第4回定例会一般質問 奥田雅子 2023.11.20

取り上げるテーマは 1.高齢者施策推進計画について、2.香りの害と書く「香害」についてです。

超高齢社会の進展や家族のあり方の変化、多様化するライフスタイルなどによって、高齢者に関する分野でも従来の縦割り行政では解決しきれない課題が増えています。これまで保健福祉計画をはじめとする保健福祉分野の各個別計画をもとに施策が進められてきましたが、昨今の多様な課題に対応しきれない問題や全体像が見えにくいという課題から、昨年、これまでの保健福祉分野の計画の統合・再編がなされました。私もかねがね複雑で全体像がわかりにくいと感じておりましたので、保健福祉計画の体系が整理され、とても分かりやすくなったと評価しています。各分野別計画の期間は法令等で定められた計画における期間との整合から、昨年度には「地域福祉計画」「子ども家庭計画」「健康医療計画」が策定され、今年度は障害者分野および高齢者分野の計画が策定されているところです。

そこで、今日は高齢者分野の計画について伺っていきます。

①高齢者施策推進計画は計画期間を2024~2026年度とする「高齢者保健福祉計画」と「介護保険事業計画」、「認知症施策推進計画」の3つの計画からなっていると理解しました。「認知症施策推進計画」は今回、新たな計画として出てきたようですが、どのような経緯で策定されたのか確認します。

②今年2023年度第2回介護保険運営協議会に出された高齢者施策推進計画のたたき台を見ると、計画の体系として5タウの取組方針が掲げられています。すなわち、「活力ある高齢社会と地域共生のまちの実現」を目標に「元気高齢者の社会参加の支援と環境整備の充実」「高齢者の健康づくり・介護予防の推進」「支援が必要な高齢者に対する見守り・支援体制と家族介護者支援の充実」「地域包括ケアシステムの推進・強化と認知症施策の推進」「介護サービス (在宅・施設)基盤の整備・充実」です。その計画体系と指標のそれぞれの主な取組みを見ると分野をまたがるものもありますが、庁内連携はどのように図っていくのか。また、地域包括支援センターなどの現場の声もしっかり吸い上げて反映してほしいと考えますがいかがか伺います。

これまでの区の主な取組みと課題について1.介護予防・フレイル予防、2.地域の見守り体制の充実、3.地域包括ケアの推進の3つの視点から質問します。

③‐1 まず、介護予防・フレイル予防について、これらの事業を行うことにより介護が必要となる時期を遅らせることはできるでしょうが、最後まで介護保険のお世話にならずに済む、いわゆるピンピンコロリはたったの3%と言われています。65歳以上で介護保険の認定を受けている人は全体の2割強と認識しています。そのほかの8割弱の区民がどのような予防を行っているか区として把握はしているのでしょうか。一般的に後期高齢者といわれる75歳を境に、心身の機能が自然と低下し、これまで行ってきた予防活動ができず、閉じこもりになる高齢者が増加することが広く知られていますが、杉並区の現状はどうか。区民の声を聴くと、後期高齢者の介護予防の活動は、歩いて行ける範囲または送迎があることが望まれているようですが、区はどのように認識していますか。高齢期の介護予防・フレイル予防の必要性は周知のことであり、実行可能な計画となるよう取り組んでほしいと思います。

③‐2‐1 2つ目の高齢者の見守り体制の充実施策には安心おたっしゃ訪問や高齢者緊急通報システム、高齢者安心コール、徘徊高齢者探索システム、高齢者の虐待通報窓口等、様々に行われていますが、これらの利用者数について区はどのように認識をしているか伺います。

③‐2-2 先日、高齢者がキーホルダーのようなプレイトにナンバーと、裏にはケア24の電話番号が記載されているものをお持ちでした。これは何かと聴くと、東ブロックのケア24の地域で取り組まれており、様々な事業所も参画している活動と聞きました。区としても把握をしている活動か伺います。

先に質問した区独自の施策より気軽に見守りを受けられ、本人の負担や家族の不安を軽減するものだとキーホルダーを持っている区民から聞きました。

またケア24の認知度は年々区民の間で進んではいますが、まだ知らない人も多い現状となっています。このキーホルダーを活用して、65歳になったらケア24にそのキーフォルダープレートをもらいに行こう、地域包括支援センター・ケア24のことを知っておいてもらおうという区全体のしくみにしていってはどうかと考えますがいかがか見解を伺います。

③‐3‐1 3つ目の地域包括ケアの推進ということでは、ケア24の事業改善と質の向上のために、毎年、全国統一評価指標にプラスして杉並区評価指標による事業評価と実地指導を行っていると認識していますが、地域包括支援センターの役割についてどのような点に重きを置いて評価・点検しているのか伺います。

③‐3‐2 ケア24は常に評価される立場にありますが、日ごろの業務の中で感じている課題や区としての地域包括ケアシステムの向かう方向について両者がお互いに話し合うような場はより良い地域づくりをしていくという観点から重要だと考えますが、そういう場はあるのでしょうか、お聞きします。

③‐3‐3地域包括ケアの推進の項目での今後の課題では、2025年問題や2040 年問題も見据えつつ、引き続き、区内 20ヶ所のケア24 に配置した、地域包括ケア推進員を核として、地域ケア会議等を通じた在宅医療・介護の連携強化と地域の支え合いによる生活支援体制の充実等により、 地域包括ケアシステムの推進・強化を図る必要があると総括していますが、地域ケア会議と地域ケア推進会議、さらには生活支援体制整備事業の第2層協議体の関係および特筆すべき具体的な活動例を教えてください。

次に認知症施策推進計画について3点伺います。

④‐1認知症施策推進計画はこの高齢者施策推進計画の中にどのように位置付けられるのか伺います。

④‐2 今年第2定での私の一般質問の答弁では、認知症介護研究・研修東京センターとの協定により、高齢者施策推進計画の策定に専門的な助言を得るとのことでしたが、具体的にどのような助言を受けたのかお聞きします。

④‐3 認知症施策において、これまでと変わる部分はあるか。あるとすれば、それはどのようなことか伺います。

⑤ 次に介護保険事業計画について

2021年度~2023年度の第8期介護保険事業計画は、新型コロナウイルスに翻弄された期間と重なり、それまでとは違った対策がされてきたと思います。高齢者の外出控えや感染をきっかけとした機能低下などが顕著に表れているのではないかと推察しますが、第8期をどう総括し、計画達成状況に対する区の認識を以下のポイントに沿って伺っていきます。

⑤‐1 介護認定に至るまでに時間がかかっているとの指摘があります。介護保険法の規定では、申請に対する処分は当該申請のあった日から30日以内にしなければならない。ただし、特別な理由がある場合には当該申請のあった日から30日以内に処理見込み期間とその理由を通知し、延期ができるとされていますが、ただし書きの通知となっているのはどのくらいあるのか、認定結果が30日を超えるケースとその割合について伺うとともに、そのことによる影響を区はどのように考えているのかお聞きします。

⑤‐2 訪問介護、デイサービス、ショートステイ等、使いたいサービスが使えるだけの介護サービスが充足していたのか、ケアマネやヘルパー不足が叫ばれる 中、減り続けている原因をどう分析しているのか伺います。

⑤‐3コロナ禍での介護事業所への支援は十分だったか、訪問や通所介護

事業所の閉鎖・倒産数と新規開設数をお聞きします。要支援と要介護の賃金格差のために、大規模事業所は要支援を受けたがらず、小規模事業所に要支援の依頼が多くなっていて、小規模事業所の経営を圧迫しているということはないでしょうか。こうした賃金格差を生じさせている国の政策の方向が地域に根差した小規模事業者を閉鎖に追い込むことになっているとの指摘もありますが、区の認識を伺います。

⑤‐4 要支援1・2は軽い人と見られがちですが、80歳を超えると認知症とま ではいかずとも判断力や理解力が低下し、多くのサポートを必要とする人は珍しくありません。要支援の認定は、回復する可能性があることから自立支援を原則にしていますが、何年も続けて要支援認定が出ている場合はもはや要支援ではないのではないか。訪問・通所サービスでは実質要介護認定と変わらない支援を、総合事業として行っていることは課題だと考えますが、区の認識を伺います。

⑤‐5 区は特養の整備状況について、第8期の目標は達成しており、2026年度までは緊急性の高い待機者は発生しないという見込みを示していますが、特養の申し込み状況を見ると一定の数があり、その中で緊急性があるなしを誰がどのように判断しているのでしょうか、その分析の上での見込みとなっているのか確認します。また、スタッフを確保できず、稼働していないベッドがあるとの話を聞きますが、区内特養の入所率の状況についても確認します。

⑥最近、有料老人ホームの建設がとても増えていると感じています。有料老人ホームには「介護付き」「住宅型」「健康型」と3パターンがあると認識していますが、現在の区内の有料老人ホームの数と種類の割合はどのようになっているのか確認します。また、特定施設入居者生活介護の保険給付費のここ5年の傾向を伺います。

⑦介護従事者の処遇改善は相変わらず課題となったままであり、全産業平均との月額賃金の差は処遇改善加算によって縮まってきたとは言え、まだ、4万とも6万ともいわれています。11月10日に閣議決定した補正予算案に緊急対策として介護職等の賃金を月6千円相当引き上げる措置を盛り込んだとありましたが、根本の解決には程遠い状況です。区は介護従事者への処遇改善について、何らかの手立てを検討すべきではないでしょうか、見解を伺います。

⑧また、介護保険制度は個人加入の保険であるにも関わらず、特養のホテルコストは家族の資産が勘案されたり、同居家族がいると生活援助はなかなか認められません。介護の社会化はどこに行ってしまったのでしょうか。介護離職やヤングケアラー、ダブルケアを誘発する要因にもなります。2022年の就業構造基本調査では介護離職者は年間10万人を超え、有業者のケアラーは364.6万人であり、働いている人の18人に1人は介護している労働者となっている状況です。経産省では「介護する有業者の内、仕事を主にするもの」をビジネスケアラーと定義し、このビジネスケアラーが2030年には家族を介護する人の内4割に当たる318万人に達するとする試算を公表し、労働生産性の低下などに伴う経済損失額は9兆円に上るとしています。家族の状況を十分にアセスメントして生活援助の量も決めていくべきだと考えますが、区ではこのような同居家族がビジネスケアラーの場合、どのような対応がなされているのか伺います。

⑨介護保険制度にはこうだったらいいのにということが色々ありますが、例えば、通院介助の場合、介護保険でできるのは診察券を出すところまでとなっています。それ以降は病院側の対応だという整理なのでしょうが、必ずしも病院側に十分な対応ができない場合も多く、そのため自費でのサービスを使うことになり、病院通いの多い高齢者にとって負担になっています。渋谷区では院内介助も介護保険でやれるようにしたと聞きましたが、杉並区の見解を伺います。

⑩現在、国で進められている改定案は史上最悪と言う専門家もおり、明るいことは何もないと私も感じています。今年末までに結論を出すと言われている利用料負担2割の対象者拡大、福祉用具の一部をレンタルから買取にする、介護施設にロボット導入して職員減らし等が導入されたら、高齢者の暮らしにどのような変化をもたらすことになるのか区の見解をお聞きします。

⑪高額介護サービス費について、上限額を超えた分は申請により支給されると認識していますが、申請しそびれている高齢者も多々いるのではないかと懸念しています。杉並区の還付までの手続きはどのようになっているのか確認します。

⑫2022年度介護保険給付費準備基金が53億4349万余ありますが、この基金の目的と適正な額の考え方を確認します。

⑬超高齢社会は認知症社会だと言っても過言ではありません。2025年には730万人、高齢者に占める割合は20.6%になると言われており、今後どんどん右肩上がりで増えていくことは必至です。85歳以上になれば認知症でない人の方が少なくなります。しかし、介護保険制度は身体介護モデルのままで、認知症や独居に対応した制度になってないことが問題であり、抜本的な改革がない限り、私たちの暮らしが成り立たなくなることにとても不安を感じています。区としても相当の危機感をもって取り組んでいただきたいと考えますが見解を伺います。

⑭今後さらに進む超高齢化に伴い、保険料や利用料の区民の負担は増えますが、サービスは縮減され、介護従事者の処遇も十分ではなく人材不足と課題ばかりが目につきますが、どうすれば安心して暮らせる社会、安心して死ねる社会になるのか、区民と共に考えていかなくてはならないテーマだと思います。第9期では団塊の世代が皆さん75歳以上になる2025年を迎えることになりますが、様々な課題を次期計画にどう活かしていくのか、区の見解をお聞きします。

介護従事者がいなければ制度がどうあれ、人の受け皿はありません。エッセンシャルワーカーとして最前線で人の命と対峙する仕事に、この低賃金では新たな人材をどう増やしていけばよいのか。ケアワーカーの社会的評価を上げていくことに区としても主体的に取り組んでいただくことを最後に要望し、次のテーマに移ります。

次に、「香害」について質問します。

この問題は以前より何度か私や曽根文子が質問に取り上げてきたテーマであり、この間、区の消費者センターホームページの相談情報欄に配慮を呼びかけるメッセージが掲載され、ポスターのリンクを貼るなどしていただきました。しかし、相変わらず、香の害に悩まされているというご相談が寄せられてきます。

日本消費者連盟が事務局を務める香害をなくす連絡会の呼びかけにより、昨年8月10日に「香害をなくす議員の会」が発足し、全国の地方議員を中心に国会議員を含めて11月15日現在、118名が名前を連ねています。もちろん、私も曽根文子と共に、このネットワークに参加しています。

「香害」は昨日の朝日新聞に掲載されたように最近メディアでも取り上げられることが増えてきました。この問題がクローズアップされ出したのは日本消費者連盟が2017年に行った電話相談「香害110番」に多くの方から日常生活を送れないほどの苦しい症状を訴える声が寄せられたことや2019年12月から2020年3月31日まで「香害をなくす連絡会」が行った「香りの被害についてのアンケート」に9336人が回答し、その約8割が香り付き製品のニオイで頭痛や吐き気などの健康被害を受けているということがわかり、それらの取組を機に当事者や市民団体などが動き始めたことがきっかけで、社会問題化してきました。香害の本質は化学物質による被害、化学物質過敏症です。今や私たちの生活環境には様々な化学物質があふれかえり、それらを避けて暮らすことは不可能に近い状況です。最近の香り長持ちをウリにした商品はマイクロカプセルと言った目には見えないほどの微細な素材で香料を包み込み、洗濯によって服などに付着し、ちょっとした刺激や体温の上昇によって壊れてはじけるしくみになっています。繊維の奥まで入り込み、刺激がなければ何週間も何年も香りの粒が残ることから、香り長持ちと言われている所以です。この微細なマイクロカプセルは空気中にも漂い、私たちは知らず知らずのうちにそれを吸い込み肺に取り込んでしまっています。また、人体への影響のみならず、このマイクロカプセルは排水溝から川へ海へと流れ、マイクロプラスチックの海洋汚染の原因にもなっています。つまり化学物質とマイクロプラスチック、二重の問題がここにはあります。

また、最近では「無臭」を謳った商品や消臭・抗菌剤なども香りがないから問題ないかのような触れ込みもありますが、化学物質であることには変わりありません。化学物質過敏症は花粉症と同じように、これまで何でもなかった人が、その人のキャパを超えた化学物質に暴露することによって突然発症する病気です。一度発症すると、どんなに微量でも反応してしまうため、外出先で、公共交通機関で、職場や学校でと日常生活に多大な影響が出てくることで当事者は苦しんでいます。

これだけ香害の問題が顕在化してもなお、国の動きは鈍く、2021年に消費者庁、文科省、厚労省、経産省、環境省の5省庁連盟のポスターを作成したくらいです。しかし、ポスターを作成したということは、問題の存在を認めたことでもあり、その解決のためには化学物質の規制へと動いていくことが必要だと考えています。昨年の決特ではこのポスターによる周知・啓発をもとめ、保健所や保健センターでは掲示していただいたものと承知しています。しかし、もっと多くの区民の目に触れるところへの掲示も必要ですので改めて質問に取り上げた次第です。

①昨年の決特で質問した際には、化学物質過敏症含む「香害」の相談は消費者センターや区政相談課、環境課に寄せられており、保健センターでは香害の項目がないため相談数の把握をされていないとのことでした。その後の相談については同じ対応となっているのでしょうか確認します。

②2020年に曽根文子が学校現場への香りの害に対する認識や対策についてのアンケート結果をもとに一般質問をしました。実際に香害がもとで長時間教室にいられない生徒からの相談があったこともあり、困っている生徒がいることや使ってほしい製品情報を学校から保護者に提供し、協力を呼び掛ける対応もしていただいたこともありました。アンケート結果では他にも、困っていたという声もありました。その後、学校では香害や化学物質過敏症などの相談はありますか。また、あった場合はどのように対応されるのか伺います。

③保育園などでも子どもがまとってくる香りで保育士が体調を壊して保育に関われなくなったという事例も聞いています。保育現場でもそのような事例があちこちで起こっているのではないかと思いますが、区では把握しているでしょうか。

④この間の相談件数の推移としてはどのような傾向を示しているでしょうか。増えていますか。

⓹決特では他部署に渡る問題であり、実態を把握する意味でも相談窓口の連携及び取りまとめる部署を明確にするよう求めましたが、検討はされたのか確認します。

⑥現在、配慮を呼びかけるポスター掲示されている場所について伺います。

私は、子どもが乳幼児期から化学物質にさらされ続けることをとても懸念しています。そのため、特に保育園や幼稚園、学校、子ども・子育てプラザなどでの周知を徹底していただきたいです。中学生の化学物質過敏症当事者のデザインで日本消費者連盟が作成したかわいらしい熊のポスターなどを活用してもよいと思います。また、子ども関連施設以外でも多くの人が利用する区立施設などにもポスター掲示をするなどし、この問題を認識する人を広げていってほしいと思います。先ほど、ポスター掲示している場所をお聞きしましたが、5省庁連名のポスターは今年の夏に改定されています。当初、「その香り困っている人がいるかも?(クエスチョンマーク)」というキャッチだったものから「知ってください!!(ビックリマーク2つ)その香り困っている人もいます」と断定的な表現に変わり、当事者の気もちにより近づいたものになっています。消費者センターのHPのリンクは早速に差し替えていただきましたが、掲示していただいているところの貼替も含め、さらなる周知を最後に強く要望して、私の一般質問を終わります。

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