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生活者ネットすぎなみ110号(杉並北版)発行 2019.1.20

生活者ネットすぎなみ110号(杉並南版)発行 2019.1.20

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第1回定例会一般質問と答弁 そね文子 2019.2.15

「区立施設の省エネ性能を高め、自然の恵みを活かす取り組みについて」

Q1..施設の長寿命化を図り長期的に活用していくために、建物の効率的なエネルギー性能の優先順位の考え方を参考に、断熱・気密性を重視し、エアコン台数や稼働時間を最小限に抑えることで効果的なトータルコストの施設建設を進める必要がある。区の見解を問う。

A1.断熱性・気密性の高い施設を建設することは、空調効率化の向上によるランニングコストの抑制に加え、CO2の削減にもつながり重要なことと認識している。現在改築中の学校や設計中の区立施設においても断熱性のあるサッシを採用するなど、断熱性・気密性を考慮した施設づくりを進めている。しかし、断熱性・気密性を過度に追い求めればイニシャルコストが増大することになり、結果的にトータルコストが高くなる可能性がある。施設の用途や規模、使い方に応じて、断熱性のある資材や空調設備等を適切に採用し省エネ化を図ることが重要である。今後の施設建設においてはイニシャルコストとランニングコストのバランスを図りながらトータルコストを抑える効率的な施設づくりに取り組んでいく。

Q2.太陽光発電は都会で唯一発電できる仕組みであり、災害時の電源確保にもつながる。普及啓発の意味でも公共施設に太陽光発電を設置していくべきと考える。その際には発電状況などを見える化し、区民に再生エネルギーの取り組み状況が学べるようにしてほしいが区の見解を問う。

A2.太陽光発電の設置には維持管理も含めたコストや設置場所の確保など、区の全施設に設置することには課題がある。昨年竣工したウェルファーム杉並や現在建設中の桃井第二小学校や高円寺学園には設置する予定である。太陽光の発電状況については当該施設のロビーや昇降口などにモニターを設置し、発電量等をグラフや画像で分かりやすく表示することで見える化に取り組んでいる。

Q3.阿佐谷地域区民センター等複合施設については、光熱水費を抑制するため、建物の省エネ性能を高める視点をもって設計を見直すべきと考える。具体的には断熱・気密性を高めること、樹脂サッシの採用や庇やルーバーの設置を検討すべきと考えるが区の見解を問う。

A3.阿佐谷地域区民センター等複合施設は現在工事に向けて実施設計を進めているが、構造が鉄筋コンクリート造に加えて複層ガラスや部分的に二重サッシを採用するなど、断熱性・気密性を高めることを考慮しているが、引き続き庇等の設置も含め、コストや効果のバランスを考慮したうえで適切な省エネ対策に努める。

Q4.東京都は公立学校の体育館の空調設備と断熱改修に補助金を出すと聞いているが具体的な内容はどのようなものか。

A4. 都が新たに創設した補助制度では、国の上限額に都が独自に補助を上乗せし、その分を都負担、国庫補助相当分についても都が追加補助するものだ。この補助金は空調設備設置及び関連工事を対象としている。関連工事の具体的めメニューは示されていないが、断熱改修は関連工事として認められると考えている。

Q5.2012年にエコスクール事業検討委員会がこれまでの取り組みと今後のエコスクールのあり方を報告書としてまとめたが、これが杉並版エコスクールの考え方と方向性を示すものと考えてよいか。エコスクールの考え方や目的に賛同し、進めてほしいと考える。取り組みの進捗状況と報告書を継続的に出すなどして積極的に取り組んでほしいがいかがか。エコスクールメニューの中で現在設置が行われなくなった設備があるが、以前設置されたクールヒートトレンチやナイトパージなどは最適な形で使われているのか。現在ある絶日は最大限に活用して省エネに努めてほしいが、現状を確認したい。エコスクールメニューの中に雨水利用が入っていないのはなぜか。メニューに加えるべきと考える。また太陽光温水器は学校給食室の給湯において効率がよく安価で有効な設備であるがメニューにないのはなぜか。メニューに加えてほしいが見解を問う。

A5.杉並区版エコスクールが平成13年度に開始し、事業の目的や方針を示すものとしては平成24年度の報告書が最新のものである。取り組みの進捗状況については、屋上等の緑化、バルコニーによる日射遮へい、断熱・複層ガラスの導入、太陽光パネルの設置等、近年の改築校については着実にエコスクール化を進めてきた。今後も費用対効果を検証しながら改築を機にさらに推進していく。クールヒートトレンチ等の設備の有効活用については、空調設備の負荷軽減などに一定の効果が得られるものについては適切な維持管理のもとに運用している。エコスクールメニューに関して、雨水利用はメニューにはないが平成2年度から渇水対策として改築校に導入しており今後も継続していく。太陽熱温水器の給食室での利用については、短時間に大量の給湯を必要とすることから、太陽熱のみで賄うことができず、通常の給湯設備も併せて必要となり費用対効果の観点からエコスールメニューになじまないものと考える。

Q6.小中学校では教室の窓や扉を開けたままエアコンを使うなど、省エネにならない使用を目にする。体育館にエアコンを設置した後の運用については温暖化防止のための配慮が必要と考えるが見解を問う。

A6.エアコンの運用にあたっては、日々の温湿度などの気候条件に応じた利用を心掛け、必要最低限の使用に努めるとともに、随時カーテンの使用、出入り口や窓の開閉など適切な使い方について学校と協議の上、新たなエアコン運用手続きを定めるなど、省エネに配慮した運用に取り組んでいく。

第1回定例会一般質問と答弁 奥田雅子2019.2.15

【地域コミュニティ施設とその運営について】

Q1..直営の敬老会館時代から現在のゆうゆう館事業への経過を、区としてどのように評価しているか。

A1..敬老会館は高齢者の「憩いの場」として主にいきいきクラブなどが利用しており、貸施設的な運営で魅力ある事業メニューが少ないことから利用者の固定化が進んでいた。このためあり方の見直しを行い、「いきがい学びの場」「ふれあい交流の場」「健康づくりの場」の役割・機能を加え、NPO法人等との協働による施設管理・運営とするとともに、名称もゆうゆう館とした。その結果新たな3つの機能にふさわしく、多様な価値観を持つ高齢者のニーズにも応える講座やイベントが協働事業として展開され、利用者の拡充につながっている。また協働事業と受付業務等の一体的運営により、事業参加者が自主グループを作ったり、事業のスタッフとして活躍するなど高齢者の活動の拡充が図られ、まさに生涯現役社会の地域拠点となっている。さらに運営法人が地元の町会・自治会・商店会・民生委員やケア24などとの関係を構築することで、地域の資源として活用される施設にもなっている。

一方で、高齢者施設という性格上、夜間を含めた夜間の施設の有効利用、世代を超えた交流の拡充の点で限界があることが課題である。

Q2.そもそも指定管理者制度とはどのような制度なのか、また指定管理者制度を導入した背景について伺う。杉並区が最初に指定管理者制度を導入したのはいつ、どのような施設であったのか、またどのようなりゆうがあったのか伺う。その後、指定管理者制度を少しずつ導入しているようだが、現在の状況について、導入している公の施設の種類と数を伺う。

A2.指定管理者制度は公共施設や行政サービスへの民間参入を一層促進するという観点から、公の施設の管理・運営の門戸を民間事業者、NPO法人等の団体にも開き、民間経営のノウハウを生かした効率的な運営と住民サービスの向上を図るもの。区では平成16年4月から区立高井戸保育園に初めて指定管理者制度を導入した。その理由として、平成14年に区がまとめた今後の保育サービスのあり方の中で、公設民営化等民間活用の提起があり、これにより高井戸保育園改築後の管理について法人等への委託を検討していたことがあげられる。

この後、平成16年に杉並区指定管理者制度導入指針を策定し、他の施設への導入の可否を総合的な視点で検討してきた結果、現在保育園、体育施設、集会施設、図書館など全29施設で指定管理者制度を導入している。

Q3.地域コミュニティ施設の管理運営方法をどのように考えているか。

A3.施設の管理運営については指定管理者または業務委託を想定しているが、施設によって単独で整備する場合と、他の施設との併合や複合施設として整備する場合があるほか、施設の規模、実施する事業を踏まえ、適切な管理運営方法を検討している。

またゆうゆう館の機能を継承するため、これまで運営を担ってきたNPO法人等が引き続き運営に参入できるよう検討している。

Q4.計画にはゆうゆう館の機能継承という文言がちりばめられているが、「地域コミュニティ施設での事業実施という側面ではどのような議論になっているのか、最重視したいことは何か。地域コミュニティ施設については現在のゆうゆう館の実態を踏まえ、事業者や利用者のいけんにも十分耳を傾けてもらいたいと思う。地域コミュニティ施設は、所管の違う機能がひとつに複合化されることから、関係各課の連携が重要だ。現在どのような体制で議論され、最終的な担当書簡のあり方はどうなるのか。

A4.地域コミュニティ施設は再編対象となるゆうゆう館の機能や、児童館の乳幼児親子の居場所機能の継承を着実に行い、地域住民の身近な活動の場として、また世代を超えた交流・つながりが生まれる場としていくことが重要だと考える。

そうした観点から、現在区では行財政改革推進本部のもとに関係各課で構成する検討部会を設置し、管理運営方法の検討や継承する機能の整理、再編対象となるゆうゆう館の貸室のあり方を検討している。

区は「ゆうゆう館協働事業者意見交換会」等において計画に関する情報提供を行い、事業者の声を聞き、例えば東原地域コミュニティ施設の整備において町会長やゆうゆう館の利用者、児童館の利用者に意見を聞いている。今後も区民や事業者の意見を反映していく。

担当所管につぃては、地域課の所管のもと関係する各課が緊密に連携し、地域コミュニティの活性化につながるよう努める。

Q5.最後に、地域コミュニティ施設が区民にとって使いやすく、豊かな関係性が紡げる場所として機能するために、どのような施設にしてきたいのか区の見解を問う。

A5.(区長答弁)近年、隣人の顔も知らない「社会的孤立」が問題となり地域のつながりが弱まる中、区民に身近な場所で気軽に集うことのできる交流の場と、機会を提供することが大切と考える。7地域の拠点施設としての地域区民センターに加え、徒歩10分程度の身近な範囲に1か所を目安に、新たに地域コミュニティ施設を再編整備していく。集会室や多目的室などの貸室、だれでも利用できるラウンジを設置し、ゆうゆう館で実施している高齢者対象事業はもとより、ゆうゆう館や児童館の機能を継承していく。

 

【備災を促進するための支援について】

Q1..昨年いくつもの自然災害に見舞われた。職員は被災地に赴き、現地の支援を通じて多くを学んできたと思う。支援内容やそこでの経験は記録としてどのように蓄積されているのか。またそれらの記録を全体共有していくことが必要と考えるが区の見解を問う。

A1..平成30年7月豪雨では岡山県総社市で清掃・防災職員が災害廃棄物などに従事したほか、倉敷市で罹災証明発行業務や避難所の運営業務に従事した。北海道胆振東部地震では、厚真町に対して、保健師が健診業務再開や保健指導の準備を行いました。総社市支援は活動記録として全庁に配布し、自治体スクラム支援会議メンバーも共有した。また今後策定する「杉並区災害廃棄物処理計画」にも生かしていく。

被災地での経験や教訓は通常業務の改善に生かせるほか、当区が被災した時のために全庁的な情報共有に努めていく。

Q2.区内に防災公園が6か所あるが防災公園の定義はなにか。一般の公園と違うところはなにか。防災公園の整備は充足しているのか、今後増やしていくのか。

A2.防災公園は地震に起因して発生する市街地火災等の二次災害時における国民の生命、財産を守り、都市の防災構造を強化するために整備される広域防災拠点、避難地、避難路としての役割をもつ都市公園および緩衝緑地と定義されている。

区では比較的規模が大きく、放水銃・ゲートシャワー、耐震性貯水槽などの防災設備を備えた公園を防災公園としている。今後は広域避難場所の設置状況やまちづくり基本方針、地域防災計画との整合を図りながら拡充の可能性を検討する。

Q3.防災設備を活用した訓練を通して感じるのは、防災機能としてあるにもかかわらず、実際に使えない、使いにくいことが多い。今後防災公園をつくるまたは改修する場合は関係部署の連携が必要と考えるが区の考えを問う。公園を点検する際も、防災課とみどり公園課、管理事業者が一緒に行うことが必要だと考えるがいかがか。

A3.例えば下高井戸大空公園では、要望を受け消防団の訓練会場として使える直線道路を整備するなどしていますが、今後もこれまで以上に区民が利用しやすい施設や設備の導入・活用について関係部署間で連携を図りながら対応していく。

Q4.区でも粉ミルクの備蓄はしていると思うが、人工乳の配布について震災救援所のマニュアルなどにしめされているのか。また乳児を持つ親への対応はどのような体制でのぞむのか。災害発生直後は水やガス、電気が使えないと哺乳瓶の消毒ができないため紙コップ授乳が推奨されている。防災セミナーや子育てメッセなどの場でも紙コップ授乳知識として伝えていくことが必要と考えるが、区の考えを問う。液体ミルクの導入については区でも検討されていると思う。しかし消費期限が6か月や1年と備蓄品としては短いため、区として備蓄することが良いのか、または各自の備蓄を呼びかける一方で乳業会社と協定を結んで備蓄在庫を抱えない方法が現実的だと思うが、区の見解を問う。発災時直後は衛生面が悪化することから授乳環境を整えることが大事である。震災救援所の訓練でも女性の着替えの場とともに授乳所を確保する訓練が必要だと思うがいかがか。

A4.震災救援所管理標準マニュアルでは粉乳などの配布は女性スタッフによる運営を求めている。また妊産婦に対しては女性スタッフによる声かけなど、救援所全体として支える体制を構築している。授乳方法の周知に関しては、哺乳瓶が使用できない場合には代替品として使い捨て紙コップやスプーン、滅菌ガーゼを使用する方法がある。東京都発行の「東京くらし防災」などにも紹介されているのでこれらの資料を活用して防災イベントや訓練などの機会に区民に周知を図っていく。液体ミルクについては常温での保存や備蓄ができるメリットがある一方、備蓄スペースの確保、保存期間の問題があるので、保管委託契約なども視野に入れて比較検討を進めていく。授乳室や女性専用更衣室は震災救援所の運営上不可欠であり、直ちに開設することになっている授乳室や更衣室を含む部屋割り訓練を行っている。

Q5.日本栄養士会が「赤ちゃん防災プロジェクト」として妊産婦・乳児への栄養支援、避難所運用についてガイドラインを策定中と聞いている。この取り組みについての区の認識と見解を問う。

A5.「赤ちゃん防災プロジェクト」は日本栄養士会災害支援チームが災害時の乳児の命を守ることを目的に発足させたもので、国の省庁も後援している活動である。本年1月に「災害時における乳幼児の栄養支援の手引き」というガイドラインが発行された。これは災害時の乳幼児の栄養確保と保護の観点から、避難所の環境整備や母乳代替食品の備蓄や提供について専門的な立場からまとめられた有益なものと考える。

Q6.平常時の取り組みとして、横浜市では乳児を抱える親や妊婦を対象に「子育てママの防災おしゃべりサロン」を開催していると聞く。当区においても子ども・子育てプラザなどで妊婦や子育て家庭向けに、災害アドヴァイザーの講話や参加者同士の話し合いの機会を作り防災に対する意識を高めることを検討してはどうか。

A6.これまでも子ども・子育てプラザなどで、災害や犯罪から子どもを守るための講座等を行ってきている。今後こうした講座を開催する際には、学んだ内容をもとに参加者同士が意見交換する機会を設け、また区が発行してるリーフレット「知っておきたい!災害の備え」の活用も図り、家庭における防災意識を高めていくように取り組む。

Q7,公助の充実に取り組んできた区として、防災白書にある自助に対する意識の高まりに対しどのような感想を持っているか、またどのように対処するのか。これまで区は自助については区民にどのように伝えてきたのか。そのことは浸透しているのか区の認識を問う。

A7.防災白書平成30年版では自助、共助、公助の防災対策について何に重点を置くのかという問いに対して、過去の災害の教訓や想定される広域的な大規模災害における公助の限界への懸念などから、自助に対する意識が高まっていると分析しており、区も同様の認識である。一方杉並区民の防災行動については、防災訓練などの参加者が近年増加傾向にあるが、直近の「区民意識調査」の「家庭内で何らかの防災対策をしている」割合は83.9%とやや減少している。自助の意識の高まりと具体的な防災行動には若干の乖離が見られる。これまで区の取り組みとしてはハザードマップを活用して地域の災害リスクを理解し、避難行動や備蓄などについて家庭で話し合いが進むよう自助の取り組みを支援してきた。加えてこの度の地震被害シミュレーション結果の公表を地震災害を自分事として捉えるきっかけとしてもらえるよう、減震ブレーカー設置支援拡大の検討や在宅避難に必要な物資のあっ旋品目の追加、日常備蓄や在宅避難生活に関するセミナー開催などの対策を進めていく。自助意識の高まりを防災・減災対策を前進させるチャンスと捉え、取り組んでいく。

Q8.自治体職員による防災出前講座が各地で実施されているが、杉並区でも「備災(自助)」をテーマに、地域で一定数の区民が集まったら職員が出前するする取り組みが有効とかんがえるが見解を問う。

A8.職員が出向いて防災出前講座を行うことは質疑を通じて理解を深めたり、直接区民の声を聞く有効な方法であり、町会、自治会、防災課やゆうゆう館で行ってきている。また、今年度からはすぎなみ地域大学の「地域防災コーディネーター養成講座」で地域防災や防災講和などに対応できる人材を計画的に育成している。こうした人材も活用して区民に自助を含む防災対策を伝える機会を増やしていく。

第1回定例会一般質問 そね文子2019.2.15

区立施設の省エネ性能を高め、自然の恵みを活かす取り組みについて

いのち・平和クラブの一員として、区立施設の省エネ性能を高め、自然の恵みを活かす取り組みについて一般質問いたします。

2018年の夏の平均気温は平年より1.7度高く、1946年の観測開始以降最も高くなりました。特に東京はヒートアイランド現象が加わり2017年までの100年で3.2度上昇しています。熱中症による死亡が相次ぎ「災害級の暑さ」という表現は流行語となり、杉並区でも強力な台風によって大木が根元から何本も倒されたことは記憶に新しいところです。このような現象を見るにつけ、温暖化による気候変動が現実の脅威となって私たちのすぐそばまで迫ってきているのを皆さんも実感しているのではないでしょうか。

区は2019年度の予算を「新たな時代に安全・安心を貫く予算」と名付け、区民の暮らしの安全・安心の向上を、時代を超えて不断に貫いていくとしており共感するところですが、それは私たち人類が暮らし続けられる地球環境があってこそだと考えます。そのための温暖化対策を最重要課題と考えて質問いたします。

パリ協定に参加し温暖化防止に取り組むとする国や東京都は、公共建築物のZEB(ゼロエネルギービル)化を政策に掲げています。ZEB化とは建物の省エネ性能を高め高効率の設備を入れることで消費するエネルギーと作るエネルギーの収支がゼロとなるようにめざす取り組みのことを言います。

環境省や経産省は、環境負荷の低減とサステナブルな社会の実現、エネルギー・セキュリティの向上 、健全な省エネ、創エネ産業の発展と日本の気候風土をふまえた技術の輸出による世界貢献などの目的で、ZEBへの補助金を出しています。このことは、とても大切な考え方だと思っています。

施設再編整備計画に基づき老朽化した施設の建て替えを進める当区でも、新たに建てる建築物の省エネ性能を高め補助金を活用してゼロエネルギービル建設にも取り組んでいただくことを要望いたします。

昨年12月5日、私を含め超党派の議員が呼びかけて、住宅性能評価表示制度創設などに関わった高橋彰氏を講師に招いて行った「公共建築の省エネ性能に関する学習会」には議員だけでなく多くの区の職員の方たちも参加され、この問題に関心を持たれていることがわかり心強く感じました。その学習会で学んだことは、建物の断熱・気密を最も重視し外皮性能を高めることにより、建物のメンテナンスを最小限に抑え、更新期間が短いエアコンなどの設備を最小限に抑えて、ランニングコストを低くすることが最も効率がいいということです。

  • この学習会を開くきっかけになったのが、田中信一郎さんという、長野県の職員時代に環境部環境エネルギー課で戦略的な取り組みを行い、長野県で住宅の省エネ改修サポート制度などを立ち上げた方による講演でした。現在、自治体での持続可能な地域づくりのサポートを行っておられる田中さんによれば、建物の効率的なエネルギー性能を次の優先順位で検討することが決定的に重要であると言います。1番は断熱:熱を通さないこと、2番目は気密:空気の漏れを防ぐこと、3番目は、夏と冬の日射角度を考慮した日射コントロール:、4番目が24時間の熱交換換気、5番目が通風:窓を開けたときの風の通り、6番目がエアコンやLED電球などの設備、7番目が再生可能エネルギー熱利用、8番目が再生可能エネエネルギー発電、となります。まさに12月の学習会でも同じことが述べられ、私も大いに賛同するものです。今後区がつくる公共施設は、この方針で建築に取り組んでいただきたいと思いますがいかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 

  • 建物の費用対効果は、建築費などのイニシャルコストと建物の維持管理にかかるランニングコストを加えたトータルコストで考えることが重要です。昨年改定された杉並区の区立施設再編整備計画第一期第二次実施プランでは構造体が健全な建物については定期的な修繕などを行い、改築時期を築80年程度まで伸ばすことなどにより、財政負担の平準化を図るとしています。施設の長寿命化を図り長期的に活用していくためにも、先ほど述べた建物の効率的なエネルギー性能の優先順位の考え方を参考にしていただき、躯体の断熱・気密性能にコストをかけて建設をし、光熱費、エアコンやLEDなどの設備の更新にかかる費用を抑える設計にした場合と、躯体性能を安く抑え光熱費や設備更新に費用をかけた場合のトータルコストで、コストの低い方を選ぶことが必要だと考えますが、区の見解をうかがいます。

 

  • 先ほどの順番では8番目となり重要度が低いとされた太陽光発電についてですが、都会で唯一発電できる仕組みです。再生可能エネルギーの活用は災害時の電源確保にもつながる重要な取り組みで、普及啓発の意味も込めて公共建築物には太陽光発電を設置していくべきと考えますが区の見解をうかがいます。

併せて、ビルの省エネ性能や太陽光発電システム、現在の発電状況など区民に区の省エネと再生可能エネルギーへの取り組みが学べるような見える化を行っていただきたいと考えますがいかがでしょうか、うかがいます。

 

個別の取り組みについてもうかがいます。

  • 昨年10月に行われた決算特別委員会で、阿佐ヶ谷地域区民センターの移転改築についてとりあげ、省エネ建築の具体的な取り組みについて質問したところ、2015年に制定された建築物省エネ法に基づき外壁や空調など建物全体でエネルギー消費を抑えられるよう設計しているということでした。しかし具体的な数字をうかがうと、床面積が現在の1.6倍となるのに対し、年間の光熱水費は現在の約790万円が1500万から1800万程度になることを想定しているということで、光熱費が1.9倍から2.3倍になっていることには納得が行きません。この設計については改めて建物の省エネ性能を高める視点を持って見直しをしていただきたいと考えます。断熱・気密は十分に行ったのか。断熱性能の一番低いアルミサッシの窓を入れるのではなく、イニシャルコストが上がっても断熱性能の高い樹脂サッシの使用を検討する。庇やルーバーで日射コントロールはできないか。再検討していただきたいと思いますが、区の見解をうかがいます。

 

建物の断熱性を高めるのに最重要なのが、最も熱の出入りが多い“窓の断熱性能”を高めることです。樹脂サッシの窓については、これまで住宅用のものだけでビル用の商品がない状況でしたが、ここ数年で日本でも生産されるようになりました。今はまだ割高ですが、積極的に取り入れコストが下がり使用しやすくなることで、日本の建築物の断熱性能が全体に上がることが期待できます。樹脂の熱伝導率はアルミの1000分の1です。窓は更新が必要ないので、一度取り付ければ建物の性能という資産になります。また海外の石油や石炭にではなく、日本国内のメーカーにお金が流れるという経済効果も期待できます。このように社会全体にとっていくつものメリットがありますので、その点も考慮して選択していただくよう要望いたします。

 

  • 東京都は、公立学校の体育館への空調設備の設置とその効果を高めるための断熱工事に補助することを決めました。当区では区立小中学校の体育館は震災救援所になっています。子どもの学習環境を改善すること、震災が起きたときの体育館の暑さ、寒さ対策は意義あることだと考えます。しかしまったく断熱が施されていない、隙間だらけの体育館内を強力にエアコンで温度調節しようとすれば、室外機からの排熱により、付近のヒートアイランド現象を助長させ、温暖化に拍車をかけることになります。東京都の補助金は設備の設置と省エネ改修が対象であると聞いていますが、具体的な使用割合などは決まっているのでしょうか。具体的な補助金の内容についてわかればお示しください。

 

断熱改修は建物の劣化を防ぐ長寿命化の側面も持っています。断熱改修することでエアコンの設備を最小限に抑えるために本来はエアコン設置と両方をセットで行うことが必要だと考えます。世田谷区では中学校で学校施設を長寿命化する際に省エネ建築も取り入れた改修を行った結果、真夏の体育館の温度が3度から5度下がったというデータが出ているそうです。区でもこのような方法での取り組みも検討していただくよう要望いたします。

 

昨年は、猛暑のなか、校外学習に出た小学1年生の子どもが、熱中症で命を落とすという後悔してもしきれない事故が発生しました。また杉並区内でも中学生が部活中に熱中症にかかり救急車が出動する事態が起こったとも聞いていますが、それはいずれも屋外で起こった事故でした。体育館でエアコンをかければ室外機からは常に強力な熱風が吹き出し、屋外の温度を上昇させます。どんなに暑くても屋外で活動しなければならない人たちがいることも考慮して、どのようにエアコンを使用するのか考えていただきたいと思います。

 

ここで区立施設に多くの割合を占める学校のエコスクールの取り組みについても取り上げたいと思います。

  • 区のホームページには「杉並区版エコスクール」は、(1)屋上や校庭の緑化、太陽光発電などの「環境負荷を可能な限り抑制した学校施設づくり」に加え、(2)省エネ・省資源、リサイクルなどの「環境にやさしい学校運営」、(3)児童・生徒をはじめ、家庭・地域の人々を含めて行う「環境教育の実施」、の三本柱により進めるものです、とあります。

 

2012年にエコスクール事業検討委員会がこれまでの取り組みと、今後のエコスクールのあり方を報告書としてまとめており、目的を学習環境の向上を図るとともに、地球環境問題への取り組みを学校が核となって子どもだけでなく大人にも広げ、区民の省エネをはじめとする環境意識向上につなげていくこととしています。これが杉並版エコスクールの考え方と方向性を示す最新のものと考えてよいのでしょうか、伺います。

 

  •  エコスクールの考え方、目的には大いに賛同し、進めてほしいと考えます。しかし、12年度に報告書をまとめた後は学校アンケートや進捗状況を示す報告書は出されていません。この取り組みがどのように進んでいるのか現状を伺います。学校にアンケートをとり継続的に報告し、区民にも見える形で積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、区の見解をうかがいます。

 

  • さて、杉並版エコスクールでは、現在設置が行われなくなった設備がいくつかあります。外気に比べて夏は涼しく、冬は暖かい地中熱を利用して行う空調設備、クールヒートトレンチや夜の涼しい外気を取り入れて室内を冷やすナイトパージなどは最適な形で現在も使われているのでしょうか、現在ある設備は最大限に活用して省エネの運用に努めていただきたいと考えますが、現状を伺います。

 

  • 国では文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省が連携して、市区町村がエコスクールとして整備する学校を「エコスクール・プラス」として認定する制度があり、その認定を受けると学校施設の新築、増築、改修する際に補助金等を受けられるしくみがあります。そのメニューには雨水利用も含まれていますが、杉並版エコスクールメニューの中に雨水利用が入っていません。これまでも学校では雨水流出抑制対策として雨水の貯留と利活用を進めてきたと認識しています。これも自然の恵みを利用した杉並版エコスクールメニューにもプラスされるべきものだと考えますが、区の見解を伺います。また、太陽熱温水器についても国のメニューにはあるのに、杉並区には入っていません。学校は給食室が設置されており、大量にお湯を使う施設です。太陽エネルギーを電気や温水に変える「変換効率」は、太陽熱温水器が優れており、太陽光発電が7~18%であるの対し、太陽熱温水器は40~60%と言われています。(シンプルで非常に)効率がよく安価な太陽熱温水器の設置は数年で設置費用が回収できる有効なものではないでしょうか。太陽熱温水器の設置を杉並版エコスクールのメニューに加え、積極的に設置していただきたいと考えますが、いかがでしょうか、伺います。

 

  • 小学校や中学校でエアコンがついているのに教室の扉や窓、昇降口が開いている、温度を下げすぎて寒い、使わない階段上にある照明が単独では消灯できない電気回路になっているなど、省エネ行動がともなわない場面を多く目にしてきました。ぜひ、エコスクールが目的とする環境教育から環境行動につなげる力を学校生活の中でも育てていただきたいと思います。先ほども申し上げましたが、特に体育館にエアコンを設置した後の運用については、そこを使用する全員が環境に配慮した運用ができるように取り組みを進めてほしいと考えますが、区の考えをうかがいます。

 

先日はエコスクールとして施設、教育の面で先進的に取り組んでこられた荻窪小学校を視察させていただきました。屋上緑化、壁面緑化、校庭の芝生化、ビオトープや地域の人の協力で冬でもキャベツやブロッコリーが育てられている畑、日射を遮るバルコニーや太陽光発電機器、ナイトパージやクールヒートトレンチ、間伐材を使った内装木質化など、恵まれた環境で学習できる子どもたちは本当に幸せだと思いました。小中学生環境サミットで荻窪小の子どもが、この学校にいると環境のことを考えるのは当たり前だけど、そうでないところもあるのだと思ったと言っていたという校長先生のお話に、環境を生かした教育の取り組みをうれしく思いました。一方で施設がここまでそろっていなくても、どこの学校にいてもその学校に合った環境教育を進めてほしいと思います。体育館へのエアコン設置の機をとらえ、改めて温暖化対策を意識し学校ごとの省エネ行動を子どもたちと先生、専門家や地域の人が共に考えマニュアル化し実践していくことで、省エネ行動を徹底し、区内にもそれを広めていただきたいと思います。

また、国が文科省、農水省、国交省、環境省の連携でエコスクール・プラス認定を行っているように、本来、区のエコスクールの取り組みも教育委員会と環境課の連携が欠かせないはずです。この点を指摘し、私も子どもたちに安心して暮らせる持続可能な社会を渡すため、継続的に課題に取り組んで行くことを申し上げ質問を終わります。

第1回定例会一般質問 奥田雅子2019.2.15

1.地域コミュニティ施設とその運営について

2.備災を促進するための支援について

<地域コミュニティ施設とその運営について>

区立施設再編整備計画(第一期)第二次実施プランが、第一期計画の具体的な実施計画として2019年度からの3か年の取組みとして定められ、その中で地域コミュニティ施設のあり方が示されました。施設の再編に当たってはハード面とともにソフト面、つまり運営をどのように行っていくかも大変重要なポイントであると考えます。そこで、今回は地域コミュニティ施設の運営について質問してまいります。

地域コミュニティ施設は、一般的な貸館的な区民会館や区民集会所、ゆうゆう館、機能移転後の児童館施設の転用を基本に、多世代型の機能を備えた場として、それまでの地域における役割を受け継ぎながら、新しい施設として生まれ変わろうとしています。幅広い対象者の利用を促し、受付窓口では、高齢者への声掛けや日常の相談なども行い、地域のみなさんと緩やかにつながる施設にするとあります。

2025年問題が取りざたされるこんにち、地域コミュニティ施設を考えるには、現在のゆうゆう館の機能をどのように維持・発展させていくかが重要なカギになると考えています。

なぜなら、今後さらに進展する少子超高齢社会に対して、高齢者がいかに地域で安心して生活できるか、介護保険制度や区の介護予防事業も利用しながら、地域の様々な機関や人の関係性を紡ぎながらの地域づくりが求められているからです。

現在のゆうゆう館は、それまでの区直営の「敬老会館」から機能が一新され、協定書に基づく区との協働事業という形で様々なプログラムが組まれ、高齢者を中心としつつも協働事業については年齢も居住制限もなく、多世代を対象とした幅広い事業展開を、ケア24や学校・児童館との関係もつくりながら拡げてきており、利用人数も飛躍的に増加していると聞いています。そしてこのような事業展開を可能にしているのが、受付等業務委託を受けながら協働事業を展開している主に地域で活動しているNPO法人の方々です。そこで伺います。

①直営の敬老会館時代から現在のゆうゆう館事業への経過を、区としてどのように評価されているか。見解をお聞きします。

今後、ゆうゆう館が地域コミュニティ施設に転用された場合、これまでの成果は維持・継続、そして発展できるのだろうかといった不安の声があり、そのような危惧が今回のパブコメにも寄せられています。それに対する区の答えは、「施設管理事業者の選定方法について今後検討していきます」というものでした。

行財政改革推進計画では、多様な主体によるサービス提供として、公の施設の運営については指定管理者制度の導入を積極的に検討し推進するとあります。

一般的に施設の管理・運営をアウトソーシングする場合、いくつかの手法があると思いますが、施設の目的・性格・規模・地域との関係などを総合的に判断し、最適な手法を選択する必要があります。利用者との関係も含めて柔軟な判断が必要とされると、私は考えますが、地域コミュニティ施設も指定管理者制度の導入の対象になるのかどうか、気になるところです。指定管理者制度は2003年の地方自治法改正によって管理委託制度に代わって新たに導入されたものと認識しておりますが、

②そもそも指定管理者制度とはどのような制度なのか、また、指定管理者制度が導入された背景について伺います。

全国一律的に指定管理者制度が導入され、本来、地方自治法では「導入することができる」という“できる規定”であったものが、新規施設は全て指定管理者制度導入という自治体の首長らの誤解もあり、公の施設は多種多様、大小さまざまであるにも関わらず、その設置目的に照らして市民の参加・参画のもとに管理・運営のあり方が検討されることもなく、全国的には一挙に導入が進んでいったようです。しかし、杉並区においては当時導入に積極的では無かったように聞いていますが、

③杉並区が最初に指定管理者制度を導入したのはいつどのような施設で、どのような理由があったのか、伺います。

④その後、少しずつ導入されているようですが、現在の状況について、指定管理者制度を導入している公の施設の種類および数を伺います。

一般的に指定管理者制度のメリットには管理経費の削減、行革的な視点があると思いますが、大規模施設の場合には、それなりのメリットがあるものの、地域コミュニティ施設のような、比較的小規模で、しかも施設数が多い場合は、それぞれで行うよりも現在のように区が一括で行う方が管理経費の削減になると思います。ですので、事業運営を重視し、一方で管理面での経費削減がそれほどの効果が望めないのなら、現在のゆうゆう館の契約スタイルで改善すべきところはするとして、継続することの検討も必要だと考えますが、

⑤地域コミュニティ施設の管理運営方法をどのように考えているのか、区の見解をお聞きします。

地域コミュニティ施設について、区は計画の中で、「乳幼児親子を含む子どもから高齢者まで、誰もが身近な地域で気軽に利用でき、世代を超えて交流・つながりが生まれる施設」をめざすとしています。

しかし、それは、ラウンジの設置で済むというような安易な発想で可能となることではなく、地域住民の目線、当事者の目線に立って、そのニーズを探り、一人ひとりの健康や生活にも配慮しながら運営してこそ、達成できることであり、貸館的発想の運営ではできることではないと考えます。

⑥計画には“ゆうゆう館の機能継承”という文言が散りばめられていますが、この「地域コミュニティ施設での事業実施」という側面について区ではどのような議論になっているのか、重要視したいことは何か、区の見解を伺います。

子どもから高齢者にまで対象を拡げることで、世代を超えての交流・つながりが生まれる施設になれば、そして30~40というほぼ小学校区に匹敵するようなエリアごとに配置されるなら、地域区民センターのような大きな施設とは違った、まさしく地域に根付いた住民の居場所になるのではないかと期待がふくらみます。そう考えた時、施設の運営を担う主体が誰なのかが大きなポイントとなります。営利を第一の目的にしている一般企業にはこのようなきめ細かな運営は向いていないと思います。現在のゆうゆう館運営事業者がこれまでやってきたことを正当に評価して、新しい事業者も含めてその力を一回り大きくなる地域コミュニティ施設でも発揮してほしいと思うことから、やはり地域で活動しているNPO法人や団体が担ってこそ利用者の立場に立った運営ができるのではないか、これまで培ってきたスキルやノウハウを使わない手はないと思います。そう考えた時、地域コミュニティ施設に指定管理者制度は馴染まないのではないかと、思わざるを得ません。

指定管理者制度が施設管理と事業運営を一体として行う制度であるならば、再委託が可能であったとしても、地域のNPO法人には手に余ると言えるのではと考えます。現在のゆうゆう館は受付・日常清掃などを業務委託契約で、大規模清掃・修繕は区が担い、そして協働事業については協定書を取り交わしながら運営されていると聞いています。

指定管理者制度については、各地で導入後に取り消しや取止めも起こっており、又、指定期間、指定管理料、利用料金制、精算などの細かい取り決めについての課題もあるようです。

今後杉並区が新たに指定管理者制度の導入を考えようとする場合、指定管理者制度を導入するかしないかを含め、これまでの経緯や利用者の意見なども考慮した十分な議論を行うことを望みたいところです。

⑦特に地域コミュニティ施設については、現在のゆうゆう館の実態も踏まえ、事業者や地域の利用者の方々の意見にも十分耳を傾けていただきたいと思いますが、地域コミュニティ施設は所管の違う機能が1つに複合化されることから、関係各課の連携が重要と考えます。現在どのような体制で議論がされ、最終的な担当所管のあり方についての区の見解をお聞きします。

現在、モデル館として運用されているゆうゆう馬橋館での様子をお聞きしました。多様な世代が利用し、特に小学校が近隣ということもあって、小学生の来館も多いようです。今後、地域コミュニティ施設が地域に増えていけば、放課後や長期休みの学校以外の子どもの居場所としても期待できると思いました。様々な可能性を生み出していくためには地域コミュニティの姿をどう描き、その達成のためにどう運営していくのかがとても重要だと感じました。

⑧以上、地域コミュニティ施設の運営のあり方について質問してまいりましたが、最後に地域コミュニティ施設が区民にとって使いやすく、豊かな関係性が紡げる場所として機能していくために、どのような施設にしていきたいのか、改めて区の見解を伺って、次のテーマに移ります。

<備災を促進するための支援について>

区内の防災公園と言われている桃井原っぱ公園、下高井戸おおぞら公園や都立公園などで、ある市民団体が自ら企画して、体験型の避難所模擬訓練を行っています。私も企画・運営に参加する中で感じるのは、災害に備えることを一般的に「防災」と言いますが、災害は人の意思で防ぐことができないものであり、本来の文字が表わす意味からすれば「災害に備える=備災ビサイ」と呼ぶのがふさわしいのではないかということです。そこで今日はこれまでの体験をもとに杉並区の備災のあり方について質問します。

1.昨年、日本は大きな自然災害に何度も見舞われました。1月の豪雪に始まり、大阪北部地震、西日本豪雨、北海道地震のほか、非常に強いまま上陸した台風21号などが挙げられます。当区でも職員の方々が被災地に赴き、現地での支援を通して多くを学んでこられたと思います。先日の我が会派の代表質問でも区長より丁寧なご答弁がありましたが、備災の質問の前に、改めて伺います。

1-①主な支援内容やそこでの経験は記録としてどのような形で蓄積されているのか、伺います。

1-②また、それらの記録を全体共有していくことが必要だと考えますが、区の 見解を伺います。

2.さて、防災公園について伺います。

桃井原っぱ公園などの「防災設備を使ってみる」という訓練を通して感じるのは、防災機能としてあるにもかかわらず、いざ使おうとすると実際には使えない、使いにくい点が多いことです。たとえば、車いす用トイレは介助者なしでは便器に移れない、火の効率が悪いかまど、かまどスツールの台を外そうとしてもビスの頭にペンキが塗りこめられてしまって工具が入らないなどなど、使ってみたからわかったことです。そもそもどういうコンセプトで防災公園を整備するのかを、担当所管同士で(防災課とみどり公園課が)話し合われているのか疑問です。これは原っぱ公園に限ったことではなく新しくできた下高井戸おおぞら公園にも言えることです。

少し厳しい指摘をさせていただきました。しかし、杉並区の公園は、WSなどの手法を使い、住民の声を反映させて作ってこられたことを評価するもので、それが「防災公園」とすることで何か不足が生じているのだとすれば、それは残念なことであり、その原因は何なのかを見ていく必要があります。いざという時にあってよかったと言える防災公園にしていくために以下4点うかがいます。

2-①区内には防災公園が、馬橋公園・蚕糸の森公園・井草森公園・柏の宮公園・桃井原っぱ公園・下高井戸おおぞら公園の6か所ありますが、防災公園とはどのように定義づけられている公園で、一般の公園と違うところは何か 伺います。

2-②防災公園の整備についてはエリア的には充足しているのか、それとも今後も増やしていくことをお考えなのかお聞きします。

3点目

2-③今後、防災公園を整備する場合や改修する場合は関係部所の連携が必要だと考えますが、区の考えを伺います。

4点目

2-④公園を点検する際も、防災課とみどり公園課、そして管理事業者も一緒に行うことが必要だと考えますがいかがでしょうか。

3.次に液体ミルクについて伺います。

2011年の東日本大震災後、液体ミルクの導入を求める声が挙がり、2016年の熊本地震で大きくクローズアップされました。これまで私どもは区議会や都議会で、災害時に備え液体ミルクの活用を紹介してきましたが、ようやく昨年の8月、製造規格基準が定められ、今年4月から製品上市(せいひんじょうし)の予定と聞いています。水や熱源が不要であることからライフラインが断たれている間、活用が期待されている液体ミルクですが、課題もまた指摘されています。それは、災害時であっても母乳が基本であり人工乳は代替手段という前提のもと、人工乳を必要とする親子には健康状態をアセスメントしたうえで十分量を手配すること、支援する側が頭ごなしに決めるのではなく家族の状況や希望を細やかに汲むことが肝要であること、一律に配布するのでは本当の意味の支援にならないと専門家も指摘しています。災害時に母親と赤ちゃんが元気でいられるための支援が重要であることから以下質問します。

3-①発災初期の災害対応は主に基礎自治体が担うことになることから、区でも粉ミルクの備蓄はしていると思いますが、人工乳の配布に対して、どのような対応をするかといった考え方は震災救援所マニュアルなどに示されているのでしょうか。また、乳児を持つ親への対応はどのような体制で臨むことになっているのか伺います。

3-②発災直後は水やガス、電気が使えないと哺乳瓶の消毒ができないため、紙コップ授乳が推奨されています。新生児でも紙コップやスプーンでミルクを上手に飲めるそうです。防災セミナーや親子が集まる子ども・子育てメッセのような場などでも紙コップ授乳を知識として伝えていくことが必要だと考えますが、区の考えをお聞きします。

3-③液体ミルクの導入について以前質問した際には、国や東京都の動向を注視していくと いうことでしたが、国内でも流通が始まることを受け区でも検討がされていくものと思います。しかし、消費期限が製造日から6ヶ月(グリコ)や1年(明治)と備蓄品としては短いため、自治体が現物を備蓄し、期限近くになったミルクを保育園などに提供していく「回転備蓄」が良いのか、あるいは、乳業会社と協定を結び、必要が生じたときに回してもらう、つまり自治体が在庫を抱えない方法が良いのか。後者の方が現実的だと考えるところですが、区としても検討が必要だと思います。区の見解をお聞きします。

3-④発災直後は、衛生面が悪化することから(乳児の)授乳環境を整えることが大事です。桃井原っぱ公園で行われるすぎなみフェスタでは「授乳所」と書かれたテントが設営されていて、配慮がされていて良いと思いました。避難所でもいかに早く授乳環境を整えられるかが重要だと考えますが、震災救援所の訓練でも女性の着替えの場とともに授乳所を確保するメニューが必要だと考えますがいかがか、伺います。

3-⑤日本栄養士会が「赤ちゃん防災プロジェクト」として妊産婦・乳児への栄養支援、避難所運用についてガイドラインを策定中のようです。この取り組みに対する区の認識と今後、区としても参考としていかれるのか見解を伺います。

⑥平常時の取組として、横浜市では乳児を抱えるママたちや妊婦さん対象の「子育てママの防災おしゃべりサロン」を開催していると聞いています。本区においても、例えば、子ども・子育てプラザなどで妊婦および小児(新生児・乳児・幼児)を抱える家庭向けに災害アドバイザーの講話を行ったり、参加者同士で話し合ったりする機会をつくり、防災に対する意識を高めてもらってはどうかと考えますが、いかがか伺います。

4.自助としての備災について

内閣府が毎年発行する「防災白書」の平成30年版の中に、「防災に関する世論調査」で自助、共助、公助のどれに力点を置くべきかという意識調査の結果がありました。それによると、2002年と2017年の比較では、25%あった公助は1/4の6%になり、逆に14%あった共助は25%に増え、驚くのは18.6%だった自助が約40%と倍以上になっています。しかし、意識していてもなかなか実行に移せないのが自助です。

これまで私が参加してきた市民企画の体験型避難所訓練では、参加者同士の情報交換タイムがあって、災害に備えていることを紹介するのですが、備蓄品や工夫を紹介できる参加者はごくわずかです。また、区報にイベントの案内を載せた際、持ち物として「避難所生活で必要と思うもの」と記載したのですが、「何を持っていったらいいのか」という問い合わせが主催者に押し寄せ、対応に苦慮したという声をもらいました。そこで伺います、

4-①公助の充実に取り組んでこられた区として、防災白書にある自助に対する意識の高まりに対しどのような感想を持っておられるか、またどのように対処されるのかお聞きします。

地域で開かれる震災救援所訓練に参加していても、震災救援所に行けば備蓄品で何とかなると漠然と思っている区民も多いように感じます。ところが備蓄倉庫の中を見学しても、ここには何がどれだけ入っているというような具体的な説明はありません。昨年おおぞら公園で私たちが企画した防災訓練で倉庫の中の状況を見て、これは自分で何とかしなきゃダメだと気付いたと感想を残してくれた参加者がいました。

4-②これまで区は自助に対してはどのように区民に伝えてきたのか。そのことが浸透しているのかどうか区の認識を伺います。

災害に備えることについて、身近な場所で地域の人たちと集まって具体的かつ現実的な事柄について話し合う場も必要だと思います。

4-③自治体職員による防災出前講座が各地で実施されていますが、杉並区でも「備災(自助)のすすめ」をテーマに地域でごく一般的な区民が一定数集まったら、職員が出前するといった取組みを行うことも有効ではないかと考えますが、見解をお聞きします。

5.最後に、危機管理室、防災課は、区民の命を預かる重要なセクションです。大災害が発生した場合、対策本部を立ちあげ、陣頭指揮をとるのは首長ですが、首長は福祉や環境、土木など、さまざまな分野で責任を持つ人であり、防災や危機管理の専門家ではありません。だからこそ、防災を熟知した人が、例えば、前の質問でも述べた防災公園を作る際に助言できる、すでに避難場所として設定されている箇所を検証して区に助言できる、また、そういう方がいることで「防災の達人」となれる職員の育成にもつながる、そんな役割を発揮できる防災の専門家を常勤でなくとも危機管理室の職員として配置することも必要ではないかと考えることから、その検討を要望して私の質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ109号発行 2018.11.15

第3回定例会一般質問と答弁 2018.9.13奥田雅子

<ケアラー支援の取り組みについて>

Q1】ケアラーが健康でその人らしい生活が送れるように、支援の在り方を分野横断的に議論することが求められていると思うが、区の考えと今後の展望について伺う。

【A1 区長】 ケアラー支援という言葉で質問をいただいているが、私からは介護者支援の在り方としてお答えする。
奥田議員より「お孫さんが祖母の介護で友達や学業、仕事などを犠牲にされた事例」の話があったが、これまで私も、親の病気で子どもが介護や家事をせざるを得ない状況になっている事例があるという話を耳にすることがあった。

この間、区では緊急ショートステイ事業や介護者ヘルパー派遣など、高齢者や障害者など介護者支援のサービスを充実してきた。

しかし、昨今の晩婚化による出産年齢の高齢化や核家族化などの社会状況の変化を踏まえると、議員のご指摘のとおり、なお一層、高齢者から障害者、子ども分野などで、介護者支援について、幅広く議論を深めていく必要があると認識している。

これまでも、在宅医療・生活支援センターでは、複合的な課題を持った事例に対して、支援会議で分野横断的に対応策を検討し支援してきたが、今後は、この支援会議において、介護支援等も十分念頭におき、検討を進めていく。

こうした事例を丁寧に積み重ねながら、介護される側も介護する側も、健康でその人らしい生活が送れるよう、区としても介護者支援等に総力をあげて取り組んでいく。

Q2】 杉並区の介護者支援事業はどのようなものがあるか。またその目的について伺う。

【A2】 高齢者担当部長】 家族介護者支援事業には、身体的負担の軽減を目的とした、「介護用品の支給」や「ほっと一息、介護者ヘルプ」、精神的負担の軽減を目的とした、「認知症高齢者家族安らぎ支援」や「介護者の心の相談」事業、予期せぬ事態等への対応として、「緊急ショートステイ」と「徘徊高齢者探索システム」がある。そのほかに、介護の知識や技術の習得を目的とした「家族介護教室」などがある。

Q3】 緊急ショートステイの利用手続きについて、介護者が区の窓口に来られない事情がある場合の対応はどうなっているのか。また、家族介護者以外の第3者でも可能か伺う。

緊急ショートステイをスムーズに利用できるよう手続きの改善が必要だと思うが、区の見解を伺う。

【A3 高齢者担当部長】 入所手続きは、区の窓口に来所いただくか、電話とファックスにより行っており、高齢者の日常生活の状況等がわかる方であれば、ケアマネなど第三者でも可能である。

また、手続きについては、これまでに、家族介護者のご要望を受け、前日まで申し込みを受けるよう改善を行った。

なお、添付書類の日常生活動作調査票とケアプランは、受け入れ施設の態勢や高齢者の安全を担保するために必要であり、引き続きお願いしたいと考えている。

今後も家族介護者のご要望に耳を傾け、利用しやすい事業となるよう努めていく。

Q4】 認知症高齢者や寝たきり高齢者などを介護している家族介護者は、容易に外出して相談する機会が少ない。ケアラーズカフェを出前するようなサポーターの訪問などの仕組みを取り入れ、家族介護者を支援すべきと思うが、区の見解を伺う。

杉並区は早期から介護者支援に取り組んできたと評価するが、現行の仕組みの中で課題は何か伺う。

厚労省が発行した「家族介護者支援マニュアル」に「介護者本人の人生の支援」というサブタイトルが入ったことは画期的である。区はこのマニュアルをどう受け止め、活用していくのか伺う。

【A4 高齢者担当部長】 家族介護者の支援のため、様々な事業を展開しているところであるが、高齢者虐待が増加傾向にあるのが実態である。虐待の多くは、介護疲れによるストレスの蓄積、介護の知識や技術の欠如などに起因しているものだが、認知症高齢者の増により、介護のために外出しづらく、孤立しがちになっている介護者が増えていることが、虐待件数の増加の大きな要因になっていると考えられる。

このため、高齢者とその家族がお互い尊重しながら暮らせるよう、孤立しがちな介護者に必要な情報を届け、介護による心身の負担を軽減するための支援の充実が課題となっている。

この中で、提案の容易に外出できない介護者や相談の場のない介護者をボランティアが訪問することも、有効な支援策と考えている。

さらに、働きながら親の介護をしている子は、時間に余裕が持てず、介護のため自分の楽しみや時間を犠牲にしたり、離職を余儀なくされている例も増えている。

今般、厚労省が発行したマニュアルで示された、介護者の望む人生をも支援するという視点は重要なことと捉えており、今後その視点を踏まえた支援を具体化していくことが、新たな課題であると考えている。

Q5】 介護者の心の相談は、臨床心理士に相談ができ、好評だと聞いている。相談終了後に臨床心理士が地域のケアラーズカフェにつなぎ、介護者支援が継続できた事例があると聞くが、実情について伺う。

【A5 高齢者担当部長】 介護者の心の相談事情についてだが、家族介護者や介護職の精神的健康の支援や離職防止などを目的に平成21年から実施しており、現在、臨床心理士1名が相談業務を担当している。ご指摘の事例は、相談員が地域のケアラーズカフェの情報を提供したことで、介護者が継続的に支援を受け、心の支えを得ながら介護を続けることができているというものである。

今後も、継続的な支援が必要な介護者に対し、ケアラーズカフェなどの地域資源も含め、必要な情報を適切に提供していく。

Q6】 ケアラーは自分のことを後回しにしがちである。家族ケアラーの健康調査も必要ではないか。また、要介護者の支援に入る際に家族介護者の状況に目配りし、必要な支援につなげられる専門員の配置やアセスメントを検討するべきと考えるが、区の所見を伺う。

【A6】 高齢者担当部長】 健康状態については、杉並区高齢者実態調査において、経年的に把握しているところであり、「よい」「まあよい」を合わせた割合は徐々に増えている状況だが、今後も健康状態の把握を続けていく。

また、専門員の配置等についてだが、家族介護者の状況に目配りし、必要な支援につなげる役割は、ケアマネジャーが担うものであり、ケアプランは介護者への支援も含めて作成することが求められている。今後もケアマネジャーの家族支援の質の向上を図ることで対応していく。

Q7】 杉並区においてもヤングケアラーが存在していると考えるが、区のヤングケアラー問題の認識について伺う。

【A7 保健福祉部長】 これまでも、区の子ども家族支援センターや在宅医療・生活支援センター等における様々な相談を通して、子どもが自らの学習や生活よりも、保護者に対する介護や支援を優先せざるを得ない状況になっているケースを把握することがあった。

高齢化が進む中で、今後は、同様の相談が増えてくると予想される一方で、そのような状況にある子どもは周囲から見えにくい存在であることが多いとも言われている。

従って、区としては、各種相談部門の職員が、研修等を通して、「家族の中で介護を担う子ども」に関する理解を深めるとともに、家族の介護等の背景に同様な問題があり得ることを十分に意識して相談対応に当たるよう、努めていきたい。

【Q8】 ヤングケアラーは、遅刻や欠席、忘れ物が多い等、子どもの学校生活への影響が顕著となっている。学校では、このような子どもがいた場合、どのような対応をしているのか伺う。

子ども達に一番身近に接する小中学校の教職員やSSWに対して、ヤングケアラーの存在を前提にした内容を研修に盛り込むことも必要と考えるがいかがか。また、その上で実態把握に努めるべきと考えるが区の所見を伺う。

【A8 教育企画担当部長】 子どもたちの抱える課題は不登校やいじめなどの自分自身にかかわることや、暴力や虐待、生活困難などの家庭状況に起因することなど様々である。学校においては、子どもの行動や表情、服装や健康状態等の変化や子どもとの日常的なコミュニケーション等を通して、様々な視点から実態把握に努めている。こうした実態をもとに、学級担任だけでなく、管理職や養護教諭、スクールカウンセラー等で構成される校内委員会において対応方針を明確にし、家庭とも密に連携を図りながら対応している。特に、家庭環境が影響し、学校生活に様々な影響を及ぼしている場合には、スクールソーシャルワーカーや子ども家庭支援センター、福祉事務所等の関係諸機関につなげ、子どもが安心して学校生活を送ることができるよう支援している。

研修については、これまでも、子どもたちの実態を把握し、問題の早期発見、早期対応、保護者や関係機関等との迅速な連携等について実施してきている。今後は、これらの研修において、学校生活に顕著に影響を与える要因の一つに「家族のケア」があることを示し、各学校が、的確な実態把握のもと、保護者や関係機関と連携した対応ができるように支援していく。

Q9】 杉並区におけるダブルケアラーの実態をどう認識しているのか。在宅医療・生活支援センターで取り組んだ実績はあるのか。ある場合にはどのような対応をしたか伺う。

【A9 保健福祉部長】 先ず、区におけるダブルケアの実態であるが、委員ご指摘のとおり、晩婚化やそれに伴う女性の出産年齢の高齢化等の背景から、今後益々増えていくものと捉えている。このことから、区としては、まずは、子育てと介護の制度の縦割等による問題の解決を図るなどのダブルケア支援に総力あげて努めていかなければならないと認識している。

次に、ダブルケアの実績については、子ども分野、高齢者分野等の各窓口において、複数の相談を受け付けているが、より困難事例を所管する在宅医療・生活支援センターにおいて、1件となっている。

当該センターの対応についてであるが、子ども、障害、高齢者の各分野の相談機関等を一堂に集め、支援計画を作成するための会議を開催している。子育てと介護の各分野においては、作成された支援計画に基づき、適切な支援を進めているところである。

Q10】 京都府が「仕事と子育て―両立支援ガイドブック」を作成し、介護や子育てをしながら仕事を続けていくための必要な情報がまとめられている。区も分野を超えた情報を一元化した媒体を作成すべきと考えるが所見を伺う。

【A10保健福祉部長】 現在、高齢者、子育て、障害者担当の窓口では、その相談内容によって他の窓口への案内が必要なときには、他の分野とも連携し、丁寧に対応しているところである。

また、仕事と介護・育児の両立が必要な方に、必要な情報を伝えるための媒体の充実は、サービスの量や質の充実とともに大切な取り組みであると認識している。

ご指摘のあった介護や子育て等、分野を超えて一元化した媒体の作成については、区としても必要であると認識しており、他自治体の取組などを調査、研究し、工夫していく。

Q11】 区内にはケアラーズカフェ、子ども食堂、サロンなど多様な地域資源がある。このような活動・事業について把握しているか伺う。また、これらの地域資源と連携、支援しながらの地域づくりを進めることが重要と考えるが、区の見解を伺う。

これら区民発の居場所事業等への具体的支援策について区の所見を伺う。

【A11 高齢者担当部長】 区内サロン等の地域資源について、区は介護者団体やケア24、社会福祉協議会などを通じて随時、把握に努めているところである。また、ケア24ではサロンやカフェなどの運営団体と連携して支え合いの地域づくりを進めているところだが、今後の地域包括ケアシステムの深化・推進に向けて、こうした運営団体と区及びケア24が、地域の課題を共有し共に対応策を考える関係を築くことは、益々重要なものになると考えている。

次にサロン等の継続に向けた具体的な支援策についてだが、これまでも高齢者を支援する事業、活動等をまとめた「杉並区生活支援サービス・活動紹介BOOK」において、担い手を募集している団体を案内している。今後も、ケア24のたより等において、スタッフやボランティアの役割を紹介するなど、人材の確保のための支援の充実を図っていく。

第3回定例会一般質問 2018.9.13奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として、ケアラ―支援の取組について質問いたします。

「ケアラー」というのは在宅で家族のケアを担当する人、すなわち介護を担っている人のことを言います。介護者というと一般的に高齢者介護のことを指す場合が多いのですが、家族介護を担う人の状況はさまざまです。家族が高齢である場合だけでなく、病気、障害、事故の後遺症、薬物やアルコール中毒、引きこもりなどの理由によりケアが必要となったとき、それを家族のだれかが担当することになります。育児も家族ケアのひとつと言えます。ふつう、高齢者は介護、障がい者は介助、傷病者は看病・看護という具合に呼称が違っていますが、私はこの間、ケアラー支援の活動に取り組む団体の勉強会に参加する中で、家族介護者全体に共通する問題があることに気づかされました。

介護の対象がどんな場合であれ、家庭という狭い世界の中で困難を抱えている家族介護者の問題を、基礎自治体は人の尊厳にかかわる問題としてとらえる必要があると考え、今回の質問にあたり「ケアラー」という言葉を意識的に使うことにしようと思います。

2000年の介護保険制度導入から18年が経過し、この間、高齢化の一層の進展により、介護保険制度は改定のたびに財政の見直しを迫られ、利用者負担の増大を余儀なくされてきました。介護の社会化をめざして始まった保険制度ですが、いま再び家族ケアラーの負担が大きくなっています。

しかし、世帯構造は大きく変化しており、厚労省の2016年調査によると65歳以上の「単独世帯」「夫婦のみ世帯」の割合は2016年には約6割にまで高まっています。さらに、「親と未婚の子のみ の世帯」の割合も2001年15.7%から2016年には20.7%と1.3倍になっています。

主たるケアラ―の7割以上が家族で、高齢化も進んでいます。2001年と2016年の比較では、65歳以上同士は40.8%から54.7%に、75歳以上同士は18.7%から30.2%になっており、ケアラー自身の体力も低下し十分な介護はできない状況です。

厚労省の「2015年度介護保険事業状況報告」および総務省の「2016年社会生活基本調査」によると、2016年の要介護者数は約620万人でこの15年間で約2.4倍。それに伴い家族ケアラーも2016年には約700万人と1.5倍に増加し、年代は30代以下が全体の約1割、40・50代が約4割、60代以上が約半数を占めており、男性のケアラーも約4割と増加傾向にあります。総務省の2012年調査では、介護離職も年間約10万人と言われています。

また、子育てと介護を同時に担ういわゆる「ダブルケア」の推計人口は2012年で約25万人(女性約17万人・男性約8万人)で、平均年齢は男女とも40歳前後と平均に比べ若く、女性の約半数が仕事をしていることが、内閣府の2016年の調査報告書で明らかにされています。また、ダブルケアには子育てと介護以外にも両親同時介護や障がい者と高齢者の介護など1つの家庭で複数の介護を担っている現状があります。

他にも、8050問題や10~30代のヤングケアラー問題、介護離職後の再就職の問題など、ケアラーを取り巻く問題は多々あり、いずれも健康や経済状況の悪化、社会的孤立などを引き起こす原因となっています。個々のケアラーへの対応だけでは解決しきれず、ケアラー全体にかかわる社会の問題として捉えることが必要です。地域包括ケアシステムにケアラー支援は欠かせないものであり、区における現在の介護者支援事業がこれまでのままでよいのか、もっと掘り下げた検討が必要ではないかと考えます。

そこで、まず、杉並区の現状について伺います。

Q1. 杉並区の介護者支援事業には多様なメニューがありますが、具体的にどのようなものがあるのかお示しください。また、これらの導入目的についてお聞きします。

Q2. 個々の介護者支援事業について伺いますが、

緊急ショートステイについて、介護している家族が病気やけが、葬儀などの緊急時に使えるサービスだと認識しています。しかし、利用手続きとして事前に利用申請書や日常生活動作調査票、ケアプランなどを区の窓口に提出することが必須となっています。介護している家族が病気やけがの場合はわざわざ区の窓口にまで出向いて申請することは難しいと思いますが、そのような場合はどうしているのか。また、申請はたとえば近所の人のような家族以外の第3者でも可能なのか確認します。

Q3. 緊急ショートの利用者からは手続きについて改善の声は届いていないのか。緊急故にもっとスムーズに利用できることが必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。

Q4. 次に認知症高齢者安らぎ支援について、認知症高齢者の介護をしている家族の休息のため、研修を受けた安らぎ支援員を派遣し、家族や認知症高齢者の話相手をするというものと認識しています。これは介護者の会などに行きたくてもいけないケアラ―支援という側面もあると思いますが、利用実績があまり多くないようです。杉並区でも家を空けられないケアラ―のお宅に、「ケア友」と称する介護者サポーターが複数で訪問するという、「ミニカフェ」をデリバリーする取組がケアラ―支援団体によって行われています。ケアラー側の負担にならないよう訪問する側が飲み物やお菓子を持参し、茶話会のような雰囲気の中で様々な話題に広がり、結果としてケアラ―のエンパワーメントにつながっていると聞きました。このような取り組みを区のしくみに取り入れてはどうか、区の見解をお聞きします。

Q5. 次に介護者心の相談ですが、臨床心理士と共に介護者が心の葛藤を整理・相談ができるメニューとして好評だと聞いていますが、決まった期間が終了した後のフォローができる場につなぐことが必要だと考えます。区内でケアラー支援に取り組むケアラーズカフェの運営事業者から、心の相談を担っている臨床心理士からケアラーズカフェに繋がってくる事例があるということを聞きました。相談者が地域とつながるという意味では重要な視点だと思いますが、どの臨床心理士も同じような対応がなされているのか、伺います。

Q6. 杉並区は早くから介護者支援に取り組んできたことを評価していますが、家族ケアラー支援の仕組みの中で課題はないのか。区の認識を伺います。

ケアラー支援団体が行ったインタビュー調査では、「介護に追われていても、社会・近隣とのつながりを維持したい」とか「学業・仕事・キャリア形成にも皆と同じように挑戦したい」「心と体が壊れる前に助けてほしい」「生活保護を受けずに暮らすため社会復帰の支援が欲しい」「介護される側だけでなく、する側にも社会的な権利を認めてほしい」など切実な声が寄せられています。そして、「気軽に休息がとれる機会」や「ケアラー自身が急病などの時の対応」さらには経済的支援策として「在宅介護手当」や「年金受給要件に介護期間を考慮する」と言った要望も高いようです。

Q7. 特にケアラーは自分のことはついつい後回しにしてしまいがちで、大事に至る前の予兆や緊急性をキャッチするために家族ケアラーの健康調査も必要ではないでしょうか。要介護者の支援に入る際にケアラーの状況にも目配りでき、必要な支援につなげられる家族ケアラー支援専門員のような人材の配置やアセスメントについて検討すべきと考えますが、いかがか、区の見解を伺います。

次に、昨今、関心が高まっている「ヤングケアラー」「ダブルケアラー」「介護離職」について考えていきます。

「ヤングケアラー」とは家族にケアを要する人がいて、家事や家族の世話などを行っている18歳未満の子どものことですが、ここでは30歳代くらいまでを含めた若者のケアラ―について考えます。慢性的な病気や障害、精神的な問題などのために、家族の誰かがケアを必要とし、そのケアを支える人がいない場合、未成年の子どもであっても大人が担うようなケア責任を引き受けざるを得ない状況が生じています。

成蹊大学准教授の渋谷智子(ともこ)さんの著書『ヤングケアラー』では、世界に先駆けてイギリスが1980年代末から実態調査やヤングケアラー支援を行なってきた事例が紹介されています。一方日本では、総務省が2012年に行った調査では15~29歳の介護者の数として17万7600人という数が挙げられていますが、子どもや若者が家族のケアを担うケースへの認識自体、まだ十分に広まっていないと述べています。2025年には団塊世代が75歳を迎え「大介護時代」が到来すると言われる日本社会で、施設は重度の高齢者を中心に受け入れ、基本的には在宅福祉を充実させる方向性のもと、家族ケアラーの負担が増大していき、世帯人数の縮小、共働きやひとり親世帯などであればなおさら、大人も余裕がなくなり、若者や子どもまで介護やケアに動員されるケースは今後ますます増えると指摘しています。

同書ではまた、2015年に南魚沼市、2016年に藤沢市が市の教育委員会の協力のもと、市内の公立小中学校・特別支援学校のすべての教職員を対象に行ったアンケート調査に触れています。両市とも6割の教職員から回答が寄せられ、南魚沼市では25.1%、藤沢市では48.6%の教職員が家族のケアをしているのではないかと感じた子どもがいたと回答しています。藤沢市の数字が高い背景には、アンケート調査に先立って市の学校関係者の間でヤングケアラーに関する情報がある程度共有されていたこと、また、外国に繋がりのある子どもが多くみられるこの地域において、先生たちが困りごとに直面している子どもにきめ細かに対応する「支援教育」の考え方が根付いていたためではないかと推測しています。いずれにしても、小中学生の中にも家族の介護を手伝いではなく主体的に関わっている子どもたちが少なからずいるということが明らかになりました。世田谷区においては高齢福祉課が2014年に区内の居宅介護支援事業所223ヶ所に対しヤングケアラー実態調査を実施しています。73.5%からの回答があり、36事業所からヤングケアラーの存在があるという回答がありました。その内、10代の介護者9名、20代の介護者51名の存在が明らかになりました。いずれの調査からもヤングケアラーの課題として、介護に対する情報不足や相談先がわからないことや就労支援や仕事と介護の両立ができる仕組みがないこと、介護技術や家事スキルがない、ヤングケアラー同士で情報交換や交流できる場が欲しいなどがあり、必要な支援がきちんと届いていない実態が浮き彫りとなりました。この問題は2016年の予算特別委員会でも生活者ネットワークの曽根文子がヤングケアラ―について取り上げていますが、改めて質問をいたします。

Q8. 近隣の世田谷区でもヤングケアラーの存在があることが分かりました。杉並区においても少なからずヤングケアラーは存在していると考えますが、区はこのヤングケアラー問題についてどのような認識をもっているか、お聞きします。、

Q9. ひとり親や精神疾患の親を持つ子どもの場合が多い傾向にありますが、ヤングケアラーは遅刻や早退、欠席、忘れ物、宿題をしてこない、衛生面や栄養面が思わしくない、部活などの課外活動ができないなど、子どもの学校生活への影響が顕著となっています。このような子どもがいた場合、学校はどのような対応をしているのか確認します。

ヤングケアラーはケアを担うことで、自分の学習、心身の健康、生活全般に影響がおよび、将来の選択が大きく変わってくることもあり、これは「子どもの人権」に係る問題です。ヤングケアラーが子どもとして普通に過ごせるための配慮は家庭や学校だけでなく、社会全体で早急に取り組むべき事柄だと考えます。

10代から20代後半まで祖母を介護した元ヤングケアラーは「僕は祖母の介護とひきかえに、友達、学業、仕事、そして時間を失った。本当は自分を理解してくれる人がほしかった。誰か助けてと叫びたかった。看取ったあと、周りからは「おばあちゃんは孫に介護してもらって幸せだったね」と言われたが、僕が本当に欲しかったのは、僕と祖母の幸せが両立できる生活だった」とインタビュー調査に応えています。周りの大人は何をしていたのかと怒りさえ覚えますが、こういう子どもをひとりもつくってはならないと思います。

Q10. 区でも子どもたちに一番身近に接する小中学校の教職員やSSWに対して、ヤングケアラーの存在を前提にした内容を研修に盛り込むことも必要と考えますがいかがか。また、その上で実態把握に努めるべきと考えるがいかがか、区の見解をお聞きします。

次に「ダブルケアラー」についてお聞きします。

晩婚化、晩産化、少子高齢社会、家庭の小規模化などが要因となり、異なるニーズを同時に満たすことを要求されることや、制度が縦割り故、複合化するケア課題にスピーディに対応できない、働き続けることが困難などの問題があります。

Q11. 杉並区におけるダブルケアの実態についてはどのような認識でしょうか。今年度、在宅医療・生活支援センターが開設し、そのような問題に取り組んだ実績はあるか。ある場合、どのような対応がなされたのかお聞きします。

Q12. 京都府の女性活躍・ワーク・ライフ・バランス推進担当が「仕事と子育て-両立支援ガイドブック」を作成し、ダブルケアをしながら仕事を続けていくために必要な情報が分野横断的にまとめられています。区においても分野を超えた情報を一元化した媒体が必要ではないかと考えますが、見解をお聞きします。

次に「介護離職」についてですが、2012年に民間のシンクタンクが行った「介護と仕事の両立支援に関する実態把握のための調査研究」によると、自分の意思で介護に専念したのは4割。無職の人の内、就業希望している人は40歳代で8割弱、50歳代で約5割、60歳代で約3割。本当はやめたくなかったという本音や仕事を辞めて介護に専念することで、かえって精神面、肉体面、経済面の負担が増したということが見えてきました。また、勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用していない人が5割前後もあり、勤務先に相談した人は約1割しかいません。

一方、企業の取組みでは介護をしている従業員を把握しているのは51.7%、両立支援制度の開始時に面談をしているのは32.6%、逆に両立支援制度を促すことなどを何もしていない、が30.1%、介護保険制度に関する情報を提供している、が18.8%、提供していない、が67.9%となっています。

ケアラーが望む職場の支援は残業をなくす・減らすこと、出社退社時刻を自分の都合で変えられることにあります。

働くケアラーの声を紹介すると「経済的に困窮することが介護者のもっとも恐れていること。欧米のようにケアラーへの給付がほしい。これだけ介護離職が続く原因は仕事との両立が無理だからである。看てもらっている人の人権はあるが、ケアラーの人権がないのが今の日本の介護制度である。また、介護が終わったケアラーへの社会復帰の道筋も制度としてつくるべき」と語っており、問題を端的に表しています。介護離職防止という視点での取組みについては、企業、自治体ともに遅れていると言わなければなりません。

2016年6月の閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」では介護離職ゼロの実現が掲げられ、第7期介護保険事業計画に向けた基本指針案では「介護に取り組む家族等への支援の充実」が新設されました。

また、「就労継続や負担軽減の必要性」「必要な介護サービスの確保、家族の柔軟な働き方の確保、相談・支援体制の強化」も示されました。

今年3月には厚労省から「家族介護者支援マニュアル」が発行され、これからの家族介護者支援施策のめざす方向性として、

家族介護者を「要介護者の家族介護力」として支援するだけでなく、「家族介護者の生活・人生」の質の向上に対しても支援する視点をもち、要介護者と共に家族介護者にも同等に相談支援の対象として関わり、共に自分らしい人生や安心した生活を送れるよう、地域包括支援センターの事業主体である市町村はもちろん、多機関専門職等と連携を図って、家族介護者にまで視野を広げ、相談支援活動に取り組むという視点を地域包括支援センターの事業に活かすこと求めています。

このように国も家族介護者支援を強化していく方向を打ち出しています。

Q13.この家族介護者支援マニュアルでは「介護者本人の人生の支援」というサブタイトルが入ったことは画期的です。区は、このマニュアルをどのように受け止め、活用していこうと考えているのか、お聞きします

最後に市民によるケアラー支援についてお聞きします。

地域の中ではケアラーズカフェや介護者の会などが少しずつ広がりを見せています。この杉並区において、介護保険制度導入後早い段階から孤立しがちな介護者を地域につなげるために、介護者サポーター養成が行われ、そのサポーターと家族ケアラーで介護者の会をつくってきました。また、ケアラーズカフェでは男性ケアラーやヤングケアラーなど同じ立場の者同士でつながり合う取り組みなども実施されています。ケアラーは信頼できるスタッフがいて困っていることを気軽に相談でき、新しい情報が手に入る場を求めています。一方、サロンやカフェに関わったスタッフは、様々な立場のケアラーの話を聞くことで、多様な暮らしへの理解が深まり、ケアラーへの支援が必要であることを地域や社会に発信できたこと、そして活動を通して新しい友人・知人が増えた、と感じています。今後、介護者サロンやカフェが地域で継続的に運営されていくために安定した開催場所の確保やスタッフの研修、広報活動などを行政や地域包括支援センターなどとも連携して作っていくことが必要です。

今後、困難を抱えるケアラーがますます増えると予想されますが、制度や行政サービスだけでは支え切れない部分には地域の力が必要です。身近な地域の中における拠点づくりは地域包括ケアシステムを定着していくための要になる取組みです。場と人、情報が交差し、お互いに支え合える地域づくりが重要であることを常々私は訴えてきました。今回はケアラー支援に焦点を当てて質問してきましたが、区内にはケアラー支援のほかにも子ども食堂や学習支援、緩やかな居場所・サロンなど様々な切り口での地域の拠点が存在しており、それぞれが連携し、重要な地域資源として役割を果たしていくための仕掛けが必要ではないかと考えています。

そこでお聞きします。

Q14.現在ある多様な区民主体の活動・事業について区はどの程度把握しているのか。どの相談窓口に行っても、多様な地域資源とつなぐという意識は重要です。区と共に地域づくりのパートナーとして連携、支援していくことに対する区の見解をお聞きします。

Q15.また、これらの区民発の活動・事業などが継続していくための支援も必要であり、具体的に区が行える支援方法にどのようなことがあるのかお聞きします。

ケアラ―の早期発見・早期支援・継続支援が重要なカギです。ケアラーを孤立させない、追い詰めない仕組みや制度をどう作るか、区の姿勢が問われています。ケアラー問題は社会的損失にもつながることでもあり、ケアラーを取り巻く問題を総合的にとらえ、対策を打って行くことが必要です。

要介護者にはケアプランがあるように、ケアラ―にはライフプランが必要です。ケアラーの心身の健康を守り、ケアラーと地域をつなぎ、情報を提供するツールとして開発された「ケアラー手帳」を取り入れていくことも一案かと思います。

ケアされる人の支援法は介護保険法、老人福祉法、高齢者虐待防止法、障がい者総合支援法などありますが、ケアする人の支援法はないのが現状です。今後、ケアラー支援を社会問題として解決するにはケアラー支援法や自治体独自の条例づくりも必要ではないかと考えるところです..

そこで、最後の質問です。

Q16.ケアラ―が健康でその人らしい生活が送れるように、ケアラ―支援のあり方を当事者も交えて分野横断的に議論していくことが求められていると思いますが、区の考えや今後の展望についてお聞きして、私の一般質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ108号発行 2018.7.15

108号最終

最終ウラ