「こころの健康について」
【Q】 ● 精神疾患が五疾病のひとつになると、都の次期医療計画にも位置付けられることになる。地域医療として精神疾患への取り組みを位置付ける、また保健福祉計画への反映など、区の取り組みも求められると思うがいかがか。
【A】 さる7月6日の第19回社会保障審議会・医療部会は、医療計画に記載すべき疾病として精神疾患を加える方針を打ち出した。従来「がん・心疾患・脳卒中・糖尿病」の4疾病に精神疾患が加わる場合の影響は、東京都が策定する医療計画に明示され、それらに対応した医療連携体制が構築されることで、広範かつ継続的な医療が提供できるようになる。区の保健福祉計画への反映には、現在まだ不確定な要素も多いことから、国や都の動向を十分注視していく。
【Q】 ● 区が行っているゲートキーパー養成講座の趣旨とプログラムはどのようなものか。
また、成果はいかがか、伺う。
【A】 この講座は、直接窓口で区民から様々な相談を受ける、区やケア24、社会福祉協議会の職員等が、自殺予防に対する理解を深め、自殺のサインに早期に気づいて、適切な支援を行うことを目的とするもので、職員の資質の向上や関係機関の連携の強化が図られている。過去3年間で6回の講座を開催し、東京都中部総合精神保健福祉センターの精神科医師等を講師に迎え、相談の進め方など実践に即した研修を行い、延べ約350名が受講した。また、来年2月には、民生委員も含めた講座も予定している。
【Q】 ● 区は都のアウトリーチ事業を積極的に活用しているが、精神疾患があっても地域で安定して生活するために、区としてのアウトリーチの取り組みが求められる。相談支援事業所がイニシアティブをとるなど、アウトリーチの手法を使った取り組みを展開してはいかがか。
【A】 保健センターでは、未受診、治療中断などの相談ケースのうち、特に困難なものについて、アウトリーチ事業を今年度から本格実施している。今後の事業の成果等を検証しながら、対象者の選定や効果的な実施方法、保健センターと相談支援事業所の役割分担等について、検討していく。
【Q】 ● 区では、都と連携して退院促進に取り組んでいる。杉並区の地域移行の実績、計画と比較しての達成状況を伺う。
【A】 精神科病院からの退院促進の実績は、平成21年度3人、平成22年度1人である。障害福祉計画の目標数値は、両年度とも10人で、困難さが現れた数値である。
【Q】 ● 自立支援法改正により、来年4月から地域移行・地域定着支援事業に対する個別給付化が予定されている。これにより、どのような活用ができ、何が期待できるのか伺う。
【A】 厚生労働省から、未だ詳細が示されていないが、これにより、さまざまな事業主体が、地域定着支援事業に取り組めるだろうと期待している。
【Q】 ● 精神障がい者の家族から、病状が急変した場合の緊急対応ができるしくみが求められている。緊急受診ができる施設の確保など、救急体制について地域のネットワークを使った仕組みが必要と考えるがいかがか。
【A】 東京都では「精神科夜間休日診療事業」として、区部を3ブロックに分割し医療機関を設定している。夜間休日に緊急の対応が必要な場合は、東京都保健医療情報センターを経由して情報が医療機関など適切な機関に伝達され、必要に応じて診察が受けられる体制が整備されているが、それでも対応困難な事例が少なくないのが現状だ。今後も都と区の役割分担をふまえ、適切に対応していく。
【Q】 ● オブリガードでは、精神障がいの当事者が相談対応を担っているが、カウンセラーの人材としても本人のリカバリーのうえでも効果的と考える。意識的に人材と養成して活動をさらに推進すべきではないか。
【A】 ピアカウンセラーの養成講座には、平成21年度10名、平成22年度11名が参加し、ピア相談員、グループカウンセリング、外部講師などで活動していただいている。今後も、継続して人材の養成と活動を進めていく。
【Q】 ● 精神疾患の家族会や当事者の会は他の障害団体と同様に高齢化等の問題を抱えている。区は活動を支援すべきと考えるがいかがか。
【A】 区では、家族会に対して、リーフレットの展示等への協力や、新たな患者が出た場合に家族会を紹介する等の支援を行っている。また、当事者の会には保健センターを会場として提供し、保健師が参加して助言等を行っている。
【Q】 ● 障がい者の地域生活に関する調査では、精神障がい者の就労状況は、作業所、授産施設での仕事が過半数を占め、就労してもパート・アルバイトが多い。また、就労の継続に必要なこととして「定着支援など就労支援機関による支援」と「いつでも相談できる人や場所」が多く挙げられている。このような状況についての区の見解はいかがか。区として、精神障がい者の就労に向けてどのような取り組みがされているか伺う。
【A】 杉並区雇用支援事業団では、当事者への就労支援のほか、事業所・企業に働きかけ、障害者雇用の促進に取り組んでいる。昨年度就労者62人のうち、精神障害者は24人と伸びてきている。また、就労が継続できるよう、就職後の定着支援と相談の充実を図っているところで、今後とも、杉並区雇用支援事業団と連携して、障害者の就労に努めていく。
【Q】 ● 偏見をなくしていくには可能な限り若いうちから精神疾患を知り理解することが重要であり学校教育で実施すべきと考えるが、見解をうかがう。
【A】 小・中学校での精神疾患等への理解を深める学習は、児童・生徒の発達段階や学級の状況等を十分に考慮した上で進める必要がある。各学校において、偏見や差別のない社会、学校の実現に向けては、児童・生徒の人権意識を高める指導の充実を図っていく。
【Q】 ● 地域の精神保健福祉をすすめるため、保健師の人的充実など保健所の機能強化が必要と考えるがいかがか。
【A】 近年、複雑かつ困難な事例が増加しており、保健師の業務量は増大傾向にある。今後も区では業務の見直し、効率的な執行体制の確立、資質向上に努めていく。
【Q】 ● こころの病気についての理解を深める啓発事業を積極的に進めるべきだが、いかがか。
【A】 保健所・保健センターでは精神保健福祉の正しい知識の普及・啓発のため、区民および関係機関を対象とした「精神保健学級」の実施や「広報すぎなみ」への啓発記事の掲載などを行っている。更にうつ病対策としては、春・秋の自殺予防月間を中心に普及啓発をすすめており、街頭キャンペーン、講演会、映画の上映などを行っている。今後も積極的に普及啓発事業を推進していく。