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第1回定例会 質問と答弁 2013.2.18 そね文子

【Q】 ● 今、国会で新政権の下、「いじめ防止対策基本法」が制定されるべく骨子案が示されたが、区はこの動きと背景をどうとらえているのか伺う。

    
法制化により子どもに対する管理を強化する方向性は、学校における子どものストレスの増大につながりいじめを防ぐことにはならないと考えるが、区の見解を伺う。

    
今後、いじめの防止に向けて、多くの区民、いじめにかかわる関係者が広い会場で集う機会を設定する必要があると考えるが今後の方向性を伺う。

 

【A】   区としては、国の動向の推移を見守っていく考えです。

     本区では、来年度、子どもが安心していじめの悩み等を相談できるダイヤル相談を開設します。

また、いじめ問題は、子どもたち同士の間で起きていることから、自分たち自身の問題として、主体的にその克服に努めようという意識や態度を育むことは、大変重要です。

今後は、子どもたち同士によるいじめ問題解決への取組の支援を行い、さらには、子どもたちの取組を区内全体に広め、区民とこの問題を共有できる場をつくっていきたいです。

 

【Q】 ● 12月にいじめをテーマに実施した「夜間塾」の開催の趣旨、広報の仕方、呼びかけの対象者、参加人数、参加者の主な所属、パネリストの選定理由について伺う。

【A】  夜間塾は、区教育委員会が取り組んでいる様々な教育課題をテーマとし、区の取組を学校関係者や区民に周知すると同時に共に考える場として、平成21年度から開催しています。今年度は喫緊の課題である「いじめ」をテーマとし、12月に開催し、案内は、学校関係者や保護者、区関係機関に配布するとともに、広報すぎなみにも掲載しました。参加総数は73名で、学校関係者や保護者、一般区民が参加しました。パネリストは、生活指導担当校長、保護者代表、区及び民間の相談機関等、いじめ問題に直接関わっている視点で選定しました。

 

【Q】 ● いじめの加害児童・生徒に対し、ただ叱るだけではなく、心理的なケアが必要と考えるが区の考えを伺う。

    ● いじめの加害児童・生徒に対し、心理職、スクールソーシャルワーカーがかかわるなどチームで対応する必要が

あると考えるが、区の考えを伺う。

    ● いじめ対応について、学童保育との連携も必要と考えるが現状について伺う。

【A】   いじめ問題は、その背景にあるいじめる側の心の不安定さやストレス等の心理面が原因となる場合があります。毅然と善悪の分別を厳しく指導する場合と、共感的に話を聞きながら、してはならないことを諄々と諭す場合の両面の対応が必要です。

 いじめの発見、解決は、日頃から担任教師が抱え込むことなく、管理職を中心に生活指導担当教員、養護教諭、スクールカウンセラーなどで対応チームを構築し、学校全体で共通理解を図り、児童生徒の発する危険信号を見逃さないよう、組織的な対応を基本としています。 

 また、事案によっては、スクールソーシャルワーカーや、児童相談所、学童保育等の関係機関と連携し、解決に

努めていますが、今度ともいじめ防止に向け、関係諸機関等との協力関係を築いていきます。   

 

【Q】 ● 学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、担任の対応だけではなく、複数の教師による授業の支援や区による人的配置が必要と考えるが現状について伺う。

    ● 学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、保護者からの要請がある場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要と考えるがいかがか。

 

【A】   学級が不安定になった際には、学習環境を整えるため、当該の学級に学級担任以外の校長や副校長をはじめ他の教員等が関わり対応しています。

      また、保護者等からいじめ問題についての訴えを受けた場合は、学校、保護者、関係機関が適切な連携を図り、共通理解のもと解決へ向け取り組む姿勢が重要です。

 

【Q】 ● 学校司書もいじめに関する研修を受け、対応する一員として位置付けるべきと考えるがいかがか。

【A】  子どもたちの居場所である学校図書館で職務にあたる学校司書が、生活指導上の問題について、理解を深めることは必要です。

     いじめの発見、早期対応は、学校全体での迅速かつ組織的な対応を基本としています。学校司書が児童生徒からいじめ等の相談を受けた場合には、早急に担任教師等と情報を共有する大切さを、学校司書研修等の機会を捉えて指導助言していきます。

 

【Q】 ● 「湘南DVサポートセンター」の開発した「いじめ防止プログラム」など、子どもの自尊感情を高め、いじめを防止するプログラムを区立学校全体で実施すべきと考えるがいかがか。

【A】   子どもの自尊感情を高め、自分も他の人も大切にする態度を育てることは、いじめを防止する上で大変有効です。このことは人権教育と重なります。本区には、円滑な人間関係を築くための試みとして、様々な取組を学級活動の中で実践している学校があります。ご指摘の「いじめ防止プログラム」も取組の一例として、今後研究していきます。

 

【Q】 ● 発達障害といじめの関係について区の認識を伺う。

  
  ● 発達障害にかかわる教育相談員、スクールカウンセラーへの相談件数が増える中、教員にも発達障害の知識と対処能力が求められると考えるがいかがか。

● 自分の子どもが発達障害ではない保護者も、当事者の保護者も、ともに発達障害について学ぶ場が学校においても必要だと思うがいかがか。

【A】  教師や子どもたちが、学校に在籍する障害のある子どもについて、その障害特性の理解や互いの違いを認め合う態度などが育まれていないと、障害のある子どもがいじめの被害者や加害者となる場合があります。

     多くの学校では、発達障害等、特別な支援を要する子どもの理解や適切な対応を図るための研修や情報交換を行うなど、資質の向上に努めています。

     保護者が学ぶ場についてですが、現在、各学校で、新就学児童の保護者へのリーフレットの配布や保護者会や説明会等の機会をとらえ発達障害への理解啓発に努めています。

     今後とも、障害理解とともに、誰もが相互に人格と個性を尊重し合えるような共生社会の形成に向けた取組みに努めます。

 

【Q】 ● 来年度、発達障害児の相談と療育を充実させていく取組みを予定しているとのことだが、その中で学校との連携はどのように行う考えか伺う。

【A】   区では、来年度に向け、発達障害児も含めた未就学児の療育は、区と民間事業者との機能を明確にした上で、連携して進めていくこととしました。

      これまでも、こども発達センターでは保育園や幼稚園等と連携して就学に向けた支援を行ってきましたが、今後は児童福祉法上の児童発達センターとしての地域支援機能をいかし、発達障害児の療育を主として担う民間事業所等との連携も強化し、学校への的確な情報提供など、就学に向けた支援をこれまで以上に幅広く実施していきます。

第1回定例会 一般質問  2013.2.18 そね文子

いじめを防止する学校の環境作りについて

 私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として「いじめを防止する学校の環境づくりについて」質問いたします。

 一昨年10月の、大津市でいじめを受けていた中学生の自殺を契機に、こどものいじめが大きくクローズアップされる中、大阪市の公立高校バスケット部顧問からの体罰を苦に高校生が自殺しました。そして体育会系部活での体罰という名の暴力の常態化など、子どもたちが置かれた逃げ場の無い状況が次々に明らかになっています。昨年私どもの会派から小松議員がいじめについて質問したところですが、国が対策を打ち出そうとしていることを受け、また他の視点から、改めて質問いたします。

 今国会では新政権の下で「いじめ防止対策基本法」制定に向けて骨子案が示されました。骨子案は、安倍首相が本部長を務める教育再生実行会議からの提案が反映されているとのことですが、そのメンバーの顔ぶれや報道される議論の内容を聞く限り、期待よりも子どもをより追いつめる結果を招くのでは、と懸念しています。

質問の第1番目として、区はこのような国の動きとその背景をどうとらえているか伺います。

 骨子案の内容は、重大事案については学校から市町村長らへの報告を義務化し、調査組織の設置も求められています。また「いじめで生命の安全が脅かされる際に学校は直ちに警察に通報する」と明記され、いじめた児童、生徒を学校教育法に基づいて出席停止にする措置の活用も規定するものです。

犯罪に対してはもちろん厳正な対処が必要ですが、学校がすぐに警察を呼ぶようになることを危惧しています。子どもに対する管理を強化しようとする方向性は学校におけるストレスをかえって大きくしてしまうことになり、いじめを防ぐことにはならないと思います。2番目として、このことについての区の考えを伺います。

杉並区ではいじめの早期発見・早期対応のために「仮称ダイヤルいじめ相談」が開設される予定とうかがっていますが、新たな取り組みに期待をしています。昨年12月19日、済美教育センターの「夜間塾」がいじめをテーマにパネルディスカッションを開催しました。時宜を得た企画だったと思います。パネリストは小中学校の校長先生、区の子ども相談電話サービスゆうラインの担当者、PTA連合会長、教育SATなど区の関係者に、民間で子どもの電話を受けているチャイルドラインの担当者が加わっていました。チャイルドラインからの報告ではいじめられている子のリアルな声が報告されました。

 いじめられている子は自尊感情が低く、自分が悪いからいじめられると思ってしまい、いじめている子から離れられない。発達障がいのある子どもが他者と違うことでいじめの対象になり、やがて自己肯定感が下がり、不登校からひきこもりになったり、精神障がいを発症するなどの深刻な二次被害が起こっているとの報告もありました。パネリストに子どもの生の声を受けているチャイルドラインの担当者が入っていたのは画期的で、そこからの要望を真摯に受け止める区の姿勢が印象的でした

この「夜間塾」について、開催の趣旨、広報の仕方、呼びかけの対象者、参加人数とその方たちの所属、パネリストの選定理由について伺います。

 いじめが起こったとき、教育SATや校長先生からの区としてどんな対応をとっているかという話は多くの保護者や地域の人たちも聞きたいことだと思いました。また放課後の子どもの居場所となっている学童クラブの担当者の話も聞きたかったと思います。

今後いじめ防止に向けて、多くの区民、子どもに関わる関係者が広い会場で集い、さまざまな角度から考える機会を設定していただきたいと考えますがいかがか、伺います。

 次にいじめてしまう子どもの背景について考えてみたいと思います。いじめについて、教育法学者である早稲田大学の喜多明人教授は、抗しがたい人間関係の中でストレスが弱いものへと向く行為と定義しています。

だとすれば、いじめの原因はいじめる側のストレスということになります。いじめがどんなに卑怯な行為であっても、いじめる子もまた援助を必要としている子どもです。そして現代のストレスの強い社会状況や置かれた環境がつくった被害者とも言えると思います。しかりつけたり、指導したりするだけではいじめの本質的な解決にはなりません。

このような観点から、いじめられている子どもへのケアと同じくらい、いじめる子へのケアは重要だと考えますが区の考えをうかがいます。

 いじめの加害者となった子どもに対してもチームでケアにとりくむべきと考えますがどのように行っているのでしょうか。例えばいじめの加害者となった子どもにスクールカウンセラーとの面談を設定したり、SSWが関わってケアを行っているのか伺います。

教師をしている友人から、いじめる子のケアも必要だと思うが、忙しすぎてその時間がない、もっと子どもと向き合う時間がほしいという声を聞いています。一方、学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、担任の負担を減らすためには複数の教師が必要だと思います。区はティームティーチングを採り入れておられますが、複数の教師による授業の支援や区により人的配置が必要と考えます。現状はどうなっているでしょうか、伺います。

 また学級の荒れが原因でいじめが継続する場合で、保護者からの要請がある場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要と考えますがいかがか伺います。

 当区では今年度、すべての小中学校の図書館に司書が配置されました。いつでも図書館が開いていて専任の司書がいるということは、「評価しない、点数をつけない大人」がいることです。図書館が子どもにとって安心していられる、本音が出せる居場所、という側面をもつようになったといえます。

そこで学校司書にもいじめに対応するチームの一員として協力を求めてはいかがでしょうか。学校司書も研修を受け、子どもに寄り添った支援をすることは大変有効と考えますが、区の考えはいかがか伺います。

 次に先日学習会に参加し、その後世田谷区立の中学校で行われているワークショップを見学した「いじめ防止プログラム」を紹介したいと思います。これは2006年に神奈川県藤沢市のある中学校で行われたアンケートでいじめを目撃した生徒のうち9割が傍観していたとの回答を見た学校が危機感を持ち、地域のNPOと一緒に開発したものです。生徒自身がチームを組んで子どもの相談を受けたり、啓発活動を行うことでいじめを未然に防止していく活動です。このいじめ防止チームのメンバーはスクールバディと呼ばれます。

プログラムは、まずいじめについて共通認識を持つために、生徒、教師、保護者、地域の大人向けに講演会が開かれた後、子どもたちはクラスごとに全4回の講座を受けます。人権尊重の視点に立ち、自尊感情を高めることを学び、暴力によらないコミュニケーション方法を身につけ、いじめを防止するためにどのような行動を一人ひとりがとるか考える内容になっています。この後、スクール・バディになりたい希望者を募ります。希望者は、心理学的な聴き方の訓練、いじめ防止啓発のためのプレゼンテーションの技術などさらに8時間のトレーニングを受けます。相談された内容について秘密を守ること、自分を守ること、ケースによっては先生に相談することを学びます。修了後は学校内にいじめ防止活動の拠点となる部屋「バディルーム」を設置し、相談や話に来る生徒の話を聞いたり、いじめ防止のための計画を練り啓発活動を行っていきます。具体的にはビデオ制作、演劇、校内放送のDJ、新聞やポスター作りなどの啓発活動が行われているそうです。都内では世田谷区の中学校で6年取り組んでいるところがあり、品川区でも来年度から中学校2校、小学校3校で導入されるそうです。藤沢市ではすでに中学校10校と小学校2校で実施され、いじめの認知件数が急増しているこの時期に件数が微減しているということです。

このようなプログラムを杉並区でも導入できないでしょうか。うかがいます。

 私は小学校6年生の時にクラスメイトがいじめを苦にして自殺で亡くなりました。彼女は大変真面目でおとなしく勉強のできる生徒でした。自殺の原因はいじめだと子どもたちはわかりましたが、新聞ではまったく違う理由で報道され、学校では自殺原因の調査などはいっさい行われませんでした。

いじめた子には他の多くの子が順番でいじめられていました。今振り返ると、子どもだった私たちは、みんなが傍観者でした。いじめっ子に誰かがいじめられている風景は当たり前のこととなっていたのです。もし先ほど紹介したプログラムを受けて、いじめに対して皆で話し合う機会が与えられ、子どもたちが傍観者でなくなっていたら、この不幸な出来事はおこらなかったと思いました。

 紹介したプログラムは1例です。子どもたちが自尊感情を高め、自発的にいじめ防止に取り組めるようなプログラムをすべての学校で取り入れていただきたいと考えますが、区の考えをうかがいます。

 さて、先ほど夜間塾で、発達障害がいじめの対象になっているとの報告があったと述べましたが、そのことについても取り上げたいと思います。

発達障がいを持つ子どもは、自分を取り巻く人たちとのコミュニケーションが苦手で、たとえば皮肉が理解できず、いわゆる空気を読むということができない、というような特徴があります。そのため学校において、子どもにとっては楽しいはずの休憩時間、給食の時間、登下校の時間などもリラックスできず、コミュニケーションをとることに疲れ果てている状況も見られます。彼らと直接かかわることの多い専門家は、小学校から高校までを通じて発達障がいの子どもは、他の子どもたちに比べていじめの標的となるリスクが極めて高いと述べています。

またいじめが原因で不登校やひきこもりになったり、二次障がいとして精神障がいに移行するケースも報告されています。

杉並区としては発達障がいを持つ子どもといじめの関係をどう認識しているか、うかがいます。

 2011年度に済美教育センターの教育相談に寄せられた合計相談件数878件のうち、発達障がいの相談が489件、55.7%と半数以上をしめています。また小学校でスクールカウンセラーが受けた相談件数は24,228件で発達障がいに関することが2,936件。この内教員からの相談件数が1,339件と半数近くを占めています。教師が苦労している実態が数字に現れています。

発達障がいの知識と対処能力が求められると考えますが、研修などどのように対処しているのでしょうか。

 文科省は、通常学級に通う公立小中学生6.5%に発達障害の可能性があることを公表しました。このうち4割が個別指導などの支援を受けておらず、学校内での支援が必要と判断された児童生徒18.4%でも6%が無支援だったとしています。学校に対応しきれていない状況あるということだと思います。また保護者が障害への抵抗感などから相談に行かず、支援につながっていないケースも少なくないと言われています。

区では来年度、発達障がい児の相談と療育を充実させていく取り組みを予定しているとのことですが、その中で学校との連携はどのように行うのか伺います。

 クラスで問題を起こす子どもを他の子どもの保護者が排除するような考え方が子どもに悪影響を与える事例があります。もし問題を起こす子どもが発達障がいだった場合、その子の生きづらさを大きくするのは、それ以外の人たちが作った、異質なものを受け入れない環境が原因だと療育の専門家が指摘しています。当事者の保護者や関心のある人だけが理解していても状況は改善されません。

自分の子どもが発達障がいでない保護者も、当事者の保護者もともに発達障がいについて学ぶ機会が必要だと考えます。それには学校が保護者会などを利用して学ぶ時間を設けることが有効だと思いますが、お考えを伺います。

 これまで述べてきた学校の環境づくりは、子どもの権利をそこに居る大人も子どもも学ぶことによって良くしていくもの考えます。いじめは、暴行・傷害などによる生命権、身体権、自由権の侵害、持ち物の毀損などによる財産権の侵害、精神的な攻撃による名誉毀損など、基本的人権を脅かす行為です。それに気づくことで、自分が悪いのではなく権利侵害する加害者が悪いと認識し、助けを求められることが解決につながります。先の代表質問において教育長は、いじめに対しては人権尊重の精神を貫いた教育活動を展開し、子どもたちがいじめを自分たち自身の問題としてとらえ解決に向けて主体的に取り組む態度をはぐくみいじめを克服していくと答えておられ、大変共感いたしました。

 世田谷区では子どもの権利を擁護する「子どもオンブズパーソン」の仕組みができました。先ほど学級の荒れが原因でいじめが継続する場合、学校、保護者、関係機関が解決に向けて話し合う場の設定が必要ではないかと申し上げましたが、もし杉並区にもこの制度があり、子どもの立場にたった公的な第三者機関が関わってくれたら硬直した状況を打開するのにたいへん有効だと思います。これまでも生活者ネットワークは子どもオンブズの設置を提案して参りましたが、それを再度、最後に求めて私の質問をおわります。

第1回定例会代表質問  2013.2.15 小松久子

「生活者ネット・みどりの未来」を代表して、「平成25年度予算の編成方針とその概要」について質問いたします。他会派からすでに質問のあったことがらもふくめて、重ねてのご答弁をお願いいたします。

 昨年暮れの総選挙は、2年前の311日、過去最大規模の震災と津波、つづいて原発事故という大惨事に見舞われた日本が、この経験を糧に、改めてどのような国をめざしていくのかが問われるべき選挙でした。しかし戦後最低の投票率に終わり、前回の総選挙で大敗を喫した自民党が、それよりも少ない得票でありながら大勝を収めるという結果になりました。

 原発ゼロに向かうはずだったこの国の方針は逆向きに動き始め、まるでオリンピックが世間の目を原発問題からそらせるための隠れみのとなるかのように、国を巻き込んだ招致ムードが展開されています。ですが、ムードや気運が原発問題を解決できるわけではもちろんありません。私たちは、原発を抱え続けることの問題や被災地・被災者の現実から決して目をそらしてはならない、と改めて思っています。

 さて、選挙の結果により民主党から自民党への政権交代が行われました。最初の質問として、今回の選挙結果に対する区長の率直な感想をおうかがいします。

 投票率についてもふれておきたいと思います。国全体としての衆議院議員選挙の投票率は59.3%、戦後最低であり、3年前のときと比べて10ポイント近く減らしています。ですが杉並区に限って見れば今回63.47%であり、前回の65.5%から約2ポイントの差に留まっています。この結果をどうごらんになるでしょうか。お考えをうかがいます。

 安倍首相はさっそく前政権の政策を一新すべく動き出しています。新政権が示す財政政策について、日本の経済界の反応はおおむね好評であり、施策の成果が表れる以前からバブルの予感に酔っているように見えます。一方区長は「デフレや円高に改善の兆しが現れたようにも思われる」と述べたのち、「今後の見通しは不透明であり、予断を許さない状況が続く」としておられます。住宅都市・杉並区にとっての円安の影響は、輸出産業がほとんどなく輸入品の物価上昇が懸念されるため、プラス・マイナスは一概に言えないかと思いますが、区長はどのようにお考えでしょうか。また安倍政権の財政政策、いわゆる「アベノミクス」に対する区長の評価はいかがでしょうか。おたずねします。

 安倍政権の地方分権改革について、区長は「現時点では不透明な部分もあり」としておられます。しかし、報道によれば、一括交付金が廃止され「ひも付き補助金」がまた復活するといいます。自治体の裁量に使途が任せられていた国の補助金政策が、使途限定型に逆戻りすることになりますが、地方分権の後退ではないでしょうか。区長はこれをどのように受け止めておられるか。また当区への影響はどのような形で現れるとお考えか、うかがいます。

 当区の2013年度予算は、基本構想実現に向けた取り組みを軌道に乗せるための予算と位置付けられています。区が昨年5月、要綱を定めて設置した「行政経営懇談会」は、基本構想の実現に向けて議論し区に対して意見や助言を具申する有識者会議ですが、ここで「今後の財政運営のあり方」が検討課題のひとつとされ、区は基本的な考え方を示しておられます。今回の予算編成にあたり、ここでの議論はどのように生かされたのでしょうか、うかがいます。

今予算が基本構想実現に向けた取組みを軌道に乗せる予算であるなら、基本構想が実現のために掲げている「参加と協働による地域社会づくり」を進めるべき年であろうと思います。

 昨年制定された「杉並区基本構想」では、最後の部分で「基本構想を実現するために」という項目を設け、構想実現のための推進のしくみについて論じていますが、ここで最初に提示されているのが「参加と協働の地域社会づくり」についての項です。行政経営懇談会での検討テーマのひとつは「協働のあり方」でした。ところがこのたびの「予算編成方針とその概要」では、まったく言及がないのを疑問に思います。区長の姿勢をおうかがいします。

 行政経営懇談会からの意見・助言を受けて、区は8月、「新たな協働のあり方についての基本的な考え方」をまとめ、その具体的な施策等の検討を「杉並区NPO等活動推進協議会」が行い、12月 「新たな協働のあり方」の具体化に関する意見がまとめられました。

 この中では、これまでのような区とNPO法人等の関係性を中心にした協働の考え方に加え、NPO法人同士、NPO法人と町会・自治会などの地縁団体相互が連携・協力し、自ら主体的に地域の課題を解決していく、参加と協働による地域社会づくりが新たに提唱されました。「杉並らしい協働の取り組み」として、地域の多様な活動主体が情報を共有し、それぞれの活動について交流を図るなどして、多様な主体がつながることを重視する、等がNPO等活動推進協議会の総意として述べられています。

 このような考え方について、これまで地域における市民の自治を提唱してきたものとしては、賛意を表するものです。これを受けて今後、区はこれらについてどのように扱い、具体化を図っていくお考えでしょうか。うかがいます。

 NPO等活動推進協議会の「意見」の中でも指摘されているように、「すぎなみNPO支援センター」の機能と役割は本来、より重要なはずです。その機能を果たせるような組織体制をつくること、また行政の側の機能強化とその推進体制づくり、行政が区民・団体・地域の連携をNPO支援センターと協働して図ること、すなわち連携づくり、職員の意識形成も含めた行政内部の調整、庁内推進体制の確立など、各機関が取り組むべき課題は少なくありません。

 政権が替わって「新しい公共」という文言を目にすることも少なくなっているような気もしますが、安倍政権の「公助」切り捨ての姿勢からすれば、そして「自助」の限界を併せれば、「共助」の必要性は高まりこそすれ低くなるはずはありません。「新しい公共」を担保する「協働」の取組みはもはや社会のシステムに欠かせないものです。区の積極的な姿勢を求めるものです。

 「地域社会づくり」についてうかがってきた流れから、まちづくりに関して区長が提案しておられる地域社会活性化の事業についてうかがいます。ハード・ソフト両面の施策を連動させる、とは具体的にどのような事業でしょうか。昨年来言われている「多心型まちづくり」の具体策かと思いますが、精力的に地域に入り、地域の方々と一緒に汗を流す総合的なまちづくり、という取り組みの概要をお示しください。

 なみすけ商品券の休止、電子地域通貨の協議の中止は、妥当な判断と考えます。ただ、産業振興策として打ち出されている「商店街若手支援事業補助金の拡充」や「地域のまちづくりやイベントと連動した取組みを行う商店街への支援事業」などについては、財政出動の公平性からみて問題がないか、若干疑問も感じるところです。概要について説明を求めます。

 商店街の空き店舗を活用する取り組みが、成功事例はあるものの、なかなか広がっていきません。ケースごとに異なる課題があるかとは思いますが、商店街の活性化を考える場合に空き店舗問題は避けて通れません。産業振興センターが中心となって、それこそ区と地域団体やNPOなどとの協働の取組みが必要ではないのでしょうか。見解をうかがいます。

 いっぽう空き家問題については、今回新たな施策が打ち出されました。空き家問題は、基本構想審議会の中でも重要な課題としてしばしば議論になっていましたが、これまで具体的な取り組みが示されませんでした。今回、住宅マスタープラン改定にあたって実態調査を実施されるとのことです。空き家は今後、少子高齢社会を支える地域の資源として、さまざまな活用につなげられることが期待されます。その意味で、多様な視点からの調査としていただきたいと考えます。見解をうかがいます。

 現行の住宅マスタープランは、平成20年から29年までを対象期間としておりますから、今回かなり前倒しの改定となります。その理由、いまの住宅政策で何が課題なのか、具体的にお示しください。またスケジュールについても確認しておきます。

 さて、若者の就労支援事業として昨年暮れに開設された就労支援センターは、先の行政経営懇談会で議論された、現役世代への支援をどうするのか、という課題に対する解決策として迅速に実現化を図っていただいたものと理解しております。オープンしてまだ2か月ですが、利用状況はいかがでしょうか。確認させていただきます。

今後の展開として新たに福祉部門と連携し、ワンストップ機能をもたせ中間的就労の場の確保、さらには社会参加と自立支援に向けて取り組む、と打ち出しておられることは、まさにわが会派が提案してきたことであり、評価するものです。

 しかし、女性の就労・就職支援の視点が見られないのを残念に思うところです。女性の貧困問題は、一般に採りあげられることが少ないだけに、より深刻です。男女雇用機会均等法ができて30年近くたちますが実質的な男女格差はなくなっておらず、シングルマザーやDV、ドメスティックバイオレンス被害者ともなれば、貧困から抜け出せなくなってしまう女性は少なくありません。このような状況を改善するための取組みが必要と考えます。今後の課題としていただくことを求めます。

 都市農業とみどりについてうかがいます。農地の保全と活用に向けて「(仮称)農地活用懇談会」を設置され、みどりの保全については「(仮称)緑地保全計画」を策定されるといいます。これらは密接にかかわることであり、懇談会での議論が緑地全体の保全計画に反映されなければ意味がありませんから、連動して進めていかれるべきと思います。また国に法改正を求める必要があるものと考えます。これらの点について、どのようにお考えかうかがいます。(*14

 つづいて福祉の分野から、まず高齢者にかかわる課題について触れておきます。今回、認知症コーディネーターを新たに設置されるとのことです。厚労省がしきりと設置を呼びかけているしくみかと思いますが、当区としては具体的にどのような人材を何人、想定しておられるのでしょうか。各地域包括支援センターとの連携をどのように位置づけ、どこに配置してどのような役割を担うことになるのでしょうか。おうかがいします。

 要介護高齢者の取組みとして、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、介護施設などの整備事業については、計画に沿って粛々と進めていただきたいと思いますが、これからニーズが増えていく在宅サービスを充実させていくことも忘れてはなりません。在宅での高齢生活を支えるサービスは今後ますます需要が増えていくと思われます。地域医療サービス、福祉のサービス、介護サービス、また介護者を支援する取組みなどが連携し、サービスとサービスのすき間からこぼれ落ちる人が出ないよう体制を構築し、区のしくみに位置付ける必要があります。見解をうかがいます。

 障がい者の地域生活を支える機能の充実をねらって「(仮称)障害者地域相談支援センター」を区内に3か所、設置されるとのことです。これまでの相談支援とどこをどのように変え、機能アップが図られるのか、お示しください。

 発達障がい児の急増への対応策が長く検討課題とされていましたが、このたび、民間事業所の誘致という形で児童発達支援事業所の開設を促すとのことです。こども発達センターの分園設置の検討もされたと思いますが、この方針に落ち着いた経緯について、説明を求めます。

 子どもの貧困問題について、かねてより対策を求め、会派として今回一般質問にも採りあげておりますが、安倍政権のもとで生活保護切り下げが行われようとするなか、その影響が子どもに対して及ばないように努めることは喫緊の課題です。子どもには何の責任もない貧困によって、健康に育つ権利や学ぶ権利が奪われることは、何としても防がなければなりません。

 今回、生活保護世帯の子どもに対する法外援護事業を再構築されるといいます。社会的な居場所づくり支援事業や子どもの社会参加の経費助成、中学3年生に対する塾の費用助成などが法外援護事業、すなわち福祉の施策として提示されていますが、この事業は、教育委員会との連携が欠かせません。教育委員会がイニシアチブをとって進めるほうがよい場合もあるかもしれませんし、福祉の観点から包括的な支援のニーズが見つかる場合もあるかと思います。区はどのような体制で臨むおつもりなのか、おうかがいします。

 新規事業として中・高校生の新たな居場所づくりに向けた取組みも、保健福祉費から予算が計上されています。「ゆう杉」の愛称で親しまれている青少年児童センターの2号館というような位置付けでしょうか。いまこのような取り組みを始めようとするのはなぜなのか、目的と併せて、お聞かせください。

 子どもに関連して、児童相談所をめぐる都区間の調整の進捗について確認したいと思います。都区制度改革の議論において、特別区へ移管する方向性が真っ先に出された児童相談所でしたが、その後の進捗が見られないのを歯がゆく思っています。児童相談所の区移管の議論はどこまで進んできたのか、おうかがいします。

 昨年来のいじめ問題に加えて体罰が社会問題化しています。学校現場というところはなんと息苦しくストレスが存在していることか、と思わずにいられません。いじめについては昨年議会で採りあげ、さまざまなしくみやプログラムの導入を提案しました。今議会でも会派から質問と新たな提案を予定しています。対策の手法はひとつではない、ツールはたくさんあったほうがいい、ということです。そして、ここで強調したいのは、どんなツールでも人権に対する配慮や尊重が基本になっていなければ本質的な解決策にはならない、ということです。

 昨日の、いじめをめぐる他会派の質問への答弁において、いじめの対策として、子どもが主体となって自らの解決力を育てる、という見解が教育長より示されたことには、心から賛同するものです。

 先日、区主催で開かれた「水鳥の棲む水辺づくり」フォーラムに参加し、井荻小学校の子どもたちの環境活動の発表を見、聴く機会がありました。校舎の敷地内を流れる善福寺川について多くのことを学んだ子どもたちが、川をきれいにしようと清掃活動を始め、やがて川の周辺から善福寺公園までを活動領域に広げたこと、その活動の中から大人たちに対する提言を導き出し発信する、という一連の報告です。昨年秋の市民団体の主催による「善福寺川フォーラム」でも聴きましたし、80周年記念の作文コンクールで区長賞に輝いた作品もこの内容でしたから、いまや多くの区民の知るところとなった活動ですが、今回あらためて気がついたのは、「これこそESDだ」ということです。

 ESD、すなわち「持続可能な社会づくりのための教育」の理念は、社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目的とし、人や社会を「教育」によって変えていくことをめざしています。自然と命のつながりを大切にし、地域に根差した文化や人びとと触れ合いながら、人と自然が共存共栄できるような多様な生き方を学んでいきます。

 ESDは、狭い意味での環境教育というより、地球規模の人権教育ととらえることこそふさわしい、と思います。いじめ、不登校、学級崩壊、家庭問題など現代の子どもたちをとりまく問題の解決策としても有効活用されているといわれています。井荻小の子どもたちのような活動が、区内にはほかにもあるのだと思いますが、それをESDだと意識することで、評価の視点が生まれます。ESDを意識的に教育のテーマとして取り組んでみては、という昨年の私の一般質問でのご答弁では「『持続可能な社会を目指し、次代を共に支えていく力』を伸ばすよう、指導の在り方について研究を進めていく」とのことでした。この進捗状況について、人権教育としてのESDについての見解と併せて、おうかがいします。

 学校における人権侵害の中でも体罰については、社会が半ば公然と容認してきた部分があります。とくに、結果を求められる競技スポーツの世界においては、ある程度の暴力・制裁はやむを得ない、とする考え方が当たり前に存在し、むしろ指導の一環として肯定すらされてきました。戦後すぐの1947年の教育基本法の下ですでに体罰は禁止されているにもかかわらず、ある種の文化、風土論に祭り上げるか、あるいは程度の問題として収めようとする論調が消えることはありませんでした。

 私自身はただの1点も体罰を肯定する気持ちにはなれませんが、体罰と競技スポーツにおける「しごき」とを同一視することは問題の本質を見失うことになるように思います。いずれにしろ、社会がこの状況を乗り越えるのは容易ではなさそうです。体罰のない教育現場を社会全体で創りあげていくのだ、というほどの覚悟をもって、人びとが「体罰すなわち暴力であり人権侵害である」ということを深く受け止めて、「学び直す」というプロセスが必要なのではないでしょうか。お考えをうかがいます。

 最後の質問は、住民投票制度についてです。

 昨年は、東京都での原発の稼働の是非について都民みずからが投票で決着をつけたい、として「原発都民投票」の実施を都に求める直接請求運動が市民グループによって展開されました。直接請求は、自治法の規定に基づき、2か月以内に有効署名数すなわち都内の有権者の50分の1以上の署名を、生年月日と押印を併せて集めなければならない、というハードルの高い活動でしたが、規定を優に超える数の署名を集めることができました。杉並区では9,000筆あれば足りるところ19,322筆が集まり、選挙管理委員会のチェックを受けたのち有効と判定された17,724筆をふくめて東京全体で323,076人分の署名が、昨年5月、当時の石原都知事に向けて提出されました。しかし、都議会はこの条例案を反対多数で退け、東京都で初の住民投票は実現しませんでした。

 この経験から、東京都に常設型かつ実施必至型の住民投票条例の設置を求める市民の運動が起きています。 「常設型」とは住民投票にかける案件の定義や実施要件、また情報提供の方法など、住民投票を行う場合に必要となる手続き項目などを、あらかじめ条例として制定しておくパターンのことです。そうすることで現在のように、住民投票を請求する度に、条例案を一から作成して添えねばならないという、市民にとって不慣れなハードルをなくすことができ、請求する住民は、テーマだけを提示すればよいことになります。市民に優しい条例体系だと言えます。

 また「実施必至型」とは、規定の数の署名がそろったら議会の議決を経ずに必ず実施されるということです。なおこの場合の規定割合は、自治体によってばらつきがありますが、例えば我孫子市の場合は8分の1、つまり12.5%というように、地方自治法の2%よりはハードルが高くなっているのが通常です。

 現在当区には、杉並区自治基本条例及び杉並区住民投票の請求に関する規則があるものの、これらの規定だけでは、住民がどんなに多くの署名を集めたとしても、住民投票の実施は保証されていません。ですから、直接民主主義を行使するためのしくみとして、また杉並区が成熟した一人前の自治体となるためにも必要だと考えます。いかがか、最後の質問として、区長のお考えをうかがいます。

 以上、うかがってまいりましたが、さらに細目については予算特別委員会での議論とすることとし、生活者ネット・みどりの未来の代表質問を終わります。

第4回定例会質問と答弁 2012.11.20 小松久子

【Q】 ● 児童相談所と子ども家庭支援センターについてそれぞれの役割はどのように整理されているのか伺う。

【A】   区の子ども家庭支援センターは、児童に関わる相談・通告の第一義的な窓口を担い、相談を受けて必要な援助を行っています。その中で専門性の高い困難事例は、児童相談所が対応します。こうした役割分担のもと、相互に連携しながら個々の事例へ適切な対応を図っていきます。

 

【Q】 ● 区内で起きた里子死亡事件をうけ、今年1月に都の児童福祉審議会が児童相談所の体制・機能強化や、子ども家庭支援センターとの連携強化などを提言したが、その後の対応状況について伺う。

【A】  都は今年度から、全児童相談所に里親支援の専任職員を配置するとともに、民間の専門機関を活用し、里親を訪問して必要な支援を行う事業を拡充する取り組みに着手しました。

     また、児童相談所から子ども家庭支援センターに対して、本人同意を得た上で、養育家庭に関する情報提供を行うことや、養育家庭との連絡会に子ども家庭支援センター職員が参加することをルール化し、児童相談所と子ども家庭支援センターとのより一層の連携強化が図られています。

 

【Q】 ● 本区の里親制度の登録数・委託数が他区に比べ多いと聞くが、直近の状況を伺う。

【A】   現在登録している養育家庭数は20家庭、委託家庭数は11家庭、また、委託児童数は12人です。

 

【Q】  ● 家庭的養護は都の制度であるが、基礎的自治体である区は里親家庭の実態・実情を把握し、必要な支援を行っていくべきと考えるが区の見解を伺う。

【A】   里親制度に関する直接的な相談・支援は、制度の実施主体である都において行うべきです。

その上で、区が実施している子育て支援サービスに関する情報を、児童相談所を通じて里親家庭への周知を図り、必要なときに必要な支援サービスを利用できるように努めます。

 

【Q】  ● 児童相談所の区移管について、進捗状況を伺う。

【A】    本年2月に、都区のあり方検討委員会とは切り離す形で、都と区の関係者による「児童相談所のあり方等児童相談行政に関する検討会」が設置され、現行の役割分担の下での課題及び対応策と、児童相談行政の体制のあり方について、検討が進められています。

       この間、都と区の課長級を中心とした部会が5回開催され、双方からの課題の検討が続けられており、本年12月を目途に検討会において、それまでの検討内容を確認します。

 

【Q】  ● 乳幼児の社会的養護については、国連の提言でもあるように、100%家庭的養護とするべきと考えるが、区は乳幼児の家庭的環境での養護の重要性をどのように認識しているか伺う。

【A】    乳幼児期は、人格形成のための大切な時期であり、心身の健全な発達を促すためには、ご指摘のとおり、可能な限り家庭的な環境のもとで育成することが重要です。

       なお、厚生労働省も、こうした考えから平成25年度予算の概算要求の中で、児童養護施設等の小規模化や、地域分散化を推進することにしています。

 

【Q】  ● 都のフレンドホーム制度について、都内の登録家庭数について伺う。

【A】    平成23年度末現在で、508家庭が登録されています。

 

【Q】  ● 区としてもフレンドホーム制度の普及に努めるべきと考えるが見解を伺う。

【A】    様々な事情により児童養護施設等で生活している子どもたちの健やかな成長を図る観点から、学校が休みの期間を利用して、普段経験出来ない家庭生活を体験することは、大変貴重な機会です。

       そのため、区では、子ども家庭支援センター等を通じて、本制度を紹介するパンフレットを配布することで、周知を図り、今後も機会を捉えて普及に努めていきます。

 

【Q】  ● 南相馬市など被災地の子どもを対象とする区民の活動に対し、区はどのような支援や後援をしてきたか。

     ● 区民が行う被災地の子どもの支援活動を、区は育て推進すべきと考える。見解を伺う。

【A】    3.11大震災以降、区は福島県南相馬市に対し、区民並びに事業者の皆さんとともに、被災地の復旧・復興に向けて、全力で取り組んできました、また、区民の皆さんが自主的な取組として、東吾妻町へ避難していた南相馬市の子どもたちへの文具一式の寄贈、また南相馬市と高円寺の子どもたちの東京での交流会の実施、さらに福島県の子どもたちを区の施設「富士学園」へ招き、「福島の子ども保養」などの活動を行ったことは十分承知しています。区は、こうした区民の自発的な活動に対し、必要に応じ現地等との調整を図り、また教育委員会では後援を行いました。

      先月は、区民の皆さまと共同で、南相馬市の中学生を区に招いて杉並区や台湾の中学生との交流親善野球を行ったところです。区民の皆さんの被災地の子どもたちに対する自主的な支援活動がさらに広がっていくことを期待し、今後も引き続き、区も、必要に応じた支援をしていきます。

 

【Q】  ● 不登校の子どもの数は増加傾向と言われているが区内の不登校の子ども数の推移と不登校の主な原因、またそれに対する区の見解を伺う。

【A】    平成23年度は、小学校65人、中学校174人で、平成18年~19年度のピーク時と比較すると減少傾向にあります。不登校のきっかけで主なものは、情緒の不安定が最も多く、次に、無気力、親子関係や友達関係をめぐる問題です。要因は様々ですが、個々の状況に応じた支援が大事ですから適応指導教室への通室やふれあいフレンドの派遣、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる相談支援等、不登校対策の取り組みを進めています。

 

【Q】  ● フリースクールなど学校以外の学びの場に通っている区内の子どもの数、及び、区内のフリースクールの数を把握しているのか伺う。また、区との連携や交流はあるのか伺う。

【A】    平成23年度の状況は、通所者数は小学生1名、中学生10名です。また、区内のフリースクール数は3ケ所で、区外の3施設へも通所しています。

       フリースクールとの連携は、必要に応じて通所している児童・生徒の支援に関する相談等を通じて図っています。

 

【Q】  ● 今年度から開設された小学生対象のステップアップ教室の開設に至る経緯、及び、取組についての区の評価について伺う。

【A】    不登校対策として、中学生対象の適応指導教室は整備されていますが、小学生への対応が課題となっていたところ、南伊豆健康学園の閉園を契機に、その代替策の一つとして中央図書館に小学生対象の適応指導教室「さざんかステップアップ荻窪教室」を開設しました。現在、13名の児童が登録しており、内1名は学校へ復帰しています。子どもの状況は様々ですが、不登校の児童が家から一歩出て、通室することで自信を育み、学校へ復帰できるようきめ細やかな支援に努めています。

 

【Q】  ● フリースクールに対する区の見解を伺う。また区内のフリースクールや区内の子どもが通うフリースクールへの支援などを検討すべきではないか。

【A】    フリースクールは様々な状況にある不登校児童の居場所の一つとして、その役割を担っています。今後も、不登校児童への支援について、情報交換等の連携を図っていきたいと思いますが、フリースクールへの財政的な支援については考えていません。

第4回定例会一般質問 2012.11.20 小松久子

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、特別な配慮を要する子どもに対する支援について、子どもの多様な学びの場の保障について、以上大きくいって2点 質問いたします。

 まず、特別な配慮を要する子どもとして、実の親から離れてくらさざるを得ない子どもに焦点をあて、里親制度などの家庭的養護についてうかがいます。いろいろな事情で親と一緒にくらすことのできない子どもを、家庭に代わって公的に育てるしくみを「社会的養護」といいますが、このうち、より家庭に近い環境で子どもを育てる制度が「家庭的養護」で、もう一方は児童養護施設や乳児院などの施設擁護です。家庭的養護の代表的なものが里親制度です。

 里親制度については、杉並区内の里親家庭でおきた子どもの死亡事件をめぐって、昨年秋の決算委員会や今年の予算委員会で質疑をおこなってきました。

 一昨年の8月に東京都が里子として措置していた3歳の女の子が家の中で亡くなった事件は、当初事故死とされていましたが、死亡から1年後、当時の里母による暴行が死因であったとして、その女性が逮捕され、社会に衝撃を与えました。とくに、女性が声優として芸能活動をおこない、地域でも目立つ存在だったことで、メディアがスキャンダラスに報じました。しかし里親をふくめた社会的養護の関係者にとっては、里親制度のあり方が問われる重大な問題として受け止められ、テレビのワイドショーが報じなくなったいまも、重苦しいしこりが残っている状況です。

 制度を所管する東京都はこの事件を深刻にとらえ、都の児童福祉審議会が検証を行いました。ことし1月に出された報告書には「死亡原因が虐待によるものと特定はされないが死亡に至った経過の中で虐待が疑われる事例」と明記されています。表現は慎重でありながら「虐待があった」可能性を肯定した、踏み込んだ内容と受け止めました。ただし、事件は女性の傷害致死容疑をめぐって東京地方裁判所で争われ、7月に懲役9年の判決が下されましたが、女性は容疑を否認し控訴しているため、依然として真相は解明されていません。

 すべてが明らかになるにはもう少し時間がかかるのだと思います。しかしそれはそれとして、いま目の前に特別な配慮の必要な子どもがいるという現状に対して、区としての取組みを考えたいと思います。

 私は、これまでも申してきたように、里親制度をいまのような東京都のしくみとして実施するより、身近な自治体である区が実施すべきではないか、と考えています。区はこれを自治の問題として、都から区への移譲を獲得するべく積極的に動くべきではないか。この問題意識から、今回あらためて質問いたします。

 里親制度を実際に所管しているのは児童相談所で、虐待問題への対応なども重要な事業ですが、同様の事業を区として所管しているのが子ども家庭支援センターです。はじめに、児童相談所と子ども家庭支援センターの役割の違いについて、それぞれの役割はどのように整理されているのか、うかがっておきます。

 先ほど述べた、都児童福祉審議会の報告書では、児童相談所の体制・機能強化や子ども家庭支援センターとの連携強化などが提言されていますが、現状はどうでしょうか。担当者数の増員などの変化はあったのでしょうか。2番目の質問として、その後の対応状況についてうかがいます。

 次に、里親制度の登録数・委託数について確認させてください。当区の実績数は他区に比べて多いと聞いていますが、いかがでしょうか。直近の区内の実績数をうかがいます。

 里親制度のしくみは都のものであっても、当然ながら子どもは地域の子であり、養育家庭は地域に所属します。基礎自治体である区は、養育家庭との懇談の場をもつなどしてその実態・実情を把握すべきですし、里親の課題を区の子育て支援施策に位置づけるべきと私は考えています。冒頭で里子の死亡事件に触れたのは、もし里親制度が区の事業とされていたら事件を未然に防ぐことができたのではないか、と考えるからです。都と区の役割分担は今すぐというわけにはいきませんが、すぐにできることとして、区は里親家庭に対し必要な支援を行っていくべきと考えます。見解をうかがいます。

 児童相談所の事業の区への移管については、今年になってようやく都区間の実務者レベルの調整がされていると聞いています。この進捗状況はいかがか、おうかがいします。

 乳幼児の社会的養護については、国連が「家庭を基本とした環境で提供されるべき」と方針を示しているだけでなく、2006年には「児童に関する暴力の報告書」で「3歳以下の乳幼児の施設集団ケアは国家による子どもへの暴力である」と提言しています。幼ければ幼いほど、施設に入所させるのでなく100%家庭的養護とすべきです。

 日本の社会的養護全体に占める里親委託率は、3年前の統計で10.8%となっていますが、自治体間の差が大きく東京都は9.2%と平均以下です。また諸外国の状況をみますと、約10年前のデータではありますが、委託率の最も高いオーストラリアでは92%、つづく米国は77%、イタリア、イギリスでは60%を超え、フランス、カナダは50%以上となっています。制度が異なるため単純に比較することはできませんが、日本との差の大きさにはがく然とします。

 区は、乳幼児の社会的養護について、家庭的環境での養護の重要性をどのように認識しておられるでしょうか。見解をうかがいます。

 つづいて、フレンドホーム制度についておたずねします。フレンドホームというのは東京都が家庭的養護の一環としてすすめている制度で、乳児院や児童養護施設に入所している子どもを数日間、最長で67日間、家庭で預かるしくみです。里親制度とちがって家庭が直接施設に登録する方式ですが、里親となるにはハードルが高いけれど「週末や休日だけなら」と考える人は多いはずです。フレンドホームの経験者が里親になるケースもよくあるといいます。区内には、0歳から2歳児までの子が対象の乳児院2施設、3歳から18歳までが対象の養護施設が5施設あり、フレンドホーム制度の活用が拡がればと考えます。しかし、東京全体でもまだ実績が少ないと聞いています。制度活用の実績はどのくらいか、おうかがいします。

 杉並区民の社会貢献に対する意識は他の自治体に引けを取りません。区民の里親はもっと増やすことができると考えます。子どもにとっても少しでも多く家庭的環境を体験できることは望ましいことであり、区としてもっと普及をすすめるべきと思います。見解をうかがいます。

 さて、特別な配慮を要する子どもとして、東日本大震災で被災した子どものことを忘れるわけにいきません。

 大震災から1年半たち、岩手、宮城、福島およびその他、被災地の子どもたちの日常にはあらたな課題やニーズが生じています。たとえば、そのような子どもたちに寄り添った支援活動をおこなってきたボランティア団体の報告では、近親者の喪失からくる孤立を口に出せないまま体にしみついていくこと、転居による住空間の問題、経済的な困難状態、不自由な状況下での受験、などが指摘されています。加えて、放射能汚染地域に住む子どもたちにとって、非汚染地での自然を満喫できるような保養の機会がたびたび必要であることは、多くの専門家の指摘するところです。

 杉並区として南相馬市などの被災地支援活動もされていますが、区民による活動もさまざま実施されています。今年夏のお盆休みに実施された、福島県在住の親子に富士学園で34日過ごしてもらう試みも、そうした取組みのひとつです。このような、被災地の子どもを対象とする区民の活動に対し、区はどのような支援や後援をしてこられたでしょうか。おうかがいします。

 子どもの相対的貧困率が年々増大し現在約15%という日本の状況にあって、大震災のような緊急事態下では、社会が抱えるさまざまな問題が凝縮され、子どもに降りかかっています。被災地の子どもに対する支援は、子どもの権利条約にもとづく視点から、大人に対する支援とは別の意味で重要と考えます。成長過程にある子どもの育ちを支援するには、生活の細部に配慮した活動が必要であり、それは市民による草の根の活動が望ましいと考えます。区民が行う被災地の子どもの支援活動を、区は育て推進すべきと思います。見解をうかがって、2つ目の項目に移ります。

 2番目、子どもの多様な学びの場の保障について、です。ここで「多様な学びの場」として採りあげようとしている、その代表格は、いわゆるフリースクールです。フリーとは「自由」の意味のほうで、フリースクールは子どもの立場に立った学校外の学びの施設を指します。

 便宜上「フリースクール」という言葉で代表して質問を進めますが、ほかにも正規の学校として認められていない、シュタイナー教育、フレネ教育、モンテッソーリ教育、デモクラティックスクール、外国人学校、インターナショナルスクール、ホームエデュケーションなどがあります。これらもふくめて、フリースクールと呼ぶことにします。

 学校に行けない、あるいは行かないことを選択する子どもの問題が表面化するようになった80年代半ば以降に、あるものは学校教育を補完するものとして、またあるものは新しい教育のかたちとして開設されるようになりました。いじめが深刻な社会問題として認識され、不登校が珍しいことでもいけないことでもなくなったいま、学校外の学びの場として実績をつくってきたフリースクールは、社会に必要なしくみとして存在感を増しています。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」には北海道から沖縄まで、現在45団体が所属しています。

 それだけ社会的に認知されてきているフリースクールですが、多くは学校教育法が認めた機関でないため市民権が得られたとは言えず、財政面で不利益をこうむっています。一部の例外を除いて公的な資金援助を得られないからです。

 今回、この問題について採り上げることにしたのは、子どもの多様な学びの機会を保障するための法律を作ろうとすすめられてきた、その動きを後退させたくないという思いからです。

 この法整備の動きは、フリースクール関係者を中心に2009年にスタートし、この3年間、それぞれの子どもにとって最善の学びを選ぶ権利の実現のため、不登校の子どもの保護者や有識者、国会議員、教育関係者などを巻き込んで、法案づくりにも取り組んできました。めざすところは、学校外のフリースクール等を法的に位置づけ、それを選ぶ子どもや保護者が一般の学校に通う子どもたちと同じように公費助成を受けられるようにすることです。正規の学校教育からこぼれても学習権が保障されるように、教育の無償の原則が適用されるように、学校教育法とは別に法律で規定されることをめざしています。

 フリースクールを選んだ子どもの多くは正規の学校に行けない・行かない、不登校の状態にあります。そこで、杉並区での不登校の状況を見ておきたいと思います。

 不登校の子どもの数は国全体で増加傾向と言われますが当区ではいかがでしょうか。区内の不登校の子どもの数と、その推移をお示しください。そして、その子たちが不登校になった原因はおもに何ととらえておられるか。また、それに対する区の見解をうかがいます。

 フリースクールなど学校以外の学びの場に通っている区在住の子どもの数と、その子たちが通っているフリースクール等の数を区は把握しておられるでしょうか。ひと口にフリースクールといっても、規模も形式もさまざまなので一括りにできないのですが、概況をつかんでおきたいのであえておたずねします。また、それらのフリースクール等と区との連携や交流はあるのでしょうか。併せておうかがいします。

 不登校の子どもの学びの場として、当区では中学生対象のステップアップ教室に加えて、今年度から小学生対象のステップアップ教室が設置されました。これらの開設に至る経緯はどのようなものだったのでしょうか。またこれらの取組みを区はどのように評価しておられるのか、おうかがいします。

 当区のステップアップ教室事業などの取組みを評価するものです。けれどもそこへすら行けない、それでも合わない子どもは確実に存在します。学校に行けない・学校が合わない子どもにとって、フリースクールなどの民間施設や居場所が、学びや育ちの場になっています。子どもの学習権を保障するための、公教育のすきまを補充する役割を果たす機関として、文部科学省もフリースクールなどの存在を認め評価しています。フリースクールに対する区の見解をうかがいます。

 さて、先ほども申しましたように、フリースクールなどの多くは公的助成や税制優遇の恩恵が受けられないため、厳しい財政状況にあり、保護者の経済的負担も大きなものがあります。区内にあるフリースクールに対する支援や、区内の子どもが通うフリースクールへの支援など検討すべきではないでしょうか。最後の質問としてうかがいます。

 いまを生きる子どもの現実が必要としているフリースクールを法的に位置づけ、学びの場を従来型の「学校」に限定せず多様なあり方を認めることは、区の基本構想で描かれた「多様な文化の共生社会を築く」という方向性にも重なるものです。

 いま現在、国政は選挙前の混沌としたなかで向かう先が見えない状況ですが、多様に展開されてきた子どもの学びのありようが収縮するようなことにしてはならない、と強く思います。以上申し上げ、私の質問を終わります。

決算特別委員会 意見開陳  2012.10.4 そね文子

 

決算特別委員会に付託された2011年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し述べます。


 


当該年度は、311日、予算可決直後におきた大震災によって、区政は大きな影響を受けました。策定の最中だった基本構想は、審議会の議論の内容も変化し、結果として防災・災害対策が最大のテーマに急浮上した感があります。もし大震災がなければ、基本構想は良くも悪くも、ちがうものになっただろうと思います。震災直後に統一地方選挙が行われ、新たな区議会がスタートした年でもありました。


 


原発事故を受け、脱原発を求めるデモがさかんに開催されるようになったことは、市民が政治に対して自らの意思を示すようになった表れと前向きにとらえたいと思います。その動きは、今年、野田政権が民意を無視して敢行した大飯原発再稼働を受け、現在まで継続している毎週金曜日の首相官邸前デモへとつながっています。




この間の我が国の経済状況を見てみますと、2008年のリーマンショックからようやく回復に向かう兆しが見られた時期に大震災がおきたことで、個人消費が落ち込み、極端な円高による企業収支の圧迫や、さらなる雇用状況の悪化が進み、超少子高齢社会が進行する現在、景気の先行きは減速し続けるのが明らかな状況にあります。


 


それは杉並区においても、当該年度の特別区民税が5年連続で減り続け、収入未済額は所管の努力で前年度より改善したものの100億円を超えるという状況からも見て取れます。生活扶助費のさらなる増大にもそれが表れています。


 


経常収支比率が前年比で1.3ポイント下がり、単年度収支でみれば健全と言えても、持続可能な財政運営を継続する観点からみると、これからも不断の努力が強く求められます。


 


当該年度の区政全般において印象に残っていますのは、震災と原発事故直後の対応として、区民の放射能汚染に対する不安を受け、0歳児がいる家庭への飲料水の配布、空間・土壌や給食食材の放射線計測、除染など迅速に動かれたことです。また南相馬市への多面的な支援、自治体スクラム支援会議の設置と、意欲的に取り組んでこられたことに敬意を表したいと思います。


 


さて2011年度決算について、委員会の質疑で区長が繰り返し述べておられたような、財政のバランスに対する配慮を確認しました。限られた時間ではありましたが、いただいた資料をもとに施策の執行状況について調査を行った結果、小松久子、市橋綾子、すぐろ奈緒、そね文子は一般会計並びにすべての会計決算案にたいして認定すべきものと判断しました。なお奥山たえこは不認定とし、後ほど意見を述べます。


 


以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことや、再確認をお願いしたいことなど、何点か絞って述べさせていただきます。


 


まず防災についてです。


東日本大震災は、東京に暮らす私たちにとって、近々起きるであろう首都直下地震の発生を現実のものとして認識させるに十分でした。大震災後、防災をわが身のこととして捉え、実効的な備えをしようとする人が増えています。そのようなときに行政がすべきことは、住民の「お任せにしておけない。自ら備えよう」という緊迫した思いを捉えて、それを後押しすることではないでしょうか。住民が避難訓練をする場合、NPO法人や町会・自治会、防災会などの団体でないと区の施設、学校施設使用の敷居が高いのが現実です。そのうえ、使う施設によってそれは公園課、それは教育委員会、と窓口が分かれます。あれこれ規制するばかりでなく区民の立場に立って一緒に考えていただくことができないでしょうか。どうしたらできるかを一緒に考える窓口の設置を望みます。


 


加えて震災時に不足するトイレの問題を提起しました。都立和田掘公園にあるマンホールトイレの穴90個は東京都が掘り、ウワモノを区が用意しています。90のうち腰掛式つまり洋式は9個だけ。圧倒的に洋式が足りません。和式・洋式の数のバランスはこれで良いのか再考が必要です。


 


そのうえで、トイレは避難した人だけが使うという想定はすでに間違っています。断水になれば住民は仮設トイレやマンホールトイレを求めて震災救援所、広域避難場所、いっとき避難地、公園などに殺到します。それを想定すればトイレの数は必ず不足します。ご検討ください。


 


食物アレルギー対応食の備蓄を提案しました。もっとも多いと思われる乳製品、卵、小麦アレルギーの方達は既に用意されている白米が食べられますので、お願いしたいのは特に粉ミルクへの対応です。基本は各家庭で備蓄するものであることは承知していますが、火災によって焼失する場合も考えられます。アレルギー対応食はアレルギーがない人も口にすることができます。備蓄品の一部をアレルギー対応とすればすみます。ご検討を望みます。


 



放射能対策については、区民の強い要請を受け、ゲルマニウム半導体検出器を購入し給食食材の計測をしてこられたことを評価しています。今後も計測する食材の見直しを検討しつつ続けてくださるよう要望します。ただ一方で、区がこれまで顧問として、またシンポジウムのパネリストとして招いた専門家の方がたは、区民の気持ちに寄り添うというよりは、放射能の安全性を押し付けるような言動が目立ちます。今後は不安を抱えた区民が納得できるような専門家を、区民の意見も聞いて選定してくださるよう要望します。

 


行政評価と市民参加のあり方について述べます。


区は99年に行政評価制度を導入して以来、たえず見直し新しい試みを採り入れるなどされている一方で、区民による行政評価を受けることについては、区民アンケートなど「ご意見承ります」の広聴活動にとどまっています。いまひとつ積極性が見られないことに歯がゆい思いです。当該年度に初めて実施された、無作為抽出の区民による意見交換会にしても、幅広い年代層の区民が単に意見を出し合う場に終わってしまっています。それが意味のないことだとは決して思いませんが、せっかく集まっていただき、報酬を支払うのであれば、区民から密度の高い議論を引き出すような形に、さらに工夫し研究していただきたいと思います。そしてその評価を実際の区政にどのように生かしていくかについて、区の課題として、ぜひ取り組んでくださるよう要望します。


 


これからの協働のあり方について、有識者会議より新たな考え方が示されました。


大震災の教訓や、高齢者をはじめとして地域で孤立する人びとの問題が、「地域の絆」という言葉で表されるコミュニティーづくりの重要さを行政課題として突き付けています。このようなニーズがあるなか、これまでの「区とNPO」の間の関係というだけでなく、町会・自治会など地域の活動団体もふくめた協働をすすめようとすることは、時代の要請でもあり自然な流れだと思います。地域の現場で小さな実績を積み重ねながら、着実に進めていただきたい。区はそのための推進体制をしっかりと構築していただきたいと思います。


 


男女共同参画について申し上げます。


質疑の中で、男女平等推進センターの機能アップ、発信力の強化を求めたところ、現在策定中の「男女共同参画社会をめざす行動計画」のなかにしっかり書き込んでいくとの答弁をいただきました。しかし、そもそも行動計画とはどういった基本理念に基づくものなのでしょうか。当区には、計画の方向性
や具体性を鮮明にするような法的根拠となる「男女共同参画推進条例」がありません。前々回、2007年度の行動計画では「他の自治体の条例を調査・研究する」としていましたが、2009年度ではこれが消えています。行動計画をしっかり進めていく上でも、「杉並区男女共同参画宣言都市宣言」15周年にあたる今年、ぜひ、根本からの議論をして条例の制定に向けての取り組みを進めていただきたいと思います。


 


保育について申し上げます。一人親家庭の認可保育園への入園率が低い状況を指摘しました。年収1500万円をこえる高所得の家庭は660人が入園できている一方で、平均収入が181万円の一人親家庭が年間50人も断られ、認可外保育園に子どもを通わせています。保育園の入園については、保育に欠ける児童の中でも優先度が高い世帯に対し、公平な受け入れ体制ができているのか、大いに疑問があります。入園選考基準において、収入を考慮するなど指数加算項目の見直しを強く要望しいたします。


 


学童クラブへの通所ボランティアの活動現状について伺ったところ、現在、登録している29名全員がフル稼働されている状況です。万一、対象となるお子さんが増えた場合、担い手がすぐ見つかるとは限りません。地域の支え手を増やすには、単にボランティア登録を募るのでは少々配慮不足ではないでしょうか。障がいについての学習会、講演会など、学んで理解する場をつくり、そこを通して登録する人を増やすなどの工夫が必要だと考えます。どの子どもも、どの子育て家庭も地域で支える、地域で子どもを育てる、そういう杉並区をめざしていただきたいと考えます。


 


殺虫剤の使用についてうかがいました。


殺虫剤の成分は農薬と同じで、虫の神経を壊す働きがあります。それは人の脳へも影響があるという調査結果も示されています。保育園や学校での殺虫剤の使用については慎重に、万一使う場合は極力量を控えていただくよう要望します。また給食室で使用する洗剤には石けんを、手洗い用のせっけんについては多くの学校が使用している無添加石けんの使用を広げるよう求めます。厨房で働く人や子どもの健康を守るため、また水循環に影響を与えないために、合成洗剤の使用をできる限り減らす努力をしてくださるよう要望します。


 


環境問題に関連して、省エネについてです。区がこれまで様々な努力をしてこられたことは評価しています。しかし、今後原発に頼らないエネルギー社会をつくるために、さらなる省エネ対策が欠かせません。特に大型施設については、無理なく、工夫次第で大幅に省エネできる余地が残されています。提案させていただいた無料の省エネ診断を受けるとの答弁がありましたので、その結果を踏まえて、引き続き積極的に対策を進めるよう要望します。


耐用年数を過ぎている照明器具の入れ替えについても、省エネ効果と区財政に与える影響は大きいため、費用対効果を十分に検討し、計画を策定することを要望いたします。


 


中学生環境サミットを全中学校の参加で、「持続可能な発展のための教育=ESD」の一環として行ってほしいと思います。新学習指導要領にも明記された、持続可能な社会の実現をめざす教育活動として、中学生環境サミットを教育委員会が、杉並区版エコスクールの環境教育、環境配慮行動に位置づけ、ぜひすべての学校に広げていただくよう要望いたします。


 


 


学校における災害事故の質疑を通して区の危機管理を問いました。


質疑の中では触れませんでしたが、中学校で武道が必修科目とされたのは、そもそも2006年の教育基本法改定に端を発しています。当時の政権のもと、「伝統と文化の尊重」がことさら強調された内容に書き換えられた結果、教育的見地からの議論はもとより国民的な盛り上がりも皆無であったのにもかかわらず、学習指導要領に武道の必修化が盛り込まれたことは、教育政策のあり方として大いに問題があると考えます。


 


そうは言っても、教育現場に責任を負う行政が最優先すべきは、子どもが安全に学ぶ環境整備です。質疑では、おもに柔道に言及しましたが、柔道に限らず、事故をおこさないためのルール作りとその徹底、また万一の場合に備えた対応策について、常に点検し折に触れて見直してくださるよう求めます。学校におけるスポーツなどの災害事故が、係争事件に発展している事例が全国で、決して少なくないことを忘れてはなりません。そして、問題が起きてしまった場合の、訴訟によらない、人的な解決をめざす第三者機関の設置を検討されるよう、再度求めるものです。


 


教育に関連して、教育委員会のあり方について若干述べます。


大津市のいじめに関する一連の事件で、教育委員会の対応のずさんさが次々に報道され、これがひとつのきっかけとなって、いま教育委員会不要論や「教育行政を首長のもとに」という議論を呼んでいます。いずれ、教育委員会制度は見直される時期が来るとは思いますが、杉並区の教育委員会においては、教育の執行機関として職責を誠実に果たし、その存在意義を発揮してくださるものと期待しています。


 


 


今回、区長のご答弁で印象に残っているのは、南伊豆健康学園の跡地利用について、国や都からの決まりだからといってあきらめるのではなく、正しいあり方を提案して行くのが最前線でやっている区の役割だと述べられたことです。同じことがエネルギー政策についても言えるのではないでしょうか。多くのパブコメに押され、政府は2030年代に原発ゼロを打ち出しましたが、それは閣議決定されず、大間原発建設再開を認めたことで国民からの信頼は地に落ちた状況です。杉並区は国に合わせて後退するのではなく、地域エネルギービジョンの策定にあたっては、ぜひ地域から省エネ、創エネに取り組み、原発や化石燃料に依存しないことを明確に示して下さるよう要望します。


 


さて、冒頭でデモについて申し上げました。地方に交付金をつけて危険な原発を押し付けてきたことに目が向けられ、都会の消費者が原発を自分の問題としてとらえるため、今年、原発稼働の是非を問う「都民投票条例」の制定を求めて、都知事に直接請求が行われたことは特筆すべきことです。昨年から今年にかけて必要署名数22万筆を大きく上回る32万人の署名が集まったことに、市民の政治参加意識の高まりが表れています。


 


 


尖閣諸島の領有権問題など東アジア情勢はこれまでになく緊迫した情勢ですが、それを助長する報道ばかりが多いことに危機感を持っています。私は以前の勤務先の関係で、中国、韓国をはじめ多くのアジアからの留学生と付き合ってきましたが、その交流は国同士がどんな状態にあっても変わるものではありません。市民の草の根交流から国際理解と平和に取り組むことがもっとも有効だとかんがえます。こんなときこそ、友好都市協定を結んでいる韓国ソチョ区との交流を大切にし、区が率先して国際平和への態度を示していただきたいと思います。


 


最後になりましたが、決算審査にあたり資料の調整に尽力くださった職員の皆さまには、この場をお借りしてお礼を申し上げます。今回使わなかったものについても、今後の政策提言に生かしてまいります。以上をもって、意見といたします。


第3回定例会一般質問  2012.9.6小松久子

『杉並区版エコスクール事業の推進について、いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて』

 私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、杉並区版エコスクールの推進について、いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて、以上2点質問いたします。

 まず杉並区版エコスクールの推進についてです。ここでわざわざ「杉並区版」としているのには理由があります。後でも述べますが、杉並区独自の事業としての「エコスクール事業」について評価する立場から、基本的にこれを推進していただきたいという趣旨での質問であることを、最初に申し添えておきます。

 でははじめに、エコスクールの前提となる区の環境政策に関して質問いたします。区の施策体系の最高位にあたる基本構想が今年3月に策定され、環境に関しては「持続的発展が可能なまちづくり」「自然環境と人との共存」「環境に関する自発的な行動」などが将来像として描かれています。環境基本計画はただいま改訂の作業中ですが、並行して地域エネルギービジョンの策定作業も進めるなど、杉並区の環境政策にかける意気込みは、決して他に引けを取るものではないと思います。ただ、それにしては田中区長が就任されて以来、ご自身の環境問題に対するメッセージはあまり伝わってきません。最初の質問として、環境先進都市を標榜する杉並区のリーダーとしての、地球環境問題についての区長の認識をおうかがいします。

 環境教育の基本認識についてもうかがっておきます。総合計画でうたわれている「環境を大切にする生活スタイルの推進」を実現するには、区民への啓発や学校教育・社会教育との連携が欠かせません。区の教育方針で示される必要がありますが、教育ビジョン2012の「目指す人間像」の項目で「育みたい力」に示された「持続可能な社会を目指し、次代を共に支えていく力」はこれに呼応していると思います。区の環境教育およびエコスクール事業はこの力を育てるものととらえますが、この認識でよいでしょうか。区の環境教育に対する基本認識について、教育長の見解をうかがいます。

 さて環境政策と環境教育の基本を押さえたところで、「エコスクール」という概念がどこでどう始まったのか確認しておきたいと思います。

 「エコスクール」の概念は、そもそもはヨーロッパで先行して提唱されています。日本では1996年に文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省庁の協力により研究者会議が設置され、出された「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進について」という報告書が、国の政策に初めて登場した場面だったようです。国は翌年、「エコスクール・パイロットモデル事業」を文科省、農水省、経産省、国交省の4者の連携でスタートさせ、一方、環境省はエコスクールとは別に2003年に「エコフロー」というプロジェクトを文科省、農水省、経産省との連携でおこし、いまに至っています。

 杉並区では、環境教育・環境配慮に対するさまざまな取組みを経て、山田前区長の「学校の普通教室にクーラーは設置しない」という政策を前提とし、学校施設における環境施策が進められてきました。2006年、庁内組織で検討された「風とみどりの施設づくり」が提案され、つづく2007年には学識経験者や建築家、学校関係者、環境団体なども交えた第1次エコスクール化検討懇談会が設置されて「環境共生型学校施設」整備が提案されました。これが実質上「杉並区版エコスクール」のスタート地点であり、その後、第2次エコスクール化検討懇談会における検討をへて出された報告書「杉並区版エコスクールの推進」の中で、「既存校におけるエコスクール化の推進」が述べられ、現在につづく「すべての学校をエコスクールに」という方針のベースになっている、と理解しています。

 すなわち、建て替えにより環境配慮型の新しい設備を取り入れた校舎だけが「エコスクール」なのではなく、既存校をふくめて区内の全校がそれぞれに工夫を凝らした「エコスクール」であり、ハード面だけでなく環境教育、環境配慮行動をふくめて3つの柱が同時にすすめられることが「杉並区版エコスクール」の定義である、と理解しています。この認識でよいでしょうか、区の見解を確認しておきたいと思います。

 さて、「杉並区版エコスクール」はその後、高井戸小、方南小、荻窪小、松渓中、天沼小の全面改築ないしは新設に伴い、クールヒートトレンチやナイトパージなど新しいシステムが導入されて注目を集める一方、既存校における「エコスクール化」も進められてきました。しかし新しいシステムは費用対効果や現場での管理・運営において課題が明らかになり、また、田中区長になって以降、「すべての普通学級にクーラーを設置する」という方針が打ち出されたこともあり、行政監査を受けて今年2012年、事業が見直されることになりました。ここに至るまでの、エコスクール事業の進捗状況について概要をお示しください。

 また、今年5月に出された杉並区エコスクール事業検討委員会の報告書が示す方針転換について、その概要をお示しください。

 杉並区版エコスクール事業は3つの柱が同時進行するのが特徴だとたびたび説明されてきています。ところが、実際にはハード面とソフト面が切り離され、また先に述べた行政監査で指摘されているように、ハード面だけみても既存校と改築・建設校で区の担当が異なるなど、事業自体を一体としてとらえられてこなかった感があるのは事実です。区においてエコスクール事業を担当する所管組織は何度か変更されてきましたが、今年4月の組織改正で学校整備課が新設されました。その意図と経緯について、おうかがいいたします。

 環境に配慮した施設運営や管理の方法は、学校ごと、教室ごとに違うはずです。学校が立地する地域の状況や、校舎内の教室の位置、日照条件などをきめ細かく調査し、省エネ対策を立てるべきと考えます。環境省が作成した「エコ改修後の学校で快適に生活する運用ガイド作成のための手引き」などには、具体的メニューも掲載され参考になりそうです。建築や環境の専門家の協力を得て、学校ごと、教室ごとに省エネのための小改築や省エネ行動マニュアルを作成すべきと考えます。いかがでしょうか、うかがいます。

 つづいて環境教育についておうかがいします。

杉並区の環境教育は、中学生環境サミットの活動などにみられるように、環境団体や地域住民の協力を得て行われてきています。ところが、学校施設の改築・改修や省エネ行動と有機的につながってきたとは必ずしもいえません。行政監査報告でも「エコスクール事業全体をコーディネートする部署が必要」と指摘されているように、事業の3つの柱を一体的に推進する体制を整備する必要があるのではないでしょうか。区の取組みについてうかがいます。

 私はさらに、各学校でこの事業を進めるための体制として、教職員、児童生徒、保護者、地域住民、専門家、活動団体など関係者間の連携をはかり事業の効果を検証しつつマネージメントを行う、また、その学校での主体的な取り組みをサポートするコーディネートチームが必要だと考えています。参考にしたいのは荻窪小学校のケースです。荻窪小では、2008年、校舎のエコ改築の工事段階から人工環境や自然環境を生かした環境学習をスタートさせ、現在も地域の人たちや専門家との連携による自主的な取り組みが継続していますが、そのきっかけは地域団体のメンバーや建築系の専門家の協同での事業提案から始まりました。このようなつながりを生かしたチーム編成が望まれます。これは指摘にとどめておきます。

 環境教育について最後にもう1点、ちょうど2年前の9月議会の一般質問で採り上げた、ESD「持続可能な発展のための教育」に関連して、おたずねいたします。ESDEducation for Sustainable Deveopmentの略で、日本語訳は「持続可能な発展のための教育」または「持続可能な社会づくりのための教育」ともいわれます。

 小学校で昨年、中学校では今年改訂された新学習指導要領では、環境教育における留意点として「持続可能な社会の構築」が挙げられました。これは、国際的なプロジェクトであるESD推進の動きともフィットします。区の施策体系においても、基本構想、教育ビジョンのいずれでも「持続可能」という言葉がキーワードとして使われており、方向性は一致します。

 以上のようなことから、杉並区の環境教育を「ESD」という言葉で大きくとらえ直してみてはどうでしょうか。一昨年の一般質問での、当時の済美教育センター所長のご答弁では「杉並区としては従前より環境教育にも、国際理解教育にも力を入れ、ESDの考え方は十分反映させてきた」と述べられ、「あえてESDという言葉を使って再構築する必要はない」という趣旨の見解を示されています。しかし、何か別のジャンルとみなされがちな、人権教育や国際理解教育、伝統文化を学ぶ教育などが、実は、人と人、人と自然が協調しあいながら生きる持続的な社会を形成していくための関連した学習と捉えると、教科学習も含めた多様な学習が太い線で結ばれ、大きな教育目標を達成するための効果をあげると考えます。「ESD、持続可能な社会づくりのための教育」をそのためのキーワードとして共有化するべきではないのでしょうか。

 すでに環境問題をはじめさまざまな教育課題に対し横断的に取り組んできている杉並区であれば、これをESDとしてとらえ直すことで、理解がより深まり、視点を整理して新たな価値観を共有することができると考えます。国連で採択された「ESD10年」の最終年である2014年がすぐ間近に迫った今なお、杉並においてこの言葉自体の認知度が決して高いといえないのは残念なことです。

 日々膨大な課題を抱えている学校現場への負担が小さくてすむように、教科学習やすでに実施されている総合的な学習・環境学習のプログラムを上手に組み合わせ活用するなど、工夫して進めることができるはずです。独自のエコスクール事業を推進する自治体として、ESDに積極的に取り組むべきと考えます。いまこそ、モデル校を設置してESDに取り組むべきではないでしょうか。見解をうかがって、次の質問に移ります。

 つづいて「いじめから子どもの命と権利を守る取組みについて」です。

昨年10月、滋賀県大津市でいじめを受けていた中学2年生の男子生徒が自殺し、子どものいじめの問題が今また大きな社会問題としてクローズアップされています。つい昨日も、札幌で中学1年生がいじめを訴えるメモを残して亡くなっています。新学期が始まった直後の今の時期は、いじめを受けている子どもにとって不安がふくらむときです。まさに要注意時期といえます。

 これまでにいったい何人の子どもたちがいじめによって自ら命を絶っていったでしょうか。もう2度とそのようなことは起きてほしくない、と痛切に思います。ついに文科省もこの事態を深刻に受け止め、国が主導して対策に取り組むための方針をまとめました。しかし私は、社会から犯罪を追放することができないように、学校のような閉じられた空間での集団生活の中でいじめは「なくすことができないもの」と認識するところから始めるべきだと思います。

 ただし、それでも子どもの命と権利だけは大人の責任としてしっかり守る、そのためにすべきことを考えたいと思います。そしてできるだけ、いじめをおこさない知恵と工夫についても、あとで述べたいと思います。

 まず、いじめの定義についてです。文科省は20061月、いじめの定義を変えました。それまでの「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」という定義から「子どもが一定の人間関係のある者から、心理的・物理的攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と変更し、「いじめか否かの判断は、いじめられた子どもの立場に立って行うよう徹底させる」としました。いじめられる側により近くよりそったものになったと思いますが、区の認識はいかがでしょうか。うかがいます。

 当区におけるいじめの認知件数、その経年変化をうかがいます。また、自殺の原因が疑われるなど深刻な状況を招いた事例はないか、警察がかかわったケースはあるのか、おうかがいします。一般に、小中学校のうちでは中学校が、特に中1にいじめが多いとされますが、当区の場合はいかがでしょうか。あわせてうかがいます。

 いじめについて、区は実態を把握するためのアンケート調査を実施されておられるとのことです。その内容、方法など概要をお示しください。またその結果と、それに対する区の見解をうかがいます。

 ところで文部科学省は、いじめをふくめて暴力行為、出席停止、不登校など問題行動全般について、毎年「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題」に関する全国調査を実施しています。公表されている直近の調査結果では、調査方法を改めた2006年度以降を見てみますと、2009年度までは認知件数が下降線をたどっていますが、2010年に小中高ともすべて増加しています。この数字をどう見るか、お考えをうかがいます。

 同じく文科省調査についてです。「相談の状況」についての設問に対し、相談相手として学級担任をはじめとする学校関係者や保護者・家族が多く挙げられていますが、電話相談をふくむ学校以外の相談機関にアクセスしている状況が見てとれます。また小中とも「だれにも相談しない」のが約7%。しかし高校生は14%です。この数字は、年齢が上がると学校内の取り組みだけでは不十分であり、学校の外に子どもを支援する仕組みが求められることを表していると考えます。

 実際、子ども専門の電話相談「チャイルドライン」には大津市の事件があって以来、いじめに関連する相談が増えたと聞きます。また今ごろの時期には、再開した学校生活に不安を訴える子どもの声が多く寄せられるのだそうです。行政が直接運営にかかわるホットラインとは違って、民間だからこそ子どもにとってアクセスしやすい面があります。けれども杉並区内にはまだ活動の拠点が持てず、区内の子どもがかける電話は他の区市で受電されている状況です。身近な地域で活動できるよう、区は支援すべきではないのでしょうか。これも昨年第1回定例会の一般質問でうかがったことですが、あらためてお聞きします。

 さて、公の調査は重要ですが、子どものいじめに関しては数字に表れない部分が必ずあることを承知しておかなければなりません。いじめが認知されないからといって実際にいじめが存在しないとはいえず、むしろより注意深く子どもの状況を把握する必要があるのではないでしょうか。子どもがいきいきと生きる権利が保障されるために、いじめられたら逃げること、逃げる場所は必ずあることをメッセージとして伝える必要があります。身体を傷つける行為や、窃盗などの犯罪をそそのかす行為はそれ自体が犯罪であり、罰せられるべきであることを教育の場できちんと伝える必要があります。子どもを犯罪者にしないことは教育の使命です。区の見解をうかがいます。

 杉並区ではスクールカウンセラーの全校配置に加えて学校司書が全校に配置されるなど、従来からの養護教諭もふくめて、いわゆる「先生」でない大人が校内に存在しています。またスクールソーシャルワーカーも導入され、区が教育と福祉の連携に努め実績を積んでこられていることを評価しています。いじめの対応には、これら教員以外の職員等もふくめてチームで連携する体制が求められます。区の見解はいかがでしょうか。おうかがいします。

 学校でのいじめの情報が区に提供された場合、だれが、どのように活動するのか、実際の例を挙げて説明をお願いしたいと思います。保護者から「自分の子どもがいじめられている」という通報、また保護者ではない人から、「ある子がいじめられている」という情報提供があったとすると、だれが、どのように動いて解決に向かうのでしょうか。また「ある子どもがいじめに加担しているらしい」という場合はどうでしょうか。

 いじめは、学校という閉ざされた空間でおこる必然だという論考にしばしば出会います。最近読んだ本では「閉鎖空間でベタベタすることを強制する」環境がいじめを生む、ということが書かれていました。競争をあおる成果主義や、みんな同じ色に染める全体主義を原因に挙げる主張にも、うなずけるものがあります。でももし学校が風通しのよいところで、子どもが自他ともに尊重しあえる空間だったら、いじめは起こりにくいのではないでしょうか。

 そのような意味で、予防策として効果的と思われるものに、「構成的グループエンカウンター(SGE)」というプログラムがあります。本音を表現し合い、それを互いに認め合う体験を通して関係を築くことができるようになり、いじめを生じさせない学級・学校づくりに効果があると評価を受けています。

 杉並区でも、中瀬中学ではこのプログラムに精通した校長の指導のもと、2008年から2009年度にかけ教育課題研究指定校として、「豊かな心を育む教育プログラムの開発」と題した構成的グループエンカウンターに取り組みました。取組みはその後も継続し、生徒間、生徒と教職員との間、さらには保護者同士の良好なコミュニケーションを生み出す効果をあげていると聞いています。人が互いを尊重しあえるためには、まず自分自身と互いを知ること、違いを認めることが重要ですが、このプログラムがそのために有効であるならば、この実践を他校にも広く展開されてはいかがかと思います。お考えをうかがいます。

 最後に、いじめだけでなく子どもの権利が侵害されたときの擁護のしくみとして、オンブズマンに関しておたずねします。

 兵庫県川西市や川崎市では、子どもの権利を救済するしくみとして子どものためのオンブズマン制度をもっています。国連子どもの権利条約に照らして子どもの人権を尊重する立場から、問題解決のための活動を行う担当者をオンブズパーソンと呼んで行政に位置づけています。

 川西市の場合は1998年「子どもの人権オンブズパーソン条例」を定め、オンブズパーソンを「子どもの利益の擁護者・代弁者」「公的良心の喚起者」と規定しています。職務としては「子どもの人権侵害の救済に関すること」「子どもの人権の擁護と人権侵害の防止に関すること」「それらのために必要な制度の改善などを市長などに提言すること」の3点を挙げ、調査権や指導権が与えられているばかりか、市の機関、たとえば教育委員会に対してさえ、制度の改善を申し入れすることもできます。つまり、公的第三者機関として大きな権限が保障されているのです。現在は心理や教育の専門家、弁護士など3人が市長の任命を受けて活動しています。

 子どもの権利擁護のための第三者機関は、国連子どもの権利委員会から日本政府に対し設置を勧告されています。にもかかわらず、日本ではまだ広がっていない現状ですが、ヨーロッパ各国では一般的な制度です。杉並区でもオンブズマン設置を検討すべきではないのでしょうか。見解をおうかがいして、私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問 2012.6.8 市橋綾子

私は生活者ネット・みどりの未来の一員として、杉並区まちづくり基本方針について、


進行管理と進捗評価 2改定に向けた市民参加 3まちづくり活動支援のあり方、以上3つの視点から質問します。 


 


1992年の都市計画法の改正により、市区町村が都市計画基本方針、つまり「都市計画マスタープラン」を策定する権利と義務を持つことになりました。策定に当たっては、市民参加でつくること、地域別計画を策定することが定められ、1997年、当区でも初めて市民参加で都市計画マスタープランがつくられました。区が作成した素案を「たたき台」とし、これをもとに説明会やポスターセッションが開催されました。ポスターセッションでは、パネルに貼った素案を来場した区民に職員が説明を行い、区民の意見を聞きとり、またシンポジウムを開催して、ここでも来場者から意見を聴取しました。それらの意見を整理・検討して修正案が作成され、さらにはこの修正案に対しても意見提出を募るなど、丁寧な市民の声の聞き取りが行われました。


 


この取り組みは、当時都市マスへの市民参加のあり方を探っていた他自治体職員や市民に先行事例として、あちこちで紹介されていたことを、私自身もまちづくりの仲間とともに都市マスへの市民提案活動をしていたのでよく覚えています。現在はどうでしょうか。当区より後に策定した自治体の都市マスには、市民参加の手法や市民参加で点検・評価を行う見直しのルールなどが規定されるなど、当区よりも一段と進んだ市民参加のしくみが盛り込まれています。このようにして策定した都市計画マスタープラン「杉並区まちづくり基本方針、以下基本方針と申しあげますが、基本方針が5年後の2002年、基本構想「21世紀ビジョン」に整合させるために見直しが行われて現在の基本方針ができ、そして10年が経過したいま、「基本方針」改定の時を迎えています。まず、確認のために2点基本的なことをうかがいます。


まちづくり基本方針(都市計画マスタープラン)とは自治体の行政計画においてどのような位置付けにあるものでしょうか、伺います。また、今回改定する理由と方向性についてもうかがっておきます。


私は、今回の改定は「震度7をどう生き残るか」を最大のキーワードとし、その解決のために集中投資をする覚悟を基本方針でどう表すのか、ということが最も重要と考えます。ここに注目していきたいと思います。


 


それでは1つ目の視点、「基本方針の進行管理と進捗評価について」うかがいます。


基本方針が描くまちの将来像を実現するには、進行管理と進捗度の評価が重要であることが、都市計画の研究者たちから指摘されています。しかし、基本方針は事業を具体化する実施計画と連動していないため進捗状況が点検・評価しにくいということも言われています。そこでうかがいます。当区において、基本方針の進行管理はどのように行っているのでしょうか、お答えください。また、評価のしくみについてもうかがいます。都内では練馬区が住民参加、情報公開、協働の状況、地域別まちづくりの進捗状況などを評価し、結果を公表しています。国立市は5年ごとに都市マスの評価と見直しを「都市マス評価等市民会議」を設置して行うなど、評価のしくみを持っています。当区としても区民にわかりやすい進捗度を評価するしくみをつくるべきと考えますがいかがかでしょうか。併せておたずねします。


 


  2つ目の視点、「基本方針の改定に向けた市民参加」について2点うかがいます。


 515日の杉並区都市計画審議会で、基本方針改定に向けて、「まちづくり基本方針検討委員会」が設置されたこと、改定に向けたスケジュール、今年2月に行った「まちづくり区民アンケート」の調査結果などが報告されました。


そこで1点目として、改定スケジュールについてうかがいます。9月に骨子案を公表し区民意見交換会を7地域で実施、11月に素案の公表とパブコメの募集、来年1月都計審への諮問、2月に都計審の答申、区議会への報告を経て、3月、新基本方針の決定となっていますが、そんなに急ぐ必要があるのだろうか、と思います。先の3月に策定された新基本構想では「参加と協働による地域社会づくり」が掲げられ、基本方針には「住民主体のまちづくり」が謳われています。また、まちづくり条例の基本理念には、「区、区民、事業者は、まちづくりに関する必要な情報を共有し、対話を進め、区民の意思が尊重されるまちづくりに取り組むものとする」と書かれています。


 


ところがこのスケジュールを見る限り、見直しの主体は行政で、区民はお客さま、という姿しか見えてきません。法改正で、都市マスに「住民参加」が入った意味は、そのまちに暮らす住民が主体的にまちづくりに取り組み、責任も持つ、ということと理解しています。これは改定に対しても同じではないでしょうか。住民が参加して、何ができて何ができなかったか、を点検評価して情報を共有化し、区とともにまちづくりの方針をつくっていくことが大事だと考えます。


 


2002年から10年間の進捗度を区民とともに点検し、重点的に見直す箇所を骨子案の公表時に発表して区民の方たちと意見交換を行ったり、たとえば7つの地域で住民の方たちが地域別方針の策定作業に参加するには日にちが足りません。来年3月にこだわらず、まちづくり条例の理念に沿って、ともに情報を共有し、対話を重ねたうえで改定すべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解をうかがいます。


 


 2点目、「まちづくり区民アンケート」についてうかがいます。


今回の改定にあたり、当区では今年2月、「区民意見を反映するために講ずる措置」の1つとして、無作為抽出した18歳以上の区民5,600人にまちづくり区民アンケート調査が行われました。


今回、アンケートの対象者を18歳以上とされました。私どもは「子どもも区民」、聞き取り方の工夫によって子どももしっかり自分の意見を述べることができると考えています。まちづくりは大人だけのものではありません。小学校、中学校、高等学校の子どもたちが都市マスに意見を出す機会をつくれないでしょうか。たとえば、どんな遊び場が欲しいのか、コワイと思う道はどこか、困っていること・不便に思うことは何か、などを学校や児童館、ゆう杉並、学童クラブ、地域のスポーツクラブなどで聞き取ることはできないのでしょうか。基本方針のなかにも「子どもの頃からまちづくりに親しめるよう、小・中学生を対象にしたプログラムの実施、地域学習の機会を設けていく」と書かれています。


 


そこで伺います。子どもたちのまちづくりへの参加の意識を高めるために、これまでどのような取り組みがされているのでしょうか。また、その取組みの結果、どのような効果があったのでしょうか。お答えください。教育は結果がすぐに出るものではありません。大事なのは「まちづくり」に触れた経験を、今後どう伸ばしていくのかだと思います。今後どう取り組んでいかれるのかうかがいます。


 


今回は、前回の見直しの時に行われた区報や区のホームページでの意見募集は行われませんでした。住民の意見聴取の機会が減っています。今後、進めていく段階でできるだけ区民と話し合う場、意見交換をする場を意識的につくっていただくよう要望します。


 


3つ目の視点、「区民が主体的に行うまちづくり活動への支援のあり方」について5点うかがいます。


冒頭でも述べましたように、1992年の都市計画法改正によりまちづくり基本方針に市民参加が謳われ、これを契機に市民によるまちづくり活動が全国的に活発になりました。当区においても1995年に杉並区まちづくり公社の事業として「街づくり助成制度」がスタートしましたが、2000年公社が廃止されたことにより杉並区まちづくり推進課に引き継がれ、今日に至っています。


そこで1点目の質問です。区が市民のまちづくり活動を支援する目的は、自治基本条例でも謳っているように、自分たちのまちは自分たちの手でつくる、地域の問題は地域で話し合って解決する、という、地域自治の醸成と仲間づくり、コミュニティづくりの応援であると理解していますが、区の認識はいかがかでしょうか、お答えください。


 


2点目です。この助成制度は2009年からハード面の活動団体への助成に絞られました。その結果、まちづくり公社時代の1999年には23の団体から応募があったのが、昨年度は7団体でした。以前のぎょうにんべんの「街」という字を使った「街づくり支援要綱」の時は、勉強会やまちづくりイベント、AEDの操作方法の研修など仲間づくり、たすけあいの活動も助成対象でしたが、現在のひらがなの「まちづくり助成要綱」に変わった2009年から道づくり、建物調査、川づくりなどハード面「市街地形成のための活動」になっています。「市街地」とはどういうものを指すのでしょうか。私は「人が住む良好な生活の場」であると考えます。「人が住む良好な生活の場」を地域住民が手を出し口も出し、そして支え合い、助け合って地域のなかにつくることが「まちづくり」ではないでしょうか。


 


阪神淡路大震災以降、ハード面だけでは人の暮らしは成り立たない、支え合いや助け合いがまちには必要、と言われてきたにもかかわらず、ハード面の活動に限定するのは違うと思います。基本方針にも、「区民が主体的に行うまちづくり活動を応援する」と書かれています。助成対象は広くあるべきで、ハード面に関する活動だけに限定すべきではないと考えます。対象を広げる検討をすべきと考えますがいかがかでしょうか、うかがいます。


 


3点目です。現在、まちづくり活動助成の応募資格に、びぎなーコース、すてっぷコースの2コースがあり、それぞれ助成金額の上限が3万円、7万円と差がつけられています。しかし、コースによって活動内容に違いがあるわけではありません。充実した活動ができるよう、コース別を廃止し、これまでと同様に上限をたとえば10万円とし、審査の場で活動内容を審査することによって助成金額が決まる方法にすべきと考えますがいかがでしょうかお答えください。


 


 4点目です。まちづくり公社時代から数えてまちづくり活動助成事業は今年で17年目を迎えています。私はこの事業が誕生した時から、ある時は助成を受ける側になり、またある時は活動報告を聞く側になり、とこれまでこの事業を見守ってきました。その立場から見て、これまで区は区民の「活動」に対して支援してこられましたが、「人づくり」に対してはまだこれからという状況だと思います。横浜市のまちづくり事業、「ヨコハマ市民まち普請事業」が参考になるかと思います。


 


身近なまちの整備に関する提案を募集し、公開コンテストで選考された提案に対し最高500万円までの整備助成金が任意団体でも交付されるものです。選考されると専門家が派遣され、アドバイスを受けながら自分たちで業者選び、その地域にあった必要な整備事業の契約、発注の一切を行います。たとえば、民家の塀によって見通しが悪く、事故が多発する交差点を、塀の持ち主と交渉しながら理解を得て、大きく斜めに隅切りをしてポケットパークに変えると言う工事が「ヨコハマ市民まち普請事業」の制度を使って行われています。


 


今年当区は区政80周年を迎えます。これからのまちづくりを展望したとき、身近なまちの整備を区とともに担える人材育成が欠かせません。これからのまちづくり活動助成のあり方として、そのような視点から、住民自治が進むような人づくりに向けた取り組みが重要であると考えますが、区の見解はいかがかでしょうか。うかがいます。


 


5点目、最後の質問です。基本方針のなかに、住民参加によるまちづくりの進め方の例示が書かれています。「住民と行政がともにつくる杉並のまちづくりには、広範囲な住民との合意形成を行うことが必要」とありますが、これは住民同士も同じことです。そのための合意形成力を身につけることが必要です。横浜市には「合意形成ガイドライン」がつくられています。これは地域で何かを決める、何かを行おうとするときに、多様な意見を適切に調整しながら地域全体の意向としてまとめるためのマニュアルです。これまで横浜市のまちづくりの現場で起きた事例が数多く紹介されています。


現在22の協議会ができているようですが、特に地区計画策定の時や反対運動が起きた場合にこのガイドラインが使われ、現場での議論に役立っているとのことでした。当区でも、まちづくり現場での成功した例、失敗した例が数多くあると思います。失敗例を含めてそれらは区と区民の宝です。今回の改定を機に、当区としても事例を生かしつつ合意形成のためのガイドラインの作成を求めるものですが、区の見解をうかがいます。


 


最後に。私もまちづくり活動を行うなかで経験したのですが、まちづくり活動の相談や、助成金の申請は、普通の市民にとってハードルが高いものです。まちづくり推進課はカウンターテーブルも低くして椅子も用意して区民の来庁に備えていますが、気軽に相談してみよう、申請してみようとならないのはなぜでしょう。一般市民の言葉と役所の言葉を通訳してくれるところがあるとだいぶ違うと思います。そこで「まちづくりコンシェルジュ」あるいは「まちづくりセンター」の設置を提案いたします。相談・助言・支援・情報提供などを各専門別の組織が対応するのではなくまとまった拠点で対応するものです。まちづくり条例の中にも、まちづくりに関する知識の普及、情報の提供、都市像の共有などの必要性が規定されていますが、具体的な規定はありません。検討をお願いいたしまして私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問  2012.6.8 そね文子

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、子宮頸がん予防ワクチンの接種の課題と今後のあり方について、質問します。



 今回この問題を採りあげることにしたきっかけは、中学1年の娘を持つ友人達が、子宮頸がんの予防接種について、受けさせるべきかどうか悩んでいたことです。子宮頸がんについて、また予防接種について、調べていくにつれさまざまな課題のあることがわかり、その解決策として、今後のあり方について考えたいと思います。



 最初に、子宮頸がんという病気について触れておきます。


いま日本における死亡原因の第1位はガンで、3人に1人はガンで亡くなる時代です。2009年度にガンで亡くなった人の数は344千人、このうち子宮頸がんは2500人で、全体の0.7%ほどですが、女性だけに限ってみれば、ガンで亡くなった137,753人の中では1.8%をしめています。最近の傾向では20代から40代前半の罹患率が上昇しており、その年代のガンの死亡率のトップとなっています。



 長いこと子宮頸がんは、子宮体がんとまとめて子宮がんという言葉が使われ、この2つを分けて考えることはされてきませんでした。子宮頸がんという言葉が聞かれるようになったのは2010年春以降のことです。子宮頸がんはウィルスが原因で発症するがんで、予防接種で防げるがんとして子宮体がんとは分けて考える必要が出てきたのです。日本でその予防ワクチンの製造販売が承認されたのが2009年秋のことでした。



 子宮頸がんは子宮頸部にウィルスが長期感染して起こるとされています。このウィルスはヒトパピローマウィルス(HPVとします)というごくありふれたウィルスで200種類ぐらいが確認されていますが、がんの原因となるのはその中の15種類ほどとされています。このウィルスは性交渉によって感染し、性体験のある女性の80%が感染したことがあるといわれますが、そのほとんどがなんの自覚症状も無いまま、がんに進行することなく自身の免疫によって自然に治っています。HPVに感染した人の中でも子宮頸がんになる人は0.1から0.15%しかいません。ウィルス感染してからがんの前段階である前がん病変になるまで数年、その後子宮頸がんになるまでには十数年の時間がかかります。



 子宮頸がんワクチンは、15種類のウィルスの中でもとくにがんになる確率が高い16型と18型の感染を防ぐとされるワクチンです。


これまでのワクチンは、病原となるウィルスの力を弱めたものを体内にいれることで弱い感染を起こし、体の中にその免疫を持たせるものでした。これに対して子宮頸がんワクチンは、遺伝子組み換え技術をつかってウィルスの抜け殻を作り、それを子宮頸部に付着させておくことによって、ウィルスの感染を防ぐ、まったく新しいタイプのワクチンです。



 2010年の春には女優の仁科明子さんはじめ著名な芸能人や医療従事者が中心となって子宮頸がんワクチンの公費助成を呼びかけるキャンペーンが始まり、同じ年の10月にはワクチンの助成に国の予算が付くことが決まりました。さらに先日、523日には、厚労省が子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌に対し2013年度から定期接種にする方針を固めた、との報道がありました。これまで2012年度までの時限措置として公的助成が決まっていたのを、2013年度からは継続的に国が補助して行くということです。わずか2年ほどの間に、子宮頸がんワクチンを巡って大きな動きがつくられてきたことになります。



 前置きが長くなりましたが、そこで質問いたします。


 どんな予防接種も、予防接種法という法律にもとづいて実施されています。質問の1点目です。この予防接種法とはどういう法律で、今回の法改正で子宮頸がんはどのように位置づけられたのでしょうか。また、今回の国の法改正は区の政策にどのように影響するのかお示しください。



 杉並区が独自の事業としていち早く子宮頸がんワクチン接種を決めたのは、国の助成が始まる前のことです。20107月からのスタートとして予算計上しましたが、当時の導入の理由と経緯はなんだったのか、質問の2点目としてうかがいます。


 さらに、子宮頸がん予防ワクチンにかかる今年度の区の予算はいくらか。3点目としてうかがっておきます。


 ワクチンの歴史を見てみると、種痘の発明で天然痘を根絶したような輝かしい成果もあれば、ワクチン接種には副作用がつきものでもありました。病気の予防のために健康な子どもに対して行った注射が原因で、重い病気にかかってしまう例が常にあったのです。最近、日本で起きた例としては、はしか、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチンMMRの接種が1989年から始まりましたが、接種後の発熱、頭痛、嘔吐などの多発が問題になり93年には中止されたことがあげられます。子宮頸がんについてもさまざまな副作用の報告がされ、とくに失神が重い症状として報告されています。


 そこで伺います。


子宮頸がんワクチン接種の副作用について、区はどのようにお考えか、見解をうかがいます。区で予防接種が始まってから、副作用の報告はあったのでしょうか。もしあったとすればそれはどんな副作用だったのでしょうか。併せてうかがいます。


 冒頭で述べた、私の友人が心配していたのも、突然出てきた新しい薬が本当にがんに効くのか、副作用はないのかということでした。


実際、日本消費者連盟の消費者レポートでは子宮頸がんワクチンには効果を増強するための免疫増強剤が添加されていて、この免疫増強剤に新しい成分が使われており、それによる副作用については、まったくわかっていないところを問題視する声が掲載されています。


このように、子宮頸がんワクチンについても、その効果や副反応に関して必ずしも肯定的な意見だけでないことを知っておくべきだと思います。



 WHO、世界保健機関は20094月にHPVワクチンに対する考え方を発表しました。



その中の一文を紹介します。

HPVワクチンは、子宮頸がんと他のHPV関連疾患を予防する全体戦略の中の一環として導入されなければならない。この戦略には、どうすればHPV感染を減らせるかについての教育や前がん病変やがんの診断と治療についての情報提供が含まれる。またHPVワクチンの導入が効果的な検診システムへの予算投入を変更したり、むしばんだりしてはならない。


HPVワクチンプログラムが導入されたらどこの何歳の誰が受けたかを記録し長期に渡って保存すべきだ。新しいワクチンを導入するときは安全性モニターをしなければならない。子宮頸がんに対するワクチンの効果を計るには何十年もかかるだろう。


 引用はここまでです。このようにWHOは子宮頸がん予防には検診、ワクチンの導入、どうすれば感染を減らせるかについての教育、新しいワクチンのモニタリングというトータルな戦略が必要だと述べています。このワクチンは接種されるようになってからまだ10年ほどしか時間がたっておらず、少なくともあと10年たたないと、本当に予防接種の効果があったかどうかは証明されないということです。


 そこで質問します。


区では、ワクチン接種対象者には子宮頸がんのこと、またワクチンについてどういう説明がされているのでしょうか。おうかがいします。



 WHOが示したように、予防接種を受ける当人が、子宮頸がんはどういう病気で、ワクチンはどういう効果が期待されるのか理解して受けるべきと考えます。子宮頸がんは性交渉によって感染しますから、それには性教育をきちんと受け、性感染症について知ることが不可欠です。杉並区で助成している接種の対象は現在中学校1年から高校2年生までとされ、学校で性教育が行われるのが中学3年時ということを考えると家庭での話し合いを助ける取り組みが必要だと考えます。


しかし、日本には性のことをタブーにしてきた文化があり、親子で性の話ができるという家族は多くありません。

友人達が3歳から小学1年生までの子どもとお母さんを対象に“親子で聴く性教育”楽しく知る心とからだ、という企画をしたことがありました。講師として招かれた助産師さんは子ども達にわかりやすく、体の大切な部分をきれいにしておくこと、赤ちゃんがどうやって生まれてくるか、人形を使ってわかりやすく教え、参加したお母さんは出産を思い返し幸せな気持ちになったそうです。性教育は何歳からでもその年齢にあったやり方でできるのだと知りました。


区は、親子が性のことを話せるきっかけになる、また性教育とはどんなものなのか親が知るための勉強会や講演会を開催したり、そのようなことに取り組む活動団体を応援していただけるよう要望するもので

 

さて、先ほど述べたように、子宮頸がんのワクチンはがんを起こす割合の高い16型と18型に対応したものですが、この2つの型が原因でがんになる割合は日本では65%と言われ、残る35%の、16型と18型以外についてはがんの予防効果はありません。ということは、予防接種を受けても検診を受けることが不可欠なのです。



 子宮頸がんは非常に進行が遅くウィルスに感染してからガンに進行するのに十数年がかかりますから、定期的に検診を受けることにより早期発見され、完治する確立が非常に高く、その後出産もできるそうです。



 このように、子宮頸がんによる死亡リスクを減らすために1番重要なことは、検診の受診率を上げることだと考えます。


国における現在の受診率は2割といわれます。年代別に見ると、20代が3%、30代が10%となっていて、発症率が高い世代の受診率はさらに低いことがわかります。


ここで質問です。杉並区での受診者の年齢別内訳はどうなっているでしょうか、うかがいます。



 いま求められているのは若い世帯の受診率の向上ですが、区ではそのために妊産婦検診の時期に子宮頸がん検診を同時実施するなど様々な努力をされていることを評価しています。


日本のワクチン接種の対象年齢については、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議が2008年に設立され、予防接種は性体験を持つ前にするのが最も効果的であるという理由で、11歳から14歳ぐらいまでの間に受けさせようと提言しています。しかし11歳はまだ性教育を受けていない年齢です。フランスで14歳から15歳に接種時期を設定しているのは、本人がワクチンを必要と理解できるような年齢になるまで待つという考え方です。日本の、子どもが理解するというよりは、お母さんに理解してもらって進めたらいいとする考え方とは大きな違いです。



 自分で考えるより、親の意思で決めてしまうようなやり方には、性の問題がきわめて個人的なことであるだけに、違和感をおぼえます。


 大人は子どもに対するとき、第一に個人として尊重すべきであり、正しく情報を知らせ、自分の体のことを自分で考え、自分で決めることができるように援助することが重要と考えます。自分の体に入れるものに対して、また病気を予防するために、人任せにせず自分で考える姿勢をもつことが将来自分を守ることにつながるのだと思います。HPVの感染に対しては自身の免疫力を強化しておくことも重要です。そして免疫力をあげることはすべての病気に対して予防効果があり、そのためにはバランスのとれた食事や生活習慣を身に付けることであり、予防接種や健診よりも優先される方法なのです。


 最後にひとつ、子宮頸がんワクチンの課題として、女性の負担がおおきいということを指摘したいと思います。HPVは男女間で感染します。このウィルスを根絶するためには男女両方に打たなければならないのです。今女性だけに接種しているのは男女両方に打つより費用が安く済むという理由です。このワクチンの開発者のハラルド・ツアハウゼン博士は20115月に来日し、参議院議員会館で講演した際に「若い男性は女性より性的に活発なのだから、男性に接種したほうが予防効果が高いかもしれない」と話したそうです。子宮頸がんを防ぐ効果があるかどうか見るためには女性にワクチンを接種する必要がありますが、効果を示すデータが集った後は女性に限る必要はないのです。今、女性は新しい薬の実験台になっているという見方もできます。ワクチン助成だけで終らせるのではなく、男女がお互いを尊重するための性教育、さらなる受診率の向上、免疫力を上げるためのバランスのよい食事や規則正しくストレスの少ない生活習慣の啓発など、知恵を出し合い取り組んで行くことをお願いして私の質問を終ります。

予算特別委員会意見開陳  2012.3.21市橋 綾子

予算特別委員会の最終日にあたり、生活者ネット・みどりの未来の意見を申し述べます。 

今回の予算特別委員会では、2012年度各予算案の他に18本の議案が同時に付託されました。限られた時間内で十分に質疑ができなかったことは残念ですが、以下、時間の制約により述べられなかったことを中心に意見を申し上げます。

 

歴史的な大災害が起きてから一年が経ちました。

この間、国の政治はますます混乱し、「命を大事にする」方向へ向かっているとは言えません。地球規模の放射能汚染を引き起こし、未だ収束を見ない東京電力福島第一原発事故は、真相究明も途上であるにも関わらず、国は既存原発の再稼働を目論み、原発技術を海外に輸出しようとしています。いま、政治が向かうべきは人の命や暮らしを第一に考え、被災地の一刻も早い復興と、持続可能なエネルギー政策への転換を実現することだと考えます。

 

経済不況は世界を席捲し、日本は、「目の前に立ちはだかる災害からの復興」という巨大な壁を前に、先行き不透明のままです。

 

当区の財政状況を見ますと基金残高が年々減少してきており、来年度予算案ではその傾向がさらに顕著になっています。財政の健全化と持続可能な財政経営の確保が謳われ、余剰金の積立、繰り上げ償還による公債費の軽減など、5つのルールが示されていますが、これらのルールが厳格に遵守されるよう
議会として監視を強めていきたいと思います。

 

今予算案が従来と大きく異なるのは防災関連費の増大といえます。昨年の大震災を経験した後であってみれば当然のことで、基本構想1番目の目標、「災害に強く安全・安心に暮らせるまち」は、311後のおおぜいの区民の思いが反映されたものと受け止めています。

 

日本の貧困層が拡大するなか、杉並区においても生活保護費がついに150億円を超え、子どもをとりまく貧困問題が確実に進行しています。小学生の5人に1人、中学生の3人に1人が就学援助を受けているという実態にあって、今回減税基金を廃止し(仮称)次世代育成基金を創設するとのこと、これを子どもの貧困に目を据えた施策として、また寄付文化を促すものとして育てていくべきと思います。

 

ところで、委員会では、深刻化する保育園の待機児問題について多くの質疑が交わされ、その原因として、「景気の低迷」が言われておりました。これを否定するものではありませんが、もうひとつの側面、女性の社会参加が浸透してきた事実をしっかり
とらえるべきであることを申し上げておきます。女性が働くことなしに現代社会はもはや成り立たないのであり、景気の動向に関わりなく、「子どもを地域が育てる・社会が育てる」ためのシステムを構築する必要があります。

 

子どもに関連して申しますと、基本構想の策定過程や新しい学校づくりにおける「子どもの視点」「子どもの参加」について意見を述べました。子どもは「育成される」「保護される」だけの受動的な存在ではありません。まちづくりや災害対策においても、女性の参加と同様に「子どもの参加」を取り入れるよう要望します。

 

今回、障害者自立支援法と児童福祉法の改正に基づき、こども発達センター条例の改正が議案とされ質疑を行いました。こども発達センターの果たす役割の意義と利用希望者が待機中であることを併せ見るとき、施設拡大は大きな課題です。(仮称)施設再編整備計画の策定を考えておられるとのこと、この点を優先的に検討くださるようお願いいたします。

 

杉並区が、子どもの発達障がいに対して、「切れ目のない支援」を心がけ施策化されてきたことには、敬意を表するものです。しかし、その支援が義務教育期間を過ぎると途絶えてしまうことの問題を、再度指摘しておかなければなりません。「発達障がいの相談体制の充実」は区長の公約のひとつです。支援の一日も早い本格的な取り組みに向けて、関係者を交え
具体化のための検討に着手してくださるよう要望します。

 

発達障がいのある若者が
ひきこもり状態になって長期化しがちな問題は、現代社会が抱える苦悩のひとつです。区が答弁されたように、障がい者施策としてだけでなく児童青少年施策、社会教育、就労支援などの所管がともに知恵を出し合わなければならない問題です。それだけにその前提として、まず実態を調査し問題を把握することが必要と考え、指摘いたしました。ただ、すでに先行して着手されている社会適応支援事業は、2年前からの試行ですが確実に成果をあげており、ニーズはもはや試行としての限界を超えています。本格実施として充実した展開を求めます。

 

新設が予定されている若者就労支援センターに関しても、同様の趣旨から、ひきこもり対策としての視点をもつことが重要であることを付け加えておきます。

 

区長の公約にはまた、「在宅介護に携わる区民に対する支援の充実」とあります。当区が、これまで取り組んでこられた家族介護支援や、昨年設置された医療相談窓口など、高齢者の在宅でのくらしをサポートしようとする在宅療養支援施策に力を入れておられることに注目しています。施設整備の需要がなくなることはありませんが、国の動きを見ても「施設から在宅へ」と大きく舵を切ったことは確かです。

 

100年前までの日本では、ほとんどの人が家で死を迎えていました。それが、現在では80%が病院死となっています。しかし、これからは「家で死ぬ」ことが当たり前の社会が再びやってきます。家で死を迎えることを、普通の出来事として肯定的にくらしに採り入れるには、家族が「家で看取る」ことの心構え、つまり「看取る」ための学びが必要です。学校に限らず、地域のゆうゆう館、ケア24、町会・自治会などが行う講座や、図書館でのキャンペーンなど、社会教育として多様な形で「看取り」を学ぶ機会が求められます。区として意識的に企画提案をしかけていただきたいと思います。

 

さて、今年は区政執行80周年にあたります。80年間で人口が4倍近くにまで増え、外国人1万人を含むおよそ54万人の老若男女がくらす住宅都市として、杉並区の価値を高めてこられた先人の努力に敬意を表しつつ、これからの区政運営を考えるとき、その中心に位置するのは強力なリーダーではなく、ふつうの区民です。

 

基本構想を実現するために「参加と協働による地域社会づくり」を推進していくとの方針が出されました。「(仮称)基本構想を実現するための区民意見懇談会」を設置されるとのことです。これまで「参加と協働」について、多くの提案を申し上げてきた私どもとしてはこれを歓迎するところです。しかし、市民参加を促進するには、参加の機会を増やすこと、十分な情報公開と参加のための支援、が必要です。

 

市民参加といえば審議会委員などに公募市民の枠を設けることが一般的ですが、市民が学識経験者や専門家、場合によっては議員もメンバーである会議のなかで発言するのが難しいことは、当区の公募委員を入れた会議を見れば一目瞭然です。

 

16年前、当時としては珍しかった「市民参加」で「緑の基本計画」を策定した鎌倉市に伺いました。鎌倉市では、公募委員が会議で発言しやすくするために、事前に資料を市民委員に配布し、正式な会議の前に1度レクチャーを行っていました。つまり、通常の会議に要する時間の倍の時間をかけていました。

 

説明して下さった担当課の方に、「手間がかかるのではないか」と伺うと、「市民の皆さんがご自分の考えを会議の場でしっかり発言できるようにサポートするのが私たち職員の仕事です」とこともなげにおっしゃっていました。市民参加には時間と労力が必要です。「(仮称)基本構想を実現するための区民意見懇談会」の運営を充実したものとし、今後改定される「まちづくり基本方針」や、新たに策定される「地域エネルギービジョン」「バリアフリー基本構想」など、これからの行政計画づくりには市民参加が当たり前、という実績を積み上げていただくことを期待します。

 

以下、いくつかの議案に関して若干述べます。

 

議案11号 減税基金条例を廃止する条例については、当然のことと賛同するものです。そもそも2年前に制定したこと自体がまちがっていたのです。質疑の中で、条例案を策定した行政側を「見通しが甘かった」「見識がなかった」等、追及する場面がありましたが、議決したのは議会であり、議会こそが反省すべきであることを申し上げておきます

 

第13号 杉並区附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例は、非常勤職員の報酬は、本来日額制であるべきと考えるものですが、職務の特徴に照らして考えると月額制を排除できないケースであり、かつ報酬の減額に一定の理解を示す観点から、賛成とします。

 

議案17号 文化・芸術振興審議会条例については、質疑のなかで、区が保有する美術品の保存や展示のあり方について課題が見えました。今後この審議会で検討されることを期待し、審議会設置に賛成します。

 

議案19号および38号 中小企業勤労者福祉事業に関する条例については、財団法人勤労者福祉協会が解散したのちの受け皿として一時的に区が引き受け、特別会計を新設することはやむを得ないものと考えます。しかし、本来の目的に照らしてその妥当性は理解するものの、公益性という観点から近いうちに見直しが必要であることも指摘しておきます。

 

議案24号 介護保険条例の一部を改正する条例についてです。今後の高齢者の増加にともない、要介護・要支援認定の申請者が増加するのは明らかであり、認定審査委員数の増員は必要なことと考えます。また介護保険料を14段階に分け、所得に応じた負担額としたことを評価します。

 

議案25号 子供園条例の一部を改正する条例について。区立幼稚園6園のうち先行してスタートした子供園4園の時は、準備期間が短い、説明が不十分など、たくさんの当事者のご意見が当時議会にも寄せられました。いま、幼稚園教諭と保育士さんの努力と区の頑張りで短時間保育、長時間保育の両立が一所懸命歩きだしています。先行園をモデルに、残り2園も保護者の声に耳を傾けながら進め、繰り返しになりますがかねてより求めている給食の実現について、あくまでも追求していただきたいと思います。

 

以上、10年後の杉並区の目指すべき将来像を描いた基本構想を具体化するための初年度予算であることを念頭に置き、委員会での質疑を通し、また、資料をもとに調査・検討した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および本委員会に付託されたすべての条例案について、小松久子、そね文子、市橋綾子は賛成すべきと判断いたします。

 

むすび。

当区と災害援助協定を結ぶ被災地、南相馬市の復興、被災者の生活再編はこれからが正念場であり、長期にわたることを覚悟しなければなりません。放射能汚染による被害は多角化、広域化しており、被害者の救済・支援体制の構築は急務です。特に子どもたちを放射能汚染から守るための体制づくりは一刻の猶予も許されない政治課題です。

 

私どもは引き続き、原発依存のエネルギー政策から脱却し地球温暖化問題を解決するための活動に取り組むとともに、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーの普及と拡大、地産地消をすすめ、行財政運営においても環境面からも持続可能な社会を目指していくことを申し上げ、意見とします。