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第2回定例会一般質問   2011.6.15 小松久子

 <新基本構想について><新しい公共支援事業について>

 

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、新基本構想について、新しい公共支援事業について、以上2点、質問いたします。

 

杉並区の10年後のビジョンを描く新基本構想策定に向けたスケジュールが進行中です。基本構想審議会では、現在3つの部会と、学識経験者による調整部会での議論が併行されているかと思います。基本構想は、杉並区における行政計画の最上位に位置するものですから、策定途上にあるいま、その進捗状況を確認したいと考え、以下、質問いたします。

 

生活者ネットワークは基本構想づくりに関して、かねてよりそのプロセスに思い切った市民参加を、と求め、具体的な提案もしてまいりました。そのひとつが、今年2月の第1回定例会一般質問で「サイレント・マジョリティ―の声を引き出す有効な手法」として提案した市民討議会「プラーヌンクスツェレ」です。

 

このたび64日、区が、まさにこの手法を採用して「10年後の杉並を考える意見交換会」を開催されたことは、提案した者として区の挑戦を評価したいと思います。

 

そこで、質問の1点目として、あらためてこの意見交換会開催の目的と、この手法を使った経緯をおうかがいします。

 

先の議会質問でも述べましたが、市民討議会の特徴は、無作為抽出した市民に呼びかけて参加者を募り、当日は小グループに分かれて議論する、実際に参加した人には時間と労力への対価として報酬を支払う、などというものですが、当区ではどのように実施されたのでしょうか。64日の会での参加者の人数や属性、年代などの状況、実施の概要は実際どうだったのか、うかがいます。

 

私も、基本構想審議会委員の一人として、また市民討議会の実践に強く関心を寄せる者として、期待をもって、短時間でしたが傍聴いたしました。まず感じたのは、参加者の中に一見して若い世代の方が多い、ということでした。また45人のグループに分かれての議論が、その日初対面同士とは思えないほど闊達に、しかも楽しそうに盛り上がっていたこと、さらに各グループの議論のまとめを報告発表する段階で、いずれも立派にプレゼンテーションがされていたことなどに感心いたしました。

 

また同時に、議論を引き出すための情報提供として区が行った区政の概要説明については、わずか15分という短時間だっただけに難しさも感じました。15分間で何をどう語るかで、次に続く議論を実質的には誘導することになるため、ほかの説明だったらどのような議論が展開されたのか、研究の余地があると感じました。区にとっても、貴重な経験になったといえるのではないでしょうか。

 

主催者である区は、実施なさってみて、どのような感想をおもちになったでしょうか。まだ報告をまとめられている途中かと思いますが、現段階で、成果と課題は何だとお思いでしょうか。また参加者からはどのような意見が出されているか、併せておたずねします。

 

そして、この日各グループからまとめとして出された意見が今後、基本構想にどのように生かされるのか、参加者の多くが関心をもって見ているはずです。区のお考えをうかがいます。

 

市民討議会「プラーヌンクスツェレ」は、すでにこれまで北海道から鹿児島まで全国各地で実践されており、都内でも八王子、立川、三鷹などの各市や千代田、新宿、港、墨田区などで実施されました。一度開催した後テーマを変えて3回以上実施する自治体は全国で17に上っています。杉並の場合は今回、基本構想に向けた意見聴取の位置づけだったと思いますが、他自治体の例を見ますと、とり上げられるテーマはいろいろです。千代田区、墨田区、江東区、葛飾区などでは「学校選択に関して」というテーマで実施され、また三鷹市の市民討議会は「東京外かく環状中央ジャンクション」のテーマで開かれるなど、さまざまな政策課題がとりあげられています。自治体によっては、これまで一般的に行われてきたアンケート調査を補完しうるものとしても、採用されているように思います。

 

市民参加の手法としてこれまで一般的に採用されてきた公募区民と違って、無作為抽出の人たちはテーマに対して利害関係をもたないこと、その日に初対面同士であることが、自由な話し合いの空気を生むのだと思います。プラーヌンクスツェレは合意形成しやすいと言われるのもなるほどと思いました。

 

当区でも、今後、ある課題について区民意見を聴取する場合に、この手法が使えるのではないでしょうか。区はその意向があるかどうか、おうかがいします。

 

ただ問題は、そこで出された意見をどのように生かすかということです。市民討議会を実施した自治体では、どこも「議論の結果を政策決定にどう反映させるのか」という課題に直面するようです。当区はいかがでしょうか、お考えをうかがいます。

 

市民討議会だけではありません。昨年秋に実施した区民アンケートの結果や、このたび募集し68日に締め切られた団体意見、審議会での議論など、さまざまな意見が寄せられています。これらをどのように生かしていくお考えでしょうか。

 

区民の基本構想に寄せる意見は多様であり、それらをすべて反映させることは不可能です。ただ、今後策定する分野ごとの計画に落とし込むことは可能であり、そうすべきです。いかがか、おたずねします。

 

この項の質問の最後に、子ども・若者の意見聴取についてうかがいます。若者の意見ということでは、審議会の中で報告された「転入者・転出者に向けたアンケート」が、回答者947人中、30代以下が約8割、40代以下では9割以上という結果になり、それに相当するとみなすことが可能です。

 

しかし一方、18歳未満の子どもの意見については、2月議会の質問でうかがったとき「今後、検討していく」とのご答弁でしたが、具体策が示されていません。子どもは地域に欠かせない構成メンバーなのであり、子どもの意見表明は子どもの権利条約に保障された主要な権利のひとつです。

 

ただ、子どもの率直な意見を引き出すには相応の工夫が必要です。大人の側から子どもの中に入っていくことが重要で、しかもその大人は子どもが信頼する、子どもの目線に立てる人でなければなりません。新基本構想の策定にあたって、ぜひ区にはトライしていただきたいと思います。

どのように実施されるお考えでしょうか。

 

うかがって、次の項目「新しい公共支援事業について」、質問いたします。

 

このたび内閣府が推進する「新しい公共支援事業」のための基金が東京都に設置され、2年間の時限事業費として都に57,400万円交付されました。都ではこの事業を行うにあたり基本方針の検討やモデル事業の選定などを行う運営委員会を設置し、5月に第1回会議を開催、自治体担当者に向けた説明会も開催されました。 

 

内閣府の「新しい公共支援事業の実施に関するガイドライン」によれば、「新しい公共」とは「人々の支え合いと活気のある社会」をつくるため、「市民団体、企業、政府等がそれぞれの役割を持って当事者として参加し、協働する場」とされ、また「従来は官が独占してきた領域を公(おおやけ)に開いたり、官だけでは実施できなかった領域を官民協働で担ったりするなど、市民、NPO、企業等などが公的な財やサービスの提供に関わっていくという考え方」とも記されています。

 

この考え方が、新しい公共支援事業のベースになっています。従来の、補助金をばらまくだけの施策と異なり、NPO等と行政がともに地域の課題を解決していこうとする姿勢が明確に示されています。その意味で、これまでになかった施策に期待を寄せる立場から、以下、質問いたします。

 

東京都は、支援事業の内容として、1.NPO等の活動基盤整備のための支援事業、2.寄附募集支援事業、3.融資利用の円滑化のための支援事業、4.新しい公共の場づくりのためのモデル事業、以上4つのタイプの事業を実施するとし、このうち4番目のモデル事業には、基金の半分にあたる28,700万円をあてる意向を示しています。

 

区は、モデル事業をすすめる上で、現場を抱える自治体として都につなぐ業務を担うことになります。杉並区はこれまで協働をすすめてきた区です。その立場から、この事業をどのようにとらえておられるでしょうか。また、実際どのように進めていかれるのでしょうか。2年の時限事業といい、いますでに6月ですから、関心のありそうなNPOや企業などに早く情報提供しなければ企画や準備にも時間がかかるでしょうし、実際に活動できる期間がさらに短くなってしまい、成果が出せないうちに交付金が打ち切られてしまうことになりかねません。手続きが急がれます。

 

東久留米市で先日、都の担当者を招いて事業説明会が開かれ、私も参加してきましたが、市内で活動するNPOの方から活発に質疑が出されていました。当区での今後のスケジュールはどうされるのか。併せてうかがいます。

 

ところで「新しい公共」という概念はさほど新しいものではなく、1990年代からすでに議論が重ねられ、実践もされてきていました。ただ、国がリードする形で具体化への歩みが始まったのは、鳩山前首相が所信表明演説で述べたことからでした。内閣府に「新しい公共円」卓会議が設置され、杉並区では昨年、「新しい公共」を公約に掲げた田中区長の誕生により、議会でさかんにこの言葉をめぐって質疑応答が交わされました。

 

区長の公約には「杉並版『新しい公共』の発想で区民のみなさまとの協働計画を策定」とあります。私も以前、議会質問で「新しい公共」の理念についてうかがいましたが、そのとき、区の「新しい公共」と円卓会議の「新しい公共」は同様のもの、と答弁されました。であるとすれば、杉並版「新しい公共」とは何でしょうか。杉並版「事業仕分け」は昨年実施されたのでわかりましたが、杉並版「新しい公共」の発想とはどんな発想なのか、語られなかったように思います。また協働計画とはどのようなことか。さらに、策定のスケジュールについても、うかがいます。

 

さて、「新しい公共支援事業」のほうに話を戻します。都の意向では、先ほど述べたように、提案されている4つの事業のうち「新しい公共の場づくりのためのモデル事業」がメインになるということです。そこで、この概要についておうかがいします。事例を挙げてご説明ください。

 

新しい公共支援事業は、官と民とが役割を分担し連携する必要があることから、区の「協働」に対する認識が問われるものになると考えます。自治基本条例に「協働」をうたい、協働の推進のためのガイドラインを策定するなど、杉並区が「協働」ということについて他自治体に先駆けて取り組んできたことは評価したいと思います。

 

しかし、この間の経過の中で、市民活動団体などから区の「協働」に対する認識に不満があったのは事実で、それは区の所管や職員の中でも協働ということに対する認識がさまざまであったこと、また、大企業への民間委託から小さな任意団体との協力関係までが十把ひとからげに「協働」の実績としてカウントされることへの違和感もそうでした。

 

新しい公共支援事業の実践を通して区とNPO等との対等な関係を築くことが望ましいと考えます。見解をうかがいます。

 

また、この事業を推進していくことは区政全体にわたる政策的な課題でもあり、政策経営部の企画課が所管するべきものと考えます。いかがか、おうかがいします。

 

昨日、私はすぎなみNPO支援センターが開催した「新しい公共を考える―分権時代の協働のまちづくり―」と題する講演会に参加してまいりました。行政とNPO・市民活動の協働がこれからの地域社会を活気づかせていくためのヒントを得られるような内容だったと思います。区の職員もかなり参加されていましたので、今後の行政運営に生かしていただけるのではと期待しています。

 

昨年秋の5千人から回答のあった区民アンケートで、「協働の地域社会づくり」についての問いに対し「参加したい」と答えた人が8割を超えました。今年、311日の大震災を経験した後では、もし同じ質問をしたなら「コミュニティの再生」や「地域の人同士のつながり」を願ってもっと多くの人が肯定的な回答を寄せるのではないでしょうか。

 

震災後の地域には、人との絆を編み直したいと考える人や、社会的な活動をもっと充実させたいと考えるNPO団体が確実に増えている、という実感があります。区民のこのような意思を生かすことは市民自治をすすめる原動力になるものです。「新しい公共」は区長の公約であり、また区にとっては「協働」の実践体験を積むためにも、積極的な取り組みが望まれます。見解をうかがって、私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問  2011.6.15 市橋綾子

私は、「生活者ネット・みどりの未来」の一員として、1.原子力災害対策について 2.省エネ・エネルギー政策について 質問いたします。

 

311日に起きた東日本大震災は大津波によるおおぜいの犠牲者と被災者を生み、それに加えて起きた福島第一原子力発電所の事故は、発電所から20キロ圏内に人が住めない状況を引き起こしました。福島第一原発からおよそ230キロメートル離れている東京杉並区ですが、遠く離れているから大丈夫とするのか、それとも想定外をつくらないように備えるのか。

自治基本条例第7条の3、「区はさまざまな災害等から区民の生命、身体および財産を保護するため、危機管理の体制の強化に努めなければならない」に則り、最初の項目、原子力災害対策について3点うかがいます。

 

まず1点目。地域防災計画は、災害対策基本法の規定に基づき自治体の防災会議が策定する計画で、住民の生命、身体および財産を災害から保護する目的で策定されています。毎年検討が加えられ、必要に応じて修正が行われます。当区の地域防災計画は20103月に修正版として作成されたものですが、このあとの修正版はいつ出されるのか、また、311日の大震災の経験を反映した修正版は今後どういったスケジュールと手順で行われるのか、区として次回見直しに盛り込まねばならないものは何とお考えか、併せてうかがいます。

 

2点目です。災害に備える計画として当区が策定している地域防災計画は、震災編と風水害編からなっています。今回のような原発事故を受けて、もし杉並区にさえ住んでいられないような状況がおきたらどうするのか、と考えたときに区には原子力災害に備える計画がないことに気がつきました。ただ、核燃料輸送車両の事故に対応する記述がありましたが、警察と消防関係機関の対応しか書かれておらず、万一事故が起きた場合区としてどういう行動をとるのかが示されていません。事前に核燃料輸送車の走行ルート、通過時刻は明かされないことは、消防職員にとっても周辺住民にとっても問題ですが、そうであるからこそ、それを見越した備えが必要だと考えます。

いまなお収束していない原発の状況を見るにつけ、日本に原発がある限り、事故に備える対策がこの杉並区にも必要だと思います。今回、南相馬市に派遣した区の職員の経験を生かしながら、防災計画に原子力災害対策の記述を入れる必要があると考えますがいかがでしょうかお答えください。

 

この項目の最後に杉並区国民保護計画への記述について伺います。

2004年に制定された「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」国民保護法により、杉並区国民保護計画は策定されています。もちろんこの法律は武力攻撃や大規模テロなどを想定したものであることは承知していますが、大規模な災害やテロなど人為的な危機への対応が不十分とする杉並区の基本的考え方からすると、新しい危機の想定に「原子力災害」を加えたうえで、見直しが必要と考えますがいかがでしょうか、お答えください。

 

次に、大きな項目の2つ目、省エネ・エネルギー政策について伺います。

これまで地球温暖化防止策としてなかなか実績が上がらなかった省エネですが、今回の原発事故により東京電力から「計画停電」が発表され、家庭や事業所などいたるところで節電が行われた結果、消費電力が減少し計画停電の実施には至ってはいません。これからの夏に向けより一層の節電が求められることは言うまでもありません。今回の原発事故による「節電」を一過性のものとするのではなく、地球温暖化対策である省エネに向けた視点で6点質問します。

 

2008年から2012年を第一約束期間とする地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択した京都議定書で示されたCO2削減の目標数値の達成、低炭素社会の実現に向けて、国、都、区においてさまざまな施策が行われています。一方で、54基ある原子力発電所のうち34基が、事故および定期検査により停止している現実があります。つまり、いま日本ではすべての原発のうち3分の1しか動いていません。事故後の運転再開はもちろんのこと、定期検査終了後の運転再開については、住民の同意を得ることは難しいことが想定されます。これまでは原発を推進して、CO2削減を目指してきたものを、これからはエネルギーの大量消費を見直すことを前提にしつつ「脱原発で且つ低炭素な社会」、つまり、脱原発を図りながら自然エネルギーの推進によりCO2を削減して低炭素社会を実現しなければなりません。

私ども東京・生活者ネットワークでは、2000年2月に「市民エネルギービジョン」を策定しております。その内容は、脱原発宣言、分権型エネルギーへの転換、ライフスタイルの見直し、そして環境第一主義の地域エネルギービジョンの提示、などを柱にしています。10年前に自覚したビジョンを現実のものとする責任が、今まさに緊急性を持って私たちに迫ってきています。

 

そこで1点目の質問です。基本的方向として低炭素社会、脱原発社会をめざすことは可能であり、またそうすべきと考えるものですが、区としてどのような認識をお持ちでしょうか、お伺いします。

 

国では20086月「地球温暖化対策推進に関する法律(温対法とよばれるものですが)」の改正で、すべての地方公共団体に事務及び事業に関しての実行計画の策定が義務付けられました。翌月の7月には東京都が「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」を改正し、事業者が温室効果ガス排出総量削減の義務を負うことになりました。事業者である杉並区は、20102月にそれまでのISO14001を返上し、杉並区役所エネルギー管理方針として「杉並区環境・省エネ対策実施プラン」を策定し、その施行から1年が経ったところでその成果が気になるところですが、現在、温室効果ガス排出総量がどのくらい削減できたかの結果をまとめているところとうかがっております。

当区の「環境・省エネ対策実施プラン」は温対法で自治体に策定が義務づけられた「実行計画」ですが、地球温暖化対策は区役所だけが取り組む問題ではなく、市民や事業者を含むすべての人が区域全体で対策を講じて取組まねばならない問題です。杉並区はこれまで、「地域省エネルギービジョン」を打ち出し、「地域省エネ行動計画」、区役所だけが取組む「環境・省エネ対策実施プラン」、そして「環境基本計画」と次々に策定してこられましたが、対象が区役所だけであったり、目標年度も2013年度、2014年度となっていたり、本当にこれで温室効果ガス削減目標が達成できるのか甚だ疑問です。

 

そこで2点目です。温対法で、特例市・中核市・政令指定市・都道府県に策定を義務付けている「区域施策編」があります。これは、省エネだけでなく、エネルギーをどう調達するか、熱中症対策など温暖化問題への対応策など地域の特性に応じた施策を策定するものですが、杉並区のような特別区には義務付けられていません。

エネルギーに対する市民の関心が高まっているこの機を捉えて当区としても地域施策編を策定し、区域全体で取り組むべきと考えますがいかがかでしょうかお答えください。区域施策編の計画を策定した場合、計画を推進し、目標を達成するため、一般住民・環境団体・事業者代表の参加で実働を担う推進組織の設置が必要であることを申しあげておきます。

 

さて、311日以降、区が行った節電の取り組みにはどのようなものがあるのか、また、それを実施したことで311日の前と後で比較した時、本庁舎ではどのくらいの節電になっているのか3点目としてうかがっておきます。

ちなみに、私たちは旧会派「区議会生活者ネットワーク」の控室を使っていますが、6月に入ってから室温が31℃にもなって暑いこともあり、先日8本入っているロング蛍光管のうち4本を抜いていただきました。残った4本でもなんの支障もなく、早く抜いておけばよかったと反省しているところです。

 

4点目です。区は、地球温暖化防止策として自然エネルギーへの転換に向けて太陽光発電機器設置の助成を行っていますが、区が把握しているのは助成件数にとどまっています。せっかく助成という形で税金を投入しているのですから、実際どのくらいの量が発電できているのか、経済的効果はどうか、設置者にどういう省エネ意識・省エネ行動の変化があったのか、メンテナンスの方法や施工業者の評価などの情報を設置者から集め、区のデータとして蓄積していくことが大事ではないでしょうか。それには情報交換や交流の場が必要です。区が助成した世帯に限らず、太陽光パネルを設置しているすべての区民に区の広報などで呼び掛け、設置者に自然エネルギーを普及する人になってもらうことが導入の促進になると考えます。そのためにも、区がかかわって設置者交流の場をつくるべきと考えますがいかがでしょうかお答えください。

 

自治体の地球温暖化対策を具体的に進めていく際の課題として、市区町村ごとの温室効果ガス排出推計が困難なことがあげられています。目標を立てる際、そして実践した結果の評価のためにもデータの情報開示は必要です。先般、世田谷区が東京電力に世田谷区内で使用されている電気消費量を出すよう要請したと報道がありました。当区もその翌日に東京電力荻窪支社に協力を要請したと聞いています。区内分の電気消費量を出すのは無理とのことで23区内の前日の総電力量しか出てこないという現状です。当区としても引き続き東京電力に要請していただきたいと要望します。

 

今回の原発事故を受け、国ではエネルギー政策の見直しが言われていますが、これは国だけの問題ではなく、自治体にもどのような方針に基づきどのようなエネルギーをどのように使うのかといった「自治体としてのエネルギー政策」を定めることが必要です。

現在、区内には区の助成を受けて設置した太陽光パネル804か所に加え、都だけが助成していた時期の設置者、助成を受けずに設置した方も相当数あり、今年度末には330か所ほど増え、年度末には1130か所にもなり、いわば「市民立太陽光発電所」が増え続けていきます。一方、太陽熱利用の給湯器や高効率給湯器も区の助成を受けて順調に設置が増えているとうかがっております。また、先日行われたハーモニーまつりあんさんぶる荻窪会場で、太陽熱集熱パネルが展示されていました。一番大きいもので横70センチ縦200センチ厚さ6センチ、およそ畳1畳に相当する大きさです。この太陽熱で温めた熱気を換気扇で室内に送り込むシステムです。換気扇はパネルに埋め込まれた太陽光発電機で動かしますのでコンセントいらず、つまり電気代ゼロの暖房システムで、外気温プラス30℃の暖房効果が得られます。エネルギーを最も消費するのは暖房ですのでこのシステムは省エネとして期待できます。なによりもいいのは戸建てだけでなくマンションでも設置できるものです。このような自然エネルギーの利用は今後減ることはないと考えます。当区はもうすでに相当量のエネルギーを生産する「エネルギー生産基地」であるという発想を持って、これをさらに推し進めてエネルギーの地産地消をすすめていくべきと考えますが、区の認識はいかがでしょうか、5点目としておたずねします。

 

6点目、最後の質問です。

いま、太陽光、太陽熱をはじめとする再生可能エネルギーの導入を加速し、エネルギーの地産地消のまちづくりを目指すときです。先日新聞で、前高知県梼原(ゆすはら)町長 中越武義(なかごしたけよし)さんの紹介がありました。梼原町は国の環境モデル都市の一つですが、町長就任の翌年から、太陽光、太陽熱、地熱、小水力、バイオマスと次々と自然エネルギー利用を採用して実績をあげられているのを知り、もちろん小さな町で地域性も杉並とはまったく異なるものではありますが、その先見性と実行力に目を見張りました。しかも、そのやり方は、決してトップダウンではなく、市民を前面に立ててやってきた、つまりエネルギー自給100%を目指すことを宣言した町長のリーダーシップがあって、市民とともに実現してきた結果である、と書かれていました。

当区においても、区内で使用される電気量のうち何%は再生可能エネルギーで賄う、といった新しいエネルギービジョンを示すべきと考えます。我が区でも首長のリーダーシップを期待するところですが、区長のご決意をうかがいまして、私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問  2011.6.15 曽根文子

子どもを放射能から守る取り組みについて

 

3月11日の東日本大震災、福島原発の事故の収束の見通しは未だに立たず、日々空や海に大量の放射性物質が放出され続けています。そんな中で放射線感受性の強い幼い子どもを持つ多くの保護者が不安を抱えながら子育てをしている状況です。

4月には杉並区内にあるビルの屋上の放射線量をガイガーカウンターで計ったら高い値が計測されたという映像がインターネットで流れました。真実を確かめたい、そのため区に実際に放射線量の計測を実施すべきではないかと思い保健センターに問い合わせたところ計測の予定は無いという回答でした。

生活者ネット・みどりの未来」は518日に区長と教育長に面談し、ヤゴ救出作戦を直後に控えていた小学校プールの水質、保育園・子供園・幼稚園の砂場と小学校の校庭の放射線量の測定、測定結果のホームページでの公開の3点について要望書を提出いたしました。その直後から幼い子どもをもつ母親が中心になって同じ内容を求める請願署名活動を始めたところ、3週間という短期間にもかかわらず4000筆以上が集まりました。区民からの強い不安の表れだと思います。

私も5歳の子どもを保育園に通わせる母親として、子どもの健康を心配する保護者の方の気持ちを代表するつもりで、区の子どもを放射能から守る取り組みについて、学校や保育園などでの放射線量の計測と給食について質問いたします。

 

まずは放射線量計測についてです。

このたび区が、おおぜいの区民の要望に応えて放射線計測のための経費を補正予算に計上されたことに対し、先ず感謝申し上げます。

6月3日付で区内のプール5か所で、3月11日以降の雨がすべて含まれる水を採取・計測され、6月9日には放射能は不検出という結果がでて、多くの保護者は今後余計な心配をせずに済むことになりました。7月のプール開きを控え、保護者の不安解消に大きく寄与したと評価するものです。

 

それでは、最初の質問として区が今回放射線を計測する方針を示された目的を伺います。

また、この間区にも計測を求める声が数多く寄せられたことと思いますが、その内容はどのようなものであったのかお示しください。

そして、補正予算で経費として927万5千円が計上されていますが、その内訳についてもお示しください。またどこをいつまで計測する予定か具体的にお示しください。

 

今回の計測にあたっては、外部の専門家を招いて測定結果を評価した上で公表する、とうかがいましたが、専門家といってもいろいろな立場や考え方の方がおられ、人によって全く違う評価がされています。区民にとってはバランス良く複数の専門家に評価していただきたいと考えます。具体的にどなたをお考えでしょうか。また放射能の対応については庁内のさまざまな部署の担当者が関わることが必要と考えます。区の考えをうかがいます。

 

計測の結果、数値が低く安全が証明されることを望みますが、万が一高い値が計測された場合には、専門家の助言も得て独自の基準を定め、その数値によってどのような対処をするのかを決めておくことが必要だと考えます。幼児は砂場あそびが大好きで、鼻の穴に泥や砂が入り黒くなっていたり、泥だらけの指をしゃぶったりするのも普通に見られることです。幼児は砂を吸い込み、また食べているような状況にあるのです。そのため基準をこえる高い値が出た場合には周辺も計測すること、砂場の砂の入れ替え、校庭の土壌の入れ替えなども行う用意をしておくことを要望いたします。

 

屋外プールについては、先ほども述べたように、3月11日以降の雨が含まれた水を調査してヨウ素131、セシウム131137がそれぞれ不検出だったこと、それを公表されたことは区民の大きな安心につながりました。しかし原発の事故現場ではいつまた暴走が起きるかわからない状況にあり、もし変化があったときにはただちに水を検査し、結果によってはプールの使用を中止するなど処置をとってくださるよう、今後もご配慮をお願いいたします。

 

今回は外部機関に測定を委託する、また外部の専門家を招いて測定結果を評価すると聞いていますが、原発事故は3か月たった今なお収束の見通しが立たず、これから長期にわたって放射能と付き合うことになると覚悟しなければなりません。区は長期的な視野にたって取り組むことが必要だと考えます。区として今後どのように取り組んでいかれるのかうかがいます。

 

放射能については「正しく怖がる」ことが重要と言われています。そのための十分な情報提供がされるべきであり、計測結果だけでなく、理解を深めるために疑問や不安など自由に意見交換できる場があればと考えます。区で放射線を理解するための放射能の専門家、医療関係者、行政などによる学習会を持ち、その後に一般参加者も加わってそれぞれの立場から意見交換できる場が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 

また、区民が放射線について理解するためにホームページに有益な情報を掲載するなどいま以上に充実を図っていただきたいと考えますが、区としてはどのように取り組む予定でしょうか。

東京23区において区が独自測定を行う動きが広がる中で、23区長でつくる特別区長会が東京都に放射線量測定を充実させるよう要請しました。それが都を動かし、空間放射線量の測定を区市町村が希望する都内100か所で行うことが決定されました。また都が確保した計測機器70台を市区町村に貸与し、さらに今後30台を増設し、測定を行うこととなったことは、同じ機種の計測器で測ることによって、各所での比較もでき、有効なデータが得られることを期待するものです。ここで得られる計測結果と杉並区独自の計測結果を合わせて杉並区のホームページで掲載していただく事もお願いいたします。

以上を伺って次に給食についての質問に移ります。

 

同じように保護者の方からは、学校や保育園の給食に使われる食材の放射能汚染について多くの問い合わせや要望を受けています。私自身も日本の暫定基準は国民の健康を考えて設定されたものではなく、原発から放射能漏れが続く現状に合わせて急遽作られたものであり、その判断に不安を感じています。緊急時とはいえWHO世界保健機関の基準と比べて、我国が採用している食品における放射性物質の暫定基準値は非常に甘いものです。例えば飲み物で比べるとWHOがヨウ素131、セシウム137は共に10ベクレルとなっていますが、日本はヨウ素131300ベクレル、セシウム137200ベクレルとヨウ素が30倍、セシウムが20倍となっています。また食べ物については国際的に食品基準を決めるCODEXの基準が100ベクレルであるのに対し、日本は野菜のセシウム137の基準値が500ベクレル、ヨウ素131の値が2000ベクレルとなっており、それを子ども達に食べさせて大丈夫なのかと考える保護者が多いのは当然だと考えます。

 

区が給食の食材には素性のわかる国産品を極力使う努力をされていることを評価します。であればなおさら、食材の産地に神経をとがらせなければならなくなった原因である原発事故に対し、残念でなりません。

 

区は、学校や保育園の給食に使う食材の放射能汚染については安全確保のためにどのような取り組みをされているでしょうか、うかがいます。

 

保護者の中には、給食の食材について、関東以南のものを使用してほしい、牛乳の産地を北海道に限ってほしい等の要望をなさる方が少なくありません。私はそもそも食品の基準値が高いことにその原因があると考えます。生活者ネットワークは、これまで食品に含まれる化学物質の安全性リスクについて、影響を受けやすい子どもを対象とした「子ども基準」を設けるべきと主張してきました。放射能汚染を常に心配しなければならないいまの状況で、子どもたちを守るためには、なおさら「子ども基準」を設けるべきです。それは広域的に都や国レベルの施策として行われるべきで、杉並区は他の自治体と連携し、都や国に対策を求めて動くことを要望いたします。

 

食の安全を確保する仕組みのひとつとして、現在保健所が取り組んでおられる「食に関する意見交換会」があります。食に関して消費者、生産者、事業者、などいろいろな立場の人たちが集まって意見を交換し合う、いわゆるリスクコミュニケーションの場です。私が先ごろ参加した会では生肉の食中毒事件などを受け「最近の食品衛生状況」をテーマに話し合われていました。これと同様な、放射能をテーマとした保護者、学校関係者、栄養士、給食調理員、食材の生産者、給食に係るすべての人がそれぞれの立場から意見をのべ情報交換できるリスクコミュニケーションの場の設置も必要だと考えます。食べ物に含まれる放射性物質についてどう考えるのか、どういう食を選択するのかは、最終的にはその人自身が判断するしかないのだと思います。ただ、いまの極度に不安を募らせている人とほとんど無関心の人との間に認識の大きな差が生じている状況に対して、区がその溝を埋めるような努力をしていただけないものか、と思います。多くの人の意見や立場に触れること、人に話を聞いてもらうことで自分の考えを整理し、状況を受け止め判断する助けになると考えるものです。

 

ある小学校では給食委員の子どもたちの側から、被災地支援の給食メニューを提案したということで、保護者の方から心配の声が届けられました。その心配の原因はつきつめれば食品の暫定基準値が甘いことにあります。杉並区が学校給食を食育の機会として積極的に取り組んでおられることを評価しています。そこで、いま直面している放射能汚染の問題についても、食の問題のひとつとして子どもにきちんと事実を伝え、子どもとともに考えることが必要と考えますがいかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 

放射能に関して心配している保護者の不安を受けとめ疑問に答えてくれるような電話相談窓口があればと思います。放射線の専門家や小児科医、保健師などの医療関係者、カウンセラーなどが対応できるような電話相談があれば、子どもをもつ保護者だけでなく多くの区民にとって不安は軽減されると考えるものです。

 

杉並区で子どもを放射線の被害から守るために区は最大限の努力をすべきと考えます。区の決意をうかがいます。

 

このように大きな不安をこれからも長期間強いられることになった放射能汚染の原因は原発事故です。

 

これまで区内の子どもを守る取り組みについて述べてまいりましたが、高い放射能汚染が確認されている福島県内の子どもたちのことを忘れてはなりません。文部科学省はその汚染状況に合わせて1年間の基準を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩めると発表し、日本国内のみならず海外からも強い批判と抗議を受けました。現在は「年間の基準値を1ミリシーベルトにするよう努力する」と変更しましたが、子どもたちを守ることを最優先に考えているとは言えない対応がとられています。大人として区内の子どもを守ることと同様に、福島県内の子どもたちを守ることにも取り組んでいかなければなりません。

今回の福島第一原子力発電所の事故は、原発が人の手で完全に制御できるものではないこと、多くの被曝労働者を生み出し続けること、一度事故が起これば数十年にも渡り空気、水、土壌、海を汚染し、食物の安全も根底から壊されてしまうことを明らかにしました。原発はトイレの無いマンションと言われていますが、使用済み核燃料は最終処分方法が無いままに生み出され続け、それが原発の傍に容量を超えて置かれている状態です。原発を使い続けることは負の遺産を生み出し続けることです。今こそ、脱原発の決意をするときです。そして「足るを知る」省エネの暮らし、自然エネルギーへの転換を進めるべきだと考えます。放射能汚染の根本原因を取り除き、子どもたちに安心して暮らせる社会を残すために、議会、行政が一体となって区民とともに脱原発を強く進めていくべきと申し上げ、私の質問を終わります。

予算特別委員会意見開陳 2011.3.10 小松久子

予算特別委員会の最終日にあたり、当委員会に付託された2011年度一般会計予算をはじめとする諸議案に対し、区議会生活者ネットワークとして意見を申し述べます。

 

田中区政における初の本格予算の提案を受け、委員会での質疑をとおして、また、資料をもとに会派で調査した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案および条例案について、賛成すべきと判断いたします。その立場から、以下、時間の制約により述べられなかったことなど、何点か絞って申し上げます。

 

国の政治が混迷を極めています。機能不全に陥った国会のありさまを見るにつけ、政権交代を選択した国民の期待にこたえられない与党も与党なら、その足を引っ張るだけの野党にも見識と呼べるほどの見習うべきものなく、国民の生活がただ置き去りにされています。そして、ここに至るまで世論を育てようとせず政局不安をあおり続けたメディアの責任を、厳しく問いたい思いでいます。

 

世界に目を転じれば、情勢は日々動いています。中東のアラブ諸国でひろがった反政府運動は、長引く経済不況とそれによる貧困層の拡大を背景に、長期政権によって抑圧された民衆の怒りがインターネットを通じてまたたく間に伝播し増幅された民主化運動ととらえれば、歴史の必然だったといえるのかもしれません。しかし、緊迫する情勢を受けて原油、穀物などの価格上昇がすでに始まっており、日本の私たちのくらしに確実に影響を及ぼしつつあります。

 

また、ニュージーランドでおきた大地震が日本からの多くの留学生の命を奪ったように、地球が小さくなっている今日、世界の動きを常に視野に入れながら、生活に最も身近な自治体が果たすべきことを実行していかなければなりません。

 

2011年度予算でもっとも注目すべきことのひとつは、生活保護費の増大です。142億円という、ついに一般会計予算の1割を占めるまでになったことは深刻です。受給者の3割を占める70歳以上、6割に及ぶ60歳以上という、高齢者の貧困問題もさることながら、子どもの貧困がどこにでもある状況が、「質の高い住宅都市」をめざす当区において存在すること、小学生の20%、中学生の30%が就学援助の認定を受けているということは、高齢者とは別の意味で、早急に調査・分析のうえ対策が必要です。

 

契約制度検討委員会が組織され、中間のまとめが昨年末に出されました。区施設において、管理委託事業者の倒産により従業員の給料支払いに支障が起きた事件の教訓から、委託業務における「労働関係法令遵守の確認」制度の充実策への取組みを打ち出すなど、評価するところです。10月に最終報告がまとめられるとのことですが、以前一般質問で述べた、NPOなどの市民活動団体との「協働」における対等な関係のもとでの契約のあり方についても検討の俎上に載せていただきたい、とあらためて要望いたします。

 

行政委員の報酬のあり方について、見直すべきときが来ています。先ごろ住民監査請求が出された選挙管理委員の報酬については、勤務実態が全くなかった6か月間に報酬が支払われていたという事実を前にすれば、請求者のほうに理があることは明白であり、この制度をこのまま放置し続けることは区民の理解を得られません。この機会に日当制の検討にとりかかるべきです。

 

南伊豆健康学園の廃園に関して申しあげます。

耐震上の課題、また限られた財源を考えるとき、行政評価委員の出した廃止という結論は、10年前に決まっていたことでもあり、やむを得ないと感じるところもあります。が、その反面、後味の悪い思いがどうしてもぬぐえません。理由の第1は、学園が果たしてきた福祉的な側面に光が当てられることなく評価が行われたことです。南伊豆健康学園は、健康上の問題を抱える子どもの全寮制教育施設という位置づけですが、養育に課題のある家庭の子どもや、地域でくらすことが一時的に困難な子どもの緊急避難的な生活施設としてかけがえのない役割を果たしてきたと思います。

 

そのような現実をふまえたとき、これらの課題をおそらく共有していると思われる、他の自治体と協力し合うことが考えられないものでしょうか。特別区長会にはエリアによって4つのブロックが設定され、杉並区は中野、豊島、板橋、練馬の各区とともに第4ブロックに所属しています。特別区長会が実施する事業は、1番目に「共通する課題についての連絡調整および調査研究」とうたわれています。南伊豆の施設は高齢者用に変更するとすれば、健康学園の代替策は別の地で展開することになるでしょうから、ぜひ他の自治体区長との調査・研究に着手されるよう望むものです。

 

そもそも特別区長会は、重要な議論が行われる場であり、国民健康保険の統一料金や人事、ごみ処理など区民のくらしに密接したことが実質的に決まる場であるのに、都区制度のもとでの特別区という位置付けのあいまいさが反映されてか、不透明かつ区民が直接意見を言えないしくみです。それだけに健康学園を共同で運営する、というような事業にも取り組んで、特別区長会の存在意義を示していただきたいと思います。

 

関連して、教育問題について申し上げます。4月から全面実施となる新学習指導要領の内容については、「脱ゆとり、詰め込み教育復活」という指摘にうなずける部分があり、授業時数が増大する一方での総合的学習の時間の大幅削減に対し、「環境教育と環境行動あってのエコスクール」「エコスクールのもとでこそ環境教育」として展開されてきた取り組みが後退する不安を感じていました。けれども、各教科を横断的につなぐ理念として「持続可能」というキーワードをおくことで、これまで積み上げてきた実践が生かされ、さらにひろがりをもたせられると今は考えています。国連で定めた「持続可能な開発のための教育の10年」のうち7年目にあたる今年、新しい学習指導要領のもとでの新たな展開を期待します。

 

学校司書について、区は今の課題として各学校での受け入れ態勢や学校間格差についての認識を示されましたが、中央図書館の体制には言及されませんでした。これまでの区の取り組みを高く評価し今後に期待する立場から、中央図書館および地域図書館のサポート体制についても、ぜひ強化をお願いいたします。

 

さて、新まちづくり基本方針の策定について質問いたしました。

1992年の都市計画法の改正で、住民の意見を反映させるための必要な措置を講ずることが義務化され、市区町村が策定権限を持つ都市計画マスタープラン制度が創設されました。1997年のまちづくりマスタープラン策定に際し、それまで市民にとって難しく遠い存在であった都市計画を少しでもわかりやすくと区は14会場での説明会やポスターセッションを開催、また、シンポジウムも開催されました。この杉並区の取り組みは、都市計画マスタープランへの市民参加のあり方を探っていた他自治体職員や市民にとって、先行事例として紹介されることも多くありました。区にとっても住民にとっても「初めて住民が都市計画の分野に参加する」経験であり、「ともにつくる」「汗を流す」協働という言葉がふさわしいものとなりました。

 

しかし2002年、「21世紀ビジョン」に整合させるために行ったまちづくり基本方針の見直しは、形だけの市民参加にとどまったことが残念でなりません。このころに策定した後発自治体の都市計画マスタープランには、市民参加の手法や市民参加を重視した見直しのルールなどが規定されるなど、当区よりも進んだ市民参加の方法が盛り込まれています。

 

2009年に改正されたまちづくり条例では、「まちづくり基本方針を策定するに当たっては、区民等の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする」と書かれていますが、今回の新まちづくり基本方針づくりは基本構想のなかで行うという方針が出され、今の時点で住民参加の気配が見受けられません。

 

1992年の都市計画法改定から20年以上が経過したいま、市民参加の新しい手法が編み出されています。広く多様な市民の参加を可能にする、無作為抽出による市民討議会の手法を、一般質問では基本構想づくりにおいて実施するよう提案しましたが、新まちづくり基本方針の策定にあたっても試される価値があると考えます。検討を求めます。

 

つづいて、南北バスと自転車のまちづくりについて申し上げます。一昨日の8日、交通基本法案が閣議決定され、このなかで自転車も移動手段として位置付けられました。

 

高齢者・障がい者を含むだれもが、いま住んでいるまちに住み続けられるために、また、社会参加が保障されるための移動の手段を考えたとき、交通手段をコミュニティバスにするのか、自転車でいいのかなど、全体として捉える必要があることを、今議会で再三申し述べてまいりました。いま、まさにまちづくり基本方針が見直されようとしているときにあって、まず地域交通計画を策定したうえで、自転車、福祉交通、交通事業総体の施策体系を示しながら住民の移動方法を考えていくべきであることをこの場でもう一度申し上げます。

 

自然環境調査と河川生物調査について申し上げます。5年に1度の調査をこれまで5次まで行い、25年が経過しました。専門調査員と公募のボランティア調査員、身の回り調査員など、多くの区民の参加により行われてきた調査です。データをとることとともに、調査に参加する方たちの環境に対する意識を大事にしたこの調査ですが、3年間で3000万円という予算は果たして税金の使い方として十分なのかという視点で、見直しがされると伺いました。

 

これまで調査を継続して行ってきた方たちの蓄積が生きる形で見直しがされるよう求めるものです。また、質疑の中で調査年度を自然環境調査と河川生物調査を合わせることを要望しましたが、2つの調査を別々に行うのではなく、一つの調査としてするのはいかがでしょうか。川の生き物調べを行っている小学校と、それを指導する市民環境団体が一緒に調査をしようという提案です。より多くの市民が調査に参加することで地域の環境を知り行動するという目的に合致した方法だと思います。ご検討ください。

 

昨年の第1回定例会は「減税自治体議会」といってもよいほど減税構想一色に染まった感がありました。思えば遠い昔のことのようであり、いまや風向きはまったく変わりました。ただ、ここで指摘しておきたいことは、減税自治体構想の暴走を許したことの責任が、ほかならぬ議会の側にもあったという事実です。杉並区議会は二元代表制の一翼たりえたのか、という観点からの自戒を込めた検証がなされるべきと考えます。

 

早いもので、私たちの任期満了のときが近づいています。統一地方選挙を間近に控え、今回は地域政党に関心がもたれるようになっていますが、元祖・地域政党を自認する生活者ネットワークとしては、首長追随型の政党と同列に語られることには戸惑いを禁じえません。私どもは、政治は生活を豊かにする道具として使いこなすため、分権を獲得し、市民の手に政治を取り戻すことにこれまでも取り組んできました。そしてこれからも、そのために力を拡げていく決意であることを申し上げ、会派の意見といたします。

区議会第1回定例会一般質問 2011.2.15小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、地域自治について、プラーヌンクスツェレ(市民討議会)について、チャイルドラインについて、以上3つの項目について質問いたします。

 

いま国会では、国民の生活より党議党略が優先するような状況ですが、国づくりの理念を推進する土台として「行政刷新」とならんで「地域主権改革」が位置づけられたことは、分権を勝ち取ることをテーマの一つとして活動している生活者ネットワークとして、これが一歩前進する力になると期待をもっています。と同時に、この動きを現場である地域から、確かなものにしていく必要を感じています。

 

区長の選挙公約のひとつは「区内分権の推進と地域ごと予算の創設」ですが、その実現のためには、これまでの区の地域内分権の取組みについての総括が必要と考えます。区における地域内分権についての議論は、「地域内分権の推進に向けた研究会」を庁内組織として設置し、06年、地域自治組織のモデルとして地区教育委員会を提案するなど、試行錯誤を重ねてこられました。最初の質問として、これら一連の取組みについて、区長の見解をうかがいます。

 

結局、地区教育委員会の具体的検討には至りませんでしたが、区では、その後08年「集会施設等運営協議会」のあり方について庁内で検討が行われました。出された報告書には「地域団体のネットワーク化と自治型コミュニティ形成をめざして」とサブタイトルに明記され、地域区民センターを拠点として地域の自治を展望していこうとする視点に共感しました。そこで09年第1回定例会議会での一般質問にとりあげましたが、具体化に向けた実行策は示されませんでした。

 

しかし、先ごろ町会・自治会、NPO、地域区民センター協議会が一堂に会する場として、すぎなみ地域大学とNPO支援センターの企画により、初めて開催された「地域活動団体交流会」は、先ほど述べた「地域団体のネットワーク化と自治型コミュニティの形成をめざす」という、あり方検討の報告書の内容にそったものと感じました。この理解でよいか、区の見解をうかがいます。

 

地域施設等運営協議会は「地域区民センター協議会」と名称が変わり、今年度より事務局体制も変わりました。地域活動係を区民センターの中に移し、従来の業務のほかに区民センター協議会の事務局も担うようになっています。この目的は何でしょうか。また、1年弱ではありますがやってみての成果と課題をどのようにとらえておられるか、おうかがいします。

 

「地域活動団体交流会」には70もの団体が参加したと聞きました。この開催目的、参加を呼びかけた団体など、概要はどのようなものだったのでしょうか。また実施当日の参加者の声などお示しください。併せて、開催結果についての区の見解をうかがいます。

 

この試みを今後継続し発展させていくべきと考えます。2回目以降の会の開催予定はいかがでしょうか。またその場合、会のもち方は地域別、テーマ別などいろいろ考えられるものの、地域の課題を地域で解決できるような自治型コミュニティを育てていくためには、地域ごとの開催が必要と考えます。区のお考えはいかがか、うかがいます。

 

このたびの初回は地域大学とNPOセンターの協働による開催でしたが、今後、地域ごとに開催されるとすれば、地域センター協議会がその中心となってゆくべきでしょう。また参加団体としてケア24や児童館などの福祉関連施設や、学校、図書館などの教育関連施設、商店会なども当然ながら参加が望まれます。またNPOなどの市民活動団体の参加も不可欠であるため、NPO支援センターもかかわっていく必要があると考えます。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 

「自治型コミュニティを形成する」という考え方は、町会・自治会にとっては、これまで続いてきた地縁組織というあり方に加えて、もっと幅広い地域の機関や団体との連携を図るという発想の転換が必要とされるのではないでしょうか。「広報すぎなみ」211日号1面の町会・自治会特集では、従来型の発想に基づいた編集にとどまっていると感じましたが、地域のNPO等の市民活動団体との交流・連携を促すべきと考えます。この、自治型コミュニティという考え方に立ったとき、いまの町会・自治会が抱えている課題は何か、その課題をどのように克服していこうとされているのか、区の見解をうかがいます。

 

その意味からも、このたびの予算で提案されている町会掲示板の改修費用助成の増額については、せっかく増額するのであれば、地域の自治を担うメンバーであるNPOなどの市民活動団体もイベントなどのお知らせを掲示できるようにすべきと思います。そのような双方の関わりがあってこそ、地域での連携も促進されるものと考えます。うかがって、次の質問に移ります。

 

つづいて、プラーヌンクスツェレ(市民討議会)について質問いたします。「プラーヌンクスツェレ」というのはドイツ語で、英語でいうと「プランニング・セル」、ドイツで考案された、市民参加のひとつの手法です。これを直訳した日本語は「計画細胞」ということになりますが、日本での実施には一般的に「市民討議会」という言葉があてられ、最近自治体での実践例がひろがりつつあります。それは、どの自治体も「新しい公共」を実体としてつくっていく必要に迫られる現在、量・質ともにより高度な市民参加が求められているからであり、その意味でこのプラーヌンクスツェレに可能性を見出しているからだと思います。

 

具体的な説明は後ほど述べることとし、この項の最初に区の現状を見てみたいと思います。

 

昨年11月に実施された基本構想アンケートの結果が公表されました。5,000通近い回答が寄せられたことと併せ、「協働の地域づくり」について回答者の8割以上の人が「参加したい」と答えていることに、私も驚くとともに、杉並区民の積極性を誇りたい思いです。区民の区政への関心の高さがうかがえます。

 

ところで、区は自治基本条例に基づき区民の参加を進めてこられ、09年にはパブリックコメント条例も制定されました。しくみをつくることに関して、区が積極的に取り組んでこられたことは承知しています。しかし区のとらえる区民参加の枠が限定的であり、区民に対する信頼感がいま一つと感じているのは私だけでしょうか。区政への区民の参加のあり方について、これまでの区の取組みをどう評価し、今の課題をどうとらえておられるか、最初の質問としておうかがいします。

 

再びアンケート結果に戻りますが、回答者は男女比が46、年齢は60代以上が約7割であり、年代層の偏りが見られました。介護や医療問題が「10年後に必要なこと」の1、2位に挙がったのは当然と思われます。アンケート方式は「意思ある人」の意見のみが引き出され、サイレントマジョリティの声を拾うことはできないしくみです。また、一方的に「意見を聴く」というだけのアンケート調査には、意見を返し・返されるやり取りを経て議論を深めることは望めませんから、限界があるわけです。

 

基本構想審議会の中でも委員として述べたことですが、今後、他の年代層、とくに回答者の10%に満たない30代以下の人たちの声を拾う努力をしなければなりません。それには、アンケートとは別の市民参加の工夫が必要なのではないでしょうか。

 

市民参加の新しい手法といえば、外郭環状道路の「必要性の有無から議論する」として何年もかけてPI協議会からPI会議、さらに地域PIへと名前を変えながら続けられてきたPI(パブリック・インボルブメント)を思い浮かべる人も多いと思いますが、ここで提案したいのは、プラーヌンクスツェレです。パブリック・インボルブメント、すなわち住民参画とは名ばかりの、賛否の議論がかみ合わないままに終始した経過を私も傍聴席から見てきてがっかりさせられ、「あれはよかった」と評価する声を聴いたことがないPIですが、実際に見たり関わったりした人の事後評価の高いのがプラーヌンクスツェレです。

 

プラーヌンクスツェレが市民参加の新しい手法として注目を集めているのは、住民基本台帳などからの無作為抽出によって呼びかけるため、参加するかしないかは呼びかけられた人の自由意志ではあるものの、まんべんなく多様な市民の参加が期待できることです。また有償であるために参加者の責任感がある程度確保できること、少人数による密度の濃いグループ討議、討議に臨む際に必要な情報提供を受け準備が保障されること、参加者の投票による決定、などを特徴としています。しくみの設計は裁判員制度に似ていると考えればわかりやすいかもしれません。

 

新宿区でも昨年、自治基本条例の制定にあたりプラーヌンクスツェレの方式が採用されました。この実績では、参加者の属性は2014%3016%4014%5014%6022%7016%と、極端な偏りがなく、幅広い年齢層からの参加が得られています。討議の企画運営はプロポーザルにより選定されたNPOが受託し、事前準備から当日の進行を事務局として担当しました。

 

杉並区の基本構想づくりは、いま緒についたところです。まちづくりへの参加意識の高い杉並区民には、試してみる価値のある手法だと思います。策定に至るまでのプロセスにおいて、この手法を取り入れてはいかがでしょうか。お考えをうかがいます。

 

さて基本構想づくりに関連して最後にもう1点、おたずねしたいことは、10代の子ども・若者の声を聴き出す努力が別途、必要ではないかということです。子どもも地域社会を構成するメンバーですから、意見表明の機会が設けられなければなりません。その場合はプラーヌンクスツェレの手法によらない、大人とは別枠で、区の側から子どもの中に入っていくような工夫が必要だと思います。10代の子どもの基本構想づくりにおける子ども参加について、区の見解をおうかがいして、3つ目の項目、チャイルドラインについて質問いたします。

 

このチャイルドラインも、子どもの声に耳を傾けるという、子どもの権利にかかわる問題を提起したいという思いで、とりあげるものです。

 

どの子どもも、生まれながらにして「その子らしく」成長することができる、その権利がある、という「子どもの権利条約」の理念から除外された子どもが、残念ながら日本には少なくない状況です。現時点で高校の無償化から朝鮮学校だけが排除されている問題はもちろん、虐待により死亡する子ども、いじめを受けて自ら死を選ぶ子どもが後を絶たないことがその証左です。いたましい事件の背後には、その一歩手前の状況におかれている子どもたちの存在があります。また、少年犯罪が低年齢化のうえ増加しているかのようにいわれますがそのような事実はなく、むしろ子どもが被害者となる事件こそ増加の一途をたどっていることに、もっと目が向けられなければなりません。

 

被害者となる子どもをつくらないため、子どものSOSを受けとめるしくみが十分に機能しているか、点検する必要があります。

 

当区では、子どもの声を電話で受けとめるおもな機関として「ゆうライン」があり、学校にかかわる領域に関してもさまざまな機関が電話相談を受け付けています。これらの区の取り組みが果たしている役割と、これまでの総括を区はどうとらえておられるか、うかがいます。

 

「ゆうライン」は子ども家庭支援センターの事業のひとつとして、センター内に専用電話が引かれています。2010年度の実績は、大人からの相談件数1,213、子どもからの相談件数108とうかがっています。そこで、「ゆうライン」に関連して3点おたずねします。

 

1点目、電話をかけてくる子どもの年齢分布はどのようになっているか。2点目、子どもからの相談の内容はどのようなものか、件数の多いのはどのようなことか。そして3点目、これらの内容から察知される、子どもが抱える・子どもを取り巻く問題を区はどのようにとらえておられるか。以上、あわせてお答えください。

 

さて、それにしてもゆうラインの年間の相談件数108は、多いとはいえません。ゆうラインの受付時間帯については私たちも要望し、夜7時までの延長が実現したことは評価いたしますが十分とはいえません。また行政が実施する相談事業は、たとえ秘密厳守をうたっていてもアクセスするのにハードルが高く、一部の事業は私立学校に通う子には有効ではありません。

 

ここでご紹介する、民間NPOが運営するチャイルドラインは、「ゆうライン」のように相談を受けて問題解決の方法を追求するというより、子どもによりそい、気もちを受けとめる電話受信システムです。みずから自覚して発するSOSも、無自覚なりに発せられるメッセージも、子どものまるごとあるがままを受け入れる場が、チャイルドラインです。

 

998年に世田谷で実験的に始められ、昨年331日現在、39都道府県、68団体で実施されるまでになりました。09年の全国統一フリーダイヤル導入により、20101月から9月までの9か月に、全国で延べ123千件、東京都内ではその10%にあたる1万件の着信がありました。

 

その中には、深刻な悩みを打ち明ける子もいますが、すぐ切れたり、無言だったりが半数近くあり、一言やお試しが2割で、会話が成立するのは3割に過ぎません。それでも、無言や一言の向こう側にだれかがいて受けとめてくれる、電話を通して人とつながっていることで自分の居場所を確認できる子にとっては、どんな声が応答するのか確認するだけでも、心の安定を保つために必要なツールと言えるでしょう。別の見方をするなら、そうしなければいられない子どもの孤独が見えるはずです。

 

09年度の集計では、電話をかけてくる子の男女・年齢別でいえば、男子高校生が23%で最も多く、男子の年齢不明が21%、これに比べて女子は小学生が13%で最も多く、女子高校生は10%となっています。会話が成立した電話の内容は、男子では性に関することが26%、女子は人間関係が23%で1番多く、2位は男女いずれも雑談・話し相手となっています。雑談のできる場であるということが重要です。たわいない雑談を何度かへてようやく、虐待を受けているというようなことを打ち明ける場合があるからです。

 

電話の「受け手」と呼ばれるスタッフは、子どもが自覚のないまま性的被害・性的虐待を受けている事実がわかったとき、本人が被害を認識するように、よりそって対応します。子ども自身が問題のありかを認識して解決を求めてくる相談とは違って、本人に自覚がなくてもかけられるチャイルドラインは、子どもにとって「話を聞いてくれる」「自分を受けとめてくれる」貴重な窓口になっています。

 

子どもからそのように信頼を得てきたのは、「ヒミツをまもる」「どんなこともいっしょに考える」「名乗らなくていい」「切りたいときは切っていい」という4つの原則が貫かれてきたからであり、非営利の民間組織であればこそできたことといえます。

 

そこで質問です。このような活動について、区の評価はいかがでしょうか。うかがいます。

 

チャイルドラインは市民のボランティア活動により運営されていますが、普及・啓発には行政の支援が欠かせません。当区でもチャイルドラインのPRカードが、教育委員会をとおして学校で子どもたちに配布されています。区立小学校全校の4年生と6年生を対象に、合計2,886枚、中学校の全学年生徒に6,409枚、合計12,260枚が昨年秋に配られました。(カード実物と拡大版を示す)

 

杉並区内にはチャイルドラインの活動組織がないため、これらは中野区内の活動団体が負担し、中野経由で配られています。杉並区内の子どもがかけるチャイルドラインへのフリーダイヤル電話は、他地域のボランティアが受け、全国組織であるチャイルドライン支援センターが通話料を負担しています。

 

フリーダイヤル導入はアクセス数を飛躍的に伸ばしましたが、同時に担い手側の経費負担も大きくしました。この事業にかかる経費はすべて担い手側が負担するケースがほとんどであるため、どこも苦しい経営状況を強いられています。「受け手」のスタッフは無償であるばかりか、運営費も自腹を切って活動を支えています。場所の確保、電話の設置、受け手の研修費、先ほどのPRカード代をふくめ普及・啓発にかかわる経費など、通話料以外はすべて持ち出しで活動が行われます。最大の負担は場所代で、活動継続が困難になる原因の多くが設置場所の家賃の支払いです。

 

チャイルドラインの事業は、行政が介入しないことで活動の独立性が担保されることは確かです。けれども、これを子どもにとって必要なしくみと評価するなら、活動に対する公的な援助の手が差しのべられるべきではないでしょうか。

 

実はいま、杉並区内でもチャイルドライン活動組織を立ち上げようという動きが始まりつつあります。現在16時から21時までが受け付け時間帯ですが、日曜日は活動を休みとしている地域が多いため、「かけてもつながらない」子どもが月曜から土曜日までは約20%から30%であるのに対し日曜日は60%になります。杉並での活動が実現し日曜日でも受け付けることになれば、この状況を改善することができます。

 

もしこれを区が支援すれば、それはこの動きを進める力になり、間接的にでも区のシステムでは拾えなかった子どものSOSや子どもを取り巻く問題を把握できることにもなります。正しい現状認識は行政ニーズを導き出すために欠かせません。子どもの最善の利益を追求するために、区はこの動きを支援すべきと考えます。いかがでしょうか。最後の質問として、おたずねします。

 

タイガーマスク、そして伊達直人の贈り物は、自分の名誉のためでなく誰かの幸せのために何かをしたい、という多くの心ある人の気もちを目覚めさせ、これが日本にも寄付の文化が根付くきっかけになるのかもしれない、という期待を抱かせてくれました。子どもの権利を守ろうとする市民の活動が継続するためにも、善意の寄付がもっと気軽に集まり、生かされるような社会にしていきたいと考えつつ、私の質問を終わります。

区議会第1回定例会一般質問 2011.2.15.市橋綾子

私は、区議会・生活者ネットワークの一員としまして、1.水鳥の棲む水辺づくりについて、2.自転車のまちづくりについて、以上2項目について質問いたします。

 

まず、最初の項目「水鳥の棲む水辺づくり」についてうかがいます。

杉並はご存じのように、東京の河川として代表される神田川の上流域に位置し、神田川、善福寺川、妙正寺川の3本の川が流れる神田川の流域面積が一番広い自治体です。

 

私は、「川を地域のオアシスに!」を合言葉に、川に親しむくらしをこの杉並区にとりもどしたいと、地域の川・水・みどりに関する活動団体の方たちとともに活動してきました。杉並区は、将来像を「区民が創る『みどりの都市』杉並」を掲げ、そのなかで「水辺をよみがえらせ みどりのまちをつくろう」を目標に、これまで歩んできました。現在、田中新区長のもと、新しい基本構想づくりが始まりましたが、今後もこの歩みがさらに着実にすすめられるような議論を期待し、川への思い入れを持つ一人として質問いたします。

 

このたび、新しい基本構想づくりにむけた区民アンケートの結果が報告されました。10年後もあなたが住み続けたいと思うまちにするためにはどんなことが必要か、という問に対し、介護・医療、防犯、災害対策に続き5位に「水辺・みどりの保全・創出」が入りました。また、大切にしたい杉並の魅力として

「水辺・みどり」が上位に入っています。区民は、杉並区の自然環境を誇りに思い、うるおいのある憩えるまちに暮らしたいと思っていることがわかります。

今回のアンケートの結果である水とみどりへの高い区民意識に対し、区長はどのようなお考えをお持ちでしょうか、伺います。

 

先日2月5日に開催されました「水鳥の棲む水辺づくり創出事業」シンポジウムに関連して2点伺います。

「水鳥の棲む水辺づくり創出事業」は2008年から区が取り組みを始めたもので、杉並区だけを流れる善福寺川において、水鳥に着目しながらうるおいと安らぎのある水辺環境を再生・創出することを目的にした事業です。この事業を多くの人に知ってもらい一緒にすすめていこうと毎年シンポジウムが開催され、先日3回目が西荻地域区民センターでありました。私も毎回参加していますが、今回も200名を超える参加があり、この事業への関心が高いことがわかります。

このように区民の関心が高く、杉並区の特徴である豊かな水辺を生かす「水鳥の棲む水辺創出事業」を今後も継続して取り組んでいくべきと考えますが、区長のお考えを伺います。

 

今回のシンポジウムでは善福寺1丁目にある井荻小学校6年生の学習発表がありました。子どもの参加はシンポジウム始まって以来、初めてのことです。井荻小学校では4年生から卒業までの3年間、善福寺川の清掃活動を通じて川の中の動植物や、善福寺公園に来る野鳥の観察を続けています。そのなかで、子どもたちの「川が臭いです」という実感こもった発表がありました。なぜ川が臭いのか。河川への下水の流入が問題であることに気づいた子どもたちが、当日のパネラーである都や区の担当者に「下水を川に入れないでください」と要望する場面に会場から賛意を表す大きな拍手がおこっていました。

 

2011年度の予算編成を、「質の高い住宅都市『杉並』をめざす」と掲げている当区においては、洪水対策とともに河川への下水流入問題を解決する必要があると考えます。区として井荻小の子どもたちの要望をどう受け止めたのでしょうか、伺います。また、区は子どもたちの声を受けて、東京都下水道局に分流式下水道へのつくりかえなど、問題解決を図るよう改めて要望すべきと考えますがいかがでしょうか、お答えください。

 

下水流入問題の解決策の1つに雨水の「貯留・浸透」があります。

そこで雨水の貯留と浸透について4点うかがいます。

まず雨水浸透ますについてです。

当区では住宅に雨水浸透ますを設置する場合、新築、既存に関わらず助成を行っていますが、実績として年間何件の浸透ますが設置されているのでしょうか。雨水流出抑制を着実にすすめるためには浸透ます設置の数値目標をたてて行うことが必要と考えますがいかがでしょうか、あわせて伺います。

 

2点目、「貯留」の位置付けについてです。

当区の雨水流出抑制のパンフレットには、浸透策として浸透ますをはじめ、透水性舗装、浸透トレンチ、浸透側溝など「浸透」について丁寧に説明されています。しかし、「浸透」の説明に比べて、「貯留」は地下貯留槽だけの紹介が1か所あるだけです。普通の住宅でもそれほど大掛かりな工事を必要とせずに設置できる雨水貯留タンクの説明はどこにもありません。「浸透」は地下水の涵養といった水循環を図る環境対策であるとともに、雨水を一気に下水管に流さないための雨水流出抑制策です。では「貯留」はどうでしょうか。雨水を貯めて生活用水に利用する「貯留」は循環型社会にそった環境対策であるとともに、こちらも雨水を一気に下水管に流さないための雨水流出抑制策だと考えます。

広報すぎなみでも「水害に強いまちづくり」として浸透・貯留がともに紹介されるようになったことは評価をするものですが、雨水流出抑制のパンフレットにおいても「浸透」だけではなく「貯留」、それも地下貯留槽だけでなく貯留タンクも同様に載せるべきと考えます。そもそも、区として貯留の効果をどうとらえておられるか、伺います。

 

3点目、雨水貯留の助成について伺います。

善福寺川の上流域、荻窪中学校前の原寺分橋の下に大きな湧水ポイントがあります。湧水脇の護岸には大きな雨水の吐き口があり、武蔵野市に降った雨がここから出てきます。武蔵野市も合流式下水道ですので下水と一緒になって流れ込むため、この周辺にお住まいの方たちは悪臭にずっと悩んでこられました。

 

これまで、私ども生活者ネットワークの議員は代々、東京都の下水道局や武蔵野市の下水道部を訪ね、原寺分橋下の吐き口に武蔵野市の下水を流さないでほしいと何度も訴えてきました。武蔵野市はこのたび、下水の希釈率が低い一番汚れている初期雨水を合計で1万1200立方メートル貯留する雨水貯留槽を2か所に設置することを決めました。これは、原寺分橋の吐き口から年に約50回流出するとされる回数のうちの半分、26回相当を改善する計画だそうです。また、同市は雨水浸透ますだけでなく、雨水貯留タンクの設置に助成を始めており、加えて来年度からは新築時の雨水浸透ます設置を義務化されると伺っています。雨水吐き口からの下水流出防止策を他市に依存するだけで、当区は知らん顔でよいわけはありません。善福寺川の雨水吐き口68か所のうち、武蔵野市からの2か所を除く66か所の吐き口からは、杉並区民が出した汚水が流出するわけで、当区としても、新築時の雨水浸透ますの設置の「お願い」だけではなく義務化をすべきと考えます。

 

しかし、先ずは「貯留」です。当区では、小中学校の校庭に雨水貯留槽を計画的に設置しており、いま3分の1の23校が終わりました。1年に2校ずつ設置される計画ですので残り44校が完了するまでにあと20年以上かかります。スピードアップを望むものですが、それを補えるのが民間です。家庭用の雨水貯留タンクの平均的な容量は100から200リットルと1戸あたりにすれば少ない量ですが、たとえば200リットルタンクを上流域1000世帯に入れれば学校のプール半分以上の流出抑制になり、十分洪水対策にも下水流出抑制にもなる量です。すでに都内10区4市が雨水貯留タンクへの設置助成を行っています。当区としても、井荻小の子どもたちの声にこたえる必要があると考えます。一般家庭に雨水貯留タンクの設置を促すために当区としても助成をすべきと考えますがいかがでしょうか、伺います。

 

4点目、雨水貯留・浸透の広報について伺います。

毎年、善福寺川をはじめとする川の活動団体が合同で「善福寺川フォーラム」を開催し、雨天時の河川への下水流出問題を取り上げています。昨年の第11回目は「善福寺川復活のカギは下水道」をテーマに下水道の専門家4名と区の担当者を交えたパネルディスカッションが行われました。毎回、参加者は河川が抱える合流式下水道の問題に驚かれてお帰りになる、つまりご存じない方が多いという状況です。これまで区は、雨の時期に区報により雨水の貯留・浸透を呼び掛けており、一定の評価をするものですが区報だけでは足りません。

 

「雨水浸透ますの設置件数 世界一」と言われている小金井市では、庁舎内に雨水浸透ますの現物の展示がされ、市民にとって身近なものになっているそうです。当区においても区庁舎や洪水が多発する地域の区民センターなどで、河川への下水流出問題の掲示とともに雨水浸透ますや貯留タンクの常設展示をするなど広報の強化が必要と考えるところですがいかがかでしょうか、お答えください。

 

次に済美公園の親水テラスについて伺います。

縄文の時代から人は水辺とともにあり、少しでも水辺に近づきたいと願ってきました。しかし、川のすぐそばまで多くの人が暮らすようになり、洪水対策が優先された結果、川は深く掘り下げられ、護岸や川床がコンクリートで固められて、人々は川に背を向けて暮らすようになってしまいました。しかし、近年は水辺に近づきたいという人々の声により、水面近くまで降りられる親水テラスがあちこちの河川につくられるようになってきました。当区でも昨年、善福寺川に面した区立済美公園と一体となった親水テラスがつくられました。周辺住民の方たちの参加で公園の案がつくられ、工事が行われたのですが、完成するころになって予想していなかった光景が現れ、住民の方からは怒りと落胆の声が私のところに寄せられています。

 

親水テラスの対岸、つまり正面に雨水の吐き口が現れ、親水テラスというより雨水吐き口観覧テラスと言った方がよい状況になっています。その結果、雨の後は、川の中の植物やテラス近くに汚物が滞留するなどして、とても親水テラスを楽しめる状況ではありません。区はこういう状況になることを事前に把握していらっしゃらなかったのでしょうか。区は都に対して、雨水吐き口を下流側に移設することを要望すべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解をお示しください。

 

この項目の最後の質問です。

東京都が2006年に策定した「10年後の東京」が計画期間の折り返し地点に入ることから、昨年12月「実行プログラム2011」を発表しました。その主な事業に、「隅田川の再生」事業があげられています。水の都(みやこ)東京として象徴的な河川である隅田川の再生事業の成否は、隅田川に注ぎ込む神田川、なかでも神田川水系全体で雨水吐き口335個、その2割にあたる68個がある善福寺川、つまり杉並区の取組にかかっていると言っても過言ではありません。神田川上流域自治体の首長として、下水流出問題をどうお考えか、伺います。

 

東京都が策定した先ほどの「実行プログラム2011」において、ゲリラ豪雨による浸水被害を軽減することがあげられました。都が計画したままになっている善福寺川上流域への雨水貯留管の早期設置をのぞむものです。

 

次に2つ目の項目、自転車のまちづくりについて伺います。

私たちの暮らしに身近な乗り物である自転車は、人力だけで動くという点から徒歩とならんで最も原始的な移動手段で、そのため環境に負荷をかけない健康にもよい乗り物だと言われています。私も、年間通じて自転車で区内を走り回る自転車愛用者の一人として、四季折々の風を受けながら自転車での移動を楽しんでいます。

私は、自動車に依存しすぎてきた社会から脱却をせねばならないとの思いと、質の高い住宅都市は歩行者が楽しく散歩や買い物ができるまち、自転車が自動車に脅かされずに快適に走れるまちにしたいという思いを持つ者として、今回自転車のまちづくりについて質問をいたします。

 

自転車のまちづくりをめざして具体的な施策として策定された「杉並区自転車利用行動計画」の計画期間である2010年を迎えています。自転車のまちづくりに向けての行動計画として、1.歩くことや適正な自転車利用の促進、2.歩行者・自転車利用者のための道路環境づくり、3.利用しやすい自転車駐車場の整備、4.放置自転車のない安全で快適なまちづくり、5.自転車利用のルールの遵守・マナーの向上、6.自転車のまちづくりを進めるための体制づくり、が掲げられています。これらの計画の達成度、そして課題はなにか。また、今後の行動計画づくりをどう進めていかれるのか、スケジュールについてもお示しください。

 

東京都の「10年後の東京」計画に対するインターネットモニターアンケートの結果が公表されました。計画の実現に向けた施策展開への関心事が「高齢者への対応」の57%をわずかに抜いて、「自転車走行道路について」が58%という結果でした。当区においても基本構想づくりに関するアンケートで住みよいまちにするための意見に「自転車の走行のマナーの向上」があげられています。いずれも、歩行者が安心して歩け、自転車が安全に走れるまちづくりを望む声です。これらの結果を新たに策定する基本構想に反映させるべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

自転車等駐車対策協議会について2点伺います。

杉並区では、自転車法の規定に基づき自転車等駐車対策協議会を設置しておられます。この規定は「協議会を置くことができる」とするもので、23区の中でもこの協議会を持つ自治体は8区しかありません。当区における自転車に関する課題への積極的な取り組みを評価するものですが、この協議会の目的と目標、これまでの到達点をお示しください。

 

これまで、着実に放置自転車削減に向けて目標数値を定め、達成してこられたこと、駐輪場の設置も区立だけではなく、JRなど鉄道事業者、駅近くの土地所有者による協力も得ながら収容台数を増やしてきたことなど、自転車等駐車対策協議会や区の取り組みを評価するものです。しかし、今新たな課題として、買い物客の短時間駐輪問題や、歩行者との事故が増えている問題があげられ、2009年に「自転車利用総合計画」が改定されたところです。これらを重要な課題ととらえ、課題別分科会の設置やPTA関係の方の参加など、自転車等駐輪対策協議会の運営方法やメンバーの見直しなどにより、これらの課題解決を図っていくべきと考えますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。

 

自転車はいまや私たちの生活になくてはならないもの、質の高い住宅都市になくてはならない乗り物であるにもかかわらず、近年の自転車事故の増加、自転車が原因の死亡事故の増加により、なかなか自転車の優れた点が評価されないのが残念でなりません。

今回の予算編成方針の中に、「交通不便地域に新たなコミュニティバスのあり方について調査・検討をする」とありました。昨年の予算特別委員会でも申し上げましたが、コミュニティバスに絞っての調査検討の前に、区民の移動・外出を全体として捉える必要があるのではないでしょうか。自転車も移動手段の1つとして捉え、高齢者・障がい者を含むだれもが利用しやすい交通体系を示すのが先であると考えます。2002年策定の「まちづくり基本方針」に「総合的な交通計画の策定」があげられているものの、まだ策定されていない状況です。いま、まさにまちづくり基本方針が見直されようとしているわけで、この際まず地域の公共交通計画を策定し、自転車、福祉交通、交通事業総体の施策体系を示していくことが必要であることを申しあげまして質問を終わります。

第4回定例会一般質問    2010.11.22 小松久子

成年後見制度について

 私は区議会・生活者ネットワークの一員として、成年後見制度について質問いたします。

 今年の第2回定例会で、私は在宅で高齢者や障がい者の家族の介護を担う、介護者をめぐる問題について採り上げましたが、今回は高齢者や障がい者の権利を擁護するしくみとしての成年後見制度について質問いたします。

成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神疾患など、何らかの精神上の障がいによって判断能力が十分でない人の生活を、おもに財産保護の面から支援する制度です。この制度を利用することにより、悪徳商法などの被害から本人を守るため不当な契約を取り消したり、介護が必要なときに本人に代わって介護事業者との契約を結んだり、というように、家庭裁判所が「成年後見人」として選任した後見人等が、本人の意思を尊重しつつ生活に必要な支援を行うことができます。

介護保険制度と同時の2000年にこの制度はスタートしました。それまでの禁治産制度は、「禁治産者、準禁治産者」という差別的な用語からもわかるように、判断力の衰えた人の尊厳や人権についての配慮を欠いたまま明治以来100年以上にわたって続いていたものですが、これを廃止し、新たな権利擁護システムとして法整備されたものです。

 

その施行からちょうど10年たち節目にあたる今年、先の10月には横浜で「成年後見法世界会議」が初めて開かれ、今後の成年後見のあり方をめぐって3日間、世界16の国と地域から集まった参加者500人が議論を交わしました。日本では、人口当たりの成年後見制度利用者が、ドイツなどに比べて10分の1に過ぎないことが指摘され、また親族による後見が全体の6割から7割を占める日本と、公的なシステムとして地域に根を下ろした欧米の後見先進国との違いも明らかになり、閉幕の際、「横浜宣言」として、これから適切な利用をすすめていくことが提起されました。

高齢化の進む杉並区においても、成年後見制度が、地域でくらす区民の生活の安心に役立つしくみとして、もっと身近な存在となっていくことを願う立場から、今回質問いたします。

 成年後見制度には、あらかじめ本人が任意後見人を選んでおいて判断能力が不十分になったときに支援を受ける「任意後見」と、本人自身や家族・親族や区市町村長が家庭裁判所に申し立てを行い裁判所の審判によって選任される「法定後見」の二つの制度があり、さらに法定後見には判断能力の程度により「補助」「保佐」「後見」の3つの類型があります。手遅れになる前の備えとして「任意後見」の利用が広がることが望ましいと思いますが、まず法定後見制度の利用を増やしていくことに主眼をおきつつ質問したいと思います。

はじめに、制度の推進体制として、当区で設置されている成年後見制度の推進機関、成年後見センターに関連してうかがいます。成年後見センターは4年前に設立され、現在は「あんさんぶる荻窪」の5階、社会福祉協議会のとなりに事務所が開設されています。この設立の目的と経緯について、1点目としておうかがいします。

2点目。成年後見センターは、区と杉並区社会福祉協議会を構成員とする一般社団法人となっています。その運営組織の形態、人員体制はどのようになっているのか。また、年間の事業経費、区と社協で負担している経費はそれぞれいくらか、併せて確認のためうかがいます。

 

3点目は、設立以来、この間の事業の実績とその評価について、区の見解をおうかがいします。

 4点目、社会福祉協議会との関連です。社協では、少し生活に不安を持つようになった人を日常的に支援する権利擁護のシステムとして、地域福祉権利擁護事業が実施されています。福祉サービスの利用を援助したり、日常的な金銭管理や書類を預かったりなどのサービスを有料で行う事業です。この福祉サービス利用者が成年後見制度の利用に移行し「被後見人」等となる場合があるかと思いますが、社協から成年後見センターへのスムーズな連携が求められます。どのように連携がとられるのか、おうかがいします。

 

先ほども述べたように、日本では子ども、兄弟姉妹、配偶者など親族が裁判所の手続きを経て後見人となるケースが、全体の65%前後を占めています。ところが親族後見人による財産横領事件や経済的虐待が毎年増えており、専門家は「親族であるがゆえに本人のための財産管理という認識が薄い。意図せずに犯罪者を生み出す環境になっている」と指摘しています。後見人になれば本人の財産が自由になるとの誤解があると思われます。

 

ドイツでは親族後見人の研修が各地域で実施されるといいますが、親族後見人に対してもサポートは必要です。成年後見センターは親族後見人が後見事務を行う上で、相談に応じるとしていますが、そのサポートはどのように行われているのでしょうか。おたずねします。

 また法人後見についても1点うかがっておきます。親族や第三者による後見の受任が困難な場合には、後見センターが法人後見を受任するとのことです。これはどのような場合でしょうか。お示しください。

 

さて、成年後見制度については、費用がかかること、申立人を必要とすることから、低所得者や親族がいない人には利用できないと誤解されている向きがあります。しかしこの制度は、社会的弱者の権利を擁護し困難から救済する社会福祉的な側面もある、ということができると思います。そのような観点から、以下おたずねします。

杉並区では区長申立てや後見費用の助成が実施されていますが、そのことが一般にはよく知られていません。周知が広がれば後見制度の利用が進むと考えられます。これらの制度に関連して、確認したいと思います。

 身寄りのない高齢者や障がい者の成年後見が必要になったとき、親族に代わって自治体の首長が申立人となり裁判所に申し立てを行う制度が首長申立てです。費用負担がかかるのをおそれて取り組みに消極的な自治体もあると聞いています。杉並区の区長申立て実績は「なかなかがんばっている」との評価を聞くところですが、区長申立てと費用助成について、まずしくみの概要を説明願います。また、当区の実績は何件か、お示しください。

2点目。財産もなく所得の低い被後見人が、区内から区外の高齢者施設などへ入所のため転出したことで住民登録が区内になくなったとき、しかも被後見人が後見人への報酬費を負担することが困難な場合に、以前は助成が受けられませんでしたが、制度の見直しにより費用助成が適用されるようになりました。このことにより後見制度の利用の間口が広がったと評価しています。今後さらに利用が広がっていくべきと考えますがいかがでしょうか。うかがいます。

 3点目。生活保護受給者の場合、「ケースワーカーが手続き等やってくれるので成年後見人は不要」として後見の利用を抑制することが他の自治体ではあると聞きます。財政負担を抑える目的だと思いますが、権利擁護システムの利用推進の意味から望ましいことではないと考えますが、当区ではいかがか、うかがいます。

 

さて、成年後見制度は、当事者の保護を図ることを主たる目的としながらも、その趣旨は、歳をとっても障がいがあっても、もてる能力を活用して自己決定権が尊重され、家庭や地域でくらし続けることができるような社会を形成するという、ノーマライゼーションの理念にあるといえます。それは人が助けたり、あるいは助けられたり、ということがあたりまえの地域社会であり、そのためには専門的知見や技術をもつ専門職後見人だけでなく、生活のこまごました相談にも対応しうるボランティア的な後見人、すなわち市民後見人の存在が必要となってくるはずです。

 

市民後見人は「社会貢献型後見人」とも呼ばれ、当区では、区民による市民後見人は「区民後見人」と呼ばれています。

117日、社協の主催で開かれた「すぎなみ地域福祉フォーラム」は、そのようなたすけあいの地域を考える意味で興味深い企画でした。私は区民後見人や生活支援員、あんしん協力員などを語り手とする分科会に参加しましたが、定員30人のところ50人ほども集まり、地域福祉権利擁護についての人びとの関心の高さに目を開かされる思いでした。参加者のひとり、団塊世代の区外の男性が「市民後見人の研修を修了して研さんも積んだが声がかからない。市民後見人の仕事をさせてほしい」と発言するのを聞いて、区内の研修修了者も同じように感じているのでは、という感想をもちました。

 ボランティアスピリットある人材の活用が図れないでいるとすれば、もったいないことです。ただ、法律知識や専門的知見が必要とされないことが前提であるため、申し立てる側からすればいまひとつ信頼を寄せることができないのかもしれませんし、はたで想像するほど簡単なことではないというのはわかる気がします。それでも、「新しい公共」の進展とともに市民後見人のニーズがこれから広がっていくことは確実です。

 

そのような認識に基づいて、区民後見人に関連して3点、質問いたします。

 

すぎなみ地域大学で区民後見人養成講座が1期だけ開かれました。このことに関連した質問です。この目的は何だったのか、確認します。また実施後の成果をどう評価されるのか。その後開かれていないのはなぜか、続けてうかがいます。

 養成講座では、高齢者施設でのボランティア体験や、障がい者の特性を把握・理解することなどが研修に組み込まれていました。研修修了者は後見センターが実施した実務研修を受け、社会福祉協議会のあんしんサポート事業の生活支援員として活動するなど、区民後見人をめざしつつ身近な地域での活動につなげておられると聞いています。

 「高齢者や障がい者のために働きたい」という市民の意思が尊重され生かされるためにも、区民後見人やその研修修了者が学習を継続し知見を深めたり技術の向上を図ったりすること、また、区民後見人同士の情報交換や交流することは重要です。そのような場をセンターは設けることが必要と考えます。いかがか、2点目としてうかがいます。

 3点目です。地域大学だけでなく、ここ数年の、他の機関での市民後見人養成研修終了者も多数と思われ、団塊世代の地域への還流にそって杉並でも今後さらに増えていくと思われます。区民後見人の活用と人材育成について、今後の展望といまの課題は何とお考えでしょうか。おうかがいします。

 

次に、障がい者に関する質問です。

 高齢者に比べ知的・精神障がい者の家族にとっての後見制度はさらに遠い存在になっています。制度のしくみがなかなか認知されない、それ以前に関心が持たれないのは、制度自体が分かりにくいこと、とくに「費用がいくらかかるのか見当がつかない」ことが最大の理由と思われ、いまの課題であることは事実です。しかし、知的・精神障がい者を日常的にケアしているのは多くが親御さんであり、その高齢化が進んでいる状況にあっては、本人だけでなくケアする側も判断能力の衰退が心配されるケースが少なくありません。

 成年後見センター主催により開かれている杉並区成年後見制度利用推進連絡会では、構成メンバーに障がい者福祉団体からも参加しておられますので、連絡会として障がい者やその家族に対して制度の浸透をつねに意識していただきたいと思います。

 区としては、障がい者の制度利用を増やしていくことについて、いまの現状と課題をどのように認識しておられるか、おうかがいします。

 

なお障がい者が被後見人となる場合は、後見人は障がいごとの特性を理解しておく必要がありますから、成年後見センターにはそのための支援が求められます。障がい者福祉の専門家などとの連携が、当然ながら必要です。

 一方、障がい者や家族に接する側の、福祉サービス事業所、ガイドヘルパーなどへも、高齢者やその家族に接する機会の多いケアマネージャー同様に制度の周知や啓発が必要ですがいかがでしょうか。見解をうかがいます。

 ところで、内閣府「障がい者制度改革推進会議」では、先ごろ、精神保健福祉法における精神障がい者の保護者制度を抜本的に見直す方針が示されました。

 

保護者制度とは、医師から精神疾患の診断がされたら必ず「保護者」をつけなければならない、という制度です。保護者になる人は、優先順に、成年後見人または保佐人、配偶者、親権者、その他の家庭裁判所が選任する親族、となっていますが、実際には後見人・保佐人にしても親族が受任することがほとんどであり、圧倒的に多いのは親です。保護者は本人を一生監視し続けるよう強制されますが、その根底にあるのは「精神障がい者は見張っていなければならない」という差別と偏見意識以外の何物でもありません。

 

いま当事者や家族たちの、保護者制度の廃止を求める声が大きくなっています。障がい者の権利擁護の観点から「廃止」は必然的な流れです。そして、この流れと併行して第三者の成年後見人の登用が進められるべきと考えます。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 

高齢社会がこれからますます進んでいくにあたり、任意後見ももっと活用されるべきですが、その前に成年後見制度に対する周知が広がらなければ話は始まりません。今年9月の休日に区と後見センター、社協や外部の他団体もふくめての主催により「成年後見制度・遺言・相続相談会」が開かれ、多くの相談者が来訪されたと聞いています。毎年開かれているとのことですが、このような活動はぜひ継続してくださるようお願いいたします。

 また、区と後見センターがキャンペーンを実施するなどし、制度を広める学習会や出前講座を地域包括支援センター、ゆうゆう館や図書館、地域区民センターなどあらゆる機関や施設を利用して開催することは有効と考えます。高齢者の消費者被害が頻発していますが、未然防止や、すでに受けてしまった被害の救済のために、消費者センターとしても成年後見制度について従来にも増して積極的な啓発に取り組むべきです。そしてその際、社会福祉士会、弁護士会、司法書士会、税理士会などの外部機関と協働で実施することは社会資源を生かす意味でも重要と考えます。いかがでしょうか。うかがいます。

なお区の保健福祉計画では現在のところ、制度の具体的な推進策が見られません。成年後見制度の推進計画を実施計画に位置づけるべきであり、今後検討されるものと期待しています。

 最後に、いまの成年後見制度の問題点についても言及しておきたいと思います。それは、被後見人になると自動的に選挙権を失うことです。判断能力が不十分といっても、すべての被後見人に投票する能力がないということはありません。投票は憲法で保障された権利であり、選挙における自己決定権を認めること、それはその人の尊厳を守るためにもたいせつなことだと思います。いまの制度は人権上重大な問題があるといわなければならず、できるだけ早い時期に法の下で改善すべきとこの場をお借りして申し上げ、私の質問を終わります。

2009年度決算についての意見 2010.10.7市橋綾子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、決算特別委員会に付託された2009年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し述べます。

 

当該年度は、歴史的な政権交代を経て国のしくみが大きく変化を遂げた一方、日本経済は、アメリカの金融危機に端を発したいわゆる「百年に一度」といわれる世界的な景気後退に陥りました。民間消費の堅調さを背景に持ち直し基調がみられたのも事実ですが、デフレを懸念する声は消えず、雇用は改善されないまま、完全失業率5.7%と過去最高水準を示した年でした。

 

当区においては、新公会計制度になって初めて、経常収支比率が適正水準とされる80%を超え、83.0%となりました。入ってくるものが減り、予算の執行率を高めていった結果と考えられますが、私どもは減税自治体構想の実現に走ったため、緊縮政策がとられた結果ではないかと思っております。いずれにしても、今後、注視していく必要があることは言うまでもありません。

 

限られた時間ではありましたが委員会での質疑をとおし、また、いただいた資料をもとに施策の執行状況について私ども会派で調査を行ったうえで判断した結果、一般会計ならびにすべての会計決算案に対し区議会生活者ネットワークは認定すべきものと判断しました。以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことなど生活者ネットワークの考え方を述べさせていただきます。

 

収入未済額について

一般会計のみならず、国民健康保険をはじめとする各保険事業会計においても、収入未済額が増大し続けています。全国どこの自治体にも現れている傾向ですが、当区においても効果的な解決策が見えません。ただ、この解決は低所得層からの徴収に求めるより、富裕層にある滞納者への対応を優先すべきです。区はこのことを念頭に、さらなる地道な徴収努力をされるよう求めます。

 

新しい公共について

今回の質疑の中で、「新しい公共」というキーワードがたびたび語られました。先の一般質問で、区長の言われる「新しい公共」は、内閣府の「新しい公共円卓会議」における見解とほぼ同じ考えであることが示されました。

 

「円卓会議」が今年6月に発表した「新しい公共宣言」は、その冒頭で「人びとの支えあいと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当事者の自発的な協働の場が『新しい公共』である。」とうたっています。公共サービスの担い手が行政以外の民間に広がることが「新しい公共」の姿なのではなく、「さまざまな当事者の自発的な協働の場」ということをしっかりと受け止めていただきたいと思います。

 

その意味で、NPOなどの市民活動に対して、その自発性の芽を育て、行政もともに育ちあうというパートナーシップ型の区政を築いていきたいものです。杉並区では、他自治体に比して早くからNPO等の市民活動が活発に行われ、また行政側の取り組みも積極的に展開されてきました。その分ここへきて問題や課題も見えてきているように思います。今後市民と行政によるさまざまな協働の実践を積み重ねることで、「新しい公共」の風土を醸成していけるものと期待しています。

 

選挙管理委員会について

711日のトリプル選挙で大量の無効票が発生した事件は、記載台を4か所とすべきところを2か所にしたことが主たる原因であることを選挙管理委員会も認めておられます。そして今回、参院選の2枚の投票用紙がマニュアルとは逆の順で渡されていた投票所があったことも明らかになりました。選管には、期日前の投票所および当日の66か所の投票所で何があったのか、余すところなく解明したうえで、社会的規範に照らして区民が納得できるような総括がされるよう、あらためて強く求めます。

 

環境施策について

都の改正環境確保条例が今年度より施行され、温室効果ガスを基準年度より8%削減という、きわめて高い削減義務が区庁舎にも課せられました。しかし、目標達成に向けた区の具体策が明確に示されていません。もとより、この削減義務は、職員だけががんばることではなく、区民や事業者、もっといえば議会もともに参加すべきものです。具体策を目に見えるように提示くださいますようお願いします。

 

「漢字表記かかな表記か」ということについて、一言申しあげます。

「子ども・子育て行動計画」の「ども」の表記をかなとしたことを歓迎しています。「子ども」の「ども」はかな表記が一般的に定着し、近年は国の施策をはじめ公的な文書においても漢字表記をほとんど見ることはありません。これを区がいまさら漢字表記に変更するのであれば、ふれあい、みどり、すぎなみ、まちづくり、くらし、あんしん、などの言葉も漢字表記にしなければ整合がとれないのであり、「ども」をかな表記に戻したことは至極当然です。この際、「子供園」「子供読書活動推進計画」などの「供」の表記をできるだけ早い時期にかな書きに改めることを求めます。

 

最後に議会運営について

毎回申し上げていますが、予算は見込みのものであるのに対し、決算は行政が執行した税金を表したもので重要さの度合いは劣るものではありません。決算審議の時間は予算の審議時間一人6分より短い5分という状態では、とても、決算のチェックを大事にして行こうという議会の姿勢がうかがえるものではありません。審査中、予定時間以内に質疑が収まるよう、答弁時間の短縮を促す声がしばしば聞かれましたが、当初の時間設定に無理があったのだと思います。当委員会の冒頭で、他の委員から質問時間への指摘がありましたが、私ども区議会生活者ネットワークとしても決算の質問時間についてご一考いただきたい旨、申し添えまして、区議会生活者ネットワークの意見とします。

2010年区議会第3回定例会 小松久子の一般質問と答弁

【Q】 ● 区長は、職員に対しレポート提出を求めたと聞くが、レポートの内容はどのようなものだったか。それに対し区長はどのような感想を持たれたのか、伺う。

    ● 職員からのレポートを基本構想づくりにも反映させられるのでは。職員レポートをどのように活用される考えか。

    ● 区はこれまで、様々な行政評価の手法を取り入れてきたが、区長の評価は。特にその実用性について伺う。

     ● 新しい行政評価システムをつくろうとしているようだが、市民自治を進める観点から、区民による評価を新たな行政評価システムに取り入れることが必要だと考えるが、区長の見解を伺う。

     ● この4年間で区長自身が最もやりたいことは何か。

 

【A】  4年間の任期中に、区長として最もやりたいことは、杉並区を、暮らしやすい、より魅力のある、質の高い住宅都市として発展させること。その第一歩として、今後10年程度の近未来の杉並区のあるべき将来像と、その実現のための確かな道筋を示す、新たな基本構想と総合計画を策定していく。

     このような、新しい杉並区を築いていくためには、まず、これまでの区政や事業について、評価・検証を行うことが必要だ。そうした考えから、管理職をはじめとする職員に率直な意見を求めたところ、短期間にもかかわらず、多くの意見が提出された。このことを見ても職員の区政への意欲が感じられる。その内容も、職務上の課題から、これまでの区の組織運営や今後のあり方について、非常に率直な意見が寄せられており、大変興味深く、また、今後の区政運営に役立つものだ。こうした評価・検証が、行政内部で日常的に行われ、常に、区政運営の改善や政策の充実を図っていくことが重要。本区の行政評価システムは、行政内部での評価を基本に、外部の視点からの評価も加えたシステムとして、早い時期から実施され、その機能を果たしてきたと、評価している。

     そこで、今回実施する「杉並版事業仕分け」も、この行政評価システムを基本に行う。今後は、施行錯誤を行いつつ、区民の目線に立って、より実効性のある評価システムにしていく。

 

【Q】 ● 区長の考える「新しい公共」とはどのようなものか。新しい公共円卓会議がまとめた『宣言』と同じものか。

    
新たな基本構想を策定する中でこれまでの「協働」を検証することには賛同する。ここでは、協働の当事者でもある区民が検証する必要があると思うが、見解を伺う。

 

【A】 本区の「新しい公共」とは、質・量ともに拡大する公共サービスを適切に提供するために、豊かな協働の地域社会づくりを進めるものだ。こうした認識については、国と自治体との違いはあるが、「新しい公共円卓会議」と同様。

     この基本認識に立って、今後、新たな基本構想、総合計画の策定にあわせ、これからの杉並区の協働に関する計画をつくっていく。その検討に際して、既に様々な分野で公共サービスを担っているNPOや利用者の声もお聞きしながら進めていきたい。

 

【Q】 ● ESDについては2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」として議決されたが、学校教育におけるESDの認識について教育委員会はどのようにとらえているのか、伺う。

 

【A】  ESDとは、持続可能な発展のための教育であり、一人一人が、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、よりよい社会づくりに参画するための力をはぐくむことを目的とする教育である。

     これまでも学校教育では、総合的な学習の時間を中心に、環境保全や人権尊重などの課題を横断して取り扱い、地球規模で問題を認識するとともに、身近なことから行動し、解決する力の育成を図ってきた。

     近々、国立教育政策研究所から、教員向けの報告書が出されると聞いていますので、さらに研究を進めていく。

 

【Q】 ● エコスクールの取り組みをESDの観点から評価・検証することが必要と考えるがいかがか。

 

【A】  エコスクールの取り組みは、児童生徒だけでなく、教師、家庭、地域の方々も含めて、一人一人が持続可能な社会を創るために、身近なことから行動できる力をはぐくむことをねらいとして、「施設づくり」「学校運営」「環境教育」という3本の柱で推進してきた。今後、どのような観点で評価・検証を行うか、研究を重ねていく。

 

【Q】 ● 環境教育等の課題において、NPO等市民団体との協働を進めていくことが望ましいと考える。各校がアクセスできるようなツールの整備と併せて、教育委員会の見解を伺う。

 

【A】  すでに環境教育では、NPO等専門性の高い団体と連携、協力して実施されている。情報提供については、今年度済美教育センターにて、各校をつなぐネットワーク上で、学校教育への支援にかかわる外部人材情報をデータベース化し、各教員が常時検索できる機能を立ち上げた。今後、掲載情報を積極的に増やし、内容の充実を図っていく。

 

【Q】 ● 学校教育において、21世紀を生きる地球市民を育てるために、ESDにかかわる研修を実施する必要があると考えるがいかがか。

 

【A】  これまでも体験的な活動を通して、問題解決の力や社会とかかわる力など、ご指摘の考えに基づく研修が実施されてきた。今後も引き続き内容の充実に努めていく。

 

【Q】 ● 昨年度は11校、今年後は22校に学校司書が配置され、実績があがっていると聞くが、教育委員会はどのように認識しているのか。

 

【A】  学校司書は、児童・生徒が来館したくなるような魅力的な環境整備や、児童・生徒への読書相談、教師への選書補助等に取り組んでいる。

     いずれの配置校でも、図書館が常時開館され、児童・生徒の図書館利用の回数や貸し出し冊数が増加したり、図書館の活用により授業が充実したりするなど、着実にその成果を上げている。

 

【Q】 ● 平成26年度までに学校司書の全校配置を目指すということであるが、実施計画に位置づいていない。もっと早く全校に配置すべきであり、その計画を明確に示すべきであると考えるがいかがか。

 

【A】  学校司書の配置は、教育委員会が重点を置いて取り組んでいる施策であり、できる限り早い時期に全校配置が実現できるよう、引き続き努力していく。

 

 

【Q】 ● 学校図書館教育の充実のためには、図書の流通体制やセンターの支援体制を確立すべきと考えるが、電子ネットワークの整備スケジュールを含め、教育委員会の見解を伺う。

 

【A】  現状は、各学校のシステムからは、インターネットを通して地域図書館の図書情報を見ることはできるが、他校の情報を見ることはできず、ネットを通じた相互貸借もできない。物流についても、委託事業者による配送等、図書館から学校に配送する体制だけとなっている。こしたことから、昨年度改定した子供読書活動推進計画において、今後、学校図書館、区立図書館をネットワークで結び、図書情報の共有化を図るとともに、相互貸借システム及び配送システムの構築に向け検討すると定めた。

     なお、済美教育センターの支援体制については、平成21年度に組織改正が行われ、学校図書館運営の総合的な支援を行う「サポートデスク」を設置したので、今後、ノウハウの蓄積を図り、支援の充実を進めていく。

 

【Q】 ● 子供読書活動推進計画に示された「学校図書館運営計画」の作成状況と活用状況について伺う。

 

【A】  同計画は、現在小学校27校、中学校8校で作成されており、図書整備やボランティア活用、学校行事と関連付けた読書活動の推進、各教科における調べ学習の充実等、計画的な学校図書館の運営に生かしている。今後、新学習指導要領の完全実施に合わせ、23年度に小学校全校、24年度に中学校全校での作成を目指していく。

 

【Q】 ● 採用された22名の司書は、成果を上げようと努力していると聞くが、その身分はパートタイマーであり、現在の待遇は十分とは言えない。教育現場における重要な専門職として、待遇を改善すべきと考えるが、いかがか。

 

【A】  学校司書の勤務時間や報酬の支給にあたっては、その勤務内容に沿ってパートタイマーとして行っている。待遇の改善については、これまでも取り組んできているが、今後とも検討する。

2010年区議会第3回定例会 市橋綾子の一般質問と答弁

【Q】 ● 2009年度の保険福祉事業概要によれば、特定高齢者対象の介護予防ケアプラン作成数766人とあるが、特定高齢者の人数、実際に介護予防事業を利用した人は何人か。

    
NPO法人の調査では、特定高齢者の介護予防ケアプランを作成しない理由、また、プランをたてても介護予防事業を利用しない理由は、ニーズにあってないとしている。この状況を区としてはどうとらえているか。

 

【A】   特定高齢者の人数ですが、平成21年度は6,482人で、このうち延べ754人の方が、特定高齢者施策に参加しる。

     次に、介護予防ケアプランの作成が少ない理由は、特定高齢者と判定されても介護予防事業には参加したくないと考える方が大半だ。また、プランを立てても介護予防事業を利用しないとのご指摘だが、介護予防ケアプランは、事業に参加するときに作成するので、杉並区ではそういうことはない。 区としては、制度発足後、使いやすい事業となるよう、毎年見直しを行ってきており、今後も様々な工夫をしていきたいと考える。

 

【Q】 ● 特定高齢者となった方が、介護予防事業を利用しないときにも要支援・要介護とならないようなフォローが必要と考えるが、いかがか。

    ● 特定高齢者施策として行っている栄養改善教室への参加者が少ない、少ない理由を区としてどうとらえているか。

    ● 他の自治体では、特定高齢者施策の事業への参加者が少ないため、一般高齢者施策で事業を提供していると聞くが、当区においても見直しが必要と考えるが、いかがか。

 

【A】  介護予防事業を利用していない特定高齢者に対しては、地域包括支援センターから、様々な高齢者向けの事業を紹介するなど、介護予防事業への理解を深めてもらうよう、情報提供に努めている。

     栄養改善教室は低栄養状態にある高齢者を対象として、栄養状態の改善を目的としており、もともと対象となる特定高齢者が少ないことから、事業の参加者も少数にとどまっている状況にある。

     また、本区でも、特定高齢者の方が一般高齢者施策の事業に参加できる仕組みになっている。

 

【Q】 ● 社会参加や閉じこもり施策、介護予防の視点から効果があるといわれている会食サービスを区としても取組ん

ではどうか。

    
地域の介護予防拠点としてゆうゆう館があるが、その取組みの一つとしてゆうゆう館を会食サービスの会場としたらどうか。

 

【A】  食事をしながら、会話を楽しむことは、閉じこもり対策や介護予防に効果があると認識しており、区内にはいくつかの民間団体が、そのような取組みを自主的に行っている。すべてのゆうゆう館において、直ちに会食サービスを実施するのは、設備、担い手の問題等から困難な状況だが、今後、各団体や他自治体の取組み状況等を参考にしつつ、区としての考え方を整理していく。

 

【Q】 ● 21年度介護保険事業会計の介護予防関連歳出予算の執行状況を伺う。

 

【A】  平成21年度の決算では、当初予算額に対する介護予防関連事業の執行率は、96.2%である。

 

【Q】 ● 介護保険の要支援認定者のうち、実際に介護保険のサービスを利用している者は何人か。

                             ● 日常生活を円滑に行うためには、介護予防給付のサービスでは足りないと感じている利用者が多いが、区の認識

を伺う。

 

【A】   要支援認定者のうち、介護保険のサービスを利用している方は、本年5月末現在、3,393人で、利用率は

59%である。次に、予防給付では、「本人ができることはできる限り本人が行う」ことを基本に、原則ヘルパーが利用

者とともに行い、利用者の持っている機能をできる限り維持改善することを目指している。しかし、この主旨が、利

用者に十分PRできていないことが背景に考えられるので、今度はこの主旨が周知できるよう努めていく。

 

【Q】 ● 区は昨年度から外出支援サービスを実施したが、生活援助についても独自サービスを検討していくべきと考えるが、

いかがか。

 

【A】  区長が所信表明で述べたように、在宅介護者の高齢化や介護の長期化が進む中で、介護保険サービスだけでは要介護高齢者の在宅生活全般を支え切れないことは明白だ。区は、介護保険サービスを基本としながらも、配食サービスなど各種の日常生活支援サービスを実施しており、昨年度からは新たに、介護保険では対応しない外出支援サービスを開始した。今後も、区民や在宅介護に携わる方々の意見や要望を組み入れながら、要介護高齢者の在宅生活を支援するしくみとして、介護者の負担軽減策を含めた総合的な支援策を検討していく。

 

【Q】 ● 健康づくりと介護予防を繋ぎ、地域の様々な社会資源を連携させていくためには、5か所の保健センターが健康

づくりの拠点として担う役割は大きいものの、高齢者に対する視点が弱いと考えるが、いかがか。

    
保健センターが、例えば、ゆうゆう館で活動するNPOや市民団体等の地域資源とも協力し、連携を図っていくことが大切と考えるが、いかがか。

 

【A】  保健センターは各種健康講座や自主グループ活動支援など、区民に身近な健康づくり事業を実施しており、一方、高齢者対象の介護予防事業は、高齢者部門が所管している。なお、「ものわすれ相談」や「筋力アップ応援教室」等の介護予防事業は、保健所や保健センターの場も活用するなど、高齢者部門と保健部門との連携を図っている。

    また、今後も活動案内や情報提供も含め、健康づくりの視点から、ゆうゆう館で活動する団体等と、支援・協力を図っていく。

【Q】 ● ゆうゆう館が、NPO等に委託された協働事業の目的の一つに健康づくり(介護予防)があげられ、各館で様々な企画が進められている。ここにケア24や保健センターの持つ専門性や情報が有効に繋げられるべきであると考えるがいかがか。

 

【A】  協働事業を実施しているゆうゆう館では、NPO法人等の特色を生かした健康づくり事業が行われており、中には、既に地域包括支援センターと連携して共同事業を行っているゆうゆう館もある。今後は、更に、地域包括支援センターや保健センターとの連携を図り、ゆうゆう館における健康づくり事業の効果的な推進に努めていく。

 

【Q】 ● 地域包括支援センターケア24には、かなり広範囲にわたる業務内容があるが現状と課題は何か。

 

【A】   地域包括支援センターは、以前は在宅介護支援センターといい、介護保険制度が始まる以前からあり、制度発足後にさらに役割が増え、今では地域包括センターと名称を変えて現在に至っている。

     制度や名称を変更するたびに、地域の中で果たす役割もいろいろと変わってくるが、この間の高齢者不在問題の一連の対応の中で、関係者の話を聞くと、地域包括支援センターは随分と大きな役割を担っている。

     これから、高齢者の訪問面接調査のあり方検討会で議論していくが、調査や見守りの担い手をどう確保していくかという点で、地域包括支援センターの機能を強化していくことも、重要な論点になると考える。

 

【Q】 ● 業務内容の中に地域のネットワークづくりがあり、保健福祉サービスを総合的に利用できるよう様々な社会資源を結びつける役割が求められているが、十分機能しているか。

    
ケア24は区民にとって高齢者福祉の最も重要かつ身近な窓口である。ケア24を地域づくりの拠点として位置づけ、区の連携がより一層必要と考えるが、区の見解を伺う。

 

【A】  ケア24では、介護保険や福祉サービスの申請受付とともに、高齢者や介護者の多様な相談に対しても適切なサービスの利用や関係する窓口につながるよう専門性を生かした役割を発揮している。また、地域ケア会議やあんしん協力員の連絡会などの開催を通して、関係する方々との連携強化に向けた地域ネットワークづくりに努めている。

     区は、そうした活動を支援するため、ケア24の職員を対象に「地域づくり」研修を実施しており、個々の事例においても、訪問指導事業や老人福祉法、高齢者虐待防止法等に基づく支援などを通して連携した対応に努めている。

     また、定期的に開催するセンター長会、ブロック会などにおいても、ケア24との意見交換の場を設けているが、今後とも、日常的な連絡や情報共有の機会を十分に持ちながら、区としてもケア24との連携を一層強化していく。    

 

【Q】 ● 健康づくりや地域包括支援センターの地域づくりの視点を入れ、総合的な介護予防に取組むために、保健福祉計画に介護予防の考え方をしっかりと位置付け、施策の体系化と総合化を行うことが必要であると考えるが、いかがか。

 

【A】   区としては、介護予防事業について、現在でも保健福祉計画の中で、体系的に位置付けて実施している。

     今後の介護予防施策については、本年8月、国の要綱改正により、特定高齢者を把握する際の医師の診察や介護予防プラン作成を省略することも可能となったことを受け、特定高齢者の把握方法を含め、介護予防事業全般を見直すとともに、従来からの生きがい対策との整合性を図り、計画的に推進していく。