして、この流れと併行して第三者の成年後見人の登用が進められるべきと考えます。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 

高齢社会がこれからますます進んでいくにあたり、任意後見ももっと活用されるべきですが、その前に成年後見制度に対する周知が広がらなければ話は始まりません。今年9月の休日に区と後見センター、社協や外部の他団体もふくめての主催により「成年後見制度・遺言・相続相談会」が開かれ、多くの相談者が来訪されたと聞いています。毎年開かれているとのことですが、このような活動はぜひ継続してくださるようお願いいたします。

 また、区と後見センターがキャンペーンを実施するなどし、制度を広める学習会や出前講座を地域包括支援センター、ゆうゆう館や図書館、地域区民センターなどあらゆる機関や施設を利用して開催することは有効と考えます。高齢者の消費者被害が頻発していますが、未然防止や、すでに受けてしまった被害の救済のために、消費者センターとしても成年後見制度について従来にも増して積極的な啓発に取り組むべきです。そしてその際、社会福祉士会、弁護士会、司法書士会、税理士会などの外部機関と協働で実施することは社会資源を生かす意味でも重要と考えます。いかがでしょうか。うかがいます。

なお区の保健福祉計画では現在のところ、制度の具体的な推進策が見られません。成年後見制度の推進計画を実施計画に位置づけるべきであり、今後検討されるものと期待しています。

 最後に、いまの成年後見制度の問題点についても言及しておきたいと思います。それは、被後見人になると自動的に選挙権を失うことです。判断能力が不十分といっても、すべての被後見人に投票する能力がないということはありません。投票は憲法で保障された権利であり、選挙における自己決定権を認めること、それはその人の尊厳を守るためにもたいせつなことだと思います。いまの制度は人権上重大な問題があるといわなければならず、できるだけ早い時期に法の下で改善すべきとこの場をお借りして申し上げ、私の質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ78号 2010年11月5日発行

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