第3回定例会一般質問     2010.9/14 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークとして、区長の所信について、持続可能な発展のための教育について、学校図書館について、以上3点について質問いたします。

 はじめに<区長の所信について>です。区長が就任されて2か月たち、このたびなされた所信表明では、区政の舵を切る手法として「脱山田」路線を打ち出しながら、区民や職員とともに対話と合意による新しい区政を築いていこうとする姿勢が読み取れました。ここでは選挙公約に沿って政策課題が提示されましたが、その中から大きく2点について質問いたします。

 

1点目は<これまでの区政の検証と評価について>です。

 区長は就任早々職員に対しレポート提出を求められたということです。先日の質疑では、いまも読み進めているというお話でしたが、たいへん興味深い内容であろうと想像しています。最初の質問として、レポートの内容はどのようなものだったのか、それに対し区長は率直にどのような感想をもたれたのか、うかがいます。

 また、レポートを基本構想づくりにも反映させられるのではないかと思いますが、職員レポートをどのように活用されるお考えか、併せてうかがいます。

 

次に行政評価についてです。

 当区ではこれまで、行政評価に関してさまざまな手法を積極的に取り入れ、毎年改善に努めてこられました。いってみれば、これが決定版と言えるような評価システムが出来上がっていない、ということでもあるかと思います。当区でのこれまでの行政評価への取り組みについて、区長はどのように評価されているのか。「既存の行政評価システムについては・・・必要な見直しを行い、実効性を高めてまいりたい」とのことです。とくにその実効性についてのお考えをうかがいます。

 新しい行政評価システムをつくろうとされているようですが、有識者・専門家による外部評価のほかに、市民自治をすすめる観点から、区民による評価が必要だと思います。区民による評価を新たな行政評価システムの中に取り入れるべきではないのでしょうか。区長の見解をうかがいます。

 

今回の区長選の結果は、目新しいことに飛びついて世間の耳目を集める区政より、堅実で身近な生活を大事にする区政を区民が求め、選択したことを意味するかと思います。所信で述べられた「区民参加」の重視や「ボトムアップ」の姿勢には共感が持てます。しかし所信の全体を通して「区長として何がやりたいのか」「どのような区政をつくっていきたいのか」がよく見えません。この4年間でご自身が区長としてもっともやりたいことは何なのでしょうか。

 うかがって、2点目、<「新しい公共」と協働について>質問いたします。

 

今議会では、基本構想のための審議会設置の条例案が提案されています。区長が基本構想づくりに直ちに着手されるお考えとうかがい、生活者ネットワークは、基本構想の策定にあたっては、あらゆる場面で思い切った区民参加を追及していただきたいと考え、具体策を提案いたしました。このたびの所信表明では「多様な区民参加」「新しい公共」の発想などがいわれ、私たちの提案がいくらかは採用されたものと評価するところです。

 

さて、「新しい公共」については、昨年夏の政権交代で首相に就任した鳩山前首相が内閣府に設置した「新しい公共円卓会議」が、菅内閣へのバトンタッチ直前に「宣言」をまとめています。それによれば、「新しい公共」とは「支えあいと活気のある社会」をつくるための当事者たちの「協働の場」である、とされています。区長のお考えになる「新しい公共」はどのようなものなのでしょうか。

 「新しい公共」については今回多くの会派より質問が出され、行政管理担当部長より「質・量ともに拡大する公共サービスのニーズに伴い・・・うんぬん」という答弁がされていますが、区長ご自身のお考えをお聞かせください。先の「円卓会議」宣言で述べられたことと同じと考えてよいか、うかがいます。

 

ところで「協働」という言葉が今も出てきましたが、「協働」は「新しい公共」を論じるとき必ずと言ってよいほどついてくる概念です。生活者ネットワークは、これまで繰り返し「協働」について区のお考えを質してきました。それは、「協働」は行政とNPOなど市民が対等な立場であるべきであるのに、区における「協働」の実態はそうでなく、行政優位になっていると感じてきたからです。

 私は区の「協働」のとらえ方には違和感があり、検証が必要と感じてきました。2005年から3年間、実施された協働事業提案制度は、市民と行政の協働の実践として実験的な意味あいも持つ事業でしたが、きちんとした検証や総括が行われないまま、終了されました。本来、当時の協働化ガイドラインの作成主体であり、かつ協働事業の選定主体でもあった協動推進委員会や、NPO等活動推進協議会、協働事業の実施団体、さらに区民等を含めての検証が必要であったと考えます。

 

一方、協働事業の発展的施策と区が説明した民間事業化提案制度は、始まって5年目となる現在、民間事業者にビジネスチャンスを提供する性格が顕著であり、私たちの考える市民と行政の協働とはまったく異なるものとなっています。

 新たな基本構想づくりのなかでこれまでの「協働」を検証することには賛同するものです。以上の問題をふまえて、協働の一方の当事者である市民が検証する必要があります。ご見解をうかがいます。

 これからは協働のあり方として、民間提案型の業務委託や市民参加型の公共事業なども考えられると思います。行政とNPOの関係を「事業の発注者と受注者」という上下関係だけでとらえていると、新しい発想が広がっていきません。「新しい公共」の領域が広がっていくにつれ、行政とNPOによる真の協働をすすめるため「委託」でも「補助」でもない、対等、自主・自立の関係を担保する規定整備が必要になっていくと考えます。

杉並区では、このような考え方に基づく「協働ガイドライン」を2004年度より定め、毎年更新してきましたが、残念なことに十分生かされないまま、それがあることすら忘れられたような状況が続いてきました。

 区長は協働の取り組みを推進する計画を策定すると述べられ、期待しています。ただそのとき、推進計画の策定と併せて、協働にふさわしい契約のあり方についての議論を深めていただきたいと思います。法的整備として「協働契約条例」の策定を検討する自治体の動きも研究いただきたいと考えます。

 区では今般、公契約条例についての庁内検討組織を立ち上げたとうかがい、1年前の決算委員会でその策定を求めた者として、前向きな検討がされるよう求めますが、「契約のあり方」を論じるなかでぜひ「協働の契約」も俎上に載せていただきたい、と考えるものです。

 要望として申し上げ、2番目の項目、<持続可能な発展のための教育について>質問いたします。 

 

ここで「持続可能な発展のための教育」というのは、英語の「Education for Sustainable Development」の日本語訳です。Developmentの訳語を「発展」としましたが、「開発」という言葉があてられることもあれば、「持続可能な社会に向けた教育」と訳されることも、「持続可能な社会の構築のための」とされることもあり、混在しています。文部科学省は「持続発展教育」という言葉を用いて啓発を行っているところですが、「education」「sustainable」「development」の頭文字をとってESDと呼ぶことが一般的であるため、ここでは以下、ESDとします。

 

ESDとは何かということについて、それがめざす「持続可能な社会」をイメージするところから論を起こしたいと思います。

 簡潔に言うなら、地球規模の環境破壊や、エネルギーや水などの資源保全が問題化されている現代において、将来世代のすべての人が健康で文化的な生活を営むための社会づくり、ということになろうかと思います。

 このためには、グローバルな視点からは貧困の克服、保健衛生の確保、質の高い教育などが必須ですし、性別、人種等による差別のない、公平な社会に向けて努力されなければなりません。さらに、これらの取組は地球上の資源が有限であること、環境容量には制約があること、自然の回復力などを意識しなければならず、戦争や紛争は、難民を生み、環境を破壊するため、平和への取組みが不可欠です。

 これらを踏まえ、「持続可能な発展」を進めていくために、学校教育、学校外教育を問わずあらゆる領域から、国際機関、各国政府、NGO、企業等あらゆる主体間で連携を図りながら、教育・啓発活動を推進する必要があり、それがESDということになります。この教育の範囲とは、環境、福祉、平和、開発、ジェンダー、子どもの権利教育、国際理解教育、貧困撲滅、識字、エイズ、紛争防止教育など多岐にわたるものです。

 

ESDについては、2002年の国連総会において日本が提唱し、2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」として各国が取り組むこと、その推進機関を国際連合教育科学機関、通称ユネスコとすることが議決されています。

 小泉政権当時にほかならぬ日本が提案して始まり、10年のうちすでに半分過ぎてしまったのに、日本であまりにも周知されていないことに驚き、杉並区にぜひ積極的に取り組んでいただきたいという思いから、今回質問することにいたしました。

 

先日、ESDに関するある学習会に、長年杉並区の環境教育に熱心に取り組んでこられた区立学校の先生が参加され、「持続可能な社会づくりのための教育、ESD」という言葉、理念を初めて聞いた、大変重要な概念だと思う、と話しておられたと聞きました。

 ESDで取り組む内容は目新しいことではありません。また現場に新たな負担を増やすものでもありません。区はすでに、総合的な学習の中で環境教育、人権教育、国際理解教育などに取り組んでこられました。現在直面している地球的な規模の諸課題を前に、これらのさまざまな機会に行われている学習を、「持続可能な社会づくり」という概念で整理しつなぐこと、それを学校や地域社会全体で共有し、具体的な行動につなげることの重要性を主張したいのです。

 

この項の最初の質問として、区教委がESDについてどのようにとらえておられるか、おうかがいします。

 ESDはあらゆる分野の教育課題を包括していますが、なかでも関わりの深い環境教育に関連して次におたずねします。

 当区の環境教育はエコスクールを推進する3つの取り組み、すなわちハード面での整備、環境教育、環境配慮行動の中で位置づけられている、と認識しています。今般、区長が打ち出したエアコンの全教室設置も、エコスクールと矛盾するととらえるのでなく、子どもが自ら管理・運用にかかわり環境教育を進めるツールとして、むしろこれを機会にエコスクールと関連付けることにこそ、教育としての意味があり、そうすることでESDの実践としたいと考えます。

 エコスクールの3つの取り組みを、持続可能な社会をめざすESDの観点から評価・検証することが必要と考えるものです。いかがでしょうか、見解をうかがいます。

 

また、ESDは地域づくりに貢献するものといえますから、これを学校の現場で展開するとき、これまで環境教育を協働により実践してきたNPOなどの市民団体とともにすすめていくことが望ましいのは当然といえます。区内で環境に限らずさまざまな活動、たとえばまちづくり、人権、福祉、消費者問題にかかわる活動、国際交流活動などを実践しているNPOや団体を区がつなぎ、ESDの活動として位置づけなおすことで、これまでの活動実績を生かしてより豊かな学習が展開できると考えます。

 NPOなどがこれまで実践し蓄積してきた活動の情報は、地域の資源として有効に活用されるべきです。そしてESDをすすめる上で、さらに広く、深く展開させるため、各学校がこれらの情報にアクセスできるようなツールを区は整備する必要があると考えます。いかがでしょうか。区のお考えをうかがいます。

 新しい学習指導要領でもESDの理念を各教科の学習に採り入れることとされています。小・中・高校の社会や理科の学習指導要領に「持続可能な社会の構築」という観点が盛り込まれていますが、これはまさしくESDの考え方そのものといえます。

 

ESDを、21世紀に生きる地球市民を育てる価値観としてもっと広めていく必要があります。当区でも、校長をはじめとする管理職や教師を対象として講習会や研修を行うことが必要ではないでしょうか。おうかがいします。

 さきに述べた「新しい公共円卓会議」宣言でも、「企業にも求められる『持続可能な社会づくり』」や社会貢献活動、社会的活動を担う人材育成や教育の充実がいわれています。これらは、ESDの理念のもとで実体化することができると考えます。教育行政だけでなく、あらゆる事業にESDの視点が求められています。これからつくっていく基本構想にも、この認識を外しては考えられません。以上申し上げ、最後の項目に移ります。

 

<学校図書館について>の質問です。

 2年前、2008年の第2回定例会で私が初めて学校図書館の充実を、と求めて質問して以降、そのとき指摘した課題について区教委が真摯にとらえ、改善に努めてこられたこと、とくに、その翌年の2009年、そして今年と、学校司書の配置が進められつつあることを率直に評価し、深く敬意を表するものであることを、まず申し上げます。

 そのうえで、この間の取組みを検証しながら、さらなる充実に向けてこの動きを推進させていただきたい、との思いから今回質問したいと思います。

学校司書の配置は、昨年11校、今年は22校と増えました。今年の配置はついこの前の7月から始まったばかりにもかかわらず、司書がいるようになった学校図書館では、目に見えて実績があがっているという具体的な話を何人もの方から聞いています。区の認識はいかがでしょうか。まずおたずねしておきます。

 期待していた通りの、あるいはそれ以上の効果が表れているという話を聞くにつけ、全校に早く司書配置を広げてもらえないものか、という保護者の要望はもっともだと思います。

区は先般「子ども読書活動推進計画」を改定され、H26年度までに学校司書の全校配置をめざすと明記されました。しかし問題は、これが実施計画に位置づいていないことです。また、全校配置まであと4年もかかるということです。この増設計画は、毎年11校ずつ増やしていくということなのでしょうか。もっと早く全校配置すべきではないのか。少なくとも全校配置に向けた計画を示すべきではないのでしょうか。見解をお聞かせください。

 ちなみに、他の自治体では、学校図書館の運営を民間事業者に委託するところもあり、学校司書が委託事業者の管理のもとに配置されるようなケースも見られます。しかし、杉並区では読書推進活動や図書教育を重要な教育課題と位置づけ、教育委員会の責任において自前の運営体制がとられています。であるからこそ、良質な学校図書館運営のもとに学校司書の能力が生かされるような環境が整備されているのだと思います。もし民間事業者のもとに司書が配置されると、評価は違ったものになったかと思います。

昨日、他の議員の質問への答弁で、区長が地域図書館の運営について、全館を指定管理とすることには「慎重に」と述べられ、この方針に異を唱えてきた者として、ぜひその方向で進めていただきたいと、区長にエールをおくりたい思いですが、学校図書館の運営についてはなおのこと、直営を貫いていただきたい、またそうしていただけるものと信じています。

 

さて、話をもとに戻しまして、司書の配置が今後広がっていくと、学校同士、また地域図書館との本の貸し借りがよりひんぱんに行われることになります。すなわち、活発な物流がスムーズに行われるような体制が求められるということです。済美教育センターの支援体制もより強化し確立させていく必要があります。また「子ども読書活動推進計画」で計画されている電子ネットワークの整備については、いまだにつながっていないと聞きますが現状はいかがでしょうか。整備スケジュールはどのようになっているのでしょうか。スケジュールを立てて進めていただきたいと考えますが、あわせて見解をうかがいます。

 同じく「子供読書活動推進計画」では、学校図書館の充実と教職員の指導体制の充実を「重点取組み」に挙げ、「学校図書館運営計画」を作成するとあります。作成状況および実施状況はいかがか、続けておうかがいします。

最後の質問は、司書の待遇の問題です。採用されたみなさんは、有能であることもさることながら、在任中にすこしでも成果を上げようという使命感をもち、各自が必死で努力されています。ところが現在の待遇は決して十分とはいえません。16時間勤務のパートタイマーで月収1718万円では、職業として続けていくことが難しい人もいるのが事実です。

 若く有能な有資格者が働き続けられるような処遇とすべきではないのでしょうか。昨年も今年も、緊急雇用対策として国や都から交付された財源を司書の人件費に充てるという、区が苦し紛れにやりくりした結果なんとか可能になったことは承知しています。

 

しかし考えてみれば、先ごろ、OECD加盟国のなかで2007年の国内総生産に占める教育費の割合が日本は最下位だったことが報道されましたが、子どもの教育にかける必要経費くらい、杉並区ともあろう誇り高き自治体が思い切って対処できないものでしょうか。

 今年は22人分のうち11人分が区の教育費に位置づけられましたが、学校司書の重要性を認めるのであれば、区の教育予算の編成時に当初から確保すべきですし、教育現場における重要な専門職にふさわしい待遇に改善すべきと考えます。いかがか、お考えをうかがいます。

いつも鍵のかかっていた図書室が、いつでも開いている居心地のよい部屋に変わり、ほしい情報があればそれを差しだしてくれる、本の楽しさおもしろさを教えてくれる、しかもテストをしたり宿題を出したり点数をつけたりしない、評価しない人の存在があり、記録的な暑さだったこの夏には校内で子どもが自由に入れる唯一の涼しくて快適な空間だったこともあって、見違えるように魅力的な場所になった、と私のもとにも喜びの声が届いています。

 この取り組みが「持続可能な」ものとして、さらに充実させ発展させていただけますよう最後に要望し、私の質問を終わります。

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