「生活者ネット・みどりの未来」を代表して、「平成25年度予算の編成方針とその概要」について質問いたします。他会派からすでに質問のあったことがらもふくめて、重ねてのご答弁をお願いいたします。
昨年暮れの総選挙は、2年前の3月11日、過去最大規模の震災と津波、つづいて原発事故という大惨事に見舞われた日本が、この経験を糧に、改めてどのような国をめざしていくのかが問われるべき選挙でした。しかし戦後最低の投票率に終わり、前回の総選挙で大敗を喫した自民党が、それよりも少ない得票でありながら大勝を収めるという結果になりました。
原発ゼロに向かうはずだったこの国の方針は逆向きに動き始め、まるでオリンピックが世間の目を原発問題からそらせるための隠れみのとなるかのように、国を巻き込んだ招致ムードが展開されています。ですが、ムードや気運が原発問題を解決できるわけではもちろんありません。私たちは、原発を抱え続けることの問題や被災地・被災者の現実から決して目をそらしてはならない、と改めて思っています。
さて、選挙の結果により民主党から自民党への政権交代が行われました。最初の質問として、今回の選挙結果に対する区長の率直な感想をおうかがいします。
投票率についてもふれておきたいと思います。国全体としての衆議院議員選挙の投票率は59.3%、戦後最低であり、3年前のときと比べて10ポイント近く減らしています。ですが杉並区に限って見れば今回63.47%であり、前回の65.5%から約2ポイントの差に留まっています。この結果をどうごらんになるでしょうか。お考えをうかがいます。
安倍首相はさっそく前政権の政策を一新すべく動き出しています。新政権が示す財政政策について、日本の経済界の反応はおおむね好評であり、施策の成果が表れる以前からバブルの予感に酔っているように見えます。一方区長は「デフレや円高に改善の兆しが現れたようにも思われる」と述べたのち、「今後の見通しは不透明であり、予断を許さない状況が続く」としておられます。住宅都市・杉並区にとっての円安の影響は、輸出産業がほとんどなく輸入品の物価上昇が懸念されるため、プラス・マイナスは一概に言えないかと思いますが、区長はどのようにお考えでしょうか。また安倍政権の財政政策、いわゆる「アベノミクス」に対する区長の評価はいかがでしょうか。おたずねします。
安倍政権の地方分権改革について、区長は「現時点では不透明な部分もあり」としておられます。しかし、報道によれば、一括交付金が廃止され「ひも付き補助金」がまた復活するといいます。自治体の裁量に使途が任せられていた国の補助金政策が、使途限定型に逆戻りすることになりますが、地方分権の後退ではないでしょうか。区長はこれをどのように受け止めておられるか。また当区への影響はどのような形で現れるとお考えか、うかがいます。
当区の2013年度予算は、基本構想実現に向けた取り組みを軌道に乗せるための予算と位置付けられています。区が昨年5月、要綱を定めて設置した「行政経営懇談会」は、基本構想の実現に向けて議論し区に対して意見や助言を具申する有識者会議ですが、ここで「今後の財政運営のあり方」が検討課題のひとつとされ、区は基本的な考え方を示しておられます。今回の予算編成にあたり、ここでの議論はどのように生かされたのでしょうか、うかがいます。
今予算が基本構想実現に向けた取組みを軌道に乗せる予算であるなら、基本構想が実現のために掲げている「参加と協働による地域社会づくり」を進めるべき年であろうと思います。
昨年制定された「杉並区基本構想」では、最後の部分で「基本構想を実現するために」という項目を設け、構想実現のための推進のしくみについて論じていますが、ここで最初に提示されているのが「参加と協働の地域社会づくり」についての項です。行政経営懇談会での検討テーマのひとつは「協働のあり方」でした。ところがこのたびの「予算編成方針とその概要」では、まったく言及がないのを疑問に思います。区長の姿勢をおうかがいします。
行政経営懇談会からの意見・助言を受けて、区は8月、「新たな協働のあり方についての基本的な考え方」をまとめ、その具体的な施策等の検討を「杉並区NPO等活動推進協議会」が行い、12月 「新たな協働のあり方」の具体化に関する意見がまとめられました。
この中では、これまでのような区とNPO法人等の関係性を中心にした協働の考え方に加え、NPO法人同士、NPO法人と町会・自治会などの地縁団体相互が連携・協力し、自ら主体的に地域の課題を解決していく、参加と協働による地域社会づくりが新たに提唱されました。「杉並らしい協働の取り組み」として、地域の多様な活動主体が情報を共有し、それぞれの活動について交流を図るなどして、多様な主体がつながることを重視する、等がNPO等活動推進協議会の総意として述べられています。
このような考え方について、これまで地域における市民の自治を提唱してきたものとしては、賛意を表するものです。これを受けて今後、区はこれらについてどのように扱い、具体化を図っていくお考えでしょうか。うかがいます。
NPO等活動推進協議会の「意見」の中でも指摘されているように、「すぎなみNPO支援センター」の機能と役割は本来、より重要なはずです。その機能を果たせるような組織体制をつくること、また行政の側の機能強化とその推進体制づくり、行政が区民・団体・地域の連携をNPO支援センターと協働して図ること、すなわち連携づくり、職員の意識形成も含めた行政内部の調整、庁内推進体制の確立など、各機関が取り組むべき課題は少なくありません。
政権が替わって「新しい公共」という文言を目にすることも少なくなっているような気もしますが、安倍政権の「公助」切り捨ての姿勢からすれば、そして「自助」の限界を併せれば、「共助」の必要性は高まりこそすれ低くなるはずはありません。「新しい公共」を担保する「協働」の取組みはもはや社会のシステムに欠かせないものです。区の積極的な姿勢を求めるものです。
「地域社会づくり」についてうかがってきた流れから、まちづくりに関して区長が提案しておられる地域社会活性化の事業についてうかがいます。ハード・ソフト両面の施策を連動させる、とは具体的にどのような事業でしょうか。昨年来言われている「多心型まちづくり」の具体策かと思いますが、精力的に地域に入り、地域の方々と一緒に汗を流す総合的なまちづくり、という取り組みの概要をお示しください。
なみすけ商品券の休止、電子地域通貨の協議の中止は、妥当な判断と考えます。ただ、産業振興策として打ち出されている「商店街若手支援事業補助金の拡充」や「地域のまちづくりやイベントと連動した取組みを行う商店街への支援事業」などについては、財政出動の公平性からみて問題がないか、若干疑問も感じるところです。概要について説明を求めます。
商店街の空き店舗を活用する取り組みが、成功事例はあるものの、なかなか広がっていきません。ケースごとに異なる課題があるかとは思いますが、商店街の活性化を考える場合に空き店舗問題は避けて通れません。産業振興センターが中心となって、それこそ区と地域団体やNPOなどとの協働の取組みが必要ではないのでしょうか。見解をうかがいます。
いっぽう空き家問題については、今回新たな施策が打ち出されました。空き家問題は、基本構想審議会の中でも重要な課題としてしばしば議論になっていましたが、これまで具体的な取り組みが示されませんでした。今回、住宅マスタープラン改定にあたって実態調査を実施されるとのことです。空き家は今後、少子高齢社会を支える地域の資源として、さまざまな活用につなげられることが期待されます。その意味で、多様な視点からの調査としていただきたいと考えます。見解をうかがいます。
現行の住宅マスタープランは、平成20年から29年までを対象期間としておりますから、今回かなり前倒しの改定となります。その理由、いまの住宅政策で何が課題なのか、具体的にお示しください。またスケジュールについても確認しておきます。
さて、若者の就労支援事業として昨年暮れに開設された就労支援センターは、先の行政経営懇談会で議論された、現役世代への支援をどうするのか、という課題に対する解決策として迅速に実現化を図っていただいたものと理解しております。オープンしてまだ2か月ですが、利用状況はいかがでしょうか。確認させていただきます。
今後の展開として新たに福祉部門と連携し、ワンストップ機能をもたせ中間的就労の場の確保、さらには社会参加と自立支援に向けて取り組む、と打ち出しておられることは、まさにわが会派が提案してきたことであり、評価するものです。
しかし、女性の就労・就職支援の視点が見られないのを残念に思うところです。女性の貧困問題は、一般に採りあげられることが少ないだけに、より深刻です。男女雇用機会均等法ができて30年近くたちますが実質的な男女格差はなくなっておらず、シングルマザーやDV、ドメスティックバイオレンス被害者ともなれば、貧困から抜け出せなくなってしまう女性は少なくありません。このような状況を改善するための取組みが必要と考えます。今後の課題としていただくことを求めます。
都市農業とみどりについてうかがいます。農地の保全と活用に向けて「(仮称)農地活用懇談会」を設置され、みどりの保全については「(仮称)緑地保全計画」を策定されるといいます。これらは密接にかかわることであり、懇談会での議論が緑地全体の保全計画に反映されなければ意味がありませんから、連動して進めていかれるべきと思います。また国に法改正を求める必要があるものと考えます。これらの点について、どのようにお考えかうかがいます。(*14)
つづいて福祉の分野から、まず高齢者にかかわる課題について触れておきます。今回、認知症コーディネーターを新たに設置されるとのことです。厚労省がしきりと設置を呼びかけているしくみかと思いますが、当区としては具体的にどのような人材を何人、想定しておられるのでしょうか。各地域包括支援センターとの連携をどのように位置づけ、どこに配置してどのような役割を担うことになるのでしょうか。おうかがいします。
要介護高齢者の取組みとして、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、介護施設などの整備事業については、計画に沿って粛々と進めていただきたいと思いますが、これからニーズが増えていく在宅サービスを充実させていくことも忘れてはなりません。在宅での高齢生活を支えるサービスは今後ますます需要が増えていくと思われます。地域医療サービス、福祉のサービス、介護サービス、また介護者を支援する取組みなどが連携し、サービスとサービスのすき間からこぼれ落ちる人が出ないよう体制を構築し、区のしくみに位置付ける必要があります。見解をうかがいます。
障がい者の地域生活を支える機能の充実をねらって「(仮称)障害者地域相談支援センター」を区内に3か所、設置されるとのことです。これまでの相談支援とどこをどのように変え、機能アップが図られるのか、お示しください。
発達障がい児の急増への対応策が長く検討課題とされていましたが、このたび、民間事業所の誘致という形で児童発達支援事業所の開設を促すとのことです。こども発達センターの分園設置の検討もされたと思いますが、この方針に落ち着いた経緯について、説明を求めます。
子どもの貧困問題について、かねてより対策を求め、会派として今回一般質問にも採りあげておりますが、安倍政権のもとで生活保護切り下げが行われようとするなか、その影響が子どもに対して及ばないように努めることは喫緊の課題です。子どもには何の責任もない貧困によって、健康に育つ権利や学ぶ権利が奪われることは、何としても防がなければなりません。
今回、生活保護世帯の子どもに対する法外援護事業を再構築されるといいます。社会的な居場所づくり支援事業や子どもの社会参加の経費助成、中学3年生に対する塾の費用助成などが法外援護事業、すなわち福祉の施策として提示されていますが、この事業は、教育委員会との連携が欠かせません。教育委員会がイニシアチブをとって進めるほうがよい場合もあるかもしれませんし、福祉の観点から包括的な支援のニーズが見つかる場合もあるかと思います。区はどのような体制で臨むおつもりなのか、おうかがいします。
新規事業として中・高校生の新たな居場所づくりに向けた取組みも、保健福祉費から予算が計上されています。「ゆう杉」の愛称で親しまれている青少年児童センターの2号館というような位置付けでしょうか。いまこのような取り組みを始めようとするのはなぜなのか、目的と併せて、お聞かせください。
子どもに関連して、児童相談所をめぐる都区間の調整の進捗について確認したいと思います。都区制度改革の議論において、特別区へ移管する方向性が真っ先に出された児童相談所でしたが、その後の進捗が見られないのを歯がゆく思っています。児童相談所の区移管の議論はどこまで進んできたのか、おうかがいします。
昨年来のいじめ問題に加えて体罰が社会問題化しています。学校現場というところはなんと息苦しくストレスが存在していることか、と思わずにいられません。いじめについては昨年議会で採りあげ、さまざまなしくみやプログラムの導入を提案しました。今議会でも会派から質問と新たな提案を予定しています。対策の手法はひとつではない、ツールはたくさんあったほうがいい、ということです。そして、ここで強調したいのは、どんなツールでも人権に対する配慮や尊重が基本になっていなければ本質的な解決策にはならない、ということです。
昨日の、いじめをめぐる他会派の質問への答弁において、いじめの対策として、子どもが主体となって自らの解決力を育てる、という見解が教育長より示されたことには、心から賛同するものです。
先日、区主催で開かれた「水鳥の棲む水辺づくり」フォーラムに参加し、井荻小学校の子どもたちの環境活動の発表を見、聴く機会がありました。校舎の敷地内を流れる善福寺川について多くのことを学んだ子どもたちが、川をきれいにしようと清掃活動を始め、やがて川の周辺から善福寺公園までを活動領域に広げたこと、その活動の中から大人たちに対する提言を導き出し発信する、という一連の報告です。昨年秋の市民団体の主催による「善福寺川フォーラム」でも聴きましたし、80周年記念の作文コンクールで区長賞に輝いた作品もこの内容でしたから、いまや多くの区民の知るところとなった活動ですが、今回あらためて気がついたのは、「これこそESDだ」ということです。
ESD、すなわち「持続可能な社会づくりのための教育」の理念は、社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目的とし、人や社会を「教育」によって変えていくことをめざしています。自然と命のつながりを大切にし、地域に根差した文化や人びとと触れ合いながら、人と自然が共存共栄できるような多様な生き方を学んでいきます。
ESDは、狭い意味での環境教育というより、地球規模の人権教育ととらえることこそふさわしい、と思います。いじめ、不登校、学級崩壊、家庭問題など現代の子どもたちをとりまく問題の解決策としても有効活用されているといわれています。井荻小の子どもたちのような活動が、区内にはほかにもあるのだと思いますが、それをESDだと意識することで、評価の視点が生まれます。ESDを意識的に教育のテーマとして取り組んでみては、という昨年の私の一般質問でのご答弁では「『持続可能な社会を目指し、次代を共に支えていく力』を伸ばすよう、指導の在り方について研究を進めていく」とのことでした。この進捗状況について、人権教育としてのESDについての見解と併せて、おうかがいします。
学校における人権侵害の中でも体罰については、社会が半ば公然と容認してきた部分があります。とくに、結果を求められる競技スポーツの世界においては、ある程度の暴力・制裁はやむを得ない、とする考え方が当たり前に存在し、むしろ指導の一環として肯定すらされてきました。戦後すぐの1947年の教育基本法の下ですでに体罰は禁止されているにもかかわらず、ある種の文化、風土論に祭り上げるか、あるいは程度の問題として収めようとする論調が消えることはありませんでした。
私自身はただの1点も体罰を肯定する気持ちにはなれませんが、体罰と競技スポーツにおける「しごき」とを同一視することは問題の本質を見失うことになるように思います。いずれにしろ、社会がこの状況を乗り越えるのは容易ではなさそうです。体罰のない教育現場を社会全体で創りあげていくのだ、というほどの覚悟をもって、人びとが「体罰すなわち暴力であり人権侵害である」ということを深く受け止めて、「学び直す」というプロセスが必要なのではないでしょうか。お考えをうかがいます。
最後の質問は、住民投票制度についてです。
昨年は、東京都での原発の稼働の是非について都民みずからが投票で決着をつけたい、として「原発都民投票」の実施を都に求める直接請求運動が市民グループによって展開されました。直接請求は、自治法の規定に基づき、2か月以内に有効署名数すなわち都内の有権者の50分の1以上の署名を、生年月日と押印を併せて集めなければならない、というハードルの高い活動でしたが、規定を優に超える数の署名を集めることができました。杉並区では9,000筆あれば足りるところ19,322筆が集まり、選挙管理委員会のチェックを受けたのち有効と判定された17,724筆をふくめて東京全体で32万3,076人分の署名が、昨年5月、当時の石原都知事に向けて提出されました。しかし、都議会はこの条例案を反対多数で退け、東京都で初の住民投票は実現しませんでした。
この経験から、東京都に常設型かつ実施必至型の住民投票条例の設置を求める市民の運動が起きています。 「常設型」とは住民投票にかける案件の定義や実施要件、また情報提供の方法など、住民投票を行う場合に必要となる手続き項目などを、あらかじめ条例として制定しておくパターンのことです。そうすることで現在のように、住民投票を請求する度に、条例案を一から作成して添えねばならないという、市民にとって不慣れなハードルをなくすことができ、請求する住民は、テーマだけを提示すればよいことになります。市民に優しい条例体系だと言えます。
また「実施必至型」とは、規定の数の署名がそろったら議会の議決を経ずに必ず実施されるということです。なおこの場合の規定割合は、自治体によってばらつきがありますが、例えば我孫子市の場合は8分の1、つまり12.5%というように、地方自治法の2%よりはハードルが高くなっているのが通常です。
現在当区には、杉並区自治基本条例及び杉並区住民投票の請求に関する規則があるものの、これらの規定だけでは、住民がどんなに多くの署名を集めたとしても、住民投票の実施は保証されていません。ですから、直接民主主義を行使するためのしくみとして、また杉並区が成熟した一人前の自治体となるためにも必要だと考えます。いかがか、最後の質問として、区長のお考えをうかがいます。
以上、うかがってまいりましたが、さらに細目については予算特別委員会での議論とすることとし、生活者ネット・みどりの未来の代表質問を終わります。