第2回定例会一般質問  2021.6.02奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として

1. ひとり親支援について

2.ヤングケアラー支援について

一般質問します。

 

先ず、ひとり親支援について

2013年に成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることなく、健やかに育成される環境の整備と教育の機会均等を総合的に推進することを目的としています。しかし、厚生労働省による2019年の国民生活基礎調査によれば、子どもの貧困率は13.5%で7人に1人が貧困状態となっており、母子世帯の86.7%が苦しいと応えています。もとから困難な状況を抱えていたひとり親、特に母子世帯にコロナ禍は容赦なくさらなる困難を強いた形となっています。母子世帯の多くは正規雇用より非正規やパート労働が多いため、コロナ禍による就労制限で収入減となる一方、子どもは一斉休校や登校制限、様々な体験活動中止等により、学校での給食や学び、友達との遊び、地域の人たちとのかかわりが制限され、子どもの健康や学習、発達にも影響が及んでいます。学校や地域、友達が担ってきた役割も親が引き受けなければならず、ひとり親の負担はますます増えています。2008年のリーマンショックを超える経済不況になるとも言われており、中長期的な対策が必要だと考えます。

コロナ禍によってひとり親世帯が困窮する現状に問題意識を持ったひとり親支援団体やジェンダー政策の専門家、研究者らによって発足した「シングルマザー調査プロジェクト」が昨年7月に行ったWEBによる大規模調査では1800人から切実な声が寄せられました。さらに、その回答者の中から4つの要件に当てはまる世帯、つまり①母子世帯②公的年金を受けていない③生活保護を受けていない④児童扶養手当を受けている、という東京在住252人、東京以外287人に毎月同じ方に同じアンケートをするパネル調査を行っています。それによれば、今年2021年2月の状況は東京在住の252人の約30.6%が主食のコメなどの食糧が買えないことがよくあった、時々あったと回答。肉や魚、野菜に至っては約半数が買えていませんでした。体重が減った小学生は多いときで10%を超えました。子どもの服や靴では59%、子どもの玩具・文具・学用品は46.5%が買えないことがよくあった・時々あったと回答しています。また、子どもたちの状況では、学校の学習についていけない小学生は3割を超え、学校に行きたくない、行かなくなったが2割を超え、習い事ができない小学生は約6割に上っています。区内の子ども食堂も集まって食事ができにくくなり、お弁当や食材の配布を行っているところもあると聞いています。要望は日を追うごとに増えているようで、杉並区でも困窮する家庭は確実に存在しています。

そこで、質問します。

  • 2020年度、ひとり親家庭実態調査が実施されました。前回の実態調査報告書では調査結果のまとめの中で今後の課題についての記載がありました。どのような課題があり、それは解決されたのか。また、今回の実態調査では、コロナ禍での状況にあって、5年前の調査との違いが見えてきたのではないかと思います。区はこの調査により、どのようなことを新たな課題として認識したのか伺います。
  • 国は子育て世帯生活支援特別給付金として児童1人当たり5万円を支給することとしましたが、杉並区のひとり親対象の給付は何件か伺います。
  • 杉並区の調査では悩みや困りごとの解決方法として区の窓口に相談すると答えた人は1%で、インターネットやSNS、親族や友人に相談すると回答した約40%前後と比べ少ない結果となっています。また、何もしないというのも21.7%あり、時間がないとか最初からあきらめてしまう人がいるようです。本来、使える制度やサービスが使えていない人がいないようにしなければなりませんが、ひとり親への情報提供はどのように行っているのでしょうか、伺います。
  • コロナ対応として臨時的な措置もあり、さらに手続きすることが増えたりもしています。HPでも常に最新の情報が掲載はされていますが、通常の制度も含めて、相談に訪れた方に対しては、その家庭にあった制度やサービスをカスタマイズしてもらえるような寄添い型の相談ができると当事者にとっては心強いと考えますが、現状どのように対応をしているのか確認します。
  • 2021年度からひとり親家庭を対象として新たに養育費立替補償契約費用助成と公正証書作成費用助成が予算化されました。離婚相手との取り決めがあっても養育費が支払われない場合の救済制度ですが、周知方法含め区はどのように進めようとしているのか伺います。
  • 区は毎年ひとり親家庭のしおりを発行しています。非常に多くの情報が盛り込まれています。例えば、ページを開くと各種相談が5ページにわたって一覧表が掲載されていますが、自分が相談したいことが明確になっている人はここだという相談先を選ぶことができるかもしれませんが、そういう人は少ないのではないでしょうか。活用せずに放置してしまうのではと心配です。最初に出てくる「子ども家庭部管理課、福祉事務所」がワンストップ的な相談窓口となるのか。そうだとすれば「相談先がわからないという場合は、まずはここにご相談ください」のように、ここにさえ相談すれば、その先を導いてくれるという案内がしおりの最初に書いてあるとよいと思いましたがいかがでしょうか。
  • 生活者ネットワークの関連団体が昨年11月から今年の2月にかけて、都内で子ども食堂や子育て支援、食料支援、居場所、民生委員、無料学習塾等の支援活動をしている30の団体や個人を対象に聞き取り調査を実施しました。調査報告書では現場だからこそ見える様々な課題がつづられていました。制度からこぼれてしまう家庭の支援や目の前の家庭の課題に気長に寄り添い、信頼関係を築き、行政機関や他の団体とつなぎながら解決に導く取組みは、ボランタリーな地域住民によるたすけあいの地域づくりであり、大事にしたい取組みだと感じました。区はひとり親家庭への聞き取りと同時に、地域で支援活動を行っている団体や個人からも現場が持つ情報や抱える課題について共有する機会をつくり、区からは見えていない困難な家庭の把握にも努めることが必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。

 

次に、2つ目の項目、ヤングケアラーについて質問します。

私は2018年第3回定例会の一般質問でケアラー支援について質問を行い、ヤングケアラーについても取り上げました。当時は杉並区でもケアラーという言葉は一般的ではありませんでしたが、区も介護者支援の重要性の認識には変わりはなく、今後も総力をあげて取り組んでいくとの答弁がありました。今日は改めてヤングケアラーについて質問してまいります。

2020年3月に埼玉県ケアラー支援条例ができ、条例に基づくケアラー支援計画策定にあたり、実態調査が実施されました。その後さらに、厚生労働省が昨年の12月から公立中学2年生と公立高校全日制の2年生を対象に、全国初のヤングケアラー調査を実施しました。それぞれの調査からその実態が明らかになり、その内容に衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。それらの結果を受け、ヤングケアラーを特集した新聞や報道番組が増え、子どもたちが置かれている困難な状況を多くの市民が見聞きすることで「ヤングケアラー」という言葉の認識が広がり、理解も進んできたと感じています。

家族の中にケアを必要とする人がいた場合、多かれ少なかれ家族のケア負担が発生します。世帯人数が減り、共稼ぎやひとり親の家庭も増える中、子どもや未成年の若者たちがケアの担い手となることがあります。このような子どもや若者はケアの経験を通して多くのことを学ぶという点では悪いことではありません。しかし、担っている役割や責任が年齢に不釣り合いであったり、長期間に及んだ場合など、自らの心身の発達や学校生活、将来への大きな影響を受けることがあるため、ヤングケアラーに陥らなくて済むような、様々なサポート体制を整備していくことが必要です。

 

  • 厚労省の調査で対象となった杉並区内の中学校はあったのか。また、今回の調査結果を区はどのように受け止めたか伺います。

 

今年4月12日に厚労省が発表した調査結果によれば、約1万3千人から回答があり、大人の代わりに家事や介護といった家族の世話を担う子ども、いわゆる「ヤングケアラー」が中学2年で5.7%、17人に一人、高校2年で4.1%、24人に一人いることが明らかになりました。これを文部科学省の統計に当てはめると中学2年で約5万5千人、高校2年で約4万2千人のヤングケアラーがいるということになります。ケアに費やす時間は中学生では平均4時間、高校生で3.8時間。なんと7時間以上という子どもも10%いました。これはとてもショックであり、これでは勉学や部活、友達づきあいもままならないし、子どもらしい遊びや休息の時間も楽しい時間も持つことができないわけで、到底看過できない問題です。

2018年の一般質問では、杉並区でもヤングケアラーというケースもあったが、十分な把握ができているわけでもないことがわかりました。当時の答弁は、今後、学校現場にかかわる者への研修に「家族のケア」という視点を示し、各学校が的確な実態把握のもと保護者や関係機関と連携した対応ができるように支援していくというものでした。

2019年11月から2020年1月にかけて、江戸川区の生活者ネットワークの仲間が教育・医療・福祉の現場で働く方々との協力で「ケアを担う子どもや若者たちに関する調査」を行いました。報告書によれば、ケアを担う子どもや若者がいたと答えた人はヤングケアラーという言葉を知っている割合も多かった一方、ヤングケアラーという言葉を知らない人はケアを担う子どもや若者がいない、わからないと答えた人が多かったという結果が出ていました。つまり、ヤングケアラーはいるものだと意識しているかいないかで、把握の度合いも違ってくるということだと思います。この調査にかかわった人の職業はケースワーカー、障がい者福祉関連、保健師、ケアマネ、訪問介護員、看護師、スクールソーシャルワーカー(SSW)、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)など医療・介護・教育・福祉分野と多岐にわたっており、ヤングケアラーに接する可能性のある職種はすべてふくまれていました。そしてそれぞれの関係性の中で連携しながら解決しようとしている様子が見てとれました。中には対応に苦慮して何もできなかったという場合もあり、なかなか一筋縄では解決できない問題でもあると改めて認識しました。

 

  • ヤングケアラーの問題は家庭の問題とせず、社会全体の問題として取り組むことが重要だと考えます。杉並区でもヤングケアラーが存在しているという想定のもと、支援策を検討するためには実態把握が欠かせませんが、様々な調査からもなかなか本人が自ら発信できないケースが多いことがわかっています。厚労省調査でも60%以上が世話について相談しておらず、そもそも自分がヤングケアラーだと自覚している子どもも少ない実態が明らかになりました。誰かが気づいて声をかけ、支援につなげることが重要だと考えますが、杉並区ではどのように実態を把握し、対応しているのか確認します。
  • 子どもに関わる全ての職員がヤングケアラーの実態について認識し、理解することが、早期発見、早期対応には欠かせないと考えます。福祉や教育分野などでの研修にヤングケアラーの視点が盛り込まれるようになっているのか確認します。
  • 今年3月に厚労省と文科省が合同で「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」をつくり支援策の検討を行い、5月に報告書がまとめられました。その検討内容はどのようなものだったのか確認します。また、その報告書を区ではどのように受け止めたのか伺います。
  • 鳥取県が今年4月から県内の児童相談所などにヤングケアラー相談窓口を設置、神戸市は6月からこども・若者ケアラーの相談窓口を設置するようです。「ヤングケアラー支援」を見える化することで、当事者や支援者、気になっている地域住民が相談しやすくなり、情報もそこに集中するようになると考えます。たとえば、子ども家庭支援センターのリーフレットやゆうラインの案内で、具体的な相談内容に家族のケアを担っている子ども(ヤングケアラー)の相談といった項目を足す工夫があってもよいのかと思います。今後、リーフレットの改定などの際に検討してはいかがか区の見解を伺います。
  • 今後、介護保険制度の限界から、高齢者などの介護は再び家族の負担が増える方向に向かうのではないかと危惧します。また、コロナ禍で経済状況が悪化し、それが引き金となって、心身不調となる親のケア等、ヤングケアラーにならざるを得ない状況が今後、ますます増えるのではないかと懸念します。この間、一つの家庭が複合的かつ複雑な問題を抱えるケースが増えており、杉並区でも在宅医療・生活支援センターを中心に横連携の支援体制を強化してきていると承知していますが、このヤングケアラーの問題についても改めて意識を高めていくことが必要だと考えます。子どもの未来を奪うヤングケアラーの問題に対し、区の考えを最後にお聞きします。

 

今回、ひとり親支援とヤングケアラー支援について質問してきました。2つのテーマは決して別々の問題ではなく、根底ではつながっている問題だと思います。地域の中に潜在している課題を敏感にキャッチし、困っている家庭や子どもたちの支援に尽力して頂くよう求め、私の一般質問を終わります。

 

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