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第4回定例会一般質問 2021.11.16 奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として、生物多様性の観点からまちをつくる取組みについて質問します。

杉並区がこれまで、環境分野に限らず行政の各分野において生物多様性に配慮した取り組みをすすめてこられたことは承知しているところです。それは望ましいあり方である一方、地球規模で俯瞰したときの多様な生物が生息することの意義や価値、またそれが私たちの暮らしにどうつながっているのか、大きな絵として全体像が見えてこないもどかしさも感じています。このたび「みどり豊かな住まいのみやこ」を掲げた新基本構想が策定されたのを機に、杉並区が改めて生物多様性に光を当てていただきたいとの思いから質問します。

生物多様性の保全について国際条約が 締結された1993年、日本もこれを批准し、国が最初に生物多様性国家戦略を策定したのが1995年。それから四半世紀が経過しましたが、地球規模ですすむ生物多様性と生態系の劣化は日本も例外なくレッドリストに掲載される絶滅危惧種も増え続けています。

この原因として、開発など人間活動による危機、里山などの手入れ不足による自然の質の低下、外来種の持ち込みによる生態系のかく乱、地球環境の変化があると言われています。これらは、SDGsの持続可能な開発目標とも重なります。SDGs17の目標の15番目には陸の豊かさも守ろうがあり、陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転並びに生物多様性損失の阻止をはかるとされており、生物多様性の保全の必要性はもはや疑う余地がありません。

国の生物多様性国家戦略はこれまで4回の見直しが行われました。そして2020年1月から2021年6月までの全9回にわたり次期生物多様性国家戦略研究会が開催され、2021年7月30日、目指すべき2050年の自然共生社会の姿と2030年までに取り組むべき事項について整理した提言として報告書がまとめられました。

この報告書では生物多様性条約の戦略計画に掲げられた2050年「自然との共生」ビジョンの達成に向けた道筋として、①点目に生存基盤となる多様で健全な生態系を保全・再生し、②点目に自然を活用した解決策や生態系を基盤とするアプローチの考え方を社会的課題への対処に全体的に取り入れながら自然の恵みを持続可能な形で積極的に活用すること、さらに③点目に生物多様性を主流化し、社会・経済・暮らしのあり方を自然共生に向けた社会変革が必要となるという3つのポイントが掲げられています。

 

一方、東京都も生物多様性地域戦略の位置づけとなっている「緑施策の新展開~生物多様性の保全に向けた基本戦略~」の改定に向けて2019年12月から検討会が開催されており、今年8月には都民、企業、市民団体、大学、関係自治体などからの意見募集にあたり、東京都における生物多様性の現状と課題、目指すべき将来像案などを整理したゼロドラフトを作成しています。

  • これらの生物多様性に関わる国や東京都の改定議論のポイントはどのようなところにあると考えているか、区の認識を伺います。
  • 杉並区の新たな実行計画のみどりの質を高める項目の中で2024年度にみどりの基本計画の改定が予定されていますが、この基本計画には施策11のグリーンインフラを活用した都市環境の整備の全体にわたる事業が盛り込まれると考えてよいのか伺います。
  • 杉並区では自然環境調査を定期的に行っており、1985年に第1次調査が開始されて以降、現在第6次調査まで行われています。専門家からは日本で一番長く調査をしている自治体だと評価されており、毎回発行される報告書からは、多くの動植物の存在や変遷が分かる貴重なデータを知ることができ、また、それ以前の1982年から河川の生物調査も定期的に行われており、今年の3月には第8次河川生物調査報告書が発行されています。いずれも、市街化がすすんだ杉並区にあって、一定の自然環境が残されていることを裏付けるものでありますが、なかなか、区民からは見えづらく、自分の住むまちの自然環境がどのような状況にあるのか、その価値が実感できないのは残念なことだと思っています。区は、これらのデータや分析、今後の取組みの提言をどのように施策に生かしているのか伺います。
  • 区は2008年より「善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業」に取組み、2009年11月に同事業の基本方針、2014年2月に同行動方針を策定しています。この事業の目的について確認します。
  • あまり耳慣れない「行動方針」ですが、その「行動方針」というものはどういう位置づけにあるものなのか、「行動方針」を立てて8年を迎えようとしていますが、その達成度合いと今後、どのような道筋があるのか伺っておきます。

この「善福寺川『水鳥の棲む水辺』創出事業」につながる取組みとして、2018年7月に完成した遅野井川親水施設があります。この親水施設が誕生したきっかけは2014年7月に井荻小の5・6年生が区長のもとに訪れ、善福寺川の清掃活動を通して、もっと川をきれいにして、親しみやすい水辺をつくりたいという思いを伝えたことでした。当時は「みんなの夢水路」と言われていましたが、子どもを含む地域住民等が設計・整備に参画し、完成後も市民による管理がされ、大勢に親しまれる水辺環境の創出が実現しました。そして、単に、設計や整備に提案するだけでなく、埋土種子の採取や小学生による種苗植え付けなども行い、約40種類の地域性種苗等により遺伝的な地域生態系環境の再生に挑戦したことが素晴らしく、生物多様性地域戦略の実践の一つとして語れる事例だと思っています。

  • 区はこの遅野井川親水施設づくりをどのように評価し、今後の行動方針にどう活かしていくのか考えを伺います。

この間、私は生物多様性地域戦略の策定について質問に取り上げてきましたが、2017年第1回定例会の一般質問をした時は策定した自治体は6区5市でした。それが、今年7月には12区14市と多くの自治体がこの間、策定を行っているようです。計画の形態は生物多様性地域戦略として個別に計画している自治体、環境基本計画や緑の基本計画の中に包含している自治体と様々でありますが、地球環境の危機的状況に対して計画の重要性から、杉並区も策定に着手すべきであると考えています。基本構想の議論の中でも生物多様性地域戦略の策定についての意見があり、提言書にもそのことが掲載されていると認識しています。

私が、生物多様性の保全が何より重要と思うのは、人間社会の基盤は自然環境であり、その上に経済や文化がのっているという認識があるからです。私たちの暮らしが自然環境に密接にかかわり、生き物や自然の恵みから私たちの命は守られているといっても過言ではありません。生物多様性によって得られる自然の恵みを専門用語では生態系サービスといい、4つのサービスに分けられています。1つは供給サービスというもので食料、水、燃料、木材、医薬品、衣類など私たちの衣食住に必要なものを供給する役割、2つ目は調整サービスといって、大気や水をきれいにし、気候を調整し、自然災害を防ぐ役割、3つ目は文化的サービスで野外レクリエーションや行楽、俳句を詠むなどの人間生活を豊かにする役割、そして、最後の4つ目は基盤サービスで植物の光合成、昆虫や微生物が土をつくる土壌形成、水循環など、先に挙げた1から3のサービスの基盤となるものだということです。生態系を無視した開発や経済活動、人間の生活様式が今、迫っている気候危機の問題やプラスチック海洋汚染の問題、新型コロナウイルス感染症の発生にもつながっています。常に生態系のことを前提に物事をすすめていく重要性を改めてこのことからも認識するところです。また、生物多様性を環境という一面だけでとらえることは不十分であり、まちづくり、都市整備や産業振興、文化交流など全庁的にこの問題に取り組んでいくことが必要だと思います。

生物多様性について学習するたびに、その思いは強くなり、基本構想並の議論が必要だと思うようになりました。

今年のすぎなみエコ路地フェスタのトークショーで、東京大学総合研究博物館の須田真一さんによる「風景が変わると生き物はどうかわるのか」というテーマで生物多様性に関するお話を聞きました。石神井公園での研究についてのお話でしたが、種の多様性を支えるのは生態系と風景・景観の広がりをなすランドスケープの多様性であるということで、種多様性の高かった時代と低下した時代の関係を把握することは生物多様性保全・再生にとって有益な情報となるということでした。そういう意味では杉並区が持つ長年にわたる調査データの蓄積はとても重要な情報資源になると理解しました。

また、人は暮らしが安定しないと環境に目が向かないとの指摘は、先日の選挙で関心のある政策を聞いた世論調査で環境と答えた人が悲しいほどに少なかったこととつながりました。地球環境がちょっと怪しくなってきたと感じていても、日々の目の前の課題が優先され、環境問題は後回しになっているということなのでしょうか。環境問題はひとり頑張っても成果につながらないため、どう取り組んでよいのかわかりにくいという面もあるかもしれません。しかし、今、若者が環境問題に敏感になっているのは、自分たちの将来が危ういということに気付いたからであり、地球温暖化による気温上昇や干ばつ、自然災害が身近な問題となり、食料生産の危機が略奪や紛争を起こし、海面上昇で住む場所を追われる、得体のしれないウイルスが発生するなど、これまで映画の世界のようなことが現実になりつつあります。そのような問題に対して、私たち大人も危機感をもって、きちんと向き合わなければならないと思います。

そこで伺います。

  • 区・区民、さらには事業者も含め、共通の認識を持ち、共に課題解決に取り組む意味でも、目的や目標設定を明確にした生物多様性地域戦略の策定はとても意義あることだと思いますが、区は策定についてどのように考えているのかお聞きします。

須田真一さんから、目黒区の生物多様性地域戦略が参考になると聞き、調べてみました。2014年3月の策定ですが、その策定過程がとても丁寧だと感じました。2年近くかけて専門家をはじめ、区民、商店街関係者、小学校長、環境活動団体など、その地域の特性をとらえたメンバーによる策定検討委員会で策定していて、策定過程で小学生を含む様々な区民イベントをはさみながら、計画づくりへの参加を保障し、中間まとめや素案に対する区民意見募集も2度にわたり行われていました。寄せられた意見数も中間まとめに422人620件、48団体83件、素案では94人162件、17団体23件が寄せられており、区民の関心が向けられていることがうかがえました。また、短期目標に対する指標評価もわかりやすい形で公表されているなど、参考にしたい取組が多くありました。

杉並区にも様々な切り口で活動している環境団体が多く存在しているので、その方々の経験や知識を活かすこともできるのではないかと考えています。

  • 今や、目黒区以外にもいろいろな自治体が策定をしており、区としても他自治体の地域戦略を参考にしながら、杉並区のイメージをつくっているのではないかと思いますがどうでしょうか。
  • 新たな基本構想で掲げた「みどり豊かな住まいのみやこ」の実現は、生物多様性の主流化を進めていくこととつなげていくべきだと考えています。区としての生物多様性地域戦略の策定をする場合には、区民が自分事としてとらえられるようになることが重要であり、そのためには様々な分野に携わる方々の意見やアイデア、そこに暮らす多様な区民の意見を出せる機会を確保することが必要だと考えています。そして、生物多様性の保全が自分にとって必要なことと理解する人が増えれば、生きた地域戦略になると思いますがいかがでしょうか。また、区としても専門家の力を借りながら全庁的な議論を進めていくことが必要だと考えますが区の見解を伺い、私の質問を終わります。

プラスチック削減とゼロカーボンを同時に目指す ~一般質問と答弁

Q1 今年6月に成立したプラスチック資源循環促進法について、区はこの法律をどのようにとらえているか。

A1 この法律は製品プラスチックを含めたすべてのプラスチックについて設計・製造・販売・提供・排出・回収・リサイクルの各段階において資源循環等の取り組みを促進することによる持続可能な経済の健全な発展を進めることを目的としており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みにも寄与する点からも意義があるものと認識している。

Q2 プラスチック資源循環促進法では、容器包装プラスチックに加えて製品プラスチックも自治体が回収しリサイクルするとあるが、製品プラスチックは金属や他の素材と一体化しているものが多くリサイクルが難しい。区はこの一括リサイクルにどのように取り組んでいくのか。

現在23区で容器包装プラスチックのリサイクルを行っているのは12区で、11区が可燃ごみとして燃やしている。また全国を見てもリサイクルを行っている自治体は7割程度といわれている。この新法によってすべての自治体が容器包装プラスチックをリサイクルし、さらに製品プラスチックの一括回収が進むのか。

A2  新法では市区町村の一括回収について努力義務として定めており、今後進むべき方向であると認識している。しかしすべての自治体が一括回収に取り組むためにはリサイクルの中間処理や最終処分を担う事業者の確保、プラスチック製品を製造、販売する事業者等でリサイクル費用の一部を負担する仕組みづくり、また各自治体の収集運搬にかかる体制作り等様々な課題があると考える。

そのため、製品プラスチックの資源化についてはまずは収集・運搬や中間処理等の現状を十分に調査したうえで資源化についての取り組みを検討し、可能なところから進めていく。その際は現在小型家電もしくは不燃ごみとして収集している金属と一体化した製品についても検討していく。

Q3 昨年1月に杉並区の容器包装プラスチックを処理する中間処理施設と材料リサイクルされている工場を見学した。中国への輸出ができなくなり国内の処理が追い付かない事、再生される製品のニーズがそれほど多くないことから、リサイクルする総量を減らすことが一番重要であり急務と考えるが、区の見解は?杉並区の環境基本計画の中にも温暖化対策と連動してプラスチック削減の計画を示すことが必要だと考えるがいかがか。

A3 ご指摘の通りバーゼル条約等の制約による急激な輸出環境の変化により国内のプラスチックにかかる資源循環システムについては整備の途上にあるものと思う。プラスチックは製造あるいは焼却の際に、さらには再資源化の際にも多くのCO2を排出するので、地球温暖化対策の観点からごみとして排出される総量を減らすことは重要であり、このことは基本構想審議会等からも意見をもらっている。

またプラスチック削減の推進は、製造業者や小売業者だけでなく、生活習慣の見直し等区民による取り組みも重要で、計画等の策定に当たっては、再資源化の取り組みに加え区として取り組むべき削減に向けた施策についても検討していく。

Q4 これまで容器包装プラスチックのリサイクルは自治体が収集、選別、圧縮、保管、生産者が再商品化を担い経費の負担は自治体が8割、生産者が2割という大変不公平な現状があった。この新法によって負担割合に変化があるのか。

また生産者が責任をもって収集・運搬・選別・保管・再商品化までを行い、その価格は商品に含めることによって受益者である生産者と消費者が負担する、拡大生産者責任が進むのか。

新法には製造事業者や小売事業者が自主回収しリサイクルすることを可能にする措置が盛り込まれた。これは拡大生産者責任の上からも、また上質な高度リサイクルができる点からも歓迎されるべきことだが、具体的に同のように進められるのか。

A4 容器包装リサイクル法では自治体に分別収集、事業者にリサイクルが義務付けられ、現在区が役8割、事業者が2割の負担となっている。

新法では自治体に対し分別収集及び再商品化への努力義務が課され、再商品化は容器包装リサイクル法に定める指定法人に委託し、再商品化計画は国の認定を受けるものとされている。

一方生産者に対しては、環境配慮設計指針を示し、指針に適合した製品を国が認定する仕組みを設けるとともに、製造事業者、販売事業者が製品等を自主回収し再資源化する計画に対し、国が認定した場合には廃棄物処理法の事業者への許可が不要になる制度が規定された。しかし事業者に対しては容器包装リサイクル法のような再資源化の義務付けでないことから、拡大生産者責任を進めるためにも、今後の国の補助制度の整備や事業者の自主的な取り組みを促す仕組みづくりが重要になってくる。今後政令等が示され、自治体の負担割合を含めて法に基づく取り組みの詳細が明らかになってくるものと考える。

Q5 自治体が容器包装プラスチックと合わせて製品プラスチックを回収することになれば全く形態の違う製品プラスチックを中間処理する工場の設備投資は避けられない。このような工場の設備投資のための国からの補助はどうなっているか。

A5 重量があり不純物の増加が想定されるプラスチックの選別・梱包等の中間処理に対応するためには追加の設備投資が必要になるが、現在のところくにからの補助金等は示されていない。

Q6 ゼロエミッション東京戦略で都が行おうとしているプラスチックの削減には、市区町村の取り組みと連動して行い必要があると思うが現在どのような協力体制があるのか。

A6 東京都とは会議体やメール等で必要な情報交換を行っている。区が目指すプラスチック削減は都と方向性を一にしているので、今後取り組みを進める中で都の取り組みを紹介するほか、協力できる事業があれば連携を図っていく。

Q7 区で行われる会議でペットボトル飲料の配布を行わないように求めたところ、各所管に代替えの方法を求めていくということだったが、この取り組みがどの程度進んだのか。

A7 区では各課、職員向けにプラスチック削減の観点から庁内通知やアンケート、庁内ネットワーク等でマイボトルの活用等の周知を図っている。アンケート結果からは新型コロナ感染症防止や衛生上の理由からペットボトルを使用した会議が多くあったことから今後も使用削減にむけ、一層の周知を図っていく。

Q8 冷水器の横にマイボトルへ給水くださいという案内の設置を要望したがどう進められているか。マイボトルへ給水可能な機器の区施設への設置はまだ多く見かけない。今後新しい施設建設等の際には設置を進めてほしい。

A8 現在庁内において、マイボトルへの給水可能な給水器の近辺にマイボトルへの給水勧奨の掲示を貼りだし周知を図っている。マイボトル用給水器については本庁舎への試行的な設置を検討しており、引き続きマイボトルの普及によるプラスチック削減に努めていく。

Q9 区立施設に入っている事業者に使い捨てのストローやその他の製品を出さないように働きかけることについてどのような成果があったのか。自販機の中にペットボトル飲料を入れない自治体や民間施設もある。これについても検討してほしいが区の考えは。

A9 区立施設使用業者や自動販売機設置業者に対してワンウェイプラスチックの使用抑制、ペットボトル飲料を紙や缶飲料に切り替える依頼を行ったところ、カップを紙製にする等可能な範囲で対応している業者やストローの代替品を検討するという事業者もあった。一方で、コロナ禍で営業が厳しい、衛生面の配慮や代替品が見当たらない、缶飲料の開封が困難な障害者の利用があるなどの理由により対応は困難との返答も多くあった。

先般、プラスチックの資源循環の促進等に関する法律が制定されたことから、プラスチック製のストローやスプーンなどは有料化等により削減することが事業者に求められている。

ペットボトルについても製造事業者による取り組み進むことを期待し、区としても事業者に働きかけを行っていく。

Q10 プラスチック問題については清掃の情報紙「ごみパックン」などで分かりやすく取り上げられてきたがこれを目にする区民が少ない。区広報に環境の特集としてプラスチック問題を取り上げてはどうか。

A10 プラスチック問題に関して区ではレジ袋有料化の動きを踏まえたマイバッグ促進や、海洋プラスチックごみ、マイバッグ持参率の高い事業者の周知等、ワンウェイプラスチックの削減を目指して広報している。今後も広報、ホームページ等を通じた周知に努め、全世帯に配布しているごみ収集カレンダーの活用等、区民に届く情報提供に工夫を図っていく。

第3回定例会一般質問 2021.9.13 そね文子

杉並区のプラスチック削減とゼロカーボンを同時に目指す取り組みについて

いのち・平和クラブの一員として、杉並区のプラスチック削減とゼロカーボンを同時に目指す取り組みについて一般質問いたします。

国内では今年もまた7月8月と立て続けに記録的な大雨によって全国で土砂災害など大きな被害が出ました。世界に目を向けると、カナダ西部で49度以上を記録し、もともと涼しい国でエアコンがないため4日間で233人が亡くなったとのこと、ヨーロッパでの豪雨や山火事、アメリカでもカリフォルニアの山火事やニューヨークでの大水害など気候危機がもたらす被害の件数は増加の一途をたどっています。国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCは今年8月の報告で、人間活動の温暖化への影響は疑う余地がないと断定しました。

菅首相が掲げた2050年にカーボンゼロを目指すためには、プラスチック削減も同時に目指さなければならないと考えます。なぜなら、石油から生成されるプラスチックは生産、消費、廃棄に伴い大量のCO2を排出するからです。日本は一人当たりの容器包装プラスチックの廃棄量がアメリカに次いで世界第2位であることから国際的な責任も問われています。

一方で世界的にこの問題に取り組まなければならない大きな理由となったのは、プラスチックによる海洋汚染問題です。世界経済フォーラムは2050年には海を漂うプラスチックが重量換算で海の魚の量を上回ると予測しました。漁業の網にからまって命を落とす生物たち、ストローが鼻に突き刺さった亀、大量のプラスチックを飲み込んで命を落としたクジラや海鳥の映像を多くの人が目にしていると思います。またプラスチックにはさまざまな化学物質が添加されており、それを飲み込んだ生物への影響、その魚を食べる人間への影響も懸念されています。

このような背景があり、日本は2019年6月に開催されたG20大阪サミットで、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加の汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルーオーシャンビジョン」を提案し、21年現在は87の国と地域がこれを共有しています。日本でもプラスチック資源循環戦略に基づき、ようやく2020年7月からレジ袋が有料化されました。

そして、今年2021年6月、プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律(以下、プラスチック資源循環促進法)が成立しました。プラスチックを減らすための決意を示すこととして、またプラスチック製品の設計から廃棄物処理まで、ライフサイクル全般を対象とした法律ができたことを歓迎したいと思います。しかし、重要かつ押さえておかなくてはならないポイントはプラスチックの抜本的な発生抑制やリユースの推進による総量の大幅削減をどう具体化するかです。

昨年1月私は杉並区の容器包装プラスチックが処理されている中間処理施設とマテリアルリサイクルされている千葉県富津市の工場を見学させていただきました。その工場は無人でプラスチックの素材を光により選別できる最新の機械が導入されていて、24時間フル稼働で処理が行われていました。そして工場の外の敷地には中間処理・圧縮され運び込まれたプラスチックの塊が大量に山積みにされ、長い期間が経過しているのが見てとれました。工場の方の話でも中国への輸出ができなくなり国内の処理が追いつかないこと、これ以上の受け入れは難しいということでした。ここで材料に再生されるプラスチックは強度が弱いため、純度の高いバージンプラスチックと混ぜられ、工場などで荷物を載せるのに使うパレットが作られていました。それ以外はペレットにして、道路のタイルや公園で使われる擬木などに加工される原料として販売しているということでしたが、このような製品のニーズはそれほど多くはありません。プラスチックのリサイクルは限界にあることを実感した視察となりました。

今年度、杉並区では新基本構想が策定され、環境基本計画の改定もあります。国の法整備と並行し、区でも大きな動きがある中で、今後の取り組みを、決意を持って進めていただきたいという思いから、以下質問いたします。

  • 先ずはプラスチック資源循環促進法についてです。この法律によって、今までは可燃ごみとして出されていた製品プラスチックをリサイクルに回す大きな意義は、プラスチックを燃やしてCO2を出さないことだと考えます。プラスチックを燃やして燃料にし、発電を行うなどのサーマルリサイクルは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに比べてCO2削減効果は1/3以下です。そもそもサーマルリサイクルは海外ではリサイクルとは認められていません。区でもプラスチックは燃やさない、サーマルリサイクルはリサイクルではないという意思を示していただきたいと思いますが、区はこの法律の意義をどのようにとらえているかうかがいます。
  • この新法には容器包装プラスチックに加えて、バケツやクリアファイルなどの製品プラスチックも自治体で回収しリサイクルをするとあります。しかし製品プラスチックは、例えばはさみやボールペンなどのように金属や他の素材と一体化しているものが多く、リサイクルが難しくなります。区はこの一括リサイクルにどのように取り組んでいこうとしているのか、考えを伺います。
  • 先に述べたプラスチックの国内処理には工場の限界、使う先がそれほどないこと、燃料として燃やされていることなど、多くの問題をはらんでいます。リサイクルする総量を減らすことが一番重要であり急務と考えますが、区の見解をうかがいます。ここで東京都と民間企業のLoop Japanが取り組んだ一つの事例を紹介したいと思います。それは東京都の丸の内エリアや六本木エリアの特定オフィスの社員限定でリユース可能な弁当容器で弁当を販売し、空き容器を回収洗浄した後再利用するというものです。これは毎日大量に消費されている弁当容器を劇的に減らす画期的なアイディアであり、この費用は事業者と消費者が分担することになり、税金を投入することがありません。現在区役所内で販売している弁当で同様の取り組みができないかと思います。このLoop Japanに問い合わせたところ、前向きに検討できればと言っていました。今後このような検討も進めていただけるよう要望いたします。
  • 現在23区で容リプラのリサイクルを行っているのは12区で、11区が可燃ごみとして燃やしている現状があります。また日本全国を見てもリサイクルを行っている自治体の数は7割程度と言われています。この新法によって、すべての自治体が容器包装プラスチックをリサイクルし、さらに製品プラスチックの一括回収が進むのでしょうか、うかがいます。日本が2050年のカーボンニュートラルを目指すのであれば、すべての自治体がこれに取り組むことが必要です。
  • これまで、溶リプラのリサイクルの役割分担は、自治体が収集、選別、圧縮、保管、生産者が再商品化を担い、経費の負担は自治体が約8割、生産者が約2割という、公的負担に極端に偏った現状がありました。この新法によって負担割合に変化があるのかうかがいます。また、区も私たち市民団体も長年主張してきた、生産者が責任を持って収集運搬選別保管、再商品化までを行い、その価格は商品に含めることによって受益者である生産者と消費者が負担する拡大生産者責任が進むのかどうかもうかがいます。
  • 自治体が容リプラと合わせて製品プラを回収することになれば、容器包装とはまったく形態の違う製品プラを中間処理する工場の設備投資は避けてと通れません。このような工場への設備投資のための国からの補助はどのようになっているのかうかがいます。
  • 新法には製造事業者や小売事業者が自主回収しリサイクルすることを可能とする措置が盛り込まれました。これは拡大生産者責任の上からも、また上質な高度リサイクルができる点からも歓迎されるべきことですが、具体的にはどのように進められるのでしょうか。うかがいます。

8. 次に区の計画へプラスチック削減の取り組みについてどのように記載するかについて質問します。

今、まさに新たな基本構想の答申が区長に提出される段階に来ています。この基本構想策定を受けて、区の環境基本計画の改定が行われる予定です。基本構想審議会に委員として参加させていただきましたが、環境分野では気候危機を回避するための温暖化防止対策が大きく打ち出されていました。プラスチックの問題も気候危機同様に世界的に大きな課題であり、CO2削減のためにも取り組まなければならないことです。東京都のゼロエミッション東京戦略では温暖化対策にはエネルギーと資源の脱炭素化の両方が必要と明記され、プラスチック削減プログラムが示されています。杉並区の環境基本計画の中にも温暖化対策と連動してプラスチック削減の計画を示すことが必要だと考えますが、区の見解をうかがいます。

9. 東京都のゼロエミッション東京戦略と都内自治体との連携についても伺います。都が行おうとしているプラスチックの削減には、区市町村の取り組みと連動して行う必要があると思うのですが、現在どのような協力体制があるのかうかがいます。

10.次に具体的にプラスチックを減らす取り組みについて伺いたいと思います。これについては何度も質問に取り上げて、ご答弁もいただいているところですので、その進捗状況について伺いたいと思います。直近で2019年9月にプラスチック削減によって海洋汚染を防ぐ取り組みについて質問しました。

そこで区の関係で行われる会議でペットボトル飲料の配布を行わないでほしいと求めたところ、各所管に代替えの方法を求めていくということでした。この取り組みがどの程度進んだのでしょうか、うかがいます。今はプラスチックを減らすことに取り組まなければならないことは多くの区民が認識しているので、会議参加者の理解は非常に得やすいと思います。会議の案内に「プラスチック削減のため、飲み物が必要な方はご持参ください」と一言入れれば、理解協力が得られると思いますので、ぜひ検討をお願いします。

11.既存の冷水器の横に、マイボトルへ給水くださいという案内を設置していただきたいと申し上げ、まずは、冷水器の横にマイボトルへの給水が可能である旨の表示を含め、より多くの区民にご利用いただけるよう工夫するとお答えいただいていますが、その取り組みがどのように進められたのかうかがいます。

12.マイボトルへ給水できる機器の設置については、ウェルファーム杉並や西永福にできた複合施設に設置され、対応がとられていることに感謝いたしますが、まだ設置個所は少ない状況です。今後も新しい施設建設等の際には設置を進めていただきたいと考えますが、区の見解をうかがいます。

13.次に区立施設に入っている事業者に使い捨てのストローやその他の製品を出さないように働きかける点についても前向きな答弁をいただいていたところですが、どのような話し合いが行われ、どのような成果があったのか伺います。新法ではスプーンなどの使い捨てプラスチック製品12品目を多量に提供する企業に削減対策を義務付ける方針です。区の施設に入っている事業者は義務の対象にはならないと思いますが、プラスチック削減への理解は得やすいと思いますので、さらなる助言や働きかけをしていただくようお願いいたします。

14.区役所本庁舎や区立施設に設置されている自動販売機の中にペットボトルを入れない自治体や民間施設の取り組みもクローズアップされています。区でも検討いただきたいと思いますが、見解をうかがいます。

15.これが最後の質問です。プラスチック問題について、区でも情報紙「ごみパックン」などで分かりやすく取り上げてこられたと承知しています。しかし、これを目にする区民が少ないことが残念です。今区報では人の特集を組まれていますが、折を見て環境関係の特集を取り入れ、プラスチック問題についても取り上げていただければと思いますがいかがでしょうか、うかがいます。

区が旗振り役になって、プラスチックの削減に取り組みましょうと表明することが区民の活動を後押しし、力強い支援になります。これまでも提案した講師の講演会などを開催していただき感謝しています。環境問題に無関係でいられる人は一人もいません。より多くの人々に理解や関心を広げるための区の役割は大きいと思います。プラスチック削減の必要性を知れば、協力の輪は広がると思います。区内には情熱を持ってプラスチック削減、気候危機対策などの環境問題に取り組む多くの区民がいます。この危機を乗り越えるためには区民参加が不可欠ですから、多くの区民と協力し活動を広げていただきたいと思います。私も一緒に取り組むことを申しあげ一般質問を終わります。

第2回定例会一般質問 質問と答弁 2021.6.2 奥田雅子

ひとり親支援について

Q.1-①昨年度、ひとり親家庭実態調査が実施された。前回の実態調査報告書では、調査結果のまとめの中で今後の課題についての記載があった。どのような課題があり、それは解決されたのか伺う。また、今回の実態調査では、コロナ禍の状況にあって、5年前の調査との違いが見えてきたのではないかと思う。区はこの調査により、どのようなことを新たな課題として認識したのか伺う。

A.1-①まず、2015年度に実施した実態調査で出された課題だが、住まいの確保や就労支援・子どもの学習支援の充実のほか、離婚後の支援である養育費確保や面会交流への理解促進などがあり、これらの課題に対しては、現在も引き続き取り組みをすすめている。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、今回の実態調査からは顕著な傾向は見受けられなかったが、報道等により、ひとり親家庭が影響を受けていることを認識している。今回の調査における新たな課題については、前回同様、ひとり親家庭が抱える課題としては、経済的なものが多く、その要因の一つとなるのが、養育費の不払いであり、その対策として今年度より養育費確保支援事業を開始している。また、子育てや家事に困難を感じている父子家庭の割合が増えており、母子家庭に加え、こうした父子家庭も相談しやすくなるような工夫をしていく必要があると考えている。(子ども家庭部長)

Q.1-②国の子育て世帯生活支援特別給付金の支給が始まっているが、ひとり親家庭を対象とした給付金の支給件数を確認する。

 

A.1-②本給付金の対象はひとり親世帯とそれ以外の住民税非課税の子育て世帯とに分かれるが、質問のひとり親世帯の直近の支給実績は2021年4月分の児童扶養手当受給者1501世帯、児童数は2058名となっている。(子ども家庭部長)

Q.1-③本来使える制度やサービスが使えていない人がいないようにしなければならないが、ひとり親への情報提供はどのように行っているのか伺う。

A.1-③区では、ひとり親家庭に対する支援サービスの内容をまとめた「ひとり親家庭のしおり」を作成しており、ひとり親の方が利用される相談や戸籍の届け出を行う区の窓口のほか、区内の医療機関や就労支援センター、くらしのサポートステーションなどで配布している。また、区の広報やホームページのほか、東京都のひとり親家庭向けポータルサイトなどにも必要な情報を掲載し、広く周知することに努めている。(子ども家庭部長)

Q.1-④相談に訪れた方にとっては、その家庭にあった制度やサービスをカスタマイズしてもらえるような寄り添い型の相談ができると心強いと考えるが、現状どのように対応しているのか確認する。

A.1-④ひとり親家庭の相談は、ひとり親になった事由一つをとっても、離別・未婚・死別と背景が異なり、さらに子どもの年齢や経済状況・生活状況も様々である。そうしたご本人やご家族の状況を、ひとり親家庭支援担当の相談員が丁寧に聞き取りながら支援し、必要に応じて手続きの同行なども行っており、今後も相談者の気持ちに寄り添いながら、共に考え必要な支援を提供していく。(子ども家庭部長)

Q.1-⑤今年度から開始された養育費確保支援事業は、離婚相手との取り決めがあっても養育費が支払われない場合のひとり親家庭の救済制度だが、区は周知方法含めどのようにすすめようとしているのか伺う。

A.1-⑤本事業の周知については、事業を開始した4月1日の広報及びホームページによる周知に加え、チラシを作成し、区窓口のほか公正証書を作成する公証役場、民間のひとり親家庭支援団体、養育費に関する相談を受ける東京都のひとり親家庭支援センターや養育費相談支援センターにも送付し、周知の協力をお願いした。これまでのところ申請の実績はないが、引き続き周知に努め養育費の確保につなげていく。(子ども家庭部長)

Q.1-⑥相談したいことが明確ではなく、相談先を選ぶことが難しい方も多いと思う。区が発行する「ひとり親家庭のしおり」の最初に、ここにさえ相談すれば、その先を導いてくれるという案内が書いてあるとよいと思うがいかがか。

A.1-⑥このしおりでは「各種相談」というページに相談機関ごとに相談内容等を記載しているが、ご指摘の通り、何を相談したらよいのか整理できない方もいらっしゃると思うので、そうした方も相談できる窓口がわかるよう、次回作成する時には工夫していく。(子ども家庭部長)

Q.1-⑦ひとり親家庭への聞き取りと同時に、地域で支援活動を行っている団体や個人からも現場が持つ情報や抱える課題について共有する機会が必要であると考えるが、区の見解を伺う。

A.1-⑦ひとり親家庭が抱える悩みや課題については、日々の窓口や電話での相談のほか、「ひとり親家庭実態調査」を通して定期的に把握しているところではあるが、地域で実際に支援に携わっている方々からのご意見は貴重であると考えているため、そのご意見もしっかりと受け止めながら実態の把握に努めていく。(子ども家庭部長)

ヤングケアラー支援について

Q.2-①厚生労働省の調査で対象となった杉並区内の中学校はあったのか。また、今回の調査を区はどのように受け止めたか。

A.2-①厚生労働省が実施した調査には本区の区立中学校も調査対象校として抽出されていた。教育委員会としては全国の中学校2年生の5.7%が世話をする家族がいるという結果から、ヤングケアラーが一定数いることが分かった。(教育政策担当部長)

Q.2-②ヤングケアラーの問題は家族の問題とせず、社会全体の問題として取り組むことが重要と考えるが、そもそも自分がヤングケアラーだと自覚していることもが少ない実態がある。誰かが気づいて声をかけ、支援につなげることが重要だと考えるが、区ではどのように実態を把握し対応しているのか確認する。

A.2-②ヤングケアラーの実態把握と対応については、学校等で支援が必要な子どもを把握した場合、子ども家庭支援センターと情報共有を図り、双方で連携して見守り支援を行っている。その上で、子ども家庭支援センターのケースワーカーが家庭を訪問するなどして子どもやその家族の相談支援を行うとともに、家庭の状況に応じて必要なサービス等につなげている。(子ども家庭部長)

Q.2-③子どもに関わる全ての職員がヤングケアラーの実態について認識し、理解することが早期発見、早期解決には欠かせないと考えるが、福祉や教育分野での研修にヤングケアラーの視点が盛り込まれているか確認する。

A.2-③子どもに関わる大人がヤングケアラーへの理解を深め、支援の必要な児童・生徒を早期発見し、関係機関と適切な連携を図る必要があることから、子ども家庭支援センターで実施している要保護児童対策地域協議会の構成員向け研修やスクールカウンセラー連絡会でヤングケアラーを取り上げ、周知に努めている。加えて今年度は管理職や養護教諭、生活指導主任等を対象にヤングケアラーの理解、他機関との連携方法等の研修を行っていく。(教育政策担当部長)

 

Q.2-④本年5月、厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチームによる報告書がまとめられた。その検討内容を確認する。また、区は、その報告書をどのように受け止めたか伺う。

A.2-④このプロジェクトチームは支援を必要としているヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげるための方策を検討するために設置されたものである。まとめられた報告書には、福祉・介護・医療・教育等の関係機関や支援団体等がしっかりと連携し、ヤングケアラーの早期発見・支援につなげるための取組みが記載されており、今後の施策を展開するにあたり、参考とすべき内容が含まれているものと受け止めている。(子ども家庭部長)

Q.2-⑤子ども家庭支援センターのリーフレットやゆうラインの案内で、具体的な相談内容に家族のケアを担っている子ども(ヤングケアラー)の相談といった項目を足す工夫があっても良いと思うが区の見解を伺う。

A.2-⑤子ども家庭支援センターのリーフレット等への具体的な相談内容の記載については、ヤングケアラーが相談につながることは重要であると考えているため、より子どもにわかりやすい表現で案内するなどの工夫をしていく。(子ども家庭部長)

Q.2-⑥この間ひとつの家庭が複合的かつ複雑な問題を抱えるケースが増えており、区でも在宅医療・生活支援センターを中心により横連携の支援体制を強化しているが、ヤングケアラーの問題についても改めて意識を高めていくことが必要だと考える。子どもの未来を奪うヤングケアラーの問題に対し区の考えを伺う。

A.2-⑥ヤングケアラーは子どもでありながら、本来大人が担う家事や家族の世話などを介護者として日常的に行っている。そのため、睡眠不足や疲労から勉強する時間がとれず、学力の低下や欠席の増加など学業への影響が懸念される。また、自由時間が少ないため部活動に参加できない、友人と遊ぶ時間がとれないことから、孤立や精神的な不安定さを招くなど、成長していく上での影響も危惧される。こうしたことから、家族へのケアに係る負担を軽減または解消することが必要だが、ヤングケアラーの問題は家庭内のデリケートな問題であることから、本人が家族の状況を知られたくない、本人に自覚がないなどの状況により、潜在化しやすくなってしまうという難しさをもっていると認識している。

そのため、ヤングケアラーについての認知度を高め、子どもに関わる教育等の関係機関や地域が、子どもの発するサインに気づき、早期に発見することが非常に重要である。また、周りの気づきだけでなく、ヤングケアラー自身が相談できるようにすることも重要であり、子どもの声を受け止める体制や子どもの声を代弁するしくみの構築についても大切であると考えている。

全ての子どもがその家庭環境に左右されることなく、将来の選択ができるよう、地域全体で子どもを見守る環境を整え、必要な支援につなげることで、子どもたちの未来への歩みをしっかりと支えていく。(区長)

第2回定例会一般質問  2021.6.02奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として

1. ひとり親支援について

2.ヤングケアラー支援について

一般質問します。

 

先ず、ひとり親支援について

2013年に成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることなく、健やかに育成される環境の整備と教育の機会均等を総合的に推進することを目的としています。しかし、厚生労働省による2019年の国民生活基礎調査によれば、子どもの貧困率は13.5%で7人に1人が貧困状態となっており、母子世帯の86.7%が苦しいと応えています。もとから困難な状況を抱えていたひとり親、特に母子世帯にコロナ禍は容赦なくさらなる困難を強いた形となっています。母子世帯の多くは正規雇用より非正規やパート労働が多いため、コロナ禍による就労制限で収入減となる一方、子どもは一斉休校や登校制限、様々な体験活動中止等により、学校での給食や学び、友達との遊び、地域の人たちとのかかわりが制限され、子どもの健康や学習、発達にも影響が及んでいます。学校や地域、友達が担ってきた役割も親が引き受けなければならず、ひとり親の負担はますます増えています。2008年のリーマンショックを超える経済不況になるとも言われており、中長期的な対策が必要だと考えます。

コロナ禍によってひとり親世帯が困窮する現状に問題意識を持ったひとり親支援団体やジェンダー政策の専門家、研究者らによって発足した「シングルマザー調査プロジェクト」が昨年7月に行ったWEBによる大規模調査では1800人から切実な声が寄せられました。さらに、その回答者の中から4つの要件に当てはまる世帯、つまり①母子世帯②公的年金を受けていない③生活保護を受けていない④児童扶養手当を受けている、という東京在住252人、東京以外287人に毎月同じ方に同じアンケートをするパネル調査を行っています。それによれば、今年2021年2月の状況は東京在住の252人の約30.6%が主食のコメなどの食糧が買えないことがよくあった、時々あったと回答。肉や魚、野菜に至っては約半数が買えていませんでした。体重が減った小学生は多いときで10%を超えました。子どもの服や靴では59%、子どもの玩具・文具・学用品は46.5%が買えないことがよくあった・時々あったと回答しています。また、子どもたちの状況では、学校の学習についていけない小学生は3割を超え、学校に行きたくない、行かなくなったが2割を超え、習い事ができない小学生は約6割に上っています。区内の子ども食堂も集まって食事ができにくくなり、お弁当や食材の配布を行っているところもあると聞いています。要望は日を追うごとに増えているようで、杉並区でも困窮する家庭は確実に存在しています。

そこで、質問します。

  • 2020年度、ひとり親家庭実態調査が実施されました。前回の実態調査報告書では調査結果のまとめの中で今後の課題についての記載がありました。どのような課題があり、それは解決されたのか。また、今回の実態調査では、コロナ禍での状況にあって、5年前の調査との違いが見えてきたのではないかと思います。区はこの調査により、どのようなことを新たな課題として認識したのか伺います。
  • 国は子育て世帯生活支援特別給付金として児童1人当たり5万円を支給することとしましたが、杉並区のひとり親対象の給付は何件か伺います。
  • 杉並区の調査では悩みや困りごとの解決方法として区の窓口に相談すると答えた人は1%で、インターネットやSNS、親族や友人に相談すると回答した約40%前後と比べ少ない結果となっています。また、何もしないというのも21.7%あり、時間がないとか最初からあきらめてしまう人がいるようです。本来、使える制度やサービスが使えていない人がいないようにしなければなりませんが、ひとり親への情報提供はどのように行っているのでしょうか、伺います。
  • コロナ対応として臨時的な措置もあり、さらに手続きすることが増えたりもしています。HPでも常に最新の情報が掲載はされていますが、通常の制度も含めて、相談に訪れた方に対しては、その家庭にあった制度やサービスをカスタマイズしてもらえるような寄添い型の相談ができると当事者にとっては心強いと考えますが、現状どのように対応をしているのか確認します。
  • 2021年度からひとり親家庭を対象として新たに養育費立替補償契約費用助成と公正証書作成費用助成が予算化されました。離婚相手との取り決めがあっても養育費が支払われない場合の救済制度ですが、周知方法含め区はどのように進めようとしているのか伺います。
  • 区は毎年ひとり親家庭のしおりを発行しています。非常に多くの情報が盛り込まれています。例えば、ページを開くと各種相談が5ページにわたって一覧表が掲載されていますが、自分が相談したいことが明確になっている人はここだという相談先を選ぶことができるかもしれませんが、そういう人は少ないのではないでしょうか。活用せずに放置してしまうのではと心配です。最初に出てくる「子ども家庭部管理課、福祉事務所」がワンストップ的な相談窓口となるのか。そうだとすれば「相談先がわからないという場合は、まずはここにご相談ください」のように、ここにさえ相談すれば、その先を導いてくれるという案内がしおりの最初に書いてあるとよいと思いましたがいかがでしょうか。
  • 生活者ネットワークの関連団体が昨年11月から今年の2月にかけて、都内で子ども食堂や子育て支援、食料支援、居場所、民生委員、無料学習塾等の支援活動をしている30の団体や個人を対象に聞き取り調査を実施しました。調査報告書では現場だからこそ見える様々な課題がつづられていました。制度からこぼれてしまう家庭の支援や目の前の家庭の課題に気長に寄り添い、信頼関係を築き、行政機関や他の団体とつなぎながら解決に導く取組みは、ボランタリーな地域住民によるたすけあいの地域づくりであり、大事にしたい取組みだと感じました。区はひとり親家庭への聞き取りと同時に、地域で支援活動を行っている団体や個人からも現場が持つ情報や抱える課題について共有する機会をつくり、区からは見えていない困難な家庭の把握にも努めることが必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。

 

次に、2つ目の項目、ヤングケアラーについて質問します。

私は2018年第3回定例会の一般質問でケアラー支援について質問を行い、ヤングケアラーについても取り上げました。当時は杉並区でもケアラーという言葉は一般的ではありませんでしたが、区も介護者支援の重要性の認識には変わりはなく、今後も総力をあげて取り組んでいくとの答弁がありました。今日は改めてヤングケアラーについて質問してまいります。

2020年3月に埼玉県ケアラー支援条例ができ、条例に基づくケアラー支援計画策定にあたり、実態調査が実施されました。その後さらに、厚生労働省が昨年の12月から公立中学2年生と公立高校全日制の2年生を対象に、全国初のヤングケアラー調査を実施しました。それぞれの調査からその実態が明らかになり、その内容に衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。それらの結果を受け、ヤングケアラーを特集した新聞や報道番組が増え、子どもたちが置かれている困難な状況を多くの市民が見聞きすることで「ヤングケアラー」という言葉の認識が広がり、理解も進んできたと感じています。

家族の中にケアを必要とする人がいた場合、多かれ少なかれ家族のケア負担が発生します。世帯人数が減り、共稼ぎやひとり親の家庭も増える中、子どもや未成年の若者たちがケアの担い手となることがあります。このような子どもや若者はケアの経験を通して多くのことを学ぶという点では悪いことではありません。しかし、担っている役割や責任が年齢に不釣り合いであったり、長期間に及んだ場合など、自らの心身の発達や学校生活、将来への大きな影響を受けることがあるため、ヤングケアラーに陥らなくて済むような、様々なサポート体制を整備していくことが必要です。

 

  • 厚労省の調査で対象となった杉並区内の中学校はあったのか。また、今回の調査結果を区はどのように受け止めたか伺います。

 

今年4月12日に厚労省が発表した調査結果によれば、約1万3千人から回答があり、大人の代わりに家事や介護といった家族の世話を担う子ども、いわゆる「ヤングケアラー」が中学2年で5.7%、17人に一人、高校2年で4.1%、24人に一人いることが明らかになりました。これを文部科学省の統計に当てはめると中学2年で約5万5千人、高校2年で約4万2千人のヤングケアラーがいるということになります。ケアに費やす時間は中学生では平均4時間、高校生で3.8時間。なんと7時間以上という子どもも10%いました。これはとてもショックであり、これでは勉学や部活、友達づきあいもままならないし、子どもらしい遊びや休息の時間も楽しい時間も持つことができないわけで、到底看過できない問題です。

2018年の一般質問では、杉並区でもヤングケアラーというケースもあったが、十分な把握ができているわけでもないことがわかりました。当時の答弁は、今後、学校現場にかかわる者への研修に「家族のケア」という視点を示し、各学校が的確な実態把握のもと保護者や関係機関と連携した対応ができるように支援していくというものでした。

2019年11月から2020年1月にかけて、江戸川区の生活者ネットワークの仲間が教育・医療・福祉の現場で働く方々との協力で「ケアを担う子どもや若者たちに関する調査」を行いました。報告書によれば、ケアを担う子どもや若者がいたと答えた人はヤングケアラーという言葉を知っている割合も多かった一方、ヤングケアラーという言葉を知らない人はケアを担う子どもや若者がいない、わからないと答えた人が多かったという結果が出ていました。つまり、ヤングケアラーはいるものだと意識しているかいないかで、把握の度合いも違ってくるということだと思います。この調査にかかわった人の職業はケースワーカー、障がい者福祉関連、保健師、ケアマネ、訪問介護員、看護師、スクールソーシャルワーカー(SSW)、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)など医療・介護・教育・福祉分野と多岐にわたっており、ヤングケアラーに接する可能性のある職種はすべてふくまれていました。そしてそれぞれの関係性の中で連携しながら解決しようとしている様子が見てとれました。中には対応に苦慮して何もできなかったという場合もあり、なかなか一筋縄では解決できない問題でもあると改めて認識しました。

 

  • ヤングケアラーの問題は家庭の問題とせず、社会全体の問題として取り組むことが重要だと考えます。杉並区でもヤングケアラーが存在しているという想定のもと、支援策を検討するためには実態把握が欠かせませんが、様々な調査からもなかなか本人が自ら発信できないケースが多いことがわかっています。厚労省調査でも60%以上が世話について相談しておらず、そもそも自分がヤングケアラーだと自覚している子どもも少ない実態が明らかになりました。誰かが気づいて声をかけ、支援につなげることが重要だと考えますが、杉並区ではどのように実態を把握し、対応しているのか確認します。
  • 子どもに関わる全ての職員がヤングケアラーの実態について認識し、理解することが、早期発見、早期対応には欠かせないと考えます。福祉や教育分野などでの研修にヤングケアラーの視点が盛り込まれるようになっているのか確認します。
  • 今年3月に厚労省と文科省が合同で「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」をつくり支援策の検討を行い、5月に報告書がまとめられました。その検討内容はどのようなものだったのか確認します。また、その報告書を区ではどのように受け止めたのか伺います。
  • 鳥取県が今年4月から県内の児童相談所などにヤングケアラー相談窓口を設置、神戸市は6月からこども・若者ケアラーの相談窓口を設置するようです。「ヤングケアラー支援」を見える化することで、当事者や支援者、気になっている地域住民が相談しやすくなり、情報もそこに集中するようになると考えます。たとえば、子ども家庭支援センターのリーフレットやゆうラインの案内で、具体的な相談内容に家族のケアを担っている子ども(ヤングケアラー)の相談といった項目を足す工夫があってもよいのかと思います。今後、リーフレットの改定などの際に検討してはいかがか区の見解を伺います。
  • 今後、介護保険制度の限界から、高齢者などの介護は再び家族の負担が増える方向に向かうのではないかと危惧します。また、コロナ禍で経済状況が悪化し、それが引き金となって、心身不調となる親のケア等、ヤングケアラーにならざるを得ない状況が今後、ますます増えるのではないかと懸念します。この間、一つの家庭が複合的かつ複雑な問題を抱えるケースが増えており、杉並区でも在宅医療・生活支援センターを中心に横連携の支援体制を強化してきていると承知していますが、このヤングケアラーの問題についても改めて意識を高めていくことが必要だと考えます。子どもの未来を奪うヤングケアラーの問題に対し、区の考えを最後にお聞きします。

 

今回、ひとり親支援とヤングケアラー支援について質問してきました。2つのテーマは決して別々の問題ではなく、根底ではつながっている問題だと思います。地域の中に潜在している課題を敏感にキャッチし、困っている家庭や子どもたちの支援に尽力して頂くよう求め、私の一般質問を終わります。

 

生活者ネットすぎなみ臨時号発行 2021.3.1

2021.02杉並号外HPV-0226-5

予算特別委員会意見開陳  2021.3.10 奥田雅子

いのち・平和クラブを代表して、2021年度杉並区一般会計予算、並びに、各特別会計予算および関連諸議案について意見を述べます。

 

新型コロナウイルス感染拡大の終息がなかなか見通せない中、区民生活や経済活動への影響は深刻な状況となっています。景気を下支えする地域経済の打撃はそのまま区財政にも影響を及ぼします。この間のコロナ対策に多くの支援策を実施し、さらには次年度予算でも財政調整基金から72億5000万円を取り崩すなど、あらためて、財政調整基金の備えの重要性を確認しました。

現在、2022年度からの新基本構想策定すすめられています。区は現基本構想の最終年度となる2021年度を「困難を乗り越え、新たな時代に繋ぐ予算」と名付け、まさに喫緊の課題である新型コロナウイルスの克服と10年先を見据えた新構想の策定によって、長引くコロナ不安で疲弊した区民の暮らしに対し、将来のビジョンを示す重要な年となります。私ども、いのち・平和クラブは住民に一番身近な基礎自治体の役割である区民福祉をいかに支え向上させるか、コロナ禍での不安や昨今の気候危機から区民の命と財産を守り、子どもたちが将来に希望を持ち、緊急を要する課題に応える予算となっているかを検討いたしました。以下、基本構想に掲げる目標に沿って、予算特別委員会での質疑の内容も踏まえ、主な賛成理由、評価する点と要望を付して意見を述べます。

 

第1に、平和への取り組みです。核兵器禁止条約が1月22日発効しましたが、条約には核保有国や核抑止力に依存する日本などが参加しておらず、核軍縮の機運を高めることにつながるかが疑問視されています。代表質問で、国に条約に加わるよう自治体から声を上げるよう求めたところ、平和首長会議を通じて国に強く要望していることを確認しました。また昨年コロナ禍で実現できなかった平和首長会議の広島開催に合わせ、中学生のヒロシマ派遣事業を実施し、現地での中・高生との交流ができることを期待します。

 

第2に、新型コロナ対策のとりくみです。区は2019年度末に2度、2020年度に13度の補正予算を組み、国や都に先駆けて区内基幹病院への補助や発熱外来の設置、区独自のPCR検査体制の拡充など実施してきました。新年度予算では、この取り組みを維持しさらに拡充するものと評価します。区内事業者への支援、文化芸術活動への支援は引き続き継続されています。コロナ禍で児童虐待が増えるおそれに食を通じたこどもの見守りの強化、介護者等の感染時に障がい者等を支える体制を強化し、福祉施設などの従事者へのPCR検査の実施などの取り組みの拡充に期待します。また、新型コロナ対策で多忙を極める区職員の健康問題を質し、二次検診の受診勧奨や心療系の相談拡充を確認。必要な職員の増員を求め今後の検討を確認しました。ワクチン接種体制への支援で職員への負担が大きくならない対策も確認できました。

 

第3に、災害に強く安全・安心に暮らせるまちについてです。

・東日本大震災から10年。東京電力福島第一原発事故の影響によって、いまだ故郷に戻れない、戻らない方が、地元自治体の発表によれば、少なくとも6万7000人はいるといわれており、それには自主避難者は含まれません。10年経っても復興半ばと言わざるを得ません。福島第一原発の電気を消費していたのは東京に住む私たちでした。10年経とうが20年経とうが、私たちは3.11のことを忘れることなく、そこから学んだ教訓を自らの暮らしに役立てていくことが必要です。3.11を忘れない取り組みを継続して来たことは評価します。最近東北で大地震がおき、茨城県沖でも地震が頻発している状況は、大地震の前触れと言われています。来年以降も南相馬市への支援と防災意識の向上をコンセプトに継続することを確認しました。

・また、昨今の気候危機に起因する自然災害の増加、災害時の感染症対策も新たな課題となっています。区が示した発災後3日分の区内備蓄の確保や女性や災害時要配慮者の視点での備蓄品の拡充、河川監視カメラのリアルタイム化による迅速な水害対策は重要です。さらに、旧杉並中継所跡を災害拠点として活用していくことが検討されています。今後は区の防災対策全般について区民意見が反映され、区民に広く理解が深まるような発信を要望します。

 

第4に暮らしやすく快適で魅力あるまちについてです。

・地域の課題解決のために非営利で取り組むNPOの活動もコロナ禍により思うようにすすめられず、新たな活動スタイルへの転換や感染予防対策にかかる経費増など苦しい状況に置かれています。協働プラザが産業商工会館に移転するに伴い、産業商工団体との情報連携を強化し、地域活動団体への支援の充実を図ることに期待します。

・農福連携農園が今年の4月に全面オープンし、農業と福祉、就労、環境が結びつき、今後、様々な分野に派生していくことが期待されます。

・都市計画道路補助132号線は、西荻地域を縦断する幹線道路として、災害時の避難路や高層マンションなどの火災に対応できるための拡幅や歩道の安全確保が必要ですが、そこに暮らし商売を営む方たちのくらしと事業を継続できるのか、不安が訴えられているのもわかります。必要な補償を行い、時間がかかっても住民の理解を得ながら進めるよう求めておきます。

・補助133号線は、住宅地に大規模な立ち退きを要する計画が、地域の理解を得られていない現状があることを指摘しておきます。

 

第5にみどり豊かな環境にやさしいまちについてです

・多岐にわたる環境問題は私たちのいのちを脅かしかねない待ったなしの状況であり、その負の遺産を次の世代に引き継ぐようなことがあってはなりません。カーボン・ニュートラルの実現に向けた取組みやワンウエイプラスチックの削減対策などに期待します。原発に頼らない新電力PPSからの電力購入による財政削減実績と新年度の拡大を確認しました

・新たな環境基本計画策定にあたっては、より具体的な数値目標を定めた地球温暖化対策実行計画 の策定、プラごみの海洋汚染をこれ以上悪化させないための具体的な取組み、生物多様性地域戦略の策定、省エネをすすめ再生可能エネルギーの利用拡充など、地球環境を取り巻く問題に対し、総合的に取り組んでいくことを求めます。

 

第6に健康長寿と支えあいのまちです

・外出を控え、家に籠りがちになった高齢者などの体力や認知機能の低下に対し、認知症早期発見の取組みが開始されることはとても重要です。同時に「認知症」になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症高齢者の本人発信支援と社会参加支援の視点を持ったイベントや仕組みづくりをすすめていただくよう改めて要望します。

・ケアマネが一人の事業所でコロナ感染した場合でも利用者のサービスが継続できるよう区内事業所の連携がとれる区独自のシステムが作られました。今後有効に活用されるよう期待します。

・在宅医療体制や相談支援の充実、医療と介護の連携強化は今後ますます必要度が高まっていくと思われます。在宅であっても24時間切れ目のない支援体制の構築に期待します。

・障がい者の社会参加を保障する移動支援について、長年にわたる障がい当事者や家族などの要望によって見直しが行われました。精神障がい者も含めすべての障がい種別が対象とされ、利用期間も緩和され、また高次脳機能障がい者への年齢制限が撤廃されたことは重要です。一方で通所に関する利用がいまだ制限されるなど課題も残されています。今後も障がい当事者のニーズ把握に努め、より一層制度が充実されるよう求めておきます。

・区民が抱える生活課題が複雑化・複合化する中で、縦割りでは解決しきれない状況に対し、これまですすめてきた包括的相談支援をさらに一歩進め、全世代対応型の支援体制の展開に向けた検討に着手することに期待します。実態把握には介護者の会や子ども食堂、地域のサロンなどからも意見聴取し、より具体的な課題の把握に努めるよう求めます。

 

第7に人を育みともにつながる心豊かなまちです。

・児童館のあり方検討部会が行財政改革本部のもとに設置され検討が行われています。子どもの健全育成に寄与する児童館のあり方については、単なる場所にとどまらない保育の質の確保はとても重要なテーマです。今回、保育の質について担当部長から「保育や学童の質とは、子どもたちに寄り添う対応、権利を尊重する対応、自主性を育てる対応を基本とし、子どもたちに、どういう風に保育士や支援員が対応するのか紙で学ぶことではなく、長い経験をする中でノウハウを継承し、育っていかなければならない。区の職員もそうしたことを身に着けていく場が必要。」という重要な答弁がありました。これは保育園や学童クラブの現場を持つことの重要さを示すものであり、今後の検討を求めておきます。

・児童館からプラザに移行した地域では中高生の利用が増えている状況を確認できました。また、善福寺地域では児童館を中心に地域の方々が子どもの健やかな成長を支援する居場所のあり方について議論を重ねてきました。6か所目となる子ども・子育てプラザ善福寺の整備にあたっては、地域の声を尊重し、その意見も取り入れながら計画を進めていただくよう要望します。

・学童クラブや小学生の放課後等居場所事業の民間委託について、会派は保育園と同様に核となる直営館を維持することが学童クラブ保育の質の保障につながると求めてきました。今回区長から「学童はじめ、すべて民営化してアウトソーシングしようという発想に立っていない。民営化することで区が失ってはいけないものがある限り、そういうものは守る」と答弁がありました。ぜひ核となる直営館を維持するよう求めておきます。

・これまで充実を求めてきた産前・産後支援ヘルパー事業が拡充され、さらには新たに宿泊型・日帰り型の産後ケア事業の実施を評価します。

・保育園の待機児童ゼロを引き続き実現し、新年度も13園の認可保育園が開設され、さらに2022年4月に6園の整備が予定されています。保育園ニーズは数から質へと移ってきています。選ばれる園となるためにしのぎを削り合うことは悪いことではありませんが、保育の質の中身を見誤ることなく、2020年2月に作成した「保育実践のてびき」に沿った質の確保を区内すべての保育所と共有確認することを求めます。また、保育の質を確保するために巡回指導・訪問や保育士等の人材確保・定着化支援、保育園児が利用することを想定した公園づくりなどを引き続き行うことを確認しました。今後、私立認可保育園がさらに増える中、保育の質の維持のために、27の直営園の維持を強く求めておきます。

 

・2019年度の不登校数は小学生199人、中学生340人にのぼりました。小学生対象のさざんかステップアップ教室が区内1か所で通いにくい状況に対し、中学生対象の宮前教室でも小学生を受け入れるとしたこと、教室の定員をなくしたことで改善が図られたことを評価します。

・学校はすべての子どもに対して、人間尊重や男女平等の精神の徹底をはかる教育を行う必要があります。中学校での男女混合名簿の導入が2校という状況は男女平等の精神に反するものです。教育委員会が男女平等の姿勢を貫き、学校に男女混合名簿の導入を促すよう求めるものです。

・教員の負担軽減のため、保護者との日常の連絡にメールを活用するよう提案し、いくつかの学校で試行を検討するとの前向きな姿勢を確認しました。今後に期待します。

 

第8に、新たな時代を見据えて

・新基本構想策定について、暮らしの基礎となる地球環境問題に重点が置かれ、SDGsに沿って各分野の目標が設定されつつあり、誰もがその人らしく暮らせる杉並区の将来像に大いに期待するところです。

・行政デジタル化について、国にデジタル庁が設置され、マイナンバーカードの利用拡大が始まります。特定給付金での失敗を反省することなく、今月には国民健康保険証利用を開始し、いずれは口座への紐付けや民間利用の拡大をすすめようとしています。いったん許せば、国や企業の意のままに、なし崩し的に個人情報が流用されることを危惧します。区の個人情報保護条例を引き続き堅持し守り抜く姿勢を確認しました。

 

 

次に、予算関連議案についてです

議案第6号は今後の在住外国人支援事業等の更なる推進とそれに伴う事故等へのリスク管理を含めた体制強化を図るため、2021年4月に杉並区交流協会を一般財団法人化するための議案であり、その必要性を理解しました。

議案第7号は阿佐ヶ谷地域区民センターの住所を移転先に変更し、利用料金を定めるなどの条例改正です。先にリニューアルオープンした地域区民センターにおいて、これまで利用してきた登録団体の活動の継続に支障をきたしました。また、バリアフリー化の課題も残したことから、阿佐ヶ谷地域区民センターについても登録団体や障がい当事者の声の聞き取りや説明を丁寧に行うことを求めました。

議案第8号はコミュニティふらっと成田の名称と位置を定めるものです。

議案第9号は、未婚の方を「ひとり親」として税制の対象とされることの改定です。

第10号は、介護保険料がコロナ禍の影響から第8期の保険料を第7期と同じくすることがわかり、所得税改定の影響がでる部分についても対策が取られました。

議案第11号は、第1に、食品衛生法改正により規制を強め、都条例を廃止し申請を受ける市区町村の手数料を定めたものですが、コロナ禍で厳しい事業者に対して、手数料を減免するなどの配慮がされることを確認しました。第2に、都市の低炭素化の促進に関する法律及び建築物の省エネ向上に関する法律の改正による手数料の改定です。今回新たに規定された300㎡未満の建物や一般住宅を低炭素建築物として申請した場合の税の減免などの優遇措置も確認できました。

議案第12号は直営で運営する成田保育園の位置変更です。

議案第13号は、ケヤキ公園への児童館を移すための位置変更であること、

議案第14号は、南阿佐ヶ谷第3自転車駐車場の名称と位置を定めるためのものです。

議案第15号は、都議選や衆院選に備え、これまで長い間変わらなかった選挙立会人などの報酬額を、最低賃金や他区の事例を参考に、適切な額に改正するものです。

議案第28号国民健康保険料は、コロナ禍の影響で均等割は若干値下げになったとはいえ、所得割があがり暮らしへの影響が気になるところです。しかしながら、国保料が青天井にあがる状況から国保制度の抜本的見直しが必要であり、引き続き国に求めるよう要望します。

議案第30号は、新年度一般会計補正予算第1号、新型コロナワクチン接種の予算であり、歳入は国庫負担金と国庫補助金をあて、不足分は財政調整基金から補填されています。本来全額国が負担すべきものであり、今後、国の補助金等を求めていくことを確認しました。その他は、新年度も保育園待機児童ゼロを継続するとともに、保育の質を守る取り組みなど必要なものです。

議案第31号国保事業会計補正予算については一般会計繰り入れに関するものです。

 

以上の理由及び要望を付して、議案第21号杉並区一般会計予算、第22号杉並区国民健康保険事業会計予算、議案第23号杉並区介護保険事業会計予算、議案第24号杉並区後期高齢者医療事業会計予算、その他予算関連議案にはすべて賛成いたします。

 

最後に、新型コロナウイルスの対応に追われる中、予算特別委員会の審議に必要な資料作成にご尽力いただいた職員の皆様に感謝を申し上げ、いのち・平和クラブの意見開陳といたします。

第1回定例会一般質問と答弁 2021.2.15そね文子

Q1-1~3)〇HPVワクチンの薬害について二度と同じ被害を起こしたくないという強い思いを保健所も変わらずに持ち続けているか改めて確認する。

〇HPVワクチンの成分は変わらず薬害の治療法がかくりつしたわけではない。積極的勧奨が中止されているのは異例の措置であり、その理由が安全性の問題であることは何ら変わらないことを区はどのように認識しているか伺う。

〇厚労省の10月の通知と改訂版のリーフレットが届いたのと同時期に、裁判を戦っている原告団及び弁護団から各自治体にHPVワクチンに関する要望書が送られたと聞くが、区はそれを受け取っているか確認する。

A1-1~3保健所長)HPVワクチンの薬害の思いについてですが、区もワクチンによる健康被害が起こってほしくないという思いは常に持ち続けています。積極的な接種勧奨が差し控えられていることについては、国の審議会でワクチンの安全性等の検討が長年続けられており、積極的な接種勧奨を再開するまでの結論が出ていない状況だと認識している。また、区は要望書を受け取っている。

 

Q1-4~8)〇健康被害にあった方が区内にいることから慎重に対応するとし、今年度は出さないと答えていた区が、1か月後にはHPVワクチンの情報提供のはがきを出したのはどのような経緯か伺う

〇区がリーフレットではなくはがきで情報提供したことは適切だと考えるが、はがきを選んだ理由を伺う。

〇今後も国のこのリーフレットを送付しての情報提供は行わないように求めるが、区の見解を問う。

〇武蔵野市では対象者にはがきで情報提供を行い、積極的勧奨は行っていないことが明記された市のホームページのQRコードのみを記載し、それを見た後に厚労省のホームページのリンクも見られるようにしている。区も同じ対応を取るべきと考えるが見解を問う。

〇はがきはひとりに1回以上出すべきではない。今後の対応を区はどのように考えているか伺う。

A1-4~8保健所長)対象者に対し情報提供を今年度行った経緯ですが、令和2年10月に国からワクチン接種対象者に個別に情報提供するように通知文が出た後、令和2年12月の医療行政連絡会において、杉並医師会から区に対してHPVワクチンの個別情報提供を一刻も早く行うよう要望がありました。また、近隣自治体も年度内に個別情報提供を行う状況を踏まえ、区は急遽令和2年12月中に接種対象である小学6年生から高校1年生に相当する者へはがきで情報提供を行った次第だ。はがきにした理由は、ひとつは経費面で、二つ目は周知内容があくまでも制度周知でありはがきの紙面で十分と判断したためだ。

国が作成したリーフレットについては、現在も積極的な接種勧奨が差し控えられている旨の記載がわかりにくい印象があり使用していない。今後も区民からの相談や予診票を渡す際には、区が独自に作成したリーフレットを用いて、副反応が生じる可能性を含め丁寧に説明していく。12月に区が送付したはがきは近隣区市を参考にし、区民が多くの情報を得られるように区と国のホームページのQRコードを記載した。今後ははがきの紙面を研究し、次年度については新たに対象となる新小学6年生と転入者に送付する予定である。

 

第1回定例会一般質問と答弁 2021.2.15そね文子

Q1-1~3)〇HPVワクチンの薬害について二度と同じ被害を起こしたくないという強い思いを保健所も変わらずに持ち続けているか改めて確認する。

〇HPVワクチンの成分は変わらず薬害の治療法がかくりつしたわけではない。積極的勧奨が中止されているのは異例の措置であり、その理由が安全性の問題であることは何ら変わらないことを区はどのように認識しているか伺う。

〇厚労省の10月の通知と改訂版のリーフレットが届いたのと同時期に、裁判を戦っている原告団及び弁護団から各自治体にHPVワクチンに関する要望書が送られたと聞くが、区はそれを受け取っているか確認する。

A1-1~3保健所長)HPVワクチンの薬害の思いについてですが、区もワクチンによる健康被害が起こってほしくないという思いは常に持ち続けています。積極的な接種勧奨が差し控えられていることについては、国の審議会でワクチンの安全性等の検討が長年続けられており、積極的な接種勧奨を再開するまでの結論が出ていない状況だと認識している。また、区は要望書を受け取っている。

 

Q1-4~8)〇健康被害にあった方が区内にいることから慎重に対応するとし、今年度は出さないと答えていた区が、1か月後にはHPVワクチンの情報提供のはがきを出したのはどのような経緯か伺う

〇区がリーフレットではなくはがきで情報提供したことは適切だと考えるが、はがきを選んだ理由を伺う。

〇今後も国のこのリーフレットを送付しての情報提供は行わないように求めるが、区の見解を問う。

〇武蔵野市では対象者にはがきで情報提供を行い、積極的勧奨は行っていないことが明記された市のホームページのQRコードのみを記載し、それを見た後に厚労省のホームページのリンクも見られるようにしている。区も同じ対応を取るべきと考えるが見解を問う。

〇はがきはひとりに1回以上出すべきではない。今後の対応を区はどのように考えているか伺う。

A1-4~8保健所長)対象者に対し情報提供を今年度行った経緯ですが、令和2年10月に国からワクチン接種対象者に個別に情報提供するように通知文が出た後、令和2年12月の医療行政連絡会において、杉並医師会から区に対してHPVワクチンの個別情報提供を一刻も早く行うよう要望がありました。また、近隣自治体も年度内に個別情報提供を行う状況を踏まえ、区は急遽令和2年12月中に接種対象である小学6年生から高校1年生に相当する者へはがきで情報提供を行った次第だ。はがきにした理由は、ひとつは経費面で、二つ目は周知内容があくまでも制度周知でありはがきの紙面で十分と判断したためだ。

国が作成したリーフレットについては、現在も積極的な接種勧奨が差し控えられている旨の記載がわかりにくい印象があり使用していない。今後も区民からの相談や予診票を渡す際には、区が独自に作成したリーフレットを用いて、副反応が生じる可能性を含め丁寧に説明していく。12月に区が送付したはがきは近隣区市を参考にし、区民が多くの情報を得られるように区と国のホームページのQRコードを記載した。今後ははがきの紙面を研究し、次年度については新たに対象となる新小学6年生と転入者に送付する予定である。

 

 

第1回定例会一般質問 2021.2.15

杉並区のHPVワクチンに関する情報提供のあり方について

私はHPVクチンの重篤な副反応で多岐にわたる症状に苦しんでいるという女子中学生の保護者から連絡を受け、2013年の予算特別委員会でこの問題を取り上げました。その中学生は2011年10月12歳のときに区内医療機関でワクチン接種を受け、直後から具合が悪くなり、翌日から入院となりその間に様々な症状が出て10日目にはほぼ寝たきりの状態になりました。診察した医師からもHPVワクチン接種による副反応被害であることの診断書を得ていました。保護者からの話を聞き、また医療機関から厚労省への報告の症状の多さを見て信じられない思いでした。報告には、多すぎるので全部は読みませんが、四肢痛、末梢性浮腫、感覚鈍麻、注射による四肢の運動低下、発熱、皮膚変色、疼痛、注射部位刺激感、ワクチンを接種した腕の広汎性腫脹、歩行障害、多汗症、注射部位疼痛、注射部位腫脹、異痛症、浮腫、複視、等とありました。自分の名前がわからなくなるほどの記憶障害、1から10まで数えられない計算障害、手足が勝手に激しく動く不随意運動などの状況にあることをうかがい、それを議会で共有しました。その時のやり取りが新聞などのメディアで報道され、ワクチンによる副反応の被害が初めて明らかになりました。そして全国から同じ症状に苦しむ人の声が届き、2013年3月25日、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が立ち上がることとなり、杉並の被害者家族が代表になりました。ですから、私にとっても杉並区にとってもHPVワクチンの薬害というものは特別にリアルで2度と同じ被害を起こしたくないという強い思いを共有しているものと認識しています。当時の区の担当者は人事異動によって変わっていますが、保健所は変わらずにこの認識を持ち続けているのか、改めて確認します。

その後2013年4月にHPVワクチンは国の法定接種になりましたが、被害が相次いでいる事実を受け、2か月後の6月14日厚労省は積極的な勧奨を差し控えることを勧告する通知を出しました。そこからHPVワクチンの接種率は1%未満となり、副反応の被害もほとんど出なくなりました。しかし国が緊急対策促進事業として接種を行った2010年から2013年3月まで、そして定期接種になってから積極的な勧奨を控える通知が出されるまでの2か月間の間に接種を受けた(子ども)少女たちには多くの副反応被害が出ました。現在、その被害者130名以上が原告となって国と製薬会社を相手に全国で裁判が行われているのが現状です。私はこの裁判の支援にも関わり、できる限り裁判の傍聴にも行っています。

HPVワクチンの被害は日本だけでなく全世界に広がっており、10か国以上でも裁判が行われている状況があります。そんな中、日本では産婦人科医会や医師会を中心に国会議員などがHPVワクチンの積極的な勧奨再開を強く要請する動きがあります。

そのような動きに押され、昨年7月17日、厚労省は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議にHPVワクチンのリーフレットの改訂案を出し、10月に改訂版のリーフレットが発行されました。私はこの改訂版リーフレットには問題があると考えます。理由は後ほど述べます。

そしてこのリーフレットと共に2020年10月厚労省は「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等への周知に関する具体的な対応等について」との通知を出し、対象者に個別に情報提供することを各自治体に求めました。

しかし、HPVワクチンの成分が変わったわけではなく、また薬害の治療法が確立したということもありません。このまま接種を勧め、接種者が増えたら同じ被害が出る可能性があります。ここで確認しますが、積極的勧奨が中止されているのは異例の措置であり、その理由が安全性の問題であることは何ら変わらないということを区はどのように認識しているかうかがいます。

厚労省の10月の通知でも、積極的な勧奨にならないように情報提供することを求める内容になっています。この通知と改訂版のリーフレットが届いたのと同時期に、HPVワクチン薬害の裁判を戦っている原告団及び弁護団から各自治体にHPVワクチンに関する要請書が送られたと聞いていますが、区はそれを受け取っているでしょうか。確認します。

この厚労省通知が出されたことを受け、私は担当課長に区がどのように対応するか確認したところ、課長からは「区には重篤な副反応の被害者が出ている状況で慎重に行う。通知ははがきで来年度から出す。今年度は出さない」とお答えいただきました。その話を聞いて私はとりあえず安堵し、あえて議会での質問をする必要はないと判断しました。ところが、2月1日、中学生の保護者である区民から、こんなはがきが来ましたと「HPV感染症予防ワクチン接種のお知らせ」と題するはがきを渡されました。こういうはがきが来たら、副反応のことを知らない保護者は娘に打たせる人もいると思うと心配されていました。そのはがきは12月付で出されたものでした。被害が出ることを懸念し、今年度は出さないと答えていた区が、1か月後にはがきを出したのはどのような経緯からなのかお聞きします。

ここで先ほど述べたHPVワクチン薬害訴訟全国原告団及び弁護団から杉並区にも送られた要請書の内容を紹介します。

まずは薬害被害者の状況を一部抜粋して紹介します。「積極的勧奨差し控えの理由となったHPVワクチンの副反応は、頭痛、全身疼痛(光過敏、音過敏、嗅覚障害)、激しい生理痛、脱力、筋力低下、不随意運動、歩行障害、重度の倦怠感、集中力低下、学習障害、記憶障害、発熱、月経異常、過呼吸、睡眠障害など、全身に及ぶ多様な副反応が一人の患者に重層的に表れるという特徴を有しています。その治療法は確立しておらず、被害者は現在も副反応症状に苦しんでいます。副反応として専門的な治療を行っている医療機関は全国でもわずかであり、そうした医療機関への遠距離入通院は患者に重い負担となっていますし、そもそも適切な治療を受けられていない人も少なくありません。副反応は日常生活や就学に重大な影響を及ぼし、10代前半で接種した被害者の女性たちは通信制高校への転校、進学や将来の目標を断念といった深刻な被害を受けてきました。そして社会に出る年齢となった今、副反応は就労の重大な障害となっています。このような被害者の存在を決して忘れてはなりません。

次にHPVワクチンの危険性についての指摘です。

副作用被害救済制度における、障害年金の対象となる障害、それは日常生活が著しく制限される程度の障害とされますが、その認定数が、他の定期接種ワクチンの死亡及び障害の認定数の約15倍となっており、さらに定期接種になってからの数字で比較するとその頻度は31,8倍になっています。これは厚労省が出した数字をもとに計算されたものです。このデータからも副反応の重篤性とHPVワクチンの高い気危険性は明らかです。このような危険性が新しいリーフレットからは全く読み取れないことが懸念されています。

要請書からの引用はここまでです。

私も接種から何年も経過しているのに、母親が押す車いすに乗った被害者が「お母さんがいなくなって、ずっと探しています」と言っているのを見て胸がつぶれる思いでした。

ここで質問します。区がリーフレットではなくはがきで情報提供をしたのは適切だと考えますが、はがきを選んだ理由をうかがいます。

このリーフレットは先ほど述べたような深刻な副反応の危険性が伝わるものになっていません。また改定前のリーフレットでは明記されていた、国が積極勧奨を差し控えている事実も記載されていません。協力医療機関が設置されているとありますが、実際には被害者が安心して受信できる医療機関は乏しく、差別的な対応をされる例があとをたちません。補償についても、国が副反応の因果関係を明確に認めていない中で、十分に受けられないケースが多く存在しているのが現状です。一方でリーフレットには子宮頸がんの危険性やHPVワクチンの効果が強調されており、積極的に接種を勧める内容となっていると言わざるをえません。このリーフレットが個別送付されるようなことがあれば接種者が増え、新たな副反応被害者が生み出されることが懸念されます。

今後もこのリーフレットを送付しての情報提供は行わないように求めますが区の見解をうかがいます。

次に区内で送付されたはがきに記載された内容についてうかがいます。「HPV感染症~子宮頸がんとHPVワクチン~に関する情報を各HPでご案内しています」との説明があり厚労省のHPと杉並区のHPのQRコードがついています。それぞれのQRコードを読み込むと、杉並区は「HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症予防ワクチンと子宮頸がん」というページが出てきます。

杉並区の方では一番初めに平成25年度厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会でHPVワクチンの定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされた事実が述べられています。スクロールしていくと厚労省のヒトパピローマウイルス感染症 子宮けいがんとHPVワクチンのページのリンクが出てきます。こちらは適切な情報提供だと思います。

一方厚生労働省HPのQRコードを開くと、ヒトパピローマウイルス感染症の説明として以下の文章が出てきます。「ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっています。特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。」そして「HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)は、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。」との文章があり、リーフレットが見られるようになっています。このページにはHPVワクチンの接種勧奨が中止されているとの記載はどこにも出てきません。そしてリーフレットにもその記載はありません。厚労省HPだけを見ると、この接種が現在安全性の問題で積極的におすすめされていないことを知ることができません。これは危険なことだと思います。武蔵野市では対象者にはがきで情報提供を行っていますが、ワクチン接種の積極的勧奨は行っていないことが明記されている市HPのQRコードのみを記載し、それを見た後に厚労省のHPのリンクも見られるようにしています。区も同じ対応をとるべきと考えますが、見解をうかがいます。

今回区はお知らせを対象となる小学6年生から高校1年生の女子に送りました。効果は証明されていない、そして重篤な副反応の頻度が極めて高いワクチンの個別の情報提供は本来行わないのが最善だと考えます。しかしはがきを出すなら、厚労省は積極勧奨にならないように情報提供することを求めているのですから、一人に一回以上出すべきではありません。今後の対応を区はどのように考えているかうかがいます。

区内の被害者は、一番楽しいはずのティーンエイジャー時期に普通の生活を送れず、治療に多くの時間を費やしてきました。副反応を診察できる医療機関に行きつくまでにいくつもの病院をたらいまわしにされ、医師からの精神的なものだとの言葉に傷ついてきました。保護者が被害者の置かれた状況を訴えると、ワクチンを進めようとする(医師)人たちから反ワクチン派として攻撃を受けることも続いています。しかし、当時、被害者や保護者は区を信頼し、そのお知らせに従ってワクチンを接種したのですから、反ワクチン派であるはずがありません。接種から10年がたち、当時中学生だった女性は通信制の大学を卒業されましたが、まだ体調に波があるため就職はできない状況です。このような被害があったことを、区は決して忘れずに今後も真摯に対応することを求め、一般質問を終わります。