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第1回定例会一般質問 2.16 市橋綾子

私は区議会生活者ネットワークの一員としまして、災害対策について、(1)地域防災計画について(2)災害弱者の防災対策について(3)医療救護所について(4)学校防災林について(5)災害対策基金と減税自治体構想について、質問します。

 

1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災から15年が経ちました。横倒れになった高速道路、根こそぎ倒れたオフィス街のビル、黒煙をあげて燃え続けるまち。今も、あの時の映像が目に焼き付いています。直近ではハイチで大地震が起き、おおぜいの方が犠牲になりました。地震国に住む私たちは、これらの過去の地震から多くのことを学び、地域防災に取り組む必要があります。

 

民主党がマニフェストに掲げた「危機管理庁の創設」は、いまだ議論もされず、今回、国の防災関連予算は大幅にカットされました。地域に暮らす私たちは、国の動きを待つのではなく、既存組織を最大限に活用して、10年以内であれば30%、30年以内であれば70%の確率でおきると言われる首都直下型地震に向けて備えをしていかねばなりません。今日は、点検の意味も込め、阪神・淡路大震災10周年を期に始まった地域づくりやコミュニティ活動を行うNPO、NGOを支援する意味の白いリボンバッジをつけて、質問します。

 

最初に「地域防災計画」について4点伺います。

地域防災計画は災害対策基本法第42条の規定に基づいて、区民の生命、身体および財産を災害から保護することを目的に杉並区防災会議が作成する計画です。2005年の修正から5年が経ち、現在、改定に向けて作業が行われています。今回の見直しのポイントは何か、併せて、地域防災計画を作成する防災会議の構成メンバーについて伺います。私は、以下の質問でも触れてまいりますが、実効性ある計画にしていくためには地域を知る人たち、なかでも女性たちの参加が不可欠と考えております。防災会議はどのような人たちで構成され、男女の構成比はどのようになっているのでしょうか、うかがいます。

 

地域防災計画には区、区民、事業者の責務として、自らの命は自らが守る自助、自分たちのまちは自分たちで守る共助、区の役割としての公助が書かれていますが、具体的にどうすればよいのかを説く内容のものではありません。区民や事業者に自助・共助を呼び掛けるのであれば、具体的に伝える必要があると考えます。区は阪神淡路大震災の翌年、1996年7月に「阪神淡路大震災の教訓を踏まえて」という副題をつけ、「新しい杉並区の震災対策」をつくっておられます。「地震が起きたら」というステージ1から始まり、「避難が必要な時は」「けがをしたら」「災害救援所での生活は」など、10段階のステージを設定し、区民が行うこと、区が行うことが、それぞれわかりやすい言葉で書かれた行動指針です。しかし、現在、区が用意しているパンフレットは、区の責務や法律、条例、条例の理念が紙面の半分を占めていて、市民に必要な情報を伝えきれていません。市民向けにわかりやすいガイドブックが必要だと思いますが、作成される予定はおありでしょうか。伺います。

 

次に被災して住まいをなくした人たちの生活の場となる震災救援所について伺います。震災救援所は、被災状況に応じて区内の小中学校66か所に開設されます。実際に運営していく手掛かりとなる「震災救援所運営マニュアル」は震災救援所ごとに作られるものですが、すでにできているところは何か所か。また、すべての救援所でマニュアルの整備ができる時期はいつになるのか、お示しください。

 

災害が起きたときにもっとも配慮が必要なのは障がい者、高齢者、傷病者、乳幼児・子ども、妊婦、旅行者、日本語が十分ではない外国人などです。そこで、これらの災害弱者の防災対策について6点伺います。

この方がたのことを防災行政では「災害時要援護者」といい、これまでも、当区では災害時要援護者対策に取り組んでおられますが、今回の地域防災計画の改定で、どのような見直しがされたのか、まず伺います。

 

杉並区障害者団体連合会でつくられた「区民のみなさまへ 大地震大災害の時 たすけてください」という小冊子があります。当事者でなければわからない、災害時に想定される問題が列挙され、たいへん参考になります。障がいの種類によって、情報の受け取りや周囲の状況の把握、意思の伝達、移動ができない、トイレも困るなど、バリアが多い状況に加え、周囲の無理解というバリアも立ちはだかります。このように震災救援所での生活が困難な障がい者、介護度の高い高齢者などへの対応が必要と考えますが、区はどういった対策をおもちでしょうか、伺います。

 

国立市では、視覚・聴覚を含む身体障がい、精神障がい、知的障がいをお持ちの方がワーキンググループをつくり、「障がい者が暮らしやすいまちづくり」の提言書を市に提出し、市はこれに基づいた避難支援体制を構築していると聞いています。当区では、障がいをお持ちの方が、災害時にどのような不安を持つのか、当事者の声の聞き取りをされておられるでしょうか。当区においても、当事者のニーズをくみ取ったうえで、避難支援の対応策がとられる必要があると考えますがいかがでしょうか。おたずねします。

災害時要援護者のうち、震災救援所での生活が極めて困難な方に対して、区は第二次救援所を開設するとしています。障がい者団体の方にお話を伺いましたら、第二次救援所となる地域区民センターでの開設は、相手の施設の協力を得なければならないわけで、まだまだ不確定なところがあり、不安がある、とおっしゃっていました。当事者の参加で早期の着手を望みます。

 

以前、私は杉並ボランティア・地域福祉推進センター主催の「災害時高齢者生活支援講習」に参加しました。避難所生活に焦点を当てて、環境に順応しにくい高齢者の不安を軽減する目的で行われているものです。災害が高齢者に及ぼす影響やすぐに役立つ移動、清拭、足浴などの技術を学び、高齢者自身だけでなく、家族にとっても、役立つものでした。この講習会はこれまで何回開かれ、何人の参加者があったのでしょうか。実績を伺います。この講習会はあんさんぶる荻窪を会場に開かれていますが、今後、ゆうゆう館など地域の身近なところで行うとよいと考えますが、いかがかでしょうか。伺います。

 

昨年、私ども生活者ネットワークで、災害時の問題を女性の視点から検証しようと学習会を開きました。阪神淡路大震災の経験をもとに、女性の視点に立って問題提起をしているNPO法人「ウィメンズネットワークこうべ」の代表の方を講師に、これまで報道ではほとんど取り上げられてこなかった問題の数々を知ることができました。そのなかで、耳を疑うような報告がされました。それは避難所などで起きる女性に対する性暴力のことです。4000人以上が収容されていた学校の体育館で、通路側に寝ていた子どもや女性たちが、また、自宅のトイレに帰った女性が性被害にあったなど、今でもその心的後遺症に悩む女性は多くいるそうです。地震後に開設した相談所には、このような被害や相談が寄せられていたものの、公的機関や警察は一切そのことを認めようとはしなかったといいます。

2005年に起きたスマトラ沖地震でも同じような性被害にあったスリランカの女性たちが、国連の場で実情を訴えた記事を見て、災害時にはどこででも同じようなことが起こりえる、と確信をもったといいます。その後、「災害と女性」をテーマにフォーラムを開催し、そこでのアピール文のなかで、
・防災や復興の諸事業には責任者として女性を登用する

・避難所での女性、乳幼児を抱える人への配慮や相談窓口を設置する
・その他マイノリティー女性のニーズに応じた支援を行う
など、参加者の声をまとめています。
学習会では、東京の人たちに、自分たちが経験し、そこから見えてきた課題や対策を伝えたいと、「避難所は2,000人が限界、防災計画ではどうなっていますか?トイレは安全で明るいところにありますか?男女別トイレになっていますか?避難所に女性の責任者がいますか?」などの問いかけがありました。

その後の新潟県中越沖地震で、国は初めて女性職員を現地に派遣し、避難所では全く女性への配慮がないことが指摘されて、ようやく女性の視点に立った防災計画の見直しが言われるようになりました。

 

そこで女性特有の問題に関連して2点伺います。震災救援所を円滑に運営していくには、区民、学校、区の連携が必要だとして「震災救援所運営連絡会」が設立され、今年で、5年目になります。震災救援所運営連絡会での女性の参画の実態はどのようになっているのでしょうか。お答えください。

 

震災救援所の設営には、女性固有の問題が配慮される必要があります。生理用品の置き場、トイレの設営の仕方、着替えや授乳などの間仕切りなど女性の視点で震災救援所づくりがされることの重要性が認識されるべきです。そのためには女性の地域防災リーダーの育成が必要で、なかでも若い世代の参加を意識的に働き掛けていくことが必要と思いますがいかがでしょうか。おたずねします。例えば、震災救援所となる学校の保護者等に参加を積極的に呼びかけるなど、工夫されるよう要望します。

 

医療救護所について2点伺います。

当区では、66か所の震災救援所のうち15か所で震災に応じて医師、歯科医師、接骨師、薬剤師といった医療関係者による医療救護所が開設されます。医療救護所に備蓄される医療品はだれがどのようにして決めるのでしょうか。お尋ねします。

また、点検については、日付による入れ替え作業だけではなく、その時々に応じた医薬品の見直しが必要だと考えますがいかがでしょうか。うかがいます。

 

昨年、災害対策特別委員会で立川にある独立行政法人国立病院機構災害医療センターを視察しました。このセンターには、大規模災害現場を経験した医療関係者とあらゆる事例のデータが集められており、私たちの経験や情報を使ってほしい、と担当の方がおっしゃっていました。当区でも災害医療センターの機能を有効に活用すべきと考えますが、いかがでしょうか。伺います。

 

次に学校防災林についてです。

その前に、杉並のみどりの減少の問題に触れなければなりません。杉並の緑被率は前回の調査から約1ポイントアップして、21.84%となったことが昨年報告されました。しかし、現実では、屋敷林や農地は減る一方です。先日、山田区長のやり残したいくつかの仕事の中に緑をふやすことができなかった、というものがありました。私もなんとかして緑を増やすことができないかと、思いつくたびに担当部署に提案するのですが、却下され続けているのが現状です。熱心に公園の花壇や植栽の世話をしている市民団体が、公園敷地生えた実生、種から芽を出したものですが、この実生の苗木を育てようとしても、切るか抜くかと選択を迫られ、移植したいと区に問い合わせれば「植えるところはありません」との返事が返ってくる、と嘆いていました。そのようななか、今年に入って、小学校の校庭に子どもたちと実生の苗木を植えることが叶いました。そこで、学校の敷地に火に強い木を防災林として植えるというのはいかがでしょうか。震災救援所になる小中学校の敷地の周囲にできるところから防災林の視点で植樹をする提案です。

 

そこで、まず、防火樹林帯について1点伺います。区内の防災公園の周囲に防火樹林帯が設けられていますが、この防火樹林帯の効用をどのように認識しておられるのでしょうか。防火樹林帯に期待するものは何かお答えください。

 

震災救援所となる小中学校は燃えないことが第一です。そのためには学校の敷地周囲に樹木を配置し、防火樹林帯を形成することが、万一の場合、延焼を防ぐ一つの方策と考えます。これまで、区内の小中学校に、防災林の機能を持たせた植樹があるでしょうか。伺います。

 

阪神淡路大震災では神戸市長田区のクスノキが地域を延焼から守ったというニュースがありました。この杉並においても和泉2丁目に、江戸の大火から村を守ったといわれる大きなケヤキがあります。また、お隣りの練馬区立大泉中学校では総務省消防庁の「学校防災緑化整備事業」に取り組み、震災救援所となる学校の敷地周囲に木を植え、防火機能の向上を図っています。当区において学校の敷地に学校防災林という位置付けで植樹を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。その際の課題は何か、併せて伺います。

 

最後の項目です。減税自治体構想については予算特別委員会での審議が予定されていますので、ここでは災害対策基金との関係について4点おたずねします。

これまで区は災害対策基金を積み立てきました。この基金の目的と、今回、廃止とされる理由、1964年から積み立ててきた基金の残高はいかほどか、現金、債券、預金など、どのような形で、また、どういう割合で存在しているのかおたずねします。

 

減税自治体構想では、大規模災害の時には積立てた基金を取り崩して復興のために使う、としています。それでは、災害対策基金が廃止になったあと、小規模災害が起きた場合には、どこからの財源を充てるのかお示しください。

 

減税自治体構想では、積立金を運用していくとしています。しかし、万一の大規模災害時には、まず現金が必要となるのではないでしょうか。現金化ができる運用方法を考える必要があると思いますが、どのような運用を考えておられるのでしょうか、お尋ねいたします。

 

以上、災害対策について伺ってきました。昨年5月、セシオン杉並で行われた防災講演会で、神戸市長田区野田北部まちづくり協議会事務局長の河合節ニさんから、「みなさん、まずは自助・共助です。公務員も被災者になるから公助を求めてもだめ。その時、長と名がつく人、つまり組織を引っ張る人は生き延びる責任があります」というメッセージが贈られました。印象に残ったのは、長が逃げ出した地区、亡くなった地区は、今でも立ち直れない部分を抱えているとおっしゃったことです。まずは生き延びるための備えをする。生きていたら隣近所と助け合えばなんとかなる、という講演内容で、私も結局はここに尽きると考えます。このことを日常生活への教訓と捉えるとともに、自治体としての災害対策の充実を願って、私の質問を終わります。

 

 

生活者ネットすぎなみ74号

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生活者ネットすぎなみ73号

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生活者ネットすぎなみ72号   

                   2009年6月15日発行

外環は税金のムダづかい!

地域のことは地域で決めよう

1966年に都市計画決定されて以来凍結状態にあった、外環の未着工区間16㎞の建設が、先の4月27日、突然開かれた国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)において整備計画路線に格上げされました。地域住民の多くが反対するなか、ついに着工に向けて大きく動き出したことになります。

総事業費は1兆2,820億円、1m当たり8,000万円にも上ります。これほど高い道路が本当に必要なのでしょうか。住民の要望は無視され続けています。無駄な公共事業にきっぱりと反対の意思を示していきましょう。

■見せかけだけの「市民参加」

「外環の必要性の有無から議論する」市民参加のしくみとして設置された「パブリック・インボルブメント(PI)」協議会やPI会議、さらにその後地域ごとに開かれた地域PIも、市民参加とは名ばかりの建設ありきで進められ、住民たちの不信を増大させました。

自然環境の破壊や生活環境の分断を招くのでは、という市民側からの疑問に対し、国と都はほとんど何も答えることなく、建設推進の手続きを進めてきたことになります。

■東京都の補正予算に異議あり

2001年、外環の計画が「大深度地下構造での建設」として凍結解除されたのは、石原都知事の強い意向によるものです。その後も、知事が打ち出したオリンピック招致方針と連動して外環建設推進に意欲を見せ、国の動きを促したものと思われます。

65日に閉会した都議会定例会では、外環建設にかかわる諸費用26億円が補正予算に計上されましたが、生活者ネットワーク都議団は「孫子の代まで大きなつけを残すことになる」としてこの提案に反対しました。

 

これまで生活者ネットワークは、外環問題に対し沿線6区市(練馬、杉並、武蔵野、調布、狛江、世田谷)で活動を連携し、地下水や大気汚染など外環が環境に及ぼす影響について学習会を開いてきました。また国交省と市民との協議の場「円卓会議」を開催し、市民団体主催の院内集会の実現に動くなど、市民の活動をサポートしてきました。

これからも、生活者ネットワークは生活者の視点で外環問題に対峙し、税金の無駄づかいをやめさせるよう取り組んでいきます。

 

 

生活者ネットすぎなみ71号

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生活者ネットすぎなみ70号

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生活者ネットすぎなみ69号

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2009年第4回定例会  一般質問と答弁

                                11.24 小松久子

[高齢者の住まいについて]

【Q】 ● 国の住宅政策が「量から質へ」「市場重視・ストック重視」へと転換し、区のマスタープランも改定された。この政策転換の意図することは、「住宅は、量的には充足されたので、今後は、民間により、質のよい住宅が供給され、長い期間使用する」との考えだと思うがいかがか。よいとすれば、この政策転換に伴って区に求められる新たな役割はどのようなことか。

【A】  国の住宅政策の転換について、その意図することは、住宅のストックが世帯数を上回り、量的には充足しているため、今後は質の高い住宅が、民間住宅市場において供給されるべきであるとの考えである。

     また、区に求められる役割は、住宅市場において自力で住宅を確保できない方々にとっての住宅セーフティネット機能を高めていくことと考えている。

 

【Q】 ● 区内のひとり暮らし高齢者数と高齢者のみ世帯の人数の推移と今後の予測をうかがう。

    ● 一般的にひとり暮らし高齢者は、男性よりも女性のほうが多く、しかも低所得といえる。当区においてはいかがか。また、今後、女性の高齢者の貧困問題はさらに深刻度を増し、住宅政策に大きく影響していくと予測されるが、区の認識はいかがか。

【A】  ひとり暮らし高齢者は、平成21年18,182人、高齢者のみの世帯の人数は、21年28,558人と推計していますが、今後とも、高齢化や核家族化の進展に伴い、更に増加していくものと考えている。

     ひとり暮らしの高齢者の女性の割合は、男性に対し、女性が約2倍となっている。所得については、一年間の収入が150万円に満たない人は、男性の21.1%に対し、女性は36.3%という高い割合になっている。

     また、このような女性の高齢者の経済的問題が及ぼす住宅政策への影響については、先のひとり暮らし高齢者に対する調査では、女性は比較的早くから各種の制度や福祉サービスを利用しており、むしろ男性の方が閉じこもりがちで多様かつ深刻な課題を抱えながら暮らしている方もいらっしゃるという傾向が認められた。もちろん、経済的な問題も安定した生活を送るためには極めて重要なので、低所得の女性高齢者が抱える課題については、住宅に関する問題も含め、早期に把握して、適切なサービスに結び付けられるよう努めたい。

 

【Q】 ● 既存の民間の共同住宅を借り上げ、高齢者向けに改良して、貸与することなども含めて、高齢者住宅の増設を図るべきと考えるがいかがか。

【A】  区では、今年度から区営住宅の募集に際して、高齢者が入居しやすくするため専用枠を設けている。

     また、今後、都営住宅の移管受け入れに際しては、都営シルバーピアを優先的に受け入れることとしており、既存ストックを有効に活用して対応していきたい。

 

【Q】 ● 高齢者の持ち家率は高いといっても民間の共同住宅に住む高齢者は多い。バリアフリー化などのハード面、ケアする支援者あるいは見守る人の存在などソフト面の双方に渡り課題を抱えている場合が多いが、バリアフリー化についてどのように促進していくのか。

【A】  区では、住宅のバリアフリー化を希望する方々などに、週2回、すまいの住宅相談を開催し、専門家による助言など、住宅改修に関する支援を行っている。また、実際にバリアフリー工事を行う際の改修資金を調達しやすくするために、住宅改修資金の融資あっせんを行うなど、民間住宅のバリアフリー化の促進を図っている。

 

【Q】 ● 住宅課で実施している民間アパート居住者を対象とした見守りサービスはとのような仕組みか。

【A】  この制度は、高齢者等入居支援事業の一環として実施しており、申し込みをいただいた方に、週1回の電話による安否確認を行い、また必要に応じて通院介助等を行うもの。現在、NPO法人に委託して実施している。

 

【Q】 ● 東京都は高齢者のすまい方検討会で、管理組合や自治会代表者などを「高齢者住宅支援員」として普及させていきたいとしているが、区としてどのように取り組んでいくのか 。

【A】  東京都では、集合住宅の管理人や管理組合の代表者等を対象に、年2回の研修会を実施している。区では、この研修会について、地域包括支援センターを通じて、区民の方々に周知を図っているが、区としては、これとは別に、区独自に進めている見守り協力員の充実や普及に重点的に取り組むことにより、これらの課題に対応していきたい。

 

【Q】 ● アパートのあっせんや家賃滞納者には経済的助成や支援を行う仕組みが整備されているが、あまり活用されていないようだが、なぜか。

【A】  アパートのあっせん事業、家賃債務保証事業とも、平成20年4月から、対象者をこれまでの高齢者のみから、ひとり親家庭、障害者世帯など、対象者を拡充して実施している。 アパートのあっせん事業における成立件数は、平成18年度には36件だったが、平成20年度には48件と伸びている。 また、家賃債務保証事業については、平成18年度には6件だったが、平成20年度には22件と増加している。今後とも一層の周知を図るとともに、住宅に困窮する区民にとって、より利用しやすい制度となるように努める。

 

【Q】 ● 「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行され、高齢者向けの住宅が多種多様になった。選択の幅は広がったが、違いが分かりにくい。利用者にとって、わかりやすい内容の情報提供が必要であると考える。都で作成するパンフレットなどを地域包括支援センターをはじめ、ゆうゆう館など、多くの場での情報提供が望まれる。また、「高齢者のためのすまいフェア」や個別相談会を開催するなど啓発に努めるべきと考えるがいかがか。 

【A】  イベント等の開催は、現時点では考えていないが、ご指摘のとおり、高齢者を対象とした様々な住宅の制度があるので、区として、その制度概要や利用案内などを分かりやすくお知らせしたいと考える。

     なお、パンフレット等の利用案内などは、今後、高齢者が利用する施設に、可能な範囲で備えおくように努める。

 

【Q】 ● 高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅などを区内に誘致すべきではないか。

【A】  区の住宅施策の基本は、民間の住宅市場において自力で住宅を確保できない方々に対して、住宅セーフティネット機能を果たしていくことであると考えている。そこで、高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅については、供給者である民間事業者に対して、制度の周知に努めていく。

 

【Q】 ● 小規模多機能型施設整備を今後進めていくにあたり、高専賃との融合型施設とすることなどを検討すべきと考

えるが、いかがか。

【A】  小規模多機能型居宅介護は、単独で運営することはなかなか困難な状況であるため、区内では、これまでも認知症高齢者グループホームやショートステイ、デイサービスなど他の施設と併設する都市型多機能拠点として整備を進めてきている。ご指摘の高専賃についても、今後、都市型多機能拠点の選択肢の一つとなりうるものと考えている。

 

【Q】 ● 住宅マスタープランでは、東京都にシルバーピアの設置を呼びかけて増設を図るとしており、ぜひ進めていただきたいが見通しはいかがか。 

【A】  区ではかねてから東京都に対し、都営住宅の建替えに際しては、シルバーピアを併設するように求めてきた。

    最近の杉並区内での設置状況は、平成20年8月にシルバーピア荻窪、平成21年6月にシルバーピア高井戸西14号棟が開設されている。今後とも、区内の都営住宅の建替えに際しては、都区間で協議を行うこととなっているので、シルバーピアの併設を強く要請していく。

 

【Q】 ● 社会福祉協議会が受付窓口になっている、リバースモーゲージの制度である「長期生活支援資金貸付制度」は、この10月に制度の見直しがされたときくが、その内容を伺う。あわせて、当区におけるこれまでの活用状況と、活用の少なかった原因を伺う。

         この制度はもっと普及してしかるべきと考えるが、当事者や地域包括支援センターや民生委員など高齢者にかかわる人々への知名度が低く理解も不足している。もっと周知に力を入れるべきではないか。

【A】  この制度の本年10月の変更点は、「不動産担保型生活資金」に名称を変更したことと借受人の死亡などによる契約終了時の償還の据え置き期間を3ヶ月としたこと。また、これまでの杉並区での貸付実績は、平成15年に開始して以来、現在まで契約終了分も含め11件となっている。

     貸付に至らない原因としては、一戸建ての住宅が対象であることや推定相続人の同意、連帯保証人の確保といった貸付の要件を満たせない方が多いことがあげられる。この制度の周知については、パンフレット等を地域包括支援センターに送付し窓口で配布していただいているほか、民生児童委員協議会でも制度の案内などを行っている。今後とも、様々な機会をとらえて、制度の周知につとめていきたい。

 

【Q】 ● 高齢者や障害者、ひとり親世帯など社会的弱者に対象を特化して、すまいのあり方を検討し、区としての基本政策を定めるべきと考える。「スペシャル住宅マスタープラン」とでもいうべき政策を当事者や介護ボランティア、NPO関係者を交え、議論して作成したらどうかと考えるが見解はいかがか。

         高齢者が、在宅でも、介護度が進むなどの、ライフステージが変わったときに住み替えができ、心身ともに健康に暮らせるための仕組みをNPOを含めた民間との連携で整備することが求められる。区の見解を伺う。

【A】  これまで杉並区住宅マスタープランは、住宅をとりまく環境の変化に応じて、3次にわたり改定を重ねてきた。その度に、高齢者や障害者などに配慮した施策を盛り込み実施してきた。今後、杉並区における高齢者のすまいのあり方については、「高齢者の居住の安定確保の関する法律」の改正も踏まえ、また、ライフステージに沿ったすまいの仕組みづくりも視野に入れて、高齢者福祉部門とともに検討していく。

 

 

[低炭素社会に向けた区の政策について]

 

【Q】 ● 現在の環境基本計画の総括について、審議会ではどのような議論がなされ、区としてどのように捉えているか。特    に「4つの挑戦」のうちの一つ、CO2削減目標について、区の取り組み総括を伺う。

         地域省エネ行動計画の総括について、「地球を救え、すぎなみ省エネ作戦」の6つの作戦それぞれについて、達成できたこと、できなかったことなどを評価し、改定に活かすことが重要であると考えるがいかがか。

         かつて、議会答弁では、環境基本計画改定では、できる限り数値目標を具体的に提示していきたいとのことだった。CO2削減目標値を定めることは不可欠と思う。見直しにおける数値目標を伺う。

【A】  環境基本計画の改定について、環境清掃審議会では、杉並区の将来像や施策のあり方、達成目標の到達度など、さまざまな観点から審議いただいている。区としても、審議会のご意見とともに、国の動向や区の将来を見据え、時代の変化に対応した施策を展開していくため、必要な見直しを進めることが重要と考える。

     また、CO2の削減目標については、これまで、区立学校のエコスクール化や家庭における省エネ対策の普及、緑化対策など、さまざまな施策を講じているが、削減目標の達成は、現実的には厳しいものと考える。

     地域省エネ行動計画についても、環境基本計画と同様に、具体的な施策の取組み状況や達成度を踏まえ、適切に対処している。改定におけるCO2の削減目標数値については、環境政策を進める上の一つの指標として、そのあり方を検討しているところである。

 

【Q】 ● 太陽光発電、太陽熱利用、高効率給湯器の設置助成事業の実績の推移と区の評価をうかがう。

【A】  太陽光発電機器については、平成15年度から助成を開始しているが、直近3ヵ年の実績では平成18年度が67件、19年度が74件、20年度が72件となっており、今年度の助成予定件数の138件を加え、7年間の合計で、

470件となっている。

太陽熱利用機器及び高効率給湯器の助成は、今年度から実施しているが、太陽熱利用機器が2件、高効率給湯器が137件。区では、区民の環境に対する意識や関心の高さが、こうした助成実績に繋がっていると考えている。

 

【Q】 ● 省エネ住宅の普及にもっと力を入れるべきで、住宅の省エネ診断を建築、建設、電気、ガスなどの事業者や環境活動NPOの協力で実施されてはいかがか。その際、事業者に対する啓発の意味も含め、耐震、バリアフリー、緑化、雨水利用など省エネ以外の住宅アドバイスと連携して行ってはいかがか。

【A】  区では、現在、環境団体であるNPOの協力により、家庭における省エネ相談を定期的に実施しており、住宅の省エネ診断や身近な緑化対策、雨水利用など、幅広く区民の相談に応じている。今後とも、相談実績や区民からの要望などを踏まえ、当該環境団体とも協議しながら、相談業務の充実に努めていきたい。

 

【Q】 ● 合成洗剤に比べて環境負荷の点から優れている石けんを広く区民に周知するため、環境基本計画などに石けんの利用を盛り込むべきと考えるが、見解を伺う。

【A】  石けんは、ご指摘のとおり合成洗剤に比較して水中における界面活性剤成分の分解性が高く、環境にも良いとされている。また近年では、合成洗剤についても研究が進み、同成分の分解性が向上していると認識している。     今後とも区民の健康と環境を守るため、石けんに限らず環境負荷の少ない洗剤の使用を推奨していきたい。

 

【Q】 ● 学校給食調理場で使用する食器洗浄剤の選択はどのような考えで行っているのか。

       石けんを使用するモデル実施を検討すべきではないか。

【A】  石けんについては、低温の水では石けんカスが生じやすく、その除去等が必要になり、水質汚濁を防止し十分な洗浄効果をあげるために大量のお湯を使うこと等の問題がある。これに比べて合成洗剤は、水に溶けやすく、石けんよりも少量で十分な洗浄効果をあげられる。このため当区では、石けんと合成洗剤について、環境への影響や作業面に対する配慮、経済性などを総合的に比較・検討して、現在、法令で規制されている有害物質を含まない天然植物から作られた合成洗剤を使用している。このため現時点でモデル実施については考えていない。

 

 

 

 

2009年第3回定例会一般質問と答弁

                                                            09 9.11小松久子

[幼保一元化の取り組みについて]

【Q】 ● 平成25年度までは保育需要の増加が見込まれているが、その後の傾向をどう予測しているのか。

         区内に開設されている認定こども園の取り組みに対する区の評価はいかがか。

         発達障がい児への支援に関するこれまでの成果をふまえ、他の保育施設においても発達障がい児への配慮がさらに強化されるべきと思うがいかがか。

【A】  平成25年度以降、就学前人口は減少に転じると推測しています。保育需要については、社会経済状況や国の少子化対策などにより大きく左右される可能性はありますが、基本的には、引き続き増加傾向が続くのではないかと考えます。

     次に、認定子ども園の評価ですが、それぞれ、私学の独自性を活かした、特色のある保育を行っていると認識しています。

     次に、発達障がい児の配慮ですが、これまでも幼稚園、保育園などの保育施設で、介助員などの配置を始め、子どもの発達状況に応じた適切な対応を行ってきたところです。今後も引き続き、そのように対応していきたいと思います。

 

【Q】 ● 当区における幼児を取り巻く状況やその問題点、また幼児を持つ家庭の幼児教育ニーズ、保育ニーズをどうとらえているのか。

【A】  区内の幼稚園が区立・私立とも長く定員割れの状況が続いている一方、昨年来の経済危機の影響により保育需要が急増しており、とりわけ3歳児からの保育の受け皿づくりが急務となっています。また、保育時間の延長を望む幼稚園児の保護者や、十分な幼児教育の実施を求める保護者が多くなるなど、幼児の育成環境に対する保護者のニーズは大きく変化していると考えます。

 

【Q】 ● 幼保一元化について、当区ではどのように議論がされてきたのか。今回の「子供園」新設方針が出された経緯について伺う。

         認定こども園制度がさほど進んでいない原因は何か。

         今回の「子供園」は、なぜ認定こども園の幼稚園型に近いものとしたのか。

【A】  この度の区立幼稚園の改革方針(案)の経緯ですが、昨年実施した杉並改革総点検結果に基づき、本年1月に検討会を設置し、今般の保育ニーズの急増等の環境の変化を踏まえ、改革方針案を策定したものです。

     次に、現在、認定こども園の制度は、開設に伴う申請手続きが煩雑であることや国の財政支援が限定的であることなどが問題と指摘されており、設置数が伸び悩んでいると考えます。

     また、今回の改革は、国の認定こども園制度の枠組みにとらわれず、区独自の育成プログラムにより幼児教育や保育を融合させ一体的に実施するなど、基礎自治体としての独自性を発揮した新たな幼保一体化施設を創設するものです。

 

【Q】 ● 定員充足率の高い区立幼稚園では、子供園への転換に伴い、幼稚園への入園を希望しているのに入れない家庭が生じるのではないか。

         小学校で30人程度学級を進めているのに、1クラス32名というのは多すぎる。施設の物理的限界で2クラスが無理なら、担任を増やすなどの対応が必要ではないか。

         入園希望が定員を超えた場合、だれが、どのような基準で選考するのか。

         公立の施設であるなら、障害児の入園について今後も継続していくのか。

【A】  今回の改革は、区の幼児施設を取り巻く環境の変化に適切に対応しようとするものです。区では、今回の改革方針案に対する区民等の意見を受け、定員枠の拡大や必要な経過措置を講じる必要があると考えますが、あわせて改革の趣旨をご理解いただけるように引き続き努めます。

     実施体制については、これまでの幼稚園教諭に加え、保育士も配置し、充実した運営が図られるよう工夫していきます。

     また、入園希望が定員を超えた場合、コアタイムの枠についてはこれまでの幼稚園と同様に抽選を考えていますが、長時間保育の枠については、保育を必要とする状況などを考慮して区で選考をします。

     なお、障害のあるお子さんは、これまでどおり受け入れる考えです。

 

【Q】 ● 地域の子育て支援事業を展開するとされるが、どのような事業を想定しているか。

         当面、給食サービスがないということだが、今後の給食実施の見通しはいかがか。

         子供園は新しい施策であり、区が責任をもって就学前教育に取り組むのであるから、区の直営とすべきだがいかがか。

【A】  子供園では、保護者対象の子育て相談のほか、保護者同士の交流事業、ボランティアの協力も得て行う行事など、積極的な子育て支援に取り組んでいきます。

     また、給食の実施については、施設改修などを伴うことから将来的な課題であると考えますが、子供園への転換後の運営状況などをみて検討していきます。

     なお、子供園は区が直接運営していきます。

 

【Q】 ● 就学前の教育を充実させる必要性が高まっているとのことだが、今の幼児教育の何が問題なのか。

         本区における「小1プロブレム」の実態をうかがう。

         また、幼稚園から小学校への接続について教員同士の交流のみならず、小学校側の段階的な学習の場の整備やカリキュラムの見直しなどが必要と考えるが、いかがか。

【A】  はじめに、幼児教育の課題ですが、一般的に幼児の基本的な生活習慣や自制心、コミュニケーション能力などの定着の遅れが指摘されています。

     次に、「小1プロブレム」に関しては、30人程度学級の導入もあり、今年度の小学校1年生については、学級組織や授業が成り立たないという報告はありません。

     最後に、幼稚園との円滑な接続にかかわる小学校側の取組みについては、入学前の園児に対する学校行事の交流や体験入学等の機会を設けるとともに、入学後は、集団生活への適応に重きを置きながら、児童が段階的に学校生活に適応できる工夫を行っています。

 

 [教科書採択について]

【Q】 ● 今回の採択にあたり、教育委員会に寄せられた区民からの要望書等について、内容と件数を示せ。また、歴史と公民における「つくる会」の教科書を採択しないでほしいという内容が突出して多かったのではないか。

    ● そうした区民要望等は重く受け止められるべきであるが、8月12日の教育委員会では、どのような議論があったのか。

【A】  採択当日までに寄せられた要望書等については、いわゆる「つくる会」教科書の採択に反対するものが73件、同教科書の採択を求めるものが32件、日本人として誇りの持てる教科書の採択を願うとするものが30件、その他教育委員に関するもの等が5件ありました。これらの要望書については、各委員にすべて写しを配布しています。

     各委員は、これらの内容を把握した上で、採択審議に臨んでいます。

 

【Q】 ● 4年前の採択の後、区民や教員に対して歴史教科書への意見を求めるべきであったが、今後の教育委員会の対応を伺う。

         教科書調査委員会や種目別調査部会の調査・研究や、展示会での区民アンケートの取り扱いなど、採択に至るまでのすべての過程において公明正大な手続きが行われたのか。

         歴史教科書採択の白紙撤回を求めるが、一旦採択された後、どのような場合に採択のやり直しをすることになるのか。 

【A】  採択の際には学校調査等により、調査・研究結果を求めており、今後も手続きに則り適切に対応していきます。

     次に、採択に至るまでの手続きは、規則、要綱、手続きに則り、適正かつ公正に行われています。

     また、採択のやり直しは、教科用図書発行者が文部科学大臣の指定を取り消された場合等に行うこととされています。

 

 [地域図書館の外部委託・民営化について]

【Q】 ● 当区の地域図書館の外部委託・民営化はどのように進められてきたか、また、これをどのように評価するか。

    ● 今後の地域図書館の運営について方針が発表されたが、この決定に至る経緯はどのようなものだったのか、伺う。

【A】  外部委託・民営化の進め方は、図書館運営の効率化、図書館サービスの向上を図ることを目的に、行財政改革実施プランのもとで、図書館協議会にも諮り、「民との協働で、個性ある図書館づくり」の基本方針の策定を行い、取組みを進めてきました。

     次に、評価ですが、サービス水準を低下させることなく、コストの大幅削減を実現し、創意工夫に基づいた事業ができていると判断します。

     決定の経緯については、地域図書館が直営、指定管理者、業務委託の3つの運営形態となっていることから、昨年度の杉並改革総点検結果に基づき、図書館経営評価の結果を踏まえ改めて検証し、定めたものです。

 

【Q】 ● 今回の方針の凍結と再検討を求める区民の運動が展開されているが、区は把握しているか。

         図書館協議会に対して、地域図書館の運営方針について諮られたものと思うが、どのような議論がされたのか。

         事業者は人件費を圧縮し、結果として人材確保や育成がおろかになる。一方、図書館事業を手放した行政は、今後、経験や知識を蓄積していくことができなくなる。国会でも昨年「公共図書館への指定管理者制度の導入はなじまない」と文部科学大臣が発言し、「指定管理者制度の導入による弊害」について配慮すべきという認識が示されている。これらについて区に見解を伺う。

         2年以内に全地域館に指定管理を進めることは稚拙であり、現在の運営状況を今しばらく見守ってからでも遅くないと考えるが、区の見解はいかがか。

【A】  区民の運動は承知しています。

    次に、図書館協議会における議論は、7月に開催した同協議会に方針について報告しました。決定のあり方、今後の対応などの議論がおこなわれたところです。

    次に、国会での付帯決議等ですが、指定管理者制度の導入に当たっては、慎重を期し、適切な管理体制を築くなど、制度の適切な推進を図るようにとの趣旨と受け止めています。文部科学大臣の発言についても、同様の趣旨と受け止めています。

    全地域図書館の指定管理化は、平成17年度から取り組みを進め、既に地域図書館の半数が業務委託及び指定管理者の運営となり、運営の効率化とサービスの向上が図られているという経営評価があるので、今回の方針に基づき、着実に進めていきます。

 

【Q】 ● 図書館ホームページに載っている「基本方針」は、いつ、どこで決定されたものか伺う。

         「基本方針」からは、高い志のメッセージや社会教育を担う公的施設であるという基本コンセプトが伝わってこない。理念を掲げることがあっても良いのではないか、伺う。

         今後、なんらかの理念的指針を策定されてはいかがか。 

【A】  この方針は、平成17年度に中央図書館として決定したものです。

    基本方針では、社会教育法や図書館法が掲げる理念を踏まえ、「民との協働で個性ある図書館づくり」と「生涯現役の地域社会を支える図書館づくり」の2つを基本的なコンセプトとして定めており、新たな理念的指針を策定する考えはありません。 

 

 

特別委員会 自治基本条例・意見提出手続き条例 意見

                                                                         09.12.7
小松 久子

 

区議会生活者ネットワークとして2議案に賛成の立場から、そして今後もさらに杉並区の「自治」が発展していくことを願って、以下、要望、感想をふくめ意見を述べます。

 

2000年の地方分権一括法制定いらい、「地方自治体の『自治』のありようを法的に定めることがわが区でも必要」と訴えていた生活者ネットワークにとって、2002年の杉並区自治基本条例の制定はまさに望んでいたことでした。当時まだ全国でも数例のみ、23区では最初の事例ということでしたが、その後の7年間に自治基本条例制定の動きは全国大小の自治体に広がり、現在に至っています。

 

この流れをつくったといわれる北海道ニセコ町の「ニセコ町まちづくり基本条例」のように、名称に「自治」の文言こそないものの明確に「自治」の理念をうたっているものを含めると、その数は現在180以上になります。いま「自治」という言葉も自治についての条例も珍しくなくなった状況にあって、杉並区が制定後初めての見直しということで、改めてこの条例についての議論を深める機会を持てたことは歓迎すべきものと受けとめております。

 

会派として、この条例改正に前向きにかかわっていこうという考えのもと、私は昨年の第1回定例会の一般質問でとりあげ、その後議会内に設置された見直し検討会にも委員として参加させていただきました。これらの折には、小平市での行政主導型でない、公募市民主体による条例づくりの例などをあげて、検討のプロセスの段階から市民参加の場を設置していただきたいこと、また条例のどの部分を改正するのかについても区民の意見を聞いていただきたいこと、などを主張してまいりました。

 

しかしこの間、市民参加といえるのは唯一、921日から1020日まで行われたパブリックコメントのみで、区が提示された4項目以外の部分は見直し対象から外されたかっこうでした。ほかならぬ「自治」を論じる条例について区民が制定にかかわるせっかくのチャンスだったのに、と思うと率直なところ残念です。

 

パブコメに応じて寄せられた意見が5件のみというのも、少ないことを嘆くより、区民に議論を促す仕掛けや区民意見をできるだけ引き出そうとする区の努力が十分とはいえなかったのでは、と思わずにいられません。

 

提案されている「意見提出手続き条例」には、第6条に「提出意見を考慮しなければならない」、また7条に「その結果を公表しなければならない」とあります。そのような内容の条例なのですから、今回は他の条例以上に、どのような意見が出されたのかは議案審査のうえで重要な参考資料となります。本日会議の初めに、出された区民意見の資料が席上配布されましたが、前もって情報提供していただきたかったと思います。

 

意見を寄せてこられた区民にとっては、パブコメに付された時点で条文は公表されていませんでしたから、限られた範囲においてのみ、意見を求められたことになります。とくに「意見提出手続き条例」は新設の条例ですから、この内容に関して議会は区民意見を参考にすることもなくこれから可否を決定することになり、この条例の性格からしてはたして適当か、疑問の残るところです。

 

先ほどの質疑で、自治基本条例に新たに加えることとされた災害対策と危機管理の項目について触れました。人権、環境権などの文言が自治条例の項目として検討されてもよかったのでは、とうかがいました。区民に問いを投げかければもっとさまざまな価値観や理念が提案され、議論を深めることができたろうと思います。

 

たとえば「平和」「自由」などの文言が前文に加えられてもよいのではないか。先ほどの質疑で「区民等」の定義として、「区内でボランティアや市民活動を担う人」もひろく入る、という考えが示されたことを歓迎いたしますが、であればそのように明記されてもよかったのでは、と思いますし、また国連の「子どもの権利条約」にもとづき「子どもの参画」をこの際明記すべきではないのか。さらに「地域自治」ということについて、この機会に区の考えを整理し条例に盛り込むべきだったのでは、など、いま思いつくだけでも挙げることができます。次回の改正に向けての課題としていただきたいと思います。

 

「協働」の定義に関連して先ほどもうかがいましたが、比較的新しい概念であるだけに、これまでにも何度もこの言葉について区の見解をただしてまいりました。そのときどきのご答弁のたびに、区は「協働」という言葉を場面によって別の意味で使っておられる、という感を強くしています。

 

昨年第1定の一般質問での「指定管理や民託も協働になりうる」とのご答弁には驚きましたが、であれば区の最高位に位置づく「自治基本条例」第2条に定めている定義、「地域社会の課題の解決を図るため、それぞれの自覚と責任の下に、その立場や特性を尊重し、協力して取り組むこと」という趣旨に照らし合わせて、指定管理や民間委託の実態を調査・検証する必要がありますし、それとともに「協働」の概念と実態を再精査し、その運用についての再構築が必要と考えます。

 

市民参加条例の制定については考えておられないようですが、パブコメに付される政策等は限定的であり、指定された範囲での意見提出だけでは区政への市民参画は不十分と考えます。

 

附属機関等への市民枠の設置は広がってはいますが、選任のしかたが不透明であることは改善されるべきです。以前、公募枠を超える応募者があった場合にはくじ引きを、と提案いたしました。かつてそのような例があったと聞いていますが、もっとも公平でわかりやすい選出方法だと思います。すべてにとは申しません。ご検討ください。

 

条例制定後の普及啓発について、ツールに工夫をと提案いたしました。他方、条例の使われ方、すなわち自治が根付いていっているか、広がり浸透しているかについて、検証することが今後は必要です。公募委員の数や提出意見の数といった量的な側面だけでなく、質を問うことが求められています。区にはぜひ研究を深めていただきたいと思いますし、議会サイドとしてもその力を磨いていかなければと思います。

 

議会に関する事項を定めた第6章については、検討委員会で議論を積み重ね合意した結果として条文が改正されていますが、ちょうど自治基本条例の中から意見提出手続きに関する部分を取り出して条例化がされるように、議会基本条例の制定が今後の課題であると考えます。議会改革検討調査部会における前向きな取り組みがなされるよう期待するところです。

 

以上、さまざま述べてまいりましたが、これら二つの条例は額に納めて飾っておくためのものではありません。「新しい公共」を実践するにあたってのテキストであり、使い慣れ、使いこなしてゆくなかで、民主主義における「自治」を育てていくための道具となるべき条例なのだと考えています。この改正を機に、杉並区における自治が深く根を張っていくよう、生活者ネットワークも力を尽くしていく決意であることを申し上げ、会派の意見といたします。