予算特別委員会意見開陳 2020.3.16 奥田雅子

いのち・平和クラブを代表して、2020年度杉並区一般会計予算、並びに、各特別会計予算および関連諸議案について意見を述べます。

昨年11月に中国武漢で発生した新型コロナウィルスは数か月で世界中に広がり、日本においても、日々、感染者が増え続け、国内で亡くなられた方も3月15日時点で31人となっています。お亡くなりになられた方、そのご家族に対し謹んでお悔やみ申し上げます。また、り患された方におかれましては、一日も早い回復を願うとともに、誰もが感染するリスクを負っているという意識をもって、この危機に立ち向かわなければならないと考えています。

終わりの見えない状況に、区民生活や経済活動に大きな影響を及ぼしています。区内イベントの中止や区立施設の全面休館、公立小中学校の休校の対応策を行ったことは、感染拡大を防ぐためには必要なことでありました。しかし、この問題により高齢者の機能低下や子どもたちの精神的不安、さらには地域経済の落ち込みや雇用問題、収入減少など、幅広い分野に弊害が広がり、それら対策に一つ一つ丁寧に取り組む必要があると考えます。そのため、2020年度区政経営にも少なからずの影響は避けられない状況であり、機敏な対策と柔軟な対応が求められています。

区は2020年度予算を「10年ビジョンの成果を確かなものとする予算」と名付け、次の新基本構想策定に取り掛かる重要な年度と位置付けました。基本構想は区政全般の土台となるビジョンであり、私ども、いのち・平和クラブは住民に一番身近な地方自治体の役割である区民福祉をいかに支え向上させるか、また、昨今の気候危機を受けて区民の命と財産を守り、子どもたちが将来に希望を持ち、緊急を要する課題に応える予算となっているかを検討いたしました。以下、基本構想に掲げる目標に沿って、予算特別委員会での質疑の内容を踏まえ、主な賛成理由、評価する点と要望を付して意見を述べます。

第1に災害に強く安全・安心に暮らせるまちについてです。

・政府の地震調査委員会は「全国地震動予測地図2018年版」で日本の各地域が30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示しました。それによると、これまで30%弱と言われていた東京都庁の場所が46%と高くなっています。また異常気象による風水害の被害の恐れも高まる中で、災害への備えを強め拡充していることは重要と受け止めています。会派要望に応え、昨年実施したブロック塀対策を区内全域の危険箇所に拡大したことを評価します。

・震災救援所におけるプライバシーの確保のための要配慮者用テントや乳幼児親子の避難者への配慮としての液体ミルクが災害備蓄品に加えられたことは評価できます。今後、それらの活用イメージを震災救援所運営連絡会とも共有し、訓練における周知を要望します。

・要望してきた雨水タンクの助成再開がされたことを評価します。制度再開を広く区民に周知し、一人ひとりができる雨水活用の意義を発信していただくよう要望します。  

第2に暮らしやすく快適で魅力あるまちについて

・都市計画道路補助132号線は、1947年に幅員11mで都市計画決定しその後、1966年に幅員16mで都市計画変更されました。以降は道路用地にかかるところは新しい建物が制限され、道路沿いは2階建てしか建てられないなどの規制を受けてきました。
 西荻地域を縦断する幹線道路として、災害時の避難路や高層マンションなどの火災に対応できるための拡幅や歩道の安全確保が必要ですが、そこに暮らし商売を営む方たちのくらしと事業を継続できるのか、不安が訴えられているのも当然です。沿道住民はすでに建て替えには事業化を前提にしている方も多く、区が事業を止めることはその方たちの納得が得られません。みきり発車で事業化することがないよう時間がかかっても必要な補償を行い住民の理解を得ながら進めるよう求めておきます。
 一方で補助133号線は、道路のない住宅地に大規模な立ち退きを要する計画です。地域住民の大半が反対しており、道路の必要性があるのか見直しが求められています。都の動きに対しては、区は住民により沿い慎重な姿勢で臨むよう求めます。

・駅周辺における住民参加のまちづくりについて、富士見ヶ丘駅周辺の新たな取り組みに期待するところです。また、阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりでは、一旦決められた杉一小現在地での複合施設屋上に校庭をつくる計画は、震災時の児童の避難や震災救援所として課題が残されていました。河北病院の移転に伴いその跡地に建て替える現計画は、地上で校庭も広くなり児童の教育環境は格段によくなるものと考えます。この間の質疑を通じて、懸念されていた土壌汚染対策は、新年度地歴調査が始まり、汚染が判明した際には河北病院側との協定で万全の対策がとられることが明確になりました。全国で病院跡地に建設された学校の事例からも安全性を確認することができました。浸水対策は東京都と連携した貯留管や予定地に施される貯留池と地下浸透施設などで対策がとられます。現在、川沿いに建つ和泉学園や桃井第2小学校同様に、安全対策が図られることを確認しました。緑の保全も区が関ることで所有者の理解を得て、法に規定される以上の緑化が可能になることもわかりました。

第3にみどり豊かな環境にやさしいまちについて

・新たな公園の開園整備を積極的にすすめていることを評価します。公園整備の際は公園のコンセプトや設計決定の場に地域住民の参加を保障し、地域住民の合意形成を丁寧にすすめていただくよう要望します。

・議案第14号、杉並区森林環境譲与税基金条例は入ってくる森林環境譲与税をその目的に使用するための基金を創設するものです。基金を利用して国産木材の区立施設への使用はもとより、子どもから大人までの区民が森林に触れ、学習機会を継続的に持ち、森林を守り育てていくことに期待し議案に賛成します。

第4は健康長寿と支えあいのまちです

・「認知症」になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症高齢者の本人発信支援と社会参加支援の視点を持ったイベントや仕組みづくりをすすめていただくよう要望します。

・区が特養ホーム待機者解消という喫緊の課題に積極的に取り組まれた姿勢を評価します。現在建設中を含め24施設・2197床の整備を進め、2021年度以降の待機者が当面はないという予測にまで至ることができました。今後もより正確に実態を把握するための具体的な対策と、さらにその都度見直すという姿勢を確認しました。また人への投資によって、より質の高い介護へと向かうために、先進事例に学び、研究を重ねていくという積極的な姿勢を確認することができました。建設中の大規模特養はじめ質の高い介護の実現に期待するものです。

・移動支援について、障害当事者や家族、団体への調査を踏まえた見直しが進められています。これまで長年にわたり当事者団体から出された要望に沿って改善が行われるよう求めておきます。

・生活困窮者支援について、区はこれまで関連機関との協定を結び、生活困窮者支援に取組まれたことが実績に現れています。今後は区がアウトリーチでアプローチするなど、積極的な姿勢も確認できました。

第5は人を育みともにつながる心豊かなまちです。

・保育園の待機児童ゼロを3年連続で実現し、新年度も認可保育園整備を引き続き行うことを確認しました。しかしながら、認可保育園は直営園が現在31園に対し、民営園は134園となり、保育の質を守るためには直営園の維持が課題となっています。2024年度までにさらに4園の民営化方針が示される中で、わが会派はその見直しも含めて検討されるよう求めておきます。建設補助金に加え保育無償化を区立園には適用しないとする国の方針が、基礎自治体に対し民営化を迫るものとなっていますが、今後、国に対し、区長会を通して要望をあげていただきたいと思います。

・さらに区が学童クラブの待機児童解消のために、児童館の学童クラブ専用館への転用や学校敷地内への第2学童クラブの設置など対策に努めていることは重要です。学童クラブと放課後の居場所事業の学校内移転に伴い、管轄するプラザ職員の負担増とならぬよう、職員を加配し対応する区の方針を確認しました。堀ノ内東学童クラブなどが直営で運営される一方で、民間委託が進められていきます。営利を追求する株式会社への委託が安易に進められないよう求めておきます。

・議案第10号の審議で、地域コミュニティ施設として新たに3か所のコミュニティふらっとの開設を確認しました。多世代交流の場としての機能を発揮するためには運営の役割は重要です。利用者の声を運営に反映することで、利用したくなる施設となるよう期待します。特に、中高生の居場所機能を持つコミュニティふらっとでは主体的に中高生が運営に参画できるよう要望します。

・議案第16号の審議で、永福図書館改築にあたり、杉並区立図書館サービス基本方針の10年後の図書館像「学びの場」「知の共同体」「楽しい交流空間」をめざし、旧永福図書館の機能を継承・拡充し、旧館にある貴重な行政資料や郷土資料も残すことを確認しました。また多世代が気軽に利用できるコミュニティ施設の特徴を生かした工夫が見られます。

指定管理の導入にあたり、司書の資質やレファレンス能力など事業者の選定の仕方も確認できました。また中央図書館のリニューアルオープンに向けて、センター館としての役割を果たすために、運営に当たり直営部分を維持することもわかりました。

・学校給食の牛乳パックの処理については困難な状況の中、子どもたちへの環境教育の視点でリサイクルを決断するまでの区教委の努力もわかり、今回のチャレンジを応援します。今後も実生活を通して環境を意識する教育を行っていただくよう要望いたします。

・不登校の子どもは増え続け、2018年度は小中学校合わせて486人に上り、さざんかステップアップ教室の定員80名では足りないことは明らかです。発達に課題がある子どもが不登校になることも多い現状で、出席日数が少ないということで特別支援教室に入れないことも課題です。教育長からは不登校が少ない学校の研究をすることなど来年度の新たな取り組みが示されましたが、待ったなしの状況に対し、あらゆる方法で子どもの教育の機会を確保するよう求めます。

・DVがある家庭に子どもがいる場合、児童虐待も必ず起きているという認識で対応することが必要です。また、DVもデートDVも力によって相手を支配しようとする構図は同じです。これらを未然に防止するために区が高校生対象に行っているデートDVの出前授業を中学段階から行い、互いを尊重する人権教育、間違った価値観や考え方に気づき、すべての人に価値があることを学ぶ機会を提供することを求めます。

・教員の働き方改革をすすめるために、保護者への日常の連絡にもメールを活用するよう提案しましたが、検討しないとの回答でした。働き方改革には固定観念を捨て、あらゆる方法を検討する姿勢が必要であり、改めて柔軟な対応を求めておきます。

第6は杉並区のさらなる飛躍に向けて

・議案第4号に関連して、気候危機やプラスチックの海洋汚染など、今世界と共に行動しなければ暮らしが成り立たなくなる状況の中、基本構想の根底に環境優先の考え方を置くよう求めました。NPOを含む区民と協働で基本構想を実現することを念頭に置き、子どもを含む多くの区民参加で基本構想をつくることを求め議案第4号には賛成します。

・議案第15号の審議を通じて、新教育ビジョンの策定にあたり、これまでの実績を踏まえつつ教育行政を取り巻く新たな環境の変化に応え、児童生徒、教職員、保護者などからの意見を把握し、杉並の独自性を活かした審議会での議論の方向性を確認しました。審議会には子育て中の若い区民2名、学校教育、社会教育の関係者と学識経験者を教育に関するすべてのジャンルから選ぶことがわかりました。今後、実のある審議が実施できるよう求めておきます。

・2022年度に迎える区政90周年事業に向けた調査・研究とともに、区制100周年も視野に入れた取組みでは全庁的なプロジェクトチームですすめていくことを確認しました。さらに、区史の調査研究には多様な区民の参加で、特に小中学生の学びや区への愛着につながるような工夫を改めて求めておきます。

 第7は協働の取組みについて

・生活課題の解決に取り組むNPOなどは区では手が届きにくいところで事業・活動をしています。このようなNPOなどとの協働は区民福祉のセイフティネットの拡充につながります。区と事業者との対等互恵の関係によって、制度のはざまに陥ってしまう問題に積極的に取り組んでいただきたいと思います。2020年度の協働提案事業の成果を最大限引き出せるよう区の支援に期待します。

第8は行財政改革に関連して

・少子高齢化や厳しい財政事情の中で施設再編整備を進めつつ、新たな財政ルールに基づき起債と基金をバランスよく活用しつつ行政需要に応えた予算編成であると評価します。常々区長が発する「自治体の役割は福祉増進」であり、財政ルールや行政改革もその目的を果たす手段だという考えを今後も貫いていただきたいと思います。

・マイナンバーカードの普及のために、昨年6月総務省は自治体に対し「本年度中の一斉取得の推進をお願い」を通知し、取得依頼やカード取得状況調査の報告を求めています。マイナンバーカードは本人の意思で申請するものであり、公務員に限らず取得義務は課されておらず、取得を強制するものではないはずです。区は今後も職員の意思を尊重し強制とならないよう求めておきます。

・議案第6号で区立施設の使用料の見直しが提案され、それに先立ち使用料の算

定の仕方にも大きな変更がなされました。だれもが等しく利用できる公共施設の建設費を使用料に転嫁することは望ましくないとの判断もあります。区は今後減価償却費を使用料原価に含める一方で、施設の公共性や市場性を検討し使用料を原価の0%から50%、100%と施設ごとに定め直す方針としました。今後は公共施設の一斉建て替えが迫られる課題があるなかでは見直し自体はやむを得ないものと判断しました。

・議案第8号公契約条例についてです。23区では7番目の条例制定になりました。他区と比較しても継続勤務など対象を広範囲としたことを評価します。今後も引き続き、社会保険労務士を活用した労働環境モニタリングが実施されることも確認しました。本条例が、働く人々の労働条件を守り、労働環境整備に役立つものとして実施されることや地域の状況や働く人々の生活に根差したものとなるよう期待します。

最後に

・議案第31号国民健康保険事業会計予算および関連する議案第42号について、今年度も保険料の増額となっています。国民健康保険制度は年金収入の高齢者や中小事業者、非正規雇用など低所得者で構成され、保険料アップで人々の生活が厳しくなる状況認識は区長も同じであることが確認できました。2018年度から都が保険者となったいま、法定外繰り入れの縮減や解消が示される中で保険料は青天井とならざるを得ません。国保が人々の健康や命を守るためのセーフティネットとして今後も維持されるためには国の財政投入など抜本的な対策がなければ解決できません。そのためには、23区が一致団結して国や東京都に歩調を合わせ働きかけることが必要と考え議案には賛成し、区長会などを通じた不断の取り組みを求めます。

以上の理由から、議案第30号杉並区一般会計予算、議案第31号、32号、33号、34号各特別会計予算に賛成をいたします。

なお、予算特別委員会に付託された議案4~18号の15議案および25号、42号についても賛成といたします。

最後に、新型コロナウィルスの対応に追われる中、予算特別委員会の審議にあたり、ご答弁いただきました区長はじめ理事者の皆様、資料作成にご尽力いただいた職員の皆様、公正・公平な委員会運営に努められた正副委員長に感謝を申し上げ、いのち・平和クラブの意見開陳といたします。

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