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2009年度決算についての意見 2010.10.7市橋綾子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、決算特別委員会に付託された2009年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し述べます。

 

当該年度は、歴史的な政権交代を経て国のしくみが大きく変化を遂げた一方、日本経済は、アメリカの金融危機に端を発したいわゆる「百年に一度」といわれる世界的な景気後退に陥りました。民間消費の堅調さを背景に持ち直し基調がみられたのも事実ですが、デフレを懸念する声は消えず、雇用は改善されないまま、完全失業率5.7%と過去最高水準を示した年でした。

 

当区においては、新公会計制度になって初めて、経常収支比率が適正水準とされる80%を超え、83.0%となりました。入ってくるものが減り、予算の執行率を高めていった結果と考えられますが、私どもは減税自治体構想の実現に走ったため、緊縮政策がとられた結果ではないかと思っております。いずれにしても、今後、注視していく必要があることは言うまでもありません。

 

限られた時間ではありましたが委員会での質疑をとおし、また、いただいた資料をもとに施策の執行状況について私ども会派で調査を行ったうえで判断した結果、一般会計ならびにすべての会計決算案に対し区議会生活者ネットワークは認定すべきものと判断しました。以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことなど生活者ネットワークの考え方を述べさせていただきます。

 

収入未済額について

一般会計のみならず、国民健康保険をはじめとする各保険事業会計においても、収入未済額が増大し続けています。全国どこの自治体にも現れている傾向ですが、当区においても効果的な解決策が見えません。ただ、この解決は低所得層からの徴収に求めるより、富裕層にある滞納者への対応を優先すべきです。区はこのことを念頭に、さらなる地道な徴収努力をされるよう求めます。

 

新しい公共について

今回の質疑の中で、「新しい公共」というキーワードがたびたび語られました。先の一般質問で、区長の言われる「新しい公共」は、内閣府の「新しい公共円卓会議」における見解とほぼ同じ考えであることが示されました。

 

「円卓会議」が今年6月に発表した「新しい公共宣言」は、その冒頭で「人びとの支えあいと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当事者の自発的な協働の場が『新しい公共』である。」とうたっています。公共サービスの担い手が行政以外の民間に広がることが「新しい公共」の姿なのではなく、「さまざまな当事者の自発的な協働の場」ということをしっかりと受け止めていただきたいと思います。

 

その意味で、NPOなどの市民活動に対して、その自発性の芽を育て、行政もともに育ちあうというパートナーシップ型の区政を築いていきたいものです。杉並区では、他自治体に比して早くからNPO等の市民活動が活発に行われ、また行政側の取り組みも積極的に展開されてきました。その分ここへきて問題や課題も見えてきているように思います。今後市民と行政によるさまざまな協働の実践を積み重ねることで、「新しい公共」の風土を醸成していけるものと期待しています。

 

選挙管理委員会について

711日のトリプル選挙で大量の無効票が発生した事件は、記載台を4か所とすべきところを2か所にしたことが主たる原因であることを選挙管理委員会も認めておられます。そして今回、参院選の2枚の投票用紙がマニュアルとは逆の順で渡されていた投票所があったことも明らかになりました。選管には、期日前の投票所および当日の66か所の投票所で何があったのか、余すところなく解明したうえで、社会的規範に照らして区民が納得できるような総括がされるよう、あらためて強く求めます。

 

環境施策について

都の改正環境確保条例が今年度より施行され、温室効果ガスを基準年度より8%削減という、きわめて高い削減義務が区庁舎にも課せられました。しかし、目標達成に向けた区の具体策が明確に示されていません。もとより、この削減義務は、職員だけががんばることではなく、区民や事業者、もっといえば議会もともに参加すべきものです。具体策を目に見えるように提示くださいますようお願いします。

 

「漢字表記かかな表記か」ということについて、一言申しあげます。

「子ども・子育て行動計画」の「ども」の表記をかなとしたことを歓迎しています。「子ども」の「ども」はかな表記が一般的に定着し、近年は国の施策をはじめ公的な文書においても漢字表記をほとんど見ることはありません。これを区がいまさら漢字表記に変更するのであれば、ふれあい、みどり、すぎなみ、まちづくり、くらし、あんしん、などの言葉も漢字表記にしなければ整合がとれないのであり、「ども」をかな表記に戻したことは至極当然です。この際、「子供園」「子供読書活動推進計画」などの「供」の表記をできるだけ早い時期にかな書きに改めることを求めます。

 

最後に議会運営について

毎回申し上げていますが、予算は見込みのものであるのに対し、決算は行政が執行した税金を表したもので重要さの度合いは劣るものではありません。決算審議の時間は予算の審議時間一人6分より短い5分という状態では、とても、決算のチェックを大事にして行こうという議会の姿勢がうかがえるものではありません。審査中、予定時間以内に質疑が収まるよう、答弁時間の短縮を促す声がしばしば聞かれましたが、当初の時間設定に無理があったのだと思います。当委員会の冒頭で、他の委員から質問時間への指摘がありましたが、私ども区議会生活者ネットワークとしても決算の質問時間についてご一考いただきたい旨、申し添えまして、区議会生活者ネットワークの意見とします。

2010年区議会第3回定例会 小松久子の一般質問と答弁

【Q】 ● 区長は、職員に対しレポート提出を求めたと聞くが、レポートの内容はどのようなものだったか。それに対し区長はどのような感想を持たれたのか、伺う。

    ● 職員からのレポートを基本構想づくりにも反映させられるのでは。職員レポートをどのように活用される考えか。

    ● 区はこれまで、様々な行政評価の手法を取り入れてきたが、区長の評価は。特にその実用性について伺う。

     ● 新しい行政評価システムをつくろうとしているようだが、市民自治を進める観点から、区民による評価を新たな行政評価システムに取り入れることが必要だと考えるが、区長の見解を伺う。

     ● この4年間で区長自身が最もやりたいことは何か。

 

【A】  4年間の任期中に、区長として最もやりたいことは、杉並区を、暮らしやすい、より魅力のある、質の高い住宅都市として発展させること。その第一歩として、今後10年程度の近未来の杉並区のあるべき将来像と、その実現のための確かな道筋を示す、新たな基本構想と総合計画を策定していく。

     このような、新しい杉並区を築いていくためには、まず、これまでの区政や事業について、評価・検証を行うことが必要だ。そうした考えから、管理職をはじめとする職員に率直な意見を求めたところ、短期間にもかかわらず、多くの意見が提出された。このことを見ても職員の区政への意欲が感じられる。その内容も、職務上の課題から、これまでの区の組織運営や今後のあり方について、非常に率直な意見が寄せられており、大変興味深く、また、今後の区政運営に役立つものだ。こうした評価・検証が、行政内部で日常的に行われ、常に、区政運営の改善や政策の充実を図っていくことが重要。本区の行政評価システムは、行政内部での評価を基本に、外部の視点からの評価も加えたシステムとして、早い時期から実施され、その機能を果たしてきたと、評価している。

     そこで、今回実施する「杉並版事業仕分け」も、この行政評価システムを基本に行う。今後は、施行錯誤を行いつつ、区民の目線に立って、より実効性のある評価システムにしていく。

 

【Q】 ● 区長の考える「新しい公共」とはどのようなものか。新しい公共円卓会議がまとめた『宣言』と同じものか。

    
新たな基本構想を策定する中でこれまでの「協働」を検証することには賛同する。ここでは、協働の当事者でもある区民が検証する必要があると思うが、見解を伺う。

 

【A】 本区の「新しい公共」とは、質・量ともに拡大する公共サービスを適切に提供するために、豊かな協働の地域社会づくりを進めるものだ。こうした認識については、国と自治体との違いはあるが、「新しい公共円卓会議」と同様。

     この基本認識に立って、今後、新たな基本構想、総合計画の策定にあわせ、これからの杉並区の協働に関する計画をつくっていく。その検討に際して、既に様々な分野で公共サービスを担っているNPOや利用者の声もお聞きしながら進めていきたい。

 

【Q】 ● ESDについては2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」として議決されたが、学校教育におけるESDの認識について教育委員会はどのようにとらえているのか、伺う。

 

【A】  ESDとは、持続可能な発展のための教育であり、一人一人が、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、よりよい社会づくりに参画するための力をはぐくむことを目的とする教育である。

     これまでも学校教育では、総合的な学習の時間を中心に、環境保全や人権尊重などの課題を横断して取り扱い、地球規模で問題を認識するとともに、身近なことから行動し、解決する力の育成を図ってきた。

     近々、国立教育政策研究所から、教員向けの報告書が出されると聞いていますので、さらに研究を進めていく。

 

【Q】 ● エコスクールの取り組みをESDの観点から評価・検証することが必要と考えるがいかがか。

 

【A】  エコスクールの取り組みは、児童生徒だけでなく、教師、家庭、地域の方々も含めて、一人一人が持続可能な社会を創るために、身近なことから行動できる力をはぐくむことをねらいとして、「施設づくり」「学校運営」「環境教育」という3本の柱で推進してきた。今後、どのような観点で評価・検証を行うか、研究を重ねていく。

 

【Q】 ● 環境教育等の課題において、NPO等市民団体との協働を進めていくことが望ましいと考える。各校がアクセスできるようなツールの整備と併せて、教育委員会の見解を伺う。

 

【A】  すでに環境教育では、NPO等専門性の高い団体と連携、協力して実施されている。情報提供については、今年度済美教育センターにて、各校をつなぐネットワーク上で、学校教育への支援にかかわる外部人材情報をデータベース化し、各教員が常時検索できる機能を立ち上げた。今後、掲載情報を積極的に増やし、内容の充実を図っていく。

 

【Q】 ● 学校教育において、21世紀を生きる地球市民を育てるために、ESDにかかわる研修を実施する必要があると考えるがいかがか。

 

【A】  これまでも体験的な活動を通して、問題解決の力や社会とかかわる力など、ご指摘の考えに基づく研修が実施されてきた。今後も引き続き内容の充実に努めていく。

 

【Q】 ● 昨年度は11校、今年後は22校に学校司書が配置され、実績があがっていると聞くが、教育委員会はどのように認識しているのか。

 

【A】  学校司書は、児童・生徒が来館したくなるような魅力的な環境整備や、児童・生徒への読書相談、教師への選書補助等に取り組んでいる。

     いずれの配置校でも、図書館が常時開館され、児童・生徒の図書館利用の回数や貸し出し冊数が増加したり、図書館の活用により授業が充実したりするなど、着実にその成果を上げている。

 

【Q】 ● 平成26年度までに学校司書の全校配置を目指すということであるが、実施計画に位置づいていない。もっと早く全校に配置すべきであり、その計画を明確に示すべきであると考えるがいかがか。

 

【A】  学校司書の配置は、教育委員会が重点を置いて取り組んでいる施策であり、できる限り早い時期に全校配置が実現できるよう、引き続き努力していく。

 

 

【Q】 ● 学校図書館教育の充実のためには、図書の流通体制やセンターの支援体制を確立すべきと考えるが、電子ネットワークの整備スケジュールを含め、教育委員会の見解を伺う。

 

【A】  現状は、各学校のシステムからは、インターネットを通して地域図書館の図書情報を見ることはできるが、他校の情報を見ることはできず、ネットを通じた相互貸借もできない。物流についても、委託事業者による配送等、図書館から学校に配送する体制だけとなっている。こしたことから、昨年度改定した子供読書活動推進計画において、今後、学校図書館、区立図書館をネットワークで結び、図書情報の共有化を図るとともに、相互貸借システム及び配送システムの構築に向け検討すると定めた。

     なお、済美教育センターの支援体制については、平成21年度に組織改正が行われ、学校図書館運営の総合的な支援を行う「サポートデスク」を設置したので、今後、ノウハウの蓄積を図り、支援の充実を進めていく。

 

【Q】 ● 子供読書活動推進計画に示された「学校図書館運営計画」の作成状況と活用状況について伺う。

 

【A】  同計画は、現在小学校27校、中学校8校で作成されており、図書整備やボランティア活用、学校行事と関連付けた読書活動の推進、各教科における調べ学習の充実等、計画的な学校図書館の運営に生かしている。今後、新学習指導要領の完全実施に合わせ、23年度に小学校全校、24年度に中学校全校での作成を目指していく。

 

【Q】 ● 採用された22名の司書は、成果を上げようと努力していると聞くが、その身分はパートタイマーであり、現在の待遇は十分とは言えない。教育現場における重要な専門職として、待遇を改善すべきと考えるが、いかがか。

 

【A】  学校司書の勤務時間や報酬の支給にあたっては、その勤務内容に沿ってパートタイマーとして行っている。待遇の改善については、これまでも取り組んできているが、今後とも検討する。

2010年区議会第3回定例会 市橋綾子の一般質問と答弁

【Q】 ● 2009年度の保険福祉事業概要によれば、特定高齢者対象の介護予防ケアプラン作成数766人とあるが、特定高齢者の人数、実際に介護予防事業を利用した人は何人か。

    
NPO法人の調査では、特定高齢者の介護予防ケアプランを作成しない理由、また、プランをたてても介護予防事業を利用しない理由は、ニーズにあってないとしている。この状況を区としてはどうとらえているか。

 

【A】   特定高齢者の人数ですが、平成21年度は6,482人で、このうち延べ754人の方が、特定高齢者施策に参加しる。

     次に、介護予防ケアプランの作成が少ない理由は、特定高齢者と判定されても介護予防事業には参加したくないと考える方が大半だ。また、プランを立てても介護予防事業を利用しないとのご指摘だが、介護予防ケアプランは、事業に参加するときに作成するので、杉並区ではそういうことはない。 区としては、制度発足後、使いやすい事業となるよう、毎年見直しを行ってきており、今後も様々な工夫をしていきたいと考える。

 

【Q】 ● 特定高齢者となった方が、介護予防事業を利用しないときにも要支援・要介護とならないようなフォローが必要と考えるが、いかがか。

    ● 特定高齢者施策として行っている栄養改善教室への参加者が少ない、少ない理由を区としてどうとらえているか。

    ● 他の自治体では、特定高齢者施策の事業への参加者が少ないため、一般高齢者施策で事業を提供していると聞くが、当区においても見直しが必要と考えるが、いかがか。

 

【A】  介護予防事業を利用していない特定高齢者に対しては、地域包括支援センターから、様々な高齢者向けの事業を紹介するなど、介護予防事業への理解を深めてもらうよう、情報提供に努めている。

     栄養改善教室は低栄養状態にある高齢者を対象として、栄養状態の改善を目的としており、もともと対象となる特定高齢者が少ないことから、事業の参加者も少数にとどまっている状況にある。

     また、本区でも、特定高齢者の方が一般高齢者施策の事業に参加できる仕組みになっている。

 

【Q】 ● 社会参加や閉じこもり施策、介護予防の視点から効果があるといわれている会食サービスを区としても取組ん

ではどうか。

    
地域の介護予防拠点としてゆうゆう館があるが、その取組みの一つとしてゆうゆう館を会食サービスの会場としたらどうか。

 

【A】  食事をしながら、会話を楽しむことは、閉じこもり対策や介護予防に効果があると認識しており、区内にはいくつかの民間団体が、そのような取組みを自主的に行っている。すべてのゆうゆう館において、直ちに会食サービスを実施するのは、設備、担い手の問題等から困難な状況だが、今後、各団体や他自治体の取組み状況等を参考にしつつ、区としての考え方を整理していく。

 

【Q】 ● 21年度介護保険事業会計の介護予防関連歳出予算の執行状況を伺う。

 

【A】  平成21年度の決算では、当初予算額に対する介護予防関連事業の執行率は、96.2%である。

 

【Q】 ● 介護保険の要支援認定者のうち、実際に介護保険のサービスを利用している者は何人か。

                             ● 日常生活を円滑に行うためには、介護予防給付のサービスでは足りないと感じている利用者が多いが、区の認識

を伺う。

 

【A】   要支援認定者のうち、介護保険のサービスを利用している方は、本年5月末現在、3,393人で、利用率は

59%である。次に、予防給付では、「本人ができることはできる限り本人が行う」ことを基本に、原則ヘルパーが利用

者とともに行い、利用者の持っている機能をできる限り維持改善することを目指している。しかし、この主旨が、利

用者に十分PRできていないことが背景に考えられるので、今度はこの主旨が周知できるよう努めていく。

 

【Q】 ● 区は昨年度から外出支援サービスを実施したが、生活援助についても独自サービスを検討していくべきと考えるが、

いかがか。

 

【A】  区長が所信表明で述べたように、在宅介護者の高齢化や介護の長期化が進む中で、介護保険サービスだけでは要介護高齢者の在宅生活全般を支え切れないことは明白だ。区は、介護保険サービスを基本としながらも、配食サービスなど各種の日常生活支援サービスを実施しており、昨年度からは新たに、介護保険では対応しない外出支援サービスを開始した。今後も、区民や在宅介護に携わる方々の意見や要望を組み入れながら、要介護高齢者の在宅生活を支援するしくみとして、介護者の負担軽減策を含めた総合的な支援策を検討していく。

 

【Q】 ● 健康づくりと介護予防を繋ぎ、地域の様々な社会資源を連携させていくためには、5か所の保健センターが健康

づくりの拠点として担う役割は大きいものの、高齢者に対する視点が弱いと考えるが、いかがか。

    
保健センターが、例えば、ゆうゆう館で活動するNPOや市民団体等の地域資源とも協力し、連携を図っていくことが大切と考えるが、いかがか。

 

【A】  保健センターは各種健康講座や自主グループ活動支援など、区民に身近な健康づくり事業を実施しており、一方、高齢者対象の介護予防事業は、高齢者部門が所管している。なお、「ものわすれ相談」や「筋力アップ応援教室」等の介護予防事業は、保健所や保健センターの場も活用するなど、高齢者部門と保健部門との連携を図っている。

    また、今後も活動案内や情報提供も含め、健康づくりの視点から、ゆうゆう館で活動する団体等と、支援・協力を図っていく。

【Q】 ● ゆうゆう館が、NPO等に委託された協働事業の目的の一つに健康づくり(介護予防)があげられ、各館で様々な企画が進められている。ここにケア24や保健センターの持つ専門性や情報が有効に繋げられるべきであると考えるがいかがか。

 

【A】  協働事業を実施しているゆうゆう館では、NPO法人等の特色を生かした健康づくり事業が行われており、中には、既に地域包括支援センターと連携して共同事業を行っているゆうゆう館もある。今後は、更に、地域包括支援センターや保健センターとの連携を図り、ゆうゆう館における健康づくり事業の効果的な推進に努めていく。

 

【Q】 ● 地域包括支援センターケア24には、かなり広範囲にわたる業務内容があるが現状と課題は何か。

 

【A】   地域包括支援センターは、以前は在宅介護支援センターといい、介護保険制度が始まる以前からあり、制度発足後にさらに役割が増え、今では地域包括センターと名称を変えて現在に至っている。

     制度や名称を変更するたびに、地域の中で果たす役割もいろいろと変わってくるが、この間の高齢者不在問題の一連の対応の中で、関係者の話を聞くと、地域包括支援センターは随分と大きな役割を担っている。

     これから、高齢者の訪問面接調査のあり方検討会で議論していくが、調査や見守りの担い手をどう確保していくかという点で、地域包括支援センターの機能を強化していくことも、重要な論点になると考える。

 

【Q】 ● 業務内容の中に地域のネットワークづくりがあり、保健福祉サービスを総合的に利用できるよう様々な社会資源を結びつける役割が求められているが、十分機能しているか。

    
ケア24は区民にとって高齢者福祉の最も重要かつ身近な窓口である。ケア24を地域づくりの拠点として位置づけ、区の連携がより一層必要と考えるが、区の見解を伺う。

 

【A】  ケア24では、介護保険や福祉サービスの申請受付とともに、高齢者や介護者の多様な相談に対しても適切なサービスの利用や関係する窓口につながるよう専門性を生かした役割を発揮している。また、地域ケア会議やあんしん協力員の連絡会などの開催を通して、関係する方々との連携強化に向けた地域ネットワークづくりに努めている。

     区は、そうした活動を支援するため、ケア24の職員を対象に「地域づくり」研修を実施しており、個々の事例においても、訪問指導事業や老人福祉法、高齢者虐待防止法等に基づく支援などを通して連携した対応に努めている。

     また、定期的に開催するセンター長会、ブロック会などにおいても、ケア24との意見交換の場を設けているが、今後とも、日常的な連絡や情報共有の機会を十分に持ちながら、区としてもケア24との連携を一層強化していく。    

 

【Q】 ● 健康づくりや地域包括支援センターの地域づくりの視点を入れ、総合的な介護予防に取組むために、保健福祉計画に介護予防の考え方をしっかりと位置付け、施策の体系化と総合化を行うことが必要であると考えるが、いかがか。

 

【A】   区としては、介護予防事業について、現在でも保健福祉計画の中で、体系的に位置付けて実施している。

     今後の介護予防施策については、本年8月、国の要綱改正により、特定高齢者を把握する際の医師の診察や介護予防プラン作成を省略することも可能となったことを受け、特定高齢者の把握方法を含め、介護予防事業全般を見直すとともに、従来からの生きがい対策との整合性を図り、計画的に推進していく。

第3回定例会一般質問     2010.9/14 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークとして、区長の所信について、持続可能な発展のための教育について、学校図書館について、以上3点について質問いたします。

 はじめに<区長の所信について>です。区長が就任されて2か月たち、このたびなされた所信表明では、区政の舵を切る手法として「脱山田」路線を打ち出しながら、区民や職員とともに対話と合意による新しい区政を築いていこうとする姿勢が読み取れました。ここでは選挙公約に沿って政策課題が提示されましたが、その中から大きく2点について質問いたします。

 

1点目は<これまでの区政の検証と評価について>です。

 区長は就任早々職員に対しレポート提出を求められたということです。先日の質疑では、いまも読み進めているというお話でしたが、たいへん興味深い内容であろうと想像しています。最初の質問として、レポートの内容はどのようなものだったのか、それに対し区長は率直にどのような感想をもたれたのか、うかがいます。

 また、レポートを基本構想づくりにも反映させられるのではないかと思いますが、職員レポートをどのように活用されるお考えか、併せてうかがいます。

 

次に行政評価についてです。

 当区ではこれまで、行政評価に関してさまざまな手法を積極的に取り入れ、毎年改善に努めてこられました。いってみれば、これが決定版と言えるような評価システムが出来上がっていない、ということでもあるかと思います。当区でのこれまでの行政評価への取り組みについて、区長はどのように評価されているのか。「既存の行政評価システムについては・・・必要な見直しを行い、実効性を高めてまいりたい」とのことです。とくにその実効性についてのお考えをうかがいます。

 新しい行政評価システムをつくろうとされているようですが、有識者・専門家による外部評価のほかに、市民自治をすすめる観点から、区民による評価が必要だと思います。区民による評価を新たな行政評価システムの中に取り入れるべきではないのでしょうか。区長の見解をうかがいます。

 

今回の区長選の結果は、目新しいことに飛びついて世間の耳目を集める区政より、堅実で身近な生活を大事にする区政を区民が求め、選択したことを意味するかと思います。所信で述べられた「区民参加」の重視や「ボトムアップ」の姿勢には共感が持てます。しかし所信の全体を通して「区長として何がやりたいのか」「どのような区政をつくっていきたいのか」がよく見えません。この4年間でご自身が区長としてもっともやりたいことは何なのでしょうか。

 うかがって、2点目、<「新しい公共」と協働について>質問いたします。

 

今議会では、基本構想のための審議会設置の条例案が提案されています。区長が基本構想づくりに直ちに着手されるお考えとうかがい、生活者ネットワークは、基本構想の策定にあたっては、あらゆる場面で思い切った区民参加を追及していただきたいと考え、具体策を提案いたしました。このたびの所信表明では「多様な区民参加」「新しい公共」の発想などがいわれ、私たちの提案がいくらかは採用されたものと評価するところです。

 

さて、「新しい公共」については、昨年夏の政権交代で首相に就任した鳩山前首相が内閣府に設置した「新しい公共円卓会議」が、菅内閣へのバトンタッチ直前に「宣言」をまとめています。それによれば、「新しい公共」とは「支えあいと活気のある社会」をつくるための当事者たちの「協働の場」である、とされています。区長のお考えになる「新しい公共」はどのようなものなのでしょうか。

 「新しい公共」については今回多くの会派より質問が出され、行政管理担当部長より「質・量ともに拡大する公共サービスのニーズに伴い・・・うんぬん」という答弁がされていますが、区長ご自身のお考えをお聞かせください。先の「円卓会議」宣言で述べられたことと同じと考えてよいか、うかがいます。

 

ところで「協働」という言葉が今も出てきましたが、「協働」は「新しい公共」を論じるとき必ずと言ってよいほどついてくる概念です。生活者ネットワークは、これまで繰り返し「協働」について区のお考えを質してきました。それは、「協働」は行政とNPOなど市民が対等な立場であるべきであるのに、区における「協働」の実態はそうでなく、行政優位になっていると感じてきたからです。

 私は区の「協働」のとらえ方には違和感があり、検証が必要と感じてきました。2005年から3年間、実施された協働事業提案制度は、市民と行政の協働の実践として実験的な意味あいも持つ事業でしたが、きちんとした検証や総括が行われないまま、終了されました。本来、当時の協働化ガイドラインの作成主体であり、かつ協働事業の選定主体でもあった協動推進委員会や、NPO等活動推進協議会、協働事業の実施団体、さらに区民等を含めての検証が必要であったと考えます。

 

一方、協働事業の発展的施策と区が説明した民間事業化提案制度は、始まって5年目となる現在、民間事業者にビジネスチャンスを提供する性格が顕著であり、私たちの考える市民と行政の協働とはまったく異なるものとなっています。

 新たな基本構想づくりのなかでこれまでの「協働」を検証することには賛同するものです。以上の問題をふまえて、協働の一方の当事者である市民が検証する必要があります。ご見解をうかがいます。

 これからは協働のあり方として、民間提案型の業務委託や市民参加型の公共事業なども考えられると思います。行政とNPOの関係を「事業の発注者と受注者」という上下関係だけでとらえていると、新しい発想が広がっていきません。「新しい公共」の領域が広がっていくにつれ、行政とNPOによる真の協働をすすめるため「委託」でも「補助」でもない、対等、自主・自立の関係を担保する規定整備が必要になっていくと考えます。

杉並区では、このような考え方に基づく「協働ガイドライン」を2004年度より定め、毎年更新してきましたが、残念なことに十分生かされないまま、それがあることすら忘れられたような状況が続いてきました。

 区長は協働の取り組みを推進する計画を策定すると述べられ、期待しています。ただそのとき、推進計画の策定と併せて、協働にふさわしい契約のあり方についての議論を深めていただきたいと思います。法的整備として「協働契約条例」の策定を検討する自治体の動きも研究いただきたいと考えます。

 区では今般、公契約条例についての庁内検討組織を立ち上げたとうかがい、1年前の決算委員会でその策定を求めた者として、前向きな検討がされるよう求めますが、「契約のあり方」を論じるなかでぜひ「協働の契約」も俎上に載せていただきたい、と考えるものです。

 要望として申し上げ、2番目の項目、<持続可能な発展のための教育について>質問いたします。 

 

ここで「持続可能な発展のための教育」というのは、英語の「Education for Sustainable Development」の日本語訳です。Developmentの訳語を「発展」としましたが、「開発」という言葉があてられることもあれば、「持続可能な社会に向けた教育」と訳されることも、「持続可能な社会の構築のための」とされることもあり、混在しています。文部科学省は「持続発展教育」という言葉を用いて啓発を行っているところですが、「education」「sustainable」「development」の頭文字をとってESDと呼ぶことが一般的であるため、ここでは以下、ESDとします。

 

ESDとは何かということについて、それがめざす「持続可能な社会」をイメージするところから論を起こしたいと思います。

 簡潔に言うなら、地球規模の環境破壊や、エネルギーや水などの資源保全が問題化されている現代において、将来世代のすべての人が健康で文化的な生活を営むための社会づくり、ということになろうかと思います。

 このためには、グローバルな視点からは貧困の克服、保健衛生の確保、質の高い教育などが必須ですし、性別、人種等による差別のない、公平な社会に向けて努力されなければなりません。さらに、これらの取組は地球上の資源が有限であること、環境容量には制約があること、自然の回復力などを意識しなければならず、戦争や紛争は、難民を生み、環境を破壊するため、平和への取組みが不可欠です。

 これらを踏まえ、「持続可能な発展」を進めていくために、学校教育、学校外教育を問わずあらゆる領域から、国際機関、各国政府、NGO、企業等あらゆる主体間で連携を図りながら、教育・啓発活動を推進する必要があり、それがESDということになります。この教育の範囲とは、環境、福祉、平和、開発、ジェンダー、子どもの権利教育、国際理解教育、貧困撲滅、識字、エイズ、紛争防止教育など多岐にわたるものです。

 

ESDについては、2002年の国連総会において日本が提唱し、2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」として各国が取り組むこと、その推進機関を国際連合教育科学機関、通称ユネスコとすることが議決されています。

 小泉政権当時にほかならぬ日本が提案して始まり、10年のうちすでに半分過ぎてしまったのに、日本であまりにも周知されていないことに驚き、杉並区にぜひ積極的に取り組んでいただきたいという思いから、今回質問することにいたしました。

 

先日、ESDに関するある学習会に、長年杉並区の環境教育に熱心に取り組んでこられた区立学校の先生が参加され、「持続可能な社会づくりのための教育、ESD」という言葉、理念を初めて聞いた、大変重要な概念だと思う、と話しておられたと聞きました。

 ESDで取り組む内容は目新しいことではありません。また現場に新たな負担を増やすものでもありません。区はすでに、総合的な学習の中で環境教育、人権教育、国際理解教育などに取り組んでこられました。現在直面している地球的な規模の諸課題を前に、これらのさまざまな機会に行われている学習を、「持続可能な社会づくり」という概念で整理しつなぐこと、それを学校や地域社会全体で共有し、具体的な行動につなげることの重要性を主張したいのです。

 

この項の最初の質問として、区教委がESDについてどのようにとらえておられるか、おうかがいします。

 ESDはあらゆる分野の教育課題を包括していますが、なかでも関わりの深い環境教育に関連して次におたずねします。

 当区の環境教育はエコスクールを推進する3つの取り組み、すなわちハード面での整備、環境教育、環境配慮行動の中で位置づけられている、と認識しています。今般、区長が打ち出したエアコンの全教室設置も、エコスクールと矛盾するととらえるのでなく、子どもが自ら管理・運用にかかわり環境教育を進めるツールとして、むしろこれを機会にエコスクールと関連付けることにこそ、教育としての意味があり、そうすることでESDの実践としたいと考えます。

 エコスクールの3つの取り組みを、持続可能な社会をめざすESDの観点から評価・検証することが必要と考えるものです。いかがでしょうか、見解をうかがいます。

 

また、ESDは地域づくりに貢献するものといえますから、これを学校の現場で展開するとき、これまで環境教育を協働により実践してきたNPOなどの市民団体とともにすすめていくことが望ましいのは当然といえます。区内で環境に限らずさまざまな活動、たとえばまちづくり、人権、福祉、消費者問題にかかわる活動、国際交流活動などを実践しているNPOや団体を区がつなぎ、ESDの活動として位置づけなおすことで、これまでの活動実績を生かしてより豊かな学習が展開できると考えます。

 NPOなどがこれまで実践し蓄積してきた活動の情報は、地域の資源として有効に活用されるべきです。そしてESDをすすめる上で、さらに広く、深く展開させるため、各学校がこれらの情報にアクセスできるようなツールを区は整備する必要があると考えます。いかがでしょうか。区のお考えをうかがいます。

 新しい学習指導要領でもESDの理念を各教科の学習に採り入れることとされています。小・中・高校の社会や理科の学習指導要領に「持続可能な社会の構築」という観点が盛り込まれていますが、これはまさしくESDの考え方そのものといえます。

 

ESDを、21世紀に生きる地球市民を育てる価値観としてもっと広めていく必要があります。当区でも、校長をはじめとする管理職や教師を対象として講習会や研修を行うことが必要ではないでしょうか。おうかがいします。

 さきに述べた「新しい公共円卓会議」宣言でも、「企業にも求められる『持続可能な社会づくり』」や社会貢献活動、社会的活動を担う人材育成や教育の充実がいわれています。これらは、ESDの理念のもとで実体化することができると考えます。教育行政だけでなく、あらゆる事業にESDの視点が求められています。これからつくっていく基本構想にも、この認識を外しては考えられません。以上申し上げ、最後の項目に移ります。

 

<学校図書館について>の質問です。

 2年前、2008年の第2回定例会で私が初めて学校図書館の充実を、と求めて質問して以降、そのとき指摘した課題について区教委が真摯にとらえ、改善に努めてこられたこと、とくに、その翌年の2009年、そして今年と、学校司書の配置が進められつつあることを率直に評価し、深く敬意を表するものであることを、まず申し上げます。

 そのうえで、この間の取組みを検証しながら、さらなる充実に向けてこの動きを推進させていただきたい、との思いから今回質問したいと思います。

学校司書の配置は、昨年11校、今年は22校と増えました。今年の配置はついこの前の7月から始まったばかりにもかかわらず、司書がいるようになった学校図書館では、目に見えて実績があがっているという具体的な話を何人もの方から聞いています。区の認識はいかがでしょうか。まずおたずねしておきます。

 期待していた通りの、あるいはそれ以上の効果が表れているという話を聞くにつけ、全校に早く司書配置を広げてもらえないものか、という保護者の要望はもっともだと思います。

区は先般「子ども読書活動推進計画」を改定され、H26年度までに学校司書の全校配置をめざすと明記されました。しかし問題は、これが実施計画に位置づいていないことです。また、全校配置まであと4年もかかるということです。この増設計画は、毎年11校ずつ増やしていくということなのでしょうか。もっと早く全校配置すべきではないのか。少なくとも全校配置に向けた計画を示すべきではないのでしょうか。見解をお聞かせください。

 ちなみに、他の自治体では、学校図書館の運営を民間事業者に委託するところもあり、学校司書が委託事業者の管理のもとに配置されるようなケースも見られます。しかし、杉並区では読書推進活動や図書教育を重要な教育課題と位置づけ、教育委員会の責任において自前の運営体制がとられています。であるからこそ、良質な学校図書館運営のもとに学校司書の能力が生かされるような環境が整備されているのだと思います。もし民間事業者のもとに司書が配置されると、評価は違ったものになったかと思います。

昨日、他の議員の質問への答弁で、区長が地域図書館の運営について、全館を指定管理とすることには「慎重に」と述べられ、この方針に異を唱えてきた者として、ぜひその方向で進めていただきたいと、区長にエールをおくりたい思いですが、学校図書館の運営についてはなおのこと、直営を貫いていただきたい、またそうしていただけるものと信じています。

 

さて、話をもとに戻しまして、司書の配置が今後広がっていくと、学校同士、また地域図書館との本の貸し借りがよりひんぱんに行われることになります。すなわち、活発な物流がスムーズに行われるような体制が求められるということです。済美教育センターの支援体制もより強化し確立させていく必要があります。また「子ども読書活動推進計画」で計画されている電子ネットワークの整備については、いまだにつながっていないと聞きますが現状はいかがでしょうか。整備スケジュールはどのようになっているのでしょうか。スケジュールを立てて進めていただきたいと考えますが、あわせて見解をうかがいます。

 同じく「子供読書活動推進計画」では、学校図書館の充実と教職員の指導体制の充実を「重点取組み」に挙げ、「学校図書館運営計画」を作成するとあります。作成状況および実施状況はいかがか、続けておうかがいします。

最後の質問は、司書の待遇の問題です。採用されたみなさんは、有能であることもさることながら、在任中にすこしでも成果を上げようという使命感をもち、各自が必死で努力されています。ところが現在の待遇は決して十分とはいえません。16時間勤務のパートタイマーで月収1718万円では、職業として続けていくことが難しい人もいるのが事実です。

 若く有能な有資格者が働き続けられるような処遇とすべきではないのでしょうか。昨年も今年も、緊急雇用対策として国や都から交付された財源を司書の人件費に充てるという、区が苦し紛れにやりくりした結果なんとか可能になったことは承知しています。

 

しかし考えてみれば、先ごろ、OECD加盟国のなかで2007年の国内総生産に占める教育費の割合が日本は最下位だったことが報道されましたが、子どもの教育にかける必要経費くらい、杉並区ともあろう誇り高き自治体が思い切って対処できないものでしょうか。

 今年は22人分のうち11人分が区の教育費に位置づけられましたが、学校司書の重要性を認めるのであれば、区の教育予算の編成時に当初から確保すべきですし、教育現場における重要な専門職にふさわしい待遇に改善すべきと考えます。いかがか、お考えをうかがいます。

いつも鍵のかかっていた図書室が、いつでも開いている居心地のよい部屋に変わり、ほしい情報があればそれを差しだしてくれる、本の楽しさおもしろさを教えてくれる、しかもテストをしたり宿題を出したり点数をつけたりしない、評価しない人の存在があり、記録的な暑さだったこの夏には校内で子どもが自由に入れる唯一の涼しくて快適な空間だったこともあって、見違えるように魅力的な場所になった、と私のもとにも喜びの声が届いています。

 この取り組みが「持続可能な」ものとして、さらに充実させ発展させていただけますよう最後に要望し、私の質問を終わります。

第3回定例会一般質問  2010.9/14 市橋綾子

私は、区議会・生活者ネットワークの一員として、健康づくりと介護予防について質問いたします。

 2000年に介護保険サービスが導入され、それまで家族の仕事であった介護の社会化が進められて今年で10年が経ちました。その間、2回の介護給付の見直しがあり、2006年から介護予防制度が導入されました。「これまで使っていたサービスが受けられなくなるのではないか」などの、サービス利用者の不安の声を受け、新制度の導入にあたり、私たちの仲間も参加する市民団体とNPO法人が介護予防制度を検証するため、「介護予防・自立支援に関する高齢者実態調査」を行いました。対象は都内在住の要支援、要介護1のサービス利用者162人、調査期間は20066月から200912月までの3年間継続して、身体状況の変化、介護度の変化、介護保険及び介護保険外で利用しているサービス、自立生活を送る上でほしいと思うサービス、困っていることなどの調査を、行うと同時に、自治体、地域包括支援センター、事業者へも調査を行いました。

 調査を行ったこの団体は、調査結果を受け、次の制度見直しに向けて厚生労働省に提言を行っていますが、事業者である自治体が取り組むべき課題も明らかになりました。そこで、区の健康づくり、および介護予防に、より一層の取り組みがされることを期待して、この調査結果をもとに以下、質問いたします。

 

まず初めに、介護予防施策について3つの項目に分けてうかがいます。最初に、特定高齢者施策について5点伺います。

人はいつまでも元気で年を重ねていきたいと思うものです。しかし、何らかの理由で、生活機能が低下してきた場合、「生活機能評価」の判定結果で、介護予防事業の利用が望ましいと判定された人が「特定高齢者」と呼ばれ、介護予防ケアプランが作成されます。

先に述べたNPOの調査では、特定高齢者と判定される数は年ごとに大幅に増えてはいるものの、介護予防ケアプランを作成した人は少なく、作成したとしても実際に介護予防サービスを利用する人はもっと少ない、という結果が出ています。杉並区でも同じ状況がみられるのではないでしょうか。2009年版の福祉保健事業概要によれば、特定高齢者への介護予防ケアプラン作成数766人となっていますが、それでは特定高齢者と判定された人は何人で、そして実際に介護予防サービスを利用した人は何人でしょうか、伺います。

NPOは介護予防サービスの利用が少ない理由を、「特定高齢者」という区分けにご本人の理解が得られていないためではないか、としていますが、区として、この状況をどうとらえていらっしゃるか、伺います。

 特定高齢者に判定された方が介護予防サービスを利用しない場合、要支援や要介護に向かわないようにすることが大事だと考えます。区としてフォローが必要だと考えますが、いかがかでしょうかお答えください。

 特定高齢者施策として区が行っている事業には、転倒予防教室、リフレッシュ!リハビリ教室、若返るぞ!筋力アップ教室などの運動機能教室と口腔機能向上教室、栄養改善教室があります。そのなかで、栄養改善教室は1回あたりの平均利用人数が3人と、他の事業と比べて極端に利用が少ない状況が事務事業概要から見てとれます。少ない理由を区としてどうとらえておられるのでしょうか、お答えください。

 栄養改善教室のような特定高齢者施策事業への利用者が少ない予防プログラムの場合、一般高齢者と一緒に介護予防のプログラムを提供するように変更している自治体が多くみられた、という調査結果がでています。当区においても見直しが必要だと思いますがいかがでしょうか、おたずねします。

 

次に、介護予防の施策として大変有効と考えられる「会食サービス」について伺います。

先日、北区の会食サービス「高齢者ふれあい食事会」を仲間と視察してきました。たった1時間程度の食事会ですが、高齢者が「食」を通じて地域社会と交流する機会をつくり、閉じこもりの予防や、日中独居や一人暮らしの方の孤独感の解消、介護予防にも効果があるものです。

 

65歳以上の要支援・要介護の認定を受けてない人が対象で、毎週1回もしくは隔週で月2回、小・中学校、健康増進センター、商店街事務所、区民センター、老人いこいの家、大学、レストランなど区内のおよそ30か所で行われていました。男性も女性もいつもよりちょっとおしゃれをしている様子が見られ、「皆さんとお話しながら食事をするのが楽しい」との感想が聞かれました。食後には口腔ケアや栄養のお話もあるこの食事会に、区も高齢者の健康づくりと生きがいづくりを支援する事業として財政的支援を行い、活動を維持させています。当区としても、会食サービスを介護予防の施策に位置付け、取り組んではいかがかでしょうか、伺います。

 現在、一部のゆうゆう館で、すでに会食事業を始めているところがあります。材料費分を「参加費」としていただいているとのことですが、調理人の人件費までは捻出できないし、だからといって高齢者に多くを負担させられないし、という状況です。区は、地域の介護予防の拠点の拡大としてゆうゆう館を当てるとしています。区として会食事業を応援することは、介護予防の主旨に十分叶っているものと考えます。今後、行政による財政的支援も検討しながら身近なゆうゆう館を会食サービスの会場としてはいかがでしょうか、伺います。

次に、介護保険を使う予防給付に関連して4点おうかがいします。

介護保険制度の改正後にあたる2007年度の当区の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算の執行率が55%と大変低い数字となったことに議会で質疑が相次いだことは記憶に新しいところです。区の説明では、新制度が始まったばかりで、サービスが周知されていないため、とされていました。

そこで、直近の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算・決算額の執行状況をお伺いします。

 また、事務事業概要ではケアプラン作成数35,715件となっていますが、そのうち実際にサービスを利用された方は何人いらっしゃるのでしょうか。お示しください。

 

調査報告によると、要支援と認定され介護予防給付サービスを利用している人の方が、利用していない人より同じ介護度を維持している期間が長い、つまり、サービスを利用することで介護度を進ませない効果がある、という結果が出ています。それにもかかわらず、実際は、ケアプランの作成をしない人が多いこと、ケアプランが作成されたとしてもサービスを利用する人が少ないことは問題であると考えます。なぜ、サービスの利用がこのように低いのでしょうか。その理由として、日常生活を円滑に行うためのニーズに合ったサービスが介護予防給付では得られない、使える時間数が足りない、と感じている利用者が多いため、と報告されています。この点に関して、区の認識はいかがでしょうか、おたずねします。

 介護保険制度の介護予防給付サービスでは日常生活を円滑に行うのは無理なのであれば、自治体の工夫が必要になってくるものと考えます。

渋谷区では、介護予防ホームヘルプの時間延長サービス、同居家族がいることを理由に介護保険の生活援助サービスが利用できない人対象の訪問介護生活援助サービス、訪問介護外出サービスなどを20081月から始めています。また、新宿区の社会福祉協議会が行っている電球替えなど30分程度の援助、ちょこっと困りごと援助サービスなども結構利用されており、このことから生活維持型のサービスメニューが必要とされていることが見て取れます。当区においても独自施策として、昨年から外出支援のサービスが使えるようになりました。まだまだ利用は少なく、より一層の周知が必要だと思いますが、利用した方からは「外出する機会が増えた」という声が届いています。生活援助について、区独自のサービスを検討していくべきと考えますが、いかがでしょうかお答えください。

 

さて、次に介護予防とかかわりの深い保健事業である「健康づくり」について3点伺います。

2006年の介護保険制度の見直しは、介護給付費用の抑制という理由から「介護予防」が取り入れられました。本来、「介護予防」とは、誕生から生涯にわたり健康づくりに取り組み、高齢になっても介護が必要にならないような健康管理に努めることに他なりません。その意味で、介護予防施策は、健康で暮らすための保健事業と連携を図ったうえで、年齢に応じた心身ともに健康な生活を維持していくことを支援する施策でなければなりません。生涯にわたる健康づくりの視点が薄く、介護給付費用の抑制としての「介護予防」の導入は大きな問題があると私は考えています。

 これまで区は、地域社会全体で健康なまちづくりを進めるために、区民・行政・関係団体が協働して多様な地域ネットワークの充実をめざす、としてこられました。これこそ介護予防につながるものと言えます。しかし、現在行われている「健康づくり」はメタボ対策にばかりに焦点が当てられているのではないでしょうか。健康づくりと介護予防をつなぎ、地域で活動するNPOや市民団体など、さまざまな社会資源を連携させていくためには5か所の保健センターが担う役割は大きいものと考えます。現在の保健センターの仕事として高齢者に対する施策の取り組みが弱いのではないかと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。

 

私は2年前の2008年、第1回定例会で、健康づくりについて、「保健センターとゆうゆう館事業との連携」を求める質問をしました。保健所長から「保健センターの専門職員がゆうゆう館の健康づくり事業に講師として参画するなどして一層の連携を図っていく」との答弁をいただきました。その後改善されたこともありますが、まだ課題を残しているのが実態です。2年前と同じ質問になりますが、地域の健康づくりは、ゆうゆう館などで活動するNPOや市民団体などの地域資源とも協力し、連携を図っていくことが重要と考えますがいかがでしょうか、おたずねします。

 区内に32館あるゆうゆう館は、生涯現役世代の推進のため、高齢者の「憩い」「いきがい学び」「ふれあい交流」「健康づくり」の場として設置され、現在28館が、来年度には32館全館がNPO等に委託・運営されていきます。協働事業の目的の一つに「健康づくり(介護予防)」があげられ、各館で様々な企画が進められています。ここに地域包括支援センターや保健センターの持つ専門性や情報がより有効につなげられていくべきと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。

 

次に、地域包括支援センターとの関連で3点うかがいます。

地域包括支援センターは、①高齢者の総合相談・支援・申請受付 ②高齢者虐待相談・権利擁護相談 ③区の高齢者施策申請受付 ④要援護高齢者等の実態把握 ⑤介護予防事業 ⑥新予防給付マネジメント ⑦地域ケア会議の開催 ⑧介護支援専門員への指導・支援 ⑨地域のネットワークづくり、とかなり広範囲にわたる9つの業務を受け持ち、多忙を極めています。まず、地域包括支援センターの現状と課題は何か、うかがいます。

 地域包括支援センターの業務の中に地域のネットワークづくりがあげられています。各種保健・福祉サービスが総合的に受けられるよう、NPOや市民団体など地域にある様々な社会資源と結びつける役割が求められていますが、十分に機能しているのでしょうか、うかがいます。

 

今回、区内在住高齢者の行方不明問題がありました。あの猛暑のなか、発覚後ただちに調査され、結果を発表された対処は適切であったと思います。その後、この問題にはいくつもの問題が含まれていることが明らかになりましたが、そのひとつの解決策として「見守り」などの地域のネットワークの必

要性が指摘されました。地域のネットワークづくりに日々取組んでおられる地域包括支援センターは、区民にとって高齢者福祉のもっとも重要かつ身近な窓口です。区は地域包括支援センターを地域づくりの拠点として位置づけ、共に高齢者とその介護者を応援することに力を尽くされることが、今後より一層必要と考えますが、区の見解を伺います。

 以上述べてきたように、地域包括支援センターが担う役割は非常に大きく、もっと区が主体的にかかわり、人員体制と委託料をふやして、地域包括支援センターを支えることが必要になっていることを加えて申し上げます。

 

最後に健康づくりや地域包括支援センターの地域づくりの視点を入れ、総合的な介護予防に取組むために、福祉保健計画に介護予防の考え方をしっかり位置づけ、施策の体系化、総合化を行うことが必要であると考えますが、いかがでしょうか。区の見解を伺いまして私の質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ77号   2010年8月5日発行

 

 

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第2回定例会一般質問   2010.6/5 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、プラスチックごみの削減について、在宅で介護する家族の支援について、以上2点、質問いたします。

 

《プラスチックごみ削減について》

35年間にわたって「焼却不適物」として扱われてきた廃プラスチックが、2008年に「埋め立て不適物」すなわち「可燃ごみ」に区分変更となり、一部を除くプラを焼却するようになって2年経過しました。「一部」というのは、いうまでもなく、ペットボトルと容器包装プラのことです。杉並区はこれらを資源として生かすため「燃やさない」ことを継続しています。

 

このことは評価しつつ、プラスチックの焼却がもたらす環境汚染とCO2排出量の増加を懸念する立場から、燃やすプラスチックを減らしていくことがごみ全体を減量していく中でも重要と考え、今回、質問いたします。

 

区では今般、環境基本計画の改定が行われ、本会期中の都市環境委員会で報告されるとうかがっています。ことし2月に公表された「改定案」の段階では、「行政の取組み」としてプラスチック製容器包装年間回収量の目標数値が平成22年度5,200トン、平成25年度5,800トンと、「増やす」計画であったことに驚き、予算委員会で質問したところ、分別を徹底させリサイクル率を上げていく目的で数値を拡大させるのだ、というご答弁でした。

 

私は、リサイクル率を上げることと回収量を増やすことは別であって発生抑制が必要と考え、区が掲げる「脱石油社会をめざす」のがほんとうなら、石油由来であるプラスチック類の製品そのものの使用を抑えていくような生活提案をすべきではないか、と申し上げました。その後、パブコメを経て策定された新しい環境基本計画では、容器包装プラ回収量の目標数値が平成22年から25年まで、増えるのでなく横ばいに修正されたとうかがい、納得したところです。

 

容器包装プラの回収は、100パーセント区の清掃・リサイクル事業の一環として実施されているものです。容器包装リサイクル法にのっとって当区が23区の中でもいち早く分別・回収に着手し、実験的なモデル事業から始めて地道に実践を積んでこられたことは、生活者ネットワークとして高く評価してきました。現在、23区中16区が何らかの形で容器包装プラの分別回収を実施していますが、杉並が他区の取り組みをリードしてきたのは間違いありません。区がこれからも名実ともに環境都市と称されるよう、前向きな取り組みを期待する立場から、以下、質問いたします。

 

はじめに、その廃プラの分別収集とリサイクルについてです。これまでの取り組みを区としてどのように評価されるのか、また、今後もこの取り組みをさらに推進していくべきと考えますがいかがか、見解をおうかがいします。

 

可燃ごみに占めるプラ混入率が、直近の区の家庭ごみ組成調査では7.6%になっています。この中には容器包装プラが相当量含まれていると考えられますが、区の原因分析はいかがでしょうか。

 

改定された環境基本計画には、容器包装プラスチック回収量の目標値が設定されていますが、可燃ごみの中に占めるプラスチック混入率を下げる目標値が見当たりません。削減目標を立てるべきではないのでしょうか。見解をうかがいます。

 

容器包装プラの回収率を上げる取り組みが必要です。杉並区では毎年人口の5分の1から4分の1の人が転出入すると聞いています。絶えず人が動いている当区にあっては、啓発活動も意識的に間断なく行われなければなりません。お考えをうかがいます。

 

今年度の容器包装リサイクル協会の落札結果により、区で回収したプラ約4,000トンのうち3,000トンが足立区、残りは板橋区の施設に運ばれます。ここで中間処理がほどこされ保管ののち、さらに再商品化のため別の事業者に輸送されることになります。昨年、生活者ネットワークの仲間とこの足立区入谷にある中間処理施設を視察いたしました。

 

杉並区内から車で運ばれてきた廃プラスチックが山積みで保管されているようす、また、動くベルトコンベアーの上の排出物から、異物やリサイクル資源として不適切なものを人の手で取り除く作業を経て、11メートルの立方体に圧縮・梱包されるまでの工程を間近に見てからは自宅のごみの出し方が変わる、と参加しただれもが感想を述べています。

 

このことからも、廃プラ資源化の工程が、どこか遠くの土地ではなく、身近なところで確認できることがほんとうは望ましいのだと思います。ごみを自治するという視点に立てば、せめて中間処理的な作業は自区内で行うことが、成熟した自治体のあり方であり、公平な負担のあり方なのだと思います。

 

地球温暖化の現実を知ることが省エネ行動を促すように、ごみのゆくえを知ることはごみの排出のしかたを変えるはずです。プラスチックに限らないことですが、資源が回収された後のゆくえがわかるような広報活動が必要です。

 

広報活動といえば、リサイクル事業における区の費用負担の現状を区民に伝えることで、問題提起することも重要です。というのは、リサイクル事業は安易に焼却するよりはるかに高いコストがかかり、それがプラリサイクルをしない自治体の理由になっていますが、ではリサイクル費用は自治体がほんとうに負担しなければならないものなのか、考える必要があるからです。

 

区が負担するということは、プラスチックを使わない、プラごみを出さない人にも処理費用が課せられることですから、理にかなっているとはいえません。ごみを出す人がその処理費用を支払うしくみに変えなければなりません。製品をつくる生産者が、消費し終わって廃棄物として排出するところまで責任を拡大すること、すなわち「拡大生産者責任」のしくみをつくることで、資源循環を継続してすすめていけるのです。

 

区がごみ処理やリサイクル事業の経費としていくら負担しているのか、品目ごとに具体的に数字で表わし、区民に考える機会と材料を提供すること、すなわち廃棄物会計を明らかにすることで、ごみ処理の負担のあり方を見直し、拡大生産者責任の確立に向けた議論が進むようにすべきと思います。ごみのゆくえと廃棄物会計についての広報は区の重要な役割です。見解をうかがいます。

 

区民のマイバッグ持参が定着してきていると感じます。当区におけるレジ袋削減の取り組みを評価するものです。削減効果をレジ袋およびCO2の削減数値でお示しください。

 

レジ袋有料化の実践にあたっては、区内事業者の理解と協力があって、実現できたといえます。この協力関係を生かして、プラスチックごみ総量を削減する取り組みへと発展できないか、と考えます。たとえば、プラ容器の店頭回収やガラス容器のリユース、消費者へのポイント制度など、モデル実施の可能性を検討すべきではないでしょうか。市民活動団体に声をかけて事業者に向けたアイデアや提案を出してもらう、など、多くの区民がかかわってプラスチックごみを減らす議論ができるのでは、と考えます。区の見解をうかがいます。

 

なお、食品に直接触れるプラスチックの安全性については、今の科学的知見では問題なしとされますが、ガラスなどに比べれば歴史が浅いため、新たな科学的知見が今後出てくる可能性は否定できません。将来にわたっても安全であるとは言い切れませんから、食品の容器として、非プラスチックを広げることが必要だと思います。区はそのような啓発を行うべき、と考えるものです。

 

ところで、前区長が在任中の2008年より地球温暖化懐疑論に同調する姿勢を明確に示すようになり、CO2排出量削減は不要であるかのような発言が出るなか、区の環境施策の打ち出し方に変化が見られるようになりました。たとえば、省エネを推進する目的として「脱石油社会」という文言を使うようになったことです。

 

小泉元首相の時代に「脱石油戦略」というものが策定されましたが、国家戦略としてのエネルギー対策を構築するうえでの指標として「脱石油」は適した言葉だと思います。ですが、区民が環境問題を広く共有し啓発する言葉としてふさわしいのか、疑問です。いま地球上の生き物が直面している環境問題を本質的にとらえるなら、二酸化炭素の排出がより少ない生活のあり方を提案すべきです。山田宏氏が区長を退いたいま、今後、区はCO2削減目標をしっかりととらえ「低炭素社会」をめざすことを積極的にアピールすべき、と申し上げ、つづいて、在宅で介護する家族の支援について、質問いたします。

 

《在宅で介護する家族の支援について》

10年前、介護を社会化するシステムとして始まったはずの介護保険制度でしたが、改正を経るたびにかえって家族への介護の負担が高まり、高齢者の在宅介護をめぐるさまざまな問題がクローズアップされています。虐待の頻発、老老介護、男性介護者や働きながら介護するシングルの増加、貧困などの実態は、都市化、少子高齢化、国際的な不況という社会的背景のもとで深刻さを増しています。

 

これを解決するには、介護保険制度の枠をこえて社会保障制度全体をつくりかえるほどの大事業が必要になりますが、考えてみると、この問題は高齢者介護だけに限ったものではありません。在宅介護を「介護する人」の側からとらえ直してみると、障がい者、病気で寝たきりの患者を介護する家族も、抱える問題の根本に共通するものが見えてきます。

 

家族介護者がいることが前提で成り立ついまの日本の在宅介護において、介護者への肉体的・精神的、さらには経済的な負担は、人権が抑圧される問題ととらえることが必要なのではないか。在宅介護を担う家族をサポートするため居場所を設けるなどの活動を広げてきたNPOの代表者は、相談事業などの活動現場でその感を強めてきたそうです。

 

社会保障制度を再構築するうえで「介護する人」「看病する人」の問題をきちんと位置付け、ケア者を支援するしくみを社会的に整備することをめざし、いま市民が動き始めています。先行モデルとされるのは、イギリスの例です。現地を訪問調査された方の報告によれば、イギリスでは介護者の概念は、障がい別や、高齢者かそうでないかという縦割りではなく、高齢者、障がい者、障がいのある子どもなどをケアする人たちのいずれも、「介護者」というひとつの括りでとらえられているのだそうです。

 

介護者自身が自分のことを後回しにして、自分より弱い立場にある人のことを優先させなければ、と自分を追い込んでしまう人が少なくないのは日本と同じ状況ですが、そうした介護者のために多彩なサービスが用意された、介護者だけのための在宅介護者センターが全国的に設置されているところが大きな違いです。同センターを運営する財源は公費と王室関連の福祉団体の独自予算であり、そこでは相談・情報提供、人権擁護活動、カウンセリング、などを行うことが義務付けられ、モーニングカフェなども設置されています。

 

そしてそのような事業の法的根拠となっているのが、1995年に制定された法律「介護者法(ケアラーズ・アクト)」です。これまで2度の改正を経て、08年には「介護者のための全国戦略」が策定され、介護者支援が強化されているとのことです。

 

日本での市民の動きは、イギリスの手法をお手本に目標を定めつつ、最初のステップを踏み出そうとしています。67日に設立が予定されている「ケアラーズ連盟」は、病気や障がいごとに縦割りで分断されている介護を横につないで、「ケアする人たち」すなわち「ケアラーズ」の権利を守るための活動を推進していこうとしています。

 

私は生活者ネットワークの仲間とともにこの趣旨に賛同し、運動をすすめていきたいという思いから、以下、質問いたします。

 

認知症をふくむ高齢者、障がい者、各種疾病の罹患者など在宅で介護を必要とする人は、ヘルパーなどプロの介護者だけでなく家族による介護を受けている場合がほとんどと思われます。そのような在宅の被介護者は区内にどの位おられるのか、把握しておられるでしょうか。またその介護の状況や、介護者本人の生活実態について把握しておられるか、おうかがいします。

 

タレントの清水由貴子さんが母親の介護に行き詰まって自ら命を絶った事件はまだ記憶に新しいところですが、類似の事件は後を絶ちません。「介護うつ」という言葉があるように、介護のストレスが原因で身体や精神を病んでいるケースが少なくありません。また介護のために失業をやむなくされ経済的に困窮するケースも多いと聞いています。区の認識はいかがでしょうか。区内のそのような事例を把握しておられるか、おたずねします。

 

神奈川県秦野市では、老老介護のすえ心中に至った事件が市内で起きたことをきっかけとし、介護者の抑うつ傾向の実態把握を目的に2007年に「介護者実態把握調査」を実施しています。500人強の在宅介護者を対象に、ケアマネージャーが調査用紙を直接配付または聞き取りを行うかたちで実施され、約半数がうつ状態にあるというショッキングな結果が報告されました。その2年前に厚労省が行った調査では「23%が抑うつ」と報告されていましたから、市の関係者も当然それに近い数値を予想していたでしょうが、実際はその倍以上だったわけです。

 

この調査により支援の必要な在宅介護者を見つけ出した同市では、「介護者のつどい」や「介護者セミナー」など介護者支援のサービスの対象者としています。看護師を1人から6人に増やし、直接、電話相談・訪問相談を実施しています。ひるがえって当区の介護者支援施策はどのようになっているのか、3点おたずねしたいと思います。

 

1点目。当区における介護者支援施策としては、まず家族介護継続支援事業 認知症家族の安らぎ支援事業が挙げられるかと思います。これらの概要をお示しください。

 

2点目。また、認知症でない高齢者、在宅で闘病生活を送る難病患者などで家族介護者はどのような支援が受けられるのでしょうか。障がい者(児)の家族はいかがか、併せて伺います。

 

3点目。秦野市が実施したような、介護者を対象とした実態把握調査が当区でも必要と思います。実施すべきではないでしょうか、うかがいます。

 

介護保険制度の利用者だけに限ってみても、過剰な介護を抱え込んでいつ倒れても不思議でないような、過酷な状況にある在宅介護者は決して珍しくない、ということを福祉の現場で働くヘルパーやケアマネの人たちは口にします。同じことは障がい者や難病患者の家族の場合にもいえます。

 

イギリスで最初に介護者支援活動として始まったのは、高齢者問題ではなく、若年世代の就業支援だったそうです。親の介護のために職に就けない、あるいは職を失った若い人たちの就職相談や、技術取得プログラムの活動が出発点と聞きました。

 

日本ではどうでしょうか。介護休業を保障している企業はまだ多くありません。一事業体としての杉並区の状況はいかがでしょうか。区の職員が、家族に介護が必要になったために休業を申し出た事例はないか、またその場合、区の対応としてどうなさるのか、うかがいます。

 

おりしも、育児・介護休業法が改正され630日に施行されようとしています。介護休暇制度の新設がここに盛り込まれましたが、当区では事業者として、法に基づく取り組みをどのように進めていくお考えか、お示しください。

 

在宅で介護する家族に共通する問題が、介護者の生活を圧迫し、人権侵害にまで至っていることが社会問題として捉えられていない、と先に述べた「ケアラーズ連盟」設立に向けて奔走中のNPO代表者は指摘します。介護者の権利擁護のしくみが必要であるとして、イギリスのように法制化をめざしているといいます。介護者の権利擁護について、区はどのようにお考えになるのか、見解をうかがいます。

 

また、介護者を支援するしくみとして、さまざまな介護者のレスパイトケアに取り組む市民の活動が注目されます。21世紀ビジョンで「個人の尊厳」「区民一人ひとりの人間性が尊重されることを何より優先」とうたう区としても、このような活動を支援すべきと考えますがいかがでしょうか。おたずねします。

 

質問は以上ですが、最後に1点つけ加えます。きょう私が介護者の問題を取り上げたのは、私にとっては大切なある人のブログに背中を押されたからです。その人は昨年ALS(筋委縮性側策硬化症)という難病に倒れ、ご自宅で奥さまや娘さん、ヘルパー、看護師さんなどの介護・看護を受けながら療養生活を送っていますが、身動きのままならぬベッドの上から日々ブログを発信しています。家族の疲労を目の当たりにして心を痛め苦しい心情がつづられているのを読むと、介護者のストレスが介護を受ける側にもストレスとして積もっていくのだとわかります。何らかの介護者支援のしくみが必要、と繰り返し書かれています。もうこれ以上在宅介護者の問題を放置していてはいけない、ということをこの場で最後に訴え、私の質問を終わります。

生活者ネットすぎなみ75号   2010年4月10日発行

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予算特別委員会 意見開陳 2010.3.11 小松 久子

予算特別委員会の最終日にあたり、当委員会に付託された2010年度一般会計予算をはじめとする諸議案に対し、区議会生活者ネットワークとして意見を申し述べます。

委員会での質疑や会派での調査活動の結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および、修正案を含む減税基金条例を除くすべての条例案について、賛成すべきと判断いたします。その立場から、以下、時間の制約により述べられなかったことなど何点か絞って申し上げます。

今世紀最初の節目の年は、厳しい経済状況の中で明け、このわずか2か月余りの間にハイチ、チリ、台湾で大地震が発生するなど、自然環境も私たち地球市民に試練を与えるかのようです。昨年ようやくなされた政権交代ですが、経済格差は固定化し、次代を担う若者や子育て世代が安定した将来を描けずにいます。基本的人権があたりまえに尊重される社会の実現、あらゆる世代の生活保障の実現こそ、政治が担うべき役割であることを、あらためて胸に刻んでいます。

 

では、まず委員会の形式について述べます。審議の初日となった、228日の減税基金条例集中審議では、質疑の持ち時間として会派分の3分が会派の大小にかかわらず配分されました。昨年の決算委員会で私どもの要望したことでもあり、評価するところです。ただ、他会派から述べられた、減税自治体構想研究会の委員メンバーを質疑の場に招致いただきたいという要望は、理にかなったことでもあり、これが通らなかったことは、残念に思っています。

 

さて、減税基金条例についてなぜ私どもが反対なのか、考えを述べさせていただきます。

 

まず、繰り返しになりますが、区民は公共の利益のために義務として税金を払い、区がそれを将来のために基金で災害や必要な施設建設などに備えることは、当然やらねばならないことです。しかし、減税という形で個々人に直接還元されるものに、現役区民が負担するというのは、どう考えても納得がいきません。そもそも自治体が独自に減税できるのは、06年に地方財政法が改正されて初めて可能になったのであり、それまではできないしくみになっていました。ところが「減税自治体構想研究会報告」は冒頭でこう述べます。「日本ではこれまで、地方自治体が主体となって恒久的な減税を実現したことは一度もなく、研究すら行われたことはありませんでした。その意味で今回の研究は、行政としてはまさに全国で初めての試みでした」。ここまで自画自賛しなくても、と思います。このような過大な評価は、事実を見誤らせる表現といえます。

 

さらに、この提案に無理を感じるのは、積み立て始めて10年後以降、減税を始めた杉並区は学校や図書館などの建て替えの必要が生じたとき、都知事の許可がなければ費用のローンが組めない、すなわち起債することができなくなることです。区は、都知事は許可するだろうとおっしゃいますが保証はなく、もし許可されなければ係争事件に発展することになります。清掃事業をはじめ、23区がさまざまに連携し融通しあうことで成り立っている事業も多い中で、なぜ杉並区だけが、将来の個人のポケットマネーのためにルールを変えてまで積み立てをしなければならないのか。質疑を重ねても、理解できませんでした。

 

しかし、議会に身を置く者として、この間の処し方に反省もしています。研究会報告後わずか2年で実行に移されるとは想定せず、結果として議会は減税自治体構想が暴走するのを傍観していたことになります。もしやり直せるなら、この構想の提起された当初に時間を戻し、杉並区議会は区長のもとに呼び寄せられた学者とはまた別の専門家を招いて、オルタナティブな研究会を構成し、別の側面からの理論を組み立てることをすべきでした。それが、二元代表制としての議会のすべきことだったと、今にして思います。

 

首長が理想を語り夢見ることを非難するつもりは全くありませんが、実現ありきで進められてきた区行政の広報・啓発活動に対しては、区民をミスリードする危険性もあることから、十分に慎重であっていただきたかったと思います。

 

福山大学の客員教授である田中秀征氏のお話を伺う機会がありました。「グローバル経済が破たんした今、有効な経済対策はなにか」という話題になったとき、田中氏は景観計画のことを持ちだされました。「街並みを良くする、街路樹を植える、電柱の地中化、看板の撤去などで地域雇用を生み出すことが可能になる。景観計画にそって事業を行うことは、10年後、20年後、100年後の世代にも納得してもらえる」と述べておられます。

 

このような税の使い方と減税と、どちらがより福祉に貢献することか、明らかです。

 

またある人は、減税自治体構想は「お金の使い方をいま決めないしくみ」だといいます。現在の要求を抑制し後の世代に白紙委任する、そのような人間観に立っている、という指摘は、奥の深い論点ではないでしょうか。

 

今回、市民自治についての議論をとおして、「新しい公共」という概念のとらえ方について、区との微妙な違いが今ははっきりしてきたように思います。かつて国会でNPO法案の議員立法を提案なさった区長ですから市民自治をお分かりいただいているはず、とばかり思っておりました。しかしながら、「自立した市民が、みずからの発意と意思により行おうとする、自発的な自治」、すなわち市民自治についてご理解いただけていないとわかり、驚くより、こちらの認識不足に気づかされた次第です。

 

しかし、市民自治はすでに地域で芽吹き始めています。善福寺川水鳥の棲む水辺創出事業シンポジウムやまちづくり協議会に参加する人を見ても、まちづくりを一緒に考えていこうとする市民が増えているのを実感します。反対、賛成、さまざまな人がいるのがまちの豊かさであって、その人たちと一緒にまちづくりを進めていくのが地域主権であり、地域自治、市民自治だと考えます。

 

杉並区まちづくり基本方針を住民参画と長期的なビジョンのもとに見直す、とあり、「住民参画」の文言に大いに期待するところです。住民参画は行政の体力が試される手法ですが、区は、ぜひ受け止めていただきたいと思います。

 

新宿区では400人に及ぶ市民の参加で基本構想がつくられました。役所が本気で市民の気持ちを受け止めた結果です。市民参画での一番の強みは、まちのことはそこに住む人が一番よく知っている、という点です。市民の経験や知識を見逃す手はありません。市民の情報をどう使いこなせるかが勝負です。

 

横浜市が市民と協働で「地域まちづくり白書」を作っています。当区においても「まちづくり白書」を作ってはいかがでしょうか。市民だけでなく役所も一緒に育つきっかけとなるような、まちづくり基本方針の見直しに期待しています。

 

それでは続いて環境問題に関連して、述べます。

 

CO2削減にせよ、ごみ削減にせよ、環境問題にかかわる課題について、区は意欲的な目標値を設定し努力なさっているとは思いますが、目標達成に向けた推進力がいまひとつ、という感が否めません。

 

その例の一つが生ごみ資源化の調査・研究です。優秀な研究者が調査・研究を担当し必ず実現するという信念をもってシミュレーションし実行計画を描き、たとえ実現困難と思われることでも可能にする、という減税自治体構想の手法を、ここでぜひ応用していただきたいものです。可燃ごみに占める生ごみの多さ、ごみの排出はすべての住民にかかわるものであり、徹底するまでに相当な時間がかかることを考えれば、この課題に一刻も早く着手しなければなりません。

 

ごみ問題に取り組む市民グループが、この分野ですでに日常的に実践しています。その市民力を生かして、モデル実施を検討すべきと考えます。

 

プラスチックの焼却が既定路線となったことで、可燃ごみの中に占めるプラスチックの量が増えていくことも不安材料です。23区一部事務組合が実施した、プラスチック製品中の重金属類含有試験結果によれば、有害物質をふくむ重金属類が可塑剤として添加されており、これを焼却したときの環境への影響が懸念されるところです。プラスチックを「燃やすべき」とした方針そのものにあらためて疑義を感じざるを得ません。脱石油社会をうたう杉並区は、石油製品であるプラスチックの使用を減らすような生活を提案すべきと、あらためて申し上げます。

 

エネルギー問題についてです。

 

「低炭素」という言葉が「温暖化対策」に取って代わろうとしている現在、区がこれを脱石油と言い変えたのは妙案でした。ただ、4月発効の東京都の環境確保条例でも国の温暖化対策法でも、区が求められているのは温室効果ガスの総排出量なり削減量の報告・公表であり、このたび策定予定の「環境・省エネ対策実施プラン」に見られるような、区が取り組むとしているエネルギー管理との違いが明らかです。都や国の方針との差異がダブルスタンダードを生み、作業効率の低下につながらないよう、求めます。

 

なお、環境清掃審議会に、エネルギー問題に取り組む市民活動団体からも、メンバーとして加えるべきと考えます。ご検討ください。

 

キッズISOについてです。小学5年生が取り組むKid’s ISOの入門編は2週間だけとなっていますが、ガス、電気、水道、ごみのメーターを毎日調べるプログラムに取り組んでいることは素晴らしいと思います。さらに、この取り組みに、工夫を加えることで、子どもが省エネ生活に向けてスタートを切ることができます。もう少しやってみたいという意欲ある子ども、また保護者には、環境都市推進課と連携して、継続した省エネに取り組めるよう支援すべきと考えます。ご検討ください。

 

また、以前も申したことですが、学校のごみ・資源の分別を家庭での分別方法と同じにすべきです。学校で容リプラの分別回収をするとなれば、必要なのは貯め置くスペースだけであるはずです。きちんと分別を教えるのも環境教育です。容リプラを独自に分けている小学校があると聞きます。これをぜひ全体化するよう、要望します。

 

特別支援教育についてです。次年度より、区は学校が作成する「個別指導計画」ではなく、就学前から就業に至るまでの「個別支援計画」を作成するといいます。そしてその際、助言をする「専門支援チーム」、すなわち臨床心理士、医師、指導主事、社会福祉士(SSW)による学校巡回支援を新たに実施なさるとのことです。私ども生活者ネットワークは、これまで、障がい児に対して、医療機関・療育機関・教育機関の連携システムをつくり、個別の支援計画による生涯にわたる支援体制を確立するよう、予算提案の中で求めてきました。この「専門支援チーム」の取り組みをおおいに歓迎し、期待するところです。

 

区が特別支援教育について先進的に取り組んでくださっていることには、つねづね敬意を抱くものです。であればこそ、教育現場に多くのすぐれた人材が不可欠なはずです。これまで再三要望してきたことですが、区独自の教員養成施設である師範館を存続させていくのであれば、ぜひそのための人材育成施設へと転換・発展させていただきたい、とつよく願うものです。

 

花咲かせ隊・公園育て組の活動について、ひとこと述べたいと思います。市民が地域の花壇に自ら花を植え楽しむこの事業がスタートして、今年で10年が経ちます。今後もこの事業を広げていかれることと理解しています。ただ問題は、当初より始めた団体で継続困難になってきているところが見受けられることです。当事者の意見を聞きながら支援の方策をたてる時期に来ていると思われます。対応を求めます。

 

子どもの虐待についてうかがいました。相次いで報道されるケースはあまりにも悲惨ですが、虐待は特殊なことではなく、社会の病理が生む問題として政治が解決しなければならない時に来ていると思います。チームワーク体制による、区の前向きな取り組みを再度、要望いたします。

 

理由が何であれ、子どもに対する暴力を許すことはできません。そしてまた、子どもの教育を政争の具にする動きについては敏感でなければなりませんし、まして教育の場に民族や国籍の違いによる差別を持ち込むなど、あってはならないことです。

 

現政権の打ち出した、高校の授業料実質無償化制度の中に朝鮮学校を除外する規定を設けようとする動きが報道され、私たち区議会議員有志は、政府に再検討を求める行動を起こしました。わが会派を含めて8会派13名の連名で、39日、鳩山首相と川端文部科学大臣にあて、「同じ杉並区の朝鮮第九初級学校に通う子どもたちの友人として」要請文書を提出したことを、この場をお借りしてご報告いたします。

 

私事ですがその同じ日、新しい命を家族に迎えました。小さな杉並区民です。この地に住む、あるいは学ぶ、すべての子どもがひとりも例外なく、基本的人権が保障されるよう、生活者ネットワークは力を尽くしてまいりたいと思います。

 

以上をもって、会派の意見といたします。

第一回定例会一般質問 2.16 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、「平成22年度 予算の編成方針とその概要」について、スクールソーシャルワークについて、そして食品表示について、以上3つの項目について質問いたします。

 

最初に、このたび区長が示された「予算の編成方針とその概要」についてです。細目については特別委員会で触れることとし、ここでは区長のお考えを中心に、うかがいます。

 

一読してまず感じましたのは、「自治」の文言が見られないことと、「市民自治」の視点が見られないということです。住民がみずからまちづくりにかかわること、区政に参加することへの期待も展望も、全く語られていいません。区では昨年、自治基本条例が改正され、意見提出手続きを新たな条例として決めはしましたが、区が何か新しいことを始めようとするときにのみ、住民の意見を聴取しようというもので、住民からの自発的な提案を受け入れるというしくみではありません。

 

そのことと併せて考えてみますと、区長は、住民による発意を区政に生かしていきたいという意思がおありになるのか、「市民自治」を進めることへの積極性を疑わざるを得ません。そこで、根本的な理念を問う質問になりますが、区長は「市民自治」というものをどのようにお考えになるのか、いま一度、おうかがいしたいと思います。最初の質問です。

 

国会では、鳩山首相がその施政方針で「新しい公共」の概念を前面に打ち出しました。めざすべき日本のあり方として、市民やNPOなどがたすけ合う社会を築いていきたい、という趣旨だと理解しています。杉並区では従前より「新しい公共」の創造をうたい、その担い手としてNPOの活動支援に力を入れるとしてこられましたから、そのような当区においては、この政権交代がNPO支援をさらに推進させるチャンスだと考えるものです。

 

しかしそれにしては、区長の言葉で「新しい公共」への共感や、市民やNPO活動への支援が語られないのを、残念に思います。区長は、市民・NPOの活動や事業を今後の区政にどのように生かしていこうとお考えなのでしょうか。「新しい公共」の理念のもと、どのように連携、協働していかれるお考えなのか。2番目としてうかがいます。

 

都区制度のもとにある現在、特別区で杉並だけが減税のための基金積み立てを始めようとするのであれば、他区の理解を得る必要があります。区長は東京都と他の22区に対してこれから進めようとしている減税自治体構想について一定の説明をし、理解を求めるべきと考えますがいかがでしょうか。これが3点目です。

 

4点目。区長は対国、対東京都における自治の確立の必要を常日ごろより述べておられ、今回もそうですが、ご自身がそのために何か行動に出ようとなさっているようには見えません。都区問題を解決し真の地方分権を獲得するため、区長みずから都区のあり方や東京における自治のあり方について関係機関に積極的に働きかけ情報発信を行うなどし、リーダーシップを発揮すべきではないのでしょうか。うかがいます。

 

この項の最後、五つめの質問です。2010年度は山田区政の最後の年となります。予算編成方針を拝見しますと、行政に関しては、これまでの集大成として提示された施策を確実に実行なさるであろうことがよく分かります。しかし区長ご自身は、最終年度の活動として何をなさるのかと疑問がわきます。先ほど述べた、自治に関する取り組みの先陣を切ることや、みずからこの1年、地域に積極的に足を運び、区民の目線で、減税構想をはじめとし区政全般に対する区民の声を聞き取ることをされてはいかがかと思います。ご見解をうかがいます。

 

つづいて、スクールソーシャルワークについての質問です。

 

先月24日、江戸川区内で小学校1年生の少年が両親から虐待を受けて死亡するという、痛ましい事件がありました。学校は、昨年9月には家庭での暴行の事実を把握し家庭訪問までしていたにもかかわらず、日常的な虐待の可能性を疑うことをせず、子どもの死を防ぐことができませんでした。疑わなかったので児童相談所に通告もしなかったといわれ、学校関係者の虐待に対する認識不足が悲劇を招いたといえます。ある同級生の子は「体育がある日に学校をよく休んでいた、着替えのときに見られるのがいやだったのでは」といい、子どもなりにおかしいと感じていたふしがあるのに、担任が何も気づかなかったとすれば、対応の初期の段階での感度の低さは、責められても弁解の余地はないといわなければなりません。そしてそれが、結果として諸機関との連携不足を生じさせるということも、この事件の残した教訓といえるでしょう。

 

子どもが虐待を受ける事件は年々増え続け、昨年厚生労働省が発表した2008年度の児童相談所対応件数は42,662件、1990年度と比較すると、18年間で実に40倍にも上っています。2002年の児童虐待防止法施行により、虐待の定義が規定されたことで表面化し、数が増大した面はあるにせよ、この激増ぶりはすなわち、対策が遅れていることの証左にほかなりません。

 

今日は、子どもの虐待防止を願うオレンジリボン運動に賛同し、こうしてオレンジリボンをつけています。

 

さて、江戸川区の事件では、「虐待問題に対応可能な専門家が学校現場には必要」とのコメントが議会や外部の有識者からも出されました。私もその通りだと思いますし、今後それは具体的な動きを後押ししていくことと思います。また、ぜひそうならなければと考えています。これから質問するスクールソーシャルワークは、その具体策のひとつといえます。

 

学校でのいじめ、不登校や、家庭でのひきこもり、虐待、特別な支援を必要とする事例など、子どもに関わる課題への対応として福祉的なアプローチを必要とされるケースは数多くあります。

 

具体例を申しますと、仮にある不登校の中学生の少女がいたとします。これを本人の心の問題として心理療法的な相談対応にあたるのがカウンセラーですが、スクールソーシャルワーカーは違います。この少女は、実は学校でいじめにあっているかもしれない、家庭では家族間の不和があるか、保護者が経済的問題を抱え、その結果として貧困状態にあるかもしれない、あるいは薬物やアルコール依存にかかわっているか、家庭内暴力やドメスティックバイオレンスの被害者かもしれず、摂食障がい、うつ病などの健康上の問題か、発達障がいをもっているかもしれません。このようにさまざまな問題が少女の背景に隠れている可能性があります。

 

そのようなケースに対し、社会福祉的な視点と手法をもって、本人個人というより、その環境に働きかけることで解決を図ろうとするシステムが、スクールソーシャルワークです。

 

なお、システムとしてのスクールソーシャルワークと、その仕事を担う専門職のスクールソーシャルワーカー、というようにここでは定義し、使い分けてまいりたいと思いますのでご了解ください。

 

スクールソーシャルワークは、100年前米国で始まった活動にそのルーツがあるといわれますが、日本に導入されてまだ20年ほどしかたっておらず、方法論としては未確立です。ですが、学校における問題が多様かつ複雑化する中で、今後活用のニーズが必ず広がっていくものと考えます。

 

杉並区がスクールソーシャルワーカーを配置されるようになったことを、生活者ネットは高く評価しています。この取り組みが、子どもの育ちを支えるセーフティネット機能のひとつとしてさらに充実されることを願って、今回質問いたします。

 

当区のスクールソーシャルワークは2006年度より取り入れられていますが、2008年度からは、文部科学省が実施するスクールソーシャルワーカー活用事業の導入がされています。最初の質問は、この文科省の事業についてです。その概要と目的をまずうかがいます。

 

ふたつ目。当区が文科省より2年早くスクールソーシャルワーカーを導入された背景には、どのような課題があったのか。課題を受けて導入に至った経緯と、その目的について、おうかがいします。また、これまでの活動実績について、そしてこの活動に対する区の評価はいかがか、併せてお示しください。

 

次は資格についてです。スクールソーシャルワーカーは専門的な職種でありながら、国家資格というような、そのための資格というものはないと聞いています。当区のワーカーは現在4人ですが、どのような資格をもつ人たちでしょうか。おたずねします。

 

働き方についてもうかがいます。4点目です。当区のスクールソーシャルワーカーは済美教育センターの教育SAT(スクールアシストチーム)に位置付けられていますが、どのような働き方なのでしょうか。対応すべき事例が持ち込まれたのち、どのように動くのか、具体的にお示しください。学校や公的機関とのかかわり方やチームワークのとり方、また家庭や個人への介入のしかたはいかがでしょうか。勤務のしかた、待遇、権限など、日常的にどのような業務なのか、おたずねします。4人の分担についてもうかがいます。

 

つづいて5点目。スクールソーシャルワーカーは、その任務の特色として大量の個人情報を抱えることになります。当然ながら秘匿義務がありましょうし、それは厳守されなければなりません。監督責任者としての教育委員会の方針をお聞かせ願います。

 

そして6点目は今日、一番お聞きしたい質問です。活動するなかで、学校の側に立つのか子どもの側に立つのか、学校側の立場で対処するのかそれとも子どもに寄り添うことを重視するのか、その立ち位置によってスクールソーシャルワーカーの対応は異なったものになります。迷う場面が必ず出てくると思います。そのときワーカーは「子どもの最善の利益」を優先すべきであり、そういう態度や判断を支える教育委員会であってほしいと考えます。区の見解をお示しください。

 

スクールソーシャルワーカーの取り組む課題には、複雑で深刻なものがあるに違いありません。あるケースには時間をかけた取り組みが求められ、同じ人が継続して担当することが必要なケースが必ず出てくるでしょう。そう考えると、現在の4人はとうてい十分な人数とはいえません。区はワーカーの登用を増やし、学校の問題に対して福祉的な取り組みとして対応に当たるべきと思います。区の見解はいかがでしょうか。おうかがいします。

 

そしてこの項の最後の質問です。人材育成と普及啓発について、まとめてうかがいます。

 

スクールソーシャルワーカーの質的向上と活動支援のため、ブラッシュアップ研修の実施が必要と考えます。ケーススタディを重ねること、対応の実績を積み上げることも重要ですし、ワーカーが動きやすいような環境づくりも求められます。区はどのように進めていかれるのでしょうか。

 

また、スクールカウンセラーとの違いや、スクールソーシャルワーカーの役割の重要性をひろく一般にも伝え、アピールするべきと思います。とくに、児童青少年委員をはじめとする、子どもにかかわる機関の関係者への啓発が求められます。教育委員会が昨年パンフレットを制作されていますが、そのためのツールのひとつとして有効に使うべきと考えます。区の見解をおうかがいし、前向きなご答弁を期待して、次の項目に移ります。

 

3番目の項目、食品表示についての質問です。

 

食品について私は、安全であることが特別なことではなく、当たり前でなければならないと考えています。ですが同時に、どんな食品を、何を基準に選ぶかは個人の自由な判断だと思います。健康上の制限がある場合を除いて、消費者個人が自分の意思で食べものを選ぶべきですし、消費者にはその権利が確保さなければなりません。消費者の食品を選ぶ権利、その前提となる正しい情報を知る権利、それを保障するのが食品の表示です。

 

日本の食品表示は、おもに、衛生の面で定める「食品衛生法」と品質面にかかわる「農林物資の規格及び品質表示の適正化に関する法律」という長い名称の、いわゆるJAS法という、2つの法律によって規定されています。食の工業化やグローバル化の進行に伴って食品を取り巻く環境が大きく変わるなかで、時に応じて改正を重ねてはきたものの、消費者にとってはまだ不十分といわなければなりません。その問題意識に立って、以下、質問いたします。

 

昨年9月、消費者庁が発足したことにより、食品表示に関することは、国においては厚生労働省から消費者庁に移管されました。生産者・事業者本意で定められてきた表示制度が、今後、消費者本位の制度に見直されることが期待されます。ところで、この移行に伴う区での変更はあるのでしょうか。食品表示にかかわる区の所管は保健所ということになっていますが、消費者センターとの連携もされているはずです。どのようにされているのか、確認になりますがこの項の始めにうかがっておきます。

 

食品表示に対する区民の関心は高まっています。区が昨年発行された「健康都市白書‘08」によれば、「食品衛生について家庭で心がけていること」という項目で「食品を購入するときには、食品表示をよく見ている」と答えた人が、2005年の73.4%から08年には76.5%に上がり、それを裏付けています。

 

ところが内閣府が昨年実施した国民生活モニター調査では、表示を「信頼できる」とした人が43%いたものの、「信頼できない」と答えた人が28%あり、ほかの調査項目の結果からも、現在の表示制度は不十分と考える人の多いことが明らかになっています。偽装表示が相次いでいることも、消費者の信頼感を低下させてしまっています。

 

消費者に身近なところでの、適正に表示されているかどうかのチェックが必要です。適正な表示、消費者が知りたい情報が伝わる表示が求められています。

 

そこで質問です。区は、食品衛生監視指導計画において、食品添加物と並んで食品表示の適正化に向けた取り組みを定めており、先日パブコメに付された計画案では、基本方針の1項目で区内の食品製造施設への監視指導をいっそう強化、とあります。この監視指導活動はだれが、どのように行うのか。そして、もし問題が見つかった場合にはどのように対応するのかうかがいます。

 

区がどんなに指導しても、いまの法律の範囲では消費者の知る権利は保障されていないという現実があります。偽装表示が絶えないことも法の不備に一因があります。また表示を定める法律が複数にまたがっているため、消費者にとって大変わかりにくい仕組みになっています。

 

制度の不備を示す例としてよくあげられるのが、魚の例です。切り身として売られる魚には産地表示が義務づけられているのに、刺身の盛り合わせになると加工食品の扱いとなり表示が不要となる、という具合に、いまの制度は消費者の立場で設計されているとはいえません。

 

加工食品については、昨年、東京都消費生活条例が施行され、都内で販売される調理冷凍食品について原料原産地表示が義務付けられたことで、実質上は全国基準として通用しています。ただし、国内での製造に限られているほか、重量割合で上位3品目かつ5%以上の原材料しか充当しません。冷凍コロッケに入っている牛肉はおそらく該当しないでしょうし、製品として輸入された冷凍ギョーザの原材料は非該当です。

 

対象をすべての加工食品に広げ、原料の生産履歴、いわゆるトレーサビリティ―や原料・原産地の表示を義務化すべきです。また、遺伝子組み換え食品や飼料として使われる遺伝子組み換え穀物、クローン技術によって生産された家畜由来の食品の表示義務化も、多くの消費者が求めているところです。

 

先に引用した国民生活モニター調査では、遺伝子組み換え食品であるかどうかの表示を重要と考える人の割合が02年で62.9%、08年は73.3%となっており、遺伝子組み換え食品に関する注目度が高まっていることがわかります。

 

それは、遺伝子組み換え食品を「選択しない」ために表示を求めていると考えるべきです。そしてクローン食品についての消費者の関心は、おそらく遺伝子組み換え食品より高いと思われます。昨年、体細胞クローン技術で生産された牛を、内閣府の食品安全委員会が「食品として安全である」とする評価を出しましたが、その後受け付けられたパブリックコメントでは「安全性に不安がある」というものが8割以上だったといわれています。

 

専門家集団である食品安全委員会がいくらお墨付きを出しても、食べたくないと思えば消費者は買いません。買わないという選択を可能にするのは、ラベルに書かれている表示です。逆に、積極的に買いたいと思う人の選択を可能にするのもまた、表示です。消費者が自らの意思で買うか買わないかの選択ができるよう、国は食品表示の制度を見直し、加工食品のトレーサビリティ―と原料・原産地の表示、遺伝子組み換え食品と飼料用の遺伝子組み換え穀物、そしてクローン食品の表示を義務付けするべきと考えます。

 

区民の食の安全を守る立場にある区としては、どのようにお考えになるでしょうか。最後の質問として見解をうかがいます。

 

さて、自給率の向上と食の安全の追求が直結するものとして論じられますが、その間には消費者の選択が介在すること、それを可能にするのが表示だということが見落とされがちです。そのとき適正な表示が確保されなければ、国産品を選びたくても選ぶことができません。

 

ですから、表示制度の見直しと食品のトレーサビリティ―が確立されることは、日本の農業・畜産業などの第1次産業を守り食料自給率を高めるためにも不可欠なことなのです。自給率を高めることは一人ひとりの消費行動の結果と考えれば、身近な自治体である区は、区民に対して、食品を選択する主体としての自覚がもてるような教育や啓発に取り組んでいただきたいと思います。以上、要望し質問を終わります。