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第3回定例会一般質問     2010.9/14 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークとして、区長の所信について、持続可能な発展のための教育について、学校図書館について、以上3点について質問いたします。

 はじめに<区長の所信について>です。区長が就任されて2か月たち、このたびなされた所信表明では、区政の舵を切る手法として「脱山田」路線を打ち出しながら、区民や職員とともに対話と合意による新しい区政を築いていこうとする姿勢が読み取れました。ここでは選挙公約に沿って政策課題が提示されましたが、その中から大きく2点について質問いたします。

 

1点目は<これまでの区政の検証と評価について>です。

 区長は就任早々職員に対しレポート提出を求められたということです。先日の質疑では、いまも読み進めているというお話でしたが、たいへん興味深い内容であろうと想像しています。最初の質問として、レポートの内容はどのようなものだったのか、それに対し区長は率直にどのような感想をもたれたのか、うかがいます。

 また、レポートを基本構想づくりにも反映させられるのではないかと思いますが、職員レポートをどのように活用されるお考えか、併せてうかがいます。

 

次に行政評価についてです。

 当区ではこれまで、行政評価に関してさまざまな手法を積極的に取り入れ、毎年改善に努めてこられました。いってみれば、これが決定版と言えるような評価システムが出来上がっていない、ということでもあるかと思います。当区でのこれまでの行政評価への取り組みについて、区長はどのように評価されているのか。「既存の行政評価システムについては・・・必要な見直しを行い、実効性を高めてまいりたい」とのことです。とくにその実効性についてのお考えをうかがいます。

 新しい行政評価システムをつくろうとされているようですが、有識者・専門家による外部評価のほかに、市民自治をすすめる観点から、区民による評価が必要だと思います。区民による評価を新たな行政評価システムの中に取り入れるべきではないのでしょうか。区長の見解をうかがいます。

 

今回の区長選の結果は、目新しいことに飛びついて世間の耳目を集める区政より、堅実で身近な生活を大事にする区政を区民が求め、選択したことを意味するかと思います。所信で述べられた「区民参加」の重視や「ボトムアップ」の姿勢には共感が持てます。しかし所信の全体を通して「区長として何がやりたいのか」「どのような区政をつくっていきたいのか」がよく見えません。この4年間でご自身が区長としてもっともやりたいことは何なのでしょうか。

 うかがって、2点目、<「新しい公共」と協働について>質問いたします。

 

今議会では、基本構想のための審議会設置の条例案が提案されています。区長が基本構想づくりに直ちに着手されるお考えとうかがい、生活者ネットワークは、基本構想の策定にあたっては、あらゆる場面で思い切った区民参加を追及していただきたいと考え、具体策を提案いたしました。このたびの所信表明では「多様な区民参加」「新しい公共」の発想などがいわれ、私たちの提案がいくらかは採用されたものと評価するところです。

 

さて、「新しい公共」については、昨年夏の政権交代で首相に就任した鳩山前首相が内閣府に設置した「新しい公共円卓会議」が、菅内閣へのバトンタッチ直前に「宣言」をまとめています。それによれば、「新しい公共」とは「支えあいと活気のある社会」をつくるための当事者たちの「協働の場」である、とされています。区長のお考えになる「新しい公共」はどのようなものなのでしょうか。

 「新しい公共」については今回多くの会派より質問が出され、行政管理担当部長より「質・量ともに拡大する公共サービスのニーズに伴い・・・うんぬん」という答弁がされていますが、区長ご自身のお考えをお聞かせください。先の「円卓会議」宣言で述べられたことと同じと考えてよいか、うかがいます。

 

ところで「協働」という言葉が今も出てきましたが、「協働」は「新しい公共」を論じるとき必ずと言ってよいほどついてくる概念です。生活者ネットワークは、これまで繰り返し「協働」について区のお考えを質してきました。それは、「協働」は行政とNPOなど市民が対等な立場であるべきであるのに、区における「協働」の実態はそうでなく、行政優位になっていると感じてきたからです。

 私は区の「協働」のとらえ方には違和感があり、検証が必要と感じてきました。2005年から3年間、実施された協働事業提案制度は、市民と行政の協働の実践として実験的な意味あいも持つ事業でしたが、きちんとした検証や総括が行われないまま、終了されました。本来、当時の協働化ガイドラインの作成主体であり、かつ協働事業の選定主体でもあった協動推進委員会や、NPO等活動推進協議会、協働事業の実施団体、さらに区民等を含めての検証が必要であったと考えます。

 

一方、協働事業の発展的施策と区が説明した民間事業化提案制度は、始まって5年目となる現在、民間事業者にビジネスチャンスを提供する性格が顕著であり、私たちの考える市民と行政の協働とはまったく異なるものとなっています。

 新たな基本構想づくりのなかでこれまでの「協働」を検証することには賛同するものです。以上の問題をふまえて、協働の一方の当事者である市民が検証する必要があります。ご見解をうかがいます。

 これからは協働のあり方として、民間提案型の業務委託や市民参加型の公共事業なども考えられると思います。行政とNPOの関係を「事業の発注者と受注者」という上下関係だけでとらえていると、新しい発想が広がっていきません。「新しい公共」の領域が広がっていくにつれ、行政とNPOによる真の協働をすすめるため「委託」でも「補助」でもない、対等、自主・自立の関係を担保する規定整備が必要になっていくと考えます。

杉並区では、このような考え方に基づく「協働ガイドライン」を2004年度より定め、毎年更新してきましたが、残念なことに十分生かされないまま、それがあることすら忘れられたような状況が続いてきました。

 区長は協働の取り組みを推進する計画を策定すると述べられ、期待しています。ただそのとき、推進計画の策定と併せて、協働にふさわしい契約のあり方についての議論を深めていただきたいと思います。法的整備として「協働契約条例」の策定を検討する自治体の動きも研究いただきたいと考えます。

 区では今般、公契約条例についての庁内検討組織を立ち上げたとうかがい、1年前の決算委員会でその策定を求めた者として、前向きな検討がされるよう求めますが、「契約のあり方」を論じるなかでぜひ「協働の契約」も俎上に載せていただきたい、と考えるものです。

 要望として申し上げ、2番目の項目、<持続可能な発展のための教育について>質問いたします。 

 

ここで「持続可能な発展のための教育」というのは、英語の「Education for Sustainable Development」の日本語訳です。Developmentの訳語を「発展」としましたが、「開発」という言葉があてられることもあれば、「持続可能な社会に向けた教育」と訳されることも、「持続可能な社会の構築のための」とされることもあり、混在しています。文部科学省は「持続発展教育」という言葉を用いて啓発を行っているところですが、「education」「sustainable」「development」の頭文字をとってESDと呼ぶことが一般的であるため、ここでは以下、ESDとします。

 

ESDとは何かということについて、それがめざす「持続可能な社会」をイメージするところから論を起こしたいと思います。

 簡潔に言うなら、地球規模の環境破壊や、エネルギーや水などの資源保全が問題化されている現代において、将来世代のすべての人が健康で文化的な生活を営むための社会づくり、ということになろうかと思います。

 このためには、グローバルな視点からは貧困の克服、保健衛生の確保、質の高い教育などが必須ですし、性別、人種等による差別のない、公平な社会に向けて努力されなければなりません。さらに、これらの取組は地球上の資源が有限であること、環境容量には制約があること、自然の回復力などを意識しなければならず、戦争や紛争は、難民を生み、環境を破壊するため、平和への取組みが不可欠です。

 これらを踏まえ、「持続可能な発展」を進めていくために、学校教育、学校外教育を問わずあらゆる領域から、国際機関、各国政府、NGO、企業等あらゆる主体間で連携を図りながら、教育・啓発活動を推進する必要があり、それがESDということになります。この教育の範囲とは、環境、福祉、平和、開発、ジェンダー、子どもの権利教育、国際理解教育、貧困撲滅、識字、エイズ、紛争防止教育など多岐にわたるものです。

 

ESDについては、2002年の国連総会において日本が提唱し、2005年から2014年までの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」として各国が取り組むこと、その推進機関を国際連合教育科学機関、通称ユネスコとすることが議決されています。

 小泉政権当時にほかならぬ日本が提案して始まり、10年のうちすでに半分過ぎてしまったのに、日本であまりにも周知されていないことに驚き、杉並区にぜひ積極的に取り組んでいただきたいという思いから、今回質問することにいたしました。

 

先日、ESDに関するある学習会に、長年杉並区の環境教育に熱心に取り組んでこられた区立学校の先生が参加され、「持続可能な社会づくりのための教育、ESD」という言葉、理念を初めて聞いた、大変重要な概念だと思う、と話しておられたと聞きました。

 ESDで取り組む内容は目新しいことではありません。また現場に新たな負担を増やすものでもありません。区はすでに、総合的な学習の中で環境教育、人権教育、国際理解教育などに取り組んでこられました。現在直面している地球的な規模の諸課題を前に、これらのさまざまな機会に行われている学習を、「持続可能な社会づくり」という概念で整理しつなぐこと、それを学校や地域社会全体で共有し、具体的な行動につなげることの重要性を主張したいのです。

 

この項の最初の質問として、区教委がESDについてどのようにとらえておられるか、おうかがいします。

 ESDはあらゆる分野の教育課題を包括していますが、なかでも関わりの深い環境教育に関連して次におたずねします。

 当区の環境教育はエコスクールを推進する3つの取り組み、すなわちハード面での整備、環境教育、環境配慮行動の中で位置づけられている、と認識しています。今般、区長が打ち出したエアコンの全教室設置も、エコスクールと矛盾するととらえるのでなく、子どもが自ら管理・運用にかかわり環境教育を進めるツールとして、むしろこれを機会にエコスクールと関連付けることにこそ、教育としての意味があり、そうすることでESDの実践としたいと考えます。

 エコスクールの3つの取り組みを、持続可能な社会をめざすESDの観点から評価・検証することが必要と考えるものです。いかがでしょうか、見解をうかがいます。

 

また、ESDは地域づくりに貢献するものといえますから、これを学校の現場で展開するとき、これまで環境教育を協働により実践してきたNPOなどの市民団体とともにすすめていくことが望ましいのは当然といえます。区内で環境に限らずさまざまな活動、たとえばまちづくり、人権、福祉、消費者問題にかかわる活動、国際交流活動などを実践しているNPOや団体を区がつなぎ、ESDの活動として位置づけなおすことで、これまでの活動実績を生かしてより豊かな学習が展開できると考えます。

 NPOなどがこれまで実践し蓄積してきた活動の情報は、地域の資源として有効に活用されるべきです。そしてESDをすすめる上で、さらに広く、深く展開させるため、各学校がこれらの情報にアクセスできるようなツールを区は整備する必要があると考えます。いかがでしょうか。区のお考えをうかがいます。

 新しい学習指導要領でもESDの理念を各教科の学習に採り入れることとされています。小・中・高校の社会や理科の学習指導要領に「持続可能な社会の構築」という観点が盛り込まれていますが、これはまさしくESDの考え方そのものといえます。

 

ESDを、21世紀に生きる地球市民を育てる価値観としてもっと広めていく必要があります。当区でも、校長をはじめとする管理職や教師を対象として講習会や研修を行うことが必要ではないでしょうか。おうかがいします。

 さきに述べた「新しい公共円卓会議」宣言でも、「企業にも求められる『持続可能な社会づくり』」や社会貢献活動、社会的活動を担う人材育成や教育の充実がいわれています。これらは、ESDの理念のもとで実体化することができると考えます。教育行政だけでなく、あらゆる事業にESDの視点が求められています。これからつくっていく基本構想にも、この認識を外しては考えられません。以上申し上げ、最後の項目に移ります。

 

<学校図書館について>の質問です。

 2年前、2008年の第2回定例会で私が初めて学校図書館の充実を、と求めて質問して以降、そのとき指摘した課題について区教委が真摯にとらえ、改善に努めてこられたこと、とくに、その翌年の2009年、そして今年と、学校司書の配置が進められつつあることを率直に評価し、深く敬意を表するものであることを、まず申し上げます。

 そのうえで、この間の取組みを検証しながら、さらなる充実に向けてこの動きを推進させていただきたい、との思いから今回質問したいと思います。

学校司書の配置は、昨年11校、今年は22校と増えました。今年の配置はついこの前の7月から始まったばかりにもかかわらず、司書がいるようになった学校図書館では、目に見えて実績があがっているという具体的な話を何人もの方から聞いています。区の認識はいかがでしょうか。まずおたずねしておきます。

 期待していた通りの、あるいはそれ以上の効果が表れているという話を聞くにつけ、全校に早く司書配置を広げてもらえないものか、という保護者の要望はもっともだと思います。

区は先般「子ども読書活動推進計画」を改定され、H26年度までに学校司書の全校配置をめざすと明記されました。しかし問題は、これが実施計画に位置づいていないことです。また、全校配置まであと4年もかかるということです。この増設計画は、毎年11校ずつ増やしていくということなのでしょうか。もっと早く全校配置すべきではないのか。少なくとも全校配置に向けた計画を示すべきではないのでしょうか。見解をお聞かせください。

 ちなみに、他の自治体では、学校図書館の運営を民間事業者に委託するところもあり、学校司書が委託事業者の管理のもとに配置されるようなケースも見られます。しかし、杉並区では読書推進活動や図書教育を重要な教育課題と位置づけ、教育委員会の責任において自前の運営体制がとられています。であるからこそ、良質な学校図書館運営のもとに学校司書の能力が生かされるような環境が整備されているのだと思います。もし民間事業者のもとに司書が配置されると、評価は違ったものになったかと思います。

昨日、他の議員の質問への答弁で、区長が地域図書館の運営について、全館を指定管理とすることには「慎重に」と述べられ、この方針に異を唱えてきた者として、ぜひその方向で進めていただきたいと、区長にエールをおくりたい思いですが、学校図書館の運営についてはなおのこと、直営を貫いていただきたい、またそうしていただけるものと信じています。

 

さて、話をもとに戻しまして、司書の配置が今後広がっていくと、学校同士、また地域図書館との本の貸し借りがよりひんぱんに行われることになります。すなわち、活発な物流がスムーズに行われるような体制が求められるということです。済美教育センターの支援体制もより強化し確立させていく必要があります。また「子ども読書活動推進計画」で計画されている電子ネットワークの整備については、いまだにつながっていないと聞きますが現状はいかがでしょうか。整備スケジュールはどのようになっているのでしょうか。スケジュールを立てて進めていただきたいと考えますが、あわせて見解をうかがいます。

 同じく「子供読書活動推進計画」では、学校図書館の充実と教職員の指導体制の充実を「重点取組み」に挙げ、「学校図書館運営計画」を作成するとあります。作成状況および実施状況はいかがか、続けておうかがいします。

最後の質問は、司書の待遇の問題です。採用されたみなさんは、有能であることもさることながら、在任中にすこしでも成果を上げようという使命感をもち、各自が必死で努力されています。ところが現在の待遇は決して十分とはいえません。16時間勤務のパートタイマーで月収1718万円では、職業として続けていくことが難しい人もいるのが事実です。

 若く有能な有資格者が働き続けられるような処遇とすべきではないのでしょうか。昨年も今年も、緊急雇用対策として国や都から交付された財源を司書の人件費に充てるという、区が苦し紛れにやりくりした結果なんとか可能になったことは承知しています。

 

しかし考えてみれば、先ごろ、OECD加盟国のなかで2007年の国内総生産に占める教育費の割合が日本は最下位だったことが報道されましたが、子どもの教育にかける必要経費くらい、杉並区ともあろう誇り高き自治体が思い切って対処できないものでしょうか。

 今年は22人分のうち11人分が区の教育費に位置づけられましたが、学校司書の重要性を認めるのであれば、区の教育予算の編成時に当初から確保すべきですし、教育現場における重要な専門職にふさわしい待遇に改善すべきと考えます。いかがか、お考えをうかがいます。

いつも鍵のかかっていた図書室が、いつでも開いている居心地のよい部屋に変わり、ほしい情報があればそれを差しだしてくれる、本の楽しさおもしろさを教えてくれる、しかもテストをしたり宿題を出したり点数をつけたりしない、評価しない人の存在があり、記録的な暑さだったこの夏には校内で子どもが自由に入れる唯一の涼しくて快適な空間だったこともあって、見違えるように魅力的な場所になった、と私のもとにも喜びの声が届いています。

 この取り組みが「持続可能な」ものとして、さらに充実させ発展させていただけますよう最後に要望し、私の質問を終わります。

第3回定例会一般質問  2010.9/14 市橋綾子

私は、区議会・生活者ネットワークの一員として、健康づくりと介護予防について質問いたします。

 2000年に介護保険サービスが導入され、それまで家族の仕事であった介護の社会化が進められて今年で10年が経ちました。その間、2回の介護給付の見直しがあり、2006年から介護予防制度が導入されました。「これまで使っていたサービスが受けられなくなるのではないか」などの、サービス利用者の不安の声を受け、新制度の導入にあたり、私たちの仲間も参加する市民団体とNPO法人が介護予防制度を検証するため、「介護予防・自立支援に関する高齢者実態調査」を行いました。対象は都内在住の要支援、要介護1のサービス利用者162人、調査期間は20066月から200912月までの3年間継続して、身体状況の変化、介護度の変化、介護保険及び介護保険外で利用しているサービス、自立生活を送る上でほしいと思うサービス、困っていることなどの調査を、行うと同時に、自治体、地域包括支援センター、事業者へも調査を行いました。

 調査を行ったこの団体は、調査結果を受け、次の制度見直しに向けて厚生労働省に提言を行っていますが、事業者である自治体が取り組むべき課題も明らかになりました。そこで、区の健康づくり、および介護予防に、より一層の取り組みがされることを期待して、この調査結果をもとに以下、質問いたします。

 

まず初めに、介護予防施策について3つの項目に分けてうかがいます。最初に、特定高齢者施策について5点伺います。

人はいつまでも元気で年を重ねていきたいと思うものです。しかし、何らかの理由で、生活機能が低下してきた場合、「生活機能評価」の判定結果で、介護予防事業の利用が望ましいと判定された人が「特定高齢者」と呼ばれ、介護予防ケアプランが作成されます。

先に述べたNPOの調査では、特定高齢者と判定される数は年ごとに大幅に増えてはいるものの、介護予防ケアプランを作成した人は少なく、作成したとしても実際に介護予防サービスを利用する人はもっと少ない、という結果が出ています。杉並区でも同じ状況がみられるのではないでしょうか。2009年版の福祉保健事業概要によれば、特定高齢者への介護予防ケアプラン作成数766人となっていますが、それでは特定高齢者と判定された人は何人で、そして実際に介護予防サービスを利用した人は何人でしょうか、伺います。

NPOは介護予防サービスの利用が少ない理由を、「特定高齢者」という区分けにご本人の理解が得られていないためではないか、としていますが、区として、この状況をどうとらえていらっしゃるか、伺います。

 特定高齢者に判定された方が介護予防サービスを利用しない場合、要支援や要介護に向かわないようにすることが大事だと考えます。区としてフォローが必要だと考えますが、いかがかでしょうかお答えください。

 特定高齢者施策として区が行っている事業には、転倒予防教室、リフレッシュ!リハビリ教室、若返るぞ!筋力アップ教室などの運動機能教室と口腔機能向上教室、栄養改善教室があります。そのなかで、栄養改善教室は1回あたりの平均利用人数が3人と、他の事業と比べて極端に利用が少ない状況が事務事業概要から見てとれます。少ない理由を区としてどうとらえておられるのでしょうか、お答えください。

 栄養改善教室のような特定高齢者施策事業への利用者が少ない予防プログラムの場合、一般高齢者と一緒に介護予防のプログラムを提供するように変更している自治体が多くみられた、という調査結果がでています。当区においても見直しが必要だと思いますがいかがでしょうか、おたずねします。

 

次に、介護予防の施策として大変有効と考えられる「会食サービス」について伺います。

先日、北区の会食サービス「高齢者ふれあい食事会」を仲間と視察してきました。たった1時間程度の食事会ですが、高齢者が「食」を通じて地域社会と交流する機会をつくり、閉じこもりの予防や、日中独居や一人暮らしの方の孤独感の解消、介護予防にも効果があるものです。

 

65歳以上の要支援・要介護の認定を受けてない人が対象で、毎週1回もしくは隔週で月2回、小・中学校、健康増進センター、商店街事務所、区民センター、老人いこいの家、大学、レストランなど区内のおよそ30か所で行われていました。男性も女性もいつもよりちょっとおしゃれをしている様子が見られ、「皆さんとお話しながら食事をするのが楽しい」との感想が聞かれました。食後には口腔ケアや栄養のお話もあるこの食事会に、区も高齢者の健康づくりと生きがいづくりを支援する事業として財政的支援を行い、活動を維持させています。当区としても、会食サービスを介護予防の施策に位置付け、取り組んではいかがかでしょうか、伺います。

 現在、一部のゆうゆう館で、すでに会食事業を始めているところがあります。材料費分を「参加費」としていただいているとのことですが、調理人の人件費までは捻出できないし、だからといって高齢者に多くを負担させられないし、という状況です。区は、地域の介護予防の拠点の拡大としてゆうゆう館を当てるとしています。区として会食事業を応援することは、介護予防の主旨に十分叶っているものと考えます。今後、行政による財政的支援も検討しながら身近なゆうゆう館を会食サービスの会場としてはいかがでしょうか、伺います。

次に、介護保険を使う予防給付に関連して4点おうかがいします。

介護保険制度の改正後にあたる2007年度の当区の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算の執行率が55%と大変低い数字となったことに議会で質疑が相次いだことは記憶に新しいところです。区の説明では、新制度が始まったばかりで、サービスが周知されていないため、とされていました。

そこで、直近の介護保険特別会計の介護予防関連歳出予算・決算額の執行状況をお伺いします。

 また、事務事業概要ではケアプラン作成数35,715件となっていますが、そのうち実際にサービスを利用された方は何人いらっしゃるのでしょうか。お示しください。

 

調査報告によると、要支援と認定され介護予防給付サービスを利用している人の方が、利用していない人より同じ介護度を維持している期間が長い、つまり、サービスを利用することで介護度を進ませない効果がある、という結果が出ています。それにもかかわらず、実際は、ケアプランの作成をしない人が多いこと、ケアプランが作成されたとしてもサービスを利用する人が少ないことは問題であると考えます。なぜ、サービスの利用がこのように低いのでしょうか。その理由として、日常生活を円滑に行うためのニーズに合ったサービスが介護予防給付では得られない、使える時間数が足りない、と感じている利用者が多いため、と報告されています。この点に関して、区の認識はいかがでしょうか、おたずねします。

 介護保険制度の介護予防給付サービスでは日常生活を円滑に行うのは無理なのであれば、自治体の工夫が必要になってくるものと考えます。

渋谷区では、介護予防ホームヘルプの時間延長サービス、同居家族がいることを理由に介護保険の生活援助サービスが利用できない人対象の訪問介護生活援助サービス、訪問介護外出サービスなどを20081月から始めています。また、新宿区の社会福祉協議会が行っている電球替えなど30分程度の援助、ちょこっと困りごと援助サービスなども結構利用されており、このことから生活維持型のサービスメニューが必要とされていることが見て取れます。当区においても独自施策として、昨年から外出支援のサービスが使えるようになりました。まだまだ利用は少なく、より一層の周知が必要だと思いますが、利用した方からは「外出する機会が増えた」という声が届いています。生活援助について、区独自のサービスを検討していくべきと考えますが、いかがでしょうかお答えください。

 

さて、次に介護予防とかかわりの深い保健事業である「健康づくり」について3点伺います。

2006年の介護保険制度の見直しは、介護給付費用の抑制という理由から「介護予防」が取り入れられました。本来、「介護予防」とは、誕生から生涯にわたり健康づくりに取り組み、高齢になっても介護が必要にならないような健康管理に努めることに他なりません。その意味で、介護予防施策は、健康で暮らすための保健事業と連携を図ったうえで、年齢に応じた心身ともに健康な生活を維持していくことを支援する施策でなければなりません。生涯にわたる健康づくりの視点が薄く、介護給付費用の抑制としての「介護予防」の導入は大きな問題があると私は考えています。

 これまで区は、地域社会全体で健康なまちづくりを進めるために、区民・行政・関係団体が協働して多様な地域ネットワークの充実をめざす、としてこられました。これこそ介護予防につながるものと言えます。しかし、現在行われている「健康づくり」はメタボ対策にばかりに焦点が当てられているのではないでしょうか。健康づくりと介護予防をつなぎ、地域で活動するNPOや市民団体など、さまざまな社会資源を連携させていくためには5か所の保健センターが担う役割は大きいものと考えます。現在の保健センターの仕事として高齢者に対する施策の取り組みが弱いのではないかと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。

 

私は2年前の2008年、第1回定例会で、健康づくりについて、「保健センターとゆうゆう館事業との連携」を求める質問をしました。保健所長から「保健センターの専門職員がゆうゆう館の健康づくり事業に講師として参画するなどして一層の連携を図っていく」との答弁をいただきました。その後改善されたこともありますが、まだ課題を残しているのが実態です。2年前と同じ質問になりますが、地域の健康づくりは、ゆうゆう館などで活動するNPOや市民団体などの地域資源とも協力し、連携を図っていくことが重要と考えますがいかがでしょうか、おたずねします。

 区内に32館あるゆうゆう館は、生涯現役世代の推進のため、高齢者の「憩い」「いきがい学び」「ふれあい交流」「健康づくり」の場として設置され、現在28館が、来年度には32館全館がNPO等に委託・運営されていきます。協働事業の目的の一つに「健康づくり(介護予防)」があげられ、各館で様々な企画が進められています。ここに地域包括支援センターや保健センターの持つ専門性や情報がより有効につなげられていくべきと考えますが、いかがでしょうか、うかがいます。

 

次に、地域包括支援センターとの関連で3点うかがいます。

地域包括支援センターは、①高齢者の総合相談・支援・申請受付 ②高齢者虐待相談・権利擁護相談 ③区の高齢者施策申請受付 ④要援護高齢者等の実態把握 ⑤介護予防事業 ⑥新予防給付マネジメント ⑦地域ケア会議の開催 ⑧介護支援専門員への指導・支援 ⑨地域のネットワークづくり、とかなり広範囲にわたる9つの業務を受け持ち、多忙を極めています。まず、地域包括支援センターの現状と課題は何か、うかがいます。

 地域包括支援センターの業務の中に地域のネットワークづくりがあげられています。各種保健・福祉サービスが総合的に受けられるよう、NPOや市民団体など地域にある様々な社会資源と結びつける役割が求められていますが、十分に機能しているのでしょうか、うかがいます。

 

今回、区内在住高齢者の行方不明問題がありました。あの猛暑のなか、発覚後ただちに調査され、結果を発表された対処は適切であったと思います。その後、この問題にはいくつもの問題が含まれていることが明らかになりましたが、そのひとつの解決策として「見守り」などの地域のネットワークの必

要性が指摘されました。地域のネットワークづくりに日々取組んでおられる地域包括支援センターは、区民にとって高齢者福祉のもっとも重要かつ身近な窓口です。区は地域包括支援センターを地域づくりの拠点として位置づけ、共に高齢者とその介護者を応援することに力を尽くされることが、今後より一層必要と考えますが、区の見解を伺います。

 以上述べてきたように、地域包括支援センターが担う役割は非常に大きく、もっと区が主体的にかかわり、人員体制と委託料をふやして、地域包括支援センターを支えることが必要になっていることを加えて申し上げます。

 

最後に健康づくりや地域包括支援センターの地域づくりの視点を入れ、総合的な介護予防に取組むために、福祉保健計画に介護予防の考え方をしっかり位置づけ、施策の体系化、総合化を行うことが必要であると考えますが、いかがでしょうか。区の見解を伺いまして私の質問を終わります。

第2回定例会一般質問   2010.6/5 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、プラスチックごみの削減について、在宅で介護する家族の支援について、以上2点、質問いたします。

 

《プラスチックごみ削減について》

35年間にわたって「焼却不適物」として扱われてきた廃プラスチックが、2008年に「埋め立て不適物」すなわち「可燃ごみ」に区分変更となり、一部を除くプラを焼却するようになって2年経過しました。「一部」というのは、いうまでもなく、ペットボトルと容器包装プラのことです。杉並区はこれらを資源として生かすため「燃やさない」ことを継続しています。

 

このことは評価しつつ、プラスチックの焼却がもたらす環境汚染とCO2排出量の増加を懸念する立場から、燃やすプラスチックを減らしていくことがごみ全体を減量していく中でも重要と考え、今回、質問いたします。

 

区では今般、環境基本計画の改定が行われ、本会期中の都市環境委員会で報告されるとうかがっています。ことし2月に公表された「改定案」の段階では、「行政の取組み」としてプラスチック製容器包装年間回収量の目標数値が平成22年度5,200トン、平成25年度5,800トンと、「増やす」計画であったことに驚き、予算委員会で質問したところ、分別を徹底させリサイクル率を上げていく目的で数値を拡大させるのだ、というご答弁でした。

 

私は、リサイクル率を上げることと回収量を増やすことは別であって発生抑制が必要と考え、区が掲げる「脱石油社会をめざす」のがほんとうなら、石油由来であるプラスチック類の製品そのものの使用を抑えていくような生活提案をすべきではないか、と申し上げました。その後、パブコメを経て策定された新しい環境基本計画では、容器包装プラ回収量の目標数値が平成22年から25年まで、増えるのでなく横ばいに修正されたとうかがい、納得したところです。

 

容器包装プラの回収は、100パーセント区の清掃・リサイクル事業の一環として実施されているものです。容器包装リサイクル法にのっとって当区が23区の中でもいち早く分別・回収に着手し、実験的なモデル事業から始めて地道に実践を積んでこられたことは、生活者ネットワークとして高く評価してきました。現在、23区中16区が何らかの形で容器包装プラの分別回収を実施していますが、杉並が他区の取り組みをリードしてきたのは間違いありません。区がこれからも名実ともに環境都市と称されるよう、前向きな取り組みを期待する立場から、以下、質問いたします。

 

はじめに、その廃プラの分別収集とリサイクルについてです。これまでの取り組みを区としてどのように評価されるのか、また、今後もこの取り組みをさらに推進していくべきと考えますがいかがか、見解をおうかがいします。

 

可燃ごみに占めるプラ混入率が、直近の区の家庭ごみ組成調査では7.6%になっています。この中には容器包装プラが相当量含まれていると考えられますが、区の原因分析はいかがでしょうか。

 

改定された環境基本計画には、容器包装プラスチック回収量の目標値が設定されていますが、可燃ごみの中に占めるプラスチック混入率を下げる目標値が見当たりません。削減目標を立てるべきではないのでしょうか。見解をうかがいます。

 

容器包装プラの回収率を上げる取り組みが必要です。杉並区では毎年人口の5分の1から4分の1の人が転出入すると聞いています。絶えず人が動いている当区にあっては、啓発活動も意識的に間断なく行われなければなりません。お考えをうかがいます。

 

今年度の容器包装リサイクル協会の落札結果により、区で回収したプラ約4,000トンのうち3,000トンが足立区、残りは板橋区の施設に運ばれます。ここで中間処理がほどこされ保管ののち、さらに再商品化のため別の事業者に輸送されることになります。昨年、生活者ネットワークの仲間とこの足立区入谷にある中間処理施設を視察いたしました。

 

杉並区内から車で運ばれてきた廃プラスチックが山積みで保管されているようす、また、動くベルトコンベアーの上の排出物から、異物やリサイクル資源として不適切なものを人の手で取り除く作業を経て、11メートルの立方体に圧縮・梱包されるまでの工程を間近に見てからは自宅のごみの出し方が変わる、と参加しただれもが感想を述べています。

 

このことからも、廃プラ資源化の工程が、どこか遠くの土地ではなく、身近なところで確認できることがほんとうは望ましいのだと思います。ごみを自治するという視点に立てば、せめて中間処理的な作業は自区内で行うことが、成熟した自治体のあり方であり、公平な負担のあり方なのだと思います。

 

地球温暖化の現実を知ることが省エネ行動を促すように、ごみのゆくえを知ることはごみの排出のしかたを変えるはずです。プラスチックに限らないことですが、資源が回収された後のゆくえがわかるような広報活動が必要です。

 

広報活動といえば、リサイクル事業における区の費用負担の現状を区民に伝えることで、問題提起することも重要です。というのは、リサイクル事業は安易に焼却するよりはるかに高いコストがかかり、それがプラリサイクルをしない自治体の理由になっていますが、ではリサイクル費用は自治体がほんとうに負担しなければならないものなのか、考える必要があるからです。

 

区が負担するということは、プラスチックを使わない、プラごみを出さない人にも処理費用が課せられることですから、理にかなっているとはいえません。ごみを出す人がその処理費用を支払うしくみに変えなければなりません。製品をつくる生産者が、消費し終わって廃棄物として排出するところまで責任を拡大すること、すなわち「拡大生産者責任」のしくみをつくることで、資源循環を継続してすすめていけるのです。

 

区がごみ処理やリサイクル事業の経費としていくら負担しているのか、品目ごとに具体的に数字で表わし、区民に考える機会と材料を提供すること、すなわち廃棄物会計を明らかにすることで、ごみ処理の負担のあり方を見直し、拡大生産者責任の確立に向けた議論が進むようにすべきと思います。ごみのゆくえと廃棄物会計についての広報は区の重要な役割です。見解をうかがいます。

 

区民のマイバッグ持参が定着してきていると感じます。当区におけるレジ袋削減の取り組みを評価するものです。削減効果をレジ袋およびCO2の削減数値でお示しください。

 

レジ袋有料化の実践にあたっては、区内事業者の理解と協力があって、実現できたといえます。この協力関係を生かして、プラスチックごみ総量を削減する取り組みへと発展できないか、と考えます。たとえば、プラ容器の店頭回収やガラス容器のリユース、消費者へのポイント制度など、モデル実施の可能性を検討すべきではないでしょうか。市民活動団体に声をかけて事業者に向けたアイデアや提案を出してもらう、など、多くの区民がかかわってプラスチックごみを減らす議論ができるのでは、と考えます。区の見解をうかがいます。

 

なお、食品に直接触れるプラスチックの安全性については、今の科学的知見では問題なしとされますが、ガラスなどに比べれば歴史が浅いため、新たな科学的知見が今後出てくる可能性は否定できません。将来にわたっても安全であるとは言い切れませんから、食品の容器として、非プラスチックを広げることが必要だと思います。区はそのような啓発を行うべき、と考えるものです。

 

ところで、前区長が在任中の2008年より地球温暖化懐疑論に同調する姿勢を明確に示すようになり、CO2排出量削減は不要であるかのような発言が出るなか、区の環境施策の打ち出し方に変化が見られるようになりました。たとえば、省エネを推進する目的として「脱石油社会」という文言を使うようになったことです。

 

小泉元首相の時代に「脱石油戦略」というものが策定されましたが、国家戦略としてのエネルギー対策を構築するうえでの指標として「脱石油」は適した言葉だと思います。ですが、区民が環境問題を広く共有し啓発する言葉としてふさわしいのか、疑問です。いま地球上の生き物が直面している環境問題を本質的にとらえるなら、二酸化炭素の排出がより少ない生活のあり方を提案すべきです。山田宏氏が区長を退いたいま、今後、区はCO2削減目標をしっかりととらえ「低炭素社会」をめざすことを積極的にアピールすべき、と申し上げ、つづいて、在宅で介護する家族の支援について、質問いたします。

 

《在宅で介護する家族の支援について》

10年前、介護を社会化するシステムとして始まったはずの介護保険制度でしたが、改正を経るたびにかえって家族への介護の負担が高まり、高齢者の在宅介護をめぐるさまざまな問題がクローズアップされています。虐待の頻発、老老介護、男性介護者や働きながら介護するシングルの増加、貧困などの実態は、都市化、少子高齢化、国際的な不況という社会的背景のもとで深刻さを増しています。

 

これを解決するには、介護保険制度の枠をこえて社会保障制度全体をつくりかえるほどの大事業が必要になりますが、考えてみると、この問題は高齢者介護だけに限ったものではありません。在宅介護を「介護する人」の側からとらえ直してみると、障がい者、病気で寝たきりの患者を介護する家族も、抱える問題の根本に共通するものが見えてきます。

 

家族介護者がいることが前提で成り立ついまの日本の在宅介護において、介護者への肉体的・精神的、さらには経済的な負担は、人権が抑圧される問題ととらえることが必要なのではないか。在宅介護を担う家族をサポートするため居場所を設けるなどの活動を広げてきたNPOの代表者は、相談事業などの活動現場でその感を強めてきたそうです。

 

社会保障制度を再構築するうえで「介護する人」「看病する人」の問題をきちんと位置付け、ケア者を支援するしくみを社会的に整備することをめざし、いま市民が動き始めています。先行モデルとされるのは、イギリスの例です。現地を訪問調査された方の報告によれば、イギリスでは介護者の概念は、障がい別や、高齢者かそうでないかという縦割りではなく、高齢者、障がい者、障がいのある子どもなどをケアする人たちのいずれも、「介護者」というひとつの括りでとらえられているのだそうです。

 

介護者自身が自分のことを後回しにして、自分より弱い立場にある人のことを優先させなければ、と自分を追い込んでしまう人が少なくないのは日本と同じ状況ですが、そうした介護者のために多彩なサービスが用意された、介護者だけのための在宅介護者センターが全国的に設置されているところが大きな違いです。同センターを運営する財源は公費と王室関連の福祉団体の独自予算であり、そこでは相談・情報提供、人権擁護活動、カウンセリング、などを行うことが義務付けられ、モーニングカフェなども設置されています。

 

そしてそのような事業の法的根拠となっているのが、1995年に制定された法律「介護者法(ケアラーズ・アクト)」です。これまで2度の改正を経て、08年には「介護者のための全国戦略」が策定され、介護者支援が強化されているとのことです。

 

日本での市民の動きは、イギリスの手法をお手本に目標を定めつつ、最初のステップを踏み出そうとしています。67日に設立が予定されている「ケアラーズ連盟」は、病気や障がいごとに縦割りで分断されている介護を横につないで、「ケアする人たち」すなわち「ケアラーズ」の権利を守るための活動を推進していこうとしています。

 

私は生活者ネットワークの仲間とともにこの趣旨に賛同し、運動をすすめていきたいという思いから、以下、質問いたします。

 

認知症をふくむ高齢者、障がい者、各種疾病の罹患者など在宅で介護を必要とする人は、ヘルパーなどプロの介護者だけでなく家族による介護を受けている場合がほとんどと思われます。そのような在宅の被介護者は区内にどの位おられるのか、把握しておられるでしょうか。またその介護の状況や、介護者本人の生活実態について把握しておられるか、おうかがいします。

 

タレントの清水由貴子さんが母親の介護に行き詰まって自ら命を絶った事件はまだ記憶に新しいところですが、類似の事件は後を絶ちません。「介護うつ」という言葉があるように、介護のストレスが原因で身体や精神を病んでいるケースが少なくありません。また介護のために失業をやむなくされ経済的に困窮するケースも多いと聞いています。区の認識はいかがでしょうか。区内のそのような事例を把握しておられるか、おたずねします。

 

神奈川県秦野市では、老老介護のすえ心中に至った事件が市内で起きたことをきっかけとし、介護者の抑うつ傾向の実態把握を目的に2007年に「介護者実態把握調査」を実施しています。500人強の在宅介護者を対象に、ケアマネージャーが調査用紙を直接配付または聞き取りを行うかたちで実施され、約半数がうつ状態にあるというショッキングな結果が報告されました。その2年前に厚労省が行った調査では「23%が抑うつ」と報告されていましたから、市の関係者も当然それに近い数値を予想していたでしょうが、実際はその倍以上だったわけです。

 

この調査により支援の必要な在宅介護者を見つけ出した同市では、「介護者のつどい」や「介護者セミナー」など介護者支援のサービスの対象者としています。看護師を1人から6人に増やし、直接、電話相談・訪問相談を実施しています。ひるがえって当区の介護者支援施策はどのようになっているのか、3点おたずねしたいと思います。

 

1点目。当区における介護者支援施策としては、まず家族介護継続支援事業 認知症家族の安らぎ支援事業が挙げられるかと思います。これらの概要をお示しください。

 

2点目。また、認知症でない高齢者、在宅で闘病生活を送る難病患者などで家族介護者はどのような支援が受けられるのでしょうか。障がい者(児)の家族はいかがか、併せて伺います。

 

3点目。秦野市が実施したような、介護者を対象とした実態把握調査が当区でも必要と思います。実施すべきではないでしょうか、うかがいます。

 

介護保険制度の利用者だけに限ってみても、過剰な介護を抱え込んでいつ倒れても不思議でないような、過酷な状況にある在宅介護者は決して珍しくない、ということを福祉の現場で働くヘルパーやケアマネの人たちは口にします。同じことは障がい者や難病患者の家族の場合にもいえます。

 

イギリスで最初に介護者支援活動として始まったのは、高齢者問題ではなく、若年世代の就業支援だったそうです。親の介護のために職に就けない、あるいは職を失った若い人たちの就職相談や、技術取得プログラムの活動が出発点と聞きました。

 

日本ではどうでしょうか。介護休業を保障している企業はまだ多くありません。一事業体としての杉並区の状況はいかがでしょうか。区の職員が、家族に介護が必要になったために休業を申し出た事例はないか、またその場合、区の対応としてどうなさるのか、うかがいます。

 

おりしも、育児・介護休業法が改正され630日に施行されようとしています。介護休暇制度の新設がここに盛り込まれましたが、当区では事業者として、法に基づく取り組みをどのように進めていくお考えか、お示しください。

 

在宅で介護する家族に共通する問題が、介護者の生活を圧迫し、人権侵害にまで至っていることが社会問題として捉えられていない、と先に述べた「ケアラーズ連盟」設立に向けて奔走中のNPO代表者は指摘します。介護者の権利擁護のしくみが必要であるとして、イギリスのように法制化をめざしているといいます。介護者の権利擁護について、区はどのようにお考えになるのか、見解をうかがいます。

 

また、介護者を支援するしくみとして、さまざまな介護者のレスパイトケアに取り組む市民の活動が注目されます。21世紀ビジョンで「個人の尊厳」「区民一人ひとりの人間性が尊重されることを何より優先」とうたう区としても、このような活動を支援すべきと考えますがいかがでしょうか。おたずねします。

 

質問は以上ですが、最後に1点つけ加えます。きょう私が介護者の問題を取り上げたのは、私にとっては大切なある人のブログに背中を押されたからです。その人は昨年ALS(筋委縮性側策硬化症)という難病に倒れ、ご自宅で奥さまや娘さん、ヘルパー、看護師さんなどの介護・看護を受けながら療養生活を送っていますが、身動きのままならぬベッドの上から日々ブログを発信しています。家族の疲労を目の当たりにして心を痛め苦しい心情がつづられているのを読むと、介護者のストレスが介護を受ける側にもストレスとして積もっていくのだとわかります。何らかの介護者支援のしくみが必要、と繰り返し書かれています。もうこれ以上在宅介護者の問題を放置していてはいけない、ということをこの場で最後に訴え、私の質問を終わります。

予算特別委員会 意見開陳 2010.3.11 小松 久子

予算特別委員会の最終日にあたり、当委員会に付託された2010年度一般会計予算をはじめとする諸議案に対し、区議会生活者ネットワークとして意見を申し述べます。

委員会での質疑や会派での調査活動の結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および、修正案を含む減税基金条例を除くすべての条例案について、賛成すべきと判断いたします。その立場から、以下、時間の制約により述べられなかったことなど何点か絞って申し上げます。

今世紀最初の節目の年は、厳しい経済状況の中で明け、このわずか2か月余りの間にハイチ、チリ、台湾で大地震が発生するなど、自然環境も私たち地球市民に試練を与えるかのようです。昨年ようやくなされた政権交代ですが、経済格差は固定化し、次代を担う若者や子育て世代が安定した将来を描けずにいます。基本的人権があたりまえに尊重される社会の実現、あらゆる世代の生活保障の実現こそ、政治が担うべき役割であることを、あらためて胸に刻んでいます。

 

では、まず委員会の形式について述べます。審議の初日となった、228日の減税基金条例集中審議では、質疑の持ち時間として会派分の3分が会派の大小にかかわらず配分されました。昨年の決算委員会で私どもの要望したことでもあり、評価するところです。ただ、他会派から述べられた、減税自治体構想研究会の委員メンバーを質疑の場に招致いただきたいという要望は、理にかなったことでもあり、これが通らなかったことは、残念に思っています。

 

さて、減税基金条例についてなぜ私どもが反対なのか、考えを述べさせていただきます。

 

まず、繰り返しになりますが、区民は公共の利益のために義務として税金を払い、区がそれを将来のために基金で災害や必要な施設建設などに備えることは、当然やらねばならないことです。しかし、減税という形で個々人に直接還元されるものに、現役区民が負担するというのは、どう考えても納得がいきません。そもそも自治体が独自に減税できるのは、06年に地方財政法が改正されて初めて可能になったのであり、それまではできないしくみになっていました。ところが「減税自治体構想研究会報告」は冒頭でこう述べます。「日本ではこれまで、地方自治体が主体となって恒久的な減税を実現したことは一度もなく、研究すら行われたことはありませんでした。その意味で今回の研究は、行政としてはまさに全国で初めての試みでした」。ここまで自画自賛しなくても、と思います。このような過大な評価は、事実を見誤らせる表現といえます。

 

さらに、この提案に無理を感じるのは、積み立て始めて10年後以降、減税を始めた杉並区は学校や図書館などの建て替えの必要が生じたとき、都知事の許可がなければ費用のローンが組めない、すなわち起債することができなくなることです。区は、都知事は許可するだろうとおっしゃいますが保証はなく、もし許可されなければ係争事件に発展することになります。清掃事業をはじめ、23区がさまざまに連携し融通しあうことで成り立っている事業も多い中で、なぜ杉並区だけが、将来の個人のポケットマネーのためにルールを変えてまで積み立てをしなければならないのか。質疑を重ねても、理解できませんでした。

 

しかし、議会に身を置く者として、この間の処し方に反省もしています。研究会報告後わずか2年で実行に移されるとは想定せず、結果として議会は減税自治体構想が暴走するのを傍観していたことになります。もしやり直せるなら、この構想の提起された当初に時間を戻し、杉並区議会は区長のもとに呼び寄せられた学者とはまた別の専門家を招いて、オルタナティブな研究会を構成し、別の側面からの理論を組み立てることをすべきでした。それが、二元代表制としての議会のすべきことだったと、今にして思います。

 

首長が理想を語り夢見ることを非難するつもりは全くありませんが、実現ありきで進められてきた区行政の広報・啓発活動に対しては、区民をミスリードする危険性もあることから、十分に慎重であっていただきたかったと思います。

 

福山大学の客員教授である田中秀征氏のお話を伺う機会がありました。「グローバル経済が破たんした今、有効な経済対策はなにか」という話題になったとき、田中氏は景観計画のことを持ちだされました。「街並みを良くする、街路樹を植える、電柱の地中化、看板の撤去などで地域雇用を生み出すことが可能になる。景観計画にそって事業を行うことは、10年後、20年後、100年後の世代にも納得してもらえる」と述べておられます。

 

このような税の使い方と減税と、どちらがより福祉に貢献することか、明らかです。

 

またある人は、減税自治体構想は「お金の使い方をいま決めないしくみ」だといいます。現在の要求を抑制し後の世代に白紙委任する、そのような人間観に立っている、という指摘は、奥の深い論点ではないでしょうか。

 

今回、市民自治についての議論をとおして、「新しい公共」という概念のとらえ方について、区との微妙な違いが今ははっきりしてきたように思います。かつて国会でNPO法案の議員立法を提案なさった区長ですから市民自治をお分かりいただいているはず、とばかり思っておりました。しかしながら、「自立した市民が、みずからの発意と意思により行おうとする、自発的な自治」、すなわち市民自治についてご理解いただけていないとわかり、驚くより、こちらの認識不足に気づかされた次第です。

 

しかし、市民自治はすでに地域で芽吹き始めています。善福寺川水鳥の棲む水辺創出事業シンポジウムやまちづくり協議会に参加する人を見ても、まちづくりを一緒に考えていこうとする市民が増えているのを実感します。反対、賛成、さまざまな人がいるのがまちの豊かさであって、その人たちと一緒にまちづくりを進めていくのが地域主権であり、地域自治、市民自治だと考えます。

 

杉並区まちづくり基本方針を住民参画と長期的なビジョンのもとに見直す、とあり、「住民参画」の文言に大いに期待するところです。住民参画は行政の体力が試される手法ですが、区は、ぜひ受け止めていただきたいと思います。

 

新宿区では400人に及ぶ市民の参加で基本構想がつくられました。役所が本気で市民の気持ちを受け止めた結果です。市民参画での一番の強みは、まちのことはそこに住む人が一番よく知っている、という点です。市民の経験や知識を見逃す手はありません。市民の情報をどう使いこなせるかが勝負です。

 

横浜市が市民と協働で「地域まちづくり白書」を作っています。当区においても「まちづくり白書」を作ってはいかがでしょうか。市民だけでなく役所も一緒に育つきっかけとなるような、まちづくり基本方針の見直しに期待しています。

 

それでは続いて環境問題に関連して、述べます。

 

CO2削減にせよ、ごみ削減にせよ、環境問題にかかわる課題について、区は意欲的な目標値を設定し努力なさっているとは思いますが、目標達成に向けた推進力がいまひとつ、という感が否めません。

 

その例の一つが生ごみ資源化の調査・研究です。優秀な研究者が調査・研究を担当し必ず実現するという信念をもってシミュレーションし実行計画を描き、たとえ実現困難と思われることでも可能にする、という減税自治体構想の手法を、ここでぜひ応用していただきたいものです。可燃ごみに占める生ごみの多さ、ごみの排出はすべての住民にかかわるものであり、徹底するまでに相当な時間がかかることを考えれば、この課題に一刻も早く着手しなければなりません。

 

ごみ問題に取り組む市民グループが、この分野ですでに日常的に実践しています。その市民力を生かして、モデル実施を検討すべきと考えます。

 

プラスチックの焼却が既定路線となったことで、可燃ごみの中に占めるプラスチックの量が増えていくことも不安材料です。23区一部事務組合が実施した、プラスチック製品中の重金属類含有試験結果によれば、有害物質をふくむ重金属類が可塑剤として添加されており、これを焼却したときの環境への影響が懸念されるところです。プラスチックを「燃やすべき」とした方針そのものにあらためて疑義を感じざるを得ません。脱石油社会をうたう杉並区は、石油製品であるプラスチックの使用を減らすような生活を提案すべきと、あらためて申し上げます。

 

エネルギー問題についてです。

 

「低炭素」という言葉が「温暖化対策」に取って代わろうとしている現在、区がこれを脱石油と言い変えたのは妙案でした。ただ、4月発効の東京都の環境確保条例でも国の温暖化対策法でも、区が求められているのは温室効果ガスの総排出量なり削減量の報告・公表であり、このたび策定予定の「環境・省エネ対策実施プラン」に見られるような、区が取り組むとしているエネルギー管理との違いが明らかです。都や国の方針との差異がダブルスタンダードを生み、作業効率の低下につながらないよう、求めます。

 

なお、環境清掃審議会に、エネルギー問題に取り組む市民活動団体からも、メンバーとして加えるべきと考えます。ご検討ください。

 

キッズISOについてです。小学5年生が取り組むKid’s ISOの入門編は2週間だけとなっていますが、ガス、電気、水道、ごみのメーターを毎日調べるプログラムに取り組んでいることは素晴らしいと思います。さらに、この取り組みに、工夫を加えることで、子どもが省エネ生活に向けてスタートを切ることができます。もう少しやってみたいという意欲ある子ども、また保護者には、環境都市推進課と連携して、継続した省エネに取り組めるよう支援すべきと考えます。ご検討ください。

 

また、以前も申したことですが、学校のごみ・資源の分別を家庭での分別方法と同じにすべきです。学校で容リプラの分別回収をするとなれば、必要なのは貯め置くスペースだけであるはずです。きちんと分別を教えるのも環境教育です。容リプラを独自に分けている小学校があると聞きます。これをぜひ全体化するよう、要望します。

 

特別支援教育についてです。次年度より、区は学校が作成する「個別指導計画」ではなく、就学前から就業に至るまでの「個別支援計画」を作成するといいます。そしてその際、助言をする「専門支援チーム」、すなわち臨床心理士、医師、指導主事、社会福祉士(SSW)による学校巡回支援を新たに実施なさるとのことです。私ども生活者ネットワークは、これまで、障がい児に対して、医療機関・療育機関・教育機関の連携システムをつくり、個別の支援計画による生涯にわたる支援体制を確立するよう、予算提案の中で求めてきました。この「専門支援チーム」の取り組みをおおいに歓迎し、期待するところです。

 

区が特別支援教育について先進的に取り組んでくださっていることには、つねづね敬意を抱くものです。であればこそ、教育現場に多くのすぐれた人材が不可欠なはずです。これまで再三要望してきたことですが、区独自の教員養成施設である師範館を存続させていくのであれば、ぜひそのための人材育成施設へと転換・発展させていただきたい、とつよく願うものです。

 

花咲かせ隊・公園育て組の活動について、ひとこと述べたいと思います。市民が地域の花壇に自ら花を植え楽しむこの事業がスタートして、今年で10年が経ちます。今後もこの事業を広げていかれることと理解しています。ただ問題は、当初より始めた団体で継続困難になってきているところが見受けられることです。当事者の意見を聞きながら支援の方策をたてる時期に来ていると思われます。対応を求めます。

 

子どもの虐待についてうかがいました。相次いで報道されるケースはあまりにも悲惨ですが、虐待は特殊なことではなく、社会の病理が生む問題として政治が解決しなければならない時に来ていると思います。チームワーク体制による、区の前向きな取り組みを再度、要望いたします。

 

理由が何であれ、子どもに対する暴力を許すことはできません。そしてまた、子どもの教育を政争の具にする動きについては敏感でなければなりませんし、まして教育の場に民族や国籍の違いによる差別を持ち込むなど、あってはならないことです。

 

現政権の打ち出した、高校の授業料実質無償化制度の中に朝鮮学校を除外する規定を設けようとする動きが報道され、私たち区議会議員有志は、政府に再検討を求める行動を起こしました。わが会派を含めて8会派13名の連名で、39日、鳩山首相と川端文部科学大臣にあて、「同じ杉並区の朝鮮第九初級学校に通う子どもたちの友人として」要請文書を提出したことを、この場をお借りしてご報告いたします。

 

私事ですがその同じ日、新しい命を家族に迎えました。小さな杉並区民です。この地に住む、あるいは学ぶ、すべての子どもがひとりも例外なく、基本的人権が保障されるよう、生活者ネットワークは力を尽くしてまいりたいと思います。

 

以上をもって、会派の意見といたします。

第一回定例会一般質問 2.16 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、「平成22年度 予算の編成方針とその概要」について、スクールソーシャルワークについて、そして食品表示について、以上3つの項目について質問いたします。

 

最初に、このたび区長が示された「予算の編成方針とその概要」についてです。細目については特別委員会で触れることとし、ここでは区長のお考えを中心に、うかがいます。

 

一読してまず感じましたのは、「自治」の文言が見られないことと、「市民自治」の視点が見られないということです。住民がみずからまちづくりにかかわること、区政に参加することへの期待も展望も、全く語られていいません。区では昨年、自治基本条例が改正され、意見提出手続きを新たな条例として決めはしましたが、区が何か新しいことを始めようとするときにのみ、住民の意見を聴取しようというもので、住民からの自発的な提案を受け入れるというしくみではありません。

 

そのことと併せて考えてみますと、区長は、住民による発意を区政に生かしていきたいという意思がおありになるのか、「市民自治」を進めることへの積極性を疑わざるを得ません。そこで、根本的な理念を問う質問になりますが、区長は「市民自治」というものをどのようにお考えになるのか、いま一度、おうかがいしたいと思います。最初の質問です。

 

国会では、鳩山首相がその施政方針で「新しい公共」の概念を前面に打ち出しました。めざすべき日本のあり方として、市民やNPOなどがたすけ合う社会を築いていきたい、という趣旨だと理解しています。杉並区では従前より「新しい公共」の創造をうたい、その担い手としてNPOの活動支援に力を入れるとしてこられましたから、そのような当区においては、この政権交代がNPO支援をさらに推進させるチャンスだと考えるものです。

 

しかしそれにしては、区長の言葉で「新しい公共」への共感や、市民やNPO活動への支援が語られないのを、残念に思います。区長は、市民・NPOの活動や事業を今後の区政にどのように生かしていこうとお考えなのでしょうか。「新しい公共」の理念のもと、どのように連携、協働していかれるお考えなのか。2番目としてうかがいます。

 

都区制度のもとにある現在、特別区で杉並だけが減税のための基金積み立てを始めようとするのであれば、他区の理解を得る必要があります。区長は東京都と他の22区に対してこれから進めようとしている減税自治体構想について一定の説明をし、理解を求めるべきと考えますがいかがでしょうか。これが3点目です。

 

4点目。区長は対国、対東京都における自治の確立の必要を常日ごろより述べておられ、今回もそうですが、ご自身がそのために何か行動に出ようとなさっているようには見えません。都区問題を解決し真の地方分権を獲得するため、区長みずから都区のあり方や東京における自治のあり方について関係機関に積極的に働きかけ情報発信を行うなどし、リーダーシップを発揮すべきではないのでしょうか。うかがいます。

 

この項の最後、五つめの質問です。2010年度は山田区政の最後の年となります。予算編成方針を拝見しますと、行政に関しては、これまでの集大成として提示された施策を確実に実行なさるであろうことがよく分かります。しかし区長ご自身は、最終年度の活動として何をなさるのかと疑問がわきます。先ほど述べた、自治に関する取り組みの先陣を切ることや、みずからこの1年、地域に積極的に足を運び、区民の目線で、減税構想をはじめとし区政全般に対する区民の声を聞き取ることをされてはいかがかと思います。ご見解をうかがいます。

 

つづいて、スクールソーシャルワークについての質問です。

 

先月24日、江戸川区内で小学校1年生の少年が両親から虐待を受けて死亡するという、痛ましい事件がありました。学校は、昨年9月には家庭での暴行の事実を把握し家庭訪問までしていたにもかかわらず、日常的な虐待の可能性を疑うことをせず、子どもの死を防ぐことができませんでした。疑わなかったので児童相談所に通告もしなかったといわれ、学校関係者の虐待に対する認識不足が悲劇を招いたといえます。ある同級生の子は「体育がある日に学校をよく休んでいた、着替えのときに見られるのがいやだったのでは」といい、子どもなりにおかしいと感じていたふしがあるのに、担任が何も気づかなかったとすれば、対応の初期の段階での感度の低さは、責められても弁解の余地はないといわなければなりません。そしてそれが、結果として諸機関との連携不足を生じさせるということも、この事件の残した教訓といえるでしょう。

 

子どもが虐待を受ける事件は年々増え続け、昨年厚生労働省が発表した2008年度の児童相談所対応件数は42,662件、1990年度と比較すると、18年間で実に40倍にも上っています。2002年の児童虐待防止法施行により、虐待の定義が規定されたことで表面化し、数が増大した面はあるにせよ、この激増ぶりはすなわち、対策が遅れていることの証左にほかなりません。

 

今日は、子どもの虐待防止を願うオレンジリボン運動に賛同し、こうしてオレンジリボンをつけています。

 

さて、江戸川区の事件では、「虐待問題に対応可能な専門家が学校現場には必要」とのコメントが議会や外部の有識者からも出されました。私もその通りだと思いますし、今後それは具体的な動きを後押ししていくことと思います。また、ぜひそうならなければと考えています。これから質問するスクールソーシャルワークは、その具体策のひとつといえます。

 

学校でのいじめ、不登校や、家庭でのひきこもり、虐待、特別な支援を必要とする事例など、子どもに関わる課題への対応として福祉的なアプローチを必要とされるケースは数多くあります。

 

具体例を申しますと、仮にある不登校の中学生の少女がいたとします。これを本人の心の問題として心理療法的な相談対応にあたるのがカウンセラーですが、スクールソーシャルワーカーは違います。この少女は、実は学校でいじめにあっているかもしれない、家庭では家族間の不和があるか、保護者が経済的問題を抱え、その結果として貧困状態にあるかもしれない、あるいは薬物やアルコール依存にかかわっているか、家庭内暴力やドメスティックバイオレンスの被害者かもしれず、摂食障がい、うつ病などの健康上の問題か、発達障がいをもっているかもしれません。このようにさまざまな問題が少女の背景に隠れている可能性があります。

 

そのようなケースに対し、社会福祉的な視点と手法をもって、本人個人というより、その環境に働きかけることで解決を図ろうとするシステムが、スクールソーシャルワークです。

 

なお、システムとしてのスクールソーシャルワークと、その仕事を担う専門職のスクールソーシャルワーカー、というようにここでは定義し、使い分けてまいりたいと思いますのでご了解ください。

 

スクールソーシャルワークは、100年前米国で始まった活動にそのルーツがあるといわれますが、日本に導入されてまだ20年ほどしかたっておらず、方法論としては未確立です。ですが、学校における問題が多様かつ複雑化する中で、今後活用のニーズが必ず広がっていくものと考えます。

 

杉並区がスクールソーシャルワーカーを配置されるようになったことを、生活者ネットは高く評価しています。この取り組みが、子どもの育ちを支えるセーフティネット機能のひとつとしてさらに充実されることを願って、今回質問いたします。

 

当区のスクールソーシャルワークは2006年度より取り入れられていますが、2008年度からは、文部科学省が実施するスクールソーシャルワーカー活用事業の導入がされています。最初の質問は、この文科省の事業についてです。その概要と目的をまずうかがいます。

 

ふたつ目。当区が文科省より2年早くスクールソーシャルワーカーを導入された背景には、どのような課題があったのか。課題を受けて導入に至った経緯と、その目的について、おうかがいします。また、これまでの活動実績について、そしてこの活動に対する区の評価はいかがか、併せてお示しください。

 

次は資格についてです。スクールソーシャルワーカーは専門的な職種でありながら、国家資格というような、そのための資格というものはないと聞いています。当区のワーカーは現在4人ですが、どのような資格をもつ人たちでしょうか。おたずねします。

 

働き方についてもうかがいます。4点目です。当区のスクールソーシャルワーカーは済美教育センターの教育SAT(スクールアシストチーム)に位置付けられていますが、どのような働き方なのでしょうか。対応すべき事例が持ち込まれたのち、どのように動くのか、具体的にお示しください。学校や公的機関とのかかわり方やチームワークのとり方、また家庭や個人への介入のしかたはいかがでしょうか。勤務のしかた、待遇、権限など、日常的にどのような業務なのか、おたずねします。4人の分担についてもうかがいます。

 

つづいて5点目。スクールソーシャルワーカーは、その任務の特色として大量の個人情報を抱えることになります。当然ながら秘匿義務がありましょうし、それは厳守されなければなりません。監督責任者としての教育委員会の方針をお聞かせ願います。

 

そして6点目は今日、一番お聞きしたい質問です。活動するなかで、学校の側に立つのか子どもの側に立つのか、学校側の立場で対処するのかそれとも子どもに寄り添うことを重視するのか、その立ち位置によってスクールソーシャルワーカーの対応は異なったものになります。迷う場面が必ず出てくると思います。そのときワーカーは「子どもの最善の利益」を優先すべきであり、そういう態度や判断を支える教育委員会であってほしいと考えます。区の見解をお示しください。

 

スクールソーシャルワーカーの取り組む課題には、複雑で深刻なものがあるに違いありません。あるケースには時間をかけた取り組みが求められ、同じ人が継続して担当することが必要なケースが必ず出てくるでしょう。そう考えると、現在の4人はとうてい十分な人数とはいえません。区はワーカーの登用を増やし、学校の問題に対して福祉的な取り組みとして対応に当たるべきと思います。区の見解はいかがでしょうか。おうかがいします。

 

そしてこの項の最後の質問です。人材育成と普及啓発について、まとめてうかがいます。

 

スクールソーシャルワーカーの質的向上と活動支援のため、ブラッシュアップ研修の実施が必要と考えます。ケーススタディを重ねること、対応の実績を積み上げることも重要ですし、ワーカーが動きやすいような環境づくりも求められます。区はどのように進めていかれるのでしょうか。

 

また、スクールカウンセラーとの違いや、スクールソーシャルワーカーの役割の重要性をひろく一般にも伝え、アピールするべきと思います。とくに、児童青少年委員をはじめとする、子どもにかかわる機関の関係者への啓発が求められます。教育委員会が昨年パンフレットを制作されていますが、そのためのツールのひとつとして有効に使うべきと考えます。区の見解をおうかがいし、前向きなご答弁を期待して、次の項目に移ります。

 

3番目の項目、食品表示についての質問です。

 

食品について私は、安全であることが特別なことではなく、当たり前でなければならないと考えています。ですが同時に、どんな食品を、何を基準に選ぶかは個人の自由な判断だと思います。健康上の制限がある場合を除いて、消費者個人が自分の意思で食べものを選ぶべきですし、消費者にはその権利が確保さなければなりません。消費者の食品を選ぶ権利、その前提となる正しい情報を知る権利、それを保障するのが食品の表示です。

 

日本の食品表示は、おもに、衛生の面で定める「食品衛生法」と品質面にかかわる「農林物資の規格及び品質表示の適正化に関する法律」という長い名称の、いわゆるJAS法という、2つの法律によって規定されています。食の工業化やグローバル化の進行に伴って食品を取り巻く環境が大きく変わるなかで、時に応じて改正を重ねてはきたものの、消費者にとってはまだ不十分といわなければなりません。その問題意識に立って、以下、質問いたします。

 

昨年9月、消費者庁が発足したことにより、食品表示に関することは、国においては厚生労働省から消費者庁に移管されました。生産者・事業者本意で定められてきた表示制度が、今後、消費者本位の制度に見直されることが期待されます。ところで、この移行に伴う区での変更はあるのでしょうか。食品表示にかかわる区の所管は保健所ということになっていますが、消費者センターとの連携もされているはずです。どのようにされているのか、確認になりますがこの項の始めにうかがっておきます。

 

食品表示に対する区民の関心は高まっています。区が昨年発行された「健康都市白書‘08」によれば、「食品衛生について家庭で心がけていること」という項目で「食品を購入するときには、食品表示をよく見ている」と答えた人が、2005年の73.4%から08年には76.5%に上がり、それを裏付けています。

 

ところが内閣府が昨年実施した国民生活モニター調査では、表示を「信頼できる」とした人が43%いたものの、「信頼できない」と答えた人が28%あり、ほかの調査項目の結果からも、現在の表示制度は不十分と考える人の多いことが明らかになっています。偽装表示が相次いでいることも、消費者の信頼感を低下させてしまっています。

 

消費者に身近なところでの、適正に表示されているかどうかのチェックが必要です。適正な表示、消費者が知りたい情報が伝わる表示が求められています。

 

そこで質問です。区は、食品衛生監視指導計画において、食品添加物と並んで食品表示の適正化に向けた取り組みを定めており、先日パブコメに付された計画案では、基本方針の1項目で区内の食品製造施設への監視指導をいっそう強化、とあります。この監視指導活動はだれが、どのように行うのか。そして、もし問題が見つかった場合にはどのように対応するのかうかがいます。

 

区がどんなに指導しても、いまの法律の範囲では消費者の知る権利は保障されていないという現実があります。偽装表示が絶えないことも法の不備に一因があります。また表示を定める法律が複数にまたがっているため、消費者にとって大変わかりにくい仕組みになっています。

 

制度の不備を示す例としてよくあげられるのが、魚の例です。切り身として売られる魚には産地表示が義務づけられているのに、刺身の盛り合わせになると加工食品の扱いとなり表示が不要となる、という具合に、いまの制度は消費者の立場で設計されているとはいえません。

 

加工食品については、昨年、東京都消費生活条例が施行され、都内で販売される調理冷凍食品について原料原産地表示が義務付けられたことで、実質上は全国基準として通用しています。ただし、国内での製造に限られているほか、重量割合で上位3品目かつ5%以上の原材料しか充当しません。冷凍コロッケに入っている牛肉はおそらく該当しないでしょうし、製品として輸入された冷凍ギョーザの原材料は非該当です。

 

対象をすべての加工食品に広げ、原料の生産履歴、いわゆるトレーサビリティ―や原料・原産地の表示を義務化すべきです。また、遺伝子組み換え食品や飼料として使われる遺伝子組み換え穀物、クローン技術によって生産された家畜由来の食品の表示義務化も、多くの消費者が求めているところです。

 

先に引用した国民生活モニター調査では、遺伝子組み換え食品であるかどうかの表示を重要と考える人の割合が02年で62.9%、08年は73.3%となっており、遺伝子組み換え食品に関する注目度が高まっていることがわかります。

 

それは、遺伝子組み換え食品を「選択しない」ために表示を求めていると考えるべきです。そしてクローン食品についての消費者の関心は、おそらく遺伝子組み換え食品より高いと思われます。昨年、体細胞クローン技術で生産された牛を、内閣府の食品安全委員会が「食品として安全である」とする評価を出しましたが、その後受け付けられたパブリックコメントでは「安全性に不安がある」というものが8割以上だったといわれています。

 

専門家集団である食品安全委員会がいくらお墨付きを出しても、食べたくないと思えば消費者は買いません。買わないという選択を可能にするのは、ラベルに書かれている表示です。逆に、積極的に買いたいと思う人の選択を可能にするのもまた、表示です。消費者が自らの意思で買うか買わないかの選択ができるよう、国は食品表示の制度を見直し、加工食品のトレーサビリティ―と原料・原産地の表示、遺伝子組み換え食品と飼料用の遺伝子組み換え穀物、そしてクローン食品の表示を義務付けするべきと考えます。

 

区民の食の安全を守る立場にある区としては、どのようにお考えになるでしょうか。最後の質問として見解をうかがいます。

 

さて、自給率の向上と食の安全の追求が直結するものとして論じられますが、その間には消費者の選択が介在すること、それを可能にするのが表示だということが見落とされがちです。そのとき適正な表示が確保されなければ、国産品を選びたくても選ぶことができません。

 

ですから、表示制度の見直しと食品のトレーサビリティ―が確立されることは、日本の農業・畜産業などの第1次産業を守り食料自給率を高めるためにも不可欠なことなのです。自給率を高めることは一人ひとりの消費行動の結果と考えれば、身近な自治体である区は、区民に対して、食品を選択する主体としての自覚がもてるような教育や啓発に取り組んでいただきたいと思います。以上、要望し質問を終わります。

第1回定例会一般質問 2.16 市橋綾子

私は区議会生活者ネットワークの一員としまして、災害対策について、(1)地域防災計画について(2)災害弱者の防災対策について(3)医療救護所について(4)学校防災林について(5)災害対策基金と減税自治体構想について、質問します。

 

1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災から15年が経ちました。横倒れになった高速道路、根こそぎ倒れたオフィス街のビル、黒煙をあげて燃え続けるまち。今も、あの時の映像が目に焼き付いています。直近ではハイチで大地震が起き、おおぜいの方が犠牲になりました。地震国に住む私たちは、これらの過去の地震から多くのことを学び、地域防災に取り組む必要があります。

 

民主党がマニフェストに掲げた「危機管理庁の創設」は、いまだ議論もされず、今回、国の防災関連予算は大幅にカットされました。地域に暮らす私たちは、国の動きを待つのではなく、既存組織を最大限に活用して、10年以内であれば30%、30年以内であれば70%の確率でおきると言われる首都直下型地震に向けて備えをしていかねばなりません。今日は、点検の意味も込め、阪神・淡路大震災10周年を期に始まった地域づくりやコミュニティ活動を行うNPO、NGOを支援する意味の白いリボンバッジをつけて、質問します。

 

最初に「地域防災計画」について4点伺います。

地域防災計画は災害対策基本法第42条の規定に基づいて、区民の生命、身体および財産を災害から保護することを目的に杉並区防災会議が作成する計画です。2005年の修正から5年が経ち、現在、改定に向けて作業が行われています。今回の見直しのポイントは何か、併せて、地域防災計画を作成する防災会議の構成メンバーについて伺います。私は、以下の質問でも触れてまいりますが、実効性ある計画にしていくためには地域を知る人たち、なかでも女性たちの参加が不可欠と考えております。防災会議はどのような人たちで構成され、男女の構成比はどのようになっているのでしょうか、うかがいます。

 

地域防災計画には区、区民、事業者の責務として、自らの命は自らが守る自助、自分たちのまちは自分たちで守る共助、区の役割としての公助が書かれていますが、具体的にどうすればよいのかを説く内容のものではありません。区民や事業者に自助・共助を呼び掛けるのであれば、具体的に伝える必要があると考えます。区は阪神淡路大震災の翌年、1996年7月に「阪神淡路大震災の教訓を踏まえて」という副題をつけ、「新しい杉並区の震災対策」をつくっておられます。「地震が起きたら」というステージ1から始まり、「避難が必要な時は」「けがをしたら」「災害救援所での生活は」など、10段階のステージを設定し、区民が行うこと、区が行うことが、それぞれわかりやすい言葉で書かれた行動指針です。しかし、現在、区が用意しているパンフレットは、区の責務や法律、条例、条例の理念が紙面の半分を占めていて、市民に必要な情報を伝えきれていません。市民向けにわかりやすいガイドブックが必要だと思いますが、作成される予定はおありでしょうか。伺います。

 

次に被災して住まいをなくした人たちの生活の場となる震災救援所について伺います。震災救援所は、被災状況に応じて区内の小中学校66か所に開設されます。実際に運営していく手掛かりとなる「震災救援所運営マニュアル」は震災救援所ごとに作られるものですが、すでにできているところは何か所か。また、すべての救援所でマニュアルの整備ができる時期はいつになるのか、お示しください。

 

災害が起きたときにもっとも配慮が必要なのは障がい者、高齢者、傷病者、乳幼児・子ども、妊婦、旅行者、日本語が十分ではない外国人などです。そこで、これらの災害弱者の防災対策について6点伺います。

この方がたのことを防災行政では「災害時要援護者」といい、これまでも、当区では災害時要援護者対策に取り組んでおられますが、今回の地域防災計画の改定で、どのような見直しがされたのか、まず伺います。

 

杉並区障害者団体連合会でつくられた「区民のみなさまへ 大地震大災害の時 たすけてください」という小冊子があります。当事者でなければわからない、災害時に想定される問題が列挙され、たいへん参考になります。障がいの種類によって、情報の受け取りや周囲の状況の把握、意思の伝達、移動ができない、トイレも困るなど、バリアが多い状況に加え、周囲の無理解というバリアも立ちはだかります。このように震災救援所での生活が困難な障がい者、介護度の高い高齢者などへの対応が必要と考えますが、区はどういった対策をおもちでしょうか、伺います。

 

国立市では、視覚・聴覚を含む身体障がい、精神障がい、知的障がいをお持ちの方がワーキンググループをつくり、「障がい者が暮らしやすいまちづくり」の提言書を市に提出し、市はこれに基づいた避難支援体制を構築していると聞いています。当区では、障がいをお持ちの方が、災害時にどのような不安を持つのか、当事者の声の聞き取りをされておられるでしょうか。当区においても、当事者のニーズをくみ取ったうえで、避難支援の対応策がとられる必要があると考えますがいかがでしょうか。おたずねします。

災害時要援護者のうち、震災救援所での生活が極めて困難な方に対して、区は第二次救援所を開設するとしています。障がい者団体の方にお話を伺いましたら、第二次救援所となる地域区民センターでの開設は、相手の施設の協力を得なければならないわけで、まだまだ不確定なところがあり、不安がある、とおっしゃっていました。当事者の参加で早期の着手を望みます。

 

以前、私は杉並ボランティア・地域福祉推進センター主催の「災害時高齢者生活支援講習」に参加しました。避難所生活に焦点を当てて、環境に順応しにくい高齢者の不安を軽減する目的で行われているものです。災害が高齢者に及ぼす影響やすぐに役立つ移動、清拭、足浴などの技術を学び、高齢者自身だけでなく、家族にとっても、役立つものでした。この講習会はこれまで何回開かれ、何人の参加者があったのでしょうか。実績を伺います。この講習会はあんさんぶる荻窪を会場に開かれていますが、今後、ゆうゆう館など地域の身近なところで行うとよいと考えますが、いかがかでしょうか。伺います。

 

昨年、私ども生活者ネットワークで、災害時の問題を女性の視点から検証しようと学習会を開きました。阪神淡路大震災の経験をもとに、女性の視点に立って問題提起をしているNPO法人「ウィメンズネットワークこうべ」の代表の方を講師に、これまで報道ではほとんど取り上げられてこなかった問題の数々を知ることができました。そのなかで、耳を疑うような報告がされました。それは避難所などで起きる女性に対する性暴力のことです。4000人以上が収容されていた学校の体育館で、通路側に寝ていた子どもや女性たちが、また、自宅のトイレに帰った女性が性被害にあったなど、今でもその心的後遺症に悩む女性は多くいるそうです。地震後に開設した相談所には、このような被害や相談が寄せられていたものの、公的機関や警察は一切そのことを認めようとはしなかったといいます。

2005年に起きたスマトラ沖地震でも同じような性被害にあったスリランカの女性たちが、国連の場で実情を訴えた記事を見て、災害時にはどこででも同じようなことが起こりえる、と確信をもったといいます。その後、「災害と女性」をテーマにフォーラムを開催し、そこでのアピール文のなかで、
・防災や復興の諸事業には責任者として女性を登用する

・避難所での女性、乳幼児を抱える人への配慮や相談窓口を設置する
・その他マイノリティー女性のニーズに応じた支援を行う
など、参加者の声をまとめています。
学習会では、東京の人たちに、自分たちが経験し、そこから見えてきた課題や対策を伝えたいと、「避難所は2,000人が限界、防災計画ではどうなっていますか?トイレは安全で明るいところにありますか?男女別トイレになっていますか?避難所に女性の責任者がいますか?」などの問いかけがありました。

その後の新潟県中越沖地震で、国は初めて女性職員を現地に派遣し、避難所では全く女性への配慮がないことが指摘されて、ようやく女性の視点に立った防災計画の見直しが言われるようになりました。

 

そこで女性特有の問題に関連して2点伺います。震災救援所を円滑に運営していくには、区民、学校、区の連携が必要だとして「震災救援所運営連絡会」が設立され、今年で、5年目になります。震災救援所運営連絡会での女性の参画の実態はどのようになっているのでしょうか。お答えください。

 

震災救援所の設営には、女性固有の問題が配慮される必要があります。生理用品の置き場、トイレの設営の仕方、着替えや授乳などの間仕切りなど女性の視点で震災救援所づくりがされることの重要性が認識されるべきです。そのためには女性の地域防災リーダーの育成が必要で、なかでも若い世代の参加を意識的に働き掛けていくことが必要と思いますがいかがでしょうか。おたずねします。例えば、震災救援所となる学校の保護者等に参加を積極的に呼びかけるなど、工夫されるよう要望します。

 

医療救護所について2点伺います。

当区では、66か所の震災救援所のうち15か所で震災に応じて医師、歯科医師、接骨師、薬剤師といった医療関係者による医療救護所が開設されます。医療救護所に備蓄される医療品はだれがどのようにして決めるのでしょうか。お尋ねします。

また、点検については、日付による入れ替え作業だけではなく、その時々に応じた医薬品の見直しが必要だと考えますがいかがでしょうか。うかがいます。

 

昨年、災害対策特別委員会で立川にある独立行政法人国立病院機構災害医療センターを視察しました。このセンターには、大規模災害現場を経験した医療関係者とあらゆる事例のデータが集められており、私たちの経験や情報を使ってほしい、と担当の方がおっしゃっていました。当区でも災害医療センターの機能を有効に活用すべきと考えますが、いかがでしょうか。伺います。

 

次に学校防災林についてです。

その前に、杉並のみどりの減少の問題に触れなければなりません。杉並の緑被率は前回の調査から約1ポイントアップして、21.84%となったことが昨年報告されました。しかし、現実では、屋敷林や農地は減る一方です。先日、山田区長のやり残したいくつかの仕事の中に緑をふやすことができなかった、というものがありました。私もなんとかして緑を増やすことができないかと、思いつくたびに担当部署に提案するのですが、却下され続けているのが現状です。熱心に公園の花壇や植栽の世話をしている市民団体が、公園敷地生えた実生、種から芽を出したものですが、この実生の苗木を育てようとしても、切るか抜くかと選択を迫られ、移植したいと区に問い合わせれば「植えるところはありません」との返事が返ってくる、と嘆いていました。そのようななか、今年に入って、小学校の校庭に子どもたちと実生の苗木を植えることが叶いました。そこで、学校の敷地に火に強い木を防災林として植えるというのはいかがでしょうか。震災救援所になる小中学校の敷地の周囲にできるところから防災林の視点で植樹をする提案です。

 

そこで、まず、防火樹林帯について1点伺います。区内の防災公園の周囲に防火樹林帯が設けられていますが、この防火樹林帯の効用をどのように認識しておられるのでしょうか。防火樹林帯に期待するものは何かお答えください。

 

震災救援所となる小中学校は燃えないことが第一です。そのためには学校の敷地周囲に樹木を配置し、防火樹林帯を形成することが、万一の場合、延焼を防ぐ一つの方策と考えます。これまで、区内の小中学校に、防災林の機能を持たせた植樹があるでしょうか。伺います。

 

阪神淡路大震災では神戸市長田区のクスノキが地域を延焼から守ったというニュースがありました。この杉並においても和泉2丁目に、江戸の大火から村を守ったといわれる大きなケヤキがあります。また、お隣りの練馬区立大泉中学校では総務省消防庁の「学校防災緑化整備事業」に取り組み、震災救援所となる学校の敷地周囲に木を植え、防火機能の向上を図っています。当区において学校の敷地に学校防災林という位置付けで植樹を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。その際の課題は何か、併せて伺います。

 

最後の項目です。減税自治体構想については予算特別委員会での審議が予定されていますので、ここでは災害対策基金との関係について4点おたずねします。

これまで区は災害対策基金を積み立てきました。この基金の目的と、今回、廃止とされる理由、1964年から積み立ててきた基金の残高はいかほどか、現金、債券、預金など、どのような形で、また、どういう割合で存在しているのかおたずねします。

 

減税自治体構想では、大規模災害の時には積立てた基金を取り崩して復興のために使う、としています。それでは、災害対策基金が廃止になったあと、小規模災害が起きた場合には、どこからの財源を充てるのかお示しください。

 

減税自治体構想では、積立金を運用していくとしています。しかし、万一の大規模災害時には、まず現金が必要となるのではないでしょうか。現金化ができる運用方法を考える必要があると思いますが、どのような運用を考えておられるのでしょうか、お尋ねいたします。

 

以上、災害対策について伺ってきました。昨年5月、セシオン杉並で行われた防災講演会で、神戸市長田区野田北部まちづくり協議会事務局長の河合節ニさんから、「みなさん、まずは自助・共助です。公務員も被災者になるから公助を求めてもだめ。その時、長と名がつく人、つまり組織を引っ張る人は生き延びる責任があります」というメッセージが贈られました。印象に残ったのは、長が逃げ出した地区、亡くなった地区は、今でも立ち直れない部分を抱えているとおっしゃったことです。まずは生き延びるための備えをする。生きていたら隣近所と助け合えばなんとかなる、という講演内容で、私も結局はここに尽きると考えます。このことを日常生活への教訓と捉えるとともに、自治体としての災害対策の充実を願って、私の質問を終わります。

 

 

2009年第4回定例会  一般質問と答弁

                                11.24 小松久子

[高齢者の住まいについて]

【Q】 ● 国の住宅政策が「量から質へ」「市場重視・ストック重視」へと転換し、区のマスタープランも改定された。この政策転換の意図することは、「住宅は、量的には充足されたので、今後は、民間により、質のよい住宅が供給され、長い期間使用する」との考えだと思うがいかがか。よいとすれば、この政策転換に伴って区に求められる新たな役割はどのようなことか。

【A】  国の住宅政策の転換について、その意図することは、住宅のストックが世帯数を上回り、量的には充足しているため、今後は質の高い住宅が、民間住宅市場において供給されるべきであるとの考えである。

     また、区に求められる役割は、住宅市場において自力で住宅を確保できない方々にとっての住宅セーフティネット機能を高めていくことと考えている。

 

【Q】 ● 区内のひとり暮らし高齢者数と高齢者のみ世帯の人数の推移と今後の予測をうかがう。

    ● 一般的にひとり暮らし高齢者は、男性よりも女性のほうが多く、しかも低所得といえる。当区においてはいかがか。また、今後、女性の高齢者の貧困問題はさらに深刻度を増し、住宅政策に大きく影響していくと予測されるが、区の認識はいかがか。

【A】  ひとり暮らし高齢者は、平成21年18,182人、高齢者のみの世帯の人数は、21年28,558人と推計していますが、今後とも、高齢化や核家族化の進展に伴い、更に増加していくものと考えている。

     ひとり暮らしの高齢者の女性の割合は、男性に対し、女性が約2倍となっている。所得については、一年間の収入が150万円に満たない人は、男性の21.1%に対し、女性は36.3%という高い割合になっている。

     また、このような女性の高齢者の経済的問題が及ぼす住宅政策への影響については、先のひとり暮らし高齢者に対する調査では、女性は比較的早くから各種の制度や福祉サービスを利用しており、むしろ男性の方が閉じこもりがちで多様かつ深刻な課題を抱えながら暮らしている方もいらっしゃるという傾向が認められた。もちろん、経済的な問題も安定した生活を送るためには極めて重要なので、低所得の女性高齢者が抱える課題については、住宅に関する問題も含め、早期に把握して、適切なサービスに結び付けられるよう努めたい。

 

【Q】 ● 既存の民間の共同住宅を借り上げ、高齢者向けに改良して、貸与することなども含めて、高齢者住宅の増設を図るべきと考えるがいかがか。

【A】  区では、今年度から区営住宅の募集に際して、高齢者が入居しやすくするため専用枠を設けている。

     また、今後、都営住宅の移管受け入れに際しては、都営シルバーピアを優先的に受け入れることとしており、既存ストックを有効に活用して対応していきたい。

 

【Q】 ● 高齢者の持ち家率は高いといっても民間の共同住宅に住む高齢者は多い。バリアフリー化などのハード面、ケアする支援者あるいは見守る人の存在などソフト面の双方に渡り課題を抱えている場合が多いが、バリアフリー化についてどのように促進していくのか。

【A】  区では、住宅のバリアフリー化を希望する方々などに、週2回、すまいの住宅相談を開催し、専門家による助言など、住宅改修に関する支援を行っている。また、実際にバリアフリー工事を行う際の改修資金を調達しやすくするために、住宅改修資金の融資あっせんを行うなど、民間住宅のバリアフリー化の促進を図っている。

 

【Q】 ● 住宅課で実施している民間アパート居住者を対象とした見守りサービスはとのような仕組みか。

【A】  この制度は、高齢者等入居支援事業の一環として実施しており、申し込みをいただいた方に、週1回の電話による安否確認を行い、また必要に応じて通院介助等を行うもの。現在、NPO法人に委託して実施している。

 

【Q】 ● 東京都は高齢者のすまい方検討会で、管理組合や自治会代表者などを「高齢者住宅支援員」として普及させていきたいとしているが、区としてどのように取り組んでいくのか 。

【A】  東京都では、集合住宅の管理人や管理組合の代表者等を対象に、年2回の研修会を実施している。区では、この研修会について、地域包括支援センターを通じて、区民の方々に周知を図っているが、区としては、これとは別に、区独自に進めている見守り協力員の充実や普及に重点的に取り組むことにより、これらの課題に対応していきたい。

 

【Q】 ● アパートのあっせんや家賃滞納者には経済的助成や支援を行う仕組みが整備されているが、あまり活用されていないようだが、なぜか。

【A】  アパートのあっせん事業、家賃債務保証事業とも、平成20年4月から、対象者をこれまでの高齢者のみから、ひとり親家庭、障害者世帯など、対象者を拡充して実施している。 アパートのあっせん事業における成立件数は、平成18年度には36件だったが、平成20年度には48件と伸びている。 また、家賃債務保証事業については、平成18年度には6件だったが、平成20年度には22件と増加している。今後とも一層の周知を図るとともに、住宅に困窮する区民にとって、より利用しやすい制度となるように努める。

 

【Q】 ● 「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行され、高齢者向けの住宅が多種多様になった。選択の幅は広がったが、違いが分かりにくい。利用者にとって、わかりやすい内容の情報提供が必要であると考える。都で作成するパンフレットなどを地域包括支援センターをはじめ、ゆうゆう館など、多くの場での情報提供が望まれる。また、「高齢者のためのすまいフェア」や個別相談会を開催するなど啓発に努めるべきと考えるがいかがか。 

【A】  イベント等の開催は、現時点では考えていないが、ご指摘のとおり、高齢者を対象とした様々な住宅の制度があるので、区として、その制度概要や利用案内などを分かりやすくお知らせしたいと考える。

     なお、パンフレット等の利用案内などは、今後、高齢者が利用する施設に、可能な範囲で備えおくように努める。

 

【Q】 ● 高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅などを区内に誘致すべきではないか。

【A】  区の住宅施策の基本は、民間の住宅市場において自力で住宅を確保できない方々に対して、住宅セーフティネット機能を果たしていくことであると考えている。そこで、高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅については、供給者である民間事業者に対して、制度の周知に努めていく。

 

【Q】 ● 小規模多機能型施設整備を今後進めていくにあたり、高専賃との融合型施設とすることなどを検討すべきと考

えるが、いかがか。

【A】  小規模多機能型居宅介護は、単独で運営することはなかなか困難な状況であるため、区内では、これまでも認知症高齢者グループホームやショートステイ、デイサービスなど他の施設と併設する都市型多機能拠点として整備を進めてきている。ご指摘の高専賃についても、今後、都市型多機能拠点の選択肢の一つとなりうるものと考えている。

 

【Q】 ● 住宅マスタープランでは、東京都にシルバーピアの設置を呼びかけて増設を図るとしており、ぜひ進めていただきたいが見通しはいかがか。 

【A】  区ではかねてから東京都に対し、都営住宅の建替えに際しては、シルバーピアを併設するように求めてきた。

    最近の杉並区内での設置状況は、平成20年8月にシルバーピア荻窪、平成21年6月にシルバーピア高井戸西14号棟が開設されている。今後とも、区内の都営住宅の建替えに際しては、都区間で協議を行うこととなっているので、シルバーピアの併設を強く要請していく。

 

【Q】 ● 社会福祉協議会が受付窓口になっている、リバースモーゲージの制度である「長期生活支援資金貸付制度」は、この10月に制度の見直しがされたときくが、その内容を伺う。あわせて、当区におけるこれまでの活用状況と、活用の少なかった原因を伺う。

         この制度はもっと普及してしかるべきと考えるが、当事者や地域包括支援センターや民生委員など高齢者にかかわる人々への知名度が低く理解も不足している。もっと周知に力を入れるべきではないか。

【A】  この制度の本年10月の変更点は、「不動産担保型生活資金」に名称を変更したことと借受人の死亡などによる契約終了時の償還の据え置き期間を3ヶ月としたこと。また、これまでの杉並区での貸付実績は、平成15年に開始して以来、現在まで契約終了分も含め11件となっている。

     貸付に至らない原因としては、一戸建ての住宅が対象であることや推定相続人の同意、連帯保証人の確保といった貸付の要件を満たせない方が多いことがあげられる。この制度の周知については、パンフレット等を地域包括支援センターに送付し窓口で配布していただいているほか、民生児童委員協議会でも制度の案内などを行っている。今後とも、様々な機会をとらえて、制度の周知につとめていきたい。

 

【Q】 ● 高齢者や障害者、ひとり親世帯など社会的弱者に対象を特化して、すまいのあり方を検討し、区としての基本政策を定めるべきと考える。「スペシャル住宅マスタープラン」とでもいうべき政策を当事者や介護ボランティア、NPO関係者を交え、議論して作成したらどうかと考えるが見解はいかがか。

         高齢者が、在宅でも、介護度が進むなどの、ライフステージが変わったときに住み替えができ、心身ともに健康に暮らせるための仕組みをNPOを含めた民間との連携で整備することが求められる。区の見解を伺う。

【A】  これまで杉並区住宅マスタープランは、住宅をとりまく環境の変化に応じて、3次にわたり改定を重ねてきた。その度に、高齢者や障害者などに配慮した施策を盛り込み実施してきた。今後、杉並区における高齢者のすまいのあり方については、「高齢者の居住の安定確保の関する法律」の改正も踏まえ、また、ライフステージに沿ったすまいの仕組みづくりも視野に入れて、高齢者福祉部門とともに検討していく。

 

 

[低炭素社会に向けた区の政策について]

 

【Q】 ● 現在の環境基本計画の総括について、審議会ではどのような議論がなされ、区としてどのように捉えているか。特    に「4つの挑戦」のうちの一つ、CO2削減目標について、区の取り組み総括を伺う。

         地域省エネ行動計画の総括について、「地球を救え、すぎなみ省エネ作戦」の6つの作戦それぞれについて、達成できたこと、できなかったことなどを評価し、改定に活かすことが重要であると考えるがいかがか。

         かつて、議会答弁では、環境基本計画改定では、できる限り数値目標を具体的に提示していきたいとのことだった。CO2削減目標値を定めることは不可欠と思う。見直しにおける数値目標を伺う。

【A】  環境基本計画の改定について、環境清掃審議会では、杉並区の将来像や施策のあり方、達成目標の到達度など、さまざまな観点から審議いただいている。区としても、審議会のご意見とともに、国の動向や区の将来を見据え、時代の変化に対応した施策を展開していくため、必要な見直しを進めることが重要と考える。

     また、CO2の削減目標については、これまで、区立学校のエコスクール化や家庭における省エネ対策の普及、緑化対策など、さまざまな施策を講じているが、削減目標の達成は、現実的には厳しいものと考える。

     地域省エネ行動計画についても、環境基本計画と同様に、具体的な施策の取組み状況や達成度を踏まえ、適切に対処している。改定におけるCO2の削減目標数値については、環境政策を進める上の一つの指標として、そのあり方を検討しているところである。

 

【Q】 ● 太陽光発電、太陽熱利用、高効率給湯器の設置助成事業の実績の推移と区の評価をうかがう。

【A】  太陽光発電機器については、平成15年度から助成を開始しているが、直近3ヵ年の実績では平成18年度が67件、19年度が74件、20年度が72件となっており、今年度の助成予定件数の138件を加え、7年間の合計で、

470件となっている。

太陽熱利用機器及び高効率給湯器の助成は、今年度から実施しているが、太陽熱利用機器が2件、高効率給湯器が137件。区では、区民の環境に対する意識や関心の高さが、こうした助成実績に繋がっていると考えている。

 

【Q】 ● 省エネ住宅の普及にもっと力を入れるべきで、住宅の省エネ診断を建築、建設、電気、ガスなどの事業者や環境活動NPOの協力で実施されてはいかがか。その際、事業者に対する啓発の意味も含め、耐震、バリアフリー、緑化、雨水利用など省エネ以外の住宅アドバイスと連携して行ってはいかがか。

【A】  区では、現在、環境団体であるNPOの協力により、家庭における省エネ相談を定期的に実施しており、住宅の省エネ診断や身近な緑化対策、雨水利用など、幅広く区民の相談に応じている。今後とも、相談実績や区民からの要望などを踏まえ、当該環境団体とも協議しながら、相談業務の充実に努めていきたい。

 

【Q】 ● 合成洗剤に比べて環境負荷の点から優れている石けんを広く区民に周知するため、環境基本計画などに石けんの利用を盛り込むべきと考えるが、見解を伺う。

【A】  石けんは、ご指摘のとおり合成洗剤に比較して水中における界面活性剤成分の分解性が高く、環境にも良いとされている。また近年では、合成洗剤についても研究が進み、同成分の分解性が向上していると認識している。     今後とも区民の健康と環境を守るため、石けんに限らず環境負荷の少ない洗剤の使用を推奨していきたい。

 

【Q】 ● 学校給食調理場で使用する食器洗浄剤の選択はどのような考えで行っているのか。

       石けんを使用するモデル実施を検討すべきではないか。

【A】  石けんについては、低温の水では石けんカスが生じやすく、その除去等が必要になり、水質汚濁を防止し十分な洗浄効果をあげるために大量のお湯を使うこと等の問題がある。これに比べて合成洗剤は、水に溶けやすく、石けんよりも少量で十分な洗浄効果をあげられる。このため当区では、石けんと合成洗剤について、環境への影響や作業面に対する配慮、経済性などを総合的に比較・検討して、現在、法令で規制されている有害物質を含まない天然植物から作られた合成洗剤を使用している。このため現時点でモデル実施については考えていない。

 

 

 

 

2009年第3回定例会一般質問と答弁

                                                            09 9.11小松久子

[幼保一元化の取り組みについて]

【Q】 ● 平成25年度までは保育需要の増加が見込まれているが、その後の傾向をどう予測しているのか。

         区内に開設されている認定こども園の取り組みに対する区の評価はいかがか。

         発達障がい児への支援に関するこれまでの成果をふまえ、他の保育施設においても発達障がい児への配慮がさらに強化されるべきと思うがいかがか。

【A】  平成25年度以降、就学前人口は減少に転じると推測しています。保育需要については、社会経済状況や国の少子化対策などにより大きく左右される可能性はありますが、基本的には、引き続き増加傾向が続くのではないかと考えます。

     次に、認定子ども園の評価ですが、それぞれ、私学の独自性を活かした、特色のある保育を行っていると認識しています。

     次に、発達障がい児の配慮ですが、これまでも幼稚園、保育園などの保育施設で、介助員などの配置を始め、子どもの発達状況に応じた適切な対応を行ってきたところです。今後も引き続き、そのように対応していきたいと思います。

 

【Q】 ● 当区における幼児を取り巻く状況やその問題点、また幼児を持つ家庭の幼児教育ニーズ、保育ニーズをどうとらえているのか。

【A】  区内の幼稚園が区立・私立とも長く定員割れの状況が続いている一方、昨年来の経済危機の影響により保育需要が急増しており、とりわけ3歳児からの保育の受け皿づくりが急務となっています。また、保育時間の延長を望む幼稚園児の保護者や、十分な幼児教育の実施を求める保護者が多くなるなど、幼児の育成環境に対する保護者のニーズは大きく変化していると考えます。

 

【Q】 ● 幼保一元化について、当区ではどのように議論がされてきたのか。今回の「子供園」新設方針が出された経緯について伺う。

         認定こども園制度がさほど進んでいない原因は何か。

         今回の「子供園」は、なぜ認定こども園の幼稚園型に近いものとしたのか。

【A】  この度の区立幼稚園の改革方針(案)の経緯ですが、昨年実施した杉並改革総点検結果に基づき、本年1月に検討会を設置し、今般の保育ニーズの急増等の環境の変化を踏まえ、改革方針案を策定したものです。

     次に、現在、認定こども園の制度は、開設に伴う申請手続きが煩雑であることや国の財政支援が限定的であることなどが問題と指摘されており、設置数が伸び悩んでいると考えます。

     また、今回の改革は、国の認定こども園制度の枠組みにとらわれず、区独自の育成プログラムにより幼児教育や保育を融合させ一体的に実施するなど、基礎自治体としての独自性を発揮した新たな幼保一体化施設を創設するものです。

 

【Q】 ● 定員充足率の高い区立幼稚園では、子供園への転換に伴い、幼稚園への入園を希望しているのに入れない家庭が生じるのではないか。

         小学校で30人程度学級を進めているのに、1クラス32名というのは多すぎる。施設の物理的限界で2クラスが無理なら、担任を増やすなどの対応が必要ではないか。

         入園希望が定員を超えた場合、だれが、どのような基準で選考するのか。

         公立の施設であるなら、障害児の入園について今後も継続していくのか。

【A】  今回の改革は、区の幼児施設を取り巻く環境の変化に適切に対応しようとするものです。区では、今回の改革方針案に対する区民等の意見を受け、定員枠の拡大や必要な経過措置を講じる必要があると考えますが、あわせて改革の趣旨をご理解いただけるように引き続き努めます。

     実施体制については、これまでの幼稚園教諭に加え、保育士も配置し、充実した運営が図られるよう工夫していきます。

     また、入園希望が定員を超えた場合、コアタイムの枠についてはこれまでの幼稚園と同様に抽選を考えていますが、長時間保育の枠については、保育を必要とする状況などを考慮して区で選考をします。

     なお、障害のあるお子さんは、これまでどおり受け入れる考えです。

 

【Q】 ● 地域の子育て支援事業を展開するとされるが、どのような事業を想定しているか。

         当面、給食サービスがないということだが、今後の給食実施の見通しはいかがか。

         子供園は新しい施策であり、区が責任をもって就学前教育に取り組むのであるから、区の直営とすべきだがいかがか。

【A】  子供園では、保護者対象の子育て相談のほか、保護者同士の交流事業、ボランティアの協力も得て行う行事など、積極的な子育て支援に取り組んでいきます。

     また、給食の実施については、施設改修などを伴うことから将来的な課題であると考えますが、子供園への転換後の運営状況などをみて検討していきます。

     なお、子供園は区が直接運営していきます。

 

【Q】 ● 就学前の教育を充実させる必要性が高まっているとのことだが、今の幼児教育の何が問題なのか。

         本区における「小1プロブレム」の実態をうかがう。

         また、幼稚園から小学校への接続について教員同士の交流のみならず、小学校側の段階的な学習の場の整備やカリキュラムの見直しなどが必要と考えるが、いかがか。

【A】  はじめに、幼児教育の課題ですが、一般的に幼児の基本的な生活習慣や自制心、コミュニケーション能力などの定着の遅れが指摘されています。

     次に、「小1プロブレム」に関しては、30人程度学級の導入もあり、今年度の小学校1年生については、学級組織や授業が成り立たないという報告はありません。

     最後に、幼稚園との円滑な接続にかかわる小学校側の取組みについては、入学前の園児に対する学校行事の交流や体験入学等の機会を設けるとともに、入学後は、集団生活への適応に重きを置きながら、児童が段階的に学校生活に適応できる工夫を行っています。

 

 [教科書採択について]

【Q】 ● 今回の採択にあたり、教育委員会に寄せられた区民からの要望書等について、内容と件数を示せ。また、歴史と公民における「つくる会」の教科書を採択しないでほしいという内容が突出して多かったのではないか。

    ● そうした区民要望等は重く受け止められるべきであるが、8月12日の教育委員会では、どのような議論があったのか。

【A】  採択当日までに寄せられた要望書等については、いわゆる「つくる会」教科書の採択に反対するものが73件、同教科書の採択を求めるものが32件、日本人として誇りの持てる教科書の採択を願うとするものが30件、その他教育委員に関するもの等が5件ありました。これらの要望書については、各委員にすべて写しを配布しています。

     各委員は、これらの内容を把握した上で、採択審議に臨んでいます。

 

【Q】 ● 4年前の採択の後、区民や教員に対して歴史教科書への意見を求めるべきであったが、今後の教育委員会の対応を伺う。

         教科書調査委員会や種目別調査部会の調査・研究や、展示会での区民アンケートの取り扱いなど、採択に至るまでのすべての過程において公明正大な手続きが行われたのか。

         歴史教科書採択の白紙撤回を求めるが、一旦採択された後、どのような場合に採択のやり直しをすることになるのか。 

【A】  採択の際には学校調査等により、調査・研究結果を求めており、今後も手続きに則り適切に対応していきます。

     次に、採択に至るまでの手続きは、規則、要綱、手続きに則り、適正かつ公正に行われています。

     また、採択のやり直しは、教科用図書発行者が文部科学大臣の指定を取り消された場合等に行うこととされています。

 

 [地域図書館の外部委託・民営化について]

【Q】 ● 当区の地域図書館の外部委託・民営化はどのように進められてきたか、また、これをどのように評価するか。

    ● 今後の地域図書館の運営について方針が発表されたが、この決定に至る経緯はどのようなものだったのか、伺う。

【A】  外部委託・民営化の進め方は、図書館運営の効率化、図書館サービスの向上を図ることを目的に、行財政改革実施プランのもとで、図書館協議会にも諮り、「民との協働で、個性ある図書館づくり」の基本方針の策定を行い、取組みを進めてきました。

     次に、評価ですが、サービス水準を低下させることなく、コストの大幅削減を実現し、創意工夫に基づいた事業ができていると判断します。

     決定の経緯については、地域図書館が直営、指定管理者、業務委託の3つの運営形態となっていることから、昨年度の杉並改革総点検結果に基づき、図書館経営評価の結果を踏まえ改めて検証し、定めたものです。

 

【Q】 ● 今回の方針の凍結と再検討を求める区民の運動が展開されているが、区は把握しているか。

         図書館協議会に対して、地域図書館の運営方針について諮られたものと思うが、どのような議論がされたのか。

         事業者は人件費を圧縮し、結果として人材確保や育成がおろかになる。一方、図書館事業を手放した行政は、今後、経験や知識を蓄積していくことができなくなる。国会でも昨年「公共図書館への指定管理者制度の導入はなじまない」と文部科学大臣が発言し、「指定管理者制度の導入による弊害」について配慮すべきという認識が示されている。これらについて区に見解を伺う。

         2年以内に全地域館に指定管理を進めることは稚拙であり、現在の運営状況を今しばらく見守ってからでも遅くないと考えるが、区の見解はいかがか。

【A】  区民の運動は承知しています。

    次に、図書館協議会における議論は、7月に開催した同協議会に方針について報告しました。決定のあり方、今後の対応などの議論がおこなわれたところです。

    次に、国会での付帯決議等ですが、指定管理者制度の導入に当たっては、慎重を期し、適切な管理体制を築くなど、制度の適切な推進を図るようにとの趣旨と受け止めています。文部科学大臣の発言についても、同様の趣旨と受け止めています。

    全地域図書館の指定管理化は、平成17年度から取り組みを進め、既に地域図書館の半数が業務委託及び指定管理者の運営となり、運営の効率化とサービスの向上が図られているという経営評価があるので、今回の方針に基づき、着実に進めていきます。

 

【Q】 ● 図書館ホームページに載っている「基本方針」は、いつ、どこで決定されたものか伺う。

         「基本方針」からは、高い志のメッセージや社会教育を担う公的施設であるという基本コンセプトが伝わってこない。理念を掲げることがあっても良いのではないか、伺う。

         今後、なんらかの理念的指針を策定されてはいかがか。 

【A】  この方針は、平成17年度に中央図書館として決定したものです。

    基本方針では、社会教育法や図書館法が掲げる理念を踏まえ、「民との協働で個性ある図書館づくり」と「生涯現役の地域社会を支える図書館づくり」の2つを基本的なコンセプトとして定めており、新たな理念的指針を策定する考えはありません。 

 

 

特別委員会 自治基本条例・意見提出手続き条例 意見

                                                                         09.12.7
小松 久子

 

区議会生活者ネットワークとして2議案に賛成の立場から、そして今後もさらに杉並区の「自治」が発展していくことを願って、以下、要望、感想をふくめ意見を述べます。

 

2000年の地方分権一括法制定いらい、「地方自治体の『自治』のありようを法的に定めることがわが区でも必要」と訴えていた生活者ネットワークにとって、2002年の杉並区自治基本条例の制定はまさに望んでいたことでした。当時まだ全国でも数例のみ、23区では最初の事例ということでしたが、その後の7年間に自治基本条例制定の動きは全国大小の自治体に広がり、現在に至っています。

 

この流れをつくったといわれる北海道ニセコ町の「ニセコ町まちづくり基本条例」のように、名称に「自治」の文言こそないものの明確に「自治」の理念をうたっているものを含めると、その数は現在180以上になります。いま「自治」という言葉も自治についての条例も珍しくなくなった状況にあって、杉並区が制定後初めての見直しということで、改めてこの条例についての議論を深める機会を持てたことは歓迎すべきものと受けとめております。

 

会派として、この条例改正に前向きにかかわっていこうという考えのもと、私は昨年の第1回定例会の一般質問でとりあげ、その後議会内に設置された見直し検討会にも委員として参加させていただきました。これらの折には、小平市での行政主導型でない、公募市民主体による条例づくりの例などをあげて、検討のプロセスの段階から市民参加の場を設置していただきたいこと、また条例のどの部分を改正するのかについても区民の意見を聞いていただきたいこと、などを主張してまいりました。

 

しかしこの間、市民参加といえるのは唯一、921日から1020日まで行われたパブリックコメントのみで、区が提示された4項目以外の部分は見直し対象から外されたかっこうでした。ほかならぬ「自治」を論じる条例について区民が制定にかかわるせっかくのチャンスだったのに、と思うと率直なところ残念です。

 

パブコメに応じて寄せられた意見が5件のみというのも、少ないことを嘆くより、区民に議論を促す仕掛けや区民意見をできるだけ引き出そうとする区の努力が十分とはいえなかったのでは、と思わずにいられません。

 

提案されている「意見提出手続き条例」には、第6条に「提出意見を考慮しなければならない」、また7条に「その結果を公表しなければならない」とあります。そのような内容の条例なのですから、今回は他の条例以上に、どのような意見が出されたのかは議案審査のうえで重要な参考資料となります。本日会議の初めに、出された区民意見の資料が席上配布されましたが、前もって情報提供していただきたかったと思います。

 

意見を寄せてこられた区民にとっては、パブコメに付された時点で条文は公表されていませんでしたから、限られた範囲においてのみ、意見を求められたことになります。とくに「意見提出手続き条例」は新設の条例ですから、この内容に関して議会は区民意見を参考にすることもなくこれから可否を決定することになり、この条例の性格からしてはたして適当か、疑問の残るところです。

 

先ほどの質疑で、自治基本条例に新たに加えることとされた災害対策と危機管理の項目について触れました。人権、環境権などの文言が自治条例の項目として検討されてもよかったのでは、とうかがいました。区民に問いを投げかければもっとさまざまな価値観や理念が提案され、議論を深めることができたろうと思います。

 

たとえば「平和」「自由」などの文言が前文に加えられてもよいのではないか。先ほどの質疑で「区民等」の定義として、「区内でボランティアや市民活動を担う人」もひろく入る、という考えが示されたことを歓迎いたしますが、であればそのように明記されてもよかったのでは、と思いますし、また国連の「子どもの権利条約」にもとづき「子どもの参画」をこの際明記すべきではないのか。さらに「地域自治」ということについて、この機会に区の考えを整理し条例に盛り込むべきだったのでは、など、いま思いつくだけでも挙げることができます。次回の改正に向けての課題としていただきたいと思います。

 

「協働」の定義に関連して先ほどもうかがいましたが、比較的新しい概念であるだけに、これまでにも何度もこの言葉について区の見解をただしてまいりました。そのときどきのご答弁のたびに、区は「協働」という言葉を場面によって別の意味で使っておられる、という感を強くしています。

 

昨年第1定の一般質問での「指定管理や民託も協働になりうる」とのご答弁には驚きましたが、であれば区の最高位に位置づく「自治基本条例」第2条に定めている定義、「地域社会の課題の解決を図るため、それぞれの自覚と責任の下に、その立場や特性を尊重し、協力して取り組むこと」という趣旨に照らし合わせて、指定管理や民間委託の実態を調査・検証する必要がありますし、それとともに「協働」の概念と実態を再精査し、その運用についての再構築が必要と考えます。

 

市民参加条例の制定については考えておられないようですが、パブコメに付される政策等は限定的であり、指定された範囲での意見提出だけでは区政への市民参画は不十分と考えます。

 

附属機関等への市民枠の設置は広がってはいますが、選任のしかたが不透明であることは改善されるべきです。以前、公募枠を超える応募者があった場合にはくじ引きを、と提案いたしました。かつてそのような例があったと聞いていますが、もっとも公平でわかりやすい選出方法だと思います。すべてにとは申しません。ご検討ください。

 

条例制定後の普及啓発について、ツールに工夫をと提案いたしました。他方、条例の使われ方、すなわち自治が根付いていっているか、広がり浸透しているかについて、検証することが今後は必要です。公募委員の数や提出意見の数といった量的な側面だけでなく、質を問うことが求められています。区にはぜひ研究を深めていただきたいと思いますし、議会サイドとしてもその力を磨いていかなければと思います。

 

議会に関する事項を定めた第6章については、検討委員会で議論を積み重ね合意した結果として条文が改正されていますが、ちょうど自治基本条例の中から意見提出手続きに関する部分を取り出して条例化がされるように、議会基本条例の制定が今後の課題であると考えます。議会改革検討調査部会における前向きな取り組みがなされるよう期待するところです。

 

以上、さまざま述べてまいりましたが、これら二つの条例は額に納めて飾っておくためのものではありません。「新しい公共」を実践するにあたってのテキストであり、使い慣れ、使いこなしてゆくなかで、民主主義における「自治」を育てていくための道具となるべき条例なのだと考えています。この改正を機に、杉並区における自治が深く根を張っていくよう、生活者ネットワークも力を尽くしていく決意であることを申し上げ、会派の意見といたします。

第4回定例会一般質問      09.11.24 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、高齢者のすまいについて、低炭素社会をめざす区の政策について、石けんの使用について、以上3点質問いたします。

 

《高齢者のすまいについて》

 

ここでいう「すまい」は、介護や医療を主とした施設ではなく、高齢者世帯の、「在宅」としての「住まうところ」のことです。

 

すまいの問題といえば、思い出すのは昨年暮れ、日比谷公園に出現した派遣村です。あの事件が突きつけたのは、仕事を失うと同時にすまいを失う人があまりにも多いこと、ところがすまいを失うと職につけないこと、それが人の生存権を脅かすという事実でした。住まうということ、住まい方は生活の基本であり、人の尊厳にかかわる問題だということにも気付かされました。

 

また、今年3月に群馬県渋川市の有料老人ホーム「たまゆら」で起きた火災事故は、すまいと身寄りのない高齢者が、貧しい福祉政策の犠牲となって、都心から目の届かない劣悪な住環境に追いやられている問題を提起しました。

 

高齢者だけの世帯が増えているいま、地域に暮らす高齢者にとってのすまいをめぐる問題が増大しつつある現実に目を向け、これを改善していきたいという思いから、以下、質問いたします。

 

はじめに、前提となる一般的な住宅政策について確認します。2006年、住生活基本法の制定により、それまで住宅を建設することがすなわち住宅政策とされていた国の方針が「量から質へ」「市場重視・ストック重視」へと転換されました。これに伴い、区も昨年、住宅マスタープランを改定されています。

 

この転換の意図することは、「住宅は一定程度の量は充足されたので、今後は公共より民間による質のよい住宅が供給され、長い期間使用する」との考えだと認識しています。この理解でよいでしょうか。よいとすれば、この政策転換に伴って区に求められる新たな役割とはどのようなことでしょうか。あわせてうかがいます。

 

この前提をベースに、高齢者の問題を重ねて見ていきたいと思います。まず、区内のひとり暮らし高齢者数の推移と今後の予測、さらに、高齢者のみの世帯での人数の推移と今後の予測はいかがか、おうかがいします。

 

一般的にひとり暮らし高齢者では男性よりも女性が多く、女性のほうが低所得といえます。これは、女性の社会的地位が男性のそれよりも低く抑えられてきたという、女性問題に起因することですが、当区においてはいかがでしょうか。また今後、高齢女性の貧困問題はさらに深刻度を増し、住宅政策に大きく影響していくと予想されますが、区の認識はいかがか、続けておうかがいします。

 

3番目として、高齢者の住宅に関する区の課題をどのようなことだととらえておられるか、ここでうかがっておきます。

 

杉並区が整備している高齢者専用住宅「みどりの里」は、入居希望者が定員の何十倍という状況です。さらに低額家賃のケア付き住宅は圧倒的に足りていません。東京都の「少子高齢時代にふさわしい新たな『すまい』実現プロジェクトチーム」が先ごろ低所得者向けケア付きすまいの整備について提言しました。区も積極的にケア付きすまいの整備に向けて検討なさるべきと考えます。見解をうかがいます。また既存の民間の共同住宅を借り上げ、高齢者向けに改良して貸与することなどもふくめて、高齢者住宅の増設を図るべきと思います。併せておうかがいします。

 

高齢者の持ち家率が高いという実態は、各種調査結果から見えています。総務省の平成15年「住宅・土地統計調査都道府県編東京都」によれば、65歳以上の単身世帯の持ち家率54%、同、高齢者のみからなる世帯の持ち家率63.1%です。昨年区が実施した「杉並区ひとり暮らし高齢者実態調査」は、75歳以上の、無作為抽出による400名余りに対する調査ですが、区内の実態をある程度は把握することができます。これによると高齢者の一戸建て持ち家率は53.5%と、国の調査結果とほぼ同じで、次に公社・公団等の賃貸住宅19.9%、分譲マンション11.4%と続き、木造アパート、民間の賃貸マンション、鉄筋・鉄骨アパート、民間の一戸建て借家を合計すると13.9%となります。

 

持ち家か賃貸か、共同住宅ならエレベーターのあるなしなどで、ハード面の不備の状況が違ってくるでしょうし、ソフト面に関しては、ケアする支援者あるいは見守る人がいないなどの問題は、すまいの種類にかかわらずあるかと思います。いずれの場合でもハード・ソフト両方の課題を抱えている場合が多いであろうことは、容易に想像できます。

 

そこで、ここでは民間の共同住宅を例にとってハード面、ソフト面それぞれについて4点おうかがいします。1点目、バリアフリー化の改修はどのように促進していかれるのか。2点目、ソフト面としては、区の住宅課が実施しておられる民間アパート居住者を対象とした見守りサービスがどのようなしくみなのか、うかがいます。また、東京都は高齢者のすまい方検討のなかで、管理組合や自治会代表者などを「高齢者住宅支援員」として普及させていきたいとしていますが、これを区としてはどのように取り組んでいかれるのか。3点目としておうかがいします。

 

4点目は経済的支援についてです。アパートあっせん希望者やアパートの家賃滞納者には経済的助成や支援を行うしくみが整備されています。あまり活用されていないようですが、いかがでしょうか。なぜ活用が広がらないのか、お聞きします。

 

さて、01年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が制定され、高齢者向けの住宅は多種多様になりました。高齢を理由に賃貸住宅への入居を断わる事業者が多いことについての改善策として、この法に基づき登録制度が定められています。高齢者の入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」、そのなかでも高齢者だけを賃借人とする「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」をはじめ、さまざまな住宅物件が市場にあふれ、新聞広告やカラーパンフレットが出回っています。選択の幅が広がったことは確かですが、違いが分かりにくく、当事者の条件やニーズに照らしてどう選択すればよいのか、判断に迷う人が多いのはうなずけます。宣伝と実態が異なるというような問題も生じています。利用者の側に立った、わかりやすい適切な情報提供が求められます。

 

都がパンフレットを作成するということですが、地域包括支援センターに限らず、ゆうゆう館など、多くの場での情報提供が望まれます。また「高齢者のためのすまいフェア」や個別相談会を開催するなど啓発に努めるべきだと思いますがいかがでしょうか。質問です。

 

バリアフリー化がされた従来タイプの高齢者向け優良賃貸住宅にしても、先に述べた各種賃貸住宅にしても、今のところ杉並区内にはありません。区は「みどりの里」を今後は適合高専賃に転換していくとされ、そのこと自体は望ましい方向だと思います。ただ、高齢者用賃貸住宅全体の供給量を増やしていくことがどうしても必要です。区内にこれらを積極的に誘致すべきではないのか。おたずねいたします。

 

また、区は小規模多機能型施設整備を今後進めていくとしていますが、そのとき、高専賃との融合型施設とすることを検討されてはいかがかと考えます。小規模多機能型居宅介護施設は身近な生活圏内にあることに意味がありますが、事業者にとって収益性が低いためなかなか町なかでの事業着手に踏み切れないのが実情と聞きます。そこで、同じ建物の中に賃貸住宅を入れることで経営の安定が図れますし、相互にその機能を有効に生かせるという利点があります。実際そのような成功事例がいくつか見られます。当区においてもいかがでしょうか、うかがいます。

 

住宅マスタープランでは、都にシルバーピアの設置を呼びかけて増設を図るとしています。ぜひ進めていただきたいと思いますが、見通しはいかがでしょうか。うかがいます。

 

ところで持ち家のある高齢者にとっては生活の問題がないかといえば、そうではありません。先に引用した「ひとり暮らし高齢者実態調査」によれば、1年間の収入が150万円に満たない人が33.4%おられ、区内に住む75歳以上の3分の1は月12万円以下で生活していることになります。そこで、持ち家があり、かつ経済的に余裕がない高齢者にとって有効と思われるしくみ、リバースモーゲージについて2点質問します。

 

住み慣れた家で安心して老後を送るため、不動産を担保に生活資金が借りられる制度として、社会福祉協議会が窓口となっている「長期生活支援資金貸付制度」、いわゆるリバースモーゲージがあります。しかし活用が広がっていないと指摘されています。ごく最近、制度の見直しがされたと聞いていますが、活用がより広がるような変更がされたということなのでしょうか。1点目、当区におけるこれまでの活用状況と、活用が少なかった原因は何か、うかがいます。あわせて、10月からの制度はどこがどう変わったのか、お示しください。

 

生前は借金返済の心配が無用で、亡くなった後に自宅を売って返済に充てるという、合理的なしくみであり、リバースモーゲージはもっと普及してしかるべきと考えます。子どもたちの反対に合うという事例も聞くところですが、当事者をはじめ、地域包括支援センターや民生委員など高齢者にかかわる人々への知名度は低くしくみの理解もされていないと思えます。周知に力を入れ改善を図るべきではないのでしょうか。2点目としてうかがいます。

 

さて、これまで述べてまいりましたすまいに関わる諸問題の多くは、じつは高齢者だけではなく障がい者、ひとり親世帯など社会的弱者に共通する問題であることに気がつきます。これら、セーフティネットで受け止めなければならない人々に対象を特化して住まいのあり方を検討し、区としての基本政策を定めるべきと考えます。「スペシャル住宅マスタープラン」とでもいうべき政策を、当事者や日常的に介護・支援などに携わっているボランティアやNPO関係者を交えて議論しつくりあげることが必要と考えます。見解をおうかがいします。

 

区は、高齢者の介護施設についての整備計画「安心・安全プラン」を策定されました。在宅についても、介護度が進むなど、ライフステージが変わったときに住み替えができ、心身ともに健康に、老後を暮らせるためのしくみを、NPOなどもふくめた民間との連携で整備することが求められます。この項の最後に区の見解をうかがって、次の項目に移ります。

 

《低炭素社会をめざす区の政策について》

 

昨年の第3定例会でも一般質問として同じテーマで質問いたしましたが、今年は環境基本計画の見直しの年にあたり、また東京都の条例に伴う温室効果ガス削減義務が来年から始まるということもあって、ここで質問することにしました。

 

改定版環境基本計画は、当初の予定ではこの夏に策定の予定とうかがっていました。環境清掃審議会では区長の諮問による審議を終え、報告書がすでに提出されたと聞いています。鳩山首相の「温暖化ガス排出25%削減」発言を受けて、国や都の具体的な施策の提案が待たれているところであり、当区での計画改定にどのように生かされるのか、期待を込めて見守っているところです。

 

そこで質問です。現在の基本計画の総括について、審議会ではどのような議論がされ、区としてどのようにとらえておられるでしょうか。とくに、計画の「4つの挑戦」のうちのひとつ、CO2削減目標についての区の取り組み総括をうかがいます。

 

また地域省エネ行動計画の総括についてはいかがでしょうか。「地球を救え!すぎなみ省エネ作戦!」の6つの作戦それぞれについて、達成できたこと、できなかったことなどを評価し改定に生かすことが重要と考えますがいかがか、うかがいます。

 

昨年の質問では、都の環境確保条例が改正されたことにより、一定規模の大きさを有する事業所はCO2排出削減義務を負うことになるため、そのための区としての具体策についておたずねしました。ご答弁は、条例実施に関する都の取扱基準がまだ明らかにされていないのでこれからだ、というものでした。いよいよその条例施行が来年に迫りました。

 

東京都が削減義務を課している対象ガスは、燃料、熱、電気の使用に伴い排出されるCO2です。東京都のCO2排出量はノルウェー、スウェーデンといったヨーロッパの一国家並みに相当しますから、この達成に向けて杉並区も最大限努めなければなりません。

 

区長は「温暖化の主犯はCO2にあらず」という説を支持しておられますが、かつて議会答弁では、計画改定版ではできる限り目標数値を具体的に提示していきたいとのことでした。CO2削減目標値を定めることは不可欠と思います。見直しにおける目標数値をうかがいます。

 

私は、3年前の議会質問で省エネ相談のワンストップサービスとして「エネルギー・カフェ」を提案し、2年前の省エネ行動計画では設置を検討中とされていました。けれども今年制作された省エネ作戦パンフレットには記載がなくなっています。カフェにこだわるわけではありませんが、効果的な啓発活動は必要です。東京都の補助制度のしくみを活用するなどし、NPOとの連携により「エネルギー・カフェ」の事業化の実現が図れるのでは、と考えるものです。検討をお願いいたします。

 

区は再生可能エネルギーの推進策として、2003年より太陽光発電の設置助成を実施されています。わが家の屋根にも、助成いただいて今年の春に太陽光パネルが載りました。今年度からは太陽熱利用、高効率給湯器の設置助成も事業に加えられました。そこで、この助成事業の効果についておたずねします。実績の推移と、それに対する区の評価をお示しください。

 

わが家にしても、区の助成制度が、設置の決意を促す大きな要素になったことは確かです。再生可能エネルギーの利用をどこまで拡大できるかは、CO2削減の重大なポイントになります。新政権のもとで、この11月1日から、太陽光発電による余剰電力がそれまでの2倍の価格で買い取られる制度が始まり、さらに設置が増えることが期待されます。ただ、設置拡大を確実にするには、思い切った予算措置が望まれます。設置助成を総額としてもっと増やすべき、とここでは申し上げておきます。

 

そして省エネ住宅の普及にもっと力を入れるべきです。住宅の省エネ診断を建築・建設、電気・ガス、電気器具販売などの事業者や環境活動NPOの協力で実施されてはいかがでしょうか。その際には、事業者に対する啓発の意味も含め、耐震、バリアフリー、緑化、雨水利用、など省エネ以外の他の住宅関連のアドバイスと連携して行うことが効果的と考えます。いかがか、併せておうかがいします。

 

温暖化問題はもはや「できるところから始める」段階を過ぎたと認識するべきです。杉並区は民生部門が大きいので無理、などできない理由をもちだすのではなく、「やるしかない」という覚悟を決めることです。独立行政法人・国立環境研究所や大学の研究者、専門家がプロジェクトチームを組んで2007年にまとめた『2050日本低炭素社会シナリオ』によれば、2050年に1990年比で温室効果ガス70%削減は可能といいます。

 

首相の宣言以降、「家庭の中で25%削減できる方法を教えてほしい」という市民からの依頼が区に寄せられ、その対応に当たっている、エネルギー使用量調査などを重ねてきた市民団体の出前講座が人気だと聞きます。区としても、あらゆる区施設に太陽光発電装置を設置し徹底的に断熱効果を上げるための改修をする、など、大胆な取り組み・事業化が必要です。また自治体として、低炭素社会に向けたCO2削減目標と省エネルギー政策を明確に打ち出し、中長期ビジョンを示すべきとあらためて申し上げ、最後の項目、石けんの使用についての質問に入ります。

 

《石けんの使用について》

 

私がいまこうして議員として活動していることのベースには、生活協同組合の共同購入活動があるわけですが、この活動は「安全な食材を安く手に入れるためのもの」ではありません。堅苦しい言い方になりますが「生産から流通、消費、そして廃棄に至るまでの、食を自治する運動」ということであり、その延長線上に生活者ネットワークという政治団体は生まれました。

 

しかし1977年に練馬区で初めて政治グループが発足したときの直接の原動力になったのは、食ではなく「合成洗剤追放」の運動でした。天然油脂とアルカリからつくられる石けんと違い、石油からつくられる合成洗剤は、家庭排水に混じって下水管を通り、分解されないまま川の水質を汚染して水中生物にダメージを与えます。そのことに気付いた、主に女性たちが「加害者にならない、環境に負荷を与える生活を見直そう」といって政治活動を始めたのがその出発点です。

 

杉並でも17年前に生活者ネットは市民グループの人たちと議会請願活動をしていますが、審査されないままに立ち消えになってしまいました。今年、新たに市民活動グループの若い世代の方たちが、石けんの使用を広げる活動の一環として区施設における石けんの使用状況を調査しまして、それを受けて、質問いたします。

 

市民グループのみなさんが調査したのは、地域区民センターや保育園、幼稚園、小中学校などのトイレや給食室・調理室、保健室、給湯室に置かれている洗浄剤の種類です。

 

合成洗剤の何が問題かといいますと、汚れを落とす成分、合成界面活性剤の代表的な物質、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)やAE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などは水中の生態系に悪影響を及ぼすことがわかっており、またPRTR法では有害物質と認定されています。PRTR法とは、化学物質排出移動量届け出法、すなわち特定の化学物質について、その環境リスクを減らすために、事業者が自ら排出量・移動量を把握し国に届けなければならない、と定めた法律です。

 

一方、石けんの界面活性剤として使われる脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウムは、排水されて水で薄まると界面活性力を失い、完全に分解されて二酸化炭素と水になりますから、生き物に対する安全性の点で石けんが優れていることは明らかです。

 

このことは環境問題に関心のある人たちの間では当然のこととして知られ、杉並区でも、かつては地域区民センター7館の連絡会で「石けん使用」を申し合わせていたと聞いています。ところが先の調査活動で、それがいつの間にか忘れられてしまったことがわかりました。

 

つまり自治体としてなんらかのルール化が必要なのだと思います。05年にある市民団体が実施した調査によれば、全国で30の自治体が石けん推進の要綱をもち、そのうち20自治体で「合成洗剤使用禁止」「石けんへの切り替え」などの規定を設けています。現在、23区内では、江戸川区は「石けん使用指針」を定め、世田谷区、荒川区、中野区などで環境行動または指針として「石けん使用」を促しています。

 

当区においても環境基本計画や行動計画などに石けん使用を盛り込むべきと考えます。見解をお聞かせください。

 

続けてうかがいます。都教育委員会が、都内全自治体における公立学校給食の実態について、毎年調査を実施しています。「学校給食の充実、発展に資する」ことが目的とされ、この調査の中に、「食器具類の洗浄剤等使用状況」があります。厨房において「合成洗剤か石けんか、またはその併用か」が調査項目としてとりいれられています。

 

子どもたちの口に入る可能性からみても、水環境に与える負荷の点からも、また厨房で作業にあたる調理員の健康を守る意味でも、石けん使用が望ましいことは、先ほど来述べてきたとおりです。したがって都の調査は石けんの使用を推進するためと私には考えられます。

 

平成20年度の報告書は19年の実態調査ですが、杉並区内の小中学校すべて、合成洗剤使用となっています。ところが市部では相当数の自治体で100%石けんが使用されています。23区は合成洗剤使用が圧倒的に多いのですが、港区、大田区、世田谷区では小中学校100%で石けんが使用されており、葛飾区でも約90%の学校で石けん使用となっています。杉並区でも石けんを使用すべきと考えます。

 

ここで質問です。1番目として、厨房で使用する食器洗浄剤の選択はどのような考えに基づいて行われるのか、うかがいます。

 

そして2番目、これが最後の質問です。まずは1校でも、給食で使う食器の洗浄に石けんを使用する、モデル実施を検討すべきではないのか。おうかがいします。

 

生活者ネットワークは、石けん運動を全国規模で展開する、ある市民団体に参加していますが、毎年7月を「しゃぼん玉月間」と定めて、各自治体の首長からメッセージをもらい、それを小冊子にまとめています。今年、山田区長にご協力いただいたメッセージのなかに「区民一人ひとりがほんの少しくらしを見直し、環境への関心を高めていくことが環境都市杉並の礎となるものです」とあり、共感するところです。

 

石けん運動は、石けんはよいものだからたくさん使おうという運動ではありません。環境負荷の高いものを選択しない、ということであり、それは一人ひとりがくらしを見直して行動することです。そして生活者のそのような行動を引き出すよう、区は尽力くださることを最後に要望して、私の質問を終わります。